靑部
0畫
セイ シャウ [靑]
○あを。五色の一、天の色。又、藍の色の類。荀、勸學「─取之於藍而─於藍」○東方の色。よりて東·春·少年の義に用ふ。○竹の皮「汗─」○草の色「踏─」すべてあをいろをなせるもの。○しげる、繁茂せる貌。菁に通ず。○かはせみ(翠鷸)○ろくしゃう、一種の礦物。○古の九州の一。山東省濟南府一帶、及、奉天の遼陽地方の稱。○─島 チンタヲ は山東省卽墨縣の南に在り、鐵路、濟南に達す。
わらぢ。杜甫詩「──布襪從此始」=靑鞋。
あをみをおびたるもや。蘇頲詩「──遠相接、白雲來復還」
○あをき色のころも。禮、月令「孟春之月、天子衣──、服蒼玉」○古、賤者の服。轉じて婢女の稱。蔡邕に──賦あり。
遙かに一髮を引き延べたる如く見える山、又、陸地をいふ。蘇軾詩「靑山一髮是中原」山陽の天草洋詩の「水天髣髴───」は此に本づく。
氣の合はざること、天に在る靑雲と、地に在る紫陌との如く、甚だ懸隔せるそしり。范成大、姑蘇同年會詩序「當此時通榜之士、意氣相與甚厚、否則有──────」
○立身岀世せんとする志望。張九齡詩「宿昔───、蹉跎白髮年」○高潔にして世外に超然たる志操。續逸民傳「嵆康早有靑雲之志」
○學德高き賢聖の人。史、伯夷傳「閭巷之人、欲砥行立名者、非附────、惡能施于後世哉」○轉じて高位高官にのぼりし人。
仕宦を共にするまじはり。書言故事「江淹曰、袁叔明與余、有────、非直銜杯酒而已」
種種の色をとりならべる。詩文を作るに只美くしき字句を排列するにいふ。柳宗元文「模擬竄竊、────」
靑き山、白き水をめぐらす。柳宗元、始得西山宴游記「────、外與天際」
わかき美人、娥はみめよし。韓愈詩「──翳長袖」
靑く美くしき眉。蛾は蠶の蛾 テフ のまゆ。杜甫詩「想像顰──」
からしな。本草「有──、似菘味極辣」
靑色のおほひのある車。古、天子又皇太子の乘用とす。吳志、三嗣主傳「靑蓋入洛陽」
舞樂の曲名。又其の時用ふる裝束の染模樣、波の模樣を染めしもの。
親しき人に對するめつき。白眼の對。晉書、阮籍傳「籍不拘禮敎、能爲靑白眼、見禮俗之士、以白眼對之(中略)嵆康齎酒挾琴造焉、籍大悅、乃見──」=靑盼。
さかやのはた。元稹詩「賣壚高挂小──」=靑旆·靑帘。
老子が靑牛車に乘り函谷關を過ぎて西域に入りし故事。高士傳「老子爲周柱下史、後周德衰、乃────去入大秦、過西關、關令尹喜望氣先知焉、乃物色遮候之、疆使著書、作道德經五千餘言」西關は函谷關。
靑色のえりの衣服、古、學生の服。轉じて學生の義とす。詩、鄭風「靑靑子衿、悠悠我心」
前條に同じ。劉長卿詩「蜀郡滿──」
あをぞら。李頎詩「浩歌眄──」=蒼穹。
皇太子の稱。靑は東方の色。神異經「東明山有宮、靑石爲牆、高三仞、門有銀榜、以靑石碧鏤、題曰天子長男之宮」=東宮·春宮。
○にしん(鯡)其の鮞 ハララゴ を數の子といふ。○靑き色の魚。曹植賦「──躍于東沼、白鳥戲于西渚」
○鋼玉石の一種、色靑く、裝飾品とす。○竹の異名。曹松詩「一方──絕纖塵」
靑玉の椀 ワン 案は椀の古字。張衡詩「美人贈我錦繡段、何以報之───」
○硯の花紋 モヤウ 寶硏堂硏辨「鑒别端石、以──爲最佳、──石上細紋也、有大小相雜、精彩參差者、爲子母──、有細如纖塵、玲瓏透露者、爲蟻脚──、名目不一」○瓷器 ヤキモノ の一種。
春をつかさどる神。=靑帝·東帝·東皇。
