辵部(辶)
0畫
チャク [藥]
○はしる(疾行)○たたずむ。○ 國 シンネウシンニウ 之繞 シネウ の音便、字畫上の辶の稱。
1畫
〔國字〕
○すべる(滑)足がなめらかにしてとどまらず。○まかる、退出する。
2畫
國 邊(辵部十五畫)の略字として用ふ。
〔國字〕
○こむ、入れる、やる「申し─む」○いりこむ、雜鬧する。○こめ。
〔國字〕
つじ(十字街)「─占」「─便所」=逵。
3畫
イ [紙]
又、迤に作る
○ゆく、ななめに行く(邪行)○ななめにたてかける(邪倚)○─邐 イリ はつらなる(連接)
○連なる貌。袁桷詩「水花碧團團、雲葉白──」○斜めに延びる貌。沈與求詩「廻廊──穿危嶠」
相連る貌。揚雄賦「封巒石闕──乎延屬」
ウ [虞]
又迃に作る
○とほし(遠)まはりどほし。○事情に遠ざかる、實際に適せず。にぶし(鈍)「─遠」「─愚」論、子路「有是哉子之─也」○ねぢく、まげる。まがる(曲)書、盤庚「─乃心」かがまる(屈)○さく(避)○やや(良)すこし「─久」○廣く大いなり。
まはりどほくして實地の役に立たず。史、孟荀傳「──而闊於事情」=迂闊。
やや久し。後漢書、劉寬傳「──大醉而還」=良久。
あちこちとめぐりまがる。=紆曲。
世事にうとくおろか。元稹詩「拙劣仍非速、──且異專」=迂拙。
とほまはりする。
○まはりどほくして實地の役にたたず。漢書、王吉傳「上以其言──、不甚寵異也」=迂遠。○ 國 うっかりする。
ぐづぐづしててぬるし。王粲、儒吏論「竹帛之儒、豈生而──也哉、起於講堂之上、遊於鄕校之中、無嚴猛刻斷以自裁、雖欲不──、弗能得矣」=遲滯。
まはりどほきことば。呂覽、先己「寡人以爲──」
世事にうとき人。迂遠なる人。
世の中の事情に通ぜざる學者、くされ儒者。僧道潛詩「結交慕豪彥、倜儻非──」=腐儒。
自己の謙稱、拙者·小生。
みちがとほまはりにまがる、迂餘曲折。
おろかにしてつたなし。白居易詩「吾道本──、世途多險艱」
世事にまはりどほくうとし。=疎迂。
世事にうときおやぢ、司馬溫公の自稱。石林燕語「司馬溫公自少稱──、著迂書四十一篇」
まはりどほき大言を吐きて實なき義。晉書、裴秀傳「禹貢地域圖序、或荒外──之言、不合事實、于義無取」
世事にくらくにぶし。
おろかにして役にたたず。
まはりみち。隋書、馬晃傳「──出賀蘭山」
見識がうとくしていやし。=愚陋。
迂(前條)に同じ。
キツ [質]
○およぶ、まで、いたる(至)詩、大雅「以─于今」○つひに(竟)後漢書、孔融傳「─無成功」
同訓異義
イタル 迄至·到·臻·詣·造·格·戾等の別は至(一五九一頁三段)の條を見よ。
ジン [震]
○すみやか、はやし、とし(疾)「─疾」「勁─」○狼の子の甚だ力あるもの。
はやし。雲笈七籤「落筆──、畫蹤高古」
鷹 タカ の異名。張衡賦「──輕足」阮籍書「九蒼之高、──不能尋其巓」
はげしくふる雨。後漢書、劉愷傳「遭烈風不迷、遇──不惑」
月日がはやく移る。朱熹詩「──諒難畱、歸軫忽已騫」
すみやかにうつ。虞世南文「進退斂距、若秋鷹之──」=急擊。
極めてはやし。蘇軾詩「忽驚飛雹穿戶牖、──不復容遮防」
はやくはしる。抱朴子「──之駿足也」
はやし。傅休奕、走狗賦「旣──而無前、又閒暇而有度」
すみやかにはしる。爾雅「狒狒如人、被髮──」=疾走。
すみやか。北史、杜銓傳「爲文──、有如宿構」=迅急。
漕ぐことのはやきかい。夏侯弼文「輕帆──、橫絕江流」
いなびかりの迅くして目をふさぐ暇なし。事の急にしてふせぐ暇なきに喩ふ。六韜「疾雷不及掩耳、──────」=疾霆不暇掩目〔淮南子〕
感動しやすし。南史、王寂傳「性──好文章、讀范滂傳、未嘗不歎悒」
はやくはしるうま。劉峻詩「──晨風趨、輕輿流水散」
急におこる。宣和畫譜「震雷──、雲物冥晦」
はやて。王粲詩「──拂裳袂」
はやくすぎ行く。邁は行。晉書、桓冲傳「日月──、高風日起」=速邁。
はやくたけし。元史、河渠志「黃河伏槽之時、水勢似緩、一遇霖潦、湍浪──」=湍猛。
はげしきかみなり。論、鄕黨「──風烈必變」=疾雷。
はやせ。劉禹錫詩「──下哮吼、兩岸勢爭衡」=急湍。
はやきながれ。馬融文「靡颸風、陵──」
テン [先]
○たどる、ゆるゆるあゆむ(緩步)○ 國 たどる、道を探りながら行く。又、それからそれへと思索する。
遷(辵部十二畫)の俗字。
4畫
ガ [禡]
むかふ、相迎へる「郊─」
同訓異義
ムカフ 迓·迎·向·邀·逆·逢の別は向(三○六頁四段)の條を見よ。
①カゥ·ガゥ [陽]
②カゥ·ゴウ [江]
①うさぎみち(兔道)○けもののあしあと(獸迹)
②わだち(車迹)
①キン·コン [吻]
②キン·コン [問]
③キ [寘]
①ちかし。遠の對。時閒、又、距離が短かし「─世」「─代」「鄰─」○そば、かたはら(左右)○てぢか、分りやすし、知り易し、見なれ聞きなれる「卑─」「淺─」○似る。中庸「好學─乎知」○よくあてはまる(切實)「─切」公羊、哀十四「撥亂世反諸正、莫─於春秋」○したし(親)したしきもの。みうち。李密、陳情表「外無朞功彊─之親」○君主のちかづけ親むもの「─習」「─臣」○ちかごろ「─者」
②ちかづく。○つく(附)○したしむ(親)書、五子之歌「民可─、不可下」○せまる(迫)
③無意味の助辭。詩、大雅「往─王舅」
同訓異義
チカシ 近·邇○近は遠の反なり「近レ水樓臺先得レ月」の如し。○邇は遐の反なり、近と同じ、伹遠近は常用字なれども、遐邇は古き字なり。
目の前のうれへ。論、衞靈公「人無遠慮、必有──」
直接の原因。遠因の對。
ちすぢの近き親類。=近親。
陸地にちかき海。其の地に近き海。
邑外五十里までの地、轉じて城下に近きゐなか。唐書、賈耽傳「優詔許獵──」
○ちかづけいつくしむ。史、刺客傳「襄子必──子」○ちかづけ親む臣。
國 近在に同じ。
近きうちに出版する。
ちかめ。=近視眼。
都にちかき地。許棠詩「幷州去路殊迢遞、風雨何當達──」
ちかごろのやぅす。=近狀。
近所の火事。韓非、說林「遠水不救──也」
城巿に近きのはら。梅堯臣詩「月出至──」=近郊。
ちかまの縣、附近の縣「──旅行」
ひるまへ、正午に近き時。程明道詩「雲淡風輕──天」=薄午。
近きむかし。年代の多くへだたらざるむかし。歷史上にて近世と中古との閒の稱。
國 城巿に近きゐなか、近き在所 ザイシヨ =近鄕。
近年に同じ、ちかごろの世。宋史、秉常傳「西蕃表云、臣自歷世以來、貢奉朝廷、無所虧怠、至於──、尤甚歡和」
ちかごろ作りし詩文など。宋史、周必大傳「其以──進上」=近業。
よくにる。金史、徒單鎰傳「凡天下之事、叢來者非一端、形似者非一體、法制不能盡、隱于──乃生異論」
ちかごろ起りし出來事。
佛に事ふる女子。翻譯名義集「優?夷 ウバイ 亦譯───」
近く君主の左右にはべる。又、其のけらい、親近侍從の臣。漢書、王嘉傳「──帷幄」=近習。
己の身に近くあてはめておもふ。論、子張「切問而──」
十四卷、朱熹·呂祖謙二人共撰す、宋の周茂叔·程明道·程伊川·張橫渠の語を類聚す。
ちかし。又ちかづく。
ちかめ。=近眼。
ちかごろ作りし詩、什はもと詩經に十篇の詩をすべ稱したるに本づく。
君主のそば近くなれつかふる者。君主の親狎する所の人。禮、月令「雖有貴戚──、母有不禁」=近臣。
君主のそば近くつかふるけらい、左右侍從の臣。孟、萬章「觀──以其所主」=近習·近侍·侍從。
左右近侍の臣、默して言はず。墨子「臣下重其爵位而不言、近臣則暗、遠臣則唫」
○ちかごろのおとづれ。○近づけ信用する。=信近。
ちすぢの近き親類。漢書、何武傳「太后──」
○ちかごろ。韓愈、與李浙東書「──閤下從事」=近來·頃者。○近き處に居る人。論、子路「──悅服、而遠者懷之」
ちかごろのやうす。=近況·近情。
前條に同じ。
朱の色に近づく。傅玄箴「──者赤、近墨者黑」人の性情、習染に因りて化するに喩ふ。
ちかづきしたしむ。漢書、傅介子傳「其王──人、易得」
近臣に同じ。
近き場所〔史、陳涉世家〕=近處·近邊。
文法にて自身に近き物事又場所に用ふる代名詞。これ·この·ここの類。
近き時代。=近代·近歲。
血統のちかき親類。漢書辛慶忌傳「──主內、異姓距外」=近親。
ひったりとあてはまる、て近くして切實。
ちかくつづく。=接近。
ちかくしてあさし。李嶠表「臣行能──、識性凡陋」=淺近。
近き時代。晉書、何劭傳「陳說──事、若指諸掌」=近世。
○古詩に對して律詩絕句をいふ。○廣くちかごろ行はるるていさい。金史、趙秉文傳「小詩精絕、多以──爲之」
國 ちかごろ到着する。=新到。
ちかきところ。=近所近邊。
○國境卽ち邊土にちかづく。漢書、陳湯傳「單于遁逃、遠舍不敢──」○ちかき所。智度論「毒草生處、──必有良藥」=近所·近傍。
君主に近づくを得る所。後漢書、袁敞傳「陛下以臣嘗在──、識臣狀貌」
ほまれをむかへ求める。莊子「爲善無──、爲惡無近刑」
ちかごろ。=頃者。
きんじょとなり。=鄰近。
國 皇宮を守る軍隊。
○近づくべきものを近づけ愛する。春秋繁露「──而遠遠」○ 國 キンキン ちかいうち。=近日。
近所の民が恩惠に悅び服して、遠方の民もそれを聞きて慕ひ來る。論、子路「葉公問政、子曰、──────」
①ゲイ·ギャウ [庚]
②ゲイ·ギャウ [敬]
①むかふ、物が來りて迎へ接する「歡─」○あらかじめかぞへる(逆數)史、五帝紀「─日推策」
②むかふ(迓)物が未だ來らざるに往きて迎へる。詩、大雅「親─于渭」
同訓異義
ムカフ 迎·向·邀·迓·逆·逢の別は向(三○六頁四段)の條を見よ。
人の心をむかへてへつらふ。唐書、杜淹傳「方煬帝幸江都、羣臣──、獨懷道執不可」郅懷道を謂ふ。=逢迎阿諛。
人の心をさぐりて氣に入るやうにする。唐書、貴妃楊氏傳「智算警穎、──輒悟」
客をむかへてもてなす。魏志、李彪傳「彪有女、幼而聰令、彪每奇之、敎之書學、世宗聞其名、召爲婕妤、以禮──」=迎接。
むかへてまみえる。漢書、疏廣傳「受──應對」
○人の氣に合ふやぅにつとめる。おもねりへつらふ。=逢迎。○豫め期を約して會合する。齊書、陳顯達傳「申司州、志節堅明、分見──」
中門まで出でむかへる。閤は小閨。後漢書、彭寵傳「寵謂至當──握手、交歡竝坐、今旣不然、所以失望」
出でむかへる。梁書、傅映傳「乃自往──、同乘而歸」
新年をむかへる。淮南子「──於東郊」=迎年·迎春。
あらかじめ日をかぞへる。史、五帝紀「黃帝──推策」
やえばをむかへる。晉書、杜預傳「今兵威已振、譬如破竹、數節之後、皆──而解、無復著手處也」事の甚だ易きに喩ふ。
しののめに向ふ。儲光羲詩「──起飯牛」
さいはひの來るを待ちうける。謝莊文「祚靈集祉、慶藹──」
○春をむかへる。禮、月令「──於東郊」○小灌木の名、莖の上部纖細にして延長すること蔓の如し、早春葉に先だちて六瓣の黃花を開く、春花中の最も早く發く者、故に名づく。○辛夷 コブシ の異名。
客をむかへてあしらふ。李中詩「隣家開戶相──」=迎引。
でむかへと、みおくりと。=送迎。
目を以て迎へ接する。劉勰、新論「來而──之、去而目送之」
うしほのさし來るをむかへ待つ。項斯詩「沙鳥戲──」
新年をむかへる。荊楚歲時記「以迎新年」=迎歲。
むかへてをがむ。
陰曆三月の雨、うのはなくだし。埤雅「江南三月爲───、五月爲送梅雨」
客をむかへる。儀禮「冠之日、主人紒而──」
避暑の爲めに立てたるものみ。關中記「晉帝作───·寒露臺以避暑」
人を迎へてもてなす、請待。
むかへてあふ。杜甫詩「一笑喜──」
むかへてねぎらふ。後漢書、光武紀「吏人喜悅、爭持牛酒──」
他所に在る人をむかへて君主の位にたてる。
ゴ [遇]
午、啎に通ず
○あふ(遇)遭遇する。後漢書、陳蕃傳「王甫時出與蕃相─」○たがふ(違)○さかふ(逆)「乖─」○錯─ サクゴ はまざる(交雜)
チュン トン [眞]
たちもとほる、進まず(邅)「─邅」
行き難く進まざる貌。=屯邅。
ヘン ハン [阮]
反に通ず
○かへる、もどる。かへす(復·還)「往─」漢書、伍被傳「往者不─」○しりぞく。しりぞける(退)○さる(去)○たび、度數をあらはすことば「十─」○ 國 カヘル 反對になる「─討 カヘリウチ 」
同訓異義
カへル 返·還·反·歸·復·囘·旋の別は歸(一○一六頁二段)の條を見よ。
國 かへしうた。歌のかへし。
返書に同じ。
かへす。=還卻。
かへす。=返濟·償還。
日の影。王維詩「──入深林」=返照。
借りたるものをかへしすます。
へんじの手紙。=返書·返章·返信。
國 手紙のかへし。=返答·返書。
へんじの手紙。
手紙のへんじ。=返簡·返書。
かりたるものをかへしつぐのふ。=返濟·償還。
へんじの手紙。晉書、陶侃傳「母──責侃」=返簡。
香の名、死者其の氣を聞けば活きかへるといふ。十洲記「聚窟洲有返魂樹、伐其根心、於玉釜中煮汁、煎成丸、名曰驚精香、一名───、一名卻死香、死者聞氣卽活」
てりかへし、ゆふひ。杜甫詩「──入江翻石壁」=斜照·斜陽·返景。
へんじ。=答書。
退き去るうしほ。沈約詩「碣石送──」
かへしをさめる。=還納。
受けたるさかづきをかへす。=酬杯。
しかへしする、しかへし。=復讎。
たづなをかへす。李商隱詩「千馬無──、萬車無還轅」
かへしわたす。=還附。
○人の物をかへす敬語。藺相如が璧を完うして趙にとりかへしたる故事に本づく。○人の贈り物を受けざる義。左、僖二「公子受飧反璧」
國 かへしもどす。=返還。
國 受けたる禮に報いる。又其の報いる禮物。
かへりみち。謝朓詩「徒念關山近、終知──長」=歸路。
香料の名。之を焚けば亡き人の靈を呼びかへすといふ。香譜「───煙直上、可見先靈」
紫苑 シヲン の異名〔本草〕
①ワゥ [漾]
②キャウ [養]
①ゆく(往)左、襄二八「─勞于東門之外」
②あざむく、たぶらかす(欺)詩、鄭風「人實─女」○おそれる(恐懼)左、昭三一「子無我─」
〔國字〕
○とても、到底「─も成功の見込なし」○とて、と言ひて「されば─」
5畫
イ [紙]
○ななめにつらなる。=迆。○ななめに行く貌。○委─は自得の貌。
連り延ぶる貌。杜牧詩「檣形櫛櫛斜、浪態──好」=迆迆。
地勢の斜めに廣く平かなる貌。羅浮山圖經「其下──有匯水、與潮汐應、曰瑤池」
水のななめにめぐる貌。李華文「因──而瀦之」
ななめに長くつづく貌。甘泉賦「封巒石闕、──平連屬」
つらなりつづく貌。旁行連延の義。梁?文帝、從軍行「──觀鵞翼、參?覩雁行」
カ·ケ カ [麻]
○釋─ シヤカ は佛陀の名。增韻「身毒國、瞿曇號曰釋─」○梵語のカの音に借り用ふ「─葉」「─陵嚬伽」○邂と通ず「─逅」
釋迦の十六弟子の一人。摩訶──波の略。釋迦沒後、佛敎の長老たり〔五燈會元〕=迦葉尊者。
飮光と譯す、過去七佛の第六位、釋迦の出現はこの佛の滅後、五十六億七千萬年の後に在りといふ。
僧舍 テラ 佛國記「名衆僧止處、爲僧──、凡有五百僧──、皆小乘學」魏書「──淨土、理絕囂塵」=伽藍。
天竺の寺の名、一名竹林精舍〔佛國記〕
佛 極樂淨土に居て聲の最も美にして、女の面に似たりといふ鳥の名〔正法念經〕=好聲鳥·妙聲鳥·逸音鳥。
ケイ [逈]
逈は俗字
○はるか、とほし(遠)「遼─」「修─」杜甫詩「江─月來遠」○かがやく(輝)
はるかにとほし。王粲文「楚魏絕邈、山河──」
とほきそら。元稹詩「晴烟塞──」
遠き貌。張說詩「山亭──面長川」
遠方をながめる。左思、吳都賦「曠瞻迢遞、──冥蒙」
高く拔きでる。杜確文「──孤秀、出於常情」
はるかにとほし。陸雲賦「望故疇之──兮、泝南風而頽泣」=遼迥·寥遠。
サク [藥]
○ちぢむ(蹙)○せまる(迫·蹙)後漢書、陳忠傳「鄰舍比里、共相壓─」
邇(辵部十四畫)の略字。
ジュツ [質]
○のぶ(陳)布陳する「陳─」「稱─」「纂─」「紹─」「縷─」論、述而「─而不作」とく(說)つぐ(吿)○あらはす(著)「著─」○えらぶ(譔)「撰─」○したがふ(循)由りしたがふ。中庸「父作之子─之」○つぐ(續)○通天冠の前の飾。○文體の名「行─」行狀に同じ。
同訓異義
ノプ 述·陳·宣·布·展·舒·申·伸·信·暢·演·攄·延·紓○述は下地ある言を、うけつぎていひ、又人のなしたることを、うけつぎてするをいふ、循也、修也、讚也、譔也、陳也と註するにて、解すべし、祖述と用ふ。論語「述而不レ作」○陳は、つらぬとも訓み、陳列と用ふ、物をならべ立つる意、言葉に用ひても一一數へたててとくなり。明陳二大義一指二陳得失一の類。○宣は徧アマネくあらはし、ひろむるなり、宣旨·傳宣などと用ふ。○布は滯りなく、しきのべ列ぬるなり、しくとも訓む。左傳「敢布二腹心一」○展はひらきのぶるなり、展レ卷·展レ席の類、親展は、親しく開封し吳れよとの義。玉露「展二所レ藏法帖墨蹟書卷、一縱二觀之一」○舒は卷の反、展と略~同じ、凡展レ物謂二之舒一と註す、舒レ席·柳葉舒などと用ふ。○申·伸の二字は、義同じ、屈の反、舒也、理也、屈者使レ直也と註す。○信はのぶると訓むときは、伸に同じ。易經「往者屈也、來者信也」○暢は達也、通也と註し、通暢·舒暢と用ふ、のびのびとして通るなり、鬯と同義なり。易經「美在二其中一而暢二於四支、一發二於事業一」○演は衍と音義通ず、通也、潤也、引也、廣也、延也と註す、ひろげのぶるなり、演義は、衍義に同じ。○攄は舒に同じ、但形貌の上には用ひず、意志の上にのみ用ふ。文選「賓願攄二懷舊之蓄念一」○延はひきのぶるなり、展とのちがひは、展はひらきのぶるなり、蔓延は、つるのはひのぶるなり、延年·延齡と用ふ。○紓はゆるめるなり、紓レ災·紓レ兵の類。左傳「紓二楚國之難一」
書名、二卷、舊本、梁の任昉の撰と題す、張華の博物志の如く半眞半僞の書なり。
己の思をのべる。=言志。
言をのべて書きのせる。後漢書、應奉傳「著漢書後序、多所──」
述は舊を傳ふる、作は創めつくる。論、述而「述而不作」晉書、南陽王子保傳「少有文義、好──」
由りしたがふ。後漢書、光武紀「太宗識終始之義、景帝能──孝道」
のべついづ。後漢書、班固傳「又作典引篇、──漢德」=敍述。
諸侯が天子に朝して己の職務上の事を申しあげる。孟、梁惠王「──者、述所職也」
元の文宗、子思を封じて沂國──公と爲す、明の嘉靖の時、封爵を罷めて止 タダ ──と稱す。
詩文をつくる。梁元帝文「至于忠臣、曾無──」
天子へ申しあげる。魏書、劉芳傳「尙書──」
①タ [歌]
②イ [支]
迆、迤に通ず
①逶─ イタ は行く貌。
②委蛇の蛇に同じ。
タイ [賄]
およぶ(及)詩、召南「─其今兮」=逮。
同訓異義
オヨブ 迨·及·逮·曁·洎·覃の別は及(二九一頁二段)の條を見よ。
逃(辵部六畫)の俗字。
テイ [霽]
こゆ(超踰)漢書、禮樂志「體容與、─萬里」
テゥ [蕭]
○とほし(遠)はるか(遰)○──は高き貌。
はるかに遠し。江淹賦「──衝山、崎曲抱津」=迢遞。
高き貌。王延壽賦「──倜儻」
○はるかに遠し。水經、注「──相望」=迢遙。○高き貌。謝朓詩「逶迤帶綠水、──起朱樓」
○高き貌。古詩「──牽牛星」○はるかなる貌。潘岳詩「──遠行客」
テキ [錫]
廸に作るは非
○すすむ(進)○ふむ(蹈)ふみ行ふ。實踐躬行する。書、皋陶謨「允─厥德」○ただす(正)○みち(道德)書、大禹謨「惠─吉」(惠は順)○ひらきみちびく(開導)「啓─」「訓─」書、康誥「矧民罔─不適」○いたる(至)漢書、敍傳「漢─于秦、有」革有因」
①テツ [屑]
②イツ [質]
①かはるがはる(更)たがひに。易、繫辭「─用柔剛」○かはる「更─」たがふ。
②すぐ。軼に通ず。○通過しつつ亂暴する、侵ししのぐ(侵陵)左、成十三「─我殽地」○にげる。古、逸に通ず。家語「馬將─」
たがひにおこる。莊子「四時──、萬物循生」水經、注「有赭巖──、冠以靑林與雲霞」=迭興。
たがひに去る。晏子「迭處之、──之」
かはるがはるうつ。北史、崔浩傳「廣農積穀、爲滅賊之資、東西──、故漢未疲、而匈奴已弊」
たがひにおこる。史、封禪書「──軼廢」
たがひにうつす。宋書、禮志「三祖之廟、萬世不毀、其餘四廟、親盡──」
互に世を受け繼ぐ。後漢書、仲長統傳「以之──」
ハク ヒャク [陌]
○せまる(逼)「脅─」「逼─」○ちかづく(近)○きびし(急)○くるしむ(窘)「窘─」「窮─」○ちぢむ(縮)せばまる「局─」「蹙─」○すみやか(速)○いそぐ(急)きりつまる「急─」漢書、武帝紀「外─公事」○うながす(促·催)「催─」杜甫詩「能事不受相促─」
同訓異義
セマル 迫·逼·薄·蹙の別は逼(一九七四頁一段)の條を見よ。
せまりそこなふ、くるしめる。くるしみ。
せまる。從漢書「光武至懷、韓歆──迎降」=急迫。
せまりおびやかす。漢書、吳王濞傳「──萬民、伐殺無罪、甚爲虐暴、朕甚痛之」
○せまりおどす。漢書、趙王幽傳「──王侯兮」=脅迫。○地勢がせまし(狹陋)張衡、西京賦「增九筵之──」
6畫
イ [支]
うつす。うつる(遷徙)「推─」楚辭「屢懲艾而不─」=移。
①クヮイ·ヱ [灰]
②クヮイ·ヱ [隊]
又、迴·廻に作る
①めぐる「─轉」「輪─」=回。
②まがる(曲)
同訓異義
メグル 迴·繞·遶·環·巡·周等の別は繞(一五○一頁三段)の條を見よ。
まはりどほし。陳師道詩「臨事──種種遲」
めぐり合ふ。謝靈運詩「洲島驟──、圻岸屢摧奔」=環繞。
めぐりまがる(彎環)江總詩「縱棹憐──」
首をめぐらして顧みしたふ。李咸用詩「那堪──處、殘照滿衣裳」=回首。
天は君、君の心を挽迴する力。唐書、張元素傳「張公論事、有────」=囘天之力。
つむじかぜ。杜甫詩「急雪舞──」=囘風·旋風。
詩詞の循環して誦を成すもの、晉以後盛んに行はる、傅咸に──反覆詩あり、梁?文帝に──紗扇銘あり、金石索に六朝の時の──鏡銘あり。侍兒小名錄「前秦安南將軍竇滔有寵姬趙陽臺、置之別所、妻蘇求而獲焉、苦加撻辱、滔深恨之、滔鎭襄陽、與陽臺之任、絕蘇氏音問、蘇悔恨自傷、因織錦──題詩二百餘首、計八百餘字、縱橫反覆、皆爲文章、名?璣圖、遣蒼頭齎至襄陽、滔覽錦字感其妙絕、因具車徒迎蘇氏」
天子の車駕の都に還るにいふ。宋之問詩「──指帝庥」
古の舞曲の名。初學記「古之舞曲、有──七槃」庾信賦「陽春綠水之曲、對鳳──之舞」
クヮツ [曷]
○はやし、すみやか(疾)○人名。南宮─は魯の大夫〔論、憲問〕
ゲキ ギャク [陌]
○さかふ(迕)道理にしたがはず。順の對。書、大禹謨「從─凶」たがふ(違)物事の順序がちがふ、もとる(戾·拂)○そむく(反)「畔─」「反─」○みだる(亂)○むかふ、むかへる(迎)「目─」○まちまうける。○うく(受)儀禮、聘禮「衆介皆─命、不辭」○しりぞく(卻)○あらかじめ、前以て、事に先だちて豫め度 ハカ る、推測する。論、憲問「不─詐」○のぼせ、のぼす。○さか、さかさま。
同訓異義
サカフ 逆·忤の別は忤(六四○頁二段)の條を見よ。○ムカフ逆·向·迎·邀·迓·逢の別は向(三○六頁四段)の條を見よ。
人が己を欺くことなきかと未だ然らざる前に豫め疑ふ。論、憲問「不──、不億不信」
あらかじめ見る、事前に豫め知る。諸葛亮、出師表「至於成敗利鈍、非臣之明所能──也」=逆覩·先見。
あらかじめ備へる。左、宣三、注「圖鬼神百物之形、使民──之」=預備。
むかへてねぎらふ。周禮「凡諸侯入、王則──于畿」
天子のいかり。韓非、說難「夫龍之爲蟲也、柔可狎而騎也、然其喉下有──徑尺、若人有嬰之者、則必殺人、人主亦有──、說者能無嬰人主之──則幾矣」龍は人君の象、故に比す。
やどや、はたごや。莊、山木「陽子之宋、宿於──」=客舍·旅館。
やどやのあるじ。王守仁詩「────多慇憅、出門轉眄成路人」
あらかじめはかる。諸葛亮表「凡事如是、難可──」=豫度。
理にもとりてあし。周禮「三曰、孝德以知──」
○むほんの心。=逆心。○人の心にさからふ。荀悅、昌邑王論「犯顏──」
さかさまにあふれながれる。漢書、五行志「水失其性、霧水暴出、百川──」
親が子よりも後れ、老人が少者よりも生きながらへる因緣。一說にすべて違逆の因緣をいふ、卽ち疾病に罹り、又は妻子に先だたれたる等の違逆の事によりて佛法に近づくゆかりをいふと。
