宀部

0畫

宀  

べン [先]

○屋根が家をおほふ貌。○ 國  うかんむり(ウ冠)漢字構造上の稱。

2畫

宄  

キ [紙]

よこしま(姦)書、舜典「寇賊姦─」寇盜邪惡の內より起るを姦、外より起るを─といふ。

宂  

ジョウ [腫]

俗に冗に作る

○むだ、不必要「─官」「─費」○あまり、あまる。○ひま(閑散)「閒─」「散─」○わづらはし、まじる(雜)「─雜」いそがはし(忙)○さまよふ、さすらふ(流浪)後漢書、光武紀「流─道路、朕甚愍之」

【宂員】 ジヨウヰン 

むだなる人數、餘計なる人員。白帖「捐不急、罷──」

【宂官】 ジヨウクワン 

むだなやくにん、又、閒散にして不必要なる官職。漢書、申屠嘉傳「──居其中」

【宂雜】 ジヨウザツ 

煩多にしてこみ合ふ。圖繪寶鑑「僧慧舟作小藂竹、或二三竿、或百十成林、不見其重複──」

【宂散】 ジヨウサン 

無用にして閒暇 ヒマ がある。南史、劉峻傳「峻時貧悴──、忽請紙筆疏十餘事」

【宂宂】 ジヨウジヨウ 

入りみだるる貌。又、いそがはしき貌。煩多の貌。五色線「張文成曰、選人──、甚于羊羣」

【宂僭】 ジヨウセン 

むだな身分不相應のおごり。宋史、范仲淹傳「斥游惰、去──」

【宂談】 ジヨウダン 

むだばなし。

【宂長】 ジヨウチヤウ 

むだにあまる、くだくだしく長し。陸機、文賦「要辭達而理擧、故無取乎──」

【宂不見治】 ジヨウニシテチヲアラハサズ 

其の職務が閒散なるが故に政治の技倆をあらはすこと出來ず〔韓愈、進學解〕

【宂費】 ジヨウヒ 

むだなつひえ。唐書、康承訓傳「罷──巿馬」

【宂兵】 ジヨウヘイ 

むだな兵、不必要なる兵隊。蘇軾文「爲政在去三宂曰宂官、曰──、曰宂費」

【宂末】 ジヨウマツ 

くだくだしく小さし、いやしく劣る。南史、劉式之傳「人品──」

【宂漫】 ジヨウマン 

くだくだしくしまりなし。=宂長。

它  

タ [歌]

○へび、蛇の古字。○ことなり(異)ほか、よそ(他·佗の古字)檀弓「或敢有─志以辱君義」

【它所】 タシヨ 

ほかのところ。=他所。

宁  

チョ [語]

○門と屛との閒。正堂の前に設けたる庭の中にて古、支那の天子が政を聽く時、立つ所。曲禮「天子當─而立」○たたずむ(佇立)

【宁立】 チヨリツ 

たたずむ。曲禮、注「人君視朝、所──處」=佇立。

3畫

安  

アン [寒]

○やすし。危の對「平─」「─全」曲禮「人有禮則─、無禮則危」○やすんず、やすらか、おだやか「乂─」「─寧」○しづか(徐·靜)「恬─」「─靜」○しづまる、さだまる(定)○しづめる、おちつかす「─民」○すゑる、置く「─置」○たのしむ(佚樂)○とどまる(止)○いづくんぞ、いづくにか、否定の意をあらはす反語。=焉。○ 國  やすし(廉價)「─直」「─價」

 同訓異義 

イヅクンゾ 安·焉·惡の別は焉(火部七畫)の條を見よ。○ヤスシ安·寧·康·泰·綏·易○安は危の反、安樂·安寧.安穩と用ふ。曲禮「人有レ禮則安、無レ禮則危」○寧は安定の義、安らかにおちつく義。書經「野無二遺賢、一萬邦咸寧」○康は安樂の義たのしむとも訓む、康寧は身の息災安樂なる義。○泰は安くしてゆるやかなる義、安泰·舒泰と用ふ。論語「君子泰而不レ驕」○綏はやすんずと訓む、車に乘るとき、執る所の繩なり、論語に「正立執レ綏」とあり、綏を執れば、倒れずして安し、又ゆるやかに垂るる意もあり、故に安堵の義に用ふ。○易は難の反、容易·簡易·平易などと用ふ。史記「平易近レ民、民必歸レ之」

【安安】 アンアン 

天性のままにして、少しも强ひつとむることなき貌。書、堯典「欽明文思──、允恭克讓」

【安慰】 アンヰ 

やすんじなぐさむ。古詩、焦仲卿妻詩「時時爲──、久久莫相忘」=安撫·慰安。

【安佚】 アンイツ 

やすらかに遊びたのしむ。孟、盡心「四肢之於──也」=安逸。

【安逸】 アンイツ 

前條に同じ。

【偸安】 アンヲヌスム 

一時の安をぬすみむさぼる。苟安を貪る。賈誼、治安策「夫抱火措之積薪下、而寢其上、火未及然因謂之安、──者也」

【安穩】 アンヲン 

やすくおだやか。晉書、顧愷之傳「行人──、布帆無恙」

【安行】 アンカウ 

○心にやすんじおこなふ。中庸「或安而行之」○ゆるゆるとしづかに行く。詩、小雅「爾之──、亦不遑舍」=徐行。

【安康】 アンカウ 

○やすらか。やすく治まる。易林「天福吉祥、永得──」=安寧·安靖。○やすらかに治める。吳志、孫綝傳「──社稷」

【安閒】 アンカン 

やすらかに靜か。歐陽修、豐樂亭記「又愛其俗之──」=安閑。

【安閑】 アンカン 

前條に同じ。

【安危】 アンキ 

やすきと、あやふきと。史、項羽紀「國家──在此一擧」史、李斯傳「──不定、何以貴聖」

【安徽】 アンキ 

省の名、江·淮二川に跨り皖山を以て南北に分つ、故に又皖省とも稱す。

【安期生】 アンキセイ 

古、長生せし仙人。抱朴子「丨──賣藥海邊、瑯琊人、傳世見之、計已千年」

【安居】 アンキヨ 

○やすらかに暮して居る。後漢書、皇甫嵩傳「賴得皇甫兮、復──」○ アンコ   佛  四月十五日より九十日閒、僧衆が一所に靜居して修業する。=夏籠 ゲゴモリ ·夏居 ゲゴ 

【安臥】 アングワ 

やすらかにねる。梁書、賀琛傳「惡人日滋、善人日蔽、欲求──、其可得乎」=安眠。

【安慶府】 アンケイフ 

安徽省の首府、楊子江の左岸にあり。江水府城の三面を環る。

【安恆】 アンコウ 

やすらかにしてつねにかはらず。潘岳詩「立德之柄、莫非──」

【安坐】 アンザ 

落ちつきてすわる。莊子「──定氣」

【安產】 アンザン 

 國  やすらかに子を生む。輕きさん。難彥の對。

【安肆】 アンシ 

心安くほしいままにして禮なし。禮、表記「君子莊敬日强、──日偸」

【安史之亂】 アンシノラン 

唐の安祿山と史思明との叛亂、玄宗帝の天寶十四年より九年閒。

【安集】 アンシフ 

集は安、やすんじやはらぐ。漢書、曹參傳「相齊九年、齊國──、大稱賢相」=安輯。

【安戢】 アンシフ 

おだやかに治まる。=乂安 ガイアン 

【安輯】 アンシフ 

安集に同じ。漢書、高帝紀「共定天下、同──之」

【安心】 アンシン 

○心を安んずる。張華文「──恬淡、栖志浮雲」○ アンジン   佛  信仰によりて、心を落ちつける「──立命」

【安心立命】 アンジンリツメイ 

 佛  身を安んじ天命を全くして心に憂ふる所なし〔傳燈錄十〕

【安神】 アンシン 

神は心、心を落ちつける。後漢書、仲長統傳「──閨房、思老氏之玄虛、呼吸精和、求至人之彷彿」=安心。

【安車】 アンシヤ 

坐乘の小さきくるま。老人又、女子の用とす。曲禮「大夫七十而致事(中略)適四方、乘──」

【安車蒲輪】 アンシヤホリン 

蒲輪とはかばといふ草にて車輪を包み、輪轉ずるも甚左しくゆれざるやうにせしもの、老人の待遇を厚くする義。漢書、儒林傳「魯甲公年八十、武帝使使束帛加璧、────、駕駟迎之」

【安徐】 アンジヨ 

やすくしづか。管子「賢者──正靜、柔節先定」=安舒。

【安處】 アンシヨ 

やすんじて居る。詩、小雅「嗟爾君子、無恆──」

【安舒】 アンジヨ 

やすらかにしてしづか。漢書、匡衡傳「湛靜──者、戒于後時」=安閒。

【安綏】 アンスヰ 

やすらか。范鎭詩「方面要──」

【安靖】 アンセイ 

靖も安、やすし。ゃすらかに治まる。左、襄二七「慈和而後能──其國家」=安康。

【安靜】 アンセイ 

やすらかにしづか。後漢書、章帝紀「──之吏、悃愊無華、日計不足、月計有餘」

【安石不出如蒼生何】 アンセキイデスンバサウセイヲイカンセン 

安石は晉の謝安の字、謝安が世に出でざれば、斯の民の苦痛を如何にして救はんかといふ義〔世說、排調上〕

【安石橊】 アンセキリウ 

ざくろ。宋書、張暢傳「求甘蔗───」

【安全】 アンゼン 

やすらかに全し。後漢書、夏恭傳「擁兵固守獨──」

【安全燈】 アンゼントウ 

鑛山の坑內などにて使用する提げランブ、瓦斯の發火を防ぐため金網をかぶせしもの。

【安全瓣】 アンゼンベン 

汽鑵の破裂せざるやうに調節する爲め排出口に設けし蓋。

【安息】 アンソク 

○やすんじいこふ。詩、小雅「嗟爾君子、無恆──」○古の西域(中央亞細亞)の國名。今の波斯 べルシヤ 〔史、大宛傳〕

【安息香】 アンソクカウ 

香の名。香錄「───此乃樹脂、不宜於燒、而能發衆香」晉書、佛圖澄傳「燒───、呪願數百言」

【安息日】 アンソクジツ 

耶蘇敎徒が業を休みて宗敎上の儀式を行ふ日、神が六日閒に此世界を造り、七日目に一日休みしといふ傳說に本づく。=日曜日·禮拜日。

【安存】 アンソン 

やすらか。魏文帝賦「或暇豫──、或窮困側傾」

【安妥】 アンタ 

やすし。妥も安。宋史、岳飛傳「湖廣江浙亦獲──」=安康。

【安泰】 アンタイ 

やすらかにしてゆたか。易林「解釋倒懸、歷國──」安康·安妥。

【安宅】 アンタク 

身を處くに最も安全なる場所。仁に喩ふ。孟、公孫丑「仁天之尊爵也、人之──也」

【安宅正路】 アンタクセイロ 

安宅は仁、正路は義に喩ふ。孟、離婁「仁、人之安宅也、義、人之正路也、曠安宅而弗居、舍正路而不由、哀哉」

【安地】 アンチ 

やすらかなる地位。晉書、宣帝紀「凡物置之──則安、危地則危」

【安置】 アンチ 

一定の所にすゑおく。搜神記「──几前」=安放·安頓。

【安知必林】 アンチピリン 

醫藥の名、白色板樣の結晶にて水にとけ易し、鎭痛·殺菌·解熱等に用ふ。

【安質母尼】 アンチモニー 

もろくして白色の光澤ある金屬。鉛と合して活字を作るに用ふ。

【安著】 アンチヤク 

 國  やすらかにつく、無事に目的地に到著する。

【安帖】 アンテフ 

やすし。金史、古里甲石倫傳「表裏相應、遂獲──」=安妥·安靜·帖服。

【安堵】 アンド 

○堵は牆、人其の牆內に安んじて動搖せず。史、高祖紀「諸吏民皆──如故」○心配がない。=安心。

【安寧】 アンネイ 

○やすらか。史、周紀「天下──、刑錯四十餘年不用」=安康。○冬の異名〔爾雅、釋天〕

【安排】 アンバイ 

ほどよくならべる、程よく加減する、又按排に作る。孟郊詩「弱力謝剛健、蹇策貴──」

【安否】 アンピ 

やすらかなるか、しからざるか。禮、文王世子「今日──何如」

【安謐】 アンピツ 

やすらか。後漢書、桓帝紀「以須──」=安寧。

【安貧】 アンヒンヒンニヤスンズ 

まづしきにやすんずること。陶潛、詠貧士詩「──守賤者、自古有黔婁」

【安撫】 アンブ 

やすめなでなつはる。

【安步】 アンボ 

しづかにあゆむ。戰國齊策「晚食以當肉、──以當車」

【安民】 アンミンタミヲヤスンズ 

人民の心を安んず。書經「──則惠、黎民懷之」

【安眠】 アンミン 

やすらかにねむる。徐陵文「門前擾擾、我且──」

【安眠妨害】 アンミンバウガイ 

夜ふけてやかましく騷ぎて他人の安眠をさまたげる。

【安豫】 アンヨ 

やすらかにたのしむ。陸機詩「寤寐靡──」

【安樂】 アンラク 

やすらかにしてたのし。孟、吿子「生於憂患、而死於──」

【安樂國】 アンラクコク 

 佛  極樂淨土。佛說無量壽經「無有三途苦難之名、但有自然快樂之音、是故其國名曰安樂」

【安樂淨土】 アンラクジヤウド 

 佛  念佛の語、極樂世界をいふ。=安樂國·極樂淨土。

【安樂窩】 アンラクワ 

宋の邵康節の居所の名。宋史、邵雍傳「富弼·司馬光·呂公著諸賢、退居洛中、雅敬雍、恆相從遊、爲巿園宅、雍歲時耕稼、僅給衣食、名其居曰───、因自號安樂先生」

【安利】 アンリ 

○やすらかに都合よし。史、匈奴傳「莫不就──而辟危殆」○ 國    ヤスリ ぶあひのやすき利息。=低利。

【安祿山】 アンロクザン 

もと胡人なりしが、唐の玄宗の信任を得、陰に異圖を懷き、遂に反し、後誅せらる。

【安和】 アンワ 

やすくおだやか。宋書、樂志「文帝造四時舞、以明天下之──」=安穩。

【安如泰山 】 ヤスキコトタイザンノゴトシ 

安らかにして動かざること泰山の如し。漢書、嚴助傳「天下之安、猶泰山而四維之也」

【安如磐石 】 ヤスキコトバンセキノゴトシ 

安泰なること大石の動かすべからざるが如し。荀、富國「國安于磐石、壽於旗翼」旗翼は、星の名。陸隴其、謙守齋記「若泰山之固、磐石之安」

【居安如危】 ヤスキニヲルコトアヤフキガゴトシ 

安き時も危き時の事を忘れず、常に戒愼す。禮記「君子────、小人居危如安」

【安而不忘危】 ヤスクシヲアヤフキヲワスレズ 

安泰の時にても危急の事あらんことを思ひて、油斷せず。易、繫辭「君子─────、存而不忘亡、治而不忘亂、是以身安而國家可保也」左傳「書曰居安思危、思則有備、有備無患」

宇  

ウ [麌]

○のき(屋邊)のきした(簷下)「屋─」○やね(屋)いへ(家屋)○おほふ(蔽)○大いなり。○天地四方をいふ「寰─」「海─」「─內」○國の四方のはて(邊土)○たましひ(精神)○きりゃう、こころ(度量·品性)「器─」○はし(端)局部を指していふ「眉─」

【同宇而異體】 ウヲオナジクシヲタイヲコトニス 

萬物生を宇內に受くるは同じきも、其の形體は、異なりとの義。荀子「萬物─────」

【宇下】 ウカ 

のきした。論衡「知屋漏者在──、知政失者在草野」

【在宇下 】 ウカニアリ 

屋宇の下に在り、近く逼る義。左傳「衞在君之宇下」

【宇縣】 ウケン 

漢土の異稱。宇は宇宙、縣は赤縣神州、卽ち漢土の異名。史、秦紀「大矣哉──之中、承順聖意」=中國。

【宇內】 ウダイ 

あめのした。史、秦紀「席卷天下、包擧──」=天下。

【宇宙】 ウチウ 

天地古令の稱。淮南、齊俗「往古來今謂之宙、四方上下謂之宇」一說、天の覆ふ所を宇、地の由る所を宙といふ。卽ち天地の義〔文選、靈光殿賦、注〕

【宇宙論】 ウチウロン 

天地萬物の根本的原理を論ずる哲學。

【宇中】 ウチユウ 

天地四方の稱。淮南子「──六合、振毫之末」=宇內。

【宇量】 ウリヤウ 

器宇度量の義。晉書、武帝紀「帝──弘厚、容納讜正」

守  

①シユ [有]

②シユ [宥]

①まもる(護)身分、官職などを大切にする。○つかさどる(掌)○をさむ(收)○そなへ(防備)○もちこたへる「固─」「堅─」○位卑くして官の高きをあらはす語。韓愈、與于襄陽書「將仕郞─國子四門博士」

②まもる役人、太─は郡の長官。○古は狩に通用す「巡─」 國   ○まもる、見つめる、凝視する。○まもり、神佛の護符。○かみ、古の官名、一國の長「土佐─」○もり、子守。

【守一】 シユイツ 

○一事に心を專らにす。五代史「夫一萬事之本也、能──者可以治天下」○道家の術、事物を精思して固く之を守る義〔抱朴子〕

【守宇】 シユウ 

くにを守る。又、國土の義。左、昭四「或無難以喪其國、失其──」

【守衞】 シユヱイ 

○まもる(警衞)又、其の者。列子「人者爪牙不作以供──」○ 國  貴族院·衆議院の事務局の小役人。

【守宮】 シユキユウ 

ゐもり(蠑螈)一說にとかげ(蜥蜴)又、やもり(壁虎)漢武帝の時、端午の日に蜥蜴を取り、丹沙にて飼養し、明年の端午に搗き碎きて後宮婦人の臂に塗る、若し男子に關係すれば塗りたる痕が消え、然らざる者は赤き痣 アザ になる、故に斯く名づけたりといふ〔事文類聚〕

【守禦】 シユギヨ 

城をまもり、敵をふせぐ。國語「小國諸侯、有──之備」

【守愚】 シユググヲマモル 

智なれども愚なるが如くにする。家語「聰明睿智、守之以愚」

【守犬】 シユケン 

夜をまもるいぬ。穆天子傳「──七十」禮記、疏「──、守禦宅舍者也」

【守兼】 シユケン 

本官に拜せずして、權りに兼務する。漢書、王莽傳「縣宰缺者、數年──」=兼任·署理。

【守謙】 シユケン 

へりくだる心を守りて失はざる義。晉書、張祚傳「持盈──五十餘載」荀子「富有四海、守之以謙」

【守護】 シユゴ 

○まもる。まもり。宋史「築城壘、置官兵、──之」○ 國  ──職は源賴朝の設けし職名、警備のため國司に添へて置く。

【守宰】 シユサイ 

つかさ。かしら。謝莊文「親民之要、實歸──」

【守歲】 シユサイ 

除夜 オホミソカ に眠らずして居る。東京夢華錄「除夕夜、士庶之家、圍爐團坐、達旦不寐、謂之──」

【守雌】 シユシ 

柔弱の德を守る。老子「知其雄守其雌」雄は剛强、雌は柔弱。

【守臣】 シユシン 

一定の土地をまもる臣。諸侯をいふ。左傳「得罪於王之──」

【守身】 シユシン 

己の身を守る。孟、離婁「守孰爲大、──爲大」

【守株】 シユシユ 

舊習を守りて變通を知らず。韓非、五蠧「宋人有耕田者、田中有株、兔走觸株、折頸而死、因釋其耒、而──、冀復得兔、兔不可得、而身爲宋國笑」

【守戍】 シユジユ 

邊境をまもる。又、其の人。宋史、兵志「咸平初、秦州極邊、止置千人、分番──」

【守正】 シユセイ 

正しき道をまもる。易經、注「修仁──、久必悔消」

【守成】 シユセイ 

成りたる業をまもりて失はず。漢書、公孫弘傳「──上文」貞觀政要「唐太宗謂侍臣曰、帝王之業、草創與──孰難」

【守拙】 シユセツセツヲマモル 

拙く愚なるを守りて、分に安んずる。陶潛詩「──歸園田=藏拙。

【守節】 シユセツ 

節操をまもる。漢書「剛直──」

【守錢虜】 シユセンリヨ 

吝嗇にして錢をためる一方の者をそしる語。後漢書、馬援傳「凡殖貨財、貴能施賑、否則───耳」=守錢奴。

【守冢】 シユチヨウ 

墓もり。漢書、高帝紀「──二十家」

【守田】 シユデン 

廢田に生ずる燕麥に似たる一種の草、其の實食ふベし。みのごめ〔爾雅、疏〕

【守望】 シユバウ 

寇賊をふせぐ爲めにものみを置く。孟、滕文公「出入相友、──相助、疾病扶持」

【守備】 シユビ 

まもり、そなへ。左傳「巡大城繕──」=防備。

【守文】 シユブン 

文を守る、成法をまもりて武力などを用ひず。史、外戚傳「帝王及繼體──之君」

【守分】 シユフン 

己の分限を守る。文中子「廉者可令──、不可令進取」

【守盟】 シユメイ 

ちかひをまもる。程俱詩「惟有窮巷土、守窮如──」

【守約】 シユヤク 

身を堅くとりしまる。孟子「──而施博者、善道也」

【守令】 シユレイ 

太守と邑令と、皆民に親むの官。晉書「詔內外羣官、擧──之才」

【守刀】 マモリガタナ 

 國  護身用の短刀。=匕首。

宅  

タク [陌]

○すまひ(居室)○をる(居)其の位に居る。又、居る所の位置。○さだむ(定)書、康誥「─天命」○つかあな(墓穴)禮、雜記「卜─」

【宅憂】 タクイウ 

喪に居る義。書、說命「五──、亮陰三祀」=丁憂。

【宅宇】 タクウ 

いへ。南史、顏延之傳「器服不改、──如舊」

【徙宅而忘其妻 】 タクヲウツシテソノツマヲワスル 

古の健忘者の喩。通鑑、唐紀「昔魯哀公、謂孔子曰、人有好忘者、──────、孔子曰、又有甚者、桀紂乃忘其身、亦猶是也」

【宅券】 タクケン 

官府より其の家宅の所有者に下付する權利證、宅地券。宋史、陶敎傳「李崧自北還、因以──獻逢吉」=房契。

【宅地】 タクチ 

やしき(屋敷)枕中書「──四面」

【宅兆】 タクテウ 

はか、墓所。宅は墓穴、兆は塋域。孝經、喪親「卜其──而安厝之」

【宅里】 タクリ 

住處、むらざと。書、畢命「旌別淑慝、表厥──」

4畫

宎  

エゥ [篠]