○あを色と、き色と。○劍の色。韓非、顯學「視鍛錫、察──」○美くしき靑又黃色の色彩。韓愈、祭柳子厚文「犧尊──、乃木之災」
さば(鯖)
秋刀魚 サンマ の一名。
○靑くひかる。玉の光澤にいふ。班固賦「琳琅──」李白詩「──玉樹色·縹緲羽人家」○燈火の光。蘇軾文「歲云暮矣、風雨凄然、紙窗竹屋、燈火──」(云はここに)
新らしく色のこき血、なまち。穆天子傳「刺其左驂之頸、取其──、以飮天子」=碧血。
おほぞら。漢書、禮樂志「忽乘──、熙事備成」=蒼玄。
○あをと、くろと。○あをぐろし。詩、衞風、疏「鮪魚形似鱣而──」
天子の宮門、門扉に連鎖 クサリガタ の模樣を彫刻し靑漆にて塗る故。漢舊儀「黃門郞屬黃門令、日暮入對──門拜、名曰夕郞」
○あをく茂れるくさ。徐夤詩「一朝──蓋遺基」○湖の名。湖南省湘陰縣の北一百支那里に在りて、南は湘水に接し、北は洞庭に通ず、湖に──多し、故に名つく。
あをあをとしたる色。韋應物詩「──猶可濯、黑色不可移」
○あをあをと見える山。○山の名、安徽省に在り、一名靑林山、林壑秀美、南齊の謝朓、室を山南に築く、故に又、謝公山と名づく。李白詩「宅近──同謝朓、門對翠柳似陶潛」
靑山が高く屋根の上に聳ゆ。蘇軾、司馬溫公獨樂園詩「─────、流水在屋下、中有五畝園、花竹秀而野、花香襲杖屨、竹色侵盞斝」
靑山の常に其の形を改めざるをいふ。朱熹詩「浮雲一任閑舒卷、萬古─────」
靑山白雲の中に高臥せる人。舊唐書、傅奕傳「常醉臥、蹶然起曰、吾其死矣、因自爲墓誌曰、傅奕─────也、因酒醉死、嗚呼哀哉、其縱達皆此類」
大丈夫は何處の靑山にても骨を埋むべし、必ずしも故鄕に死せずとの意。蘇軾詩「是處─────、他年夜雨獨傷神」
あをきいろのころも。白居易、琵琶行「就中泣下誰最多、江州司馬──濕」
歷史。古、紙なく、竹の靑皮を火にあぶりてあぶらをぬき、事を記す、故に靑といふ。大戴禮「──之記」范質詩「南朝稱八達、千載穢──」=殺靑·汗靑。
靑色の紙。玉海「晉詔書以──紫泥」晉書、楚隱王瑋傳「臨死、出其懷中──詔、流涕以示監刑尙書楊頌」
道敎の祭祀に用ふる文體、又其の文章。靑藤紙に朱字にて記す、故にいふ。文體明辯「──者方士懺過之詞也」歐陽修、內制集序「──齋文」
薄き綠色の釉藥 ウハグスリ をかけたる陶器。=靑磁。
漢代の制、公侯の印綬 インノヒモ は紫、九卿は靑を用ふ。よりて公卿の義とす。漢書、夏侯勝傳「士病不明經術、經術苟明、其取──、如俛拾地芥耳」拾地芥とは極めて易きに喩ふ。
高官に任ずる義。前條參看。
淡綠色又、淡藍色のうはぐすりをかけたるやきもの、あをじ。=靑瓷。
美酒の異名。世說、術解「桓公有主簿、善別酒、有酒輒令先嘗、好者謂────、惡者謂平原督郵」靑州に齊郡あり、齊は臍 ヘソ なり、美酒は快く臍に至る、故に喩ふ。平原督郵(五七六頁四段)參看。
○水鳥の名、卽ち鷁、古人其の形を船頭に畫く。古詩「──白鶴舫」○漢の武帝の臺の名〔洞冥記〕
あをききぬ。韋莊詩「佇歸蓬島後、綸詔潤──」
あをくび、小鳧の一種。史、楚世家「秦魏燕趙者鶀雁也、齊魯韓衞者──也」
琅玕 ラウカン の異名。華陽國志「廣陽縣出──」
たぅな、ふゆな、つけな。葉大きく白き筋あり、漬物に適す。寒に耐ふること松の操に似たり、故に松に从ふ。陸游詩「──綠韭謹蓄藏」
○はる。何晏賦「結實商秋、敷華──」梁元帝纂要「春曰芳春·──·陽春·九春」李白詩「伯陽仙家子、容色如──」○轉じて靑年の義とす。水滸傳「──年少」