道理にもとり又むほんをおこす宦官。閹は男の勢(男根)なく精の閉づる者、奄に作る同じ。
さかさまにゆく。孟、吿子「水──、謂之逄水」逄は洪。
船をぎゃくにすすめる。
さからふこころ。管子「人不足則──生、──生則令不行」
不仕合の境遇。宋史、羅點傳「夫閭閻匹夫、處閨門──、容有縱酒自歌者」
さかさまにまはる。又さかさまにまはす。
耳にさかふ。忠諫の言をいふ。史、畱侯世家「忠言──利於行」
忠信などの正しきはなし。小人の耳にさかひて入り難き故。李翰文「────、容之者少」
寄せ來る敵を此方より不意うちにする。
そむく心、謀反の心。漢書、五行志「挾──」
君にそむくけらい。新唐書以下の史書多く──傳を載す。=謀反人。
のぼせる、上氣。
佛 逆に冥福を修する、卽ち、少者が先だち死して、老者が其の後世を弔ふ。一說に逆はあらかじめの義にして──は預修と同じく死後に修せらるべき七七日の齋を預め生前に於て修し、又、生前に戒名を附けるをもいふと。隨願往生十方淨土經に──の功德の無量なることを說けり。
道にさからふわるもの、豎はやっこ、人をののしりていふ。文天祥、正氣歌「或爲擊賊笏、──頭破裂」
道理にさからひて取り、道理にしたがひて守る。史、陸賈傳「湯武逆取、而以順守之」湯武は臣を以て天子を放伐して天下を取る、故に逆取といふ。
さからふと、したがふと。晉書、張華傳「晏嬰齊之正卿、不死崔杼之難、季札吳之宗臣、不爭──之理」=順逆。
○四時の寒暑がたがひて不順なり。國語「時無──、物無害生」○さかさまに未來をかぞ ヘ る。易經「數往者順、知來者逆。故夫易──也」
さかまきめぐる。李白、蜀道難「下有──之迴川」
さかくじ。さかねぢのうつたへ。
むほんにん、君父にそむくわるもの。
君父にそむくもの。
道にそむけるおこなひ。漢書、主父偃傳「怒者──也、兵者凶器也」=悖德。
甚だ急なるさか。曾鞏、道山亭記「──如緣絙」=急坂。
さからひそむく。魏志、高貴鄕公紀「昔黥布──、漢祖親戎、隗囂違戾、光武西伐」=叛逆。
むかひかぜ。劉霽詩「衣香隨──」順風の對。
○反逆の名。○ 國 ギヤクミヤウ 生前につけおく死後の戒名。
さかまくなみ。杜甫詩「窮冬急風水、──開帆難」=狂濤。
○ながれにさかのぼる。又、さからひながれる。爾雅「──而上曰泝洄」○ 佛 ギャクル 生死の流に逆ひ六塵に染まずして道に入る。
わざはひ。江淹賦「──電熾、凶妖霧舒」
コウ [宥]
邂─ カイコウ はたまさかにあふ、期せずしてめぐりあふ。詩、鄭風「邂─相遇」
セキ シャク [陌]
跡·蹟と通ず
○あと、あしあと「足─」「鳥─」「馬─」「蹤─」○たづぬ、あとを追ふ。漢書、杜欽傳「將以求天心─得失也」○ゆくて、ゆくへ。○事實のあとかた「王─」「霸─」「治─」「陳─」「遺─」「舊─」○おこなひ(行爲)いさを(功績)わざ(事業)すべて功業の見るべき者「勳─」○事實に循ひて考へる。漢書、功臣表「─漢功臣、亦皆割符世爵」○以前のしきたり、先例、舊慣。論、先進「不踐─」
あとかたを畱めぬ、消えて無くなる。唐書、劉栖楚傳「宿姦老蠧──」
遠方へにげる。樂毅、報燕惠王書「──至郢」
前人の行に遵ひ由らずして己の意のままに行ふ。論、先進「子張問善人之道、子曰、───、亦不入室」
足あとを消す。淮南子「欲──而走雪中」其の爲す所、其の目的とする所と反する喩。
ソウ [送]
○おくる、人をみおくる「─行」「餞─」「郊─」「奉─」「贐─」○みおくり。○やる(遣)あちらへやる「─舊迎新」「─往迎來」○つかはす、物を致す「傳─」「遞─」「運─」○物を贈る。○おくりもの。史記「受故吏─、國除」
同訓異義
オクル 送·贈·饋·餼·餽·歸·貽·遺·贐·餞·賵·賻○送は送迎·送別と連用す、人の出立を見おくるなり、また目送は目にて見送る義。又物をおくり屆けるにも用ふ、送レ筆·送レ茶の類。○贈は人に物をやる義、增の字の意あり、物をやれば、先方が富み增すなり。○饋·餼の二字は食物をおくるなり、餼は生物をおくるなり。○餽は饋に同じけれども、食物のみに限らず。孟子「餽二兼金一百一」○歸はおくりつけてやりきるなり。論語「齊人歸二女樂一」○貽は贈りて先方へのこすなり。韓文「作二師說一以貽レ之」○遺は音物又は使などを人につかはすなり。○贐·餞の二字は、共に旅立の人に、はなむけをおくるなり。○賵·賻は共に香奠をおくるなり。
疫病神をおひはらふ。後漢書、禮儀志「侲子備、請逐疫(中略)持炬火、──出端門」
びんぼふ神をおくり出す。韓愈、送窮文「主人三揖窮鬼而吿之曰、聞子行有日矣、我有資送之恩、子有意於行乎、子之儔朋各有名字、智窮·學窮·文窮·命窮·交窮、凡此五鬼、爲吾五患」
よしみの心を他にはこぶ。駱賓王詩「許輩多情偏──」
人をおくると、むかへると。晉書、皇甫謐傳「吾──不出門、食不過鹽米」
れいをのべる。後漢書、周燮傳「遣生──、遂辭疾而歸」注「──猶致謝也」=致敬。
ことばを以て人をおくる。史、孔子世家「老子曰、富者送人以財、仁者送人以言」
柩 ヒツギ をおくりながら泣く。于鵠詩「──誰家車、靈車素帶長」
前任者を送り新任者を迎へる。漢書、王嘉傳「孝文時、吏或居官數月、而────、交錯道路」
死者をのべにおくり葬る。後漢書、梁竦傳「帝親臨──」=葬送。
○父母を送葬する。孟子「惟──可以當大事」○自ら身を殺すの道を取るにいふ。三國志「周瑜曰、操自──、而可迎之耶」
旅行する人をみおくる車。蘇洵、送石昌言爲北使序「從騎數百、──千乘」
葬式、又、旅立を送る者の多きをいふ。漢の劇孟、其の母を葬る、送車五千乘。前條參者。
名籍を他の家の戶籍中に移す。
次條に同じ。
物をおくりとどける。=送達·送遣。
電流を通ずる。
五月にふるあめ、つゆあがりの雨。埤雅「江南三月爲迎梅雨、五月爲───」
たびだちする人を見送る。李嘉祐詩「淮南頻──、臨水惜殘春」
老後の時日を消遣する。杜甫詩「何時一茅屋、──白雲邊」
①タイ [隊]
②トン [願]
①しりぞく(卻)進の對。○さる(去)しざる、あとへひく(引)「─卻」○ゆづる、へりくだる(遜讓)「謙─」○さく(避)○かへる(返)○ことわる(辭)官を辭する。漢書「功遂身─、天之道也」○とほざける(遠)「─小人」すつ(舍)○やむ(罷)○へる、衰へる「衰─」陸游詩「病─初嘗酒」へらす(減)「減─」○くじく(挫)○さげる、おとす、官位などをおとす。○氣よわし。論、先進「求也─」○─然は和柔 ヤハラカ の貌。
②おつ、色がさめる。=褪。
同訓異義
シりゾク 退·屛·斥·卻·却·黜·擯·貶○退は進の反なり、又遜讓の義にも用ふ、退士は退きて隱れる士。退筆はかきさしたるちび筆なり。老子「功成名遂身退、天之道也」○屛は除也、去也、斥也、放去也、又退也と註す、其の場をはらひのけるなり。衍義「屛二羣小之曲說一」○斥は斥逐·屛斥と連用す、屛よりは强し。唐太宗紀「親二君子、一斥二小人一」○卻は止也、不レ受也、又退也と註す、そこを避けて退き、又ことわりてかへすなり、且戰且卻·卻二暑與一レ雨者蓋の如し。○却は卻の俗字なり。○黜は陟の反、官位を貶し下ぐるなり。論語「柳下惠爲二士師一三黜」○擯は斥也、棄也、外へしりぞけ棄つる義、擯斥·擯棄と連用す。○貶は損也、墜也、おとしさげる。左傳序「以二一字一爲二襃貶一」
○後へひく、ひきさがる。=引退。○ 國 ノツビキ のきひきの音便、まぬかれる。
○寺僧の隱居する義。道山淸話「長老遂──而去」○ 國 入院患者が病癒えて病院を去る。
しりぞきかくる。劉滄詩「白雲深處葺茆廬、──衡門與俗疎」
しりぞきまもる。進取の對。
國 退職に同じ「──軍人」
役所よりしりぞく。白居易詩「──歸逼夜、拜表出侵晨」=退廷·退朝。
しりぞきさる。史記、自序「景公謙德、熒惑──」=退去。
官を退きて耕作する。史、吳世家「子胥退而耕于野」
官をやめてひまで居る。宋史、吳芾傳「──者十四年」=退職閒居。
○しりぞきてやすむ。○辭職。
あとへひきしりぞく。魏志、少帝紀、注「當今宜捐淮漢以南、──避之」
しりぞきさる、たちのき。
○しりぞき屈する。宋史、李綱傳「創業中興之主、盡其在我而已、其成功歸之於天、今未嘗盡人事、敵至而先自──、而欲責功於天、其可乎」○あきはてる。地持論「起──心」
軍隊をあとにひく。=退陣。
生物の器官の構造作用などが漸次に簡單或は喪失するに至るをいふ、男子の乳房の類。進化の對。
官職をやめる。=退職·退任。
しりぞきかくれる。易、繫辭「聖人以此洗心、──于密」
しりぞきて散り去る。後漢書、班超傳「因各──」
官を辭して家に退隱せる士。范成大詩「恰如──垂車後、勢利交親不到門」
しりぞきとどまる。陸機文「知險而──」
其の社に勤めることをやめる。
へりくだりて人にゆづる。曲禮「君子恭敬撙節──以明禮」=謙讓。
しりぞきまもる。唐書、張仁愿傳「兵貴攻取賤──」
しりぞきちぢまる、元氣が衰へよわる。=縮退。
まかる、ひきさがる。
朝廷より退き私宅にかへりて食事する。官吏が務を終へて家に歸り休息する義。詩、召南「──自公、委蛇委蛇」
官職をやめしりぞく。=退官·退任·致仕·辭職。
○しりぞきて我が身を反省する。論、爲政「退而省其私、亦足以發」○ ダイシヤウ 官省より退出する。=退廷·退食。
競進せずして心やすらか。南史「外雖──、內不免心競、故見譏于時」=退素。
俗 ねつざまし。=解熱劑。
しりぞく。本事詩「九齡慮終不免、爲海燕詩、以致意、亦終──」
其の座席より引きさがる。=退座。
へりくだりて柔和なる貌。檀弓「──、如不勝衣」
しりぞきはしる。穀梁傳、注「望風──」
しりぞきていこふ。朱熹詩「進趨極虔恭、──常端莊」
退役せる兵卒。劉後村、老馬詩「身同──支殘料」
へりくだる。晉書、安平王孚傳「孚性至愼、宣帝時執政、常自──」道德指歸論「簡易──、歸於無爲」
ひかへめにしてよわし。歐陽修詩「心志亦──」=懦退。
敵又は害惡を爲すものをうち滅ぼす。
退軍に同じ。
官聽 ヤクシヨ から退出する。
○朝廷より退きて家に歸る。=退朝。○法廷卽ち裁判所より退出する。
朝廷から退出する。=退廷·退食。
ひきしほ。=落潮。
○破產して他にひきうつる。○ 佛 佛を信ぜずして他へ心を移す「不──」
しりぞきかくれる。世說「諸客望其神姿、一時──」
退職に同じ。
しりぞきやぶる。南史、謝幾卿傳「軍至渦陽──」
しりぞきさける、引退する。漢書、張禹傳「禹乞骸骨、欲──」
さきのきれたる筆、ちびふで。蘇軾詩「──如山未足珍、讀書萬卷始通神」=禿筆。
ちびふでを埋めしつか。尙書故實「僧智永積年學書、有禿筆頭十甕、瘞之、號───」
あともどりする。進步の對。
官をやめて隱居する。白居易、洛陽池上篇「白氏叟樂天──之地」
にげみち、しりぞくみちすぢ。
うすべに。王建、牡丹詩「粉光深紫膩、肉色──嬌」=淺紅。
色がさめる。又、其の色。=褪色。
乃(六一頁一段)に同じ。廼は俗字
タゥ [豪]
迯は俗字
○にぐ、のがる、にげる(出亡)「─亡」「遁─」○さく(避)さる(去)孟、盡心「─墨必歸於楊」○まぬかれる(脫)逸し去る。史、項羽紀「漢王─」○まじろく(睛轉)孟、公孫丑「不目─」(目のむきをかへず)
同訓異義
ノガル 逃·遁·遯·逋·逭·北·竄○逃はたちのく、にげる、遁逃と用ふ。史記「伯夷曰、父命也、遂逃去」○遁はにげかくれる。左傳「曳レ柴而遁」○遯は遁に同じ。○逋は亡なり、とりにげ、借りにげに用ふ。書經「于伐二殷逋播臣一」○逭は逃なり。書經「自作孽不レ可レ逭」○北はうしろを見せる義。史記「吾三戰三北」○竄はにげかくれる。逋竄·鼠竄と用ふ。
にげのがれる。北史、劉昶傳「懼罰──」=遯逸。
のがれかくる。史、伯夷傳「堯讓天下於許由、許由不受、恥之──」=遯隱。
鳥の名。鵜鶘ともいふ、もと淘河に作る〔陸璣、詩疏〕がらんてう。
夫を棄てて更に他にとつぐ。史、始皇紀「妻爲──、子不得母、咸化廉淸」
のがれかへる。左傳「晉太子圉爲質于秦、將──」
にげさる。史、荊軻傳「魯句踐與荊軻博爭道、魯句踐怒而吐之、荊軻默而──」=遁去。
にげかくれる。
にげちる。唐書、禮樂志「黃巢之亂、樂工──」
にげかくれる。魏志、田疇傳「疇負義、──之人耳」=逃匿。
暑氣を避けんために酒宴を開く。陸游詩「安用更爲───、虛堂三伏自蕭然」
隱居して世と交らず。陳與義詩「老夫──久、堅坐聽陰晴」
宴會の時、辭せずして去る。本事詩「連飛數十觥、不勝其困、──而去」
にげかくれる。裴度文「諒飮啄於仁義、豈──於阻艱」
浮世を脫して禪に入る。杜甫詩「醉中往往愛──」一說に禪をのがる、酒を飮んで佛戒にそむき離れる義〔訂譌雜錄〕
にげはしる。=遁走。
にげかくれる。孟、滕文公「益烈山澤而焚之、禽獸──」=逃竄。
にげる。史、蕭相國世家「失軍亡衆、逃身遁者數矣」=逃遯·逃逋·逋遁。
のがれそむく。金史、太宗紀「其奴婢部曲、昔雖──、今能復歸者、竝聽爲民」
にげうせる、逐電する。
のがれさける。詩經、疏「雖則勤苦、無所──」
のがれる。王庭珪詩「三年竟亦無──」=逋逃。
にげやぶれる。賈誼、過秦論「百萬之徒、──而遂壞」=遁北。
名譽をさけて求めず。漢書、法眞傳「──而名我隨、避名而名我追」
ふちをじたいする。後漢書、何敞傳「豈但子文──、公儀退食之比哉」
①ツヰ [支]
②タイ [灰]
①おふ、おひかける「─敵」「─捕」「窮─」したがふ(隨)○およぶ(及·逮)○すくふ(救)論、微子「來者猶可─」○おくる(送)みおくる。○おひはらふ(斥)おひのける(逐)「─放」○さかのぼる(遡)已往にさかのぼる「─念」「─慕」「─尊」○とぐ(遂)
②みがく、玉石をみがき治める。詩、大雅「─琢其章」○鐘 ツリガネ をかけるひも(鐘紐)孟、盡心「─蠡」(鐘の紐を蟲が喰ふ)○母─は夏后氏の冠。
同訓異義
オフ 追·逐·趁○追は逐也、隨也、逮也と註す、逃る者を追ひかけ捕ふる義。漢書「蕭何曰、臣非二敢亡、一追二亡者一耳」○逐は此の方より物をおひ拂ふ義、驅逐と連用す、逐臣とは國外へ、逐ひ拂ひたる臣をいふ。また追と同じく物をおひまはす義にも用ふ。史記「逐二水草一而居」○趁は音チン逐なり、あちこちとおふなり。杜甫詩「溪喧獺趁レ魚」
敵の後をおほひおそふ、追躡掩擊。北史、魏宗室元麗傳「乘勝──、獲其父母妻子」
祖先の德を追ひ思ふ。論、學而「愼終──、民德歸厚」
過ぎ去りし事をおもふ。鮑照詩「──宿昔時、聲容滿心耳」
○あとから增し加へる。○あとからくはへ贈る。漢書、五行志「──尊號」=追贈。
○後からおこなふ。○後からおひかけてゆく。
過去の事をかんがへる。=追思。
死にたる父母によくつかへる。書、文侯之命「──于前文人」
あとから死者に名をつける。唐書、睿宗紀「──天后、曰大聖天后」
過去の事を思ひて心に感ずる。北史、趙修傳「──舊意、經恤其家」
あとからかきしるす。文心雕龍「仲尼微言、門人──」=追錄。
追慕に同じ、睎は慕。會鞏、寄歐陽舍人書「──祖德」
おひかけて來る騎兵。史、李將軍傳「射殺──」
其れから其れへと深くおしきはめる。
○あとからおひかけてさがす。漢書、王溫舒傳「旁郡──」○あとから要求する。
あとからとがめる。王羲之、與殷浩書「──往事、亦何所復及」
おひつく。漢書、高帝紀「高祖乃──、問老父」
あとからくいる。易經、疏「悔者其事已過、意有──之也」
追思に同じ。=追憶。
たのしみを尋ねる。蘇軾詩「往歲──地、寒窗夢不成」=尋歡。
手紙の本文に添へて書き加へる時、其の冐頭におく語。=追白·追申。
おひかけてうつ。史、項羽紀「楚又──」
あとからくいうらむ。唐書、尙宮宋若照傳「帝悟其讒、──之」
追思に同じ。
おひかけてころす。史、高祖紀「使騎將灌嬰──項羽於東城、斬首八萬、遂略定楚地」
過去の事をおもひ出す。魏志、劉馥傳「揚州士民──之」=追念·追想·追懷·追憶。
死後におくりなを贈る。漢書、元帝紀「元始元年五月、──孔子、曰襃成宣尼公」
手紙の本文に書き加へることば、なほなほがき。=追啓。
死亡せし人をあとから讒言する。
あとからことわる。南史「琨──之、望塵不及矣」
事後又其の人の死後におっかけて襃美をやる。=追襃。
おひつめる。唐書、劉黑闥傳「騎將劉弘基──、賊不得休」
國 こびへつらふ。=諂諛·佞諛。
死後にほめたてる。=追稱·追美。
死後に其の人の善行をほめたたへる。後漢書、祭遵傳「范升上疏、──遵」=追美。
人のあとを追ひて尋ねる。轉じて、舊事を尋ねる。杜甫詩「──話渺茫」=追跡。
人にしたがひて遊ぶ。杜甫詩「看君多道氣、從此數──」=隨從。
おひかけみだる。蘇軾、積欠狀「蔓延──」
死後其の人ををしむ。魏志、郭嘉傳「──奉孝不能去心」
あとをつけて尋ねる。
死者の忌日に佛事を營みて其の冥福をいのる。無量壽經、疏「孝子──」=追福。
去りし人の後を追ひ行きて送別の宴を設ける義。宋史、洪遵傳「──至十里、勞苦如平時」
死者の追善供養の佛事。釋氏要覽「人亡每至七日、必營齊──」
後からつけたしてうつたへる。
死者に官位をおくる。後漢書、公孫述傳「──少爲太常」
死後にあがめたふとぶ。史、始皇紀「──莊襄王、爲太上皇」
おにやらひ、節分 セツブン の豆まき。
おひかけとらへる。宋史、吳遵路傳「馭吏嚴肅、屬縣無──」
にぐるをおひうつ。後漢書、光武紀「郡縣──」
死後に其の人を悲みいたむ「──會」
生前に授けたる位をとりあげる。
○おひつおはれつして交る。朱熹詩「──聊嬉嬉」=徵逐。○互に相競ふ。宋史、薛惟吉傳「與京師少年、──角牴蹴踘、縱酒不謹」
あとから租稅をとりたてられる。韓愈、論太旱書「有者皆已輸納、無者徒被──」
死後に其の人をとむらふ。
あとから追ひかける。魏志、鄧艾傳「楊欣等──子彊川口大戰」
あとからつけ加へてをさめる。
事後に承認する。
追思に同じ〔左、成十三〕
あとにつきしたがふ。韓愈詩「終日相──」=陪從。
罪人をおひはなつ。=放逐。
死後に其の功德をほめる。=追賞·追美。
追啓に同じ、白はまうす。=追申。
おひせまる。後漢書、王常傳「戰一日數合、賊反走入城、常──之
○後をつけて行く。○ 國 電報の受信人が指定の場所に在らざる時に、其の行先をおうてわたす手續。
死者をあとよりほめる。漢書、趙充國傳「西羌嘗有警、上思將帥之臣、──充國」
死者の爲めに冥福をいのる。北史、隋文獻皇后傳「上爲立寺──焉」=追善。
敵を追ひ擊つ兵。通鑑、唐紀「李嗣業留拒──」
○おひかけてとらへる。漢書、韓延壽傳「吏無──之苦、民無箠楚之憂」○ 國 ──使 ツヰブシ は王朝時代に諸國に置きし官、賊を追捕することを掌る。
死者又は遠く去りたる人をおひしたふ。後漢書、陰皇后紀「明帝性孝愛、──無已」
後から書きしるす。又其の書。=追記。
死後に王號を奉る〔中庸〕
ハゥ [江]
逢とは別
人の姓。孟、離婁「─蒙學射於羿」
逬(辵部八畫)に同じ。
メイ [齊]
○まよふ、誤りて道を失ふ。まよひ、まどひ「昏─」○まよはす(惑)○明かならず、ぼんやりする「低─」「─離」
まよひてくらし。宋史、程顥傳「昔之惑人也、乘其──、今之惑人也、因其高明」
佛 迷妄の世界、卽ち衆生界の義。
其の中に入れば出口の分らぬやうに立てたる宮殿。轉じて事件の複雜して容易に判斷し難きに喩ふ。=迷樓。
まよひおそれる。郭璞文「天氣是動、孔甲──」
まよひて目がくらむ。
まよへるかんがへ。
めかくし、巾にて目をつつみ摸索して人を捉ふる小兒の遊戲。致虛雜俎「明皇與玉眞、恒於皎月下、以錦帕裹目、在方丈內相捉戲、謂之捉──」
まよひあやまる。書經、傳「各以其節、不有──愆伏」
佛 まよへる執念、正理に迷ひて非理に執著する。成唯識論「愚夫──於境、起煩惱」
理非をわきまへずして、みだりに信ずる。=妄信。
○わたしばの所在をふみまよふ。孟浩然詩「桃源何處是、游子正──」○轉じて、すべて方向にまよふ義。○ 國 衆生の迷苦する三界·六道に喩ふ「──慈航」慈航は佛法に喩ふ。
まよひわづらふ。魏武帝、秋胡行「作爲淸角韻、意中──」
まよひあやまる。抱朴子「──者、無自見之明」
まよひてくらし。南史、齊高帝策文「張淹──、弗顧本朝、爰自南區、志圖東夏」
心のまよひ。
心みだれてくらむ。列子「秦人逢氏子、有──之疾」
心のまよひ。
方角の分らざる深ききり。心のまよひに喩ふ。
まよひもだえる。楞嚴經「汝自──喪本受」
明かならざる貌(一說に散亂の貌)古詩「雌兔眼──」=模糊。
方角の知れ難きみちすぢ。
蘇迷盧(一六九四頁二段)の略。須彌山をいふ、頂上は高さ八萬由旬ありといふ。
迷宮に同じ。古今詩話「煬帝時、新宮旣成、帝幸之、曰使眞仙遊此、亦當自迷、乃名──」
○道を失ひてまよふ。韓非、說林「──失道」○心にまどふ。楚辭「中瞀亂兮──」○ 國 やくかいで困る「──をかける」
レツ レイ [屑]
○さへぎる(遮)○とどむ(遏)○さきばらひ、車駕出づる時、道を淸め、行人を止める。後漢書、輿服志「遮─出入」
道を淸める卒。張衡賦「──淸侯」
7畫
イゥ [尤]
○氣の行く貌。○─爾はにこにこと笑ふ貌。又、顏色の寬舒 ユルヤカニノビル なる貌。○─然はくつろぎ(寬緩)たる貌。○ところ。=攸。○よる。より。由の古字。
顏色を和げて笑ふ貌。班固、答賓戲「主人──而笑」=莞爾。
○自得の貌。くつろぎたる貌。史、趙世家「列侯──」○笑ふ貌=逌爾。
キウ [尤]
○つれあひ、あひて(匹偶·配偶)詩、周南「君子好─」○あつめる。あつまる(聚斂)詩、大雅「以爲民─」○あふ(合)
ケイ [徑]
徑と通ず
○みち、こみち、ちかみち、步道。○すぐ(直)○ちかし(近)まっすぐにして近し。○とし(疾)○いたる(至)○すぐ(過)みちす、こみちをとほりて至る。
門前のこみちを掃除して賓客の來るを待つ。杜甫詩「──望三益」
相へだたること遠きをいふ。逕は狹く庭は廣し、故に喩ふ(一說に逕と中庭とはかけはなれてゐるが故)莊、逍遙遊「大有──、不近人情焉」=徑庭。
①ゲン [霰]
②シャ [馬]
①むかふ(迎)
②これ。この(此)者(者は俗語にては此と同義に用ふ)に同じ「─箇」「─般」唐書、史思明傳「─賊誤我」○ 國 ハフ はらばふ(匍匐)
這般に同じ。五燈會元「如何有──消息」=此箇。
この。これ。朱子語錄「──人占得、便把作──用、那般人占得、便把作那般用」
このやうに。かやうに。
①サゥ·ゾウ [皓]
②サゥ [號]
通音ザゥ
①つくる(作爲)物を製作する「製─」○たつ(建設)「建─」「築─」○はじめて物をつくる「創─」「刱─」「肇─」○はじむ(始)はじめて。書、伊訓「─攻自鳴條」○いつはる(虛構)「假─」
②なす。なる(成就)○きたる(來)「原被兩─」(一說に造は曹、兩方の人の義)○いたる(詣)「─家」○ゆく(適)○すすむ(進)○ならぶ(比·竝)「─舟」○とき(時)「末─」○いる(納)○トするとき龜を灼き荆を燒く處。○─次はにはか(倉卒·急遽)○ 國 みやつこ、古、朝廷に奉仕する文武百官の稱。
同訓異義
イタル 造·至·到·臻·詣·格·戾·抵等の別は至(一五九一頁三段)の條を見よ。
家屋などをいとなみ造る。=建築·營造。
天地自然の理。又、造物者。創造化育の謂。淮南、覽冥「懷萬物而友──」注「天地也」
造物主を指していふ、小兒といふは戲言。唐書、文藝傳「杜審言疾甚、宋之問等省候、答曰、甚爲────所苦」
國 つくりばな。
○人の家に往く。晉書、陶潛傳「酣醉便反、未嘗有所──」○學問が深く進む。唐書、崔咸傳「咸──嶄遠、閒游終南山乘月吟嘯」
無根のことを言ひふらす。周禮、地官「以鄕八刑糾萬民、七曰──之刑」=虛言。
かまへつくる。後漢書、儒林傳序「凡所──、二百四十房、千八百五十室」
○物をつくる。漢書、毋將隆傳「繕治──」○ 國 家屋の建具裝飾など。
○學問の成就せし士。禮、王制「升于學者、不征于司徒、曰──」=俊士。○士を養成する。
つくりはじめる。易、屯卦「天造草昧」注「屯者天地──之時也」阮籍、樂論「故──之敎、謂之風、習而行之、謂之俗」
