幺部
0畫
エゥ [蕭]
么は俗字
○ちひさし(小)「微─」○いとけなし(幼)をさなし(稚)○俗に一を呼びて─と爲す、一は數の初、故に小の義を取りて名づく。○六─は琵琶の曲名。
かよわし。柳宗元、童區寄傳「縛取──者」
ちひさし。
ちひさし。=微幺·幺麽。
○ちひさし、麽は細。陸游詩「鯤鵬尙──」=幺微。○つまらぬもの。班彪、王命論「又況──、尙不及數子」
1畫
ゲン [諌]
○まぼろし。金剛經「一切有爲法、如夢─泡影」○まどはす、くらます(詐惑)「妖─」○かはる(化)「變─」○てづま(妖術·魔法)刀を呑み、火を吐く如き奇術の類。或は眩に作る。
○まぼろしと、かげと。はかなき物のたとへ「夢幻泡影」○心理學にて、感覺のあやまりより生ずる現象、幽靈·ばけものの類。
てじな。唐書「禁人爲──者」
まぼろしの如き、きゃうがい、うを世。
○まぼろしの如くに變化する。列子「知──不異生死」○轉じて人の死をいふ。
とりとめなきおもひ。
てじな師。=奇術師·魔法づかひ。
てじな、變幻の技術。=奇術·妖術·魔法。
まぼろしの如くはかなき世の中。白居易詩「──如泡影」
まぼろしと、ちりと、生命のはかなきに喩ふ。圓覺經「幻心滅、故──亦滅」
うつしゑ、かげゑ。
まぼろしと、うたかたと。夢幻と泡沫と。葛長庚詩「聚散如浮萍、死生猶──」
まどふ。人をまどはす。=眩惑。
2畫
①イウ·ユウ [宥]
②エゥ [嘯]
通音エゥ
①いとけなし、をさなし、わかし(稚·穉)「童─」「─稚」「蒙─」「孩─」曲禮「人生十年曰─學」○こども(小兒)○幼者をいつくしむ(慈愛)孟、梁惠王「─吾幼」
②くはしくこまか(精微)「─眇」=杳。
幼兒をめぐみ、又、父なき孤兒をあはれむ。管子「九惠之敎、一曰老老、二曰慈幼、三曰、卹孤」
容色のうつくしき少年。戰國策「王不以予工、乃與──」=少艾。
みどりご。=嬰孩。
をさなき時の學問。曲禮「人生十年曰幼、學」
をさなくしておろか〔汲冢周書〕=幼昧。
をさなき主君。
幼名に同じ。
をさなご。=幼童。
をさなごころ。儀禮「姶加元服、棄爾──」
こども、齒は齡。寶泉、述書賦「南平休元、筆力自全、──結構、老成天然」
いとけなし。又、其の者。韓愈文「執兵之卒、四向侵掠、農夫織婦、擕持──、餉于其後」
をさなき主人、をさなき君主。=幼君。
いとけなきこども、孺は童子。蕭穎士賦「有啼呼之──」=幼童·幼蒙。
をさなし。禮、月令「養──存諸孤」=幼弱。
をさなくしてよわし。五代史、楊隆演世家「隆演──、不能自持」
をさなし、いとけなし。漢書、王莽傳「君年──」=幼穉。
をさなし、わかし。穉は稚。=幼冲。
をさなし。冲も幼。書、大誥「──人」=幼稚·幼少。
昆蟲等が卵よりかへりしままの形せる閒の稱。成蟲の對。
をさなき天子。
こども。蔡邕文「叔父親之、猶若──」=童幼。
としわかし。又、其の者。こども「──學校」漢書、匡衡傳「朕以──」
をさなくしてさとし。元史、李好文傳「如漢孝昭後漢明帝──之類」=夙慧。
○くはしくこまやか、精微。漢書、元帝紀贊「窮極──」=微妙·要眇。○おくゆかしくたへなる貌。
をさなくして才智くらし。阮籍文「季陰──」=幼蒙。
をさなな、小兒の時の名。=幼字。
すぐれてをくゆかし。司馬相如、長門賦「聲──而復揚」
をさなくして事理に昧し、こども。陸機文「誕自──、逮事武皇」=童蒙。
をさなきとし。孟郊詩「──思奮飛、弱冠遊靈臺」=幼年·幼齒。
幼(前條)に同じ。
6畫
イウ [尤]