又、?に作る

○室の東南の隅。○おくふかし(深奧)又、其の處。○風が穴を通るときおこる聲の形容。莊、齊物「─者咬者」

宏  

カウ コウ [庚]

○大いなり、閎に通ず「─大」○ひろし(廣)○おほいにす、廣くす「恢─」

【宏猷】 カウイウ 

大いなるはかりごと。晉書、樂志「──允塞」=宏謨。

【宏遠】 カウヱン 

ひろくとほし。晉書、賈充傳「雅量──」=弘遠。

【宏宏】 カウカウ 

ひろくおほいなる貌。又、おく深き貌。集異記「新宮──」

【宏綱】 カウカウ 

おほづな。孔安國文「擧其──、撮其機要」=大綱。

【宏規】 カウキ 

大いなるはかりごと。褚淵文「仰贊──、參聞神算」=宏猷·宏謨。

【宏器】 カウキ 

大いなる器量。任昉、王儉集序「希世之儁民、瑚璉之──」

【宏廓】 カウクワク 

ひろく大いなり。符載文「體岸恢峻、神機──」

【宏傑詭麗】 カウケツキレイ 

宮殿の壯大にして美麗なる義〔蘇軾、凌虛臺記〕

【宏構】 カウコウ 

大いなるかまへ、建築、又、文詞につきていふ。殷文珪詩「明堂──集良材」

【宏材】 カウサイ 

大いなるはたらき。又、其の人。晉書、郭璞傳「景純通秀、夙振──」

【宏壯】 カウサウ 

大いにして立派。水經、注「彭城築城悉以磚壘、──堅峻」

【宏詞】 カウシ 

唐代官吏を選擧するに文三篇を試みるをいふ「博學──」=鴻詞。

【宏儒】 カウジユ 

大儒。何晏賦「──碩生」

【宏碩】 カウセキ 

大學者。唐書「旁有──、講道藝文」=宏儒碩學。

【宏大】 カウダイ 

ひろく大いなり。=廣大·鴻大。

【宏達】 カウタウ 

心廣くして事理に通達する。班固賦「大雅──、於玆爲羣」=恢閎通達。

【宏誕】 クワウタン 

妄に大言して實なし。=閎誕·荒誕。

【宏池】 カウチ 

ひろきいけ。馬融文「臨乎──」

【宏長】 カウチヤウ 

ひろくながし。柳宗元文「智謀──、辯論恢奇」

【宏圖】 カウト 

遠大のはかりごと。韓愈文「啓中興之──」

【宏放】 カウハウ 

心廣くして氣ままなり。晉書「志氣──」

【宏博】 カウハク 

大いにしてひろし。史、禮書「化隆者──、治淺者褊狹」

【宏邈】 カウバク 

ひろくとほし。度量大いにして遠識あり。晉書、安平傳論「安平、風度──、器宇高雅」=宏遠。

【安富】 カウフ 

ひろくゆたかなり。晉書「文章──」

【宏溥】 カウフ 

ひろくあまねし。韓愈、元和聖德詩「周帀──」

【宏辯】 カウべン 

大いなる辯論。蘇軾、上韓太尉書「聽其議論之──」=博辯。

【宏謨】 カウボ 

大いなるはかりごと。袁宏文「遂贊──、匡此霸道」=宏猷。

【宏覽】 クワウラン 

ひろく物事を見て知る。任昉、王儉集序「──載籍」=閎覽·博覽。

宐  

宜(宀部五畫)の本字。

完  

クヮン [寒]

○まったし、まったくす(全)そなはる、缺 カケ がない「─全」「─繕」「修─」○事を畢る「─功」○たもつ(保守)○つくろふ(修繕)○かたくしてよし(堅好)孟、離婁「城郭不─」○寬(宀部十二畫)の古字。

 同訓異義 

マツタシ 完·全の別は全(入部四畫)の條を見よ。

【完好】 クワンカウ 

十分に備りて立派。葉適詩「楹桷正──」

【完舊】 クワンキウ 

もとのままを保ち守る。左、昭十五「獲一邑而敎民怠、將焉用邑、邑以賈怠、不如──」

【完給】 クワンキフ 

十分に足りそなはる。韓詩外傳「獨以──者、非力則儉也」

【完具】 クワング 

缺くる所なくそろひととのふ。周禮、註「牷體──」

【完完】 クワンクワン 

缺けたる所なき貌。韓愈詩「月形如白盤、──上天東」

【完計】 クワンケイ 

ぬけめなきはかりごと。完全の策。漢書「靡敝中國、甘心匈奴、非──也」

【完結】 クワンケツ 

まったくをはる。=完了·完成。

【完潔】 クワンケツ 

行に缺けたる所なくして心きよし。唐書「餘慶少砥礪、行己──」

【完濟】 クワンサイ 

借金を悉く返し終る、皆濟。

【完葺】 クワンシフ 

つくろひふく。唐庚詩「亭傳已──」

【完聚】 クワンシユ 

○城廓をつくろひ、人民をあつめる。左、隱、元「大叔──」○家族がうちそろひて居る。元史「親屬──」

【完成】 クワンセイ 

まったく出來あがる。=完了。

【完整】 クワンセイ 

十分にととのふ。盧思道文「器械──、貨財充寔」

【完節】 クワンセツ 

終始貞節を全うする。唐書、列女傳「中道聞其──、乃遣後妻、爲夫婦如初」

【完全】 クワンゼン 

まったくして缺けたる所なし。劉眞詩「吟詩猶覺力──」

【完全花】 クワンゼンクワ 

植物の花の萼·花冠·雄蕊·雌蕊の俱に備はるもの、桃·梅·豆類の如きもの。

【完全說】 クワンゼンセツ 

希臘のアりスドテレス等の唱へたる倫理學說、人生の目的は天賦の能力を十分に實現するにありとの說。

【完全變態】 クワンゼンヘンタイ 

蟲が仔蟲ょり蛹、蛹より成蟲と順次に三變を經る狀態。

【完善】 クワンゼン 

まったくしてよし。史記「示不如旃裘之──也」

【完納】 クワンナフ 

租稅などの負擔を殘らず納め終る。

【完備】 クワンビ 

物事が十分にそなはる。歐陽修文「首尾──、可見當時之制也」

【完膚】 クワンブ 

きずなきはだへ。唐書、劉廼傳「廼佯瘖不答、炙無──」

【完璧】 クワンベキ 

○たまをまったうす。人の物を返すにいふ。史、廉頗·藺相如傳「相如曰、願奉璧往、使城入趙、而璧畱秦、城不入、臣請──歸趙」○ 國  俗にむきずの玉の義にて、完全無缺の意に用ふ。

【完補】 クワンボ 

完全におぎなふ。元好問詩「汲冡遺編要──」

【完本】 クワンボン 

全部の卷數のそろへる書物。缺本·端本 ハホン 等の對。

【完了】 クワンレウ 

まったくをはる。=完成·完結。

宋  

ソウ [宋]

○ゐる、をる(居)○國名。周の微子の封ぜられし地、春秋十二列國の一、今の河南商邱縣。○南北朝時代の南朝の一國、劉裕を祖とし、八主五十九年にして齊に禪る。○五代の後、趙匡胤、周の禪を受けて帝と爲り、國を─と號す、十八帝三百二十年にして元に滅ぼさる。

【宋音】 ソウオン 

宋代の字音、承安以後、宋の禪僧多く歸化して、我國に傳へたるもの、行在のアンの類。

【宋學】 ソウガク 

宋の周濂溪·張橫渠·程明道·程伊川·朱熹等の說きし儒敎の哲學。(宋代其の學を奉ずる者を宋儒といふ)=性理學一程朱學·朱子學。

【宋史】 ソウシ 

四百九十六卷、五代の末の周より以來三百十七年閒の事を記す、元の托克托等、勅を奉じて撰す。

【宋襄之仁】 ソウジヤウノジン 

つまらぬなきけ。十八史略「宋襄公與楚戰、公子目夷、請及其未陣擊之、公曰、君子不困人於阨、遂爲楚所破、世笑以爲────」詳くは、左、僖二二參看。

【宋鵲】 ソウジヤク 

戰國の宋の國の駿犬の名。博物志「宋有駿犬曰鵲」

【宋儒】 ソウジユ 

宋學を見よ。=性理學者·道學者。

【宋書】 ソウシヨ 

齊の沈約の撰、六朝の宋の歷史、一百卷。

【宋朝之美】 ソウテウノビ 

朝は宋の公子にして美色あり。論、雍也「子曰、不有祝鮀之佞而有────、難乎免於今之世矣」

【宋四賢】 ソウノシケン 

韓琦·范仲淹·富弼·歐陽修。

【宋道學五先生】 ソウダウガクゴセンセイ 

周濂溪·程明道·程伊川·張橫渠·朱晦菴。

【宋濂】 ソウレン 

字は景濂、潛溪と號す。明初の大儒、文章を以て海內に名あり、明の太祖、召し見て五經の師と爲す、道德を以て太祖を輔佐す、著はす所、宋學士全集三十三卷あり。

宍  

肉(部首六畫)の古字。

國にくに肉、ししに─を用ふ。

5畫

宛  

ヱン [阮]

○まがる、まぐ(曲)かがむ(屈)○ゆづる(讓)したがふ(順)○さながら、あたかも。○さもにたり、又坐 ソゾロ に見ゆる貌。詩、秦風「─在水中央」○小さき貌。詩、小雅「─彼鳴鳩」○大─は漢代西域の國名。 國   ○あて「名─」○づつ「三っ─」

【宛宛】 ヱンヱン 

○龍の屈伸する貌。漢書、司馬相如傳「──黃龍」○柔弱の貌。庾信詩「──藤蘿垂」

【宛丘】 ヱンキウ 

○中央高きをか。爾雅「丘上有丘、爲──」○地名、伏羲神農、陳に都す、卽ち──なり、今の河南省淮陽縣。

【宛虹】 ヱンコウ 

屈曲ゼるにじ。司馬相如、上林賦「──拖於楯軒」注「宛曲之虹也」

【宛然】 ヱンゼン 

あだかも。さながら。詩、秦風「宛在水中央」注「──坐見貌」=依然。○人に讓りて避くる貌。詩、魏風「──左辟」

【宛輭】 ヱンセン 

やさしくやはらか(柔和)なる貌。柳宗元、乞巧文「文詞──、步武輕便」宛は一に婉に作る、通ず。杜牧詩「好風初婉輭」

【宛轉】 ヱンテン 

ころぶ貌。ゆるやかに舞ふ貌。やはらかに自由に動く貌。劉廷芝、代悲白頭翁詩「──蛾眉能幾時」

宜  

ギ [支]

○よし、よろし(適理)都合よし、和順なり「咸─」「便─」「適─」「權─」大學「詩云、─兄─弟」○よろしき事物。○よしとす(可)よみす(善)○うベ、うべなり(當然)○よろしく何何すべし(決定の辭)「─去」「─行」○土─は其の地の產物。○まつりの名。又、まつる。

【宜社】 ギシヤ 

土地の神をまつる。禮記「天子將出、類乎上帝、宜乎社」

【宜昌】 ギシヤウ 

地名、湖北省にあり、揚子江に臨める開港場、汽船航路の終點にして、四川省に入る咽喉に當る重鎭。

【宜春】 ギシユン 

立春をいふ。荊楚歲時記「立春日、寫──二字、貼于門庭楣枋」

【宜稱】 ギシコウ 

よきとなへ。韓偓詩「遍將──問旁人」

【宜稻】 ギタウ 

いねを植うるにかなふ。周禮、職方「靑州──」

【宜男】 ギダン 

婦人の男子を多く生む者。北史「文宣帝擧酒祝曰、新婦──、孝順富貴」

【宜男艸】 ギダンサウ 

わすれぐさの異名。草木記「萱草一名宜男、婦人懷妊佩其花生男」宜男の義によりて人の母を萱堂といふ。

官  

クヮン [寒]

○つかさ、やくにん(吏員·職責)「─吏」「大─」「高─」「文─」「武─」○やくしょ(朝廷·政府·廳署)「─府」「─衙」○おほやけ(公)漢書、蓋寬饒傳「五帝─天下」○つかふ(奉仕)○つかさどる(主·掌視)○官に任ずる。禮、王制「論定然後─之」○耳目鼻口などのはたらき「五─」「感─」孟、吿子「耳目之─」

【官位】 クワンヰ 

天子より授けらるる位。六韜「授──」

【官遊】 クワンイウ 

官吏となり、又官命を帶びて遠方に行きて勤める。又、其の事、宦遊の誤用。

【官印】 クワンイン 

○官吏が官署にて用ふるしるしの印。漢書、惠帝紀「佩二千石──者」○政府の印章。

【官營】 クワンエイ 

政府が交通·產業等の事をいとなむをいふ、政府の營業。=官業。

【官媛】 クワンヱン 

みやづかへする女、御殿女中。=官女·宮女。

【官家】 クワンカ 

天子。說苑「五帝以天下爲官、三王以天下爲家」

【官暇】 クワンカ 

官より賜はるやすみ。孔武仲詩「──更將碁子學」

【官衙】 クワンガ 

やくしょ。劉詵詩「馬蹄踏月趨──」=官廳。

【官海】 クワンカイ 

役人のなかま、官吏の社會。

【官廨】 クワンカイ 

役所。天中記「以──喧擾、乃於城西池小洲上、立茅茨之屋」=官署。

【官榷】 クワンカク 

政府の專賣。

【官銜】 クワンガン 

官職をいふ、銜はくつわ、馬を御するもの、轉じて事を正し治める義とす〔家語、執轡〕

【官妓】 クワンギ 

官に仕へて歌舞をなす女〔宋史、太宗紀〕=官娃。

【官紀】 クワンキ 

官廳の規律、官吏のとりしまり。唐書「神龍中、──蕩然」

【官級】 クワンキフ 

官吏の等級。漢書、注「無有差次、不得流行、故爲置──」

【官給】 クワンキフ 

官よりあてがふ。宋史、孝宗紀「貧民生子、──錢米」

【官金】 クワンキン 

官府の所有に屬する金。

【官金消費】 クワンキンセウヒ 

官吏が其の保管に屬する官金を私につかひこむ。

【官許】 クワンキヨ 

官のゆるし、政府の免許。

【官軍】 クワングン 

天子の軍。賊軍の對。抱朴子「──力不能傷」

【官契】 クワンケイ 

官府のてがた。周禮「掌──以治藏」

【官繫】 クワンケイ 

仕宦の爲めに身をつながる。白居易詩「──何因得再遊」=官拘。

【官健】 クワンケン 

官より衣糧を給する州兵。唐書、德宗紀、注「州兵給衣糧者、謂之──」

【官憲】 クワンケン 

○國家又は政府のおきて。○役人、官吏。

【官權】 クワンケン 

政府の權力。

【官戶】 クワンコ 

官府に奉仕する家。宋史、高宗紀「──勢家」

【官拘】 クワンコウ 

官職につながる。王安石詩「我方──不得往、子有閒暇宜能來」

【官差】 クワンサ 

官のつかひ。范成大詩「野人何苦赴──、符使追呼撓道懷」

【官倉】 クワンサウ 

官のこめぐら。隋書「──貯積、以擬漕運」

【官私】 クワンシ 

おほやけと、わたくしと。公事と私事と。官人と私人と。=公私。

【官使】 クワンシ 

官を授けて人をつかひ用ふ。漢書、董仲舒傳「天下之士、可得而──也」

【官事】 クワンジ 

やくしょの事務。論、八佾「──不攝」

【官人】 クワンジン 

官吏なり。後漢書、和帝紀「惟──不得於下」

【官舍】 クワンシヤ 

○やくしょ。漢書、何竝傳「性淸廉、妻子不至──」○やくたく。=官宅·官邸。

【官情】 クワンジヤウ 

官員かたぎ、役人根性、宦情の誤用。

【官守】 クワンシユ 

職務上の資任。孟、公孫丑「有──者、不得其職則去」=職責。

【官書】 クワンシヨ 

政府の公文書、公務上の書類、官文書。周禮、天官「史掌──」

【官署】 クワンシヨ 

やくしょ〔宋史、食貨志〕=官廳·官衙。

【官煮】 クワンシヨ 

政府にて鹽を製する。北史、崔昂傳「亦旣──、須斷人竈」

【官職】 クワンシヨク 

おほやけのつとめ。周禮、天官「──以辨邦治」=官事。

【官制】 クワンセイ 

官廳の組織·權限及び官吏の職務權限等を規定せし法則。

【官線】 クワンセン 

官有、又、國有の電線又鐵道。

【官租】 クワンソ 

官にをさむる租稅。陳造詩「得麥僅足償──」

【官族】 クワンゾク 

官吏となる家がら。晉書、索靖傳「累世──」

【官宅】 クワンタク 

官邸に同じ。

【官治】 クワンチ 

官府のまつりごと。韓非子「國家必有文武──、必有賞罰」

【官秩】 クワンチツ 

○ふち、官吏の俸給。史、秦紀「遂復三人──、如故」=官祿○官位。

【官長】 クワンチヤウ 

官吏のをさ。長官〔墨、尙賢〕

【爲官長拂鬚】 クワンチヤウノタメニヒゲヲハラフ 

長官にこびへつらふ故事。宋史、寇準傳「初丁謂出準門、至參政事、事準甚謹、嘗會食中書、羮汙準鬚、謂起徐拂之、準笑曰、參政、國之大臣、乃─────耶、謂甚愧之」

【官廳】 クワンチヤウ 

やくしょ。孔平仲詩「城上猶吹角、──已罷更」=官府·官衙·官署。

【官女】 クワンヂヨ 

みやづかへのをんな、宮中奉仕の女。=宮女。

【官廷】 クワンテイ 

官廳に同じ〔後漢書、李通傳〕

【官第】 クワンテイ 

官のやしき。宋史、李用和傳「假以惠寧坊之──」=官邸。

【官邸】 クワンテイ 

官より貸與する吏員のやしき。戴良詩「依稀見州郭、倉皇問──」=官舍·官宅。

【官牒】 クワンテフ 

官吏の姓名を記せしふだ。令の職員錄の類〔鮑照、謝秣陵令表〕

【官途】 クワント 

官吏たる道。又、官吏の地位職務。白居易詩「──自是心長別」=官海·官場。

【官等】 クワントウ 

官職の等級。

【官能】 クワンノウ 

生物が具有する生理上のはたらき。五官のはたらきの類。

【官房】 クワンバウ 

 國  各省及び他の官廳にて其の長官に直屬し、機密の事務を取扱ふ所「大臣──」

【官報】 クワンバウ 

○政府より發行する日刊の公報、法律·敍任等の公事を載するを主とす。○官廳又、官吏が公務のため發する電報。

【官怠於宦成 】 クワンハクワンナルニオコタル 

官は官職、宦はみやづかへ、奉仕の義、官職に居るものは、仕の漸く成るに及ぶときは、怠りの心を生じて、過失を招くをいふ。說苑、敬愼「曾子曰、─────、病加於小愈、禍生於懈惰、孝衰於妻子、察此四者、愼終如始」

【官閥】 クワンバツ 

官位の等級。唐書、張說傳「儒以道相高、不以──爲先後」

【官班】 クワンパン 

官職の位次。白居易詩「──分內外、遊處遂參差」

【官婢】 クワンピ 

罪により收められて官の下女となりし女。漢書、刑法志「太倉令淳于公罪、當刑、小女緹縈上書願沒入爲──以贖父」

【官費】 クワンピ 

官府より出す費用「──畱學生」

【官府】 クワンプ 

やくしょ。政府。周禮「以八法、治──」=官廳·官衙。

【官物】 クワンブツ 

○おほやけの物。官有物〔吳志、陳武傳)○租稅の類。

【官文書】 クワンブンシヨ 

官書に同じ。

【官幣】 クワンペイ 

 國  古は神祇官より、今は宮內省式部職より、神社に捧げらるるみてぐら。又、其の資格ある神社を──社といふ。

【官沒】 クワンボツ 

人民の所有物を政府に取り上げる、沒收する。又、古、人の自由を剝奪して官の奴隸とするにもいふ。

【官吏】 クワンリ 

やくにん。史、始皇紀「大臣不服、──尙彊」

【官立】 クワンリツ 

政府の費用にて立てる「──學校」

【官林】 クワンリン 

官有の林。

【官侶】 クワンリヨ 

同役のひと。崔融文「一霑──三十餘年」=同僚。

【官僚】 クワンレウ 

同役、官吏。南眞記「崑崙上有九府、諸仙皆是九官之──耳」

【官僚政治】 クワンレウセイヂ 

政府の權力が强大にして人民を壓服する政治。

【官祿】 クワンロク 

官位と俸祿と。張耒詩「淸閒得食學──」

【官話】 クワンワ 

北京の官場用の語。

宗  

ソウ [冬]

一音シュウ

○むね(主)をさ(長)首位の者「詞─」「─匠」「儒─」「文─」○もと(本源)晉語「禮之─也」○たっとぶ、奉じてかしらとする。史、伯夷傳「天下─周」○たっとし(尊)人の尊びて祭る者、六─は四時·寒暑·日·月·星·水旱。○のっとる(法)○はじめ。○せんぞ、祖先。又、祖先中の有德者。禮、祭法「周人祖文王─武王」○同姓、同一の祖先より分れ出でたる一族。○一っの本源より分れ出でたる流派「─敎」「禪─」○まみゆ(謁見、朝會)○種類。