靑き色のたけのこ。潘岳、閒居賦「菜則葱韭蒜芋、──紫薑」
みどり色のまつ。李白詩「勗君──心、努力保霜雪」=蒼松·翠松。
○あをあをとしたる貌。古詩「──河畔草」○靑く茂れる貌。詩、衞風「瞻彼淇奥、菉竹──」=菁菁。
あをぞら。曹松詩「廬山瀑布三千仞、劃破──始落斜」=蒼空·碧漢。
靑きひげ、髥は髯の正字、一に?に作る、ほほひげ、毛龜の毛をいふ。公羊傳「龜靑純」注「純、緣也、謂緣甲?也、千歲之龜、──」
○靑銅のぜに。蘇軾詩「過眼──轉手空」○蓮の葉の形容。
○靑色の毛氈。晉書、王獻之傳「獻之夜臥齋中、而有偸人、入其室、盜物都盡、獻之徐曰、偸兒、──我家舊物、可特置之、羣偸驚走」○轉じて家の舊物の義に用ふ。
ひぐらし。李賀詩「──獨噪日光斜」
○あをきまゆずみ。李白詩「──畫眉紅錦韡」=靑靛。○まゆずみの如き紺靑色。岑參詩「四時常作──色」
靑きこけと、黃色なる秋の木の葉と。山家のよき景色。劉長卿詩「欲掃柴門迎遠客、────滿貧家」
合歡 ネブノキ の異名。古今注「──、一名合歡」=靑裳·夜合。
萌黃 モエギ をどしのよろひ。北轅錄「甲士皆───居左、紅縚甲居右」
あをむし、螟蛉の别名。又蝶類の幼蟲、色靑し、故にいふ。
○霜雪の神。淮南、天文「──乃岀以降霜雪」○轉じて霜の異名。
次條に同じ。
王昭君の墓。大明一統志「大同府王昭君墓、在古豐州西六十里、地多白草、此塚獨靑、故名──」=靑冢。
春をつかさどる神。五行說にて靑色は春に配す。尙書緯「春爲東帝、又爲──」=靑皇。
とんぼ、やんま。古今注「蜻蛉、一名──、色靑而大者是也」=蜻蜓。
山の名、甘肅省徽縣の南に在り、蜀に入るの要路たり。元和志「嶺懸崖萬仞、上多雲雨、行者屢逢泥淖、故名」
地名、奉天金縣の南に在り、閑きて通商港と爲す、鐵路あり、西は旅順に通じ、北は營口に通ず。
つかひ(使者)又、書簡の義とす。漢武故事「七月七日忽有──、飛集殿前、東方朔曰、此西王母欲來、有頃王母至、二──夾侍王母傍」に本づく。
あをぞら。莊、逍遙遊「絕雲氣、負──」=靑霄。
○快 ココロヨ く晴れたる天氣。韓愈、與崔羣書「────、奴隸亦知其淸明」○明白にして包みかくす所なき義。朱子文集「武侯爲漢復讐之心、如────、人人得而見之」○ 國 寃罪嫌疑のはれたるにいふ。
○筆勢の飛動する形容。陸游詩「放翁病過秋、忽起作醉墨、正如久蟄龍、靑天飛霹靂」○突然に起りたる事變に喩ふ。
あをあをとしたる田。楊炯詩「樓臺橫紫極、城闕俯──」
あを色、靛はあゐぞめ。鄧文原詩「迴塘瀲灔流──」=靑黛。
あをきたかむしろ。王維詩「──日何長、閑門晝方靜」
竹夫人の異名、暑時、衾中に入れて涼を取る具。黃庭堅詩「趙子充示竹夫人詩、蓋涼寢竹器、憩臂休膝、似非夫人之職、予爲名曰──」
梧桐 アヲギリ の類。爾雅、翼「──似梧桐而無子」
○からかね(唐銅)銅七分·鉛三分より成る合金。=紫銅。○あをざしの錢。杜甫詩「恰有──三百錢」○かがみ。李益詩「手中──鏡、照我少年時」
ともしびの靑き光。韋應物詩「坐使──曉、還傷夏衣薄」
あを色のひとみ。神仙傳「東方朔於海濱遇黃眉翁、目中瞳子有靑光、能見幽隱之物」
あをきふぢかづら。杖に作る。李洞詩「自有閒行伴、──杖一枝」
仙人。黃庭經「仙人名──」