わづかの閒。造次は倉卒の義。顚沛は傾覆流離の際。論、里仁「君子無終食之閒違仁、造次必於是、顚沛必於是」
○往きて謁する。駱賓王書「禁門淸切、──無緣」○其の才に因りて養成する「──人才」
いたりてきげんを伺ふ。漢書、張湯傳「其──諸公、不避寒暑」=往候。
ふねをつくる。晉書、吾彥傳「王濬將伐吳、──于蜀、彥覺之請增兵爲備」
始めをなす。中庸「君子之道、──乎夫婦」=發端·發始。
酒をかもす。張載文「──在秋、告成在春」=釀造。
そしりの言をなす。史、李斯傳「入則心非、出則巷議、率羣下以──」
ふでをつくる。嬾眞子錄「蒙恬──、古非無筆、但用兔毛、自恬始耳」
天地閒の萬物を創造せし神。莊、大宗師「偉哉夫、───」=造物主·造化·天。
兵器を製造する。
貨幣をつくる。史、平準書「天子與公卿、議更錢──以贍用」
周の穆王の御者、善く馬を御せし人。荀、王霸「王良·──者、善服馭者也」
世の未だ開けざるとき。傅亮文「諒理本于──、而運周于萬葉」
造り立てる。南史、竟陵王誕傳「──第舍、窮極工巧、園池之美、冠於一時」=建築。
樹を植ゑて林をつくる。
①シュン [眞]
②シュン [震]
①しりぞく、しざる(退)次第にあとしざりする。○足はやき兔。古、?に通ず。戰國、齊策「東郭─者、海內之狡兔也」
②とし。駿に通ず。禮、大傳「執籩豆─奔走」
あとしざり。行きて進まず。賈誼、過秦論「九國之師、──遁逃、而不敢進」
前條に同じ。漢書、平當傳「──有恥」
逡巡に同じ。儀禮、注「三退三──也」=逡遁。
セイ ゼイ [霽]
○ゆく(往)○さる(去)論、陽貨「日月─矣、歲不我與」○行く、進む。史、項羽紀「騅不─兮可奈何」○死亡する「長─」「─去」「永─」○ここに、發語の助字。詩、邶風「─不古處」
同訓異義
ユク 逝·往·之·如·行·徂·征·適·于の別は往(六一八頁四段)の條を見よ。
しぬ。東坡集「堂兄中舍九月中──」=長逝·永逝。
ゆきさる。詩經「──去汝、適彼樂土」
次條に同じ。孟郊詩「四時如──」
○ながれ去る川水。論、子罕「子在川上曰、逝者如是夫」○一度去りて再び還らざるに喩ふ。李白詩「──與流光、飄急不待時」
セゥ [蕭]
ぶらつく、ぶらぶらとさまよひあそぶ。
ぶらぶらとさまよふ。徜徉自適の義。詩、鄭風「河上乎──」說文「──猶翺翔也」=消搖·徜徉。
前條に同じ。禮記「負手擕杖、──於門」
莊子の篇名、閒放にして拘らず、怡然として自適するの義に取る。
拘束する所なきをいふ。五燈會元「性空妙普菴主、建炎初、荷策往見賊魁徐明、明欲斬之、爲文自祭、有云、二十四臘、────、逢人則喜、見佛不拜、賊駭異釋之」
ソク [屋]
○すみやか、とし、はやし(急疾)「迅─」「急─」「疾─」「敏─」「神─」孟、公孫丑「德之流行、─於置郵而傳命」○まねく(招)易、需卦「有不─之客三人來」めす(召)來たす「─禍」よぶ(呼)「─友」○──は相親附せざる貌。楚辭「──而不吾親」又、蔌蔌と通じ、いやし(鄙陋)き貌。後漢書、蔡邕傳「──方轂」○鹿の足迹。〔爾雅〕
其の行を速かにする。左傳「從者曰、嘻、──」轉じて今人の書柬、客を邀 ムカ ふるに亦──といふ。
はやくしるす、速記法(簡單なる符號にて他人の口語を記錄する法)にて書き取る。
わざはひをまねく。左傳「去順效逆、所以──也」
すみやかにきめる。晉書、陸機傳「陸機持兩端、軍不──」=速斷。
つみをまねく。書經「天非虐、惟民自──」
特別の裝置にて彈丸を速かに發射する火砲。
すみやかになしとげる。論、憲問「非求益者也、欲──者也」
すみやかにたたかふ。左傳「隨侯曰、必──、不然將失楚師」
すみやかに決定する。宋書、王僧綽傳「臣謂、唯宜──、不可稽緩」=速決。
物の運動するはやさ。=速力·速率。
客をまねく。禮記「主人親──」
すみやかにおもむく。易經、疏「則以──爲善」
速度に同じ。
はやがてん。
チク [屋]
○おふ(追)おひはらふ。○おひかける、おひまはす、かる(驅)「驅─」○したがふ(從)あとをつけて行く。韓愈、上張僕射書「─隊而趨」○しりぞく(斥)「斥─」「─出」おひはらふ。史、李斯傳「爲客者─」はなつ(放)「放─」○きそふ(競)「角─」「爭─」○もとむ(求)○物事を歷數するにいふ「─一」○──ははやく馳する貌。又、篤實なる貌。又、物を追求して止まざる貌。
同訓異義
オフ 逐·追·趁の別は追(一九四七頁四段)の條を見よ。
ひとつびとつ。東坡集「──指揮」=一一。
やくはらひ。後漢書、禮儀志「先臘一日大儺、謂之──」
外國より客分として來り仕ふる臣を逐ひはらふ〔李斯、諫──上書〕
しだいに。=漸次。
くさきものを逐ふ、嗜好の偏僻なる喩。呂覽「人有大臭者、其親戚兄弟妻妾知識無能與居者、自苦而居海上、人有悅其臭者、畫夜隨而不去」曹植文「蘭茝荃蕙之芳、衆人之所好、而海畔有──之夫」
○日を逐ひて、每日。○太陽を逐ひかける。列、湯問「夸父不量力、欲逐日影」○馬の行くことの速かなる形容。洞冥記「修彌國有馬如龍、騰虛──」
天子より放逐せられしけらい。劉禹錫詩「同作──君更遠、靑山萬里一孤舟」
きそひすすむ。左傳「諸侯──」=競進。
かちに乘りて進む。史、白起傳「趙軍──、追造秦壁、壁堅拒不得入、而秦奇兵二萬五千人、絕趙軍後」=乘勝。
權勢のある人をおひゆく。列子「工追術、仕──」
おひしりぞける。=攘斥。
なまぐさきものをおふ。王禹偁詩「──甚蚍蜉」
はしるをおふ。詩經、傳「追飛──、取其疾而已」
衆人の行くに隨ひて行く。韓愈文「若使隨行而入、──而趨」
○必ず之を得んと欲する貌。一說、漸進して已まざる貌。易、頤卦「虎視眈眈、其欲──」○篤實なる貌〔正韻〕
おふ(追逐)王逸、琴思楚歌「寒來暑往難──」
○順次に個條をおふ「──審議」○ひとすぢ每に。鮑照詩「珠水──垂」=每條。
○電光を逐ふ如く極めてはやし。劉勰、新論「追風──、絶塵滅影」○ 國 チクテン かけおち、にげうせる。
にげるをおふ。管子「追亡──若飄風」
漢の揚雄の作りし文。
にげる兵をおひかける。史記「齊人追亡──、所過城邑、皆畔燕而歸田單」
商賈をいふ。古、農を以て本と爲し、商賈を末と爲すが故。漢書「棄本──」晉書「農桑不修、遊食者多、皆由去本──故也」
夏のすずみ。白居易詩「中有──人、單牀猶棲息」=納涼。
○しかをおふ。虛堂錄「──者不見山、攫金者不見人」○鹿を以て帝位に比し、之を爭ふに喩ふ。史、淮陰侯傳「秦失其鹿、天下共逐之」轉じて廣く或る目的の物を互に競ひて得んとするに喩ふ。
テイ [梗]
逞は俗字
○たくまし、勢がさかんなり。たくましくす、思ふ通りにふるまふ「─勢」「─意」○こころよし。こころよくす(快)左、隱十一「鬼神實不─於許君」○つくす(盡)きはむ(極)○とく(解)左、隱九「乃可以─」註「可以解患也」○はなつ(放)論、鄕黨「─顏色」○しめくくる(檢束)不─は不檢の義。
うらみを思ふままにむくゆ。唐書、李紳傳「李宗閔故黨皆當路、因是──」
我が思ふままにす。左傳「不克──於我」=逞意。
○快しとせず。左、隱十一「鬼神實──於許君」○ フテイ 檢束せず〔正韻〕
遞(辵部十畫)の俗字。
テキ [錫]
○とほし(遠)書、牧誓「─矣西土之人」○とほざく。左、僖二八「糾─王慝」とほざかる。○──は利を欲する貌。楚辭、九章「悼來者之──」
ト ヅ [虞]
又、涂·塗に作る
みち、みちすぢ(道·路)「中─」「坦─」「窮─」
みちのなかば。論、皇侃義疏「──見兩虎共食一牛」=道中。
みちのなかば。隋煬帝詩「蓮舟水盡處、畫輪途始半」
トウ [宥]
○とほる。とほす(通·徹)通過する。韓愈詩「表裏忽通─」○すく。すかす、すきとほる「─明」○とびはねる(跳)「騰─」
すきとほりうつる。宋書「江波──」=澈映。
心理の作用にて不透明體をすかして物を視る。
遠近に從ひて物體を眼に映ずる大さの割合に畫く法。
書畫などをすきうつしにする。
砂池などの如くふく水をとほす地層。
すきとほる。杜甫詩「溪光初──、秋色正淸華」
すきとほりて明か。
空氣·硝子の如くよく光をとほすもの。
トウ ツ [東]
通音ツウ
○とほる(徹·亨)とどく(達)いたる(至)晉語「道遠難─」○およぶ(及)○したがふ(順)淮南、主術「則治道─矣」○とどこほりなく行はる。○明かに知る、了解する「─曉」呂覽、簡選「此不─乎兵者之論」○ひらく(開)「開─」○つらぬく(洞)「貫─」○のぶ(陳述)○すく(透)○ふ(經)過ぎる「─過」○すべて(總)すべくくる「─計」禮、王制「以三十年之─制國用」○あまねし(徧)一般「─常」「普─」○したしみまじはる「─好」「─款」漢書、季布傳「非長者勿與─」○かよふ、ゆききする(往來)かよはす。○ひといろ、物の色の純なるもの「─帛」○うまのくそ(馬矢)○文書の首尾完きものを數ふる數詞「一─」=道。○男女がひそかに情を交 カ はす「私─」左、莊十八「齊侯─焉」○井田上の區劃の名稱。漢書、地理志「方里爲井、井十爲─、─十爲成」 國 ○ トホリ みちすぢ。○ ツウ 人情に通じ歌舞遊藝などに明か、粹 スヰ ○ カヨヒ 注文品の品名、代價などを記する帳面。○ トホリ 如し「右の─」○ カヨフ 似る「似─ふ」
一般の者が通じてもつ「──性」
其の部類に屬する者のすべてが有する性質。=通性。
四通八達の都會。司馬遷、報任安書「──大都」
漢字の兩韻、又はそれ以上の韻の互に通用するをいふ。東·冬·江相通じ、魚·虞相通ずる類。
荷物を送りとどける。
父祖の代より親しく交際せるいへ。後漢書、孔融傳「融造李膺門曰、我是李君──子弟、膺問之、對曰、先君孔子與君先人李老君、同德比義而相師友、則融與君累世──」
○事理に通じてただし。魏志荀彧傳「淸秀──、有王佐之風」○書名、五十五卷、明の方以智撰す、名物·訓詁·音韻等の考證を主とす。
○道をとほりゆく。漢書、高帝紀「爭開門待足下、足下──無所累」○あまねく行はれる、普く流布する。
互によしみを通ずる。北史、柳帶韋傳「江郢二州、與梁邵陵南平二王──」
ふねがかよふ。
寄宿舍に入らずして日日學校に登りて學ぶ。
滯りなくあまねくゆきわたる。晉書、王沈傳「沈、經綸墳典、才識──」
通則に同じ。
○天下にあまねく通ずる義理。孟、滕文公「治於人者食人、治人者食於人、天下之──也」=通則。○次條に同じ。
世閒一般の人の履行すべき道。漢書、董仲舒傳「春秋大一統者、天地之常經、古今之──也」
かよひづとめ、自宅よりかよひつとめる。
みぞをとほす。史、河渠書「西方則──漢水雲夢之野」
互に通じたすける。吳志「周瑜與孫策同年、相友善、瑜推道南大宅以居策、升堂拜母、有無──」=共通。
四方に通ずるちまた。宋史、高宗紀「詔焚交阯所貢翠羽於──」
あまねく天下に通用する貨幣。管子、輕重「黃金刀布者、民之──也」
○道路をとほりすぎる。=經過。○會議などにて議案が可決せられる。○願書などが許可せられる。
ひろやか。淸異錄「婁師德位貴、而性──」=豁達。
通弊に同じ。
敵によしみを通ずる。北史、盧柔傳「擧三荊之地、──梁國、可以庇身、功名去矣、策之下者」=通好。
總數のしめだか、そうかんぢゃう。禮記、注「──三十年」=總計。
さとる。北史、邢邵傳「傅覽墳籍、無不──」=通達。
おくふかき理に通ずる。雲笈七籤「──達妙」
かけいの水をかよはす。陸游詩「山果滿筐猿食足、石泉──藥苗肥」
位が高くあらはれる。北史、邢邵傳「此子後當大成位望──」玉海「應氏自奉至瑒、七世皆──」
明かにさとる。又、さとし。唐書、長孫無忌傳「性──、博涉書史」
諸侯をいふ。其の功德王室に通徹する義〔獨斷〕史、李斯傳「斯上蔡閭巷布衣也、上幸擢爲丞相、封爲──」=列侯·徹侯。
しらせる。しらせ。=通知·通報。
一國の人のこらず。孟、離婁「──皆稱不孝焉」=擧國。
事理に明達にして才能ある者。後漢書「──謇正」宋之問詩「試劇仰──」
あけび。通一に蓪に作る。=木通。
物事によく通じたる人。荀、不苟「可謂──矣」=通人。
名札を出して面會を求める。漢代に始まる。李商隱文「辦裝無闕、──有期」=通謁。
○通辯 ツウベン 通譯官。癸辛雜志「譯者今北方謂之──」○取次役、古の謁者の職。○兩國の交際往來の事。周禮「掌邦國之──、而結其交好」○事を處置する。梁元帝文「劬勞──、多歷年所」
日の光をとほす。薜能詩「陰成杏葉纔──」
○物事によく通じたる人。史、田敬仲完世家「易之術幽明遠矣、非──達才、孰能注意焉」=通士。○ 國 人情に通じ、又花柳界の事に通ぜし人。
からだぢゆう。=全身·徧身·滿身。
おとづれ。晉書、王澄傳「王敦謂澄曰、何與杜弢──」
○あきなひする。柳宗元文「──平貨、有來胥悅」○外國と貿易する。左傳「──惠工」
なみ、普通。=尋常。
萬事に通達する學者。後漢書、杜林傳「博洽多聞、時稱──」
何れにも通じ用ひらるるのり。漢書、刑法志「以爲──」
○普通一般に通ずるとなへ。孟子題詞「子者男子之──」○普く通行する言說。嵆康、養生論「夫田種者、一畝十斛、謂之良田、此天下之──也」
通有性に同じ。
よもすがら、よどほし。舊唐書、裴寂傳「閒以博奕、至于──連日、情忘厭倦」=通夜·通昔。
よどほし。白居易詩「長歌醉──」=通昔·通宵。
よもすがら、よどほし。昔·夕通ず。莊、天運「蚊蝱噆膚、則──不寐」=通夕通霄·通夜。
○宮門の出入を許されし者の姓名·年齡等を記載したる掛札。漢書、魏相傳「霍光夫人顯及諸女、皆──長信宮」○仕宦する。
○ひろく通行する言說。○よく通達せる說。顏延之、釋達性論「徒謂支離、以爲──」
すべてに通ずる法則。沈約文「減秩居官、前代──」=通規。
俗人にもよくわかる。
仕合よきと仕合惡しきと。北史、孫惠蔚傳「雖久滯小官、深體──、無孜孜之望、儒者以是尙焉」=通否·窮通。
一般に通ずるありさま。
○人人の通行するみち。=通路。○天下萬民の共に順ひよるべき道理。史、公孫弘傳「君臣·父子·夫婦·長幼·朋友之交、五者天下之──也」○道路を開き通ずる。史、五帝紀「披山──、未嘗寧居」
○とどこほりなくとほる。莊、則陽「──之國」○物事の理を明かにさとり知る。
むとんぢゃくにして小節に拘泥せず。晉書、袁耽傳「其──若此」
あくるあさまで、よどほし。馬融、長笛賦「──忘寐、不能自禦」
しらせる。しらせ。=通吿。
明かにさとる。魏書、景穆十二王傳「晝夜誦之、旬有五日、一皆──」=洞徹。
書面にて通知する、主に公事につきていふ「最後──」
かんむりの名。後漢書、輿服志「──冠高九寸」
通天犀(犀角の名)にて飾りし天子の帶〔韓愈、平淮西碑〕
天子のかんむり。獨斷「天子冠───、諸侯王冠遠遊冠」
○古今に通ずる法則。北史、蘇威傳「帝令下朝臣釐改舊法爲一代──」○書名、二百卷。唐の杜佑撰す、食貨·選擧·職官·禮樂·兵刑·州郡·邊防の八門に分ち、上は黃虞に溯り、下は唐、天寶に至る政典を記す、包括宏富、義例嚴精なり。淸朝、續──·皇朝──を撰す。
四通八達の都會。蘇轍、民政策「──大邑、十里之城、萬戶之郭」
始から終まで通じて讀む。
しらせる。=通知。
唐代の科擧卽ち官吏登用試驗の制度にて試驗の成績によらず、履歷によりて及第する義〔蘇軾、議學校劄子〕
天下に通用する貨幣。唐書、食貨志「武德四年、鑄開元──、其文以八分·篆隸二體」=通貨。
宋代に藩鎭の權を削らんが爲めに一州の政事を監督せし官。宋史、職官志「乾德初、始置諸州──知府公事」
數學にて各數に通ずる劉合。
物事にさとく通達する。漢書、趙廣漢傳「廉潔──」
かぜとほし「──採光」
一般にわたる弊害。=通患。
上疏の文を通達する。晉書、張駿傳「假道於蜀、──京師」
變化の理に通ずる。崔駰文「君子──、各審所履」
甲の國語を乙の國語に譯して兩者の意思を通ずる。又、其の人。=通譯·通事。
互にはかりごとをかよはす。淮南子「三國──擒智伯」
名札を出して面會を求める。漢書、雋不疑傳、注「上謁若今──也」
事理に通達してあきらか。漢書、劉向傳「資質淑美、道術──」=通曉。
おとづれをする。互に相稱謝する。禮記「嫂叔不──」
○よどほし。晉書、佛圖澄傳「──不寢」=徹夜·通宵。○ 國 ツヤ 死者を弔ふ爲め屍の旁に侍りて夜を明かす。
分數の分子と分母との中より互に有する因子をひとしく除き去る。
通辯に同じ。後漢書、和帝紀「都護西指、則──四萬」
とどこほりなく用ひられる「──貨幣」
すきとほりて明か。晉書、桓彝傳「彝、性──、早獲盛名」
一とほり目を通してみる。
○ひろく布き流れる。南史、中天竺國傳「水陸──、百貨交會、器玩珍瑋、恣心所欲」○滯ることなく、かよはす。史、樂書「音樂者、所以動盪血脈──精神、而和正心也」
佛 萬事に通じて自由自在なるはたらき〔阿毗曇論〕=神通力。
命を傳へる。周禮「內豎掌內外之──」
○一般に通ずる例規。唐書、韓滉傳「著──」○よのつね、なみ、普通。
廣く世閒に通行する禮節。淸代に大淸──五十四卷あり。
歷年を通じ算する。史、梁孝王世家「梁王自初王──已十一年矣」=通算。
通行するみち。晉書、杜預傳「北無──」
○すべてに通ずる正しき議論。馮衍賦「講聖哲之──兮」○道理に合する議論。
書名、五十九卷、宋の朱熹撰す、司馬光の資治通鑑に據り綱と目とに分ち記す。
トウ ヅ [宥]
投に通ず
○とどまる(止·住)後漢書、張衡傳「─華陰之湍渚」○曲り行く、曲行して敵を避く。○投に通ず、物が相投合する、とまりあふ。杜甫詩「遠─錦江波」
同訓異義
トドマル 逗·止·畱·駐·停等の別は止(一○○七頁一段)の條を見よ。
敵を見て畏れとどまりて進まず、撓は顧み望む義。漢書、韓安國傳「廷尉當恢──、當斬」(恢は王恢)
一所にとどまりて進まず。漢書、匈奴傳「祁連知虜在前、──不進」=逗?。
前條に同じ。漢書「畏懦──」?·畱通ず。
ホ フ [虞]
○のがる、にぐ(亡)「亡─」○かくれる(匿)○にげかくれる(竄)○おふ(負)おひめ(欠)「酒─」課稅の負欠 オヒメ 未納稅「─負」
同訓異義
ノガル 逋·逃·遁·遯·竄等の別は逃(一九四七頁二段)の條を見よ。
○世を避けたる隱者〔山堂肆考〕○のがれ(逋逃)たる士。孔稚圭、北山移文「請迴俗士駕、爲君謝──」
租稅の滯りて未だ納めざるもの。宋史、孝宗紀「已蠲──者、令臺諫覺察」=逋租。
のがれかくれる。左傳「蒯聵得罪于君父君母、──于晉」
租稅の未だ納めずしてあるもの。後漢書、光武紀「訟──」=逋賦。
納稅などをのがれおこたる。北史、魏太宗紀「剌史守宰、率多──」
官債を返さずしてにげる。漢書、武帝紀「──未入者、勿收」
罪をのがれる。左、昭七「紂爲天下──主、萃淵藪」=逃逋。
のがれる。陳琳文「晨夜──」=逋逃。
にげさる。書、大誥「于伐殷逋播臣」註「──播遷之臣也」=亡逋。
みだれ髮。髮の亂れて未だ理せざるもの。
他國にのがれさまよへるけらい。播は遷移。書、大誥「予惟以爾庶邦、于伐殷───」
租稅の未納。文獻通考「玄宗免天下七年以前──」=逋欠·逋租。
租税の未だ納めずしてあるもの。宋史、哲宗紀「蠲元豐六年以前──」
命令を受けながらぐづぐづしておこたる。李密、陳情表「責臣──」
①ホウ [冬]
②ホウ [東]
①あふ、であふ(遇·値)左、宣三「不─不若」○むかふ(迎)迎合する。孟、吿子「─君之惡」○大いなり「─掖之衣」○ぬふ、縫に通ず。○閼─は十干の甲。爾雅「太歲在甲曰閼─」
②のろし。=?。○──は鼓を擊つ。
同訓異義
アフ 逢·遇·遭·値·合·會·晤の別は遇(一九六七頁二段)の條を見よ。○ムカフ逢·向·迎等の別は向(三○六頁四段)の條を見よ。
儒者の服。莊、盜跖「──淺帶」=逢掖之衣。
儒者のきる衣服。掖は腋 ワキ 卽ち腋下(袖)の大いなる衣。禮、儒行「丘少居魯、衣────」(丘は孔子の名)=逢衣。
ふと、であふ。吳均詩「一朝相──、依然舊相識」
はなにであふ。庾信詩「値泉傾蓋飮、──駐馬看」
○人をでむかへ接待する。王維詩「主人能愛客、終日有──」○轉じて人の氣に入るやうにする。=迎合。
原は源、水源に逢ふ、徹底する義。孟、離婁「君子深造之以道、欲其自得之也(中略)資之深、則取之左右、逢其原」
世に合ひて用ひられる。史、袁盎傳贊「資適──」
あふ。著は助字。
豐年にであふ。史、佞幸傳「諺曰、力田不如──」
しあはせに出あふ。國語「道而得神、是謂──」
○鼓のこゑ。詩、大雅「鼉鼓──」○雲烟の起る貌。夏后鑄鼎繇「──白雲」
古の射を善くせし人。孟、離婁下「──學射於羿、盡羿之道」
古の射を善くせし人。王襃、聖主得賢臣頌「───彎烏號」=逢蒙。
①レン [先]
②レン [銑]
①つらぬ。つらなる(聯)「貫─」○あふ。あはす(合)「─合」孟、離婁「─諸侯者」○およぶ(及)○つづく(續)ながく引きつづく、つぐ(接)つく(屬)○つづきて、しきりに「─戰─捷」○えんつづき、つづきあひ、みうち(姻戚)史、尉陀傳「及蒼梧秦王有─」○かかりあひになる「─坐」○つれ、くみ(伴)○周代の制にて十國の稱、其の長を帥といふ。○もちにて鳥をとらへる。○鉛の未だ鍊らざるもの「─錫」○─山は夏の代の易の名。○祈─は山の名、卽ち天山。
②ひさし(久)○なやむ(難) 國 ○ ムラジ 古の八姓の一。○ ツレ みちづれ、同伴者。なかま「─中」「若者─」
同訓異義
シキりニ 連·仍·頻·荐·累·切の別は仍(一○四頁一段)の條を見よ。○ツラヌ連·聯·羅·列·陳·綿○連は一っづつある事物を、接續せしむるなり、珠をつなぐを、連珠といふ、連山·連年·連戰と用ふ、陳·列などの義とは異り。○聯は連と通用す、相繼ぎて絕えざる義、前後持ち合せて切れぬなり、聯合と用ふ。○羅は網の目のそろひたる如く、正しく列ツラなるなり。小學「子姪羅二列階下一」大寶箴「羅二八珍於前、一所レ食不レ過レ適レ口」○列は位序の正しくつらなるなり、羅列·排列と連用す。○陳は列に同じ、陳列·陳情と用ふ。名詞のときは、軍陳をいふ、今は陣に作る。○綿は緜に同じ、ながくつづく義、連綿·綿綿と用ふ。
楚國にて射を司る官。左傳「風蕩爲──」
ひきつらなる。關係する。史、陳豨傳「多──豨」
二名以上の者が、一っの書面に連名にて印を捺す。=連判。
結婚によりて親類となる。世說「若──貴族、將來或大益」
○連日くもる。漢書、鮑宣傳「──不雨」○木のかげの茂りて連る義。洛陽伽藍記「芳草如積、珍木──」
とりでをつらねる。魏志「文帝聞備兵東下、與權交戰樹栅──、七百餘里」
つらなりつづく。宋史、宋琪傳「沿山村墅──、溪澗相接、採薪汲水、我占上游」=聯延。
つらなりつづく。水經、注「──相屬」
からさを、くるりぼう。三才圖會「釋名曰、枷、加也、加杖於柄頭、以撾穗而出穀也」枷、亦耞に作る。
國 三十一文字の歌の上句(發句)と下句(擧句)とを二人にてよむもの。
連橫に同じ。漢書、刑法志「合縱──」
つらなれるはた。王崤詩「出沒望──」
つらなりおよぶ。後漢書、史弼傳「詔書下、擧鉤黨、郡國所奏、相──者、多至數百、唯弼獨無所上」
僚壻 アヒムコ をいふ。嬾眞子「江北人、呼僚壻曰連袂、又呼──」
二人以上あつまりて、一句づつ作り、之を連ねて一篇の詩とするもの。白居易詩「秋燈夜寫──詩」=聯句。
漢字の字畫上にて火を灬と書く時の稱。字書にて火部に屬す。=撒火。
二っ以上の獨立せしものの、連合する義。史、項羽紀「使使欲與──俱西」
戰國時代に秦を首として東西に列する國國を連合せしむるをいふ。合從の對。戰國策「蘇秦始將──」=連衡。
つらなりて解け難きたまき。戰國策「遺君王后玉──」
繩にてつなげる雞は、一っの塒に止まること能はず。以て羣雄ならび立つこと能はざるに喩ふ。戰國策「諸侯不可一、猶連雞之不能俱止於棲、亦明矣」
いたちぐさ、木犀科に屬する灌木の一種、枝は蔓を成し、春日黃花開く。
まいつき。漢書「擧之──不盡」=累月。
○互につらねむすぶ。唐書、常袞傳「若相──、以乘無備、其變不細」=聯結。○交をむすぶ。後漢書、寶融傳「融家長安、出入貴戚、──閭里豪傑、以任俠爲名」