【宗敎】 シコウケウ 

神佛を信仰して安心立命を得しむる敎。佛敎·耶蘇敎の類。

【宗旨】 シユウシ 

○其の宗敎の正確なる趣旨。○廣く其の事業のむねとする主義目的。○ 國  宗敎。

【宗制】 シユウセイ 

宗門宗派の制度。

【宗徒】 シユウト 

 國   ○宗敎·宗派の信仰者。=信徒。○ ムネト 主として賴みになる臣。

【宗派】 シユウハ 

宗門のわかれ。又、學藝などの流派。王十朋詩「誰分──故謗傷」

【宗門】 シユウモン 

同じ宗旨を奉ずる一派。

【宗論】 シユウロン 

宗派の優劣是非の爭論。

【宗器】 ソウキ 

主要なるうつは。左傅、注「──祭祀之器、樂器鐘鼓之屬」

【宗系】 ソウケイ 

本家のちすぢ。

【宗國】 ソウコク 

我が國に對してもとの國の稱。孟子「吾──、魯先君莫之行」

【宗子】 ソウシ 

本家をつぐ子。詩、大雅「懷德維寧、──維城」=嫡長子。

【宗祀】 ソウシ 

たふとびまつる。孝經「昔者周公郊祀后稷以配天、──文王於明堂、以配上帝」漢書、兒寬傳「──天地、薦禮百神」

【宗師】 ソウシ 

尊ぶべき師匠。漢書、朱浮傳「博士之官、爲天下──、使孔聖之言、傳而不絕」

【宗周】 ソウシウ 

三代の周の創業の地、天子の在す所なれば宗といふ、今の陝西省西安府。又、周の異稱。書、多方「王來自奄、至于──」

【宗室】 ソウシツ 

○せんぞのおたまや。詩、召南「于以奠之、──牖下」○一族の總本家。戰國策「周、天下之──也」○君主の一族。後漢書、鄧皇后紀「錄功臣睦──」

【宗臣】 ソウシン 

最も重き家來。漢書、蕭何曹參傳「爲一代──」

【宗親】 ソウシン 

同母の兄弟。史、五宗世家「同母者爲──」=同胞。

【宗社】 ソウシヤ 

○宗廟と社稷と。五代史、晉家人傳「安──」=廟社。○轉じて國家の義。

【宗社黨】 ソウシヤタウ 

滿洲人が淸朝を恢復する目的にて結びし黨派。

【宗匠】 ソウシヤウ 

○大工のかしら(棟梁)袁宏、三國名臣序贊「──陶鈞、而羣才緝熙」=工師。○師宗たる者〔隋書、儒林傳〕○ 國  俳諧·茶道·插花などの師。

【宗主】 ソウシユ 

人の尊びて歸仰する義。晉書、羊祜傳「明德通賢、國之──」

【宗主權】 ソウシユケン 

一國が他國を支配する權利。日韓倂合以前に日本が朝鮮を支配せし權の類。

【宗正寺】 ソウセイジ 

唐代、皇族の屬籍を掌る役所。唐書、百官志「───卿一人、少卿二人、掌天子族親屬籍」

【宗戚】 ソウセキ 

みうち。一門。宋書、臧質傳「權倖之徒、慴憚──」=宗族。

【宗族】 ソウゾク 

一家、親族、一門。周禮、春官「以飮食之禮、親──兄弟」

【宗戴】 ソウタイ 

宗主としていただく。北史「虞夏西周始皆諸侯、及聖德旣隆、萬國──」

【宗長】 ソウチヤウ 

一族のかしら。相鶴經「鶴者、羽族之──」謝靈運詩「侯伯咸──」

【宗祧】 ソウテウ 

遠き祖先のおたまや〔左、昭四〕=宗廟。

【宗伯】 ソウハク 

禮儀神祇の事を掌る官名、古の六卿の一。周禮「──主禮之官」

【宗廟】 ソウベウ 

○祖先のおたまや。廟は貌、祖先の容貌を髣髴する所以。書、太甲「社稷──、罔不祇肅」○轉じて國家。又、社稷の義。

【宗盟】 ソウメイ 

宗室にて結ぶちかひ。左傳「周之──、異姓爲後」

【宗老】 ソウラウ 

同族中の尊長者。梁書、蕭琛傳「高祖每朝讌、呼琛爲──」

宕  

タウ [漾]

○すぐ、度を超える。蕩に通ず「跌─不羈」○いはや(洞屋)○─戶はいしや(石工)集韻「采石工謂之─戶」

宙  

チウ [宥]

○そら、あめ、大空(天)「宇─」○無限の時閒。淮南、齊俗「往古來今謂之─」○ 國  ちう、地を離れし所、空中「─返り」「─乘」

定  

テイ ヂャウ [徑]

○さだむ、さだまる「平─」「安─」きめる(決)「改─」「決─」「確─」○易 カハ らず、變動せず「─論」「─義」○さだめて、きっと、必ず。史、項羽紀「陳王─死」○おく(奠)○とどまる(止)○やすし(安)安んずる。曲禮「昏─而晨省」○しづまる(靜)○ただし(正)○こる(凝)○ひたひ(額)○すき(鋤)の屬。○星の名。=營室星。○ 佛    ヂヤウ あらゆる念慮を斷ち、心を靜にする修業「入─」○ 國  さだめ(規約)

【定業】 ヂヤウゴフ 

 佛  前世よりさだまれるむくい、定まれる業報。

【定石】 ヂヤウセキ 

圍碁にて一定の法ある打方の石。

【定詰】 ヂヤウヅメ 

 國  役所などに始終つめきりてある。又其の人。

【定紋】 ヂヤウモン 

 國  其の家にさだまれるもんどころ。

【定員】 テイヰン 

定まれる人數。齊書「正樂──、唯置三百八十人」

【定價】 テイカ 

さだまりたるあたひ「──表」

【定格】 テイカク 

事物のきまり。南史、齊豫章王嶷傳「明立──」

【定額】 テイガク 

さだまれるたか。五代史、劉審交傳「租有──、而天下比年無閑田」

【定家流】 テイカリウ 

鎌倉時代の歌人藤原定家のはじめたる書風。

【定期刊行】 テイキカンカウ 

雜誌其の他の圖書類を一定の時期に印刷刊行する。=定時刊行。

【定期取引】 テイキトリヒキ 

 國  取引所にて三箇月以內を定期として履行せらるる賣買契約。

【定期預金】 テイキヨキン 

 國  銀行にて六箇月又は一年等期限を定めてあづかる金。

【定義】 テイギ 

或る事物に關する槪念の範圍を說明するもの。= 俗  界說。

【定軍山】 テイグンサン 

陝西省沔縣の東南に在り、山下に諸葛亮を葬る、山に因りて墳をつくる。

【定款】 テイクワン 

款はさだめ、社團法人(會社の類)の組織及び其の業務執行上の規定。

【定見】 テイケン 

定まれる意見、易 カハ らざるみこみ。

【定刻】 テイコク 

さだめたる刻限。

【定策功】 テイサクノコウ 

天子を擁立せしいさを。策は竹簡、天子を立つる事を策に書して宗廟に吿げる故にいふ。漢書、張安世傳「宣帝立、有───、拜大司馬」

【定產】 テイサン 

定まれる產業。宋史、食貨志「民有──、產有定稅」=恆產。

【定日】 テイジツ 

豫め定めたる期日。

【定情】 テイジヤウ 

夫婦、又男女の契りを結ぶ。曹植詩「與君初──、結髮恩愈深」

【定準】 テイジユン 

きまりたる標準。李白詩「風水無──」

【定處】 テイシヨ 

一定の處にをる。詩經「自西徂東、靡所──」

【定數】 テイスウ 

きまりたる運命。劉峻詩「榮悴有──、天命有至極」

【定省】 テイセイ 

袵席 ネドコ を定め安んじ、又安否をかへりみ問ふ。朝夕よく父母に事ふる義。曲禮「凡爲人子之禮、冬溫而夏凊、昏定而晨省」=昏定晨省。

【定說】 テイセツ 

定論に同じ。

【定單】 テイタン 

 俗  約定書。

【定鼎】 テイテイテイヲサダム 

都をさだめる。鼎は夏の禹王の九州の金を集めて鑄造せしもの、王位繼承の寶器。左、宣三「成王──于郟鄏」=奠都·奠鼎。

【定評】 テイヒヤウ 

さだまりたる批評、世人が一般に認めたるしなさだめ。

【定分】 テイブン 

自然に定まれる運命。杜甫詩「浮世有──、饑餓豈可逃」

【定本】 テイホン 

誤を訂正せし書物。李潤、校定杜工部集序「得御府──校讎、益號精密」

【定命】 テイメイ 

○定まれる運命。○ 佛    ヂヤウミヤウ さだまりたるいのち。

【定命論】 テイメイロン 

人類の意志行爲は豫め一定せられて、自ら選擇するの自由なしとする哲學說。=定道論。

【定理】 テイリ 

さだまりたるだうり。

【定論】 テイロン 

動かざる議論。不易の論。淮南子「士有一定之論、女有不易之行」荀子「百姓曉然皆知夫爲善于家而取賞于朝也、爲不善于幽而蒙刑于顯也、夫是之謂──」

宓  

①ビツ [質]

②フク [屋]

①やすし(安)○とどまる(止)○しづか(靜)○だまる(默)○ひそか(祕)

②人の名。伏に通ず「─羲」

【宓妃】 フクヒ 

伏羲氏の女、洛水に溺死し、洛水の神と爲る。司馬相如賦「若夫靑琴──之徒、絕殊離俗、妖冶嫻都」

6畫

宦  

イ [支]

○室の東北の隅。○やしなふ(養)

宥  

イウ [宥]

○ゆるす(寬)「寬─」「赦─」「─免」なだむ、ゆるめる。○たすく(助)○ひきでもの、酒筵にて客に物を贈りて興を助けるもの。○音樂を以て食を勸める。=侑。○ひろくふかし(宏深)

 同訓異義 

ユルス 宥·赦·釋·聽·許·免等の別は赦(赤部四畫)の條を見よ。

【宥減】 イウゲン 

罪を輕減する。

【宥坐之器】 イウザノキ 

宥は右に通ず、坐右に置きて自ら戒とするうつは〔荀、宥坐〕=攲器。

【宥赦】 イウシヤ 

罪をゆるす。=宥免·赦宥·赦免。

【宥恕】 イウジヨ 

大目に見てゆるす。王珪文「──刑獄、懷保鰥寡」=寬宥·宥免。

【宥貸】 イウタイ 

罪をゆるす。魏武帝文「謂其能改、復卽──」

【宥免】 イウメン 

罪をゆるす。北史、郭祚傳「不問輕重、皆蒙──」=宥恕·宥原。

?  

宎)宀部四畫)に同じ。

客  

カク キャク [陌]

○まらうど(賓)主の對「賓─」「來─」「弔─」○廣く己の相手となるもの「詩─」「碁─」轉じて敵軍。李華、弔古戰場文「主─相搏、山川震駭」○たびびと「旅─」「行─」たび「─遊」○ゐさふらふ、寄食者「食─」○戰國時代、他國より遊說に來りし辯士「說─」史、李斯傳「請一切逐─」○すでに去りしことをあらはす語「─歲」○哲學上、我が意識に對して外界の義「─觀」

【客遊】 カクイウ 

他鄕に客となりてあそぶ。孟浩然詩「惜爾懷其寶、迷邦倦──」

【待客】 カクヲマツ 

おきゃくをもてなす。史、孟嘗君傳「──坐語」

【客氣】 カクキ 

からげんき、血氣の勇にて眞の男にあらず〔左、定八〕

【客寓】 カクグウ 

他鄕のかりずまひ。=寄畱·寓居·僑居。

【客遇】 カクグウ 

賓客の禮を以てもてなす。

【客館】 カククワン 

やどや〔左傳〕=客舍。

【客觀】 カククワン 

哲學上の語、自己の對象となる一切の外物。主觀の對。

【客卿】 カクケイ 

他國より來りて卿相の位に在るもの。史、范雎傳「拜范雎爲──」

【客月】 カクゲツ 

あとげつ(先月)

【客戸】 カクコ 

新に附きて他より移り住みし人戶。唐書「此州若增──、彼郡必減民人」=客寓·寓居。

【客語】 カクゴ 

○論理學の命題中にて一般槪念を表はす語、例へば石炭は礦物なりの礦物といふ語の類。=賓辭。○文法上、他動詞の目的となる語。主語の對。

【客恨】 カクコン 

他國の客となり居るうらみ。杜牧詩「──縈春細、鄕愁壓思繁」=客愁。

【客歲】 カクサイ 

こぞ、去年。=昨年·客年。

【客作】 カクサク 

人に雇はれてはたらく。漢書、匡衡傳「乃與──、而不求價」

【客棧】 カクサン 

 俗  やどや。=旅館·客店。

【客子】 カクシ 

たびびと。史、范雎傳「得無與諸侯──俱來乎」=遊子。

【客死】 カクシ 

旅行先にて死す、異境にて死す。

【客次】 カクジ 

○來客に應接する所。五代史「進奏官至──通名」○旅客となりて宿する所、やどや。

【客使】 カクシ 

外國より來れる使者。左傳「無憂──」

【客思】 カクシ 

たびのおもひ。李端詩「廻潮動──」=客心·旅思·客情。

【客愁】 カクシウ 

たびのうれへ。儲光羲詩「河州多靑草、朝暮增──」=客恨。

【客心】 カクシン 

たびの心。張說、蜀道後期詩「──爭日月、來往預期程」=客思·旅情。

【客舍】 カクシヤ 

やどや。王維詩「──靑靑柳色新」=旅舍·旅館。

【客車】 カクシヤ 

○客の乘るくるま。禮記「──不入大門」○鐵道にて旅客用の車。貨車の對。

【客情】 カクジヤウ 

たびごころ。湛方生詩「寤言賦新詩、忽忘覊──」=客心·旅思。

【客星犯帝座 】 カクセイテイザヲヲカス 

いやしき士が至尊ををかすに喩ふ。後漢書、逸民傳「引嚴光入、論道舊故、相對累日、因共偃臥、光以足加帝腹上、明日太史奏、─────甚急、帝笑曰、朕故人嚴子陵共臥耳」

【客船】 カクセン 

たびのふね、旅客を載せたる舟。張繼詩「夜半鐘聲到──」

【客體】 カクタイ 

法律上の語、意志又は行爲の目的物、例へば國土又は臣民は國家の──たる類。

【客地】 カクチ 

旅行さきの地。張祜詩「──多逢酒」=他鄕。

【客廳】 カクチヤウ 

 俗  客室、應接のへや。

【客店】 カクテン 

 俗  やどや。=旅館·客棧。

【屬客】 カクニシヨクス 

屬は付なり、客に勸める。蘇軾、前赤壁賦「擧酒──、誦明月之詩、歌窈窕之章」

【客坊】 カクバウ 

やどや。玉海「寓止于──」

【客窆】 カクヘン 

他鄕にありて死して其の地に葬らる。唐書、褚遂良傳「遂良──愛州」

【客傭】 カクヨウ 

客作に同じ。後漢書「公沙穆遊太學、無資糧、乃變服──」

【客臘】 カクラフ 

陰曆にて去年の十二月、臘は冬至の祭、轉じて十二月の異名とす。

【客裏】 カクリ 

たびにあるあひだ。杜甫詩「──何遷次、江邊正寂寥」=客中。

【客路】 カクロ 

たびのみち。陶翰詩「──再經春」

【客分】 キヤクブン 

 國  おきゃくとして待遇せらるる身分。又、其の人。

宦  

クヮン [諫]

○つかふ(仕)つかへまつる(奉仕)「仕─」つかへ、みやづかへ。○つかさ(官職·臣隸)「名─」「巧─」「微─」○去勢して內廷に仕ふる小吏「─官」「─者」=奄人。○まなぶ(學)

【宦遊】 クワンイウ 

仕宦して他鄕に住む。史、司馬相如傳「長卿久──」

【宦學】 クワンガク 

○上に仕ふる道を學ぶ。曲禮「──事師、非禮不親」○仕宦する。

【宦官】 クワングワン 

去勢して宮中の奧向に仕ふる小吏。後漢書、宦者傳論「中興之初、──悉用閹人」閹は精氣の閉ぢたる者。

【宦寺】 クワンジ 

宦官の役所。轉じて、宦官の義とす。唐書、李石傳「方是時──氣盛凌暴朝廷」

【宦者】 クワンジヤ 

宦官に同じ。

【宦情】 クワンジヤウ 

出仕を思ふ情。又、役人かたぎ。晉書、阮裕傳「吾少無──」

室  

シッ [質]

○いへ(家)すまひへ住居)「宮─」○へや(部屋)ゐま「居─」「臥─」「寢─」堂の後 ウシロ 論、先進「未入於─」○つま(妻)曲禮「三十曰壯、有─」「正─」「側─」○家族「─家」○刀のさや(鞘)「刀─」○むろ「石─」「土─」○はかあな(壙穴)詩、唐風「百歲之後、歸于其─」○星の名、はつゐ、二十八宿の一。

【築室東坡 】 シツヲトウバニキツク 

蘇軾が室を東坡に築きしをいふ。宋史、蘇軾傳「以黃州團練副使安置、軾與田父野老相從溪山閒、────、自號東坡居士」

【室家】 シツカ 

家族。詩、周南「之子于歸、宜其──」

【室堂】 シツダウ 

すまゐ、堂は前に在り、室は後に在り。禮記「斂枕簟、灑掃──」

【室於怒巿於色】 シツニイカレバシニイロス 

室內にて怒るときは、其の顏色を巿人にしめす。怒をうつす義、やつあたり、怒於室色於巿一の倒裝。左、昭十九「諺所謂──────者、楚之謂也」

【入室】 シツニイル 

學問技藝の蘊奧を極むるに喩ふ。論、先進「門人不敬子路、子曰、由也升堂矣、未入於室也」に本づく。

【入室操矛】 シツニイリテホコヲトル 

其の人の道を以て、反りて其の人を害するをいふ。後漢書、鄭玄傳「玄字康成、時任城何休好公羊學、著公羊墨守·左氏膏肓·穀梁廢疾、玄逎作發墨守·鍼膏肓·起廢疾、休見而歎曰康成入吾室、操吾矛而伐我乎」

【室如縣罄 】 シツハケンケイノゴトシ 

室中に一物もなきこと罄をかくるが如し、資糧のつきたるをいふ。縣は懸、罄は磬に通ず。左、僖二六「────、野無靑草」

【室老】 シツラウ 

家老。又、國老。

【室廬】 シツロ 

いへ、室屋。史、平準書「──輿服、僭于上無限度」=室第。

宣  

セン [先]

○のぶ、しく(布)ひろめる、散ずる、通ずる、しめす(示)○のたまふ、おほせ、みことのり(敕)○あまねし(徧)○めす(召)○のべつくす(盡)書簡の末に「不─」と書くは「不盡」の義。○あきらか、あきらかにす(昭·明)發揚する。○─髮は頭髮白黑雜る。○大いさ六寸の璧。=瑄。

 同訓異義 

ノブ 宣·述·陳·布·展·舒等の別は述(辵部五畫)の條を見よ。

【宣窯】 センエウ 

明の宣德閒、官窯(官營のかま)にて製する所の陶器、霽紅を以て最佳とす。

【宣演】 センエン 

のべひろめる。何承天文「──道心」

【宣洽】 センカフ 

ひろくうるほふ。張華文「大和──、通于幽冥」

【宣化】 センクワ 

德化を下に布く。抱朴子「明哲以保身、──以濟俗」

【宣喚】 センクワン 

君命を奉じてよぶ。費氏宮詞「小毬場近曲池頭、──勳臣試打毬」

【宣下】 センゲ 

○詔を下す。後漢書、明帝紀「──郡國」○ 國  臨時に宣旨(任官の命令)が下る。又、其の事。

【宣敎】 センケウ 

をしへをひろむ。又宗敎を說きひろめる「──師」

【宣言】 センゲン 

あまねく布き示す。左、桓二「先──曰、司馬則然」

【宣告】 センコク 

○あまねくつげる。左、襄二八「──後人、無怠於德」○裁判の言渡、判決の申し渡し。

【宣旨】 センシ 

○天子の命令。又君命を傳達する。宋書、柳元景傳「──慰勞」○ センジ   國  古、任官の勅を上卿より外記に傳へて下知する。又、其の下知。

【宣示】 センシ 

のべしめす。宣布して衆に示す。魏書、高祖紀「──品令」

【宣紙】 センシ 

 俗  畫仙紙 グワセンシ 

【宣章】 センシヤウ 

のべあきらかにす。漢書、張安世傳「──盛德、以示天下」=宣昭。

【宣誓】 センセイ 

ちかひをのべ明かにする、ちかひを立てる「──式」

【宣政殿】 センセイデン 

唐代に四夷の朝貢する者を引見せし宮殿。韓愈、論佛骨表「宣政一見」

【宣召】 センセウ 

君命を以て臣を召し見る。宋會要「遞宿學士院、朝夕──、商榷古今」

【宣昭】 センセウ 

ひろく世に布きて明かにす。左傳「──令名」韓愈詩「聖賢相遇少、功德令──」

【宣戰】 センセン 

開戰の理由を天下に明示する。

【宣蘚】 センセン 

こけの一名。述異記「苔謂之澤葵、又名重錢、亦呼爲──」

【宣哲】 センテツ 

事理に明かにしてさとし。宜は通。詩經「──惟人、文武惟后」

【宣傳】 センデン 

命令を下民に傳へる。北史「──文武號令」

【宣騰】 セントウ 

上意をのべあらはす。晉書、王囘傳「──詔旨」=宣揚。

【宣德】 セントク 

○明の宣宗の年號、時に賢臣に任じ海內大に治まる、世に──の治と稱す。○宣德年中に作りし陶器·銅器の名。

【宣父】 センフ 

孔子をいふ。唐書、禮樂志「貞觀十一年、詔尊孔子爲──」=宣尼。

【宣付】 センフ 

君命を以て下げわたす。付は交付。宋史「伏望──史館」

【宣布】 センブ 

廣くのべしく、あまねく布き及ばす。周禮、小司寇「乃──四方」=徧布。

【宣命】 センメイ 

○みことのり。みことのりす。晉書、何曾傳「──遣使」○ センミヤウ   國  神事·改元·贈位などの敕を國文にて記せしもの。

【宣揚】 センヤウ 

のべあげる、廣く天下にあらはす。漢書、匡衡傳「材駑無以輔相善義──德音」

【宣翼】 センヨク 

道を以て君主をたすける。晉書、汝南王亮傳「──之績、顯于本朝」

【宣爐】 センロ 

明の宣宗の宣德年閒に鑄たる火鉢。宣德爐の略。行廚集「宣爐明宣德年製者曰──」

7畫

宴  

エン [霰]

醼·讌·燕に通ず

○さかもり(醼)さかもりする、酒食を以て饗應する「賀─」「遊─」「饗─」「酺─」「曲水─」○たのしむ、たのしみ(樂)○やすし、やすんず(安)くつろぎやすむ(息)易、隨卦「君子以嚮晦、入─息」

【宴安酖毒】 エンアンチンドク 

宴安は何事も爲さずして徒に遊びたのしむをいふ。其の禍は酖毒(鴆といふ毒鳥の羽を酒にしたして飮めば人を殺す)に等し。左、閔元「────、不可懷也」

【宴宴】 エンエン 

樂む貌。詩、衞風「總角之宴、言笑──」

【宴筵】 エンエン 

さかもりのむしろ〔舊唐書、褚亮傳〕=宴席。

【宴歌】 エンカ 

さかもりしてうたふ。北齊書、遊道傳「朝夕──」

【宴犒】 ヱンカウ 

さかもりしてねぎらふ。五代史「──盡歡」

【宴酣】 エンカン 

さかもりが半になる、酣はたけなは。宋之問詩「──詩布澤」=宴闌·酒酣。

【宴喜】 エンキ 

酒宴してたのしみよろこぶ。詩經「魯侯──」

【宴饗】 エンキヤウ 

酒もりして客をもてなす。晉書、樂志「──有樂、所以敬賓」

【宴居】 エンキヨ 

閑暇無事の時。黃庭堅詩「滿眼雲山奉──」

【宴曲】 エンキヨク 

 國  鎌倉時代に、宴席などにて謠ひしもの、催馬樂、朗詠などより出づ。

【宴會】 エンクワイ 

きかもり。世說「數──以悅衆心」

【宴見】 エンケン 

宴は安なり、帝王のおひまの時にまみゆる。漢書、京房傳「房嘗──」

【宴娛】 エンゴ 

さかもりし、又音曲歌舞などしてたのしむ。唐書「夜──、晝決事」朱熹文「起居飮食、──談笑」=宴樂·燕娛。

【宴語】 エンゴ 

さかもりしてたのしく語る。又、うちとけてはなす。宴一に燕また讌に作る。國語「飲酒──相說也」沈約、郊居賦「或列席而賦詩、或班觴而──」

【宴集】 エンシフ 

さかもりして集まる。晉書、杜預傳「因──、醉臥齋中」

【宴席】 エンセキ 

さかもりの席、酒宴の席。

【宴餞】 エンセン 

さかもりして見送る。送別會を開く。梁簡文帝詩「──臨華池」=飮餞。

【宴息】 エンソク 

打ちくつろぎ休む。字解參看。=安息。

【宴殿】 エンデン 

酒宴をひらく爲めのごてん。宋史「西有集英殿、──也」

【宴樂】 エンラク 

さかもりしてたのしむ。易經「君子以飮食──」

【宴闌】 エンラン 

さかもりがたけなは。虞世南賦「嘉客旣醉、高宴將闌」=宴酣。

家  

カ ケ [麻]