○かくる(隱)ひそむ(潛)禮、儒行「─居而不淫」○くらし(闇)荀、解蔽「上─而下險」明かならず。又、隱れて人に知れざる所。○ふかくとほし(深遠)○かすか(微)ほのか、おくぶかし。○しづか、陰氣、くろし(黑·黝)○とらふ、とらはる(囚)一室にとぢこめられる。○あの世(冥途)○風景の淸勝なる義。杜甫詩「長夏江村事事─」○古、十二州の一、舜、冀州の東北の地を分ちて─州と爲す、其の北方─昧の地に在るを以て─と名づく、今の直隸省の順天·永平及び奉天·錦州の西北一帶の地。
しづかなるおもひ。江淹賦「必居閒而就寂、以──之深傷」=幽思·幽懷。
おくふかくしげる。郭璞賦「林薄叢籠、──隱藹」=幽茂。
○深遠なる貌。詩、小雅「秩秩斯干、──南山」○くらき貌。韓愈詩「蟲鳴室──」
かすかにとほし。阮籍、大人先生傳「左蕩莽而無涯、右──而無方」
ふさぎこむ病氣、鬱憂病。莊、讓王「我適有────、方且治之」
○世を避けて深くかくれる。禮記「君子隱而顯」疏「君子身雖──、而道德潛通、聲名顯著、故云隱而顯也」○暗くかくれて顯はれず。漢書、朱博傳「所以廣聰明燭──也」
○草木がこんもりと茂る。○氣のふさぐ貌。柳宗元文「長吟哀歌、舒泄──」=鬱結。
しづかにしておくふかき貌。郝經詩「水花澹晚色、──足眞趣」
水の聲がかすかにむせぶ、琵琶の聲の形容。白居易、琵琶行「──泉流水下灘」
かくれたる無實のつみ。崔駰詩「天道何期乎、──遂見明」
しづかにしてうるはし。杜顗、集賢院山池賦「見藤篠之──、弄石泉之明媚」
おくぶかくとほし。漢書、桓榮傳「五經廣大、聖言──」=幽深。
闡は開、かくれて明かならざる者を開發して、明かならしむ。易、繫辭「夫易彰往而察來、而微顯──」
しづかにしてよし。吳鎭詩「景──兮足靜賞」=幽勝。
かすかにとほし。晉書、桓溫傳「九域宅心、──企踵」
おくゆかしきにほひ。溫庭筠詩「綠渚──生白蘋、參差小浪吹魚鱗」=幽馥。
○しづかに暮し居る人。謝朓詩「──滯江皋」=幽人。○蘭の異名。花譜「蘭曰──」○山礬の異名〔三柳軒雜識〕
次條に同じ。詩、周南、傳「──貞專之善女」
しづかにして、おくゆかし、しとやか。曹昭、女誡「──貞靜、守節整齊」
おくふかき谷川。晉書、曹毗傳「蘭生──玉輝千仞」=幽谷。
おくぶかくして、しづかなるいはほ。遊天台山賦「凝思──、朗詠長川」
しづかなる所に棲む鳥。陸游詩「──窺戶語、落日傍窗姸」=幽鳥。
しづかなることのね。江孝嗣詩「──一罷調、淸醑復誰同」=幽瑟。
しづかなろ思。唐明皇、送賀知章歸四明詩「寰中得祕要、方外散──」
○しづかにかくれ居る。禮、儒行「──而不淫」○しづかなるすまひ。張籍詩「爐峯寺後著──」=幽樓。
くらきひとや。王庭筠詩「況復──中、萬古結愁霧」=幽囹。
しづかにして面白きおもむき。杜甫詩「平生爲──、未惜馬蹄遙」
おくふかきいはや。柳宗元詩「高巖瞰淸江──潛神蛟」
しづかにさびしき花。杜甫詩「──攲滿樹、小水細通池」
くらし。韓愈詩「白日變──」=幽昧。
心の底にいだくしづかなおもひ。韓愈詩「──不可寫」=幽襟。
おくふかきひかり。人に知られざろ德の光。韓愈、答崔立之書「發潛德之──」
しづかなる竹やぶ。王維詩「獨坐──裏、彈琴復長嘯」
おくふかく、はるかなり。孫綽、遊天台山賦序「所立冥奥、其路──」=幽遠。
おくふかきこみち。謝朓詩「兼得尋──」=幽徑。
奥深くしづかなるあな。摯虞賦「探龜蛇於──兮」
道理がおくふかく知り難し。
目には見えざれども何となくおくふかくして神神し。顏延之文「皇塗昭烈、神路──」=邃嚴。
