冖部
0畫
ベキ [錫]
○おほふ(覆)巾を以て物を覆ふ。=羃·幎。○おほひ。○ 國 わかんむり、字の形が片假名のワに似るが故。
2畫
イウ [尤]
①─豫はうたがふ(狐疑)疑ひて決せざる貌。後漢書、馬援傳「─豫未決」=猶豫。
ジョウ []
宂(宀部二畫)の俗字。
7畫
①クヮン [寒]
②クヮン [翰]
①かんむり、かむり、冕弁の總稱。○とさか(雞─)
②元服の禮。曲禮「二十曰弱─」禮、冠儀「─者禮之始也、故聖王重─」○成年に達する。韓愈、送楊少尹序「初─擧於鄉」○衆のかしら(首位)まさる(勝)史、灌夫傳「夫名─三軍」○かんむりを著く。
かんむりのひも。史、滑稽傳「淳于髡仰天大笑、──索絕」
官を辭する義。後漢書、逢萌傳「逢萌字子慶、北海都昌人、王莽殺其子宇、萌謂友人曰、三綱絕矣、不去禍將及人、卽解冠挂東都城門、將家屬浮海客於遼東」といふ故事に本づく。=解冠。
冠の塵を拂ひて、官の召聘を待つ。漢書、王吉傳「王吉少好學明經、宣帝時爲諫大夫、與同郡貢禹爲友、世稱王陽在位、貢公──、言其取舍同也」
行く車の相つづきて絕えざるさま、卽ち前車は後車の冠蓋を望み、後車は前車の冠蓋を望む義。冠蓋は車のおほひ、乘車のやね。戰國策「韓使使者求救于秦、────也」
鳥のとさかと獸のつのと。後漢書、輿服志「鳥獸有──」
とりのとさかと、けづめと。劉勰新論「公輸之刻鳳也、──未成、翠羽未樹」
かんむりの飾りのたま。外貌の美にして其の實なき者に喩ふ。史、陳丞相世家「平雖美丈夫如──耳、其中未必有也」
衆人にすぐれてぬきんでる。法言「冠乎羣倫」=出羣。
○冠は男子二十歲にして元服する禮、筓は女子十五歲にしてかうがいをさす禮。史、樂書「婚姻──所以別男女也」○冠をとめるかうがい。宋史、禮志「奉──以進」
元服の禮と婚姻の禮と。禮記「夫禮必本于天、殽于地、列于鬼神、達于喪祭射御──朝聘」
○外國語に在りて名詞にかぶらせて數·性·指定の意等をあらはす語。英語Articleの譯。○ 國 まくらことば、次條に同じ。
國 まくらことば、一っのことばの首に添へて形容又は修飾する詞。多く歌に用ふ「あしびきの」山「あづさゆみ」引くの類。
かんむりを著け髮をくしけづる。白居易詩「──心多嬾、逢迎興漸微」
○元服して、冠をつけたる男、丁年に達せし者。論、先進「──五六人、童子六七人」○ 國 古、六位にして官のなき人の稱。
鸛 コウヅル の異名〔後漢書、楊震傳〕
はしがき。司馬光、進資治通鑑表「寵以──、錫之嘉名」=弁言。
最もすぐれる。宋書、顏延之傳「文章之美、──當時」
すぐれて善きいへがら。高官に登りし家柄〔宋史、柳元景傳〕
冠をつけ、帶をむすぶ。又、其の身分、社會。夏侯湛文「是以得接──之末、充乎大夫之列」
禮儀にあつきくに。漢書「越方外之地、劗髮文身之民也、不可以────法度理也」
貴賤上下の別をみだるべからざるに喩ふ。史、儒林傳「───────、履雖新必關於足」
○かんむり。轉じて首位の義。三國志、龐統傳「當爲南州士之──」○仕宦の義。三國志、王昶傳「汝先人世有──」
かんむりと、くつと。說苑「──不同藏、賢不肖不同位」又、上と下とに喩ふ。
次條に同じ。後漢書、楊賜傳「────、陵谷代處」
上下の順序がさかさまになる喩。
本を輕んじて末を重んずる喩。淮南、泰族「且法之生也、以輔仁義、今重法而棄義、是貴其冠履、而忘其頭足也」
男子年二十にして初めて冠を被る禮。元服の禮〔儀禮、士冠禮〕
8畫
ヱン [元]
○無實の罪、ぬれぎぬを著る。史、于定國傳「定國爲廷尉、民自以不─」○ぬれぎぬ。史、淮陰侯傳「嗟乎─哉烹也」○うらみ(恨)あだ(仇)韓愈詩「往者不可悔、孤魂抱深─」○かがむ(屈)かがまる(枉曲)
むじつの罪にて刑に處せられる。漢書「獄亡──、邑亡盜賊」
無實のつみにてとらはれる。又、其の囚徒。唐書、唐臨傳「按獄交州、出──三千人」
無實の罪にかかりしうらみ。杜甫詩「忠貞負──」
無實のつみ。=冤枉。
怨ある家と、親愛する者と。五燈會元「佛敎慈悲、──平等」
無實の讒言 ザンゲン 漢書、孫寶傳「蒙受──」
無實の罪を受けたるを傷 イタ みかなしむ。漢書「議者──之」
無實のつみをうったへる。舊唐書、狄仁傑傳「周歲斷滯獄一萬七千人、無──者」
無實のつみにおちいる。枚乘、七發「汗流沬墜、──陵窘」
無實のつみにかかりたるうらみ。李德裕文「快雪──、豁開心懷」