○いへ、すまひ、すみか、住居「─屋」「─宅」「山─」「酒─」「富─」「貧─」○やから(一族)○をつと(夫)孟、滕文公「女子生而願爲之有─」○己の所有物、妻子財產等。○大夫の領地。又は大夫。左、襄二六「大夫皆富、政將在─」○學問の流派。又は其の學者、著作者「法─」「道─」「墨─」「諸子百─」○いへす、住居する。○姑と同音義、大─ タイコ は大姑に同じく女の尊稱「曹大─」

【家鴨】 カアフ 

あひる。埤雅「野鴨爲鳧、──爲鶩」

【家榮】 カエイ 

いへのさかえ。韓愈文「祿仕而還、以爲──」

【家誡】 カカイ 

家のいましめ。唐書「乃集古今──、爲屛風」

【家格】 カカク 

いへがら(家柄)

【家學】 カガク 

其の家に代代つたはれる學問。北史「江式少專──」

【家規】 カキ 

家憲に同じ。韓愈詩「諸郞皆秀朗、幾能守──」

【家畜】 カキウ 

いへに飼ふ動物。今は誤りて畜をチクと讀む(畜の音チクは儲畜の義)大學「伐冰之家、不畜牛羊」

【家給】 カキフ 

戶ごとに足る。漢書、貢禹傳「天下──人足、頌聲幷作」

【家給人足】 カキフジンソクイヘイヘキフシヒトビトタル 

給も足、家富み人稠く、世運隆昌なる義、前條參看。

【家禽】 カキン 

いへに飼ふ烏類。梁書、何胤傳「有異鳥、如鶴紅色、集講堂、馴狎如──焉」

【家鄕】 カキヤウ 

ふるさと。李中詩「夜來魂夢到──」=故鄕。

【家居】 カキヨ 

仕宦せずして家に居る。史記「李廣、──數歲」

【家具】 カグ 

いへのだうぐ。晉書、王述傳「初述家貧求試、宛陵令頗受贈遺、而修──」孟郊詩「借車載──」=家什·家財。

【家君】 カクン 

ちちの敬稱。墨、尙同「──發憲布令」=父君。

【家訓】 カクン 

祖先ののこせし一家のをしへ「顏氏──」後漢書、邊讓傳「髫齔夙孤、不盡──」=庭訓·家誡。

【家兄】 カケイ 

己のあに。晉書、謝幼度傳「下官不堪其憂、──不改其樂」

【家計】 カケイ 

一家のくらしむき。一家の生計。岑參詩「俸錢儘供客、──常淸貧」

【拜家慶 】 カケイヲハイス 

子が親に謁するをいふ。孟浩然詩「明朝───、須著老萊衣」

【家業】 カゲフ 

一家のなりはひ。漢書、楊王孫傳「楊王孫者、孝武時人也、學黃老之術、──千金」

【家眷】 カケン 

家族に同じ。

【家憲】 カケン 

一家のおきて。=家規。

【家公】 カコウ 

○己の父の敬稱。列、黃帝「──執席」=家君·家嚴。○祖父の敬稱。後漢書、注「子孫稱其祖父、曰──」

【家國】 カコク 

○家と國と、又、國家。○ふるさと。=故里·故鄕·故國。

【家財】 カザイ 

家のたから。=家產。

【家祭】 カサイ 

其の家の先祖祭。陸游、示兒詩「王師北定中原日、──無忘吿乃翁」

【家相】 カサウ 

 國  家の構造·方角·位置などを考へて吉凶の運勢を判斷する。

【家藏】 カザウ 

いへにをさめ置く。又、其の物。唐書、于休烈傳「韋述以其──國史百三十篇上獻」

【家山】 カザン 

ふるさと。=故山·故鄕。

【家山藥】 ガザンヤク 

やまのいも。=薯蕷·玉公掌。

【家產】 カサン 

いへのしんだい。晉書「和嶠──豐富、擬于王者」

【家史】 カシ 

一家の記錄。隋書、許善心傳「──舊書在、後焚蕩、今止有六十八卷」=家乘。

【家私】 カシ 

○一身一家のわたくしごと。王粲詩「內不廢──」=家事。○家財に同じ。續漢書「──錢至數千萬」

【家事】 カジ 

一家の私事。左傳「夫子之──治」

【家貲】 カシ 

家のたから。唐書「臣──、不滿千錢」

【家嗣】 カシ 

よつぎ。史記「卒傳──、或敍彝倫」

【家資】 カシ 

身代 シンダイ 一家の財產。──分散は法律上債務を果さしむる爲めに裁判所が下す宣吿、身代限。

【家慈】 カジ 

己のはは。己の父を家嚴といふの對。

【家什】 カジフ 

家の常用の什器。其の數一にあらず、故に什といふ〔史記、注〕=家具。

【家集】 カシフ 

其の家家の歌のみを集めたるもの。紀貫之集の類。=別集。

【家人】 カジン 

○いへの內の者。史記「惠帝與齊王燕飮、亢禮如──」○易の卦の名。易經「──利女貞」○奴僕をいふ。漢書、轅固傳「此──言耳」○ ケニン   國  いへのこ、譜代のけらい。

【家信】 カシン 

國元よりのおとづれ。北史、劉潘傳「一日擧身楚痛、尋而──至云、其母病」=家書·鄕信。

【家常茶飯】 カジヤウサハン 

次條に同じ〔五燈會元〕

【家常飯】 カジヤウハン 

有り合せの御飯の義、轉じて普通のなんでもなき事に喩ふ。獨醒雜誌「───好喫」

【家常話】 カジヤウワ 

 俗  普通の珍らしからざる話。

【家主】 カシユ 

○一家の長。墨子「──獨知愛其家、而不知愛人之家」○やぬし、所有家屋を人に貸して家賃をとる者。

【家從】 カジユウ 

 國  皇族、又華族の家臣の名。家扶の次位。

【家衆】 カシユウ 

家族に同じ。左、襄四「羿猶不悛、將歸自田、──殺而亨之、以食其子」

【家塾】 カジユク 

○周代、二十五家を閭(里)とな」、同じく一巷に居る、閭の門側の堂を塾といひ、里中の子弟を敎育する所とす。禮、學記「古之敎者、家有塾」○ 國  個人の家に設けたる學舍。

【家書】 カシヨ 

國元の家よりのおとづれ。杜甫詩「烽火連三月、──抵萬金」

【家緖】 カシヨ 

家の事業。宋史、趙安仁傳「──寢替、安仁屢以金帛、濟之」

【家乘】 カジヨウ 

いへの記錄。老學庵筆記「黃山谷有日記、謂之──」=家史。

【家數】 カスウ 

學藝などの一家を成せる人。墨、尙同「天下爲──也甚多」

【家政】 カセイ 

一家のくらしむき。又、とりしまり。釋無可詩「唯有傳──、家風重發揮」

【家政學】 カセイガク 

一家の治め方を硏究する學問、家事に關する學問。

【家聲】 カセイ 

いへのほまれ。司馬遷、報任安書「李陵旣生降、頹其──」=家名。

【家祖】 カソ 

己の祖父。顏氏家訓「潘尼稱其祖、曰──」

【家蔬】 カソ 

てづくりの菜。劉長卿詩「畱客饋──」

【家族】 カゾク 

やから、一族。張籍詩「文揚繼續成三代──輝華在一身」

【家屬】 カゾク 

家內の人人。史、盧綰傳「燕王詐論他人、以脫張勝──」

【家尊】 カソン 

ちちの敬稱。晉書「謝安問王獻之曰、君何如──」

【家大人】 カダイジン 

己の父の敬稱〔類書纂要〕=家君·家嚴。

【家道】 カダウ 

○家人のふむべき道。易、家人「父父、子子、兄兄、弟弟、夫夫、婦婦、而──正」○家のくらしむき。南史、徐孝克傳「陳亡隨例入長安、──壁立」

【家宅】 カタク 

いへやしき、すまひ。──侵入 カタクシンニフ は故なくして他人の住宅に侵入する義。

【家長】 カチヤウ 

一家のかしら。一家の主人。墨、天志「處家得罪於──」

【家長權】 カチヤウケン 

戶主の權利。

【家釀】 カチヤウ 

自家にて造りたる酒。晉書「見何次道飮、使人欲傾──」

【家中】 カチユウ 

 國  昔時、大小名の家來。

【家庭】 カテイ 

いへ、一家のうち。王僧孺文「事顯──、聲著同族」=家門。

【家第】 カテイ 

すまひ、いへ〔唐書、孫偓傳〕=家邸。

【家傳】 カデン 

○其の家に代代つたはる。陳書「──賜書數千卷」○其の家の記錄〔歐陽修、王彥章畫像記〕=家乘。

【家僮】 カドウ 

しもべ、下男下女。史、貨殖傳「卓王孫──八百人」

【家督】 カトク 

○長子の稱。一家を監督する義。史、趙世家「家有長子曰──」○ 國  家のあとめ、父の後を續ぐを──相續といふ。

【家內】 カナイ 

○いへのうち。又、家族。=家人。○ 國  己の妻、にようばう。

【家寶】 カハウ 

家に傳はりたるたから。

【家法】 カハフ 

○其の家の掟。淸波雜誌「祖宗──」=家風·家規·家約。○家傳の祕法。

【家扶】 カフ 

 國   ○皇族の會計を取扱ふ官吏。○華族の家事を取扱ふ者。家令の次位。

【家鳧】 カフ 

あひる。=舒鳧。

【家風】 カフウ 

いへのならはし。庾信、賦序「潘岳之文彩、始述──」

【家福】 カフク 

いへのしあはせ。晉書「上望撫淸氛穢、下冀保寧──」

【家廟】 カベウ 

わが先祖のたまや。南史、張緖傳「緖吐納風流、見者肅然、如在──」=祖廟。

【家母】 カボ 

はは。顏氏家訓「陳思王、稱其母曰──」=慈母·家慈。

【家務】 カム 

いへのつとめ。南史「張率嗜酒、不事──」

【家門】 カモン 

○大夫の家。左傳「政在──、民無所依」○家族をいふ。南史「政可南行以存──耳」=家庭。

【家老】 カラウ 

○大夫などの家臣のをさ。晉語「吾子之──」=家宰。○一族中の長老。淮南子「滌盃而食、洗爵而飮、可以養──、不可以享三軍」

【家累】 カルヰ 

妻子奴婢をいふ。晉書、戴洋傳「欲迎其──」=係累。

【家令】 カレイ 

○一家をとりしまる者〔史、高祖紀〕○皇族又華族の家務を司る者。

【家祿】 カロク 

いへにつたはれるふち。後漢書、劉般傳贊「居巢好讀、遂承──」=世錄。

【傾家】 イヘヲカタムクケイカ 

家財を悉く出す。後漢書「──賑卹九族」

【擕家】 イヘヲタヅサフ 

一家族を伴ひて行く。北史、盧光傳「大統六年、──西入、除丞相府記室參軍」

【家柄】 イヘガラ 

 國   ○家の地位。=家格。○貴き家がら。=名家·門閥。

【家徒四壁立】 イヘタダニシヘキタツ 

徒は空、空しく四壁の立つのみにして、家中に一物もなし、甚だしき貧家の形容。史、司馬相如傳「文君夜亡奔、相如乃與馳歸、家居徒四壁立」

【家路】 イヘヂ 

 國  己の家の方へ還るみち。

【家貧則思良母 】 イヘマヅシクシテハリヤウサイヲオモブ 

家貧しくなりて、はじめて、家をよく治むる妻を思ふ。史、魏世家「──────、國亂則思良將」

【家賃】 ヤチン 

 國  いへの賃しちん、たなちん。=房錢·家稅。

害  

①ガイ [泰]

②カツ [曷]

①そこなふ(損)利の對「利─」「毒─」「損─」「患─」きずつく(傷·殘·斬)○さまたげる(妨)「妨─」○ねたむ(妬)いむ(忌)「忌─」○わざはひ(禍)うれひ(患)さはり(障)○要─は險要の地。

②なんぞ、なにすれぞ、いづくんぞ、いつか。=曷。疑問の意をあらはす反語。孟、梁惠王「時日─喪」○いづれか。(何)詩、周南「─澣─否」

【害惡】 ガイアク 

他をそこなふ惡事。=惡虐。

【害意】 ガイイ 

あしきこころ。

【賈害】 ガイヲカフ 

自ら禍を求める、賈は買〔左、桓十〕

【害咎】 ガイキウ 

わざはひ。潘岳文「──蠲消」

【害虐】 ガイギヤク 

そこなひしへたぐ。書、武成「暴殄天物、──烝民」

【害心】 ガイシン 

人又、物をそこなふ心。法苑珠林「猶如獵師見彼鹿起、極有──」

【害蟲】 ガイチユウ 

穀物果物等をそこなふ蟲。蝗蟲·浮塵子 ウンカ 白蟻など「──驅除」

【害毒】 ガイドク 

善き物をそこなふ。惡事。=害惡。

宮  

キュウ ク [東]

○みや、いへ(室)古は貴賤の別なく住居をいふ。○秦の始皇以後專ら皇家の稱とす「─城」「─禁」「離─」「帝─」○皇妃·皇女等の稱。○かき(牆·垣)禮、儒行「儒有一畝之─」○たまや(廟屋)○おく(寢屋)○五音の中聲「─·商·角.徵·羽」○生殖機能を去る刑「─刑」=腐刑。○めぐる(環)○ 國  みや。神殿「神─」又皇族の家の稱「有栖川─」

【宮娃】 キユウアイ 

御殿女中の美人。王維詩「座客香貂滿、──綺幔張」

【宮闈】 キユウヰ 

宮中の奧向。後漢書、皇后紀「正位──」晉書「陰敎洽于──」

【宮羽】 キユウウ 

宮聲と羽聲と。禮記「右徵角、左──」

【宮掖】 キユウエキ 

宮庭に同じ。掖は宮門の左右の小門。後漢書、竇憲傳「恃──聲勢」=禁掖·宸掖。

【宮苑】 キユウヱン 

宮城內のその。唐書「京都諸──、總監各一人」

【宮娥】 キユウガ 

宮中奉仕の美女。隋遺錄「命──數千人、昇樓迎侍」

【宮角】 キユウカク 

宮は五音の中央にあて、角は東方にあてたる聲。

【宮閤】 キユウカフ 

後宮の小門。又宮中の奥向。張說、上宮昭容集序「決事──」=宮闈。

【宮監】 キユウカン 

宮中の事を掌る官。唐書、高祖紀「領晉陽──」

【宮禁】 キユウキン 

帝王のごてん。宋書、殷景仁傳「密邇──」=禁闕·宮城。

【宮籞】 キユウギヨ 

宮城內のいけす。晉書「魏明帝不恭、淫于──」

【宮刑】 キユウケイ 

宮罪に同じ。司馬遷、報任安書「詬莫大於──」=宮辟·宮罰。

【宮闕】 キユウケツ 

闕は王宮の正門の傍に設けたる二っの物見臺。轉じて宮城の義とす。易林「──堅固、君安其居」

【宮壺】 キユウコン 

宮中を往來する道。轉じて宮中の奧向。唐書「──事無不聽」

【宮罪】 キユウザイ 

男子は其の勢を去り女子は幽閉するしおき。周禮、秋官「──五百」=宮刑·宮辟·腐刑。

【宮詞】 キュウシ 

宮中の瑣事を詠ずる詩、唐の王建に始まる。

【宮室】 キユウシツ 

いへ、すまひ。易、繫辭「上古穴居而野處、後世聖人易之以──」

【宮人】 キユウジン 

宮中の奧向に仕ふる婦女。淮南子「──得戟、則以刈葵」=宮女。

【宮車晏駕】 キユウシヤアンガ 

天子の崩御をいふ、晏は晚 オソシ の義。臣下の情、天子の崩御をあきらめる能はず、何故に今日はおでましが晚きかと思ふ意。史、范睢傳「宮車一日晏駕」

【宮商】 キユウシヤウ 

五音の中の宮と商との二音。楊方詩「──聲相和」

【宮商角徵羽】 キユウシヤウカクチウ 

音樂の五音。禮、樂記「宮爲君、商爲臣、角爲民、徵爲事、羽爲物」

【宮城】 キユウジヤウ 

天子のゐます所。唐書、地理志「西接──之東北隅」=帝城·皇城·王宮·宮禁。

【宮牆】 キユウシヤウ 

○家のまはりのかき。論、子張「子貢曰、譬之──、(中略)夫子之牆數仞、不得其門而入、不見宗廟之美、百官之富」○轉じて師門の義とす。劉銑賦「屹──之數仞、接道義之通衢」

【宮樹】 キユウジユ 

宮中に在る樹木。韋應物詩「禁鐘春雨細、──野煙和」

【宮省】 キユウセイ 

宮中の役所。宮內省。後漢書、顯烈梁皇后紀「──官屬」

【宮闥】 キユウタツ 

王宮の門。又、王宮の奧向。唐書、陸贄傳「變生京師、盜據──」

【宮池】 キユウチ 

宮中のいけ。淮南子「──涔則溢、旱則涸」=宮沼。

【宮徵】 キユウチ 

五音の中の宮と徵との二音。杜甫詩「金管迷──」

【宮中】 キユウチユウ 

ごしよ。=禁中、宮掖·大內。

【宮女】 キユウヂヨ 

宮中に奉仕する女子。杜甫詩「──開函近御筵」=宮娃·宮娥。

【宮廷】 キユウテイ 

次條に同じ。史、始皇紀「咸陽人多、先王之──小」

【宮庭】 キユウテイ 

帝王の居所。宋史、邢昺傳「詔其妻至──、賜以冠帔」=宮城·宮廷。

【宮殿】 キユウデン 

宮城に同じ。漢書、百官志「郞中令秦官、掌──掖門戶」

【宮罰】 キユクバツ 

宮罪に同じ。書、呂刑「──之屬三百」

【宮廟】 キユウべウ 

おたまや。儀禮「築──、歲時使之祀焉」

【宮辟】 キュウヘキ 

宮罪に同じ。書、呂刑「──疑赦」

【宮裏】 キユウリ 

宮殿のうち。李白詩「曾照吳王──人」=宮中。

【宮司】 グウジ 

 國  伊勢神宮の神官の職名の一、祭主に次ぐもの。又、官·國幣社の神官の長。

【宮內省】 クナイシヤウ 

 國  政府の最高機關たる十省の一、帝室に關する一切の事務を掌り、兼ねて華族を監督する官廳。

【宮居】 ミヤヰ 

 國   ○神社○宮城。

【宮家】 ミヤケ 

 國  皇族の御いへがら。

【宮仕】 ミヤヅカヘ 

 國  女官侍女などになりて宮中に奉仕する義。

【宮參】 ミヤマヰリ 

 國  初めて生れたる兒が產土神の社に參る儀式。男兒は三十一日目、女兒は三十三日目に行ふ。

宰  

サイ [賄]

○つかさどる(司·主)をさむ(治)きりもりをする「主─」○つかさ(官吏、職員)○大名の家臣の長(家老)○邑里の長「邑─」「里─」○ほふる(屠殺)にる(烹)肉を料理する「烹─」又、其の人「庖─」「膳─」○つか(冢)「─木」

【宰衡】 サイカウ 

周公は太宰、伊尹は阿衡となり天子をたすけて政を爲す。よりて宰相の尊號とす。漢書、平帝紀「加安漢公號、曰──」

【宰割】 サイクワツ 

主となりて事を分割處置する。漢書、敍傳「──諸夏、命立侯王」=宰制。

【宰相】 サイシヤウ 

天子をたすけて政治を行ふ最高官、天子を輔相し、天下を宰制する義。事物紀原「昔周公位冢宰、正百官以相成王、故有──之稱、其事自秦漢始」=宰輔。

【宰相器】 サイシヤウノキ 

宰相たるの器識。漢書、何武傳「知武有───」

【宰制】 サイセイ 

宰割に同じ。史記「──萬物、役使羣動」

【宰府】 サイフ 

○宰相の役所。後漢書「丙吉、以年老、優游不案吏罪、於是──習爲常俗」=相府。○ 國  九州の太宰府の略稱。

【宰柄】 サイヘイ 

宰相の權力〔宋史、李綱傳〕

【宰輔】 サイホ 

宰相輔佐の人をいふ。後漢書、二十八將傳論「──五世、莫非公侯」=宰相·元輔。

【宰木】 サイボク 

墓所にうゑたる木。公羊傳「宰上之木拱矣」=墓木·宰樹。

【宰予】 サイヨ 

孔子の門人、魯の人、字は子我、嘗て晝寢す、孔子朽木糞土を以て之を警む、齊に仕へて臨菑の大夫となる。=宰我。

【宰領】 サイリヤウ 

○とりしまる、とりしまり。○ 國  貨物を運送する時、保護する爲めに隨ひ行く人。

宸  

シン [眞]

○のき(簷·屋宇)○奧深き室。○後世、帝王の居處の專稱「楓─」「槐─」「紫─」「─掖」轉じて天子の事に冠する語「─襟」「─慮」○おほぞら(虛空)