○晉の郭璞が郭公といふ人より靑色のふくろに入れたる天文·卜筮·醫術に關する書九卷を傳へられし故事。轉じて藥囊。又、天文·ト筮·醫術に關する書物の義とす。晉書、郭璞傳「璞字景純、博學有高才、有郭公者客居河東、精於卜筮、璞從之受業、公以──中書九卷與之、由是遂洞五行·天文·卜筮之術」○印を入れる袋。古今注「──所以盛印也」
わかもの、少年。草木の方 マサ に靑きが如し、故にいふ。王世貞詩「不將憔悴送──」=靑春。
弟子の其の師より優るに喩ふ。荀、勸學「學不ン可以已、────────」今本「靑取之於藍」に作る=出藍。
梅の實の靑きもの、蜜に漬けて食ふ、鹽漬にして乾かしたるを白梅といふ。白居易詩「紅杏初生葉、──已綴枝」
靑色のすす。蘇軾詩「魯人不知貴、萬竈飛──」
かりやす。すすきに類する草、乾かして黃色の染料とす。
あをきひさご。朱慶餘詩「深籬藏白菌、荒蔓露──」
靑眼を見よ。
藥の名。唐本草「靑黑二礬療疳」
○靑きうきくさ。○古の名劍の名。次條を見よ。
靑萍は良劍、結綠は美玉の名。李白、與韓荊州書「────、長價於薛卞之門」
○蟬の一種〔酉陽雜俎〕○錢の異名。搜神記「──似蟬而稍大、生子草閒如蠶、取其子母卽飛來、以母血塗錢八十一文、以子血塗錢八十一文、毎巿物、或先用母錢、或先用子錢、皆復飛歸、輪環無巳、故淮南子名錢、曰──」
あをくしげれるくさ。又、其の地。白居易詩「啼蛩隱紅蓼、瘦馬踏──」
はなだいろ。爾雅、疏「山氣──色、故曰翠微」
宋の王安石のはじめし新法、春時苗の靑き頃、民に金を貸し、收穫の時に元利とも返濟せしむる法。宋史、王安石傳「───者、以常平糴本作靑苗錢、散與人戶、令出息二分、春散秋斂」
あをき玉の色。山海經「帶山其上多玉、多──」
靑き蒲 カマ にて織りし天子所用の敷物、皇后の外は此處に至るを得ず。漢書、史丹傳「直入臥內、頓首伏──上」
○あきめくら。後漢書、李業傳「好學博古、公孫述連徵命、待以高位、皆託──、以避世難」○生理學にて色盲の一、諸色中に於て獨り靑色を辨ずる能はざる患者。
みどりのつるくさ。杜甫詩「幸結白花了、寧辭──除」=翠蔓·碧蔓。
○あをぞら。楚辭「據──而攄虹兮、遂儵忽而捫天」王維詩「連天凝黛色、百里遙──」=靑天。○劍の名〔古今注〕
○漢の長安城の東南門の名。其の色靑き故。本名霸城門。○樂曲の名。李賀詩「玉瑟調──」
○春の異名。爾雅「春爲──、夏爲朱明、秋爲白藏、冬爲玄英」○天子の東堂、孟春に居る殿堂。
葉の長きかはやなぎ。古今注「白楊葉圓、──葉長」
あをばへ。其の糞は物を害す、よりて讒言をする惡むべき羣小に喩ふ。詩、小雅「營營──、止于樊」=蒼蠅。
小人の君子を讒しけがすに喩ふ。丁儀文「疾靑蠅之染白」陳子昂詩「靑蠅一相點、白璧遂成寃」
○あを色のにしがひ。桂海虞衡志「──狀如田螺」○靑き山の形容。劉禹錫詩「遙望洞庭山色翠、白銀盤裏一──」
あをきつた。李白詩「綠竹入幽軒、──拂行衣」
靑色の寶石、琅玕は其の聲の爽なるに象 カタド る。張衡詩「美人贈我───、何以報之雙玉盤」
春の新芽を生ぜし柳。潘岳詩「綠池泛淡淡、──何依依」
○東方をつかさどる星宿。四神の一〔曲禮〕四神(三六一頁四段)參看。○蝦蛄 シヤコ の異名。
○紺色の蝶。中華古今注「紺蝶一名──、似蜻蛉而色玄紺」○とんぼ。=蜻蛉。
あかざのつゑ。劉向別傳「有老人、黃衣植───、叩閣而進」=藜杖。
酒家のかんばんのはた。鄭谷詩「白鳥窺魚網、──認酒家」=酒旗·靑旆。
○あをきいろのはす。法苑珠林「目譬──、眉方翠柳」=碧蓮。○唐の李白の號「李──」