纖弱なる貌。又、長き眉の曲りて細き貌。漢武帝、悼李夫人賦「美──以修嫮兮」
乘馬のかざり。晉書、王濟傳「嘗乘一馬、著──鄣泥」
つらねひく。晉書、五行志「苻堅初、童謠云、阿堅──、三十年」
困みなやみて進まざる貌。ふしあはせ。揚雄、解嘲「孟子雖──、猶爲萬乘師」歐陽修、江鄰幾文集序「仕宦──」=轗軻。
○長く曲る貌。揚雄、甘泉賦「蛟龍──于束厓兮」○困みて進まざる貌〔楚辭、遠遊〕
ならびとぶ。陳陶詩「秋鴻──蠺曳絲」
婚姻を連ねて親戚となる。漢書、王商傳「大將軍鳳──楊彤、爲琅琊太守」=連姻·結婚。
前條に同じ。
まきぞへとなりて處罰せらる。史、商君傳「令民爲什伍、而相收司──」
○兩方をむすびつらねるくさり。○相關聯してつながる「──比例」
まいねん。王禹偁詩「終朝望烽燧、──事戈矛」=累歲。
年年同一の作物を同一の地に栽培する。輪作の對。
つづけるとりで。五代史、張敬達傳「敬達爲長城──雲梯飛礮、以攻之」
○夏の時の易の名。周禮、太ト「掌三易之法、一曰──、二曰歸藏、三曰周易」○つづける山。=連峯。
○つらなれるえだ。庾信詩「細果上──」○兄弟。千字文「同氣──」○ 國 貴人の兄弟をいふ敬語。
苜蓿 ウマゴヤシ の異名。西京雜記「苜蓿爲懷風、茂陵人謂之───」
淚のながれる貌。王粲賦「涕流──」
まいにち(每日)南史、何憲傳「──累夜」=累日。
車の多く引きつづく貌。魏都賦「百隧轂擊、──萬貫」韓愈詩「曾從關外來上都、隋身卷軸車──」=接軫。
連名狀。通鑒、唐穆宗紀「──人皆杖脊」注「謂連名吿狀者」
つらなりたるほばしら。郭璞文「舳艫相屬、萬里──」
次條に同じ。元稹、賦得玉巵無當詩「共惜───、翻成無當巵」
趙の惠王、卞和の璧を得、秦の昭王十五城を以て之に代へんことを請へり、故にいふ〔史、廉·藺傳〕楊炯詩「趙氏───、由來天下傳」
國 連名にて金品をかりる。=連帶借用。
○物を假り義を陳べて諷諭の詞を通ずる一種の文體。沈約文「──之作、始於子雲」○つらねたる玉。宋史、符瑞志「五星如──」
ながあめがふる。王禹偁詩「秋來──百日雨」
二人以上が、姓名を連ねて書く。通鑑、唐憲宗紀「自今奏事、必取崔羣──、然後進之」=連名。
つづきたるこじま。梅堯臣詩「一月陰晴──閒」
つづけざまにかつ。後漢書、光武紀「諸部共乘之、斬首數百千級、──遂前」=連捷。
周代に諸侯の上に立ちて、一地方を支配せし長官。禮、王制「十國以爲連、連有帥」
まいよ。魏書、李謐傳「隆冬達曙、盛暑──」=連夜。
つづく。韓愈詩「周楚仍──、川原乍屈盤」
○脊令 セキレイ の異名〔詩、陸璣疏〕○馬の飾。梁元帝詩「長安美少年、金絡鐵──」=連乾。○馬の毛色、錢を連ねたる如きもの、れんぜんあしげ。爾雅、注「色有深淺、斑駁隱粼、今之──驄」
あさざの一種。洞冥記「漢宮太一池、有───」
草の一種、かきどほし。
あしげのうま。錢がたの斑紋ある馬。吳均詩「朱輪玳瑁車、紫鞚───」
しきりにたたかふ。後漢書、皇甫嵩傳「嵩──無功、所費者多、收左車騎將軍印綬」
つらなりつづく。宋史、食貨志「不許──爲之」
しきりに鼓をうつ。汪元量詩「鼙鼓──月上樓」
文法にて動詞の語尾變化の第四段の活用、下に名詞をうけるもの。
國 なかま。=同類·同志。
まきぞへによりて共に捕へられる。史、秦紀「以罪過──少近官三郞」
○つらなりつづく。潘最文「羣凶覬覦、──城邑」○ 國 二人以上の人が共同して責任をおひてひきうける。
つらなりたもつ。後漢書、仲長統傳「審什伍以相──」
つづきたるみぎは。謝朓詩「平原周遠近、──見紆直」
つらねつづく。禮記、疏「以綴恩者、綴謂──、恩謂恩親」
まいあさ。杜甫詩「說詩能累夜、醉酒或──」=每朝。
一時に多くの矢を發し得るいし弓。漢書、李陵傳「發──射單于」
筧 カケヒ 杜甫詩「──灌小園」
まいねん、まいとし。古樂府「婦病──累歲、傳呼丈人前一言」=每歲·連歲。
つらなるなみ。西京雜記「重山累嶂、──疊浪」
まけつづけ、しきりに敗れる。連勝の對。
いらか(屋棟の瓦)が連なる。左思、蜀都賦「比屋──」
○しきりにおこる。漢書、張敞傳「羣輩不道、賊──不得、敞以耳目發起賊主名、區處誅其渠帥」○つづけざまに發砲し、又弓いる。北史、崔彭傳「彭──數矢、皆應弦而落、突厥莫不歎服」
○同官の者が名を連ねて公文書を判定する。唐律疏義「同職謂──之官」○ 國 同志の者が約束を堅くする爲めに連名捺印する「──狀」
つづきてよぢのぼる。元稹詩「旣廻數子顧、展轉相──」
つらなりならぶ。鹽鐵論「良田──」=騈比。
たづなをつらねる。張說詩「一朝驅駟馬、──入龍樓」
○たもとをつらねる。=聯袂。○姉妹の壻、あひむこ〔容齋三筆〕連襟參看。
くつばみをつらねて行く。晉書、張協傳「肴駟──、酒駕方軒」
才の共にすぐれたる兩友。晉書、潘岳傳「夏侯湛美姿容、與潘岳友善、每行止同輿接茵、京師謂之──」
宛轉する貌。莊子「其書雖瓌瑋、而──無傷也」犿もと抃に作る。
おほくの文章。隋書、李諤傳「上書曰、────、不出月露之形、積案盈箱、唯是風雲之狀」
つらなれるみね。孫統詩「時禽吟長澗、萬籟吹──」=連山。
名をつらねる。漢書、霍光傳「光與羣臣、──奏王」=連署。
連判狀。通鑑、唐昭宗紀「作胤───、使署名」=連狀。
ちかひを結ぶ。=聯盟。
長くつらなりてたえず。宋史、河渠志「秦淮之水、每遇春夏、天雨──、上源犇涌、則分一派之水、自南門外直入于江、故秦淮無泛濫之患」=連綿·聯綿。
まいばん。=連宵。
文法にて動詞語尾變化の第二段の活用、獨立する二語を合せて一熟語となし、又動詞形容詞の用言に連るもの。
つらなりつづく。=聯絡。
幹を異にせる兩樹の枝の連りて一っとなる義。夫婦の契に比す。白樂天、長恨歌「在地願爲───」
ながあめ。張羽詩「──啓秋期、金氣晨已兆」
犯罪のかかりあひ。
○なかま、連中に同じ。○同じ種類の物をつらね擧げる。韓非子「──比物」
つらなりて絕えざる貌。一解にしづか(徐徐)なる貌。詩、大雅「執訊──、攸馘安安」
舟のともをならべる。柳宗元文「苦──縻艦、與波上下」
8畫
ヰ [文]
─迆·─迤 ヰイ はななめに行く貌。淮南子「河─迆故能遠」
ななめに行く貌。漢郊祀歌「票然逝旗──」=逶迆·逶移·逶迱。
ななめにつづく貌。楚辭「遵曲江之──兮」=逶迆。
ななめにまがる。李德裕、知止賦「度雙闕之蒼翠、若天漢之──」
遊(辵部九畫)の俗字。
イツ イチ [質]
古、佚·軼に通用す
○あやまつ、あやまる(過)あやまち(過失)あやまり。○はしる(奔)にげる(亡·遁)「亡─」「奔─」左、成二「馬─不能止」○はなつ(縱)左、成十六「乃─楚囚」○ほしいまま「放─」○かくれる(隱)「─民」「隱─」○隱れたる君子。○うす、うしなふ(失)ぬける「─詩」「─名」○はやる(激)心が物に感じて激する。○こゆ、すぐ(超越)すぐれてまさる「秀─」「─品」○すぐれたる人、賢者。○やすらかにたのしむ(安樂)「安─」○ゆるやか(寬)○みだら(淫)○──は往來に次序ある貌。詩、小雅「擧醻──」
なまけて度なく遊ぶ。論、季氏「樂──」
世の中をさけかくれる。又、其の人。諸葛亮文「提拔──、以進賢良」=隱逸。
早く飛ぶ鳥。翁卷詩「寧知──飛相背、我入山來君出山」=逸翰。
すぐれこえる。法書要錄「字之──、不過此二途」
我は安逸して、敵の遠く來りて疲勞するを待つ。孫、軍爭「以近待遠、────」
すぐれてよきうた。皇甫湜文「──長句、駿發踔勵」
やすらかにしてひまあり。邵子「或創業于艱難、或守成于──」
逸品に同じ。名畫錄「畫之──、最難其儔」
すぐれたるつばさ。范雲詩「──凌北海」=逸翰。
逸羽に同じ、翰は羽。李白、大鵬賦「運──以傍擊、鼓奔飇而長驅」
○すぐれたる氣象〔昭明太子、二月啓〕○俗を脫したるすぐれしきしゃう。晉書、王舒傳「正足舒其──耳」
すぐれたる名馬。江總文「昂昂──、逐日千里」
すぐれたるとり。後漢書、崔駰傳「乘斯時也、猶──之赴深林、蝱蚋之趣大沛胡爲默默而久沈滯也」
にげさる、のがれる。
なまけてあそび居る。孟、滕文公「飽食暖衣──而無敎、近禽獸」=安居。
世俗を脫してすぐれたる風流のおもむき。王勃、滕王閣詩序「遙吟俯暢、──遄飛」
衆にすぐれる。蜀志、諸葛亮傳「少有──之才、英霸之氣」=超羣。
なまけてすさみ樂む。逸豫荒怠。蘇洵、張益州畫像記「無敢──」
あやまりたることば。書、盤庚「罔有──」=逸口。
檻よりぬけ出でたるとら。傅休奕詩「往年若鷹鷂、超騰如──」
いひそこなひ。書、盤庚「猶胥顧于箴言、其發有──」=失言·逸言。
衆にすぐれたるはたらき。又、其の人。晉書、袁宏傳「宏有──、文章絕美、曾爲咏史詩、是其風情所寄」=逸材·逸羣之才。
すぐれたるはたらき、材一に才に作る〔後漢書、蔡邕傳〕=逸才·軼材。
勢のすぐれて猛き獸。司馬相如、上諫獵書「卒然遇────、駭不測之地」
氣だかくして世をのがれるおもひ。朱熹詩「憑欄生──」
すぐれたる詩文の才。潘尼、戴侍中銘「雅論弘博、──波騰」
國 ひとすぢにいそぐ、一目散。=驀然。
ちりうせて正史に傳はらざる事實を記せし歷史。
○すぐれたるこころざし。袁宏、三國名臣傳贊「公瑾卓爾、──不羣」(公瑾は周瑜の字)○世俗に超越せし志。張華詩「君子有──、棲遲于一丘」
世の中にあらはれざる事實。柳宗元に段太尉逸事狀の文あり、唐宋八家文讀本に載す。=軼事。
古詩の今の詩經にぬけてゐる詩。茅鴟の類。史、伯夷傳「覩──可異焉」=軼詩。
すぐれたる四頭立のうま。晉書、曹毗傳「執朽轡、以御──、承勁風以握秋蓬」
すぐれてひいでる。晉書、愍懷太子傳「幼稟英挺、高明──」=秀逸。
世俗をはなれたる心情。後漢書、逸民傳贊「遠性風疎、──雲上」
にげだす、はなれでる。
すぐれたるうま。辨亡論「巨象──、擾于外閑」
○失せて今の書經になき文。史、儒林傳「──得十餘篇」○世閒に失せたる書册。歐陽修、日本刀歌「──百篇今猶存」
淫佚 ミダラ なる音樂。國語「口不食嘉味、耳不樂──」
はやあし。蜀志、龐統傳「陸子可謂駑馬有──之力」=疾足·駿足。
すぐれたるさま。張協、七命「天驥之駿、──超越」
さっぱりして小事に拘泥せず。梁?文、玄虛公子賦「在文林而──」
常度をこえ、ほしいままにして酒色にふける。列、楊朱「桀藉累世之資、居南面之尊、智足以距羣下、威足以震海內、恣耳目之所娛、窮意慮之所爲、熙熙然以至於死、此天民之──者也」
それだま、狙 ネフヒ のはづれたる彈丸。
すぐれたるおもむき。書斷「──飄然、有凌雲之志」
あやまてるとく。書、胤征「天吏──、烈于猛火」=失德。
にげたる馬。=奔馬。
すぐれてうつくし。
すぐれたる品格、書畫などの殊にすぐれたるにいふ。法書要錄「鍾·張·羲·獻、超然──」
○すぐれたる名文。郭璞文「庶幾令──不墜於世、奇言不絕於今」○散逸せる文字文章。
すぐれたるくちまへ。魏志、鍾會傳「好論儒道、辭才──」=雄辯·俊辯。
すぐれてよきあぢ。傅休奕賦「入口流濺、──難原」
世をのがれたる隱者。論、微子「興滅國、繼絕世、擧──」=隱君子。
あそびたのしむ。書、五子之歌「大康尸位、以──滅厥德」=逸樂。
あそびくらす。史、伯夷傳「終身──富厚、累世不絕」
世人に多く知られざるはなし。
國 人·馬·犬·鷹などの特にたくましく强き者。
キ [支]
おほぢ、九達の道。左、隱十一「入及大─」
クヮン [翰]
のがる、にげる(逃避)書、太甲「自作孽不可─」
同訓異義
ノガル 逭·逃·遁等の別は逃(辵部六畫)の條を見よ。
シウ [尤]
○めぐり、まはり(廻)=周。○一─は日·月·火·水·木·金·土の七曜日。
一週閒每に刊行する。
○ひとまはりの時期。=周期。○物理學にて一囘の振動の時閒。
○一週閒每に發行する新聞の類。○一週閒每のしらせ。
一週閒に交代して勤める務。
①シン [震]
②ジン [震]
①すすむ(前)すすましむ。退の對。○のぼる。のぼす(升·登)「─級」○ひきあげて用ふる。推薦する。呂覽、論人「貴則觀其所─」○いたす(效)○奉じて人に與へる、たてまつる「─上」「─呈」史記「奉銅盤而─之楚王」○ます(益)加へる、良くする。易、乾卦「─德修業」○つとむ(勉强)○ちかづける(近)禮、檀弓「蓋引而─之也」
②はなむけ、おくりもの。=贐。○收入、賦斂。史、高祖紀「蕭何爲主吏、主─」
同訓異義
ススム 進·晉·前薦·羞·漸·勸·奬○進は退の反、次第に向うへゆくこと、學德などの上達するにもいふ。表記「君子三揖而進」易經「進レ德修レ業」○晉は日のじりじりと昇る義、進と同じく用ふ。○前は後の反なり、前方へ出るなり。史、賈誼傳「至二夜半一文帝前レ席」○薦は神に物を獻ずること、轉じて人に物を進上するにも、人才を推擧するにも用ふ。左傳「可レ薦二于鬼神、一可レ羞二于王公一」○羞は進獻也と註す、食物を馳走し進むる義、膳羞と連用す。○漸はいつと無く、漸次に進むなり。詩說約「諸侯被二周之澤、一而漸二於善一」○勸は勉の字の義に近し、人に勸めて精を出さすなり。○奬はほめあげて勵ますこと推奬·奬勵と連用す。
○すすみあるく「──曲」○物事がはかどる、はかがゆく。
船を進め行く。
君主の御前にて講義す。元史、泰定帝紀「許師敬編類帝訓成、請于經筵──」
○學に進みて益する。禮、學記「此皆──之道也」韓愈に──解あり。○入學。
天子の御そばに進みはべる。唐書、百官志「尙寢局二人、掌宴見──之次敍」
軍隊を前に進める。
物事が漸次善き方へ化しゆく。退化の對。
生物はもと同類の祖先より次第に進化せしものなりとの論。英國人、ダーウインなどの首唱せし說。
すすみうつ。=突擊。
すすみてまみえる。後漢書、鄧皇后紀「后衣有與陰后同色者、卽時解易、若竝時──、則不敢正坐離立、行則僂身自卑」=謁見。
意見を中し上げる。又、其の意見。
○賢者を上にすすめる。漢書、武帝紀「──蒙上賞」○江西省の縣名。○古の文官又は儒者の冠の名。杜甫詩「良相頭上──冠、猛將腰閒大羽箭」=緇布冠。
物をすすめたてまつる。詩、小雅、信南山、箋「旣有牲物、而──之」=進上·進呈。
外國の貨物を本國の港へ運び來るもの、卽ち輸入品。それより取り立てる稅を進口稅といふ。口は港。
進み擊ちてほろぼしつくす。
○周代に大樂正が造士(諸侯の貢進せし秀才)の秀でたる者を選び王に吿げて司馬に升すを──といふ〔禮、王制〕○後世鄕より選ばれて中央政府の官吏登用試驗に及第せし者の稱。韓愈、復上宰相書「前鄕貢──韓愈、謹再拜」○士を推擧する。漢書、何武傳「武爲人仁厚、好──、奬勵人之善」
すすむと、とどまると。たちゐふるまひ。漢書、薜宣傳「宣爲人好威儀、──雍容、甚可觀也」=擧止。
朝廷の指揮を仰ぐ義。進むも退くも、只命令のままにする意、唐宋以後、上奏文の結尾に用ふる常套語とす。通鑑、唐則天武后紀「軍國大事、有不決者、兼取天后進止」
進みて仕宦する。
○神社又は朝廷などに魚鳥などのにへを奉る。○他國の君主に初めて謁見する時、みやげものを獻ずる。
物をすすめたてまつる〔後漢書、馬援傳〕=進呈。
すすみ出でて功名を取る。又進みて事を行ふ。保守の對。論、子路「狂者──」
こばしりに、すすみはしる。朱熹詩「──極虔恭」
ふなおろし、新造の船艦を初めて水に浮べる儀式。
得る所少く、失ふ所多き喩。老子「不敢進寸而退尺」
帝堯の時、旌を五達の道にたて善言を進めんとする者をして其の下に立ちて言はしめし故事。史、孝文紀「古之治天下、朝有────、誹謗之木」=進善旍·吿善旌。
進奏院の屬吏、進奏院は給事中に隸し、詔勅及、諸官省の符牒等を全國に頒布し、又、天下の章奏等を奏進することを掌る〔宋史職官志〕
○すすむと、しりぞくと。易經「變化者、──之象也」○進みて仕へると、退きて隱れると。=出處·去就。
進むことも退くことも出來ざるほど苦む、谷は窮。詩、大雅、桑柔「人亦有言、────」
書類などを上へ取り次ぎ進める。
すすみのびる、物が次第に發達する。=發暢。
官位などをすすめのぼす。北史、高準傳「何足以膺──之報」
他人に物を獻ずる。魏觀詩「方物紛紛效──」=進上·進獻。
人才をぬきすすめる。漢書、外戚恩澤侯表「興文學、──幽隱、公孫弘自海濱而登宰相」
すすみ發する。隋書、楊玄感傳「不時──」
足をすすめる、漸次前の方へ進む。傳燈錄「百尺竿頭須──、十方世界是全身」
ささげたてまつる。唐書、百官志「司衣典衣掌衣各二人、掌宮內御服首飾、整比以時──」
○時令によりて物を進呈する。唐書、百官志「內給使掌諸門──之曆」○ 國 人に贈る物品。
入用のたから。進は賮、財なり。史、呂不韋傳「子楚質于諸侯、車乘──不饒、居處困不得意」注「進、財也」=財用。
上の人にすすめて一覽を乞ふ。唐書、韋澳傳「撰次一書、──」
すすみ行く軍隊。梁?文帝文「制六師之──」
進み行く道すぢ。
①タイ [隊]
②テイ [霽]
①およぶ(及)論、里仁「恥身之不─也」=迨。○おふ(追)追ひかけ捕へる「─捕」
②棣に通ず、──は安和なる貌。
同訓異義
オヨブ 逮·及·迨·曁·洎·覃の別は及(二九一頁二段)の條を見よ。
とらへてつなぐ。追捕拘囚。漢書、刑法志「有罪當刑、詔獄──長安」
とらへて罪を問ひただす。宋史、盧士宗傳「有罪當驗問、不宜──」
罪人を追ひかけとらふ。漢書、高帝紀「貫高等謀逆、事覺、竟──高等」(一說に其の人在りて、直ちに追取するを逮といひ、其の人亡げて、之を討捕するを捕といふ)
○夜になりて。左傳「──至于齊、國人知之」○ 佛 忌日の前夜、宿忌。=迨夜。
安和なる貌。禮、孔子閒居「威儀──不可選也」=棣棣。
タク チャク [覺]
○とほし、はるか(遼遠)=卓。○こゆ、すぎる(超絕)○あしなへ(躄)
遠方へ行く。史、霍去病傳「──殊遠、而糧不絕」
はるかにとほき貌。宋玉賦「春秋──而日高兮」
超絕 ノリコス の貌。班固、西都賦「──諸夏」=逴犖。
逖(辵部七畫)の古字。
①ハゥ·ヒャウ [敬]
②ヘイ [靑]
又、?に作る
①ほどばしる、涌 ヮ く。○ちらす、とばす。○はしる。はしらす「奔─」
②しりぞく。古、屛に通ず。大學「─諸四夷」
ほどばしりちる。孔平仲詩「輝光一──、夜氣掃若失」
ほどばしるみづ。劉孝綽詩「晨征凌──、暮宿犯頽風」
ほどばしるいづみ。姚合詩「──淸勝雨、深洞暖如春」
ほどばしるなみだ。潘岳文「──交揮」
ほどばしるあわ。冷朝陽詩「急流難起浪、──祗如煙」
リョク ロク [沃]
○──は衆き貌。○─然は爲す所なくして忽然として往く貌。淮南、精神「渾然而來、─然而往」
9畫
アツ アチ [曷]
○やむ、とどむ(止)停止する「防─」書、武成「以─亂略」○たつ(絕)禁ずる「禁─」易、大有「君子以─惡揚善」(一說に─は匿 カクス 人の惡を隱す義)○ひきとめる(按)阻止する。孟、梁惠王「以─徂莒」
同訓異義
トドマル 遏·止·畱·駐·停·逗·稽の別は止(一○○七頁一段)の條を見よ。
歌聲のすぐれたるをほめていふ。列、湯問「薜譚學謳於秦靑、未窮靑之技、自謂盡之矣、遂辭歸、秦靑弗止、餞於郊衢、撫節悲歌、聲振林木、響遏行雲、薛譚乃謝、求反、終身不敢言歸」
みづをとどむ。唐書、馬燧傳「燧于下流以鐵鏁維車數百絕河、載土囊、──而後度」
とどめたつ、とどめ滅ぼす。書、呂刑「──苗民」
とどめうばふ。淮南子「至道之人、不可──」
とどめふせぐ。晉書、劉毅傳「尋陽接蠻、宜示有──」=防遏。
鳴り物をとどめて靜にする、音曲停止。書、堯典「三載四海、──八音」
王者が殺戮を絕ち止むる、劉は殺。詩、周頌「勝殷──、者定爾功」
ヰ [微]
○たがふ、ちがふ、もとる(背)○たがひ、ちがひ(差·異)○そむく(背)○さる(去)はなれる(離)中庸「忠恕─道不遠」○とほざかる(遠)○はなす、とほざく、さく(避)易、乾卦「憂則─之」○はしる(奔放)○よこしま(邪惡)左、桓二「昭德塞─」○あやまち(過失)「─失」○うらむ、怨を畜ふ。○依─はぐづぐづして決せざる義。=猗違。
同訓異義
サル 違·距·去·行の別は距(一八九三頁二段)の條を見よ。○タガフ違·差·爽·舛の別は差(五六○頁三段)の條を見よ。
うらみの心に蓄ふるもの。書經「否則厥心──」
陰氣をいみさける。國語「夫陳不──一閒也」注「違、避也、忌謂晦也、晦陰氣盡、兵亦陰、故忌之」
法令にそむく。晉書、王蘊傳「補吳興太守、屬郡荒、人飢、輒開倉贍卹、賴蘊全者十七八焉、朝廷以──免蘊官、士庶詣闕訟之」=犯科。
重罪輕罪以外の極めて輕き罪にて拘畱又は科料に處すべきもの。
○さからふことば、互に爭ふことば。左、隱十一「鄭·息有──」(鄭·息は二國の名)○道理にそむけることば。管子「邪行亡於體、──不存口」
○おきてにそむきたがふ。後漢書、第五倫傳「繩以法則傷惠、私以親則──」=違法。○ 國 憲法にそむく。
さからふ。後漢書、馬融傳「初融懲于鄧氏、不敢復──勢家」
國 ふさく、凶作。
○計畫 ハカリゴト の相違、目算ちがひ。○勘定ちがひ。
他人の意にそむく。
二心をいだく。又、其の人。晉書、荀勗傳「明公以至公宰天下、宜正義以伐──」
一定の法式にたがふ。
あやまつ。あやまち。後漢書、百官志「有──擧劾之」
たがひすてる。宋書「愛好文義未嘗──」
通常の行とちがふ。蜀志、來敏傳「敏前後數貶削、皆以語言不節、擧動──也」
たがひあやまる。北史、宇文愷傳「明堂圖議曰、後魏不依古制、室開通巷──處多」=乖舛·謬舛。
道よりへだたり去る。中庸「忠恕──不遠」
みことのりにそむく。=違勅。
たがひそむく。禮記正義序「──本經、多引外義」=違反·違戾。
そむきすてておこなはず。後漢書、中興諸將傳論「撓情、則──禁典」
規則、又法律にそむく。=犯法。
たがひそむく。後漢書、律歷志「──經文、謬之甚者」
おきてにたがひをかす。說苑、君道「刑法──」
たがひそむく。張養浩文「由弗修養道、乃──」=違反。
たがひあやまる。宋書、謝晦傳「晦隨問酬辨、曾無──」
反覆の義、違は反。事柄のうたがはしき點をつまびらかにたづね明かにする。
これまでのしきたりをかへる。
命令にそむく。
約束にそむく。史、項羽紀贊「──王漢、背關懷楚」
そむきはなれてゐる。周伯琦詩「九載──得遠書」
たがひもとる。後漢書、范升傳「太史公──五經、謬孔子言」=違反·違背。
○これまでのしきたりとちがふ。○ 國 貴人の病氣にいふ、御不例。
身體の調和を失ひて病む。魏書、彭城王傳「聖躬──」
迷ひて道にそむく。董仲舒賦「聖賢不能開愚夫之──」
命令には違へども道に合へる義。國語「子夕嗜芰、子木有羊饋而無芰薦、君子曰、───」(子木は、楚の大夫)
イウ ユ [尤]
游に同じ
○あそぶ(遨)あそび「春─」「雅─」「佚─」「出─」○たのしむ(樂)心を慰 ナグサ めたのしむ。○たはむる(戲)「─戲」○修學·見物又は仕宦を求めるために他國の客となる、たび(客旅)「─子」「漫─」○己の說を說きまはる「─說」○まじはり、よしみ。○まじはる友、ともだち「交─」○ひまびと、常業なきもの。○一定の所屬なきもの「─兵」「─軍」「─魂」
あそびたしと思ふこころ。=遊情。
あそびたのしむ。北史、魏南安王楨傳「飮酒──、不擇交友」
あそぶ雲と、驚く龍と。草書の巧妙なる喩〔晉書、王羲之傳〕
あそびたのしむ。詩、大雅「及爾──」
遊びてさかもりする。陳子昂詩「遊楚復──」=遊醼·遊宴。
前條に同じ。
天子の出遊。唐書、楊貴妃傳「妃每從──乘馬、則力士授轡策」
あそぶ、敖も遊。漢書、食貨志「千里──、冠蓋相望」
他國に出でて學問する。史、荀卿傳「──於齊」
遊樂にふける富貴の子弟〔史、貨殖傳〕
○空中にたなびく雲氣。晉書、天文志「──蔽天、日月失色」○いきのこれる氣息、殘喘。元史「遺黎殘姓、──驚魂」
おもしろくあそびたはむる。呂向、美人賦「左右相視、──未已」
あそびたはむれる。史、周紀「其──、好種樹麻菽」世說、排調「蘇長公在惠州、天下傳其已死、後七年北歸、見南昌太守葉祖洽、問曰、世傳端明已歸道山、今尙爾──人閒邪」