【宸扆】 シンイ 

天子の御座所の後に立てる衝立 ツイタテ 轉じて御所〔晉書、王渾王濬傳論〕

【宸遊】 シンイウ 

天子の巡遊。王維詩「不是──玩物華」

【宸憂】 シンイウ 

帝王の御心配。

【宸掖】 シンエキ 

宮城をいふ。掖は正門の左右の門。馬懷素詩「離情愴──」=仙掖·禁掖。

【宸翰】 シンカン 

天子の御筆。宋史、宗室傳「求得上皇之──、懷之以歸」=宸筆。

【宸鑒】 シンカン 

天子の鑒識。天子の御めがね。王僧辨文「百司岳牧、祈仰──」=聖鑒。

【宸襟】 シンキン 

天子のみこころ。襟はえり、轉じて胸、又心。何遜詩「──動時豫」=宸衷·叡慮。

【宸居】 シンキヨ 

天子の居所。唐太宗詩「仍玆舊貫式表──」

【宸極】 シンキヨク 

帝王の居所。又、其の位。傅咸、感別賦「瞻──之眇眇、喜吾子之寵榮」

【宸闕】 シンケツ 

宮城。蔡襄文「拜恩──、正位樞廷」=天闕·宮闕。

【宸眷】 シンケン 

天子のみめぐみ、眷は恩顧。李嶠詩「──屬樵漁」

【宸藻】 シンサウ 

天子の御文章又詩賦。沈佺期詩「──光盈尺、賡歌樂歲豐」=宸翰·宸章。

【宸算】 シンサン 

天子のはかりごと。唐書「奉陛下──」

【宸旨】 シンシ 

天子のおぼしめし。=聖旨。

【宸聰】 シンソウ 

天子のおきき。徐元弼詩「寂寥高曲盡、猶是滿──」

【宸斷】 シンダン 

天子のおさばき、天裁。金史、李石傳「在陛下──耳」

【宸衷】 シンチユウ 

帝王の御心。韋安石詩「梁園開勝境、軒駕動──」=聖衷·宸襟·宸慮。

【宸念】 シンネン 

天子のみこころ。劉褘之詩「德優──遠、禮備國姻崇」=軫念。

【宸筆】 シンビツ 

天子の御筆。畫繼「徽宗出祖宗御書、及──所摸名畫」=御筆。

【宸謨】 シンボ 

宸謀に同じ。邵說文「──獨斷、睿略濳行」

【宸謀】 シンボウ 

天子の御はかりごと。宋史、呂誨傳──己定、當使天下共知」=宸算·宸謨。

【宸輿】 シンヨ 

天子の召し給ふ輿。王維詩「翊贊奉──」=仙輿。

【宸慮】 シンリヨ 

天子のみこころ。宋史「願畱──、以折邪謀」=軫慮·叡慮·宸衷。

宬  

セイ [庚]

物を容るる室、書を藏する室。字彙補「明大内有皇史─、貯列聖御筆實錄祕典」

宵  

セゥ [蕭]

○よる、よひ(夜)「良─」「春─」「終─」「通─」○ちひさし(小)○うすぎぬ、綃に通ず。

【宵衣】 セウイ 

○くろききぬの祭服。儀禮、士昏禮「纚筓──」=玄綃衣。○天未だ明けずして衣を服する。次條參看。

【宵衣旰食】 セウイカンシヨク 

夜の未だ明けざる中に起きて衣をつけ、日傾きて後膳につく。天子の政に勤勉したまふをいふ。唐書、劉蕡傳「任賢惕厲、────、詎追三五之遐軌、庶紹祖宗之鴻緖」

【宵熠】 セウイフ 

ほたるの異名。范成大詩「濕生同糞蝎、腐化類──」

【宵行】 セウカウ 

○よる行く。詩、豳風「肅肅──」○螢 ホタル の異名。=宵燭。

【宵旰】 セウカン 

宵衣旰食の略。唐書、劉蕡傳「無──之憂」

【宵會】 セウクワイ 

夜中のあつまり。李端詩「主第辭高飮、石家赴──」=夜會。

【宵晨】 セウシン 

よると、あさと。陶潛詩「淹畱忘──」

【宵人】 セウジン 

小人に同じ〔莊、列禦寇〕

【宵小】 セウセウ 

 俗  盜賊。

【宵牀】 セウシヤウ 

よるのねどこ。王安石詩「──連衾幬」

【宵燭】 セウシヨク 

螢の異名。南史「冀──之末光」

【宵越】 ヨヒゴシ 

 國  昨日のもちこし、一夜を經る「──の金を使はず」

【宵明星】 ヨヒノミヤウジヤウ 

 國  金星の夕方西方にあらはるるもの。明けの明星卽ち啓明の對。ゆふづつ。=長庚·太白星。

【宵闇】 ヨヒヤミ 

 國  陰曆十六日以後の夜の稱·ゆふやみ。

容  

ヨウ ユウ [冬]

○いる、物を器に入れる。うく(受)つつむ(包)「包─」もる(盛)ゆるす(宥)○用ふる、きく(聽)○かたち、すがた「─貌」「丯─」「冶─」「─姿」「威─」「禮─」「儀─」「顏─」○ありさま「形─」○かたちづくる。化粧する。史、魯仲連傳「女爲說己者─」○やすし(安)ゆったりとする「從─」○まねする、かたどる(模)○──は飛び揚る貌。○矢を防ぐ小曲屛風の如きもの。○べし(可·須)あるべき筈である。

 同訓異義 

イル 容·入·納·內の別は入(部首二畫)の條を見よ。○ベシ容·可·當·合等の別は可(口部二畫)の條を見よ。

【容易】 ヨウイ 

たやすし。漢書、東方朔傳「談何──」

【容隱】 ヨウイン 

いれかばふ、包庇する義。書、康誥、疏「今之律令、大功已上得相──」

【容悅】 ヨウエツ 

君の意を迎へてこびへつらふ。孟、盡心「爲──者也」

【容假】 ヨウカ 

よく人をいれる。假はゆるす。唐書「嚴語侵之、無所──」=寬假。

【容喙】 ヨウカイ 

さしでぐち、くちばしをいれる。

【容顏】 ヨウガン 

かほかたち。韓愈詩「豈有酒食開──」

【容儀】 ヨウギ 

禮儀あるやうす。漢書、馮奉世傳「爲人矜嚴、好修──」

【容器】 ヨウキ 

いれもの。物を入れる器。

【容華】 ヨウクワ 

○美くしきかほかたち、容色華麗。曹植詩「南國有佳人、──若桃李」○漢の女官の名。史、外戚世家「──秩比二千石」

【容光】 ョウクワウ 

○すきまに入る光。孟、盡心「日月有光、──必照」○うつくしき風采。徐幹詩「端坐而無爲、髣髴君──」=風丰 フウボウ 

【容止】 ヨウシ 

かたちづくり。たちゐふるまひ。孝經「──可觀、進退可度」

【容姿】 ヨウシ 

なりかたち、すがた。=姿容。

【容臭】 ヨウシウ 

にほひぶくろ、裝飾の爲めに帶ぴるもの。禮、內則「皆佩──」

【容膝】 ヨウシツ 

わづかに膝をいるるばかりの小室。韓詩外傳「北郭先生妻曰、令結駟列騎、所安不過──」

【容車】 ヨウシヤ 

かざりたるくるま。後漢書、祭遵傳、注「──、容飾之車」

【容赦】 ヨウシヤ 

罪をゆるす。隋書、酷吏傳「無所──」

【容狀】 ヨウジヤウ 

やうす。宋史、陳與義傳「義──嚴恪、不妄言笑」=容貌。

【容受】 ヨウジユ 

ききいれる。荀悅文「成帝博覽古今、──直言」

【容恕】 ヨウジヨ 

ゆるす。後漢書「相──」

【容色】 ヨウシヨク 

みめかたち。金史「立朝峻整、──莊重」

【容遂】 ヨウスヰ 

放肆舒緩の貌。詩經「容兮遂兮、垂帶悸兮」

【容成侯】 ヨウセイコウ 

鏡の異名。唐の司空圖に───金炯傳あり。

【容積】 ヨウセキ 

物體のかさ。=容量。

【容接】 ヨウセツ 

近づけて交際する、ちかづきにする。後漢書、李膺傳「土有被其──者、名爲登龍門」

【容態】 ヨウタイ 

○やうす、なりかたち。蘇軾文「天眞雅麗、──溫柔」○ ヨウダイ   國  病氣のやうす。=容體。

【容體】 ヨウタイ 

○すがたかたち。禮記「禮義之始、在於正──齊顏色順辭令」○ ヨウダイ   國  病氣のやうす。

【容匿】 ヨウトク 

我が家に引き入れてかくす、かくまふ〔北史、李義興傳〕=容隱。

【容納】 ヨウナフ 

ゆるして人をいれる。寬弘にして能く物を容るる義。晉書「性深阻、有若城府、而能寬綽以──」=容受。

【容忍】 ヨウニン 

がまんしてゆるす。寬容忍耐の義。後漢書、公孫瓚傳「瓚文武才力足恃、固宜──」

【容認】 ヨウニン 

ゆるしみとめる。=認容。

【容貌】 ヨウバウ 

かほかたち。論、泰伯「動──、斯遠暴慢矣」

【容範】 ヨウハン 

其の人の音容と儀範と。沈約詩「楸檟今已合、──尙昭昭」=容表。

【容裕】 ヨウユウ 

心がひろくゆるやか。北史「寬仁──」

【容與】 ヨウヨ 

ゆったりとせる貌。閒暇自得の貌。徐緩の義。楚辭「農夫輟耕而──兮、恐田野之蕪穢」史、司馬相如傳「翺翔──」

【容容】 ヨウヨウ 

○苟且にして容れられんことを求むる貌。後漢書、左雄傳「白璧不可爲、──多後福」○雲の出る貌。楚辭「雲──兮而在下」○飛び揚る貌。漢郊祀歌「神之行、旌──」

【容量】 ヨウリヤウ 

物をうけ入れるかさ。

8畫

寅  

イン イ [眞]

○とら、十二支の第三位。爾雅「太歲在─、曰攝提格」○時に配して午前四時。○方位に配して東北の閒。○つつしむ(敬)書、堯典「─賓出日」=夤。○同─は同僚の義。書、皋陶謨「同─協恭、和衷哉」の語に本づく。

【寅畏】 インヰ 

つつしみおそる。書經「嚴恭──、天命自度」

【寅月】 インゲツ 

正月の異名。

【寅虔】 インケン 

つつしむ。虔は畏敬。文心雕龍「──於神祇」

寄  

キ [寘]

寄は俗字

○よす、たのむ、ゆだぬ(委託)論、泰伯「可以─百里之命」「─託」「委─」○まかす(任)○むける、かたむく(傾)つくす。○やどる、やどす(寓居)とまる(止)○やる、おくる(遣)物を以て人に付す「─書」「─語」よる(依)たよる。○ちかづく(近)せまる(迫)○やどり、やど(寓) 國   ○よる「─合」○よせる、加へる「─せ算」○よる、過訪。○よせ「─せ來る波」

 同訓異義 

ヨル 寄·憑·凭·賴·據·仗·倚·依·藉○寄は寄託·寄寓と用ふ、たよりてつく義。○憑はもたれかかるなり。書經「憑二玉几一」○凭は憑に同じ。○賴はたのみとして、よるなり。大學序「獨賴二此編之存一」○據は物のより所とするなり。後漢書、馬援傳「據レ鞍顧盻」○仗は憑倚なり、すがりよるなり。左傳「仗レ信以待レ晉不二亦可一乎」○倚は物にもたれつくなり、倚レ門·倚レ樓の類。○依は倚に近し、よりそひ離れぬなり。柳文「草木之生也、依二於土一」○藉は身の依る所をいふ、たよりて力にするなり。

【寄豭】 キカ 

人の妻を姦するをいふ、豭は牡猪、姦夫を牡猪に比す。史、始皇紀「夫爲──殺之無罪」

【寄航】 キカウ 

船舶が到著港に至るまでの閒の港に立寄る。

【寄稿】 キカウ 

寄せ贈りたる草稿。草稿を寄せ贈る。

【寄客】 キカク 

かかりうど。抱朴子「榮位勢利、譬如──」=食客。

【寄居】 キキヨ 

かりのやどり。曹植詩「人生如──」=寓居。

【寄居蟲】 キキヨチユウ 

やどかり。蟹の一種、他の貝殼中に住む故の名。=蠣奴。

【寄寓】 キグウ 

やどる。又、かりずまひ。國語「司里不授館、國無──」=僑居。

【寄懷】 キクワイ 

心におもふ所を物によせ託する。魏氏春秋「阮籍作蘇門先生論以寄所懷」=寄情。

【寄款】 キクワン 

まことの心をよせ致す。陸機、思親賦「指南雲以──、望歸風而效誠」

【寄言】 キゲンゲンヲヨス 

ことばをよせる。ことづてする。劉廷芝詩「──全盛紅顏子」=寄語·傳語。

【寄語】 キゴ 

ことづて。鮑照詩「──後生子」=寄言。

【寄公】 キコウ 

國を失ひて身を他國に寄する君主。儀禮、注「──者何也、失地之君也」=寓公。

【寄進】 キシン 

 國  社寺などに金品をさしあげる。=奉納。

【寄宿】 キシユク 

人の家にかりずまひする。後漢書、郭躬傳「──鄕亭」=寄寓。

【寄書】 キシヨ 

○手紙をやる。○新聞雜誌等に揭載する爲めに寄贈する文。

【寄食】 キシヨク 

ゐさふらふ。史、淮陰侯傳「常數從其下鄕南昌亭長──」=寓食。

【寄生】 キセイ 

獨立する能はざる動植物が、他の動植物にやどりて生長する。詩經、疏「蔦──也」

【寄生蟲】 キセイチユウ 

他の生物にやどりて生を保つ動物。蛔蟲·條蟲·蚤虱など。

【寄生囊】 キセイナウ 

命をやどすふくろ、卽ち人の身。淸異錄「梓潼雙燈寺僧書一頌曰、撞來好箇───云云、趺坐而化」=醜皮袋。

【寄生木】 キセイボク 

やどりぎ。他の植物にやどりて生を保つ植物。

【寄聲】 キセイ 

ことづて、傳言。漢書「──謝我」=寄語。

【寄贈】 キソウ 

よせおくる、おくり與へる。

【寄託】 キタク 

たのむ。たよる。東方朔文「列子隱身而窮處兮、世莫可以──」

【寄賣】 キバイ 

 俗  委託販賣、取次販賣。

【寄付】 キフ 

○物を授け與へる。白居易詩「貧友遠勞君──」○たのむ。

【寄附】 キフ 

 國  金品を公共事業又は社寺の建築などにさし出して補助する。=喜捨。

【寄命】 キメイメイヲヨス 

○命は政令、政を委任する。論、泰伯「可以寄百里之命」○生命を付託 ウチマカス する。劉峻、廣絕交論「流離大海之南、──瘴癘之地」

【寄畱】 キリウ 

かりずまひ、一時他の所に住居する「──屆」=寓居·寄寓·寄宿。

【寄席】 ヨセ 

 國  觀客をよせ集めて講談·落語·演藝などを興行する所。

【寄手】 ヨセテ 

 國  攻めよせる敵の軍隊。

【寄人】 ヨリウド 

 國  宮內省御歌所に出仕して御歌會の事にあづかる職。

寇  

コウ ク [宥]

○あだ(仇·敵)○あだす、攻め入る。兵の內に起るを亂、外よりするを─といふ「外─」○盜賊、羣行して人を刧掠するを─、人を殺すを賊といふ。書經「無敢─攘踰垣牆」○かすむ(掠)「─略」

【寇虐】 コウギヤク 

あだしそこなふ。晉書「內摧──、外靜姦宄」

【寇警】 コウケイ 

あだのいましめ。後漢書、祭彤傳「自是匈奴衰弱、邊無──」

【寇羯】 コウケツ 

あだするえびす。晉書「──飮馬于長江」

【寇讎】 コウシウ 

他國より攻め來るあだ。杜甫詩「挺身艱難際、張目視──」=讎敵·寇敵。

【寇準】 コウジユン 

字は平仲、宋の華州の人、年十九進士に擧げらる、眞宗の時、累官して同平章事となる、たまたま契丹入寇す、準、策を決して帝の親征を請ひ、澶淵の功を成す、丁謂等の構陷する所となり、雷州に貶せらる、準外は奢にして內は儉なり、寢處一靑幃二十年、仁宗の朝、中書令を贈り、萊國公に封ぜらる。

【寇鈔】 コウセウ 

あだしかすめる、攻刧して略取する。漢書「連年──」=寇掠。

【寇擾】 コウゼウ 

あだしみだす。後漢書「──州郡」

【寇竊】 コウセツ 

あだしぬすむ。牛弘文「永嘉之後、──競興」

【寇賦姦宄】 コウゾクカンキ 

寇は人をおびやかす、賊は人を殺す。姦は惡の外に在るもの、宄は內に在るもの〔書、舜典〕

【寇盜】 コウタウ 

むれて亂暴をなしぬすみかすめる。漢書「民俗質木、不恥──」

【寇難】 コウダンコウナン 

あだのうれひ。漢書「則有──」

【寇偸】 コウトウ 

他國に侵入して、亂暴、又は盜賦をなすもの。韓愈、汴州東西水門記「固風氣以閉──」

【寇掠】 コウリヤウ 

せめかすむ。魏書「自遭荒亂諸軍竝起、饑則──、飽則棄餘」=寇攘。

?  

寇(前條)の俗字。

宿  

シュク [屋]

○やどる、とまる、夜止まる。「止─」「屯─」「再─」「寓─」○やどり、とまり。○はたごや(旅舍)○とどむ(止)とめおく。論、顏淵「子路無─諾」ひまがいる(猶豫)○やすんず(安)まもる(守)○とのゐ(直)「─直」○もとから、ふるし(舊)ひさし(久)「─痾」「─志」○はやし、はやくす(早)=夙。○つつしむ、いましむ(戒)=肅。○事になれたるひと(老練者)○星のやどり(星座)「二十八─」○ 國  しゅく。うまつぎ「─場」「─驛」

【宿痾】 シユクア 

久しくなりしやまひ。=宿疴·宿疾·久病。

【宿因】 シユクイン 

前の世よりのいんねん。張喬詩「千燈有──」=前因·宿緣·夙緣。

【宿雨】 シユクウ 

前日より降りつづくあめ。王維詩「桃紅復含──、柳綠更帶朝煙」

【宿衞】 シユクヱイ 

とのゐしてまもる。周禮「──王宮」

【宿營】 シユクエイ 

兵士のやどる營所。

【宿曜】 シユクエウスクエウ 

○二十八宿と九曜と。○二十八宿九曜によりてうらなふ術。

【宿怨】 シユクヱン 

ふるきうらみ。又、怨をとどめる。孟、萬章「仁人之於弟也、不藏怒焉、不──焉、親愛之而已矣」

【宿緣】 シユクエン 

ふるきいんねん。何承天、答宗居士書「愛欲未除、──是畏」=宿因。

【宿戒】 シユクカイ 

期日にさきだちてものいみする。周禮、註「──謂前期齋戒也」

【宿好】 シユクカウ 

久しき以前よりのこのみ。陶潛詩「詩書敦──」

【宿學】 シユクガク 

久しき經歷をつめる學者。積學の人。史、莊周傳「雖當世──、不能自解免也」

【宿芩】 シユクキン 

藥草の名、こがねやなぎ。

【宿願】 シユクグワン 

久しき以前よりのねがひ。隋書、張衡傳「得諧──」=宿望。

【宿眷】 シユクケン 

ふるくよりのめぐみ。魏書、恩倖傳「──之隆」

【宿垢】 シユクコウ 

日を經たるふるきあか。晉書、禮志「漢儀、季春上巳、官及百姓、皆禊于東流水上、洗濯祓除、去──、而自魏以後、但用三日、不以上巳也」

【宿構】 シユクコウ 

前以て作りおく詩文。魏志、王粲傳「善屬文擧筆便成、無所改定、時人常以爲──」

【宿業】 シユクゴフ 

 佛  前世のむくい。業は此の結果を生ずべき原因となる所業。

【宿根】 シユクコン 

冬、莖葉枯れて、根のみ生き殘り、翌年萌芽する者「──草」

【宿債】 シユクサイ 

久しき以前よりの借金。黃公度詩「千畝償──」=舊債。

【宿志】 シユクシ 

かねてのおもひ。宿昔の志望。後漢書、列女傳「奈何忘──而慙兒女子乎」=夙志。

【宿食】 シユクシ 

前日炊きたる飯。北周書、姚僧垣傳「此有──」

【宿疾】 シユクシツ 

久しきやまひ。北史、裴寬傳「弟漢少有──、恆帶虎羸」水經、注「溫水常熱、沐浴治──」=宿痾。

【宿執】 シユクシフ 

ふるくよりの執念。

【宿心】 シユクシン 

宿志。嵆康詩「內負──」=素志·宿意。

【宿舍】 シユクシヤ 

とまりやど。

【宿將】 シユクシヤウ 

經驗に當める將軍。史、王翦傳「翦爲──」=老將。

【宿情】 シユクジヤウ 

もとの心。禮記、疏「故聽訟者、本其──、立其恩義、爲平量之恕、而免放」

【宿主】 シユクシユ 

寄生動物をやどす動物。

【宿儒】 シユクジユ 

宿學に同じ。漢書、翟方進傳「──胡常與方進同經」=老儒。

【宿宿】 シユクシユク 

一夜とまる。詩、周頌「有客──、有客信信」信は再宿。

【宿醉】 シユクスヰ 

二日ゑひ。王初詩「銀花珠樹曉來看、──初醒一倍寒」=宿酲。

【宿夕】 シユクセキ 

宿は夜、一夕一夜の義。僅の閒の義。戰國策「不出──、人必危之矣」

【宿昔】 シユクセキ 

むかしから、平生。張九齡詩「──靑雲志、蹉跎白髮年」

【宿題】 シユクダイ 

前より出しおく問題。

【宿諾】 シユクダク 

諾したることをとどめおく。論、顏淵「子路無──」

【宿恥】 シユクチ 

ふるく受けしはぢ、積年の恥辱。舊唐書、房喬傳「雪往代之──」

【宿直】 シユクチヨク 

官吏がとのゐする、役所などに更代にてとまる。遼史「百官番宿爲──」

【宿酲】 シユクテイ 

二日ゑひ。李中詩「落花風急──解、芳草雨昏春夢寒」=宿醉。

【宿哲】 シユクテツ 

久しき經驗をつみたる賢人。

【宿德】 シユクトク 

平素より積みし德。又、德高き老人。漢書、武帝紀「名儒──」

【宿飽】 シユクハウ 

くひもたれ。史、淮陰侯傳「樵蘇後爨、師不──」

【宿望】 シユクバウ 

かねてののぞみ。=夙望·宿願。

【宿負】 シユクフ 

ふるきおひめ、以前からの負債〔晉書、武帝紀〕=宿債。

【宿分】 シユクブン 

前世より定まりたる運命。吳敬文「命之窮達有──」=宿命。

【宿憤】 シユクフン 

ふるくよりのいきどはり。

【宿弊】 シユクヘイ 

ふるき弊害、以前からの惡事。國老談苑「釐──、大興利益」

【宿墨】 シユクボク 

すりおきのすみ汁。

【宿命】 シユクメイ 

○前世より定まれる運命「──說」○ シユクミヤウ   佛  過去の因緣による運命。能く──を知る者を──通といふ。

【宿老】 シユクラウ 

故事に通じたる老人。北史、陸俟傳「州中有德──、名望素重者、以友禮待之」

【宿癅】 シユクリウ 

ふるきこぶ。又、古の賢女の名。列女傳「──女、齊閔王后也、項有大癅、故號──」

【宿世】 スクセ 

 佛  まへのよ。前世「──の緣」

【宿禰】 スクネ 

 國  上古、臣下を親みて呼びし敬稱。後に姓となる。

【宿下】 ヤドヲリヤドサガリ 

 國  奉公人が暫時の暇をもらひて其のおやもとにかへる義。

?  