無實の罪におちいりかがまる。東方朔、七諫「獨──而無極兮」
無實のつみ、枉は事實を曲げる。李白詩「皇穹雪──、白日開昏氛」
シユ [遇]
俗に最に借り用ふるは非
○あつむ(聚)○つむ(積)
チョウ [腫]
通じて塚に作る
○つか(高墳)墓の高大なる者。○大いなり。○はれる(腫)○をか(丘)山のいただき(山頂)○やしろ(祠)○もりつち(封土)
君長の義。書、泰誓「嗟我友邦──、越我御事庶士、明聽誓」
冢は長、宰は治、周代六官の長。今の總理大臣の如き者、大宰相の義。書、周官「──掌邦治、統百官、均四海」後世は吏部尙書の異稱。
○太子、又、世子。左、閔、二「太子奉冢祀社稷之粢盛以朝夕視君膳者也、故曰──」○あとつぎの長男。禮、內則「父沒母存、──御食」=冢嫡·嫡長子。
せんぞのまつり、宗廟のまつり。冢子を見よ。
あとつぎ、太子、又、世子。唐書、肅宗諸子傳「帝曰、廣平旣──、安用元帥」=嫡長子。
土地を守護する神のやしろ、うぶすなの神社。
死せし人。無能なる人に喩ふ。蜀志、先主傳「────、何足介意」
家を相續すべき長子。北史、李彪傳「明──之重見乎天」
土の神、大社。書經「類于上帝、宜于──」
嫡長子のよめ。禮、內則「介婦請於──」介婦は衆婦。
ボウ モウ [東]
通じて蒙に作る
○おほふ(覆)○くらし。
ベイ ミャウ [靑]
通音メイ
○くらし(昏·暗·昧)天氣がくらい、やみ(闇)よる(夜)又智識が明かならず「頑─」○とほし(遠)○ふかし(深·窈)○心思の深奧なるにいふ「─想」○奧深き道理。○かすか(幽)○いとけなし(幼)幼者は智が昧き故。○靑─はそら(天)楚辭、九章「據靑─而攄虹」○うみ、うなばら、溟に通ず。莊、逍遙遊「北─有魚」○玄─は水神〔禮、月令〕○─土はあの世、よみぢ。
同訓異義
クラシ 冥·暗·昏·昩·暝·晦の別は暗(日部九畫)の條を見よ。
神佛のたすけ、佑は祐。北齊書、慕容儼傳「冀獲──」=冥助·冥加。
前條に同じ。
神佛の御りやく〔南史、解叔謙傳〕
よみぢ。=冥土。
物を見ずしてゆく、くらやみの道を行く、又、其のこと。
神明の心を動かす、誠心が鬼神に感通する。晉書、孝友傳「劉殷至孝──」
冥途のおに。
まっくら、晦は昧。王逸、九思「雲霧會兮日──」=冥昧·冥昏。
理にくらくかたくな。=頑冥·固陋。
冥土にて幸福を受けんことを求むるねがひ、後生ねがひ。陳子昂、爲人請子弟出家表「乞遂──、敢覬天恩」
世を避けて志を高尙にする者に喩ふ。李賀詩「我今垂翅附──」冥冥參看。
くらし。春秋繁露「不見不聞、是謂──」=冥昧·冥晦。
已に死せし者が婚を結ぶ。舊唐書、蕭至忠傳「韋庶人爲亡弟贈汝南王洵、與至忠亡女爲──合葬」
くらがりに物をさがす。(暗中搜索)目を閉ぢて深く心に考へさがす、作詩などにふける義。蒙齋筆談「鄭圃每欲作詩、卽伏草中──、或得句則躍而出、遇之者、莫不驚」
心にふかくかんがへる。支遁詩「道會貴──」=深思。
冥加に同じ。
佛 よみぢ、死して行く幽遠なる地の義。=冥途·冥府。
佛 前條に同じ。太平廣記「──小吏」
ひろく遠くしてはっきりと見えず。沈佺期詩「雲海已──」
神佛のばち。天罰。
よみぢ。=冥土。
死後のさいはひ。北史、崔挺傳「追奉──」
まっくら。李白詩「此中──失晝夜」=冥昏。
○くらき貌。詩、小雅「維塵──」○幽昧にして見とめ難し。荀、修身「行乎──、施乎無報」○遠くをぐらき空。揚子「鴻飛──」
暗きに見、形なきに謀るは、推理の明かなるなり。說苑「明者視於冥冥、謀於無形、聰者聽無聲、慮者戒於未成」
人の知らざる所にて十分に志を篤くして事を勵む。荀、勸學「無────者、無昭昭之明、無惛惛之事者、無赫赫之功」
深奧の貌。吳都賦「曠瞻迢遞、廻眺──」
うすぐらし。黃庭堅詩「梅雨晝──」=冥冥·濛濛·模糊。
龜の異名、一說、木の名。列、湯問「荊之南有──者、以五百歲爲春、五百歲爲秋」
佛 冥冥の內にかうむる神佛の加護。大藏法數「以佛神力、增菩薩智慧、隱密難見、故曰──」=冥助·冥利 ミヤウリ
○神佛のたすけ。=冥加。○うん、しあはせ。
9畫
富(宀部九畫)の俗字、一說、富に同じ。
13畫
ベキ [錫]
○おほふ(覆)○ふきん、食物をおほふ巾 キレ ○まく、たれぬの(幕)まどかけ。○數學にて根數の相乘積「自乘─(平方)」「三乘─(立方)」
雲などのおほひ低 タ れる貌。李華、弔古戰場文「鬼神聚兮雲──」