○ 佛 專心衆生を救濟する。傳燈錄「頓然忘筌、────」三昧は專心。○轉じて藝術などの妙を極めたる義。冷齋夜話「想見其高韻、氣摩雲霄、獨立萬象之表、筆端三昧、遊戲自在也」
酒宴などを催してきょうじ樂む。
國 うかれめ。=遊女。
遊兵に同じ。魏志、荀攸傳「張繡以──、仰食於劉表」
遊里に同じ。=遊郭。
他國に行きて仕宦する。漢書、匡衡傳「士之──所以至封侯者微甚」
○あそびみる。四子講德論「──乎道德之域」=遊覽。○遊ぶために建てしものみ御殿。齊書、文惠太子傳「造──數百閒」
やすらかにいこふ。水經、注「道路──者、惟得飧飯而已」=遊息。
○心を藝術によせて樂む。論、述而「依於仁、游於藝」より出づ。○ 國 歌舞音曲など。
遊びあるくにはく下駄。趙孟頫詩「山好雙──、溪淸一釣船」
遊軍を以て敵をうつ。漢書、蘇建傳「──將軍」
缺けたる所を補充する遊兵。闕は缺。左、宣十二「率──四十乘」
をとこだて。一身を忘れて弱者を保護し、勢力を張りて國法を畏れざる行爲。又其の人〔史、遊俠傳〕=任俠。
○やまあそび。遊船參看。○ 國 ユサン 山又は水にあそびたのしむ。=行樂。
たびびと。李白詩「浮雲──意、落日故人情」=旅客。
かげろふ、いとゆふ。快晴の日に蜘蛛の網の如きものが空中に見える現象。梁武帝詩「晻曖矚──」=陽炎·野馬·游絲。
まじめでなきことば。左傳「今信其──僞詐」
○あそび樂む人。○ 國 アソビニン 一定の業務の無き者、遊民。又ばくちうち、博徒。
肉を割くに庖刀を自由につかふ。事を處するに從容として餘裕あるに喩ふ。莊、養生主「恢恢乎其于遊刃、必有餘地矣」
遊軍の大將〔兵衡〕
かけりて飛び遊ぶ。宋書、符瑞志「白燕集齊郡城、──庭宇、經九日乃去、衆燕隨從無數」
○手をあけて使用せず、手をあそばす。儀禮、聘禮「大夫二手受栗」注「受授不──、愼之也」○爲すことも無くぶらぶらと暮す。又、其の者。後漢書、章帝記「務盡地力、勿令──」
善良の士に就きて交る。荀、勸學「君子居必擇鄕、遊必就士」
職業なく只食ひて遊ぶ。荀、成相「臣下職莫──」
目を遊ばしながめる。晉書、會稽王道子傳「府內有山、因得──甚善也、然修飾太過、非示天下以儉」
各自の軌道に循ひて太陽の周圍をめぐる星。恆星の對。=行星·惑星。
諸侯を歷訪して己の說を說きすすめる。史、齊太公世家「──諸侯無所遇」
あそびあるく。晉書、謝安傳「──至夜還、指授將帥、各當其任」
ふねに乘りてあそぶ。又、其の船。ゆさんぶね。宋史、闍婆國傳「五月──、十月遊山」
一卷、唐の張文成が仙窟に遊びたる事を記したる小說、和版あり。
枕して寐ぬれば仙境に遊ぶ夢を見るといふ枕。開天遺事「龜玆國奉進枕一枚、其色如瑪璃、溫潤如玉、製作甚工、枕之寢則十洲三島四海五湖、盡在夢中見、帝因號───」
心安くいこふ。揚雄、逐貧賦「貧遂不去、與我──」
諸侯·卿大夫士の庶子にして、父の事に副事する者。遊は未だ仕へざるもの、卒は倅に通ず〔禮、燕義〕
あそびおこたる。南史、孔靖傳「翦罰──、境內肅淸」
まじはり、交際の範圍、つきあひ。史、陳丞相世家「──日廣」
だらしなくあそぶ。魏志、武帝紀、注「少好飛鷹走狗、──無度」=游蕩。
○遊說に同じ。戰國策「──之士、無敢盡忠於前」○むだばなし。後漢書、仇覽傳「天子修設大學、豈但使人──其中」=游談。
うかれめ、娼妓。詩、周南「漢有──、不可求思」=游女。
小舟に乘りてあそぶ。又、其の舟。曾鞏詩「泝險飛──、探奇漾釣緡」
丙 ヒノエ の異稱。爾雅に柔兆に作る。史、曆書「──執徐三年」注「──、景也」(景は丙)=游兆。
遊びめぐりてかりする。畋は獵。=遊佃·遊獵。
めうへの人に隨ひて遊ぶ。高適詩「秪言殊語默、何意忝──」
四方に雲遊する僧。=行脚僧。
あそびてほしいまま。南史、謝靈運傳「在郡──、不異永嘉、爲有司所糾」
あそびたのしむ。歐陽修詩「苟懷四方志、所在可──」
所屬を定めず、味方の危き處をすくふ爲めにはたらく軍隊。史、彭越傳「彭越常往爲漢──」=遊軍。
あそびながめる。曹植、盤石篇「南極蒼梧野、──窮九江」=遊覽。
○ぶらぶらと遊びあるく、散步する。列仙傳「──仙庭」○心を物事に寄せる。魏志、管輅傳、注「──道術」
一定の住所なく水草を逐ひて牧畜を業とする者。淸の張穆に蒙古──記の著あり。
一定の職なくしてぶらぶらと遊び居る民。漢書、食貨志「末技遊食之民」=遊手。
目を動かしてみる。儀禮「若父則──、母上於面、母下於帶」
酒色にふける男、たはれを。李白詩「岸上誰家───、三三五五映垂楊」
あそび樂しむ。白居易詩「仙亭日登眺、虎丘時──」
○帝王の遊幸。孟、梁惠王「一遊一豫、爲諸侯度」○あそびたのしむ。盧諶詩「逍遙步城隅、暇日聊──」=遊預。
○遊獵をいふ、弋は鳥を捕へる矢〔史、李斯傳〕○軍艦の海上に往來して警備する義。
あそびたのしむ。爾雅「般者──也」
あそびながら觀る。孫綽、天台山賦「──旣周、體靜心閒」
國 いろざと。花街·遊廓。
化學にて單體が他と化合せずに存在する。又化合物が單體に分れる。
遊行して射獵する〔史、呂后紀〕晉の張華、梁の劉孝威竝に──篇あり。=遊畋。
各地をへめぐり遊ぶ。晉書、王獻之傳「──旣畢」=歷遊。
父母の存命中、子たる者の遊學するには、一定の場所を定むべきをいふ。論、里仁「父母在不遠遊、────」
ウン [問]
○めぐる「旋─」めぐらす、囘轉せしむ。○ゆく(行)○もちふる(用)「─用」南史、齊高帝紀「公神謀內─」○うごく。うごかす(動)○うつる(移徙)○はこぶ(轉輸)「─輸」はこび。○まはりあはせ、氣數。○天より人に賦したる命數「─命」「天─」「─祚」○とき、をり(機會)○地の南北。廣(東西)の對。越語「廣─百里」
同訓異義
メグル 運·繞·遶·環·行·巡·周·旋·囘等の別は繞(一五○一頁一段)の條を見よ。
工夫をめぐらす、考へる。
ほりわり、人力にてきり開き舟を通ずるもの。吳王夫差に始まり、隋唐宋に繼續し、元に大成す。
めぐりゆく。易、繫辭「日月──、一寒一暑」
運命に同じ。=運勢。
運斤成風(八二九頁二段)を見よ。
俗 運賃。運送料。
世のめぐり合せ。皇極經世書「三十年爲一世、十二世爲一運、三十運爲一會、十二會爲一元」
國 多人數集りて俳句を作り、互に優劣の點をつける座席。
船にて物をはこぶ。通鑑、隋文帝紀「開通濟渠、以通──」
謀 ハカリゴト をめぐらす。王襃文「──帷幄、參謀幕府」=運籌。
數學にて算用する義、そろばんをおく。
はりのはこびかた。ぬひやう。
國 德川時代、各種の租稅。又特に船の稅。
たなごころをめぐらす。事の甚だ易きに喩ふ。孟、梁惠王「治天下、可運之掌上」
車馬船などにて物をはこぶ。司馬相如文「又擅爲轉粟──」
運命に同じ。白居易詩「人命長短繫──」
めぐりあはせ、運命のいきほひ。
ふねをこぎやる。又、物をはこぶ船。晉書、石勒載記「會江南──至、獲布米數十艘、將士爭之、不設備」
運賃に同じ。
世のめぐりあはせ。舊唐書、順宗紀論「克昌──」=運命·天運·世運。
租稅を運び送る。晉書、袁宏傳「少孤貧以──爲業」
はこびおくる。北齊書、盧叔武傳「穀食豐饒、──不絕、彼來求戰、我不應之、彼若退軍、卽乘其弊、不過三年、彼自破矣」=運輸·輸送。
はかりごとをめぐらす。漢書、高帝紀「──帷幄之中、決勝千里之外、吾不如子房」
運送に要する賃錢。
○めぐる、はたらかす。莊子「意者其──、而不能自止邪」○車などをうごかしまはす。
國 汽車·電車などの機關をとりあつかふ人。
○めぐりうごく。はたらく。董仲舒、雨雹對「──抑揚」○衞生の爲めからだをうごかす「──會」○ 國 或る目的を達する爲めに奔走盡力する。
運のつき〔後漢書、宦者傳〕
運送に同じ。搬は移。
ふでづかひ、筆を動かす。北史、陳元康傳「颯颯──、筆不得凍、俄頃數紙」
仕合がよくなる。謝靈運詩「──申悲涼」
國 人の運不運は天命に由る義。
體力を强くせんが爲め勞動するをいふ。甓は磚 シキガハラ 晉書、陶侃傳「在荊州、輒朝運百甓於齋外、暮運於齋內、人問其故、侃答曰、吾方致力中原、過爾優逸、恐不堪事」
はかりごとをめぐらす。後漢書、李膺傳「陳蕃與竇武共秉朝政、──誅諸宦官」
めぐりゆく。陸雲文「日月──、一何流速」
まはりあはせ、人世に遭遇する吉凶禍福。魏の李康に──論あり、曰く「治亂運也、窮達命也、貴賤時也」=運數。
世の治亂人事の吉凶·禍福はすべて自然の運によりて豫め定まれりといふ說。=宿命論。
戰略は活用を貴ぶをいふ。宋史、岳飛傳「岳飛曰、陣而後戰、兵法之常、────────」
物をおくりはこぶみち。宋史、地理志「眞州當──之要」=運道。
遠(辵部十畫)の俗字。
カ [麻]
○とほし、はるか(遠)「荒─」書、太甲「若陟─必自邇」○なんぞ、いづくんぞ。古、何に通ず、又、瑕に作る。詩、小雅「─不謂矣」
遠く隔りたる地。襄陽耆舊傳「威振──」=絕域·遐壤。
はるかにながし。沈約文「靈算──」
とほきはてのくに。北史、隋煬帝紀「解倒懸于──、問疾苦于遺黎」=遐陬·遠裔。
はるかにとほし。漢書、龔遂傳「海瀕──」張九齡詩「惜此生──、誰知造化心」=遼遠。
遠方を見おろす。余闕詩「祇園開塔廟、──盡三秦」
とほざけすてる。詩、召南「旣見君子、不我──」
遠き古のみち。阮瑀、紀征賦「仰天民之高衢兮、慕在昔之──」
はるかなるそら。孟郊詩「碧雲散──」
遠く行く。楚辭、九章「氾容與而──兮」
王城を距ること極めて遠き蠻夷の地。晉書、文帝紀「仁風興於中夏、流澤布於──」
はるかにとほし。楚辭「日瞥瞥兮西沒、道──兮阻歎」=遼迥。
遠大なるよろこび。徐陵文「國家隆盛、同享──」
遐は遠、遠く隔りたる人を思ひやる。又、遠く高きおもひ。晉書、謝安傳「嘗與王羲之登治城、愁然──、有高世之志」(世說に遠想に作る)
遠大なるこころざし。新論「人有小察細計者、知其必無──」
とほきと、ちかきと。司馬相如、難蜀父老「──一體、中外禔福」=遠近。
遠き土地。柳宗元、獻平淮夷雅表「守──」
遠き昔のあと。夏侯湛文「瞻望往代、愛想──」
とほくみわたす。趙冬?詩「方曙躋南樓、凭軒肆──」
かたゐなか、遠き田舍。鄭玉詩「東西南北窮──」
とほくさる。楊萬里詩「端居忽飛動、──卽囘轉」
遠きおほぞら。何中詩「探邃裂凝陰、憑顚洞──」
とほきあと。揚雄賦「軼五帝之──兮」
遠方までのべしく。何承天頌「禮樂四達、頌聲──」=遐暢。
大いに開けて明か。牛弘、明堂議「皇猷──、化覃海外」
ながくつづくさいはひ。祚は福。晉書、樂志「后皇延──、安樂撫萬方」
遠方にまでおよぶ。覃は及。駱賓王、姚州破賊露布「玄謀廣達、妙略──」=遠覃。
ながくつづくさいはひ。前秦錄「垂祚無窮、永延──」劉基、龍虎臺賦「天子萬年、以介──」
末孫。摯虞賦「有軒轅之──兮」
遠方の美寶。釋妙聲、送僧歸日東詩「王化能柔遠、──亦會同」
とほくゆきわたる。薛道衡、隋高祖頌「皇威遠懾、帝德──」
はるかにとほる。曹植文「天靜人和、皇敎──」
はるかにながめる。盧諶詩「──存亡、緬成飛塵」=遠眺。
はるかにのぼる。束晳詩「精爽──、形骸幽居」
はるかに遠き系統。曹植、碑文「循軒轅之高蹤、紹虞氏之──」
ながいき、長命。=遐齡。
遠き地方〔晉書、宣帝紀〕
とほくへだたりたる地にあるたみ。長楊賦「──爲之不安」
とほくはるか。法苑珠林「聖德──、冠絕人天」
遠方にまでおよぶ。北史、禿髮傉檀載記「朕威德不能──、經略無以及遠、何以苟安黃、屋、無媿黔黎」=廣被。
大いなるさいはひ。詩經「降爾──、惟日不足」=洪福。
とほくあがる。潘岳詩「大晉統天、仁風──」
ながいき。魏書、常惠傳「以知命爲──、以樂天爲大惠」=遐年。
ガク ゴ [藥]
○心に見ることを欲せずして見る。=遻○あふ(遇)楚辭、九章「重華不可─兮」=迕。
グ [遇]
通音グウ
○あふ、であふ、道路にて相逢ふ、偶然に會ふ、期せずして逢ふ。○世に用ひられる、時世に合ふ、時めく「知─」「値─」「─合」(不─は不仕合)○まつ(待)もてなす(接待)漢書、季布傳「─人恭謹」もてなし「厚─」「寵─」「禮─」「優─」○あたる(當)對敵する。○をり、しほ。○たまたま、ちゃうどであふ義。韓愈、柳子厚墓誌銘「─有以夢得事白上者」=偶。
同訓異義
アフ 遇·逢·遭·値·合·會·晤○遇はふと行きあふなり、期せずして會するを遇といふ、偶字の意を兼ぬ。○逢·遭·値の三字は、略~同じ、兩方より行き逢ふなり。○合はひったりと符を合せたる知く、よく合ふなり、吻合·符合と連用す。詩經「妻子好合、如レ鼔二瑟琴一」○會は總べ聚る義、會計は總算用なり、朝會·會同と熟す。○晤は人相見曰レ晤と註す、面晤と連用す。
賢君に出あひて用ひられる。君臣の遭遇。史、佞幸傳「力田不若逢年、善仕不若──」
責められる、譴責にあふ。魏書、車路頭傳「太宗性明察、羣臣多以職事──」=被譴。
いぐるみに射らる。左思賦「精衞銜石、而──」
たたりにあふ。黃庭堅詩「年來──覆三豪」
もてなす。後漢書、蔡邕傳「卓重邕才學、厚相──」(卓は董卓)=待遇。
①クヮ [箇]
②クヮ [歌]
①すぐ。すごす、こゆ(越)度を越える、あまる。論、先進「─猶不及」○まさる、すぐる(勝)○あやまつ、あやまる。あやまち「─失」「大─」「細─」論、學而「─而勿憚改」○つみ(罪愆)○とがむ、せむ(責)譴責する。呂覽、適威「─不識」
②ふ、經る、すぐ、通 トホ る(經歷)「經─」○すぎ去りし時「─去」○わたる(度)○よぎる、たちよる。○おとづれる(訪問)「─訪」○易の卦名。大─は巽下兌上、小─は艮下震上。
同訓異義
アヤマル 過·誤·謬·訛·錯·愆·失の別は誤(一八○九頁一段)の條を見よ。
度にすぎてあいする。新書「失愛不仁、──不義」
あやまち。荀子「君子正義直指擧人之──、非毀疵也」
己の分にこえすぐ。蘇軾詩「正作尙書已──」
とほりあめ、むらさめ。盧綸詩「──開樓看晚虹、白雲相逐水相通」
天子の德の缺けたるをおぎなふ。漢書、汲黯傳「出入禁闕、────」
通行する人、たびびと。李白、春夜宴桃李園序「光陰者百代之──」
あやまち、とがめ。北史、韋世康傳「不顯人──以求名譽」
つみあやまち。馬融文「固之──、事合誅辟」
しそんじ。漢書、叔孫通傳「人主無──」
聖人德業の盛んにして其の經歷する處は、其の民必ず從はざるは無く、其の神心の存する處は、神妙不測にして、天地の化と同じく運行す。孟、盡心「夫君子所過者化、所存者神、上下與天地同流、豈曰小補之哉」
あやまち、うれひ。顏氏家訓「有盛名而免──」
たちよりて見る。
○あやまれるはかりごと。戰國策「燕國大亂、君臣──」=失計·失策。○はかりごとをあやまる。
あまりにはげし、はげしきにすぎる。
いひそこなひ。論、顏淵「駟不及舌」集解「──一出、駟馬追之、不及舌也」=失言。
てあつくかへりみる。宋書、鄭鮮之傳「猥承人乏、謬蒙──」=殊眷。
ひるすぎ、午後。岑參詩「──方始飯」=午下。
すぎさりし時。搜神記「管輅善解諸術、知未來──之事」
死者の俗名、法名、死去の年月日等を記したる帳簿。=鬼籍。
あやまち、あやまり。漢書、孝成許皇后傳「幸得免離茅屋之下、備後宮掃除、蒙──之寵」
さきほど、先刻。
おごり。書經、傳「沈湎于酒、──非度」
あやまちと、つみと。戰國策「慮無變擾、忠無──」
黑色の度の過ぎたるもの。魏收文「──爲紺、踰藍作靑」
あやまち。漢書、刑法志「三宥、一曰弗識、二曰──、三曰遺忘」
さきのひ、先日。=前日·曩=。
漢の賈誼の作りし文。秦が法律に任じて仁義を修めず、故に二世にして滅びたるをとがむ、もと新書中に在りて、過秦篇といふ。
過稱に同じ。
旅客が關所を通過する時の手形。釋名「──、至關津以示也、或曰、傳過也、移所在識以爲信」
ほめすぎ。實にすぎたるほまれ。後漢書、明帝紀「有──虛譽」=過譽、過襃。
あまる。あまり。
たべすぎる。=暴食。
甚だしくすぎる。漢書、劉歆傳「博見强志、──于人」
おとづれる、見舞ふ。漢書、馬援傳「閒至河內、──伯春」=候問·過訪。
○おほすぎる。○過分に同じ。
大きすぎる。=夸大。
あやまち、てぬかり。
あたりまへよりすぎる。相當の數より過ぎる、卽ち味方の死者よりも敵の死者の方が多し。司馬遷、報任安書「所殺──」
ききちがひ、ききあやまり。史記「將軍──以與寡人有隙」韓詩外傳「──殺人」
おもすぎる。
よぎりいたる〔漢書、尹翁歸傳〕
物事のうつり進む順序。
○舟のわたしば、度は渡。方言「──謂之涉濟」○轉じて文脈のうつりかはる所。○ クワド 度にすぐ「──の勉强」
○わたし場。○舊時代より新時代にうつり代る「──期」=過度。
甚だしく數が超過する。
をとづれる。=訪問。
ほめすぎ、襃は人の美を揚げる。=過譽·過稱。
おもきおきて。史、老莊申韓傳「不如以──誅之」=嚴法。
半分以上。孟、滕文公「螬食實者──矣」
全數の半分以上のかず。
さきごろ。=先般。
杖の長くして眉に過ぐるもの。陸游詩「瘦竹───、輕紗折角巾」
過度にするどし「神經──」
すぎると及ばざると。
あまると、たらざると。
○身分に過ぐる。左、僖二八、注「無求──」○ 國 十分なる滿足。
目を通してみる。梁書、昭明太子傳「讀書數行竝下、──皆憶」
ほめすぎ。人物志「是故同體之人、常患于──」=過稱·過襃。
心身をつからしすぎる。
分量にすぎる。諸葛亮文「平爲大臣、受恩──」
おもひすごす。おもひすぎ。
罪過のつぐのひに出す金。=罰金。
人臣が君德の闕けたるを補ひすくふ。漢書、汲黯傳「出入禁闥、────」
過失あるも、之を改むるを憚りて、外面を取りつくらふ。論、子張「子夏曰、小人之過也、必文」
あやまちをすくなくす。論、憲問「夫子欲寡其過、而未能也」
己の過を救ふに日の足らざる義。史、酷吏傳「九卿碌碌、奉其官、────、何暇繩墨之外乎」
あやまちをかさねてせず。論、雍也「有顏囘者、好學、不遷怒、───」
あやまちを見て其の厚きに失する者は其の人の仁なるを知る。論、里仁「人之過也、各於其黨、觀過斯知仁矣」
あやまちをゆるす。管子「罰罪──、以懲之」
人は過失なしとせず、ただ能く改むれば過なき前にかへる、改めざるときは、其の過は遂に成りて眞の過となる。孔子の語〔論、衞靈公〕
過あるときは畏れはばかることなく速に改むべし。孔子の語〔論、學而〕
物事は中庸を貴ぶ、中をすぐれば、反りて及ばざるに同じ。論、先進「子曰、────」
クヮウ [陽]
○ひま、いとま(暇)詩、小雅「不─啓處」書、無逸、注「─在心、暇在事、事宂曰不暇、心勤曰不─」○いそぐ(急)あわてる。古、皇に通ず。○──はひまなくいそがしき貌。
あわていそぐ。後漢書、馬援傳「諸郡──、各以狀聞」
心おちつかずうろうろする貌。い之がしき貌。孟、滕文公「孔子三月無君、──如也」後漢書、蘇竟傳「仲尼棲棲、墨子──、憂人之甚也」=皇皇·栖栖。
シウ [尤]
○せまる(迫)○かたし(堅固)詩、豳風「四國是─」○つく(盡)なくなる。屈原、九辯「歲忽忽而─盡兮」をはる(終)○あつまる(聚)詩、商頌「百祿是─」○つよし(勁)鮑照詩「獵獵晚風─」たけし(健)
文筆の力つよく、すぐれたるおもむきあり。北史、祖珽傳「神情機警、詞藻──」
つよくきびし。韓愈詩「朝作百賦猶鬱怒、暮作千詩轉──」
書畫、又、文章の筆力つよし。圖繪寶鑑「李思訓畫皆超絕、尤工山水林泉、筆格──」
令を宣傳する官。書、胤征「每歲孟春、──以木鐸徇于路」
つよくしてととのふ。輟耕錄「房大年畫、京都萬歲山、意匠經營、格法──」
つよくうるはし。南史、柳惔傳「惔非徒風韻淸爽、亦屬文──」
スヰ [寘]
○とぐ、成しとげる、成就する「功成名─」禮、月令「百事乃─」○とほす。とほる(達)○すすむ(進)易、大壯「不能退不能─」あげ進める(登進)登用する。書、仲虺之誥「顯忠─良」○なす。なる(成)○そだつ(育)○かなふ(稱)○をふ。をはる(竟)つくす(盡)○つひに、其の結果として。左、隱元「莊公寤生驚姜氏、名曰寤生、─惡之」○よる(因)兩事相因りて及ぶ。○したがふ(順)○事をもっぱら(專)にする。○こみぞ(小溝)周禮「夫閒有─、─上有徑」○そなはる(備)○のびのびした(舒肆)る貌。詩、衞風「容兮─兮」○遠き郊外の地。周代の行政區劃の名、王畿より百里以外の地「六鄕六─」周禮、大司徒「五縣爲─」
同訓異義
ツヒニ 遂·竟·卒·訖·畢·終○遂は事をしとぐる意あり、つひにと訓むときは、因也、兩事相因而及也と註す、此の因ありて、たゆみなく彼の事をしとぐる義。韓非子「蟻壤一寸而仞有レ水、乃掘レ地遂得レ水」○竟は究竟、また畢竟と熟し、あげくと譯す、史記に「及レ破二驪戎、一獲二驪姬一愛レ之、竟以亂レ晉」とある如し。○卒は終盡なり、はてはと譯す、事實を主としていふ、年のしまひを、卒歲といひ、事を終るを卒業といふが如し。○訖は盡也と註す、事の終りたるところを主とす。○畢はことごとくといふ義あり、十が十皆すみ盡くしたる意に用ふ。○終は窮極なり、始の反にて、しじうの意あり、事の全體にかかる、史記に「武安君終辭、不レ肯レ行、遂稱レ病」とあるにて知るべし。
あやまちを成しとげる。呂覽「飾非──」
いにしへおほむかし(遂は肆と音通、肆は陳卽ち久遠)魯靈光殿賦「上紀開闢、──之初」=往古·上古。
はたらきあるものをあげ用ひて、其の材をつくさしむ。管子「選賢──、而禮孝弟、則姦僞止」
よくそだてる。漢書、嚴安傳「五穀蕃熟、六畜──」
○事未だ成らざれども勢已むこと能はざるもの。論、八佾「成事不說、──不諫」○事を專にする。公羊、莊二九「大夫無──」
官を退きて其の初志をなしとぐ。晉書、孫綽傳「孫綽居於會稽、游放山水十餘年、作──賦、以致共意」
相隨ひて行く貌。禮記「陶陶──、如將復入然」
生を遂げ生長する。呂覽、去私「萬物得──焉」=生遂。
善良なる者を登用する。書、仲虺之誥「顯忠──」
セン [先]
○しばしば、往來すること數 シバシバ なり。○とし(疾)すみやか(速)詩、衞風「─臻于衞」
①タゥ [漾]
②タゥ [陽]
①すぐ(過)○うごかす(盪)○たふる(倒)據を失ひて倒る。漢書、王式傳「陽醉─地」
②つく(突)「迭─」
①タゥ·ドウ [皓]
②タゥ·ドウ [號]
通音ダゥ
①みち、通行する所、徑路「海─」「街─」「棧─」人の守るべき義理「人─」「孝─」「至─」「敎─」禮樂·刑政「政─」「王─」「霸─」學術·技藝など「斯─」「武─」○すぢみち(理)やりかた、方法。孟、公孫丑「是或一─也」○したがふ(順)書、禹貢「九河旣─」○行政上の區劃。唐代、天下を十─に分つ(今の省の類)明·淸は省を數─に分ち、其の官吏を─員といふ(我國にては本國を畿内·八─に分ち、又朝鮮にも八─あり)○老子の敎「─敎」○─學は宋の程朱などの學派。又道敎の學說。
②いふ。(言)大學「如切如磋者─學也」○よる(由)よりしたがふ。中庸「─問學」○をさむ(治)論、學而「─千乘之國」○みちびく(導)論、爲政「─之以政」○てびき、あんない。○より、から(從)韓非、十過「玄鶴二八─南方來」
同訓異義
イフ 道·言·謂·曰·云の別は言(一七八五頁二段)の條を見よ。○ヨり道·自·從·由·緣·因·仍の別は自(一五八七頁三段)の條を見よ。
氣を導き體に引きて、和柔ならしむる義。莊、刻意「──之士、養形之人、彭?壽考者之所好也」=導引。
道士の居所、道敎の寺。王禹偁詩「──風淸响藥籮」=道觀。
黃帝·老子の敎を祖述する學派。史、禮書「孝文好──之學」漢書、藝文志「──者流」
國 道德の意を詠ぜしうた。
德義の心を以てまじはる。
○宋の程子·朱子等の唱へし學派。宋史に──傳あり。=宋學·性理學。○儒學。論衡、量知「雖無──、觔力材能、盡於朝廷、此亦報上之效驗也」○道敎の學問。隋書、經籍志「蓋公能言黃老、文帝宗之、自是相傳──衆矣」
○道學卽ち程朱學を修めし學者。○人情世態に暗く頑固なる學者を罵りていふ。
正しきすぢみち。抱朴子「正經爲──之淵海」
人のふむべきみち。戴復古詩「──無窮達、文章有是非」=道義。
過ぎにし事を話す。舊唐書「相與──以爲笑樂」陶潛文「班荆──」=道故·敍舊·話舊。
