谷部
0畫
①コク [屋]
②ヨク [沃]
③ロク [屋]
谷(次條)とは別
①たに、たにがは、兩山の閒のながれ、水が川に注ぐを谿といひ、谿に注ぐを─といふ「山─」「谿─」「幽─」「陵─」○やしなふ(養)(─は穀の音通、穀は生を養ふが故)○─風はこち(東風)○きはまる(窮)鞠の轉音。詩、大雅「進退維─」○たけどひ(竹樋)○暘─ ヤウコク は日の出る處。昧─ マイコク は日の入る處。○夾─は地名。春秋、定十「公會齊侯于夾─」
②吐─渾 トツヨクコン は靑海地方の國名、魏晉の際に、鮮卑の種族の立てしもの。
③─蠡 ロクリ は匈奴の藩王の封號。史、匈奴傳「置左右─蠡王」
たにの水を酌みてのむ。隱者の形容。淮南子「單豹倍世離俗、巖居──、不衣絲麻、不食五穀」宋書、雷次宗傳「與汝曹歸耕壟畝、山居──、人理久絕」
たににかけたるかけはし。蜀志、劉焉傳「住關中、斷絕──」
谷閒の空氣。淮南子「──多痺、丘氣多狂」
谷の入口。史、三皇紀「駕六羽出──」
硯の一種。硯箋「潭州、───、色淡靑、有紋如亂絲、叩之無聲、得墨快、發墨有光」
道を形容する語、道の體の空虛なるを谷に喩ふ。老子「──不死、是謂玄牝」一說、谷は養、神は五臟の神、人能く神を養へば死せず。
たにより出づるいづみ。隋煬帝詩「──驚暗石、風松動夜聲」
たにのそこ。張衡、南都賦「蓊鬱於──」
○こちかぜ、物を生長する風の義。字解參看。詩、邶風「習習──、以陰以雨」=東風·春風·穀風。○詩經の邶風の篇名、夫婦の道を失ふを刺 ソシ る、衞の人、其の上に化して、新婚に淫し、其の舊室 モトノツマ を棄て、夫婦離絕して國俗傷敗せしを述ぶ。又、小雅の篇名。周の幽王の時、天下の俗薄く、朋友の道絕えたるを刺 ソシ る。
海の異名。老子「江海所以能爲百谷之王」
キャク [藥]
笑ふ貌。噱に通ず。
3畫
コウ [東]
おほたに(大壑)=谼。
4畫
カ [麻]
谽─ カンカ は谷の中の大いにうつろなる(大空)貌。又、谷の深き貌。=谽呀。
カゥ [庚]
?に同じ
○ふかし(深)古、宏·閎に通ず。○──は谷の中のおほごゑ(大聲)の形容。法言、問道「非雷非霆、隱隱──」○鏗─は谷中のひびき。
博く大いなる議論、谹は深し。漢書、司馬相如傳「崇論──」史記に閎議に作る。=吰議·宏議。
5畫
カン [覃]
もと谽に作る
─閜 カンカ は陵谷の形。
6畫
コウ [東]
おほたに(大壑)「呂梁─」=?。
7畫
カン [覃]
─呀 カンカ は山谷の空しき貌。又、谷の大いに開けたる貌。谷の深き貌。司馬相如、上林賦「─呀豁閜」=谽?·谽谺。
谽呀に同じ。漢書、司馬相如傳「通谷豁兮──」字解參看。
前條に同じ。張衡、思玄賦「趨──之洞穴」
8畫
①コウ [東]
②ロウ [東]
①谷のうつろ(空)なる貌。吳儆、浮丘仙賦「─壑奧竇」
②──は山谷の深き貌。又、深く通ずる貌。又、長く大いなる貌。漢書、司馬相如傳「巖巖深山之──兮」
山谷の深き貌。字解參看。
10畫
クヮツ [曷]
○開け通じたる谷(通谷)○開ける「─然」「─達」「開─」○ほがらか(敞)○むなし、うつろ(空)韓愈、進學解「頭童齒─」○深き貌。○とほる(疏通)大學「而一旦─然貫通焉」○大いなる度量「─如」「─達」
むなしく開く貌。史、司馬相如傳「谽呀──」注「──、空虛也」=豁閕。
けん、拇戰をいふ。六硏齋筆記「俗飮以手指、屈伸相博、謂之──」
からりとさとる。沈約詩「迷塗旣已復、──非無漸」
ひろびろと開けたる貌。張衡、南都賦「或──而中絕」
宿直を免 ユル す。豁は開放しゆるす義。宋の制、館閣の官人、一人づつ輪番にて宿直す、もし事故あれば宿せず、豁免して其の夜を虛うす、之を──といふ〔耆舊續聞〕
心のひろびろしたる貌。開大の貌。史、高祖紀「高祖爲人、仁而愛人、喜施意──也」=豁爾。
○開けて大いなる貌。陶潛、桃花源記「行數十步、──開朗」○疏通 カラリトトホル の貌。大學「一旦──貫通焉」
心廣くして拘束せられず。晉書、祖逖傳「性──、不修儀檢」
○四方がうち開ける。何晏、景福殿賦「開南殿之──」○度量廣し。唐書、高祖紀「倜儻──」
心ひろく度量大いな=。陸贄、奏議「漢高────、天下之士、至者納用」
ゆるす。豁宿を見よ。
うち開けてひろし。雲笈七籤「百方千塗、莫不──」=寥豁。
ケイ [齊]
又、溪·磎に作る
○たに(澗)たにがは「深─」左、隱三「澗─沼沼沚之毛」水なきを谷といひ、水あるを─といふ。一說、水が山より出でて川に入るを─といふ。○─子は古の勁 ツヨ き弩の名。─子は弩の出づる國の名、一說に─は蠻夷なり、柘桑を以て弩を作り、─子の弩といふ。
たに。張協詩「──無人路、荒楚鬱蕭森」
飽き足ることを知らざる慾。貪欲の甚だしきに喩ふ。晉語「谿壑可盈、是不可饜」
たにがは。吳志、孫策傳「──盈溢」=?谿。
たに。史、春申君傳「廣川大水、山林──、不食之地也」淮南子「凡地形丘陵爲牡、──爲牝」=溪谷。
古の弩の名。淮南子「──之弩、不能無絃而射」字解參看。
たにみづ。=溪水。
たにがはの水のおと。=溪響。
ケイ [齊]
谿とは別
勃─ ボツケイ はそむきもとる(反戾)莊、外物「室無空虛、則婦姑勃─」勃は爭。
12畫
カン [豏]
─如 カンジヨ は深き谷の貌。又開く貌。江賦「─如地裂、豁若天開」
?(一一四五頁四段)に同じ。