臣部
0畫
シン [眞]
○けらい、おみ「君─」「忠─」「名─」「良─」「賢─」「世─」「近─」「老─」「爭─」「佞─」「幸─」「叛─」「草莽─」「社稷─」もと、仕宦せし者に限りていふ。廣韻「仕於公曰─、仕於家曰僕」○けらいたる道を盡す。論、顏淵「君不君、臣不─」○ひろく統治權の下に在る一般の人民「─民」詩、小雅「率土之濱、莫非王─」○けらいが君に對していふ自稱。○古、自己の謙稱とす。今の僕といふが如し。後漢書、高祖紀「─少好相人」呂公が劉季に對していふ。○主─はおそれる(惶恐)
しもじものけらい。書、泰誓「──化之」
心の淸白なるに喩ふ。漢書、鄭崇傳「臣門如市、────、願得考覆」
けらいと、そばめと。國語「男女服爲──」=臣妾。
けらいたるものと子たるものと。又單にけらいの義とす。
けらいとなりてつかへる〔胡銓、上高宗封事〕=臣服。
臣服に同じ。
一國の臣民。書經「惟茲──」=臣下。
○けらいたる分限。○ 國 皇族以外の臣民たる身分。
けらいと、そばめと。史、吳太伯世家「行成、請委國爲──」
○けらいとなりて從ふ。=臣從。○けらい。
けらいたるの本分。孟、離婁「欲爲臣、盡──」
官を辭する義。孟、公孫丑「孟子───而歸」=致仕·乞骸骨。
臣として仕ふる身は一なるも、君として事ふべき人は數多ある。左傳「諺曰、────、吾豈無大國」
けらいとなりてしたがふ。漢書、地理志「棲會稽、──請平」=臣從。
けらい、めしつかひ。禮、禮運「仕于公曰臣、仕于家曰僕」=臣隸。
一國のたみ。=臣庶·人民。
臣をいふ。書經「臣哉鄰哉」臣の左右輔弼たること家の鄰あるが如し、故にいふ。
いけどられてけらいとなる。仲長統、昌言「或曾與我爲等儕、或曾──我矣」
けらい、めしつかひ。薛道衡文「柳室氈裘之長、皆爲──」
役人、官吏〔舊唐書、憲宗紀〕
2畫
グヮ [箇]
卧は俗字
○ふす、ねる、橫になる「橫─」「安─」「仰─」「高─」○轉じて物の橫たはるにいふ。阿房宮賦「長橋─波」○ふさしむ。○やすむ(休)いこふ(息)○ふしど、ねま(寢室)「─內」
同訓異義
フス 臥·伏·偃·僵·俯·仆·俛の別は伏(一一六頁四段)の條を見よ。
ねまき。賈島詩「開篋收詩卷、掃牀移──」
ふしながら畫圖を見て、其の地に遊びし如く樂む。宋書、宗炳傳「名山恐難徧覩、惟當澄懷觀道、臥以遊之」
隱者のなかま。白居易詩「終身擬作───」
ふしながら見る。趙嘏詩「竹閒依舊──書」
ねおき。漢書、蘇武傳「杖漢節牧羊、──操持、節旄盡落」
やぐ。皮日休詩「行廚煮白石、──拂靑雲」
ふしながらみる。魏書、高允傳「汲長孺可──衞靑、何抗禮之有」
○ふしたる虎。西京雜記「見──射之」○官吏の嚴酷なるに喩ふ。後漢書、董宣傳「爲洛陽令、搏擊豪彊、莫不震慄、京師號爲──」○人の勇猛なるに喩ふ。魏書「李崇有將略、常養壯士數千人、寇賊侵邊、所向摧破、號曰──」
ねま。=臥所·寢室。
たきぎにふし、きもをなむ。あだを報いんが爲めに苦心して自ら勵ますにいふ。越王勾踐の故事。吳越春秋「越勾踐臥薪嘗膽欲報吳」
ねどこ。岑參詩「江樹連官舍、山雲至──」
ふしど、ねま。=臥內·臥房。
病氣にてねどこにふす。後漢書、趙岐傳「有重疾──七年」=臥褥。
雪中に臥するをいふ。後漢書、袁安傳、注「時大雪、積地丈餘、洛陽令自出按行、至安門、無有行路、謂安已死、令人除雪、見安僵臥、問何以不出、曰大雪人皆餓、不宜干人」皇甫曾詩「袁公方──」
いびき。孔平仲詩「──氣吸吸」
ねどこ。史、信陵君傳「晉鄙之兵符、常在王──」=寢室。
ねどこのそば。轉じて、自家の領分內の義。長編「趙宋伐江南徐鉉入奏、乞罷兵、上曰、江南之主有何罪、但────、豈容他人鼾睡乎」
勞せずして治まる、政を簡にして、よく民ををさむるにいふ。史、汲黯傳「黯爲東海太守、其治責大指而已、不苛小、黯多病、臥閨閤內、不出歲餘、東海大治稱之」=臥護。
ふしたるうめの木。后村詩話「近成都有──」
ふしど、ねま。=臥所。
病みてねる。孟浩然詩「南陌春將晚、北窗猶──」
ふしながらきく。馬戴詩「獨泛扁舟夜、山鐘可──」=臥聽。
ふしたるやなぎ。杜甫詩「──自生枝」
○ふしたる龍。庾信詩「晴戶疑藏虎、盤根似──」○臥龍はやがて雲雨を得て天にのぼる、以て英雄の未だ時を得ずしてひそみ居るに喩ふ。蜀志、諸葛亮傳「諸葛孔明、──也」
英雄の未だ世に出でざるに喩ふ。通鑑、漢獻帝紀「孔明爲臥龍、士元爲鳳雛」
臥(前條)の俗字。
8畫
①サゥ·ザゥ [陽]
②サゥ·ザゥ [漾]
