毋部
0畫
クヮン [寒]
○橫に穿ちて之を持つ。○貫に通す。○─丘は地名。
①ブ·ム [虞]
②ボウ [尤]
毋(前條)とは别
①なかれ(勿)禁止の辭。曲禮「─不敬」○なし(無)論、子罕「─意─必」○將─·─乃と連用する時は發問の詞、己の意を以て之を斷じて未だ敢て其の必然を決せざるなり。
②─追は夏の世の緇布冠の名。
同訓異義
ナシ 毋·無·靡·无·罔·兦·莫·勿·沒の别は無(火部八畫)の條を見よ。
望まずして忽ち至る幸、もっけのさいはい。史、春申君傳「朱英謂春申君曰、世有────、又有毋望之禍、今君處毋望之世、事毋望之主、安可以無毋望之人乎」戰國策には毋望を無妄に作る。
人世の事は禍福常なきをいふ。前條參看。
1畫
ボウ モ [有]
○はは、ははおや「父─」「慈─」「生─」○轉じて物の由りて生ずる本の義とす、─財は元金、子財は其の利子金。酵─·酒─は酒をかもす料のもと。○女子の尊長の稱「叔─」○うば、めのと(乳母)○禽獸の牝 メス 「─雞」
次條に同じ。
文法にて單純なる發音。父韻と結合して子韻を生ずる音。=母音。
國 己の出身せし學校。
鑛脈を含有する岩石。
母たる人のてほん。後漢書、皇后紀「好禮節儉、有──之德」=母範。
同じ腹から生れしあに。公羊傳「──稱兄」白居易詩「──未開口」=同母兄。
母が子女を敎育するをいふ。易林「失持──」
皇太后。三國志「魏因漢法、──之號皆如舊制」
國 ○分れ出たる或一國から其のもとの國を指していふ稱。○海外に居て其の生國を呼ぶ稱。=本國。
もときん。=母錢·本錢·元金。
○ははと、こと。左、隱元「遂爲──如初」○元金と利息と。=元利。
はは。詩、邶風「──聖善」
反切(二九二頁三段)の第二字。
もときん(元金)利子を子錢又息錢といふの對。宋史、杜衍傳「州郡闕──、願出官帑助之」
國 他人の母を呼ぶ尊稱。=北堂。
母たる道。漢書、王莽傳「后誼明──、得溫和慈惠之化也」
ははかたの親類。
同じ腹から生れしおとうと。漢書、季布傳「──丁公」=同母弟。
母儀に同じ、範はのり。宋史、后妃傳「內助之賢、──之正」
同じ腹から生れしいもうと。資治通鑒、唐紀「──者、李惟誠同母之妹也」=同母妹。
國 ○昔の武具の一、馬上にて背に負うて矢を防ぐもの。○馬車·人力車などの雨よけのおほひ。=幌。
3畫
アイ [贿]
おこなひあし(人無行)みだらなる品行。一說に秦の嫪─ キウアイ が始皇の母と淫せしを以て誅せらる、故に淫者を罵りて嫪─と曰ふ。
①バイ·マイ [賄]
②バイ·マイ [灰]
①つね、つねに(常)諸葛亮、岀師表「─與臣論此事」○ごと、ごとに、其のつど。莊、知北遊「─下愈況」○おのおの(各)○およそ(凡)○いへども(雖)詩、小雅「─有良朋」○むさぼる(貪)冒の轉音。
②かず(數)○──は田美くし。又草が盛んに生ずる貌。
同訓異義
ツネニ 每·常·恆·雅·庸·彝の別は常(巾部八畫)の條を見よ。
每次に同じ。
おもふたびに。詩經「──靡及」
つきごとに、月月。每日·每夜·每年·每歲等も同例〔北魏書、范紹傳〕
其のたび每に、其のつど。=每度·每囘。