宿(前條)の古字。

寂  

セキ ジャク [錫]

○さびし、しづか(靜)聲なし「幽─」「─寞」「靜─」○やすし(安)○ 佛  死をいふ「圓─」「─滅」「歸─」=涅槃。

【寂照】 ジヤクセウ 

 佛  しづかにして心の光が明か。楞嚴經「湛然──」

【寂滅】 ジヤクメツ 

○物の自然に消滅する義。孫逖詩「苦心歸──」○ 佛  死をいふ「──爲樂」

【寂焉】 セキエン 

さびしき貌。=寂寂。

【寂乎】 セキコ 

しづかなる貌。莊、天下「芴乎若亡、─一若淸」=寂然。

【寂爾】 セキジ 

さびしき貌。皮日休詩「──萬籟淸、皎然諸靈滅」=寂乎·寂焉·寂然。

【寂寂】 セキセキ 

さびしき貌。劉禹錫詩「月露滿庭人──、霓裳一曲在高樓」=寂寥。

【寂然】 セキゼン 

寂焉に同じ。易、繫辭「无思也、无爲也、──不動、遂通天下之故」

【寂若無人】 セキトシテヒトナキゴトシ 

ひっそりとして人の居らざる如し。世說、德行「傅茂遠泊然靜處、不妄交遊、袁司徒每經其戶、輒歎曰、經其戶────、披其帷其人斯在、豈得非名賢」

【寂念】 セキネン 

さびしくしづかなる思。劉孝孫詩「──啓玄門」=寂慮。

【寂寞】 セキバク 

さびしく靜かなり、聲なし。淮南子「──者音之主也」=寂莫·寂漠·寂歷。

【寂慮】 セキリヨ 

しづかなるおもひ。韓偃詩「──延淸風」=寂念。

【寂寥】 セキレウ 

さびし。楚辭、九歎「聲嗷嗷以──兮」=寂莫。

【寂漻】 セキレウ 

天の高く遠き貌。漢書」──上天知厥時」

【寂歷】 セキレキ 

さびし。張說詩「空山──道心生」=寂寞·寂寥。

密  

ビツ [質]

通音ミツ

○ひそか、そっと人に知られず(私)ひめる(祕)「祕─」「樞─」「機─」易、繫辭「幾事不─則害成」○ひそかに、そっと。○ひっそり、しづか(靜)○こまか(精細)「細─」「精─」「緻─」○しげし(稠)疎の對「稠─」つまびらか(審)「詳─」○とどまる(止)とづ(閉)「遏─」○ふかし(深)○だまる(默)○ちかづく「親─」「─接」○山の形、堂室の如きもの。○─勿はつとめる(黽勉)

【密移】 ミツイ 

ないしょの囘狀。祕密の移文。

【密意】 ミツイ 

ひみつのここる。謝逸詩「──無人寄、幽恨憑誰洗」

【密友】 ミツイウ 

至りて仲よき友。宣武盛事「戴弘正每得──一人、則書于編簡、焚香吿于祖考、號金蘭簿」=親友。

【密雲】 ミツウン 

厚く重れる雲。易、小畜一──不雨」

【密航婦】 ミツ力ウフ 

法禁を破りて海外にぬけ岀て醜業をいとなむ女子。海外に密航する醜業婦。

【密函】 ミツカン 

祕密の文書を入れたるはこ。轉じて祕密の手紙。南史「──去來、日中以十數」

【密議】 ミツギ 

ひみつの會議、ないないの相談。

【密會】 ミツクワイ 

○ひそかにあつまる。崔融文「心靈──」○ 國  男女がひそかに逢ふ、あひびき。=野合。

【密計】 ミツケイ 

ひみつなるはかりごと。唐書、張說傳「帝在東宮、所與祕謀──甚多」=祕計·密謀。

【密敎】 ミツケウ 

 佛  眞言祕密のをしへ。又、眞言宗。顯敎の對。

【密吿】 ミツコク 

ひそかにつげしらせる。又其のしらせ。

【密藏】 ミツザウ 

ひめたくはふ。晉書「──示彥、彥見之抱母慟哭」=祕藏。

【密旨】 ミツシ 

ないないのおぼしめし、ひみつの命令。南史、梁元帝紀「奉帝──」=密指·密意。

【密使】 ミツシ 

ないないの使。盧思道文「或陳誠疑、──相尋」

【密事】 ミツジ 

祕密の事がら。漢書、鄭弘傳「漏泄──」

【密指】 ミツシ 

密旨に同じ。又、ひそかにおもふ。蜀志、楊儀傳「亮平生──、以儀性狷狹、意在蔣琬」

【密畤】 ミツジ 

神をまつるには。史、封禪書「秦宣公作──於渭南、祭靑帝」=靈畤。

【密邇】 ミツジ 

近く接する、接近する。書、太甲」──先王」=切近。

【密室監禁】 ミツシツカンキン 

法律にて密閉せる一室中に入れて其の自由を奪ふをいふ。

【密諗】 ミツシン 

ひそかにつぐ〔唐書〕

【密樹】 ミツジユ 

しげれる木。梁、簡文帝詩「──臨寒水」=茂樹。

【密宗】 ミツシユウ 

眞言宗の異稱。

【密聚】 ミツシユウ 

すきまなく、しげくあつまる。=密集。

【密書】 ミツシヨ 

祕密の書きつけ。又、內證の手紙。=祕書。

【密接】 ミツセツ 

○すきまなく觸れる。=密著。○關係が深くして離れぬ。

【密疏】 ミツソ 

ひそかに箇條がきにして意見をたてまつる。又其の書。宋史、王旦傳「先──三四人姓名」

【密陀僧】 ミツダソウ 

鑛物の名、黃色の粉末、腫毒を消し、腋臭を除く。=鉛丹·酸化鉛。

【密緻】 ミツチ 

こまかにぬけめなし。詩經、箋「情性──、操行正直」=緻密。

【密著】 ミツチヤク 

ぴったりとくっつく、すきまなくくっつく。

【密敕】 ミツチヨク 

ないないのみことのり。梁史、陳慶之傳「慶之別有──」=密詔。

【密通】 ミツツウ 

男女がひそかに情を通ずる、みそかごと。

【密度】 ミツド 

物體の單位の容積中にある質量のどあひ、物質疏密の度合。

【密法】 ミツパブ 

眞言宗の法にて、印を結びて道を弘むるもの。其の僧を密僧といふ。

【密封】 ミツプウ 

かたく封ずる。王建詩「──計策非時奏」

【密勿】 ミツフツ 

○つとめはげむ。一說に黽勉と音義相通ずと。漢書、劉向傳「──從事、不敢吿勞」○君主に近づく義。又、樞要の政事の義。魏志、杜恕傳「與聞政事、──大臣、寧有懇懇憂此者乎」

【密網】 ミツマウ 

目のこまやかなるあみ。こまやかなるおきてに喩ふ。史、酷吏傳「天下之網嘗密矣」晉書「謹──、以羅微罪」

【密密】 ミツミツ 

○こまかなる貌。孟郊詩「臨行──縫」○しげれる貌。陸游詩「──疎疎自在花」

【密約】 ミツヤク 

ひみつの約束。

【密輸】 ミツユ 

禁を破りてひそかに物品を他國に送り、又は他國より持ち來りて利益をはかる、輸正音はシユ。

【密獵】 ミツレフ 

禁を犯して、ひそかに獵をする「──船」

9畫

?  

宇(宀部三畫)の籒文。

寒  

力ン [寒]

○さむし。暑の對「大─」「冱─」「奇─」「祁─」「嚴─」○みぶるひする、ぞっとする、おそれる(戰栗)「─心」○さむさ、冬の季節。○いやし(賤)まづし(貧)「─苦」「貧─」「─門」史、范雎傳「范叔一─如此哉」さびし(寂)くるしむ(窮窘)○なやむ(艱)○こごゆ(凍)「饑─」○大─·小─は竝に二十四氣の一。

【寒威】 カンヰ 

さむさのいきほひ「──凜烈」方干詩「──半入龍蛇窟、暖氣全歸草樹根」

【寒意】 力ンイ 

さむさの氣味。張鼎詩「江天──少、冬月雨仍飛」

【寒懊】 カンイウ 

さむさと、あつさと。韓維詩「中州──與南異、常恨梅花開不早」

【寒蚓】 カンイン 

秋のみみず。蘇軾詩「暗潮生渚弔──」

【寒雨】 力ンウ 

さびしき雨。寒き雨。王昌齡詩「──連江夜入吳、平明送客楚山孤」

【寒烏】 カンウ 

ふゆのからす。沈約賦「秋鴻兮疏引、──兮聚飛」=寒鴉。

【寒英】 カンエイ 

梅の異名。柳宗元、早梅詩「──坐銷落、何用慰遠客」

【寒煙】 カンエン 

さむげなるけむり。謝朓詩「桑柘起──」

【救寒莫如重裘】 カンヲスクフハキウヲ力サヌル二シクハナシ 

寒さをふせぐには皮ごろもを重ねぎするを第一とす。事を處するには各其の宜しきに適すべき喩。徐幹、中論「語稱──────、止謗莫如修身、療暑莫如親冰」

【寒溫】 力ンヲン 

○さむさと、あたたかさと。○時候。又、時候見舞をのべる義。晉書、王獻之傳「獻之──而已」寒暖の挨拶 アイサツ をするのみの義。

【寒柯】 力ンカ 

○冬の木。梁元帝纂要「冬木曰──」○冬の寒き木の枝。陶濳詩「提壺掛──」

【寒家】 カンカ 

まづしきいへ。南史、到漑傳「漑所生母魏本──」=貧家·寒門。

【寒餓】 力ンガ 

こごえると、うゑると。段克己詩「豈無富貴人、粟帛救──」

【寒皋】 カン力ウ 

鸜鵒の一名。ははってぅ。本草綱目「天寒欲雪飛如吿、故名──」

【寒客】 カン力ク 

臘梅 ラフバイ の異名。西溪叢話「臘梅爲──」

【寒乞】 カンキツ 

みすぼらしきこじき。宋書、王皇后傳「外舍家──」

【寒噤】 カンキン 

さむさの爲めに口をつぐむ。李洞詩「高遮辭磧雁、──入川人」

【寒鄕】 カンキヤウ 

○さむき土地。詩經、疏「──率早寒、北方是也」=寒國。○まづしくさびしきさと。鮑照詩「僕本──士、出身蒙漢恩」=窮鄕。

【寒玉】 カンギヨク 

○竹の異名。陸龜蒙詩「萬條──一溪烟」=綠玉。○水の淸き形容。李羣玉詩「一條──走秋泉」

【寒苦】 カンク 

貧しきくるしみ。後漢書「民得以免──」=貧苦。

【寒窶】 力ンク 

まづしくやつやつし。唐書、鄧景山傳「家──」=貧窶。

【寒空】 カンクウ 

さむぞら。冬のそら。杜甫詩「蕭瑟浸──」

【寒瓜】 カンクワ 

西瓜 スヰクワ の異名。本草「西瓜、一名──」

【寒灰】 カンクワイ 

火のなきはひ。杜甫詩「眼穿當落日、心死逐──」

【寒官】 カンクワン 

卑くしてひまなやく。=散官。

【寒檠】 カンケイ 

さびしきともしび。劉克莊詩「一閒茅屋對──」

【寒暄】 カンケン 

さむさと、あたたかさと。=寒暑·寒暖·寒溫。

【敍寒暄 】 カンケンヲジヨス 

時候の挨拶をのぶ。五代史、孫晟傳「爲人口吃、遇人不能道寒暄」

【寒冱】 カンゴ 

つよきさむさ。寒極りて水凝る。周紫芝詩「重陰積──」=冱寒。

【寒江】 力ンコウ 

さむき冬の江。柳宗元詩「孤舟簔笠翁、獨釣寒江雪」

【寒酸】 カンサン 

寒は寒氣、酸は酸味、共に身にしみこむもの。よりて貧苦の義とす。=寒飢辛酸·酸寒。

【寒山寺】 カンザンジ 

寺の名、江蘇省蘇州府に在り、相傳ふ寒山拾得嘗て此に止ると。張繼詩「姑蘇城外───」

【寒山拾得】 カンザンジツトク 

二人の僧侣の名、唐の憲宗時代の人、天台山國淸寺豐干の弟子。文珠·普賢兩菩薩の化身なりといふ。

【寒士】 力ンシ 

まづしきさむらひ。寒微の士。晉書「服飾肴膳、如布衣──」

【寒事】 カンジ 

寒さを防ぐそ江へ。杜甫詩「問俗營──」

【寒疾】 カンシツ 

かぜひき、風邪。孟、公孫丑「有──、不可以風」

【寒心】 カンシン 

おそれてぞっとする、戰栗する。史、刺客傳「以秦王之暴、而積怒於燕、足爲──」

【寒螿】 力ンシヤウ 

蟬の屬、つくつくばふし。爾雅「蜺寒蜩」疏「──也、似蟬而小、靑色」=啼螿·秋螿。

【寒縮】 カンシユク 

こごえちぢまる。元好問詩「雄呑已覺雲夢小、──寧作書生窮」

【寒俊】 カンシユン 

家まづしくして才のすぐれたる者。長編「寇準在中書、喜用──」

【寒渚】 カンシヨ 

寒きなぎさ。謝朓詩「秋河曙耿耿、──夜蒼蒼」

【寒暑】 カンシヨ 

寒さと、暑さと。易經「──相推而歲成焉」

【寒食】 カンシヨク 

冬至より一百五日に當る節。この日火食を禁ず、晉の介子推が焚死せし日なるを以て後人悲みて然すといふ。鄴中記「冷食三日、作乾粥食之、中國以爲──」

【寒翠】 力ンスヰ 

寒綠に同じ、竹などの冬のみどり。林逋、山村冬暮詩「雪竹低──、風梅落曉光」

【寒水石】 カンスヰセキ 

大理石の一種。

【寒生】 カンセイ 

まづしき書生。湘山野錄「江南一──」

【寒淸】 カンセイ 

ひややかにしてすむ。山海經「其上有水焉、甚寒而淸」

【寒賤】 カンセン 

まづしくしていやし。=寒微。

【寒戰】 力ンセン 

こごえわななく。水經、注「厚衣狐裘──」

【寒蟬】 力ンセン 

秋のせみ、ひぐらし。禮、月令「白露降、──鳴」

【寒蟾】 カンセン 

ふゆのさむき月。蟾は蟾蜍 ヒキガヘル 月中に棲むといふによりて月の義とす。鄭谷詩「莫恨淸光盡、──卽照空」=寒月。

【寒蘚】 カンセン 

さむきこけ。劉孝威詩「石岸生──、沈根漬水苔」

【寒素】 カンソ 

○まづしくして質素、淸貧の義。○司馬晉の世の士を取る科名。晉書、范喬傳「再舉淸白異行、又擧──、一無所就」

【寒族】 カンゾク 

貧しく輕きいへ。晉書、華譚傳「譚擧──周訪爲孝廉、訪果立功名」=寒門。

【寒帶】 カンタイ 

赤道より南北各六十六度半に始まりて兩極に至るまでの閒、寒氣甚だ强きが故の稱。熱帶の對。

【寒餒】 力ンタイ 

こごえると、うゑると。北齊書、蘇弘勳傳「位至高陽太守、在官淸素、妻子不免──時議高之」=寒餓。

【寒暖】 カンダン 

寒暄に同じ。

【寒暖計】 カンダンケイ 

氣候のさむさと暑さとを計る器械。= 俗  寒暑表。

【寒潭】 カンタン 

水のひややかなるふち。潭正音シン音タンの時は水、又は州の名なれども今暫く俗讀に從ふ。謝靈運詩「凄凄陽卉腓、皎皎──潔」

【寒竹】 カンチク 

竹の一種、高さ五六尺、節細くして、杖などに造る。

【寒廳】 カンチヤウ 

さびしきおもてざしき。倪瓚詩「靑燈淡斜月、薄帷張──」

【寒天】 カンテン 

○さむそら。=寒空。○ 國  石花菜 トコロテングサ の煮汁を寒夜に晒して製せし半透明の食品。

【寒天版】 カンテンバン 

 國  寒天或は膠を用ひて造りし一種の印刷版、紫色インキにて刷る。こんにゃくばん。

【寒突】 カントツ 

ひえたる煙岀し。貧家のさま。文同詩「──無晨煙」

【寒熱】 カンネツ 

さむさと、あったかさと。禮記「──不節、民多瘧疾」

【寒梅】 カンバイ 

寒中にさくうめ。王維詩「已見──發、復聞啼鳥聲」

【寒芒】 カンバウ 

さむげなる星のひかり。蘇軾詩「新月皎如晝、疎星弄──」

【寒房】 カンバウ 

さびしきへや。杜甫詩「絕岸風威動、──燭影微」

【寒微】 カンビ 

まづしくしていやし、微は微賤。晉書、吾產傳「產出自──、有文武才幹」=寒陋。

【寒冰】 カンヒヨウ 

さむきこほり。唐明皇詩「瑞露垂花綬、──澈寶輪」

【寒膚】 カンブ 

ひえこごえたるはだ。元稹詩「──漸舒展」

【寒服】 カンフク 

寒中にきるきもの。謝瞻詩「風至授──」

【寒飆】 カンヘウ 

さむきつむじかぜ。謝朓詩「四面──舉、千里白雲來」

【寒盟】 カンメイ 

約を守る心を緩める、盟に背く。左、哀十二「盟所以周信也、苟有盟焉、弗可改也已、若可尋也、亦可寒也」尋は燖溫むる義。

【寒門】 カンモン 

まづしきいへ。蜀志、張任傳「家世──」=寒族。

【寒夜】 カンヤ 

さむき夜。

【寒瘍】 力ンヤウ 

しもやけ。儒門事親「戴人女僮足有──、俗云凍瘡」

【寒往】 力ンユク 

寒氣の去る義。易經「──則暑來、暑往則寒來、寒暑相推而歲成焉」

【寒流】 カンリウ 

○さむき水のながれ。謝朓詩「──自淸泚」○地文學にて北極地方より赤道地方に向ひて流れ來る潮流。

【寒林】 力ンリン 

冬枯れのさびしきもり。宣和畫譜「尤喜畫山水──」

【寒綠】 カンリヨク 

草木の秋冬の頃に靑く茂るをいふ。吳錫麒詩「野燒迷──」=寒翠。

【寒冷】 カンレイ 

さむくつめたし。

【寒烈】 カンレツ 

さむさはげし。後漢書「時天──、衆皆饑疲」

【寒露】 カンロ 

二十四氣の一。陰曆九月の節、陽曆の十月九日頃に當る。

【寒陋】 カンロウ 

まづしくいやし。北齊書、樊遜傳「門族──」=寒微。

【撥盡寒爐 】 力ンロヲハツジンス 

火の無き寒き爐の灰をかきつくす、呂蒙正少くして貧し、訪謁して遇はず、詩ありいふ「十謁朱門九不開、滿身霜雪卻囘來、歸家羞見妻兒面、────一夜灰」

【寒泓】 カンワウ 

つめたき水たまり、硯の異名。文同詩「風前試──」

寓  

グ [遇]

通音グウ

○よす、よる(寄)○よせ與へる、やる「─書」○やどす、やどる(宿)「寄─」「旅─」○つく(屬)○かこつける、ことよせる(假託)「─言」○かりずまひ、やど、やどや(旅宿)「客─」

【寓意】 グウイ 

他の物事にかこつけて、其の意をほのめかす。老學菴筆記「淵明之詩、皆率然──、而不流于物」

【寓居】 グウキヨ 

かりずまひ、=僑居。

【寓懷】 グウクワイ 

おもひを寄せる。伊洛淵源錄「──塵埃之外」

【寓言】 グウゲン 

事にかこつけていふ。又、其のことば。史、莊周傳「其著書十餘萬言、大抵率──也」

【寓公】 グウコウ 

國を失ひて、他國に寄寓する君主、又は諸侯。禮、郊特牲「諸公不臣──」

【寓宿】 グウシユク 

かりずまひ。白居易文「投山館以──、夜緜緜而未央」

【寓書】 グウシヨ 

てがみをおくる。左、襄二四「子產──于子西、以吿宣子」=寄書。

【寓食】 グウシヨク 

ゐさふらふ。元稹詩「我來荊門椽、──公堂肉」=寄食。

【寓木】 グウボク 

やどりぎ。山海經「龍山上多──」=寄生木。

【寓目】 グウモク 

あをつけて見る。左、僖二八「得臣與──焉」=屬目。

寔  

ショク [職]

○まことに(誠)實と通ず。○ただ(止)○これ(是)

寐  

ビ [寘]

○いぬ(寢)「假─」「夢─」「寤─」寢は橫に臥す、─はねいる、まどろむ。公羊、僖二「寡人夜者寢而不─」○ふす(伏·臥)いこふ(息)○くらし(昧·不明)

 同訓異義 

イヌル 寐·寢·瞑の別は寢(宀部十一畫)の條を見よ。

【寐語】 ビゴ 

ねごと。たはごと。梅堯臣詩「──尙不誑」續雜纂「難理會醉漢──」=囈語

富  

フウ フ [宥]

○とむ、とみ、財に豐かなり。「巨─」「豪─」「暴─」「榮─」「奸─」書、洪範「五福二曰─」○とます。○そなはる(備)みちたる(滿足)晉書、夏侯湛傳「文章宏─」あつし(厚)ゆたか(豐)多し「豐─」「繁─」「饒─」「─贍」