道理を以て事を量りて、其の宜しきを制すると、法を以て自ら守ると。孟、離婁「上無道揆也、下無法守也」
ゆきだふれ、道上にて餓死せし人。殣は餓死。左、昭二「宮室滋侈、──相望」=行殣。
行路にうゑじにする者多きをいふ。左、昭二「宮室滋侈、────」
道敎の經典〔隋書、經籍志〕
○佛家應用の器具〔釋氏要覽〕○ 國 すべての器具。
道敎の神の尊號。登眞隱訣「三淸九宮竝有僚屬、其高等稱曰──」
○道德のひかり。劉咸詩「──誰不仰淸塵」○佛敎の光。法苑珠林「法水東流、──西照」○淸の宣宗の年號。
道士の居る寺の樓。遠望すべし故に觀といふ。劇談錄「佛字──、遊覽者罕不經歷」
國 おどけ、をかしき所作をして人を笑はせる。又其の人。
道德と學藝と。周禮「會其什伍、而敎之──」
黃帝·老子の敎。後漢の張道陵に創り、晉の時、天師道と稱し、後に──と名づく。宣室志「雅尙──、屢加尊異」
道家の祕法。盧思道詩「尋思得──、輕擧厭人羣」
能く道を見るまなこ。楞嚴經「開我──」
故舊の情を語る。史、滑稽傳「若朋友交遊、久不相見、卒然相覩、懽然──」=道舊。
道の本源。申鑒「恕者仁之術也、正者義之要也、至哉此謂──、萬化存焉爾」
道士のよそほひ。蘇軾詩「朱雀橋邊看──」
道敎に關する一切の經典。
學者、東觀を謂ひて、道家の蓬萊山と爲す〔後漢書〕故に借りて人文薈萃の地に喩ふ。陳師道詩「──今日有宗英」=文苑·儒林。
道家にて死をいふ。世說、排調「世傳、端明已───、今尙爾游戲人閒耶」
○道敎を修むる人。通鑑、胡注「道家雖宗老子、而西漢以前未嘗以──自名、至東漢、始有張道陵·于吉等、是道與佛敎皆起東漢時」○仙術を修めたる人、方士。漢書、王莽傳「衞將軍王涉、素養──西門君惠」○有道の士。春秋繁露「古之──有言」=君子。
みちすぢ。後漢書、郭伋傳「有童兒數百、各騎竹馬、──迎拜」=途次。
○佛又は道家の說を修むる人。智度論「得道者、名爲──、餘出家者、未得道者、亦名──」○道術を得たる人。漢書、京房傳、注「──有道術之人也」
○義理より發する心。人心の對。書、大禹謨「人心惟危、──惟微」○ 佛 菩提心、悟道の心、佛道を信ずる心。李端詩「夜靜猿聲證──」=道念。
道義の眞誠。漢書、劉歆傳「黨同門、妒──」
みちばた。=路傍·路上。
○道敎又仙人の方術。後漢書、何皇后紀、注「道人謂──人」=仙術。○道德學術。
道敎の書物。魏志「張陵客蜀、學道鵠鳴山中、送作──、以惑百姓」
僧侶と俗人と。南史、梁武帝紀「──五萬餘人」=緇素。
道路を守りて旅人の安全を得しむる神、さへのかみ。=道陸神。
道德の本體。近思錄に──篇あり。淮南、詮言「無爲者、道之體也」
官名、我が國の縣知事の類。
行ふ所ただしきも立身すること能はず。李商隱文「時亨命屯、────」
人の爲めにしたばなしをする。漢書、田延年傳「召問延年欲爲──」
道敎の書物。=道書。
○佛敎及道敎の道を修する所。又、寺をいふ。白居易詩「紗籠燈下──前」○ 國 擊劍·柔道などを稽古する所。
○みちなか、たびぢ。漢書、王嘉傳「──過者皆飮食」=途中。○ 國 遊女の道ゆき。
道里に同じ。
善言を聞くと雖も、深く心に畱めて己の有となさざるをいふ、塗は送。論、陽貨「道聽而塗說、德之棄也」
みちすぢ。=道途。
儒敎の道を承け傳へたる人人の系統。堯·舜·禹·湯·文·武·周公·孔子の如き者〔孟、盡心〕元史、趙復傳に「──相傳圖」あり。
人倫五常のみち。曲禮「──仁義、非禮不成」
書名、卽ち老子。隋書、經籍志「老子───二卷、周柱下史李耳撰」
道を行ひし效驗。史、蔡澤傳「豈非────、而聖人之所謂吉祥善事者與」
道家にて七月七日の祭。雲笈七籤「七月七日名───」
○義理より發する心。吳筠詩「疇昔希──」=道心。○佛道を悟りし心。=菩提心。
いひやぶる、いひ盡す、論破する。
みちのほとり、みちばた。白居易、靑石詩「不願作官家──德政碑、不鐫實錄鐫虛辭」=道旁·路傍。
道德ある相貌。續仙傳「李珏情景恬憺、──秀異」
路傍にあるにがき李の實。人に棄てらるるに喩ふ。世說、雅量「王戎七歲、嘗與諸小兒遊、看道邊李樹多子折枝、諸兒競走取之、惟戎不動、人問之、答曰、樹在道邊而多子、此必苦李也、取之信然」
○正しきのり。韓非子「禍福生乎──、而不出乎愛惡」○道敎の法。神仙傳「乃入周狄山、精思──」
みちのほとり、みちばた。論衡「──巨樹、塹邊長溝」=道傍·道邊。
旅費。名山藏、明太祖紀「人賜衣一襲鈔五錠、爲──」=道里費。
○道士の服。遵生八牋「──不必立異、以布爲佳」○ 國 中古、貴人が外出の時に著けたる塵よけ。
みちばた。詩經「采采芣苢」疏「今車前 オホバコ 草、大葉長穗、好生──」=道傍。
道路に沿ひて家を作り、道を行く人と謀れば路人の心は區區なれば、終に一致せず、家を成す能はず。一定の見識なく、他人の言のみを用ふる者は、終に事を成す能はざるに喩ふ。詩、小雅「如彼築室于道謀、是用不潰于成」
道德の意味。晉書、成公?傳「不求榮利、潛心──」
國 道明寺糒 ホシイヒ の略、飯をほしたるもの、河內國河內郡───にて創製せしが故。
其の道の系統。戴良詩「儒言存──、野趣任天眞」=道統。
○道德に入る門戶。道德指歸論「靜爲虛戶、虛爲──」○道德のうち。易林「被服衣冠、遊戲──」○道敎、又道家をいふ。圖繪寶鑑「多畫──尊像」
道の眞源、腴は膏腴、其の味の美なるに喩ふ。班固、答賓戲「味道之腴」
國 ○ものずき。○酒色にふける。=遊蕩。
みちのり。漢書、司馬相如傳「──遼遠、山川阻深」=道程。
旅費。琉球國史略「賜衣幣及錢、爲───」
すぢみち、人の守るべき正しき道。荀、修身「其行──也勇」=道德。
道理が深く心の底まで貫く。蘇軾、與李公擇書「─────、忠義塡骨髓」
道士、道家者流。韋應物詩「玉書示──」
みちを修めて得たる力。姚合詩「聽琴知──、尋藥得詩題」
通行のみち。禮記「──男子由右、婦人由左、車由中央」
次條に同じ。
國政に不滿をいだく者、公然非難するを畏れ憚り、互に目を以て其の意を通ずる。周語「國人莫敢言、────」=道路側目。
國 道祖神の訛。
國 心學者が道德上に關する卑近なる訓話。又其の書「心學──」
德の修まらざるをうれへて、身のまづしきをうれへず。孔子の語。論、衞靈公「君子─────」
○廉直の風おこなはるるをいふ。家語、相魯「男女行者別其塗、────」○刑法の嚴しくして令を犯す者なきをいふ。史、商君傳「────、山無盜賊」
操り守る所の道同じからざれば、互に相謀ることなし〔論、衞靈公〕
人倫の道をまもる。許渾詩「簞瓢貧──、書劍病忘機」
能く官を守りてその職をつくすは、道を守るの要旨たる義。左、昭二十「仲尼曰、──────、君子韙之」
道大いにして、世に容れられず。史、孔子世家「夫子之道至大也、故天下莫能容」
近き道も、行かざれば到著せず。荀、修身「───────、事雖小、不爲不成」
遠道を行きて始めて千里の馬の能を知る。曹植、矯志詩「────、世僞知賢」
道の根源は天より出づ。董仲舒、對策「───────、天不變、道亦不變」
道理はもと一源に出で、二途なき義。淮南、俶眞「────、通九門、散六衢」
學問の道は之を己の身に本づくべし、故に近し、然るに人反りて之を外に求む、故に遠し。孟、離婁「道在爾而求諸遠」爾·邇通ず。
タツ ダチ [曷]
○とほる、行きわたる。中庸「天下之─道五」道が通ずる「四通八─」とほす(通)○とどく、いたる(至)到著する「到─」とどける「送─」○およぶ(及)○あらはる(顯)世に知られる、窮の對「顯─」孟、盡心「─不離道」○すすむ(薦)人を引きあげ用ふる。禮、儒行「推賢進─之」○おふ(生)○さとる(曉)事理に通ずる「明─」「英─」論、公冶長「賜也─」○のぶ(暢)○とぐ(遂)○つらぬく(貫)○あまねし(徧)○よろし(宜)○みな(皆)○きめる(決)○まど(窗牖)○こひつじ(小羊)○すぐれたる人「─人」○ほしいまま(放恣)「挑─」「放─」 國 ○ ダチ 人員の複數を示すことば「友─」「公─」○たっし、官府の申しわたし「布─」「─書」
己の意思を十分にのべ通ずる。史、滑稽傳「書以道事、詩以──」
よく父母に事へ、天下の人の認めて孝行とするもの。中庸「武王周公、夫──矣乎」(一說に常行して變らざる孝行)
顯達せる官。檀弓、疏「──謂國之卿士大夫被君命者也」北齊書「此是最大──」=顯官。
意に滯る所なく、ひろく見とほして境遇の爲めに拘束せられず。蘇軾詩「白足高僧解──」
ゆきとどきたるをしへ。陸雲文「聞先黎之──」
理を十分にきはめ知る見識。晉書、賈充傳「雅量宏高、──明遠」
道理に通達せし味あることば。曹植文「歎此──、以爲美談」
達は通、上は天子より下は庶人に至る迄行ふべき喪 モ の禮。禮、三年問「三年之喪、天下之──也」
ひろく事理に通じて事物に拘束せられざる士。呂覽「──者、達生死之分」後漢書、仲長統傳「至人能變、──拔俗」
意味を十分に通ぜしむる。又、十分に通達せしむね。晉書、裴頠傳「君子宅情、無求於顯、及其立言、在乎──而己」
事理に明達して能く機を知り得る見識。北史、邢邵傳「高情──、開遣滯累」=達見·遠識。
○ひろく道理に通達する人。嵆康、絕交書「柳下惠·東方朔、──也」=達者。○ 國 藝術に熟達せし人。
道理に通達する士は、公平に天地閒の事物を觀察する。賈誼、鵩鳥賦「────兮、物亡不可」
○ひろく事理に通達せる人。左、昭七「吾聞將有──、曰、孔丘聖人之後也」=達人。○ 國 丈夫である、身體壯健なり。又、自由自在。
よあけがたにいたる。
まつりごとの理に通達する。南史、孔琳之傳「乃擧朝大議、精才──之士」
天下を通じてたつとばれるもの、達は通。孟、公孫丑「天下有──三、爵一、齒一、德一」
天下古今の共に由る所の路、書經の五典、孟子の父子有親·君臣有義·夫婦有別·長幼有序·朋友有信の道。中庸「天下之──五」
天下古今常行して變ぜざる德。中庸「知仁勇三者、天下──也」
國 書畫文章などを自由自在に巧に書く。
べ ン 國 巧みなる辯舌。
事理に通ずる。柳宗元文「是必──、而聞道者也」
高等の官吏。舊唐書、鄭注傳「──權臣、爭湊其門」=達官。
十分に熟練する。後漢書、胡廣傳「廣性溫柔謹素、遜言恭色、──事體、明解朝章」=練達·熟達·明練。
蒙古語にて官長の義〔十八史略、南宋紀〕
西藏の黃敎の主、卽ち──喇嘛、俗に活佛と稱す、前藏の拉薩城の布達拉廟に居る。
○梵語、一切の萬法。○天竺の僧、菩提──の略、梁武帝の時、迎へて金陵に至る。江を渡りて魏に往き、嵩山少林寺に止り、面壁九年に及ぶ、法脈を二祖の慧可に傳へ、袈裟と「吾本來玆土、傳法救迷情、一花開五葉、結果自然成」といふ偈とを付與し、大通二年十月五日入寂す。磨一に摩に作る。
テイ [庚]
○うかがふ。偵に通ず。○ 國 さすが(流石)
①トン [願]
②シュン [眞]
①は又、遯に作る
①にぐ、のがる(逃)「─逃」「驚─」○うつる(遷)○かくる(隱)○隱れ去る「─思」○さける(迴避)後漢書、杜林傳「上下相─」
②あとしさりする。賈誼、過秦論「─巡不敢進」=逡。○めぐる。漢書、平當傳「逡─有恥」=巡。
同訓異義
ノガル 遁·逃·遯等の別は逃(辵部六畫)の條を見よ。
忍術 ニンジユツ の類、人目をくらまして身をかくし吉を取りて凶を避けるといふ妖術。後漢書、方術傳、注「──推六甲之陰而隱遁也」
にげかくれる。韓愈文「虎豹遠跡兮、蛟龍──」
この世を遁れ去る思。詩、小雅「勉爾──」
にげことば、いひぬけ。孟、公孫丑「邪辭知其所離、──知其所窮」
秦の苛政をのがれ避ける。漢書、敍傳「四皓──、古之逸民」=避秦。
世をのがれる。世閒を見棄てて隱れる。=遯世。
にげはしる。史、孝文帝紀「匈奴──」=逃走。
のがれしりぞく。魏志、陳畱王紀「七月賊皆──」
にげさける。唐彥謙詩「麾駈非吾任、──亦無術」
にげはしる。淮南子「前無蹈難之實、而後無──之刑」=逃北。
疑ひ恐れてあとしざりする。賈誼、過秦論「九國之師、──而不敢進」=逡巡·卻退。
ヒョク [職]
通音フク又ヒツ偪に同じ
○せまる(迫)「─迫」○ちかづく(近)○せばまる、つまる、土地などがせまくなる、險狹。山川考「岸狹勢─」○いそぐ(急)○ちぢむ(縮)○をかす(侵)せまりおどかす(迫脅)左、襄二「以─子重子辛」○內─ ウチセマル は大便がしたくて耐へられず。
同訓異義
セマル 逼·迫·薄·蹙○逼は偪に同じ、閒近くつめ寄する義、逼レ眞とは、畫などの眞物によく似て殆ど同じやうなるをいぶ。○迫は逼迫と連用して、逼と大いに同じけれども小異あり、迫には急なる意あり、急迫·切迫の如し。○薄は迫に同じ、晚に迫るを薄暮といふ、物薄ければ透閒スキマなく、ひったりと付きせまるなり、但急なる意はなし。○蹙は一所におしよする義、轉じてせまり困む義とし、又窮蹙·窘蹙と連用す。
○せまりふさがる。 國 ○おちぶれてかくれ居る。○德川時代、武士に加へたる刑罰、門を閉ぢて白晝の出入を禁ずる(閉門 ヘイモン よりは輕し)
甚だ眞物に似る。韓偓詩「蹤有才難詠、寧無畫──」
水邊にせまり近づく。晉書、苻堅載記「君懸軍深入、置陣──、此持久之計、豈欲戰者乎」
○君を犯して其の位をうばふ。蘇軾、唐論「──之危」○おびやかし取る。大唐新語「父子母子尙有──」
○さしせまる、せまりうながす。晉書、李密傳「郡縣──、催臣上道」○ 國 ヒツ人ク 手づまる「金融──」
ちかづきたすける。晉書、庾袞傳「徒行入都、將命者、遂──升車」
ヘン [霰]
又、遍に作る、徧に同じ
○あまねし「普─」○たび、囘數を示す語。一─は一次。
同訓異義
アマネシ 遍·周·徧·普·洽·浹の別は周(三二三頁四段)の條を見よ。
あまねくかねる。晉書、范平傳「平、硏二覽墳索、──百氏」(墳索は、三墳八索、古書をいふ)
あまねくうかがひみる。楊炯文「旁求勝境、──靈跡」
滿身又、全身の義。無名氏、蠶婦詩「──綺羅者、不是養蠶人」=徧身。
あまねくかたる。世說「悉書其鄕邑名氏、一寓目使之──、不誤一人」
あまねくしく。許棠詩「風威──江山靜、敎化高同日月明」
諸國をへめぐる。
ユ [虞]
○こす、こゆ(越)踰に通ず。○すぐ(過)過ぎ去る。書、秦誓「日月─邁」○わたる(渡)書、禹貢「─于洛」○とほし(遠)○すすむ(進)○いよいよ(愈)ますます。呂覽、愼大「欲榮而─辱」
つきをこえる。李建勳詩「相見未──、堪悲遠別離」
他日にまたがる。魏志、注「實不──者、欲民速覩爲善之利也」=踰日。
すぎ去る。書、秦誓「我心之憂、日月──」
〔國字〕
あっぱれ、贊美する詞。
10畫
エゥ [蕭]
○はるか、とほし(遠)「迢─」「──」禮、王制「千里而─」○逍─ セウエウ はぶらぶらとあるく、さまよふ。=徜徉·逍搖。
はるかに長く引き垂れる。黃溍詩「靑帘──杏花中」
はるかにうつる。南史、王僧辯傳「有兩龍自城西江中、騰躍升天、五色分明、──江水、百姓皆仰而目之」=遠映。
はるかなる貌。左、昭二五「遠哉──」=遙然。
はるかに見ゆる山脈。
遠くから見る。韓愈詩「草色──近卻無」
はるかにまつる。周禮、疏「爲壇──之」
はるかにゆびさす。李遠詩「窗中──三千界」
とほくみゆるみね。陸游詩「但怪素月生──」=遙嶺。
遠くからながめる。柳宗元詩「探奇極──、窮妙閱淸響」
とほく見える靑山。孟郊詩「──新畫出、三十六扇屛」
遠きむかし。張華詩「伏枕終──、寤言莫予應」
とほくへだたりたるいづみ。馬戴、宿翠微寺詩「積翠含微月、──韻細風」
はるかなる貌。列仙傳「託身風雨、──矯步」
はるかなるむら。張九齡詩「歸雲納前嶺、去鳥投──」=遠村。
遠方まで布きおよぶ。江淹文「皇心──、察政洞俗」
はるかなるみぎは。僧善住詩「征鴻和影度──」
遠くよりながめる。沈約詩「驅馬城西阿、──想京闕」
はるかなるそら。張正見詩「雨師淸遠路、風伯靜──」
はるかに拜禮する。晉書、桓溫傳「溫威勢翕赫、侍中謝安、見而──」
遠くからのぞむ。諸葛亮、梁甫吟「步出城東門、──蕩陰里」=遠望。
はるかなるあをぞら。劉禹錫詩「前山正無雲、飛去入──」
とほくゆく。潘岳賦「辭京輦兮──、將遠遊兮東夏」
長き夜。方干詩「平明疎磬白雲寺、──孤砧紅葉村」=長夜。
①ヱン·ヲン [阮]
②ヱン·ヲン [願]
逺は俗字
①とほし、はるか(遼)近の對。時閒又距離が長し「長─」「久─」「永─」「迢─」「脩─」○あまねし、ひろし。○おくぶかし「深─」「高─」高尙にして知り難し。孟、盡心「言近而指─者」(指は旨)○まはりどほし「迂─」○うとし、親しからず「疏─」○とほきもの、とほき所。
②とほざく。論、衞靈公「─佞人」うとんず。とほざかる。論、學而「─恥辱也」
とほきもや。張九齡詩「──千巖合、幽聲百瀨喧」
○古人の意志。水經、注「後人假合、多差──」○遠方に在る人の心。李白詩「開緘識──、速此南行舟」○遠く思を馳せる。賈島詩「分首芳草時、──靑天外」
古きいはれ。又遠き原因。
○修學などの爲めに、遠方に行く。論、里仁「子曰、父母在不──、遊必有方」=遠游。○冠の名。漢以後諸王の服する所ろ。
さきざきまでの遠きはかりごと。猷は謀。陸機詩「夫子茂──、款誠寄惠音」=遠謀。
遠方の土地。晉書、張寔傳「孤州──」=遠境·絕域。
遠く久しき原因。梁武帝文「佛敎爲法、本存──」=遠由。
○遠き後世の子孫。晉書、赫連勃勃載記「淳維──、名王之餘」=遠冑。○遠きはてのえびすのくに。張說、義陽王神道碑「泣血上請、迎喪──」
遠地にやらるる役夫。張協詩「君子從──」
はるかにおもふ。李中詩「閑聽九秋雨、──四月僧」
遠くへだたりたる地。後漢書、馬援傳「奏言、西于縣──、去庭千餘里、請分爲封溪·望海二縣、許之」庭は縣庭。
遠方へ行く。呂覽「今臣將有──」
都よりすこしく遠ざかりたるゐなか。邑外百里の地。周禮「近郊十一、──二十而三」
久遠の後に至りてあらはれるしるし。孔文仲文「人之常情、薄──而貴速成」
船にて遠方へわたる。=遠洋航海。
遠國と交際して近國をせめる。史、范睢傳「不如遠交而近攻」
遠方より來れる客。又遠國の旅人。李白詩「──投名賢、眞堪寫懷抱」
とほくへだたる。=懸隔。
とほくあまねし。南史、梁武帝紀「文德廣覃、義聲──」
とほくさがしもとめる。後漢書、安帝紀「擧賢良方正、──博選、開不諱之路」
遠方より來るたすけ。後漢書、竇融傳「恃──、而輕近敵」
○をちこち、遠きと近きと。管子「剛柔也、輕重也、大小也、實虛也、──也、多少也、謂之計數」○遠方の民と近所の民と。史、始皇紀「──畢至」=遠邇·遐邇。
畫法の語、遠近の位置をあらはす法。
遠くへだたりたる地。韓非子「不謹蕭牆之患、而固金城于──」=遠域·遠界。
とほきそら。李白詩「晴雲散──」=遙空。
遠方をのぞみみる。梁武帝文「近取之身、無假──」
遠方の野。錢起、觀舞馬賦「垂耳長阪、翹足──」
遠大の事業。後漢書、馮岑賈傳論「若馮賈之不伐、岑公之義信、足以感三軍而懷敵人、故能尅成──、終全其慶也」
高僧の人を見送るにいふ、遠公は慧遠法師。梅堯臣詩「陶令歸時───、石苔秋雨步遲遲」虎溪三笑(一六九八頁四段)參看。
遠方のくに。後漢書、和帝紀「──珍羞」
ながきとしつき。江淹、宋尙書墓銘「颯流馨於──」
○遠方のとりで。○とりでに遠ざかる。史、匈奴傳「匈奴亦去──」
○遠くすぐれて高尙なるおもひ。世說「悠然──、有高世之志」○遠くおもひやる。何承天、臨高臺篇「任窮達、隨所遭、何爲──令人勞」=遐想。
遠大のはかりごと。=遠謀。
○とほくにげかくれる。王粲詩「鷙鳥化爲鳩、──江漢邊」○遠方へ島ながしにする。=遠謫。
次條に同じ、黛は眉墨。飛燕外傳「飛燕妹合德爲卷髮、號新興髻、爲薄眉、號───」
とほき山の如く靑く引けるまゆげ、美人の眉に喩ふ。西京雜記「卓文君姣好、眉色如望遠山」杜牧詩「笑別───」=遠山黛。
ふかき意味。何遜、七召「談章句之──」
○遠大なる志。魏志、注「董卓曰、鴻鵠固有──、但燕雀自不知耳」○藥草の名、ひめはぎ、をんじ本草「──、一名小草、李時珍日、此草服之能益智強志、故有──之稱」
遠きと近きと。書經「四夷咸賓、無有──」=遐邇。
老年の人の患ふる所、遠き物を視るは明かにして近き物は反りて糢糊 ボンヤリ たり。=老眼。
さきざきまでみぬく見識。晉書、盧欽傳「淸淡有──」
天文學上、地球が日を繞りて運行する橢圓形の軌道上、日を距ること最も遠き點。
○遠國の人。遠物を見よ。○ 國 トホツヒト 同上。又古代の人。
○君主のうとんずる臣。墨子「近臣則喑、──則吟」○遠方の國より來り仕ふる臣〔孟、萬章〕
遠き親類よりは近き鄰といふ意。明心寶鑑「遠水難救近火、──────」
物理學にて囘轉する物體が、其の中心より遠ざからんとする力。求心力の對。
遠方へ飛びかける。說苑「鴻鵠高飛──」
遠方の國ざかへをまもる。又邊境の守り。又其の兵。後漢書、龐參傳「重之以大軍、疲之以──」
遠方に見える木。何遜詩「水底見行雲、天邊看──」
とほきところ。司馬相如、檄巴蜀文「恐──谿谷山澤之民不徧聞」
國 とほのり、乘馬にて遠出する。
女色を遠ざける。中庸「去讒──、賤貨而貴德」
とほくまでながめる。梁?文帝詩「──旣濡翰、徒自勞心目」
とほきものは急場の用に立たざるに喩ふ。韓非、說林「失火而取水於海、海水雖多、火必不滅矣、遠水不救近火也」
○遠方へゆきて討つ。左傳「不和不可以──」○遠方へ行く。=遠行。
○とほくさる。後漢書、蘇竟傳「故變名──」○死する。=長逝。
遠く隔りたる前代のあとを承けつぐ。韓愈、進學解「尋墜緒之茫茫、獨旁搜而──」
ちすぢのとほき親類。=遠親。
とほつおや、遠きせんぞ。高祖·曾祖以上の祖。後漢書、章帝紀「朕得識昭穆之序、寄──之思」
とほくはしる。後漢書、卓茂傳「凡人之生、羣居雜處、故有經紀禮義、以相交接、汝獨不欲修之、寧能高飛──、不在人閒乎」
とほくまで見送る。詩經「之子于歸、──于野」杜甫詩「──從此別、靑山空復情」
遠方へ物をおくる。梅堯臣詩「後園有佳果、──當鯉魚」
國 運動の目的にて遠出する。
志が遠くして大いなり。謝朓文「臣本布衣、不謀──」
造詣する所の未だ量り知るべからざる義。晉書、陶侃傳「此子終當──、復何疑也」
○遠く離れたる島。後漢書、張宗傳「深入──」○ 國 德川時代の刑の一、伊豆·薩摩の七島、肥後の天草·佐渡·壹岐·隱岐等にしまながしにせしもの。
とほきみち。李白詩「著鞭跨馬涉──」=遠路。
とほき處へつみしながす。李白詩「我愁──夜郞去、何日金雞放赦囘」=遠竄。
とほくおよぶ。賈は及。牛弘、凱樂歌辭「帝德──、天維宏布」=遙覃·遐覃。
遠き末孫。魏書「其旁枝──、豈得同四廟三親哉」=遠裔。
久しく遠きにわたるはかりごと。晉書、宣帝紀「昔箕子陳謀以食爲首、今天下不耕者蓋二十餘萬、非經國──也」
遠方へおひはらふ。北史、崔浩傳「彼能遠走、我亦──、非難制也」
緣のとほきものと近きものと。尸子「不避──」=親疏。
遠方にまで名があらはれる。魏志、賈詡傳「明公昔破袁氏、今收漢南、威名──」
遠くつづくみぎは。蘇舜欽詩「漁艇縱橫映──」
とほくながめる。朱熹詩「高齋一──、西南見秋山」=遙眺。
遠方のそら。許敬宗詩「辭燕歸寒海、來鴻出──」
遠大のはかりごと。後漢書、賈復傳贊「奇鋒震敵、──謀國」=遠謀。
とほく深きほらあな。鄭谷詩「──時聞磬、羣僧晝掩扉」
とほくつたはりしく。孫綽文「音徽──、飧仰芳流」
とほき所。論、學而「有朋自──來」左、宣三「昔夏之方有德也、──圖物貢金、九牧鑄鼎象物、百物而爲之備、使民知神姦」
遠大なるかんがへ。韓愈詩「大賢事業異、──非俗規」
遠方にあるたみ。丘濬詩「當宁念──、塗炭日以極」
遠方をのぞむ。東方朔、七諫「登巒山兮──」=遠眺。
とほくうかぶ。方干詩「他年莫學鴟夷子、──扁舟用鑄金」
○帝都をとほくはなれたるえびす。北史「魏明元帝享東廟、──助祭者數百國」○遠方に在る藩鎭。次條參看。
遠く隔りたる藩鎭。韋應物詩「一朝忝蘭省、三載居──」