生命をむさぼりていきながらへんことを願ふ。漢書、賈誼傳「衆庶──」
俗 每日。
每次に同じ。王建詩「──報朝愁入閣」
○つねづねに、いつもいつも。莊、胠篋「天下──大亂」○草の盛んに生ずる貌。左、僖二八「原田──」一說に田の美くしき貌。
4畫
①トク·ドク [沃]
②トク [屋]
①あし(惡)○そこなふ(害)「─害」○物の人を害する者「─藥」「─蛇」「─霧」「梅─」「病─」○─を物に置く。○─を人に飮ます。どくを物に入れる。左、襄十四「秦人─涇上流」○いたむ(痛)○くるしむ(苦)○うらむ(恨)「憤─」「怨─」○をさむ(治)○亭─はそだてる(化育)老子「亭之─之」○つかふ(役)易、師卦「以此─天下而民從之」○あしきこと。あしきもの。
②天─又、身─は天竺 テンヂク 卽ち今の印度の古名〔漢書、張騫傳〕
はなはだわるし。=兇惡。
どくを含めるしる。=毒汁。
かみつきて毒液を注ぎこむきげ、毒獸の牙。
○いためそこなふ。梁武帝勅「口稱慈悲、心懷──」○毒藥にて人を殺す。後漢書、馮豹傳「欲行──」=毒殺。
どくあるまむし。唐書、地理志「舒州桐城地、多猛虎──」=毒蛇·毒蝮。
人を害するあしき氣。漢書、王莽傳「無復──」=毒瘴。
そこなひしへたぐ。龍城錄「以──弄正權」
なやみくるしむ。晉書、石季龍載記「遊蕩無度、尤善彈數彈人、軍中以爲──」
人を誹り傷つくることば。
人を病害する蟲など。周禮、庶氏「掌除──」
毒を含めるくさ。藥草の對。
毒をつけたるほこ。酉陽雜俎「南蠻有──、無刃狀如朽鐵、中人無血而死」
毒藥を飮まして殺す。元史、世祖紀「──雲南王」=毒害。
どくを鏃 ヤジリ にぬりたるや。韓愈文「彊弓──」=毒箭。
蜂などの尾端に在りて物を害する針の如きとげ。又、すべて害をなすもの。梁簡文帝文「──爭興、惡虵競起」
わろきけもの。道德指歸論「蠧蟲不作、──不生」
凶行者のやいば。
どくの有るへび、人をかみて危害を與へるへび、まむし。北史、陸俟傳「諸君不見──乎」
害をなすあしき氣。杜甫詩「─丨未足憂、兵戈滿邊徼」=毒氣·瘴氣。
○人を害するわる者の手。=兇手。○憎むべきわるだくみ。
毒藥を入れたるさけ。列、湯問「扁鵲遂飮二人──」
甚だしきあつさ。白居易詩「驕陽連──」=酷暑·毒熱。
のみて害あるみづ。庾信詩「翻疑承──、忽似遇昌葅」
毒蟲にかまれる。左思賦「昆蟲──」
人を害しそこなふ言を吐くくちまへ、ざんげん。
毒矢に同じ。
どくむし。老子、十五章「──不螫」
はげしくあつし。杜甫詩「開州入夏知涼冷、不似雲安──新」=毒暑。
人をそしりきずつける文章。
女のわるもの。=惡婦。
どくのあるまむし。癸辛雜識「或爲──所嚼」=毒虺。
どくあるをろち、有毒の大蛇。劉克莊詩「──噴時林盡黑」
毒氣をふくむきり。駱賓王詩「川原饒─丨、谿谷多淫雨」
○どくを含むくすり。韓非、內儲說「用──賊君殺之」○藥種の一、中毒作用の極めてきびしきもの。普通藥及劇藥の對。
9畫
イク [屋]
育の古字
○そだつ、やしなふ、はぐくむ「養─」說文「養子使作善也」○をさなし(稚)○郁─ イクイク は盛んに多き貌。