かくれると、あらはるると。莊子「──無愧于心、則獨行而不懼」
おくふかき戶。朱熹詩「靑山遶蓬廬、白雲障──」=幽扉。
おくふかきたに。詩、小雅、伐木「出自──、遷于喬木」
かすかにしてくらし。楚辭「方世俗之──兮、眩白黑之美惡」=幽闇·幽昧。
心の底にひめたるうらみ、人の知らぬうらみ。元稹、楚歌「各自埋──、江流終宛然」=幽愁·幽懣。
○しづかなる心。○死者のたましひ。=幽靈。
しづかなるへや。岑參、對雨詩「隔簾濕衣巾、當暑涼──」
しづかにさびしき草。李白詩「石黛刷──」
深くかくれる。白虎通「五行北方水、萬物所──也」摯虞、孔子贊「河圖沈翳、鳳鳥──」
北方のえびすの地。隋煬帝文「省俗觀風、爰屆──」
おしこめて殺す。後漢書、宦者傳「──太后」
人の知れざる所にてひそかに助ける。易、說卦傳「昔者聖人之作易也、──於神明而生蓍」
心の底のかなしみ。鮑照詩「歎息空房婦、──坐自傷」
とらはれ。史、管晏傳「吾──受辱」
人に知られぬうれひ。白居易詩「別有──暗恨生」
奥ふかくしてうすぐらきへや。後漢書、張湛傳「居處──、心自修整」
世を避けてかくれ居る人。易、履卦「履道坦坦、──貞吉」
しづかにして自然のまま。仙靈をいふ。王安石詩「南堂棲──、晨起瞻像圖」
○しづかにしておくぶかし。水經、注「空谷──」
ひつぎ、棺。潘岳、祭庾新婦文「濳形──、寧神舊宇」
しづかなる心情。王羲之、蘭亭序「一觴一咏、亦足以暢敍──」
しづかにほめ味ふ。李白、春夜宴桃李園序「──未已、高談轉淸」
しづかにおくふかきおもむき。梅堯臣詩「種竹──深」
おくふかくしげれる樹。錢起詩「暮鳥棲──、孤雲岀舊丘」=幽木。
おくふかくしてけはし。南史、孔淳之傳「性好山水、每有所遊、必窮其──」
しづかなろ處に身を置く。說苑「吾嘗──而深思、不若學之速、吾嘗跂而望、不若登高之博見」
しづかにしてすぐれたる景。唐書、裴度傳「沼石林叢、岑繚──」
おくふかくして靑し。王昌齡詩「林色與溪古、深篁引──」=幽碧。
しづかにおくふかし。王延壽、魯靈光殿賦「洞房叫窱而──」=幽深·幽遠。
しづかなる庭のいしだたみ。李商隱詩「──欲乾殘菊露」
次條に同じ。
しづかなるすまゐ。杜甫詩「──地僻經過少」
さびしくしづか。盧象詩「雲氣轉──、溪流無是非」
しづかにかけ離れたる場所。李羣玉詩「採藥歷──」
しづかにおくふかき貌。晉書、裴楷傳「山濤若登山臨下、──深遠」
○水の伏し流るる所。韓愈詩「虎豹僵穴中、蛟螭死──」○しづかにひそみかくれる。九懷「鯨鱏兮──」
しづかにたづねる、名勝の山水などを尋ね步く。杜甫詩「脫身事──」=幽探·幽尋。
○しづかなるへや。張協、七命「──晝密」○はか、墳墓。
おくふかき景をさぐる。張籍詩「──道侶兼」=幽討。
しづかなるふち。王勃賦「──採蓮」潭は正音シン
西北の天。淮南子「西北方曰──」
○堯の時の北方の都。書、堯典「宅朔方、曰──」○地下の稱。楚辭「君無下此──」
しづかにおくふかきほらあな。陳子昻詩「石林何冥密、──無畱行」
しづかなるものおもひ。謝朓、春思詩「──漸鬱陶」=幽思。
しづかなる花びら。蘇軾、寒菊詩「輕肌弱骨散──、眞是靑帬兩髻丫」=幽花。
しづかなるにほひ。張九齡詩「欲贈──歇、行悲舊賞移」=幽香。
しづかにおくぶかきへや。張華詩「淸風動帷簾、晨月燭──」=幽室·幽堂。
かすかにしてしづか。孫綽銘「肅形枯林、映心──」=幽寂。
おくふかくひめる。崔融文「天道──、生涯糾錯」