とほくのえびす。宋史、柳元景傳「先是劉道產、在雍州、有惠化、──悉歸懷」=遠蕃。
遠國に產する珍らしき物。書、旅獒「不寶──、則遠人格」
遠方に產する高價無益の物を貴ばず。前條參看。
血統のとほくうすき先代のたまや。禮、祭法「──爲祧」
遠き山のみどりいろ。蘇軾詩「行人挹孤光、飛鳥投──」=遙碧。
遠方にわかれ居る。白居易詩「兄弟唯二人、──恆苦悲」
とほくあゆむ。杜甫詩「恣意同──」
さきざきまでのはかりごと。左、莊十「劌曰、肉食者鄙、未能──」=遠圖·遠略·遠猷·遠算。
遠方に產する珍らしき食品。尸子「珍怪──」
遠く陸を離れたる太洋を船にてわたる。
とほくこえる。張詠文「陛下禮士之風、──列聖」
遠方から來る。晉書、范汪傳「謝其──意」
遠方にて鳴るかみなり。
○とほくを見る。晉書、杜預傳「曠然──、情之所安也」○遠大なる見識。班彪、王命論「超然──、淵然深識」
遠方に見ゆる峰。=遙巒·遠峯。
罪によりて遠方へながす。北魏書、源懷傳「藏竄者悉──」
○遠大のはかりごと。陸機、辨亡論「洪謨──」○遠方の國を攻めるはかりごと。後漢書、蘇竟傳「武帝情存──、志關四方」唐書「覆敗之餘、無復──」
○永遠のおもんばかり。論、衞靈公「子曰、人無──、必有近憂」 國 ○ひかへめにする。○德川時代の武士の刑、逼塞 ヒツソク の輕きもの。
遠方の民。沈佺期詩「歌舞將金帛、汪洋被──」=遠氓。
遠くへだたりたる道。論、泰伯「任重而道遠」注「能負重任致──也」
他人のことは能く見ゆるも、己の事は見えざる義。淮南、說山「萇弘知周之所存、而不知身所以亡、──────」
①ケン [銑]
②ケン [霰]
①やる、つかはす、行かせる「─使」「派─」○おくる(送)おふ(逐)○はなつ(縱)にがす「放─」「縱─」○もらす、はらす「─悶」「─情」○しむ(令·使)命令して事を行はしむる意をあらはす。
②─車は葬式の際、君主より下賜せられし牲體を載せる車。 國 ○つかふ。つかひ「小─ コヅカヒ 」「假名─ カナゾカヒ 」○ ツカハス 物を與へる。
同訓異義
シム 遣·令·使·敎·俾の別は令(一○九頁三段)の條を見よ。
つかはしかへす。漢書「──故郡」
人を外國につかはす。
葬式の時、犧牲を載する爲めに君主より賜はる車〔檀弓〕
氣ばらし。陸機、文賦「歌者應絃而──」
國 王朝時代に朝廷より唐朝へつかはされし使者。
さし使はさるる人數のうち。
いきどほりの心をはらしやる。孔平仲詩「──詩千首」
うさばらし。李德裕文「宮中無事、以此──耳」
コウ [宥]
逅に同じ
あふ(遇)相値ふ。崔駰賦「嘉昔人之─辰兮」覯と通ず。
ソ [遇]
泝·溯に同じ
○さかのぼる、水流に逆らひて上 ノボ る。詩、秦風「─洄從之」○轉じて過去の時代をさかさにたどる。○水流に順ひて下る。詩、秦風「─遊從之」○むかふ(向·嚮)○さかふ(逆)○うったふ(訴吿)愬に通ず。
流に順ひて下る。詩、秦風「──從之、宛在水中央」
水流にさからひて上る。詩、秦風「──從之、道阻且長」
○水源にさかのぼる。○轉じて學術の本源を究める「天道──」
風にむかふ。むかひかぜ。詩、大雅「如彼──、亦孔之懷」
ソン [願]
○ゆづる(讓)己を措きて他をすすめる。書、堯典、序「將─于位」○したがふ(順)書、舜典「五品不─」○へりくだる(謙恭)「謙─」「揖─」「恭─」書、說命「惟學─志」孫に通ず。○にげる、のがる(逃遁)○おとる(劣)此が彼に及ばず「─色」「─一籌」
其の職位を人にゆづる。史記「唐堯──、虞舜不台」=讓位。
つつしみへりくだりてすなほ。唐書、崔損傳「損以便柔──、畱八年」=謙謹。
二十卷、明の方孝孺の詩文集。其の文蹤橫豪放、東坡·龍川の閒に出入す。
へりくだりゆづる。後漢書、高鳳傳「仁義──、奈何棄之、于是爭者懷感、投兵謝罪」=退讓·謙讓。
他にひけをとるやうす。
すなほにして兄長に順ふ。禮記「朝廷同爵則尙齒」疏「是──敬老之道、通達於朝廷矣」
道(辵部九畫)の古字。
タフ [合]
○あつまる、かさなる。衆くしてこみあふ「雜─」「紛─」○およぶ(及)=迨。
テイ [薺]
逓は俗字
○かはるがはる、たがひに(更迭)「更─」○かはる(代)○しゆくば(傳驛)「驛─」○物を驛より驛へつぎつぎに送る「─送」「郵─」○傳驛の發送に從ふ人夫。又車馬。○迢─は遠き貌、はるか。
同訓異義
カハル 遞·變·化·易·替·代·更·渝·換の別は變(一八四○頁三段)の條を見よ。
同一の衣をかはるがはる傳へきる。後漢書、李充傳「家貧、兄弟六人、同食──」
次第にましくはへる。
次第次第にへらす。遞加の對。
たがひにかはるがはるおこる。史、律書「──遞廢、勝者用事」元稹、蝱詩「辛螫終非久、炎涼本──」
じゅんばん、順次に。
國 郵便·電信·電話·商船等の事を掌る中央官廳。
國 遞信大臣の異稱。
かはるがはるにたたかふ。新論「千人──、不如十人俱至」
次へ次へとかはるがはる送る、しゅくつぎにして送る。明律「若隣境官司、囚到稽畱、不卽──者、罪亦如之」
互にかはる、更迭する。楚辭「射──些」
驛傳 シユクバ の役卒。燕翼貽謀「以軍卒代百姓爲──」
かはるがはるゆく。後漢書、姜肱傳「肱與二弟仲海·季江友愛天至、常共臥起、及各聚妻、兄弟相戀、不能別寢、以係嗣當立、乃──就室」
11畫
ガゥ [豪]
あそぶ(遊)後漢書、劉盆子傳「而猶從牧兒─」通じて敖に作る。詩、邶風「以敖以遊」
あそびたのしむ。孫楚、井賦「枕玄石以盥潄、喜──而緩帶」
あそぶ。後漢書、馬援傳「卿──二帝之閒」=敖遊。
あそびたのしむ。後漢書、梁鴻傳「聊逍遙兮──」
サゥ ソウ [豪]
○あふ(遇·逢)曲禮「─先生於道」めぐのあふ。○めぐる(巡)とりかこむ(匝)劉禹錫詩「山圍故國周─在」○たび(度·次·囘)幾─は幾次。○らる、せらる、他より仕向けられる。漢書、惠帝紀「─太后虧損至德」
同訓異義
アフ 遭·遇·逢·値·合·會·晤の別は遇(辵部九畫)の條を見よ。
めぐりあふ。漢書、禮樂志「幸──其時」
危きなんぎにであふ。
めぐりあふ。又、賢臣が明君に遇合して信任せられる。范雲詩「──聖明后、來棲桐樹枝」蘇軾文「追敍終始之──、以詫鄕鄰之父老」=遭遇。
うれひにあふ。幽通賦「故遭于罹而贏縮」
シャ セ [麻]
○さへぎる(攔)○とどむ(遏)くひとめる、制しとどめる。○ささふ(支)○をかす(冒)○たつ(斷)○まちぶせ(要擊)○おほひかくす(掩蔽)「蔽─」○この、これ、俗語の這に通用す「─箇」○周─は語多き貌。
さへぎりとどむ。易林「烈風雨雪、──我前」=遮止。
さへぎりふせぐ。扞一に捍に作る。漢書、王莽傳「扶服振救、──匡衞」=蔽扞。
このたび。元稹詩「自識君來三度別、──白盡老髭須」=今囘·這囘·此次。
まちぶせしてうつ。後漢書、班超傳「伏兵──」=要擊。
俗 この、これ。蘇軾詩「──在油鐺、不寒亦不熱」=這箇。
さへぎりとどむ。隋書、蘇威傳「上避之而出、威又──之」
くるまの行くをさへぎる。梁?文帝文「衞卒──、追民擁榜」
さへぎりたつ。史、白起傳「發年十五以上、悉詣長平、──趙救及糧食」=遮斷。
まちぶせして說く。史、高祖紀「三老董公──漢王」
さへぎりとどむ。後漢書「烏桓寇雲中、──道上商賈車牛千餘兩」=遏截。
さへぎりたつ。韋莊詩「紅塵──長安陌」
さへぎりとどむ。唐書、陽城傳「爲吏──」
さへぎりとどむ。北史、唐永傳「當路──、隨數日始得出境」=遮止。
さへぎり蔽ふ。後漢書、輿服志「張弓帶鞬、──出入」(車駕の出行の時、道を淸め行人をとどめる義)
みちをさへぎり止める。後漢書、銚期傳「百姓聚觀、喧呼滿道、──不得行」
それはそうであらふとも、ままよ(唐以後の俗語)岑參詩「別君止有相思夢、──千山與萬山」=任他·遮渠。
前條に同じ。白居易詩「──不道君王恩」
①セキ [陌]
②テキ [錫]
③タク·チャク [陌]
①の通音テキ
①ゆく(往)おもむく(歸)いたる(至)○よめに行く、とつぐ(嫁)○たのしむ(樂)「快─」「淸─」「娛─」「酣─」○かなふ、ほどよくあてはまる「─當」○したがふ(從)○たまたま(偶)○まさに、ちゃうどそこへ。史、高祖紀「高祖─從旁舍來」○ただ。孟、吿子「則口腹豈─爲尺寸之膚乎」○つねに。○よし(善)○自得する、安便なり「自─」「暢─」「舒─」
②よつぎ「─子」嫡に通ず。○おもて(正位)○かみ(上位)○──はおどろく貌。○あるじ、主なり。詩、衞風「誰─爲容」○專一、專ら其の事に熱中する。論、里仁「無─也、無莫也」○かたき。史、田單傳「始如處女、─人開戶」=敵。
③せむ(責)孟、離婁「人不足與─也」=謫。
同訓異義
タマタマ 適·偶·會の別は偶(一五五頁四段)の條を見よ。○マサニ適·正·政·方·祗等の別は正(一○○八頁二段)の條を見よ。○ユク適·往·之·如·逝·行·徂·征·于の別は往(六一八頁四段)の條を見よ。
己の心にかなふ、心が愉快に自得する。晉書、張翰傳「人生貴──爾、何能羈官數千里、以要名爵」
ほどほどにのむ。韓非子「渴者──之則生」
ゐなかにゆく。左傳「賓孟──、見雄雞自斷其尾」
よくあてはまる。
其の人を主としてしたがひたよろ。史、伯夷傳「我安──矣」=適從。
よろしきにかなふ。=便宜。
味佳にして口にかなふ。嵆康文「嘉肴珍膳、雖所未嘗、嘗必美之、適於口也」張蘊古文「羅八珍于前、所食不過──」
長男。檀弓「扶──南面而立」=嫡子。
○かたき。字解參看。=敵人。○ ヒトニユク 女子が出でて嫁する、よめいりする。儀禮「凡女行於大夫以上曰嫁、行庶人曰──」
生物の形態·習性等が其の生存する周圍の境遇に適するものはよく生存繁榮し、然らざるものは絕滅する。
遠地へゆきて守備する。賈誼、過秦論「──之衆、非抗九國之師也」=謫戍。
主としてゆきてしたがふ。左、僖五「狐裘蒙戎、一國三公、吾誰──」=適歸。
よくあてはまる。=剴切。
○たまたま。鬼谷子「事有──」=偶然。○つね、あたりまへ。賈誼、治安策「以是爲──耳」=當然。
罪ありて邊境の守備に充てられし兵卒。史、酈食其傳「令──分守成皋」=謫卒。
漢代は天子の長女をいふ、適は嫡に通ず。史、劉敬傳「以────妻之」(唐代は天子の姑 ヲバ をいふ)
大いにおどろく貌。莊、秋水「───驚、規規然自失也」
己の意に適することを適とする。莊、大宗師「是役人之役、適人之適、而不自適其適者也」
はまりやく、よく其の任務に適當する。
適は專ら一事を主とし熱中する。莫は適の反、肯 ガへン ぜざるなり。嫌 キラ ふ。論、里仁「君子之於天下也、無適也、無莫也、義之與比」
規定又は法律に適合する。=合法。
よくあてはまる批評。
ほどよくあてはめてもちふる。晉書、職官志「或隨時──、或因務遷革」=應用。
よくをひかへめに程よくする。呂覽「聖人必先──」
國 或る規定の年齡にあてはまる「徵兵──」
其の德をしたひてゆき從ふ。呂覽「帝也者天下之適也、王也者天下之往也」
ソク [沃]
○とし、はやし(疾)「剽─」=速。○ちぢまる、せまる。=促。○僕─は才の凡庸にして短小なる貌。漢書、息不躬傳「僕─不足數」
①チ [支]
②チ [寘]
①おそし。速の對。○ゆるやか(緩)「舒─」徐行する。鈍 ニブ し「─鈍」「─重」○しづか(靜)○おくる(晚)おそくなる。禮記「來何─也」○ひさし(久)○棲─は安らかに息ふ。○委─は廻りて遠き貌。○陵─は丘陵の漸くにひくくなる貌。轉じて事の漸く衰ふる貌にいふ。
②まつ(待)「─明」○すなはち、そこで(乃)史、春申君傳「─令韓魏歸帝重于齊」
同訓異義
マツ 遲·待·俟·竢·徯·須の別は待(六二一頁三段)の條を見よ。
ながびく。=遲延·遷延。
おくれてとどまる。蔡邕文「狐疑──、兩州空懸、萬里蕭條、無所管繫」
ぐづぐづして決せず。疑ひて猶豫する。後漢書「然猶折意縉紳、──陵奪」=狐疑。
おそくながし。又、まつこと久し。陸龜蒙詩「眞君不可見、焚盥空──」
ぶらぶらさまよふ。李白詩「金花折風帽、白馬小──」=低徊·徘徊。
ゆったりとして迫らず。晉書、謝安傳「性──、久而方罷」
定めの時刻におくれる。
春の日。日永くして暮るることおそき故。詩、豳風「春日遲遲」杜審言詩「──園林悲昔遊」
おそきと、はやきと。後漢書、律曆志「月行當有──、不必在牽牛東井婁角之閒」遼史、魏璘傳「上命馳馬、較──、以爲勝負」=遲速。
時候におくれて成熟する。金史、食貨志「地寒稼穡──」=晚熟。
おそきと、はやきと。列、楊朱「何遽──於其閒乎」
遲速に同じ。王安石、周官新義序「──有時」
ぐづぐづしてとどこほる。通鑑「後唐莊宗必慮刑獄──者」
あさはやく、早朝。漢書、南越王傳「──城中皆降伏波」(伏波は伏波將軍路博德)=遲明。
○ゆるやかにして迫らざる貌。禮、孔子閒居「威儀──」=舒遲。○徐行する貌。詩、邶風「行道──」○日の長き貌。詩、豳風「春日──」
成長すること遲き谿邊の松。范質、曉從子杲詩「─────、鬱鬱含晚翠」
にぶく、おろか。吳志、孫奐傳「吾初憂其──、今治軍、諸將少能及者、吾無憂矣」=遲頓。
おそくにぶし。漢書、翟方進傳「號──不及事」注「頓、讀曰鈍」=遲鈍。
殷の賢人。其の言に曰く「人惟求舊、器非求舊」
だんだんととしよる。莫は暮の古字。屈原、離騷「惟草木之零落兮、恐美人之──」=暮年·晚歲。
前條に同じ。陸游詩「年光──壯心違」
夜の將に明けんとする頃、遲は待。漢書、高帝紀「──圍宛城三匝」=黎明·遲旦。
とどまる。元好問詩「每逢花下卽──」
①テイ [霽]
②セイ [霽]
①ゆく(往)○さる(去)○迢─ははるかなる貌。
②さや(刀鞘)○ゆく。史、賈誼傳「鳳漂漂其高─」=逝。
①トン [願]
②シュン [眞]
遁の本字
①のがる、にぐ、にげかくれる「嘉─」「肥─」○易の卦の名、艮下乾上。
②あとしさり。=逡。○めぐる○=巡。
同訓異義
ノガル 遯·逃·遁等の別は逃(一九四七頁二段)の條を見よ。
世をのがれて安らかに居る。晉書、劉驎之傳「好遊山澤、志存──」
のがれかくれる。柳宗元、始得西山宴游記「尺寸千里、攢蹙累積、莫得──」
にげかくれる。晉書、皇甫謐傳「上有勞謙之愛、下有不名之臣、朝有待賢之禮、野有──之人」=逃竄。
そむきさる心、背叛の心。禮記「敎之以政、齊之以刑、則民有──」
世をのがれ避ける。易、文言「君子以獨立不懼、──无悶」=避世。
12畫
①ヰ [支]
②ヰ [寘]
③ズヰ [支]
①わする(忘)○すつ(棄·亡失)「─棄」見棄てる。詩小雅「棄予如─」すたる(廢)○うしなふ(失)漢書、賈誼傳「功不─矣」○おとす(落)「─失」おとしたる物。○ぬける(脫)「─落」○のこす「─業」「─產」のこり(餘)あまる「─愛」禮、樂記「有─音者矣」○とどむ(畱)○ておち。史、汲黯傳「拾─補過」(人のおちどをひろひ補ふ)○ゆばり(便旋)漢書、東方朔傳「小─殿上」○──はななめにゆく。=委蛇。
②おくる(贈·餽)物をつかはす、やる「贈─」左、隱元「請以─之」
③したがふ。=隨。
同訓異義
オクル 遺·送·贈·饋·貽等の別は送(一九四五頁二段)の條を見よ。
○いつくしみをのこす。又、のこしたるいつくしみ。漢書、敍傳「淑人君子、時同功異、沒世──、民有餘思」○古人の仁愛の遺風ある義。仁愛が後世に遺畱する。左、昭二十「及子產卒、仲尼聞之、出涕曰、古之──也」
白居易の香爐峯下新ト山居、草堂初成、偶題東壁詩の中の句。曰く「日高睡足猶慵起、小閣重衾不怕寒、───────、香爐峯雪撥簾看、云云」
前人ののこせる心。蘇軾文「追述東朝之──」
君に見すてられて用ひられず。孟、公孫丑「──而不怨、阨窮而不憫」=放棄。
親の死後にのこりし子孫。=遺兒。
古人のよみおきたるうた。謝朓、哀策文「思寒泉之罔極兮、「託彤管于──」
すてる。すたる。袁桷詩「詩書往昔成──」
○道路におちたる物を拾ひ取らず。道德が行はれて民に潔白の心あるをいふ。史、孔子世家「男女行者別于塗、塗───」○法律が嚴しく民が刑を畏れて人の物をひろひ取らず。史、商君傳「道───、山無盜賊」
地上におちたる物を拾ひとるが如く至りてたやすし。漢書、梅福傳「高祖取楚───」
のこれるめぐみ。後漢書、王昌等傳論「劉氏之──餘烈」
後人の爲めにのこされたるいましめ。宋史、李繼和傳「手錄唐李勣──、援繼和」=遺誡。
後にのこすいましめのことば。後漢書、祭遵傳「臨死──」=遺戒·遺訓。
なきがら、死骸。=遺骨。
あやまれるおこなひ。宋玉、答楚王問「先生其有──耶」=失行。
後にのこしたるいましめ。高允、鹿苑賦「覩天規于今日、尋先哲之──」=遺誡。
前人ののこせる詩文のしたがき。宋史、歐陽修傳「修得唐韓愈──于廢書簏中、讀而心慕焉」=遺稾·遺稿。
のこりをし、殘念。
死後にのこれる書き物。文心雕龍「辭人──、莫見五言」
のこれるのり。のこしたるいましめ。張華詩「周任有──」
わすれすてる。蘇轍文「──憂患、超然自得」=委棄。
わすれる。崔國輔詩「──珊瑚鞭、白馬驕不行」
前人ののこせるのり。=遺規。
殘しおける敎訓。阮籍、大人先生傳「誦周孔──、歎唐虞之道德」=遺誡。
前人ののこしおける敎訓は取り用ふべし。沈約文「雖混成以無迹、寔遺訓之可秉」
己のからだをわすれる。莊子「故養志者──」
ておちのはかりごと。後漢書、桓榮傳「慮無──」=失計·遺算。
前人ののこしたる文藝。蜀志、郤正傳「綜墳典之流芳、尋孔氏之──」
前人ののこしおけるをしへ。漢書、地理志「河東土地平易、有鹽鐵之饒、本唐堯所居、其民有先王──、君子深思、小人儉陋」=遺訓。
前人ののこしおけるわざ。漢書、鄒陽傳「今天子新據先帝之──、左規山東、右制關中」=遺緒。
○臨終のことば。○前人の殘しおけることば。禮記「古之──與龜筮、猶不能知也」
のこされたるのり。陸機、辨亡論「景皇聿興、虔修──、政無大闕」
なき人のほね。通鑑、陳文帝紀「齊人收永安上黨二王──葬之」=遺骸。
のこれるうらみ。陸機、文賦「恆──以終篇」朱熹詩「歸來──滿塵襟」=遺憾。
遺產に同じ。
○ておちのはかりごと。呂覽、不苟「所言無──」失策·失計。○前人の遺しおきたるはかりごと。賈誼、過秦論「蒙故業、因──」
死者の殘し置きたる財產。=遺財。
ておち。吳志、三嗣主傳、注「謀無──、擧不失策、故遂割據山川、跨制荊吳、而與天下爭衡矣」=失計·遺計·遺策。
書名、四十卷、金の元好問の詩文集。好問才雄にして學贍、最も詩文に長ず、遺山は其の號。
世に用ひられずして、民閒に隱れ居る學者。元史、董士選傳「諸老儒及西蜀──」
大便をする、矢は屎。史、廉頗傳「一飯三──」
前人ののこしおける志。高允、郡國建學表「申祖宗之──、興周禮之絕業」
家又は城などののこれるあと。袁皓詩「梵林──在松蘿」=遺阯。
○わすれがたみ。父母に死なれたるこども。=遺子。○すてご。=棄兒。
のこされしあとつぎ。張九齡、東封赦書「──沈淪」
物を贈りたまふ。又、其の物。漢書、外戚傳「妾伏自念、入椒房以來、──外家、未嘗踰故事」
惡名を後世にのこす。晉書、桓溫傳「旣、不能流芳後世、不足復──萬載耶」
のこれるのり。宋書、孝武帝紀「禮九疑于盛唐、祀蓬來于渤海、皆前載流訓、列聖──」舊唐書、音樂志「公莫舞、漢世謂之巾舞、舞用巾、以象項伯衣袖之──也」
とりおとす。わする。後漢書、魯丕傳「無使幽遠獨有──」
○先代より仕へたるふるきけらい。=舊臣。○前朝のけらい、亡國の臣。
もえのこり。溫庭筠詩「丙舍無人──香」=餘燼。
○拾ひのこされしよき玉〔莊、天地〕張籍、罔象得玄珠詩「赤水今何處、──已渺然」○未だ人に知られざる賢人又はすぐれたる詩文などに喩ふ。
○かきおき。棠陰比事「遂呼族人爲──、悉以財屬女」○亡逸せる書物。漢書、藝文志「使謁者陳農求──於天下」○著して後世にのこしたる書物。大學章句「大學孔氏之──」=遺著。
先人ののこしおける事業。書、君牙「惟予小子、嗣守文武成康──」=遺業。
あとかた。靈一詩「靜林溪路遠、蕭帝有──」
生前にたのみおく。=遺屬。
世の俗事をわすれ棄てる。孫興公、天台山賦「非夫──翫道絕粒、茹之者烏能輕擧而宅」前赤壁賦「如──獨立、羽化而登仙」
○古人ののこせる制作。南史、張譏傳「幼喪母、有錯綵經帕、卽母之──、及其所識家人、具以吿之、每歲時、輒對帕哽噎不能勝」○古よりのこれる制度。白居易、樂府「備威儀助郊祭、高祖太宗之──」
意識せずして精液をもらす病。
崩御の際のみことのり。
のこれる昔のあと。周易正義序「康成之說、──可尋」=遺跡。
○前條に同じ。王粲詩「先民──、來世之矩」○あとをのこす。劉峻、廣絕交論「──江湖之上」
おとしたるぜに。邴原別傳「原嘗行得──」
今日までのこれるならはし。孟、公孫丑「其故家──、流風善政、猶有存者」
世人に見すてられる禍。蘇軾、賈誼論「必有────」
主人に死なれたる家族。元好問詩「販婦庸兒識名姓、故鄕──見衣冠」
○失ひしやじり。賈誼、過秦論「秦無亡矢──之費」○のこれるやじり。
のこりながらふ。歎逝賦「顧舊要於──、得什一於千百」
父母ののこし置きしからだ、卽ち己の身。禮、祭義「曾子曰、身也者、父母之──也」
後にのこれるめぐみ。顏氏家訓「死則遺其澤」=餘澤。
むかしのあと、躅はあと。蘇軾詩「西嶺訪──」=遺跡。
ぬけ、おち。=遺漏·脫漏。
ておち。說苑「萬擧而無──失策」=遺策·失計。
前人ののこしおける事業。左思、魏都賦「先王之桑梓、列聖之──」
著して後世にのこしたる書物。=遺編。
古の直者の遺風ある人。左、昭十四「仲尼曰、叔向古之──也」
祖先又、父母の體質性格の子孫につたはるもの。
のこれる害毒。漢書、董仲舒傳「其──餘烈、至今未滅」
前人ののこしおけるとく。諸葛亮、出師表「以光先帝──」
小便をもらす。=遺溺。
小便をもらす。史、太倉公傳「病見寒氣則──、灸其足蹷陰之脈左右各一所、卽不──」=遺尿。
死後に財物を畱め置く、俗にいふかたみ。水滸傳「自父親將危之日、存付二錠蒜子二十兩、與哥哥爲──」
わすれる。周禮、秋官、司剌「三宥曰──」(宥は罪過をゆるす)=忘卻。
後世にのこれるほまれ。晉書、后妃傳「后承前訓、奉述──」
かたみとして畱めたるかみのけ。
のこれるのり。詩經、疏「衞有康叔之化其──」
前人ののこしたるあやまり。宋書、周朗傳「今魏晉──、猶布于民」
○古よりの風化、昔のおもかげ。宋書、謝靈運傳論「──餘烈」=餘風。○疾 ハヤ き風。五襃、聖主得賢臣頌「追奔雷、逐──」○千里の馬。呂覽、本味「馬之美者、靑龍之匹、──之乘」
父の死後に生れたる子。史、李將軍傳「李當戶有───、名陵」注「當戶、李廣長子名」單に遺腹ともいふ。史、趙世家「趙朔妻有遺腹」
死者ののこしたる品、かたみ。
前人ののこせるいかり。傅亮文「祖宗──、雪于一旦」
○道におとしたる稻たば。詩、小雅「彼有──、此有滯穗」○轉じて前人の著述等に漏らしたる事柄「荀子──」
むかしよりのこれる弊害。拾遺記「漢興維六國之──」
大臣などが死に臨みて君主にかきつけを奉る。又其のかきつけ。宋史、趙普傳「劉詞卒、──薦普於朝」=遺疏·遺摺。
前人ののこしおける書物。舊唐書、章懷太子傳「往聖──咸窮壺奧」=遺著。
○いきのこれる人民。=遺黎。○亡國の人民。○前朝の臣民にして義を守り新朝に仕へざる者。
死にのぞみ遺言していひつける。
○先帝に仕へたる老臣。漢書、劉向傳「蒙漢厚恩、身爲宗室──」○前朝より生きのこれる老人、亡國の舊臣。晉書、徐廣傳「廣收淚而言曰、君爲宋朝佐命、吾乃晉室──」
○うちすてる、なげやりにする。十八史略、東漢紀「──世事」○ぬける(脫)武帝內傳「無一字──」=脫落。
取りのこされたる利益。漢書、食貨志「地有──、民有餘力」
のこりとどまる。春秋序「舊史遺文」疏「史記已沒、策書──、故曰遺文」
死せし戶主の遺產中、法定の家督相續人、其の他法令に規定せられたる人へ遺畱すべきものと定められたる部分。
生きのこれるやから。史、高祖紀「襄城無──皆阬之」
遺民に同じ。
前人ののこしたるいさを。梁肅、梁高士碣「乃刋貞石、以識──」
おとしもらす。=遺脫。
①イツ [質]
②シュツ [質]