①よし(善)論、子罕「何用不─」○あつし(厚)○をさむ。をさまる。=藏。○官吏がまひなひを受ける。又まひなひ。漢書、尹賞傳「貪汚坐─」=贓。○めしつかひ(奴)「─獲」
②はらわた。漢書、王吉傳「吸新吐故、以練五─」=臟。○くら。=藏。
同訓異義
ヨシ 臧·善·好·佳·嘉·哿·美·良·吉·淑の別は善(三四二頁四段)の條を見よ。
奴婢臧は奴、獲は婢。揚子方言「罵奴曰臧、罵婢曰獲」
奴婢。莊、騈拇「臧與穀二人、相與牧羊、而俱亡其羊」
よしあし。詩、大雅、抑「於乎小子、未知──」=否臧·善惡·淑慝·可否。
11畫
①リン [侵]
②リン [沁]
①のぞむ、高き所より下を見おろす「─深淵」○尊者が卑しき者の所に往く「光─」「親─」○かんがみる(監視)○をさむ、せいする(制御)○うつ(征伐)戰國周策「以─韓魏」○およぶ(及)其の時になる「─行」「─別」「─戰」○見てうつす「─摹」○いくさぐるま(兵車)敵陣に衝き入る車。○易の卦の名、兌下坤上。
②喪の時衆人が聚りて哭する「─哭」左、宣十二「─于大宮」
同訓異義
ノゾム 臨·望·涖·莅·眺の別は望(八九七頁二段)の條を見よ。
府の名、今の浙江省杭縣、宋の高宗南渡し建てて都と爲し──府と稱す。
其の場にのぞみてしらべる。唐書、吉溫傳「奏遣蔣沇──」
ふちに臨む。漢書、董仲舒傳「──羨魚、不如退而結網」淵(一○九九頁二段)を參看せよ。
天子の其の場にみゆきせられる義。唐書、儒學傳「數──觀釋菜」
ぬすびとを捕へて繩をなふといふに同じ。續雜纂の「不濟事」の條「臨渴掘井」說苑「譬之猶渴而穿井、臨難而鑄兵、雖疾從而不及也」とあるに本づく。
其の場にのぞみてとりしまる。
高處よりみおろす。=瞰臨·瞰下。
へ ン 事機の至るにのぞみ、勢の變化するに應じて適當の處分をなす。唐書、李勣傳「其用兵籌算料敵應變、皆契事機」
貴人が我が家に來るをいふ敬語、況は貺にて賜なり。史、魏其武安傳「將軍迺肯幸──魏其家」
○天子の位にのぼりて天下ををさめる。宋史、注輦國傳「遣使奉表曰、伏惟、陛下廓明明之德、以──下民、懷翼翼之心、以昭事上帝」○天子が其の場にのぞみたまふ。=臨幸。
其の場にのぞみてみる。後漢書、獻帝紀「太學行禮、車駕幸永福城門、──其儀、賜博士以下各有差」
うみづき、姙婦が將に子を產まんとする月。宋書、始安王傳「少府劉矇妾孕──」
其の場にのぞみてしらべる。後漢書、董卓傳「自加──」
會葬して泣く。
佛 禪宗の一派、六祖の弟子懷讓より出づ。
かんがみのぞむ。元史、禮樂志「上帝──、享於克誠」=涖止。
○其の時に及ぶ。魏志、董昭傳「計在──」○一時の閒にあはせ。
天子、又は皇族などが其の場にのぞみみる。漢書、蕭何傳「上親自──何病」
あきの季節になりかかる。漢書「──收斂、猶有乏者」
深き淵に臨む。至りて危き喩「──履薄」詩、小雅「戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰」
いまは、しにぎは。後漢書、虞詡傳「──謂其子恭」
陳の後主の作りし閣の名、沈香木を以て作る〔南史、張貴妃傳〕
いくさぐるま、兵車(高くして敵城を見下すものを臨といひ、敵城をつき破るものを衝といふ)〔詩、大雅〕
みづにのぞむ。楚辭「登山──兮逃將歸」
上にありて下をてらす。李德林文「如天如日、──于軒冕」
○郡名、三國の吳の時置く、元代に廢す、今の江西──縣の地。○王安石は──の人、よりて別號とす。──集(一百卷)は其の詩文をあつめたるもの。
貴人より使をつかはして慰問さす、存は存問。史、嚴助傳「使重臣──」=省問。
後漢の張芝(字は伯英)池にのぞみて書を學ぶ、地水盡く黑し、よりて習字の義とす。王羲之、與人書「張芝──學書、池水盡黑」
縣名、秦代に置く、蒙恬が長城を築くに──より起りて遼東に至る、今の甘肅省岷縣臨潭の地、地は洮水に臨む、故に名づく。
高所よりしてのぞみながめる。南史、徐勉傳「華樓迥榭、頗有──之美」
かりもがりにのぞむ。吳志、董襲傳「襲死、孫權改服──、供給甚厚」
文を作る時にあたる。禮記「詩書不諱、──不諱」
山の名、浙江省杭縣の東北に在り、平曠逶迤として崇岡修阜なし、唐の時、──監を山下に置く。
次條に同じ(摸はうつす)
○臨は手本の文字を視て書く、摹はしきうつしにする。游宦紀聞「臨謂置紙在旁、觀其大小濃淡形勢而學之、若臨淵之臨、摹、謂以薄紙覆上、隨其曲折蜿轉用筆、曰摹」○手本を見て寫す。=臨寫·摹臨。
習字圖畫などの手本。=臨帖。
臨終に同じ。潘岳文「──忘身、顧戀慈母」
そのばにかんがみのぞむ。莊子「君子不得已而──天下、莫若無爲」