人知れぬいきどほり。晉書、嵆康傳「性愼言行、一旦縲絏、乃作──詩」
○一室にとぢこめる、拘禁する。○古、婦人に適用せし淫刑。
奥深くしてたへなる道。玄妙にして深微なる理。韓愈、進學解「張皇──」=幽妙。
しづかなるかたゐなか。杜甫詩「渚柳元──、村花不掃除」=幽偏·僻幽。
しづかなるかたゐなか。宋之問詩「宦遊非吏隱、心事好──」=幽僻。
くらくして明かならず。隋書、經籍志「其理──」
○くらきと、あかるきと。無形と有形と。幽は天地の道、明は萬物の理。易、繫辭「仰以觀於天文、俯以察於地理、是故知──之故」○幽は鬼神、明は人。冥土と現世と。禮、祭義「別──以制上下」○暗愚にして成績惡しきと賢明にして成績良きと。書、舜典「三考黜陟──」
かすかにしてくらし。おくぶかくして微妙なり。漢書、劉歆傳「──而莫知其原」
草木が深くしげる。吳都賦「珊瑚──而玲瓏」=鬱茂·幽蔚。
胃の腑の下の方のくち、胃より腸に通ずる口。
おしこめられてゐるくるしみ、幽閉のわざはひ。
世俗を離れたる閑雅なる約東。陳高詩「我性亦愛山、方期結──」
おくぶかき谷に生ずる蘭。離騷「時曖曖其將罷兮、結──以延佇」
しづかに、ものうし。暢當、重答江州應物詩「煩君瓊玖贈、──百無成」
しげりておくぶかきはやし。王建詩「移石入──」
くらきひとや。韓維詩「煩憂忽以去、曠如岀──」=幽圄。
周の幽王と厲王と。亡國の君の義に用ふ。孟、吿子「──興、則民好暴」
○死者のたましひ。謝惠連、祭古冢文「──髣髴、歆我犧樽」○ 國 死者が形をあらはして人に見えるといふ幻影。
9畫
①キ [微]
②キ [尾]
①きざし(微)「─微」易、繫辭「知─其神乎」○ほとんど(殆)ちかし(近)將に及ばんとするの辭。史記「─敗乃公事」○あやふし(危·殆)○こひねがふ(尙)=覬。庶─とも連用す。○みる(察)○とき、時期。詩、小雅「如─如」式」○時をきめる、期する。○かなめ(主要)○附く、纏ふ。
②いく、いくばく「─何」物の數を料 ハカ り問ふ語。
同訓異義
ホトンド 幾·殆の別は殆(歹部五畫)の條を見よ。
をり、めぐりあはせ、幾は機に通ず、時機をいふ。後漢書、劉玄傳論「亦──之會也」=機運。
事のきざしを見る、幾は機。易、繫辭「君子──而作、不俟終日」
○いくばく、いかほど、いくら。=若干。○幾何學の略。
物の形、大さ、位置等を硏究する科學。= 俗 形學。
怒にふれざるやぅに、すこしづついさめる。論、里仁「子曰、事父母──、見志不從、又敬不違、勞而不怨」
殆どなし、まづなし。孟、離婁「不相泣者──矣」=無幾。
ほとんどおひつく。五代史、和凝傳「一騎、追瓌──」
いくばく。古詩「河漢淸且淺、相去復──」=幾何·若干。
幾微の事は、愼密にせざれば漏泄して、禍を致し、事の成就を妨ぐる。易、繫辭「子曰、亂之所生也、則言語以爲階、君不密則失臣、臣不密則失身、───────、是以君子愼密而不出也」
ほとんどあやふし。漢書、樊噲傳「沛公──」
藥の名。規那樹の皮より製するもの、規那とも書く。
ほとんどやぶれる。史記「豎儒──乃公事」
ほとんどほろぶ。左傳「不從晉、國──」
望 モチ に近し、陰曆十四日の月。易、小畜「月──」
かすかなるきざし。けはひ(先兆)易、繫辭「幾者、動之微、吉之先見者也」韓愈、送殷員外序「無──出於言面」
いくつ、どれほど。
いくへにもかさなる。杜甫詩「烟霞障──」
いくたび、般は數を數へるにいふ語。戎昱詩「愁至關心事──」
11畫
絕(糸部五畫)の古字。
繼(糸部十四畫)の本字。