婚禮を行ふ爲めのいへ。酉陽雜俎「北方昏禮、用靑布幔爲屋、謂之──」昏は婚。
○美人の居るうつくしきたかどの。曹植、美女篇「──臨大路、高門結重關」○轉じてあげや、遊女屋。劉邈詩「倡女不勝愁、結束下──」
5畫
セイ [梗]
○はかる(謀)○おもふ(思)○やはらぐ(和)○やすんず(安)○安く靜か。靜と通ず「安─」「綏─」「寧─」「恬─」「簡─」○しづめをさむ(治)○きよし、いさぎよし。淸に通ず。
やすらかにしてよくやはらぐ。曾鞏、制誥「今方內──、百揆攸敍」
天下をやすんじただす。蜀志、先主傳「臣董督三軍、奉辭於外、不能掃除寇難、──王室」
職務を大切に謀りつつしむ、共は恭。詩、小雅「──爾位」
臣たる者、義の當に盡すべき所に安んじ、其の志を先王にささげる。書、微子「自靖、人自獻于先王」
國 八卷、淺見安正編、屈平·諸葛亮·陶淵明·顏眞卿·文天祥·謝枋得·劉因·方孝孺等の事蹟を記す、書名は前條の意に本づく。
國家をやすらかにする。左、僖二三「子文曰、吾以──也」=鎭國。
やすし。やすんずる。綏は安。蔡邕、始加元服表「通遵太和、──六合」=綏靖·安綏。
○國難をたひらげ定む。唐書、陸贄傳「若有意乎──、則不可兩强接」○明の燕王棣が反を謀り、君側の姦を淸めんと稱して起したる兵の稱。
いくさをやむ、靖は息。左、昭十三「諸侯──、好以行事」=息兵·弭兵。
邊境ををさめやすんずる。白居易文「──之要、選將爲先」=綏邊。
天下のみだれしをやすんずる。左、僖九「齊侯不務德、而勤遠略、君務──、無勤于行」
6畫
①セイ·シャウ [徑]
②セイ [梗]
①あをぐろ(靑黑色)
②しとやかなる飾。韓愈詩「桃李晨粧─」=靚。
7畫
①セイ [敬]
②セイ [梗]
①よそほひかざる(裝飾)けしやう、白粉や、まゆずみにてめかす。
②しとやか。○しづか。賈誼賦「澹乎若深淵之─」=靜。
美くしく飾れる衣。太平廣記「仙姝態柔容治、──明眸」
粉黛を用ひてうつくしくよそほひかざる。左思、蜀都賦「都人士女、袨服──」=靚莊。
前條に同じ。司馬相如賦「──刻飾」莊一に粧に作る。
前條に同じ。
うつくしくかざる。後漢書、南匈奴傳「昭君豐容──」
8畫
セイ ジヤウ [梗]
○しづか。動の對。定止して動かず。○音聲なし、だまる(默)喧の對。杜甫詩「喧─不同科」○はかる(謀)○やすし、やすらか。やすんず。靖に通ず。おだやか(安和)「安─」「寧─」○ただし、しとやか(貞淑)「─女」「貞─」○いこふ(息)○きよむ、淸潔にする。○すむ(澄)莊子「水─則明燭鬚眉」○やはらぐ、しづむ。しづまる。しづかになる「鎭─」「綏─」○きよし、いさぎよし(潔淸)詩、大雅「籩豆─嘉」○きよむ。淸潔にす。國語「─其巾羃」
しづめとどむ。北史、源賀傳「部勒禁兵、──外內」
しづかにして安し。徐陵文「中流──、皇嗣歸來」
心をしづかにおちつかす。後漢書、梁節王楊傳「王其安心──」=安意。
しづかなる處、寺など。李羣玉詩「松聲掃白日、霽夜來──」
月光がしづかなる波にうつる形容。范仲淹、岳陽樓記「浮光躍金、────」
心が靜かにして深し。史記「──以有謀」曾鞏文「廣博──密於世用」=寧靜淵深。
靜かにおだやか。又、世が太平無事である。=安穩·平穩。
淸らかにして美くし。詩、大雅「其吿維何、籩豆──」
しづかにしてよし、靜穩良好。詩、鄭風「琴瑟在御、莫不──」
しづかなる所。白居易詩「──多獨得、幽懷竟誰知」=靜域·靜處。