①したがふ(循·遵)○のぶ(述)○ここに。發語の助辭。詩、大雅「─駿有聲」○─皇は往來の貌。
②よこしま(邪辟)正しからず「囘─」
後を追ひしたふ。
①ゴ [遇]
②ガク [藥]
①あふ(遇)偶然に出遇ふ。莊、達生「醉者─物而不慴」
②おどろく。=愕。○さかふ(逆)=噩。○ふる(觸)
ジュン [眞]
○したがふ、したがひよる(循)○事理又、法令に率 シタガ ひ行ふ、したがひまもる「─守」「─奉」中庸「君子─道而行」○よる、より沿うて行く。詩、周南「─彼汝墳」○のっとる(法)○ 俗 文牘の下に行ふを飭─といひ、上に承るを祇─といふ。
同訓異義
シタガフ 遵·順·從·隨·循·率·徇の別は順(二一八五頁三段)の條を見よ。
よりしたがふ。
○正しき道にしたがふ。書、洪範「無偏無陂遵王之義」○貴州の縣名。
むかしのままにしたがひよる。漢書、谷永傳「委任──、未有過政」
をしへにしたがふ。史、萬石君傳「上時賜食於家、必稽首俯伏而食之、如在上前、其執喪哀戚甚悼、子孫──亦如之」
したがひまもる。=遵奉。
法律規則にしたがふ。
したがひ守る。陸雲文「國家纂承、務在──」=遵守·奉遵。
俗 仰の通りかしこまる。
道にしたがひ志をやしなひ、時勢を見て言行をくらまし愚人の眞似 マネ をする。詩、周頌「於鑠王師、────」
したがひもちふ。漢書、韓延壽傳「爲吏民行喪嫁娶禮、百姓──」
ゼゥ·ネゥ ゼゥ [篠]
又、繞に作る
めぐる。めぐらす、かこむ(圍繞)熟語は繞(一五○一頁三段)參看。
同訓異義
メグル 遶·繞·環·囘等の別は繞(一五○一頁三段)の條を見よ。
めぐる。めぐらす。孟郊·韓愈聯句「脫實自開坼、牽柔誰──」
①セン [霰]
②セン [銑]
③サン [旱]
①えらぶ、よりわける、衆人中よりえらび拔きて官職に任ずる(銓官)又、其のえらばれし人「─士」「─手」○めぐりまふ(環舞)
②えらぶ(擇)えりわける、賢才をえらぶ。左、襄九「擧不失─」○古人の詩文をえりわけ集めて一書と成す「文─」○少─·─閒は須臾 シバラク
③かぞふ(數)算と音通。漢書、公孫賀傳「斗筲之人、何足─」○よわし。巽に通ず「─懦」
同訓異義
エラブ 選·撰·擇·簡·揀の別は撰(七八三頁三段)の條を見よ。
かぞへたてる。韓愈、何蕃傳「薦蕃名文說者、不可──」
國 歌をえりぬく。又其の歌。
しばらくのあひだ。呂覽「──食熟」=須臾·少選。
えらびて推擧する。後漢書、陳蕃傳「蕃與黃琬、共典──、不偏權富」
學校に定めし全科目中の一科若くは數科をえらびて學修する義。
鐵石をよりわける。
○官吏をえらぶことを掌る官、卽ち吏部の官。=選事。○官吏をえらび用ふる。
かしこき人をえらぶ。管子「四年──、以爲長」
えらびつかはす〔蘇軾、論積欠狀〕
官吏詮選の事をつかさどる官。=選官·選事。
士の秀でたる者。禮記「命鄕論秀士、升之司徒、曰──」
えらび出して次第する。儀禮、注「比──其才相近者也」
○官吏を選任する事を掌る。唐書、劉政會傳「以員外郞、主南曹──」=選官·選曹。○其の職事を喜びて選擇する。魯語「其爲──乎」
官にえらび試みる。後漢書、百官志「太常卿一人、天子每──、博士奏其能否」=揀試。
○よきけらいをえらぶ。史、孔子世家「魯哀公問政、對曰、政在──」○えりぬきたるけらい。
よりぬく役目の人。
よりぬきの上手。
えらびて官をさづける。陳書、徐陵傳「遷吏部尙書、陵以梁末以來、──失其所、於是提擧綱維、綜覈名實」
名勝の地を尋ねて遊ぶ。王惲詩「──尋泉石」
おそれて進まず。耎は弱。漢書、西南夷傳「議者──復守和議」=巽耎。
よわし。後漢書、西羌傳「公卿──」=巽懦·選耎·選蠕。
文選の中に在る詩の體。
えらぶ。孟、滕文公「──而使子、子必勉之」
えらびぬく。後漢書、伏湛傳「古者──諸侯、以爲公卿、是故四方囘首仰望京師」=拔擢·銓擢。
えらびおく。漢書、金日磾傳「平帝卽位、──師友」
よりぬく、選擇拔擢。漢書、田延年傳「──尹翁歸等、以爲爪牙、誅鋤豪强、姦邪不敢發」=簡拔。
堂を開きて戒を授ける所。傳燈錄「丹霞將應擧、道遇一禪客、曰、選官何如選佛、霞曰、選佛當往何所、曰、江西馬大師出世、此───也」
すぐりたる兵卒。史、信陵君傳「得──八萬人」
えらびもちふる。漢書、龔遂傳「──賢良、固欲安之也」=擢用。
善き人物をえらびぬく。又其のえらばれし人。
十分にえらびぬく。史、趙世家「以──擧賢、任官使能」=簡練。
セン [先]
迁は俗字
○うつる。うつす(移徙)物を移す。曲禮「先生書策琴瑟在前、坐而─之」場所をかへる、官職又地位をかへる。漢書、賈誼傳「誼超─、歲中至大中大夫」○のぼる(登)高き方に上る「累─」「升─」詩、小雅「─于喬木」○ゆく(之)○かはる。かへる(變易)あらためる(改)○とりかへる(交易)○國都をうつしかへる。左傳「季文子如晉、賀─也」○罪して放ち逐ふ、しまながしにする(貶謫)
同訓異義
ウツス 遷·移·徙の別は移(一三八三頁二段)の條を見よ。
遷徙に同じ。
うつりかはる。陸機詩「天道有──、人理無常全」
○しりぞく、逡巡 アトシサリ する。宋玉、神女賦「──引身、不可親附」○のびのびになる。=延引。
うつりかはる。李白詩「天地無彫換、容顏有──」戎昱詩「冠冕凄涼幾──、眼見桑田變成海」
天子が居所を他へうつされる。晉書、天文志「永嘉三年、熒惑犯紫微、太史令高堂冲奏、乘輿宜──」
つみせられて遠方に流されし者。通鑑、後晉紀「池州多──」注「以罪遷降外州者、其州人謂之──」
善にうつり惡を改む。王融、策秀才文「治曆明時、昭──之運、改憲勅法、審刑德之原」
天子の居所をかへうつされる。=遷幸。
みやうつし。
○うつりかはる。傅毅、舞賦「與志──」○人の死をいふ。漢書、外戚傳「勿──而不反兮」○ センゲ 高僧の死。大乘義章「菩薩後時──他土」
うつりかはる。後漢書、方術傳贊「不探精遠、曷感靈效、如或──、實乖玄奧」宋書、恩倖傳論「歲月──、斯風漸篤」
○黃鳥がひくき谷閒より高き木にのぼる。詩、小雅、伐木「伐木丁丁、鳥鳴嚶嚶、出於幽谷、遷于喬木」○轉じて官位の昇進に喩ふ。桓溫表「幽谷無──之望」
史記の著者司馬遷と、漢書の著者班固と。文中子「──而下、述作何紛紛乎」
官職をすすめる。樂昌公主詩「今日何──、新官對舊官」
うつる。うつす。=遷移。
此を捨てて彼を取り、強ひて合はんことを求める。賈誼、新書「尙──而爲之諱也」
心をうつしかへる。國語「死不──、彊也、守情說父、孝也」
うつりさる。死する。蘇軾詩「平生親友半──、公雖不怪旁人愕」
習俗にうつりそむ。後漢書、黨錮傳論「嗜惡之本同、而──之塗異」
罪により官を貶して遠地にやる。蘇頲詩「舊史饒──、恆情厭苦辛」=遷謫。
都をうつす。左傳「武王克商、遷九鼎於洛邑、義士猶或非之」=定鼎、遷都。
うつす。うつる。魏志、倉慈傳、注「顏斐爲京兆太守、風化大行、於是吏民更恐其──也」=移轉。
やつあたり、甲のいかりを乙にうつす。論、雍也「不──、不貳過」
都を他にうつす。尙書、孔傳「自湯至盤庚、凡五──」
①リン [震]
②リン [眞]
①なやむ、かたんず(難)はばかる。○むさぼる(貪)古、吝と通ず。漢書、魯恭王傳「晚節─、惟恐不足于財」
②えらぶ(選)謹みて選ぶ、比べて選ぶ。
人才をえらぶ。遴も選。金史、陳規傳「──學術該博、通曉世務、骨鯁敢言者、以爲臺諫」
レゥ [蕭]
○はるか、とほし(遠)距離又時閒が長い「前途─遠」○川の名、直隸·奉天を經て海に入る、漢代─東·─西二郡を置く。○朝代の名、姓は耶律氏、初、契丹と名づけ、熱河に居る。後梁の時、阿保機帝を稱し、國を─と號す、其の境域東日本海に至り、西天山に及び、內外蒙古を包み直隸山西の北境に及ぶ、九帝二百十年にして金に滅ぼさる。
とほくはるか。阮籍賦「釋──之闊度兮」=遼遠。
はるかにとほし。左傳「楚師──、糧食將盡」=遼遙·迢遠。
はるかにへだたる。潘岳賦「眷故鄕之──」
はるかにひろし。張均詩「水國何──」=遼廓。
遠くひろびろとする。淮南子「通二性於──」=曠遠·遼落。
はるかにへだたる。李商隱詩「天池──誰相待、日日虛乘九萬風」
はるかにとほし。西征賦「人度量之乖戾、何相越之──」王禹偁詩「吹簫事──仙迹難尋求」=迥遼·遐迥。
百十六卷、元の托克托等撰す、考證すべき史料乏しかりし爲めに、疎略多しと爲す。
遼東豕を見よ。
郡名、秦代に置く、今の奉天の東南境、遼河の東に在り、故に名づく、渤海·黃海の閒に斗出す、今──半島と稱す。
人自ら其の功に誇るも、他人より之を見れば、異とするに足らざる喩。後漢書、朱浮傳「朱浮責彭寵書曰、伯通自伐以爲功高天下、往時遼東有豕、生子白頭、異而獻之、行至河東、見羣豕皆白、懷慙還、若以子之功、論於朝廷、則爲───也」(伯通は寵の字)
遼東の人丁令威、仙術を修し鶴に化して天に升りしといふ故事。丁令威化鶴(二一頁四段)參看。
漢末、魏の管寧が淸節を守りて遼東に隱居し、常に皁帽 クロキバウシ を著けたりし故事〔魏志、管寧傳〕文天祥、正氣歌「或爲───、淸操厲冰雪」
はるかなるを嘆ずることば。蘇軾詩「──千載後、發我一笑粲」
はるかに遠し。陸游詩「山川──敝衣裘」
小兒の啼を止むるにいふ、れろれろ。魏志、張遼傳「遼武力過人、數有戰功、累轉前將軍、舊注曰、江東小兒啼、怖之曰────、無不止者」
遼廓に同じ。世說「江山──、居然有萬里之勢」
はるかに遠き貌。劉向、九歎「山修遠其──兮」
13畫
エゥ [蕭]
○むかふ。○まちまうける、遮 サギ へる「─擊」徼·要に通ず。○まねく(招)「招─」李白詩「擧杯─明月」○もとむ(求)叨 ミダリ に求め受ける「─恩」「─賞」
同訓異義
ムカフ 邀·向·迎·迓·逆の別は向(三○六頁四段)の條を見よ。○モトム邀·求·干·需·要等の別は求(一○四五頁四段)の條を見よ。
招きむかへる。韓愈詩「官租日輸納、村酒時──」
功をたてんとむかへ求める。王維詩「單車曾出塞、報國敢──」
むかへうつ。=要擊。
まちうけしてきる。唐書、李石傳「將朝、騎至親仁里、狙盜發射、石傷馬逸、盜──之坊門、絕馬尾、乃得脫」
むかへまねく。=招邀。
敵兵をむかへうつ。魏志、劉放傳「欲──之」=邀擊。
カイ [卦]
─逅は思ひがけなくめぐり合ふ、期せずして出遇ふ。
期せずしてめぐりあふ。詩、鄭風「有美一人、淸揚婉兮、──相遇、適我願兮」
キョ [御]
○にはかに(卒)あわてる、うろたへる。左、僖一一四「公─見之」○すみやか(急·疾)いそがし。○おそれをののく(戰慄)左、襄三一「豈不─止」○くるしむ(窘)○しゅくつぎ(驛遞)しゅくばの人夫。又、其の車馬。左、僖三三「且使─吿于鄭」
同訓異義
イソガハシ 遽·忙·閙·怱·急の別は忙(六三九頁一段)の條を見よ。○ニハカ遽·俄·驟·暴·頓·卒·猝○遽は速かなる意、あわていそぐこと、疾言遽色と用ふ。唐鑑「遽使レ殺レ之」○俄は須臾也と註し、俄頃と連用す、まもなくなり、唐高宗紀に「上在二萬年宮、一夜大水、上遽出乘レ高、俄而水入二寢殿一」とあるにて、遽·俄二字の別明かなり。○驟は物の急に來るなり·驟雨と熟す。玉露「無レ所二涵養、一驟膺二拔擢一」○暴は猝也、急也、驟也と註す、物の思ひがけなく、突然急に來るなり、人の頓死を。暴死といふ。史記「風雨暴至」○頓は漸の反にて、次第なく、すみやかなるなり、暴に近し。歐文「舊茶稅盡、新茶不レ登、則頓虧二國用一」○卒·猝の二字、同じ、卒爾なり、急遽の意、暴·頓二字に近し、倉卒と熟す。卒起二不意一また其弊未レ可二猝除一の如し。
○しゅくばの人夫。國語「──來吿」=驛卒。○命を傳ふる使者。列子「使──謁之」
あわてたるかほいろ。後漢書、劉寬傳「雖在倉卒、未嘗疾言──」
いそぎてあゆむ。唐書、婁師德傳「師德、素豐碩不能──」
①クヮン·ゲン [删]
②セン [先]
①かへる(歸)もどる、往きて復 マタ もとへ囘る「生─」「往─」「凱─」かへす(復)○しりぞく(退)○かへりみる(顧)ふりかへる。左、昭二十「無所─忌」○つぐなふ(償)持主にかへしやる「償─」「賠─」「返─」○かへりて(卻)それに反して。後漢書、公孫淵傳「盡忠竭節、─被患祻」○ふたたび。○めぐる(遶)めぐらす。漢書、食貨志「─廬樹桑」=環。
②すみやか(速)擧動が便捷なる貌。詩、齊風「子之─兮」○すなはち(卽)○めぐる、めぐらす。=旋。○また(又)多く詩に用ふ。魏徵詩「中原─逐鹿」
同訓異義
カへル 還·歸·反·返·復·囘·旋の別は歸(一○一六頁二段)の條を見よ。○マタ還·又·復·亦·有·也の別は又(二九○頁三段)の條を見よ。
俗 人の答書をいふ。唐の韋陟の故事に本づく。五雲(八○頁二段)參看。
天子が行幸先よりおかへりになる。=還御。
へんじの手紙。梁書、何胤傳「矯首──、慰其引領」=答書。
かへりみていみはばかる。左、昭二十「肆行非度、無所──」注「還猶顧也」=顧忌。
ふるさとにかへる。南史、劉之遴傳「令卿衣錦──、盡榮養之理」=歸鄕。
還幸に同じ。
皇太后·皇后·皇太子などの行啓先よりおかへりになる。
○もとへもどす。もとへもどる。○酸素をふくむ化合物より酸素の總量又は其の幾分を去る。
死者がよみがへる。泊宅編「開封解榜出、廖復被黜、訴有司不公、重考取已落者七十餘人、時號──秀才」
すきがへしの紙。天工開物「隨手拾取再造、名曰───」
車をかへす、軫は車後の橫木。國語「──諸侯可謂窮困」=囘車。
もどり車。酉陽雜俎「因──致副書」
あたひをつぐなひはらふ。後漢書「買人田、不肯──」
品物を其の持主にかへす。
國 六十一歲。干支が再びもとにかへる義。=華甲。
かへりみち。謝靈運文「長圍咸陽、──已絕」=歸路。
僧尼が元の俗人にかへる。宋書、徐湛之傳「世祖命使──」
かかとをめぐらす、旋踵に同じ。極めて速かなるに喩ふ。漢書「雖有彊國勁兵、不得──而身爲禽」
旋風 ツムジカゼ に同じ。易稽覽圖「──者、善令還也」注「還、暴也」
①テン [先]
②テン [霰]
①迍─ チユンテン ─如 テンジヨ はたちもとほる、行きなやみて進まざる貌。
②おふ(逐)○めぐる(轉)逐はれてさまよふ。劉向、九歎「─彼南道兮」
行き難 ナヤ む貌。楚辭「下江湘以──」=邅廻。
行き難 ナヤ みて進まざる貌。易、屯卦「屯如──」
ヒ [寘]
古、辟に通用す
○さく、よける「─暑」「─亂」「─雷針」「─三舍」孫子「水之形、─高而趨下、兵之形、─實而擊虛」○にげかくれる(隱遁)そらしてかくれる「遁─」「逃─」史、藺相如傳「望見廉頗、引車─匿」○ひきかへしよける「廻─」○しりぞく(退)
ささはりを、とりのける。揚雄文「水──則通于海」
さむさをさける。又其の爲めに暖地に移住する。
穀食を避けて仙術を修める。鄴侯家傳「旣能辟穀、每導引、骨節珊然、人謂銷子骨」(辟は避)
わざはひをさける。國語「廣川之鳥獸、恆智而避其災也」
秦の苛政を避ける。桃源(九四三頁四段)を見よ。
あつさをさける。班固、扇詩「來風堪──、靜夜致淸涼」
あつさを避ける爲めのさかもり。初學記「劉松與袁紹子弟日共宴飮、常以三伏際、晝夜酣飮極醉、以避一時之暑、故河朔有────」=河朔飮。
暑を避けん爲めの會。開元遺事「長安富豪之子、每至暑伏中、各於林亭、植畫柱、以錦綺結爲涼棚、設坐具、爲────」
水害をさける。陸游詩「人家──半危樓」
世と交ることを欲せずして避け隱れる。易、遯卦、疏「相時度宜、──而遯」=辟世〔論、微子〕
さけかくれる。史、藺相如傳「望見廉頗、引車──」
災難 サイナン を避けて他所に立ち退く。
あつさをさける。杜甫詩「──時來歸、問兒所爲迹」
そしりをさける。唐書、陸贄傳「贄旣放荒遠、常闔戶、人不識其面、又──不著書」
傳染病患者を容れる病院。
漢の成帝の築きしうてな。飛燕外傳「飛燕身輕不勝風、帝爲築七寶───」飛燕は成帝の皇后趙氏の號、體輕くして歌舞に妙なり。
落雷のわざはひをさける。孟奧、西征記「有白石室、名──臺」
落雷の災を避ける爲めに屋上に立つる金屬の棒。
マイ [卦]
○ゆく(往)遠く行く。詩、小雅「我日斯─」○すぐ(過)さる(去)月日がたつ。書、秦誓「日月逾─」○おゆ(老)「老─」○つとめはげむ(勇往力行)書、大禹謨「皋陶─種德」○天子が時を以て巡行する。詩、周頌「時─其邦」○──は顧みざる貌。詩、小雅「視我──」
はげみすすむ。=勇進·邁往。
すぐれる。晉書、王導傳「惟公──冲虛」
つとめてとくを修める。傅休奕、樂府「二帝──、宣茲重光」
はげみ進む。=邁進。
14畫
ジ ニ [紙]
通じて爾に作る
○ちかし。ちかづく(近)「密─」○近き所「遐─」「遠─」中庸「行遠必自─」=爾。○卑近にして俗に通じ易し「─言」
同訓異義
チカシ 邇·近の別は近(一九三九頁一段)の條を見よ。
○俗に通じ易き卑近のことば、淺近の言。中庸「舜好問而好察──」○書名、十二卷、宋の劉炎撰す、其の言篤實にして事理に切近し、迂僻不情の論なし。
學問の道は之を己の身に本づくべし、故に甚だ近し。而るに人反りて之を外に求む、これ遠きなり。孟、離婁「道在邇而求諸遠」
スヰ [寘]
○深く遠し、おくぶかし「幽─」「深─」○學問道理などが精しくして深し。唐書、韋夏卿傳「少─於學」
同訓異義
フカシ 邃·深·浚·濬の別は深(一一○二頁二段)の條を見よ。
おくぶかき家屋。宋玉、招魂「高堂──、檻層軒些」
おくぶかきふち。李洞文「委蛇下沈──」
ふかくさとる。唐書、貴妃楊氏傳「善歌舞、──音律」
おくぶかく、おごそか。宋史、樂志「廟楹──、夜景藻淸」
おくぶかき門戶。謝朓文「因閽寺以傳請、排──以重深」
おほむかし。蔡邕文「仰──、輝昆後」=遂古·太古·遠古。
おくぶかし。劉克莊詩「江亭俯虛曠、穴室窮──」=深邃。
おくぶかくきよし。宋史、樂志「賓坐旣興、鳳輿戒行、奏解嚴辯、歸燕──」
おくぶかくしてくはし、精深細密。朱熹詩「舊學商量加──」
ふかくしてさかんにすぐれる。陸機文「德量──、才鑒淸遠」
バク ミャク [覺]
本、?に作る
○とほし(遠)はるか(渺)「曠─」「遼─」○かろんず、あなどる。輕視する貌。陸機、謝平原內史表「顧─同列」註「─、凌也」藐と通ず。○しのぐ(凌)○──は悶 モダ えうれふる貌〔爾雅〕又、遠き貌。楚辭「神高馳之──」
遠くへだたる。矣は助字。西征賦「古往今來、──悠哉」
はるか。蔡邕文「超哉──、莫參其二」
○はるかなる貌。司馬相如、封禪文「軒轅之前、遐哉──、其詳不可得聞已」○人を疎 ウト んずる貌。韓愈、與陳給事書「──其容、若不察其愚也」
遠大なるこころざし。唐武后樂章「──逾殷」
15畫
ヘン [先]
邉は誤字辺は俗字
○ほとり(畔)「岸─」「池─」「道─」「河─」「海─」○かたはら(側)○あたり、そば(近傍)「近─」○くにざかひ(國境)「─境」○ゐなか、かたほとり「─邑」○きし(畔岸)○はて、かぎり、一方面。○衣の緣 ヘリ の飾。○つづく(接)となりあってゐる。漢書、高帝紀「齊─楚」○數學にて多角形をとりまく線「等─三角形」
國のはてにゐるえびす。
かたゐなかのしゅくば。耿湋詩「落日──靜、秋風鼓角喧」
くにざかひの地。陸雲文「或生夷狄、或在──」
國の片ほとりにあるむら。禮、玉藻「在其──」
くにざかひのはて。隋書、煬帝紀「盜者百餘人、投之──」
國のほとりをまもるえだち。後漢書、和帝紀「詔曰、幽·幷·涼州、戶口率少、──衆劇」
遠き國境の地。陳琳文「恐──州郡、過聽而給與」
國境の地を安んじ定める。漢書、趙充國傳「選擇良吏知其俗者、拊循和輯、此全師保勝──之策」
國境にて外敵に備へるいましめ。=邊警。
くにざかひ。晉書、殷仲堪傳「必使──無貪小利、強弱不得相陵」
國のはてに在る海。
かぎり、はて。元好問詩「是時春夏交、紅綠無──」
邊土に居る豪傑。唐書、薛擧傳「好結納──、爲長雄」
邊守に同じ。宋書、氐胡傳「不顧孝道陳力──、竭忠盡誠、未爲朝廷所識」
國境を守る委任。宋史、眞宗紀「任──者二人」
○邊境を守備する騎兵。漢書「發惡少年及──」○邊境を犯す敵の騎兵。宋史「靖康元年、詔神臂弓馬黃弩、乃中國長技、宜多行敎習、以扞──」
くにざかひ、垠はかぎり。蘇軾詩「蹭蹬阻風水、橫斜挂──」=邊界。
くにざかひ。史、文帝紀「漢與匈奴結爲兄弟、母使害──」=邊竟·邊陲。
くにざかひ。杜甫詩「念我荷戈士、窮年守──」=邊陲。
くにのはて、圉は垂 ホトリ 魏了翁詩「募耕實──」=邊疆。
國境と接する外國との和親。
外敵が國境を侵すうれひ。北史、裴矩傳「由是數爲──」
國境に在る關所。史、汲鄭傳「闌出財物于──」=塞關。
國邊をまもるはかりごと。高適詩「立談有──」=邊籌。
邊境に於ける敵國侵入の警報。陳書、武帝紀「方隅多難、公以國盜──、知無不爲」
邊塞に同じ、徼はとりで。駱賓王詩「海霧籠──、江風遶戍樓」
邊土を照す月。李白、塞下曲「──隨弓影、胡霜拂劍花」
國境の地に於けるいさを、えびすを平げたるいさを。唐書、姚崇·宋璟傳贊「崇勸天子不求──、璟不肯賞邊臣」
えびすが國境を侵す。漢書、匈奴傳「爲──」
かたほとりのくに。論語義疏「──之人」
水べりのすな地。何遜詩「天暮遠山靑、潮去──出」
くにざかひにあるえびすをふせぐとりで。又、夷狄に近きくにざかひの地〔史、三王世家〕=邊壘·邊徼。
かぎり、はて。孟浩然詩「水國無──、舟行共使風」=際涯。
かたよりたる北方の地。謝靈運詩「季秋──苦、旅鴈遠霜雪」=朔北。
邊土より來るつかひ。張籍詩「無因見──、空待寄寒衣」
かたゐなか。柳貫詩「得結數十輩、參錯置──」=邊陲。
邊鄙のはてにさすらひ居るうれへ。杜審言詩「遲日園林悲昔遊、今春花鳥作──」
國境の夷狄を攻めるけらい。邊功參看。
國境に在るしろ。戰國策「衝櫓不施、而──降」=邊塞。
國境をまもる將軍。えびすを征する將軍。後漢書、陳龜傳「家世──、便習弓馬、雄于北州」=邊帥。
くにざかひのとりで。唐書、劉昌傳「墾田三年、軍有羨食、──妥寧」=邊塞。
邊境のまもり。後漢書、龐參傳「昔孝文皇帝、悟馮唐之言、而赦魏尙之罪、使爲──、匈奴不敢南向」=邊戍。
國境のまもり。又、其の人。劉商詩「山川萬里復──」
くにのはて。左、成十三「芟夷我農功、虔劉我──」=邊陲·邊境。
邊將に同じ。
邊垂に同じ。薛道衡詩「威略振──」=邊疆·邊陬。
國境にて非常をしらせるのろし。魏書、肅宗紀「虔貢雖違、──靜息」=邊警。
かたゐなか。王融詩「寸心無遠近、──有風霜」=邊土·邊境·邊陲。
邊境に關するはかりごと。劉克莊詩「郞君今復贊──」=邊計。
くにざかひのまもり。張說詩「──戍歌連夜動」
かたゐなか。高適詩「山川蕭條極──」=邊地·邊陬。
はてなし、限りなく廣し。起世經「一切諸天、行時來去、──無礙、無有遲疾」
國境のまもり。唐書、兵志「兵之戍邊者、大曰軍、小曰守捉、曰城曰鎭、而總之者曰道、此自武德至天寶以前、──之制」=邊守。
くにざかひのそなへ。=邊守·邊防。
かたゐなか。左、襄四「──不聳」=邊邑。
布帛のへり。轉じて、外貌の義。後?書、馬援傳「反修飾──、如偶人形」
邊境に居るたみ。後漢書、鄧訓傳「撫接──、爲幽部所歸」
くにざかひにあるとりで。舊唐書、宣宗紀「左衽輸款、──連降」=邊塞。
レイ [齊]
○おそし(徐)○徐行する貌。○ 國 ねる、徐行する「─物」
レフ ロフ [葉]
○くじく(搚)○ゆく(邁)○──は旌旗の動く貌。
16畫
邈(辵部十四畫)の本字。
19畫
ラ [箇]
○めぐる、みまはる(巡)巡察する「巡─」○みまはり(游偵·巡查)「警─」「游─」「偵─」「候─」○とりまく(環繞)山などが取りかこむ。
みはりをする騎兵。史、匈奴傳「候騎至雍甘泉」注「候騎、──」
みまはりする兵。唐書、康承訓傳「遣──、羸服覘賊」=邏卒·巡兵。
○みまはりの兵卒。唐書、溫庭筠傳「醉爲──、擊折其齒」○ 國 巡查の舊稱。
リ [紙]
つづく、めぐる、つらなる(連延)「迤─」
つらなる貌。許有壬詩「遠山來──、羸馬去逡巡」=邐迆。
道路の高下曲直相閒 マシハ る貌。班固、西京賦「磴道──以正東」