【富溢】 フウイツ 

とみて財があまる。晉書、閻纘傳「生而──、無念修己」=富衍。

【富貴】 フウキ 

とみてたっとし。貧賤の對。論、顏淵「死生有命、──在天」

【富貴花】 フウキクワ 

牡丹 ボタン の異名。周敦頤、愛蓮說「牡丹、花之富貴者也」

【富有】 フイウ 

ゆたかにたもつ。易、繫辭「──之謂大業」=富裕。

【富益】 フエキ 

ましとます。魏書、髙謙之傳「別鑄小錢、可以──」

【富翁】 フヲウ 

かねもちのだんな。論衡「治生積貨、至於年老、遂成──矣」=富家翁。

【富豪】 フガウ 

大いなる金滿家。漢書、卜式傳「是時──皆爭匿財」

【富給】 フキフ 

とみてゆたか。後漢書、祭遵傳「少好經書、家──」

【富强】 フキヤウ 

富みてつよし〔史、河渠書「

【富源】 フゲン 

とみを生ずる本。生產の材料。=利源。

【富厚】 フコウ 

ゆたかにあつし。戰國策「人生世上、勢位──、蓋可忽乎哉」=富裕「

【富國】 フコク 

國をとます。又、とめる國。荀子に──篇あり。唐書、王銓傳「有──術、寵遇益厚」

【富國强兵】 フコクキヤウヘイ 

國を富まし兵を强くする。

【富才】 フサイサイヲトマス 

才にとむ。又、才を長ぜしむ。文心雕龍「積學以儲寶、酌理以──」

【富歲】 フサイ 

ゆたかなるとし。孟、吿子「──子弟多賴」=豐年。

【富士山】 フジサン 

義楚六帖「日本王城東北千餘里、有山名富士、或云、是蓬萊也、高峻無際、三面臨海、山頂常有烟突起焉」

【富商】 フシヤワ 

とみたる商人。史、貨殖傳「──大賈、周流天下」

【富春】 フシユン 

山名、浙江省桐廬縣の西に在り、後漢の嚴光此に耕す、前は──江に臨む、灘あり嚴陵瀨といふ、嚴光游釣の處。

【富庶】 フシヨ 

ゆたかにして人民多し。韓偓詩「居雜商徒偏──、地多詞客自風流」

【富殖】 フシヨク 

とみてゆたか。後漢書「高氏蔡氏竝皆──、郡人畏而事之」

【富盛】 フセイ 

ゆたかにさかんなり。晉書、習鑿齒傳「宗族──、世爲鄕豪」

【富饒】 フゼウ 

とみてゆたか。易林「──豐衍、快樂無已」=富裕。

【富瞻】 フセン 

○文才などが十分に足る。晉書、葛洪傳「才章──」○富みて足る。=富裕。

【富弼】 フヒツ 

字は彥國、宋の河南の人、篤學にして大度あり、神宗の時、同平章事と爲る、王安石と議合はずして相を罷め、家居する十餘年、卒して文忠と諡す。

【富茂】 フモ 

ゆたかにさかえる。家語「旣──矣」

【富力】 フリヨク 

とみのちから。歐陽修詩「欲誇──壓羣豪」

【富麗】 フレイ 

ゆたかにしてうるはし。柳宗元文「堂宇之飾、宏大──」

【爲富不仁】 トミヲナセバジンナラズ 

財貨を蓄ふることをすれば、人を恤み仁を爲すこと出來ず。孟、滕文公「陽虎曰、────矣、爲仁不富矣」

【富籤】 トミクジ 

 國  次條に同じ。

【富鬮】 トミクジ 

 國  番號を記入せし多くのくじを賣り、其の番號中の或ものに金錢を賭け、當りし者に與へる無盡講、富籤。= 俗  彩票。

【富潤屋】 トミハヲクヲウルホス 

富めば自ら家屋を潤飾する義。大學「───、德潤身」

【富在知足】 トミハタルヲシルニアリ 

分に安んずべきをいふ。說苑「────、貴在求退」

寎  

ヘイ [敬]

○おびえ(臥驚病)○おそはる(魘)

10畫

寘  

シ [寘]

○おく(置)○とどむ(止)とめ置く、すてる(廢)詩、周南「─彼周行」○いれる(納)

寖  

シン [侵]

○ひたす(漬)○やや、やうやく(漸)漢書、武帝紀「─明─昌」=浸·寖。

 同訓異義 

ヤウヤク 寖·漸○寖は漸漬の義、じりじり次第になり、いつのまにやらと譯す、水の物をひたすより轉用す。大學の序に「三代之隆、其法寖備」とあり、浸に作る、同じ。○漸は、ひたすと訓む、頓の反、だんだんに進む義、寖に同じ、水にて物をひたすに、次第にしみこむ意。

寗  

寧(宀部十一畫)に同じ。

寙  

ュ [麌]

窳とは別

○ものうし(嬾)○おこたる(怠)

11畫

寠  

①ク ル、ロ [麌]

②ロウ·ル [尤]

通じて窶に作る

①まづし(貧)○やつる(憔悴)貧しくして容貌がやつれる「貧─」

②甌─は高地の狹き處。又、かたよりそばだてる處。史、淳于髡傳「甌─滿篝」

寡  

クヮ [馬]

○すくなし(少)多の反對「多─」○へる(減)○ひとり(獨)○やもめ(孀婦)夫を亡ひし婦「鰥─」○やもを(鰥夫)○よわきもの(劣弱)勢力が衰へし者。○諸侯の謙稱。德が少しといふ義「─人」又、國人が他國人に對して己の君をいふ謙辭「─君」

 同訓異義 

スクナシ 寡·少·鮮·尠等の別は少(小部一畫)の條を見よ。

【寡居】 クワキヨ 

やもめぐらし。史記「平陽公主──」=寡處。

【寡虞】 クワケ 

心配すくなし、虞はおもんぱかり。陸機、辨亡論「封域──」

【寡君】 クワクン 

己の君を、他國の人に對していふ謙稱。儀禮、燕禮「──有不腆之酒」

【寡見】 クワケン 

見るとこるすくなし。揚子「寡聞則無約也、──則無卓也」王襃文「俚人不識、──尠聞」

【寡言】 クワゲン 

ことげすくなし。禮、內則「愼而──者」

【寡鵠】 クワコク 

やもめ(孀婦)に喩ふ。黃鵠歌「黃鵠早寡兮、十年不雙」白居易詩「暗鏡對孤鸞、哀弦畱──」

【寡妻】 クワサイ 

德すくなき者、卽ち寡人の妻の義にて、諸侯が己の妻の謙稱。一說に諸侯の嫡妻なり、嫡妻は惟~一なり、故に寡といふ。詩、大雅、思齊「刑于──、至于兄弟、以御于家邦」

【寡識】 クワシキ 

見識せまし、見聞が少し。東京賦「鄙夫──」=淺識。

【寡人】 クワジン 

諸侯の自稱。德少き人といふ謙辭。曲禮「諸侯自稱、曰──」

【寡信】 クワシン 

まことすくなし。老子「輕諾必──」

【寡處】 クワシヨ 

やもあにてくらす。易林「──無夫」=寡居。

【寡少】 クワセウ 

すくなし。晉書、虞悝傳「糧器空竭、舟艦──」

【寡小君】 クワセウクン 

己の君の夫人を、他國の人に對していふ謙稱。論、季氏「稱諸異邦、曰───」

【寡單】 クワタン 

すくなし。=微少。

【寡斷】 クワダン 

決斷すくなし。列子「扁鵲謂公扈曰、汝志强而氣弱、故足于謀而寡于斷」

【寡特】 クワトク 

孤立してたすけなし。春秋胡傳「人知其孤危──、可取而伐也」=孤特·寡單。

【寡德】 クワトク 

德すくなし。晉書、元帝紀「詔曰、惟朕──、纘我弘緒」

【寡獨】 クワドク 

寡は老いて夫なきもの、獨は老いて子なきもの。後漢書、安帝紀一其務崇仁恕、賑護──、稱朕意焉」

【寡薄】 クワハク 

すくなくうすし。唐書「物產──」=寡少。

【寡婦】 クワフ 

夫をうしなへる女。やもめ。禮記「──不夜哭」=寡女·?婦·孀婦。

【寡聞】 クワブン 

見聞せまし。禮、學記「獨學而無友、則孤陋而──」

【寡默】 クワモク 

寡は、事を省きて少くする、默は、言を愼みて多く言はず〔呂氏家訓〕

【寡約】 クワヤク 

つづまやかにしてうすし。晉書「羣僚常俸、竝皆──」

【寡欲】 クワヨク 

欲すくなし。孟、盡心「爲人也──」

寤  

ゴ [遇]

○さむ(覺)目がさめる。○さとる、悟に通ず「覺─」「改─」「開─」○さかふ(逆)牾に通ず。左、隱元「莊公─生驚姜氏」さかさ產。

【寤言】 コゲン 

眠さめてもの言ふ。詩經「獨寐──、永矢弗諼」

【寤生】 ゴセイ 

さかご(逆產)左、隱元「莊公──、驚姜氏」一說、母寢ぬる時、兒已に生れ寤めて後に覺るをいふ。

【寤寐】 ゴビ 

めさむると、いぬると。ねても覺めても。詩、周南「──求之」

【寤寐思服】 ゴビシワク 

寤めても寐ても思ひ懷ふ、服は懷。詩、周南「窈窕淑女、寤寐求之、求之不得、────」

【寤摽】 ゴヘウ 

目がさめて胸うちて憂ふ。詩、邶風「靜言思之、寤辟有摽」

【寤夢】 ゴム 

晝閒にありしことを、其の夜みる夢。周禮「四曰──」

寨  

サイ [卦]

○とりで(壘)=塞·砦。○まがき(藩籬)木を列ね柵となして防ぎ衞るもの。

察  

サツ セチ [黠]

○あきらか(明)つまびらか(審·詳細)反覆して詳審にする「明─」「亮─」「熟─」いちじるし(著)○みる(視)「視─」「觀─」○しる(知·識)孟、離婁「─於人倫」○かんがふ(考)○──はいさぎよし、きよし(潔)又、くだくだしく煩はしき貌「苛─」○ 國  おしはかる「推─」

【察按】 サツアン 

あきらかにかんがへる。唐書「今所──、準漢六條、而推廣之」

【察咎】 サツキウ 

あやまちの原因をたづねる。梁武帝文「原情──、或有可矜」

【察驗】 サツケン 

しらべかんがへる。亢倉子「淸心省念、──近習」

【察今】 サツコンイマヲサツス 

今の世の事をかんがへみる。呂覽「──則可以知古」

【察察】 サツサツ 

○いさぎよき貌。史、屈原傳「安能以身之──、受物之汶汶者乎」○わづらはしく、くだくだし(煩碎)き貌。老子「其政──、其民缺缺」

【察照】 サツセウ 

心にかんがへて明かにする。晉書、庾翼傳「値天高聽、邈未垂──」

【察度】 サツタク 

詳かにはかり考へる。大戴禮「──情僞」

【察納】 サツナフ 

あきらかにしらべて聽き入れる。柳宗元文「俯垂天聽、──微誠」

【察敏】 サツビン 

心明かにしてさとし。濳夫論「君子敦貞之質、──之才」

【察問】 サツモン 

くはしくしらベたづねる。金史、世宗紀「──細微、非人君之體」

實  

ジツ [質]

○みのる、みのり(稔)○みつ(充·滿)虛の對。たる(足)とむ(富)「富─」「虛─」○そなはる(備)○まこと、まごころ(誠)「眞─」「篤─」○まことに、じつに、げに。○まめやか(眞誠)「誠─」「忠─」○草木のみ(種子)さね(核)「果─」「木─」○けみす(驗)○あつ(當)罪をしらベて法律にあてる。書、呂刑「閱─其罪」○これ(是)○物事の正味。名の對。晉語「吾有卿之名而無其─」○しなもの、物品。左、莊二二「庭─旅百」○物事の存在、ことがら「事─」

 同訓異義 

マコトニ 實·信·眞·誠·允、固等の別は信(一三七頁二段)の條を見よ。○ミツ實·滿·盈·充等の別は滿(水部十一畫)の條を見よ。

【實意】 ジツイ 

深切なる心。又、本心。蘇軾詩「平生學道眞──、豈與窮達俱存亡」

【實印】 ジツイン 

 國  官に屆け置きておもてむきの證明に用ふるいんぎゃう。みとめ印の對。

【實益】 ジツエキ 

實際の利益。

【釋實而攻虛】 ジツヲステテキヨヲセム 

敵のそなへあるをさけて備なきをせめる。管子「─────」孫子「兵之形、避實而擊虛」

【實價】 ジツカ 

かけねなきねだん、正札つきの價。

【實行】 ジツカウ 

まことにおこなふ、實地に履行する。

【實學】 ジツカク 

實用のがくもん。

【實況】 ジツキヤウ 

實際のありさま。=實情。

【實科】 ジツクワ 

實地のわざ、卽ち裁縫手工等を敎へる學科「──髙等女學校」

【實敎】 ジツケウ 

 佛  眞實の理を究むる敎法。權敎 ゴンケウ の對。

【實業】 ジツゲフ 

農·工·商·漁·鑛業等、すべて實用に屬する事業。

【實現】 ジツゲン 

實際にあらはれる、實地に行ひしあす。

【實檢】 ジツケン 

實地に物をあらためる。

【實權】 ジツケン 

實際の權力。

【實驗】 ジツケン 

實際にためし見る。顏氏家訓「來河北不信有二萬斛船、皆──也」

【實語敎】 ジツゴケウ 

 國  一卷、作者詳かならず、經傳の格言又は佛敎の意に本づきて作りし昔時の敎訓書。

【實厚】 ジツコウジツアツシ 

誠の心が十分にある。韓非子「──者貌薄、父子之禮是也」

【實查】 ジツサ 

實際上のしらべ、實地調查。

【實在】 ジツザイ 

實際、世界に存在する、主觀を離れし客觀的世界の存在。

【實相】 ジツサウ 

 佛  萬有の眞實のありさま、眞如の本體。法華經「能究盡諸法──」=眞相。

【實字】 ジツジ 

實在の事物を表はす文字、卽ち名詞など。副詞等を虛字といふの對「──解」

【實施】 ジツシ 

實地に布き行ふ。

【實事求是】 ジツジゼヲモトム 

事物に就きて、其の事の眞相を求め尋ぬる。漢書、河閒景十三王傳「修學好古、────」

【實質】 ジツシツ 

なかみ、正味。

【實習】 ジツシフ 

書物、講義等によらず實地に就きて學習する「──科」

【實正】 ジツシヤウ 

 國  まこと、眞實、確實「借用候處──也」

【實情】 ジツジヤウ 

心の中より發するまことの情。冥報記「具述委曲──」

【實踐】 ジツセン 

實地にふみ行ふ「──躬行」宋史、理宗紀「朕惟孔子之道、我朝周惇頤·張載·程顥·程頤眞見──、深探聖域」

【實踐哲學】 ジツセンテツガク 

實踐躬行を主とする哲學。

【實戰】 ジツセン 

まことの戰。演習戰の對。

【實僧】 ジツソウ 

戒を保ちて得道せる僧。大智度論「釋初品是僧四種、有羞僧·無羞僧·啞羊僧·──」

【實測】 ジツソク 

實地に測量する。

【實體】 ジツタイ 

○まことの形體。內容、又は本質。形式に對していふ。○ ジツテイ   國  まめやかにして正直。=實直。

【實地】 ジツチ 

○ほんたうの場所、實際の土地「──踏查」○轉じてほんたう「──經驗」=實際。

【實直】 ジツチヨク 

まめやかにして正直。=實體 ジツテイ 

【實否】 ジツピ 

まことか、うそか。=虛實。

【實費】 ジツピ 

實際に支拂ひたる入費。

【實父】 ジツプ 

まことの父、生みのちち。養父の對。

【實物】 ジツブツ 

ほんもの、現品·現物。

【實物交換】 ジツブツカウクワン 

金錢を用ひず、品物と品物とを互にとりかへる。古代の商賣には多くこの法による。

【實務】 ジツム 

實際の任務、實地に從事する業務。

【實用】 ジツヨウ 

實際の入用、實地の用ひ。

【實利主義】 ジツリシユギ 

實地有益の智識を授け、獨立自治に必須なる技能を修めしむる敎育の主義。

【實力】 ジツリヨク 

正味のちから、かけひきなき實際の力。

【實例】 ジツレイ 

實際のためし。

【實歷】 ジツレキ 

實地の經歷、實地に見聞する。

【實錄】 ジツロク 

事實ありのままの記錄。漢書、司馬遷傳「其文直、其事核、不虛美、不隱惡、故謂之──」

【實布的利亞】 ヂツテリア 

咽喉に白色點狀の膜を生じ、呼吸の困難を感ずる傳染病。小兒に多し。=馬脾風 バヒフウ 

寢  

シン [寢]

○いぬ(寐)「晝─」ふす(臥)とこに就く。○やめる(止息)漢書、刑法志「兵─刑措」○居室、表ざしきを正─、休息のへやを内─といふ。○ふしど、ねや(閨)「─室」○ふしど(臥牀)○おたまや(廟)「陵─」「園─」また神殿。○みにくし、貌揚 アカ らず(容貌醜惡)=侵。

 同訓異義 

イヌル 寢·寐·瞑○寝はねどこに入りたるなり、臥なり。論語「食不レ語、寢不レ言」○寐はねいりたるなり、寤の反な=。公羊傳「寢而不レ寐」○瞑は目を閉ぢてねむるなり、眠に通ず。莊子「據二高梧一而瞑」

【寢衣】 シンイ 

ねまき。論、鄕黨「必有──、長一身有半」

【寢園】 シンヱン 

天子のみささぎ。唐書「祇謁──」=寢陵。

【寢格】 シンカク 

とどめて行はず、廢止する、格もやめる義。

【寢具】 シング 

ねる道具、夜著 ヨギ など。司馬相如賦「──旣設、服玩珍奇」

【寢興】 シンコウ 

いぬると起きると。杜甫詩「推忠忘──」=臥起。

【寢室】 シンシツ 

ねま、ねるへや。魏書、崔浩傳「──火作」

【寢所】 シンシヨ 

ねどこ、ふしど。甘澤謠「遂及──」=寢室。

【寢處】 シンシヨ 

ねたり坐したりして常に身を離さず。左傳「譬之如禽獸、吾食其肉、而──其皮矣」其の皮を坐臥の具とする義。

【寢食】 シンシヨク 

ねむると、くらふと。文中子「北山黄公善醫、先──、而後針藥」

【寢殿】 シンデン 

○おたまや。宋書、禮志「無封無樹、無立──」=寢廟。○おもてざしき。=正寢。

【寢殿造】 シンデンツクリ 

 國  中古時代、貴族の家屋のつくりかたの名。

【寢病】 シンビヤウ 

病にていぬる。後漢書、宋均傳「宋均常──、百姓耆老爲禱請」=臥病。

【寢兵】 シンヘイヘイヲヤム 

兵爭をやめる。老子「──之說勝、則險阻不守」

【寢廟】 シンベウ 

おたまや。古、宗廟の制、前を廟といひ、後を寢といふ。禮記「先薦──」=寢殿。

【寢門】 シンモン 

おもてざしきのでいりぐち。禮記「客至于──、則主人請入爲席、然後出迎客」

【寢陋】 シンロウ 

短小にしてみにくし。唐書、鄭注傳「貌──不能遠視」=侵陋。

【寢首】 ネクビ 

 國  寢てゐる人を不意に斬りて取りし首。

【寢棺】 ネグワン 

 國  屍體を横臥せるまま收むる樣に造りし棺。

寧  

ネイ [靑]

○やすし、やすらか、やすんず(安)「安─」「康─」「淸─」○さとがへり、嫁せし女子が父母の見舞に生家へかへる「歸─」○むしろ、其れよりはいっそ、どちらかといへば。○願ふことば無─とも連用す、同じ。○いかんぞ、いづくんぞ、否定の意をあらはす反語。史、陸賈傳「居馬上得之、─可以馬上治之乎」○かつて(曾)○丁─はねんごろ(諄復)くりかへしていひきかせる。= 俗  叮嚀。

 同訓異義 

ムシロ 寧·無寧·無乃○寧はいっそと譯し、安也と註す、二っの物を比べて、それよりは、これに寧ヤスんぜんとの義なり。論語に「禮與二其奢一也、寧儉」とある如し。○無寧は寧に、無乎を加へたるなり、論語に「無寧死二於二三子之手一乎」とありて、六全に曰く、惟、無字、乎字あり、故に無寧を訓して、寧と爲すべしとあり、かく反語にすれば、意つよくなる、卽ちむしろ云云すること無からんやの意にて云云するに還るなり。○無乃はむしろと訓むも、乃ち何何するなからん乎より轉ぜしなり。論語に「居レ簡而行レ簡、無乃大簡乎」とあるが如し、毋乃に作るも、亦同じ。○ヤスシ寧·安·康·泰等の別は安(四八一頁三段)の條を見よ。

【寧一】 ネイイツ 

やすんじて心擾 ミダ れず。史、曹相國世家「載其淸淨、民以──」

【寧殷】 ネイイン 

やすらかにして盛んなり。荀勗文「修己濟治、民用──」

【寧嘉】 ネイカ 

やすらかによし。韓愈文「擧政宣和、人則──」

【寧康】 ネイカウ 

やすらか。易林「千柱百梁、終不傾僵、周家──」=安康·康寧。

【寧居】 ネイキヨ 

心をやすんじて居る。史、五帝紀「披山通道、未嘗──」

【寧渠】 ネイキヨ 

いづくんぞ。史、張儀傳「蘇君在、儀──能乎」=寧詎。

【寧和】 ネイクワ 

やすくやはらぐ。齊書、武帝紀「巿朝宴逸、中外──」

【寧馨兒】 ネイケイジ 

寧馨は晉·宋の閒の俗語「あのやうな」「如此」の意、このやうなすぐれたる兒といふ義。晉書、王衍傳「何物老嫗、生此───、然誤天下蒼生者、未必非此人也」轉じて人の子を譽める詞とす。

【寧歲】 ネイサイ 

やすらかなるとし。國語「自子之行、晉無──」

【寧濟】 ネイサイ 

やすんじすくふ。魏志、高貴鄕公紀「聖德光隆、──六合」

【寧日】 ネイジツ 

やすらかなる日。梁武帝文「終無──」

【寧神】 ネイシン 

安心する。次條參看。

【寧親】 ネイシン 

親を安心さす。法言「孝莫大於──、──莫大於寧神」

【寧肅】 ネイシユク 

安らかにしてしづか。魏志、田豫傳「外胡聞其威名、相率來獻、州界──、百姓懷之」

【寧所】 ネイシヨ 

おちつきてをる。唐書「天下喁喁、莫知──」

【寧處】 ネイシヨ 

寧所に同じ。左、成六「辛苦墊隘、不遑──」

【寧靖】 ネイセイ 

やすらかに治まる、やすくしづか。晉書、吾彥傳「南州──」=寧靜·寧謐。

【寧靜】 ネイセイ 

やすらかにしづか。諸葛亮、戒子書「非──、無以致遠」=寧靖。

【寧息】 ネイソク 

安らかにやすむ。史、始皇紀「求其──、豈不難哉」=安息。

【寧泰】 ネイタイ 

やすらか。梁、昭明太子、七契「六合──、四宇咸康」=安泰。

【寧定】 ネイテイ 

やすらかに治まる。淮南子「天下──、百姓和集」=寧泰。

【寧謐】 ネイヒツ 

安らかにして靜か。周書、文帝紀「朕所以垂拱九載、實資元輔之力、俾九服──、誠賴翊贊之功」=寧肅。

【寧民】 ネイミンタミヲヤスンズ 

民を安寧にする。周禮、小宰「二曰敎職、以安邦國、以寧萬民、以懷賓客」=寧人。

【寧樂】 ネイラク 

○心を安んじたのしむ。易經、疏「此是──之時」○ ナラ   國  地名、奈良に同じ。

【寧王】 ネイワウ 

天下をやすんずる王。書、大誥「──遺我大寶龜」ここは文王を指していふ。

【寧可玉碎何能瓦全】 ムシロギヨクサイスベシナンゾヨクグワゼンセン 

玉となりて碎くべきも、瓦となりて生存せずとの義〔北齊書、元景安傳〕世說「寧爲蘭摧玉折、不作簫敷艾榮」

【寧爲雞口勿爲牛後 】 ムシロケイコウトナルモギウゴトナルコトナカレ 

大いなる者の後につくよりは、小なる者の頭となれとの義。史、蘇秦傳「鄙諺曰、────────、今西面交臂而臣事秦、何異於牛後乎」

【寧可以馬上治之乎】 ムシロバジヤウヲモツテコレヲヲサムべクンヤ 

豈何とて馬上に在りて天下を治むることを得んやとの意。史、陸賈傳「陸生時時前說誦詩書、高帝罵之曰、廼公居馬上而得之、安事詩書、陸生曰、居馬上得之、────────」

寞  

バク [藥]

さびし(寂)しづか(閑)しんとして聲なし「寂─」「索─」「落─」

【寞寞】 バクバク 

靜かなる貌。=寂寞·寂寥。

?  