心しづかにしてむなし。家語「德若天地而──、化若四時而變物」
心しづかにおだやか。鬼谷子「──者養氣」
ものしづかにしてゆるし。埤雅「猴性躁急、猿性──」
心しづかに物事を觀察する。程顥詩「萬物──皆自得、四時佳興與人同」
しづまりておごそか。唐書、史思明傳「王師部伍──、賊有懼色」=靜肅。
しづかにかたる。白居易詩「──多同待漏時」=閒語·靜談。
しづかに心をおちつけてすわる。玉澗雜書「歐陽文忠公嘗問杜祁公、何以禦暑、公曰、唯──可以避暑」姚鵠詩「──無時不憶山」
身體をしづかにおちつけ氣息を調和して健康を增進する法。
しづかにかんがふ。又、しづかなるおもひ。五色線「獨處一室、絕食──」=靜念。
しづかなると、さわがしきと。王羲之、蘭亭集序「趣舍萬殊、──不同」=喧靜。
動かずして靜かに止まり居る。易、艮卦、疏「艮、止也、──之義」
俗 形容詞。
○しづかなるおもひ。說苑「寬以──」○しづかに思ふ。梅堯臣詩「世事──同轉轂、物華催老劇飛梭」
心をおちつけて身を正しく修める。諸葛亮、戒子書「靜以修身、儉以養德」
寺をいふ。學林新語「晉孝武幼奉佛法、立──於殿門、引沙門居之」=精舍。
しづかにしとやかにして善良なり。
○しづかにつつしむ。=寧肅。○女官の名。北史、后妃傳「齊孝昭置──瓊章等八十一御女、比正四品」
ながれざるみづ。新論「人不鑑於流波而鑑於──者、以靜能淸也」=止水。
しづかにしておくぶかし。梅堯臣詩「──無塵地、靑熒續焰燈」
しづかにひっそりとする。何劭詩「──愴然歎、惆悵忽遊顧」
しづかにして心がもっぱら。宋史、樂志「功存內治、德協──」=貞靜專一。
しづまりやむ。南史、江革傳「廣施恩惠、盜賊──」=靜止。
しづかにしてやすし。嵆康、養生論「淸虛──、少私寡欲」=靜安·寜靜。
しづかにをさまる。歐陽修文「帝以巍巍之功、臻乎──」
しづかなるひるま。周伯琦詩「──敲棋中貴語、君王避暑在開平」
しづかにきく。劉伶、酒德頌「──不聞雷霆之聲、熟視不覩泰山之形」=靜聆。
みさを正しくしとやかなるをんな。詩、邶風「──其姝」
しづかなる調子 テウシ
心をしづかにすれぼ、熱氣にうちかつ。老子「躁勝寒、───」
○しづか、謐も靜。嵆康、琴賦「疎肅肅以──、密微微其淸閑」○世が安くをさまる。宋書、禮志、「江外──」唐享太廟樂章「河海──、車書混同」
しづかなるゐなか。皮日休詩「──無人到、幽深每自知」
邊境をやすんずる。晉書、孔嚴傳「每欲深根固本、──寧國」=綏邊·靖邊·寜邊。
しづかにあゆむ。七啓「遺芳烈而──、抗皓手而淸歌」=閑步閒步·徐步。
舊くなりし血を心臟におくりかへす脈管。=囘血管。
しづかにだまってゐる。南史、齊高帝紀「深沈──、常有四海之心」
しづかなる夜。魏明帝詩「──不能寐、耳聽衆禽鳴」
心身をしづかに養ふ。白居易、座右銘「修外以及內、──和與眞、養內不遺外、動率義與仁」
しづかにたのしむ。段克己詩「──題其顏、塵緣聊解縛」
しづかにおもんぱかる。又、しづかなるおもひ。李中元詩「閒吟遊古觀、──想神仙」=靜想。
しづかにきく。梁肅、遊雲門寺詩序「動步眞境、──法音」=靜聽。
しづかにかたる。白居易詩「──開襟久、閑吟放盞遲」=閑話。
テン デン [霰]
○そむ、あゐぞめ、藍にて染めたる色。○藍葉の汁を水と石灰とに和し沈澱して成りし染料、水─といふ。別に藍葉を乾かし搗きて塊とせしものを土─といふ。