リュウ [東]

天の形。=窿。

寥  

レゥ [蕭]

○さびし(寂)「寂─」○しづか(靜)「──」「凄─」○むなし(空虛)○ほがらか(廓)「廓─」○まれ(稀)

【寥廓】 レウクワク 

ほがらかにして大いなり。廓は大。又、おほぞら(虛空)楚辭、遠遊「上──而無天」

【寥闊】 レウクワツ 

ものさびし。杜甫詩「大雅何──、斯人尙典刑」=寂漠·寂寞。

【寥豁】 レウクワツ 

ものさびしくむなし、豁は空。張望詩「毀屋正──」

【寥?】 レウケキ 

しづかにひっそりとする。?は沈靜。杜甫詩「人閒夜──」

【寥落】 レウラク 

靜かにしてむなし。謝朓詩「曉星正──」

【寥戾】 レウレイ 

聲の淸く遠き貌。謝朓詩「──淸笳轉、蕭條邊馬鳴」

【寥寥】 レウレウ 

さびしき貌。又、空虛なる貌。潘岳、寡婦賦「仰神宇之──」=寥乎·寂寥。

12畫

寬  

クヮン [寒]

○ひろし、心が廣い、家屋がひろい、ゆったりとして餘地がある。ゆるやか。嚴の對。ゆるし、ゆるくす(緩)ゆるめる。○ゆるす(宥)手やはらかにする、ゆたか(胖·裕)○いつくしむ(慈)○めぐむ(仁)

 同訓異義 

ヒロシ 寬·廣·博·闊·弘·汎の別は廣(广部十二畫)の條を見よ。○ユタカ寬·豐·饒·裕·優·胖の別は豐(豆部十一畫)の條を見よ。

【寬易】 クワンイ 

心ゆったりとしておだやか。歐陽修文「公、爲人質重寬易」

【寬雅】 クワンガ 

ゆったりとしてみやびやか。南史、沈文季傳「以──見知」

【寬宏】 クワンカウ 

心ゆるやかにひろし。=寬弘。

【寬閑】 クワン力ン 

ひろくしてのどか。韓愈、答崔斯立書「耕──之野」

【寬簡】 クワンカン 

心寬大にして、事を簡略にする。晉書、嵆康傳「天質自然、恬靜寡慾、含垢匿瑕、──有大量」

【寬緩】 クワンクワン 

ゆるやか。史、李廣傳「──不苛」=寬舒·寬綽。

【寬刑】 クワンケイ 

しおきをゆるやかにする。又、ゆるき法律。國語「修令──、施民所欲、去民所惡」

【寬嚴】 クワンゲン 

ゆるやかなると、きびしきと。宋史「法可謂──適中」

【寬弘】 クワンコウ 

心ゆったりとひろし。隋書、庾季才傳「局量──、術業優博」

【寬厚】 クヮンコウ 

ゆったりとしてあつし。

【寬窄】 クワンサク 

ひろきと、せまきと。李商隱詩「衣帶無情有──」

【寬仁】 クワンジン 

心ひろくあはれみふかし。史、高祖紀「──而愛人喜施」

【寬赦】 クワンシヤ 

ゆるす。史記「上以親故常──之」=寬免·寬宥。

【寬敞】 タワンシヤウ 

ひろくほがらか。後漢書、劉般傳「府寺──、輿服光麗」

【寬詳】 クワンシヤウ 

ゆるやかにしてつまびらか。後漢書、陳忠傳「用心務在──」

【寬綽】 クワンシヤク 

心ゆるやかに、迫らず。詩經「寬兮綽兮」綽もゆるやか。晉書、宣帝紀「性──、以能容」=寬裕。

【寬恕】 クワンジヨ 

心廣く思ひやりあり。後漢書、魏霸傳「以簡朴──、爲政」

【寬舒】 クウンジヨ 

ゆるやか。管子「──而仁、獨樂其身」=寬緩。

【寬整】 クワンセイ 

ひろくしてととのふ。宋史、汪綱傳「創營千餘閒、──堅密、增置甲兵、威聲赫然」

【寬靜】 クワンセイ 

ゆるやかにしてしづか。禮記「寬而靜、柔而正者、宜歌頌」宋史、呂蒙正傳「蒙正至洛、政尙──」

【寬饒】 クワンゼウ 

ゆたか。田況、内帑策「下民──、大計盈給」

【寬疏】 クワンソ 

ゆるやかにして法律があらい「禁網──」

【寬大】 クワンダイ 

○心ゆるやかに大いなり。漢書、丙吉傳「──好禮讓」=寬裕。○手やはらかにする「──の處分」

【寬大長者】 クワンダイチヤウジヤ 

度量廣くして、德のすぐれたる人。漢書、高帝紀「沛公素────」

【寬待】 クワンタイ 

ゆるやかにもてなす。

【寬貸】 クワンタイ 

刑罰をゆるやかにする。宋史、郭忠孝傳「歲起大獄、忠孝治其首、餘悉──」

【寬典】 クワンテン 

ゆるやかなるおきて。舊唐書「雖存──、而犯者漸少」

【寬而栗】 クワンニシテリツ 

外ゆるやかにして內にきびしき所ある義〔書、舜典〕

【寬平】 クワンべイ 

ゆるやかにして、えこひいきなし。唐書、刑法志「治以──、民樂其安」=寬仁公平。

【寬網】 クワンマウ 

法律をゆるやかにす。又、ゆるやかなる法律。晉書「時泰則──以將化」

【寬猛相濟】 クワンマウアヒスクフ 

ゆるやかなると、たけきと互に其の弊をすくひて、中正を得る。左、昭二十「寬以濟猛、猛以濟寬、政是以和」

【寬免】 クワンメン 

○罪をゆるす。元史「大德九年、下──之令」=免刑。○租稅をゆるくす。

【寬裕】 クワンユウ 

心ひろくゆるやか。禮記「敬愼者仁之地也、──者仁之作也」

【寬容】 クワンヨウ 

心廣くして能く衆をいれる。韓詩外傳「德行──、而守之以恭」

審  

シン [寢]

○つまびらか(詳)くはし、明細、つくす(悉)「詳─」「覆─」「明─」「精─」○あきらか(明)○きはめる(熟究)ただす(正)罪をしらベただす「─判」○きっと、果して、決定の意をあらはす助詞「─如此」の類。

【審交之詩】 シンカウノシ 

人に交際するには、審に其の人物を擇ぶ可きをいへる詩。唐の孟郊の作、詩に曰く「種樹須擇地、惡土變木根、結交若失人、中道生謗言、君子芳桂性、春濃寒更繁、小人槿花心、朝在暮不存、莫躡冬冰堅、中有濳浪翻、惟當金石交、可與賢達論」

【審覈】 シンカク 

つまびらかにとりただす。覈は考へしらべる。後漢書「硏機綜微、靡不──」

【審議】 シンギ 

十分にくはしく評議する。「──討論」宋史「大常寺博士、掌講定五禮儀式、有改革、則據經──」

【審求】 シンキウ 

つまびらかにさがす。蔡邕文「──曆象、其要者莫大於月令」

【審查】 シンサ 

つまびらかにとりしらべる「──員」=精查。

【審察】 シンサツ 

あきらかにしらべみる。說苑「耳目聰明、思慮──」

【審詳】 シンシヤウ 

つまびらか。禮記「君子審禮、不可誣以姦詐」疏「言君子之人、若能──於禮、則姦詐自露、不可誣罔」

【審處】 シンシヨ 

つまびらかにとりさばく。處は處置·處理の義。史、魯仲連傳「故定計──之」

【審正】 シンセイ 

つまびらかにしてただし。北史「容貌魁偉、風度──」

【審度】 シンタク 

つまびらかにはかる。錢翊文「承命以來、通宵──」=審料。

【審端】 シンタン 

つまびらかにただす〔禮記〕

【審定】 シンテイ 

つまびらかにしらべて定める、詳審して釐定する義〔論衡〕

【審諦】 シンテイ 

あきらか。禮記「制度──、道德著明」

【審判】 シンバン 

つまびらかに是非曲直をさばく。審問して判斷する「──官」

【審美學】 シンビガク 

美の本質を硏究する科學。=美學。

【審問】 シンモン 

くはしく問ひきはむ。中庸「博學之、──之」

【審理】 シンリ 

つまびらかにとりしらべる。金史「──寃獄」=審處。

【審料】 シンレウ 

つまびらかにはかる。後漢書「──成敗」=審度。

寫  

シャ [馬]

○うつす「謄─」原本の通りにうつす「描─」「摸─」○のぞく(除)詩、邶風「駕言岀遊、以─我憂」つくす(盡)かたむく(傾)○もらす(洩)そそぐ、今、瀉に作る。○まねる(放效)摹畫する。○像を鑄る。越語「以良金、─范蠡之狀」

 同訓異義 

ウツス 寫·摹·描·謄○寫は、うつすとよみ、うつるとは訓まず、寫レ字の類。○摹はまねて寫すこと、摹倣·摹寫と連用す。○描はうつし畫なり、摹ょりは輕し。○謄はそのまま書き取る義、說文に、謄は之を移寫するを謂ふとあり。

【寫意】 シヤイ 

畫法の一派、形似を求めずして其の精神を寫す。

【寫字】 シヤジ 

文字をかきうつす「──生」

【寫實派】 シヤジツハ 

實際の狀態を其のまま寫し岀す文學上の一派。

【寫眞】 シヤシン 

○肖像を畫きうつす。麗情集「久之成疾、──相寄」杜甫詩「每逢佳士必──」○ 國  寫眞機にて形像をうつす。= 俗  照相。

【寫神】 シヤシン 

人の風神を寫す。輟耕錄「錢塘陳鑑如以──、見推一時」

【寫象】 シヤシヤウシヤザウ 

心理學にて客觀が主觀に知覺せられて心に映じたるもの。

【寫書】 シヤシヨ 

ほんをうつす。漢書、藝文志「置──之官」

【寫生】 シヤセイ 

實物のままをうつす。徐氏筆精「倪元瓚輩、始喜──、脫畫家蹊徑」

【寫照】 シヤヤウ 

肖像をうつす。畫像をいふ。晉書、顧凱之傳「傳神──、正在阿堵中」

【寫本】 シセホン 

うつしたる書物。印本·版本の對。大學衍義補「唐以前書籍皆──、人以藏書爲貴」

寮  

レゥ [蕭]

○つかさ(官吏·官僚)通じて僚に作る。○ともがら(同官·同僚)○こまど(小窗)轉じて、小さき家「茶─」陸游詩「屋窄似僧─」

【寮佐】 レウサ 

したやく(下官)屬官。晉書「鍾會反、──竝遇害」=僚佐

【寮屬】 レウゾク 

屬官。吳志「接待──」

13畫

寰  

クヮン [删]

○古、封建時代に天子の封畿内の縣。轉じて境域の大いなるものをいふ。天地、天下などの義とす「─宇」○場處、一區域をなせる處「仙─」「區─」○宮殿の周垣 メグリノカキ 

【寰宇】 クワンウ 

せかい。天下、天地。南史「聲振──、澤流遐裔」=俗寰球

【寰埏】 クワンエン 

天地のかぎり。王勃、拜南郊頌「思周宇宙、樂極──」

【寰内】 クワンダイ 

天子の領土全體。天子の畿内。穀梁、隱、元「──諸侯」注「寰卽古縣字」

16畫

寵  

チョウ [腫]

○めぐみ、めぐむ(恩)いつくしみ、君主の愛「君─」いつくしむ(愛)「─愛」「恩─」「隆─」「優─」「榮─」○たふとくさかゆ(尊榮)易、師卦「承天─也」○君主のお氣に入り、おもひもの、俗に妾の義とす「納─」「內─」「嬖─」

【寵愛】 チヨウアイ 

いつくしみ愛する。漢書、董賢傳「──日甚」=寵幸。

【寵渥】 チヨウアク 

てあつくめでる。朱子、靜菴雙鶴賦「受乘軒之──、釋籠檻之羈縻」

【寵異】 チヨウイ 

衆に異にして特别にめでいつくしむ。左傳、注「爲立別號、所以──之也」

【啓寵納侮】 チヨウヲヒラキアナドリヲイル 

人を寵すること度に過ぐれば反りて侮をいるるに至る。書、說命「無啓寵納侮」

【寵幸】 チヨウカウ 

特に愛せられる。=寵愛。

【寵姬】 チヨウヰ 

君主のお氣にいりのをんな、おもひもの。

【寵貺】 チヨウキヤウ 

愛して物をたまはる。又、其のくだされもの。

【寵遇】 チヨウグウ 

てあつきもてなし。後漢書、黃香傳「──甚盛、議者譏其過倖」=恩遇。

【寵光】 チヨウクワウ 

君のあつきみめぐみ。君を天日に比して光といふ。韓愈文「陛下不加罪責、更極──」

【寵顧】 チヨウコ 

目をかけて愛する。宋史、張洎傳「洎與錢若水同在翰林、甚被──」

【寵厚】 チヨウコウ 

特別にあつく愛せらるる。晉書「受遇三世、恩隆──」

【寵兒】 チヨウジ 

特別に愛せらるる子。又、仕合よき人。=寵子。

【寵賜】 チヨウシ 

寵錫に同じ。

【寵奬】 チヨウシヤウ 

特別にめでてほめすすめられる。元稹、同州刺史謝表「陛下察臣無罪、──逾深」

【寵辱】 チヨウジヨク 

めでられてさかえると、そしりはづかしめらるると。老子「──若驚」

【寵辱皆忘】 チヨウジヨクミナワスル 

己の寵榮も恥辱も皆忘れて心に懸けず。范仲淹、岳陽樓記「登斯樓也、則有心曠神怡、────、把酒臨風、其喜洋洋者矣」

【寵綏】 チヨウスヰ 

いつくしみやすんずる。書、泰誓「惟其克相上帝、──四方」

【寵招】 チヨウセウ 

特別のいつくしみある招待。

【寵錫】 チヨクセキ 

愛して物を賜ふ。又、其のくだされもの。張九齡詩「──從仙禁」=寵貺。

【寵妾】 チヨウセフ 

氣に入りのめかけ。史記「景公──芮姬」

【寵擢】 チヨウタク 

特別に愛してぬき用ふる。白居易文「自惟賤陋、非次──、夙夜腆愧」=寵拔。

【寵秩】 チヨウチツ 

特に愛して官職をさづける。魏史、杜恕傳「陛下復以冀州、──呂昭」

【寵拔】 チヨウバツ 

特別に愛してぬき用ふる。元史、燕鐵木兒傳「受武宗──之恩」

【寵嬖】 チヨウへイ 

お氣に入りの身分ひくきけらい。

【寵命】 チヨウメイ 

天子のいつくしみあるおぼしめし。李密、陳情表「──優渥」=恩命。

寳  

寶(次條)の俗字。

17畫

寶  

ハウ ホウ [皓]

○たから、金銀珠玉の如く珍らしく貴ぶベき者「七─」「珍─」「財─」「祕─」「重─」「家─」「國─」○たっとし、たっとぶ(貴)愛重する。書、旅獒「所─維賢」○おもんず、おもし(重)○古、天子諸侯の爵位、領土のしるしに玉を用ひしによりて、しるし、おしで(符璽)の義とす。○錢幣をいふ「通─」○天子のことにいふ「─算」は天子の御齡。

【寶愛】 ハウアイ 

大切にする。後漢書、杜林傳「得漆書古文尙書一卷、常──之」

【寶鴨】 ハウアフ 

すぐれてよき香爐。孫魴、夜坐詩「坐久烟銷──香」潛確類書「金猊、寶鼎·──·金鳧、皆焚香器也」

【寶位】 ハウヰ 

たかみくら、天子の位。易、繫辭「聖人之大寶曰位、何以守位、曰仁」

【寶駕】 ハウガ 

天子のおのりもの。=大駕·乘輿。

【寶戒】 ハウカイ 

たふときいましあ。傳燈錄「白樂天久參佛光、得心法、兼稟大乘金剛──」

【寶號】 ハウガウ 

 俗  人の店鋪の敬稱、貴店。

【寶器】 ハウキ 

たからもの。史記「晉軍追齊至馬陵、齊侯請以──、謝不聽」

【寶琴】 ハウキン 

たふときこと。西京雜記「趙后有──、曰鳳凰」

【寶鏡】 ハウキヤウ 

たふときかがみ。李白詩「──似空水、落花如風吹」

【寶冠】 ハウクワン 

○寶玉にて飾りし冠。○ 國  天子が春の儀式に著けらるる御冠。

【寶冠章】 ハウクワンシヤウ 

 國  國家に功勞ある婦人に與へられる勳章。八等に分つ、中央に寶冠の形をあらはす。

【寶偈】 ハウゲ 

佛家の詩詞の敬稱。法苑珠林「朝宣──、夕出苦海」

【寶玦】 ハウケツ 

たふとき男子のおびだま。玦は環の少しく缺けたるもの。杜甫詩「腰下──靑珊瑚」

【寶篋】 ハウケフ 

たふときはこ。徐陵文「漢委珠囊、秦亡──」

【寶劍】 ハウケン 

たからのつるぎ。孟浩然詩「遊人五陵去、──直千金」

【寶庫】 ハウコ 

寶物ぐら。曹植、應詔詩「微火不戒、延我──」=寶藏。

【寶座】 ハウザ 

○天子のいます所。高御座 タ力ミクラ 梁簡文帝文「峩峩──、郁郁名香」○ 佛  佛の座をいふ。

【寶釵】 ハウサイ 

たふときかんざし。秦嘉文「今致──一雙、價値千金」

【寶藏院流】 ハウザウヰンリウ 

 國  槍術の一派、奈良興福寺の寶藏院の僧、胤榮のはじめしもの。

【寶刹】 ハウサツ 

てらの敬稱。刹は寺塔。白居易詩「晚登西──、晴望東精舍」=寶坊。

【寶山】 ハウザン 

珍らしきたからを產する山。次條參看。

【入寶山空手歸】 ハウザンニイリテラヲムナシクシテカへル 

多く得べき所に至りながら、何物をも得る能はざる喩。正法念經「閻羅王爲人說偈云、汝得人身不修道、如──────」

【寶算】 ハウサン 

天子のおんとし。徐彥伯、應制詩「五龍歸──、九雁叶時康」=聖壽。

【寶璽】 ハウジ 

たふとき天子の印章。宋史「學士院上──、靈光翔鶴樂章」

【寶瑟】 ハウシツ 

たふときこと。何遜詩「羅帳雀釵影、──鳳雛聲」=寶琴。

【寶生】 ハウシヤウ 

 國  能樂 ウタヒ の流派の一、觀世の支族世阿彌より始まる。=保生。

【寶珠】 ハウシユ 

たふときたま。維摩經「譬如不下巨海、不能得無價──」

【寶瑞】 ハウズヰ 

めでたきしるし。梁簡文帝文「嘉祥競發、──咸委」

【寶星】 ハウセイ 

 俗  勳章。

【寶石】 ハウセキ 

たふとく珍らしき石。金剛石·剛玉石の類。五雜俎「靺鞨、本蠻夷國名、其地產──」

【寶惜】 ハウセキ 

をしみて大切にする。尙書故實「太宗酷好法書、──者獨蘭亭爲最」

【寶前】 ハウゼン 

 國  神佛のおんまへ。

【寶扇】 ハウセン 

寶石にて飾れる華美なるあふぎ。虞集詩「翠蓋重重──斜」

【寶祚】 ハウソ 

天子のくらゐ。周書、宣帝紀「朕以眇身祇承──」

【寶帶】 ハウタイ 

珍らしき寶玉にて飾りし帶。唐書「錦袍──」

【寶塔】 ハウタフ 

寺のたふの敬稱。釋氏通鑒「夜役鬼神、碎七寶末、造八萬四千──」

【寶地】 ハウチ 

○すぐれてよき地。論衡「獻其──」○佛を安置せる地。王勃文「香城──、左右林泉」=佛地。

【寶持】 ハウヂ 

大切にたもつ。魏文帝文「不逢不若、永世──」

【寶珍】 ハウチン 

たふときたま。戰國策「──隋珠、不知佩兮」

【寶鼎】 ハウテイ 

たふときかなへ。史記「黃帝作──三、象天地人」

【寶典】 ハウテン 

最も珍重すべき書物。

【寶殿】 ハウテン 

金玉をちりばめたる殿舍。蕭子良詩「金簡盈──」

【寶馬】 ハウバ 

すぐれし名馬。史、大宛傳「貳子馬宛──也」

【寶馬香車】 ハウバカウシヤ 

すぐれて立派なる馬や車。沈佺期詩「────淸渭濱、紅桃碧柳禊堂春」

【寶貝】 ハウバイ 

珍らしき貝類〔木華、海賦〕轉じて廣く物の珍貴なる者の稱とす。

【寶煤】 ハウバイ 

たふとき墨。劉仲尹詩「──香散鳳綃空」

【寶坊】 ハウバウ 

寺の敬稱、坊は僧舍。雞跖集「給孤長者、以黄金布地、爲伽藍、故號──」=寶刹。

【寶符】 ハウフ 

たふときおふだ、すぐれて貴き神符。史、趙世家「吾藏──于常山上」

【寶璧】 ハウヘキ 

たふときたま。戰國策「敝邑有──一雙、文馬二駟、請致之先生」

【寶命】 ハウメイ 

天の命令。書經「無墜天之降──」

【寶物】 ハウモツ 

たからもの〔漢書、酷吏咸宣傳〕

【寶用】 ハウヨウ 

大切に用ふる。史記「白金稍踐、民不──」

【寶欄】 ハウラン 

うつくしきてすり。陳旅詩「桂樹吹香出──」

【寶引】 ハウビキ 

 國  正月に行ふ遊戲の一、くじを引きあてるあそび。

【寶船】 タカラブネ 

 國  正月二日の夜、枕の下にしきて吉夢をいのる船の圖。