玄部

0畫

玄  

ケン ゲン [先]

○くろ、あかぐろ(赤黑色)天の色。易、坤卦「天─而地黃」○轉じてあめ(天)そら(天空)○かみ(上帝)○もと(樞極)○くらし(冥)○老子の說きたるみち「─學」○おくぶかき理、微妙の道理。○きよくしづか(淸靜)○─孫はやしゃまご(曾孫の子)○─酒は水〔家語、問禮〕○─黓 ゲンヨク は十干の壬 ミヅノエ の異名。○─月は陰曆の九月〔爾雅〕○かがやく。=炫。

【玄奧】 ゲンアウ 

おくぶかくしてはかられず。嘯賦「硏道德之──」

【玄衣】 ゲンイ 

黑に赤みを帶びたる色の衣。禮記「周人冕而祭、──而養老」

【玄雲】 ゲンウン 

くろくも。抱朴子「披──而揚大明」

【玄英】 ゲンエイ 

ふゆ。爾雅「冬爲──」

【玄遠】 ゲンヱン 

おくぶかく遠し。言論などの淺薄ならざる義。晉書、阮籍傳「籍雖不拘禮敎、然發言──、口不臧否人物」

【玄翮】 ゲンカク 

くろきはね。墉城集仙錄敍「翺翔則翠羽──」

【玄學】 ゲンガク 

玄妙なる老莊の學。北史、羊烈傳「能言名理、以──知名」

【玄鶴】 ゲンカク 

老鶴をいふ。古今注「鶴千歲則變蒼、又二千歲則變黑、謂之──」

【玄甲】 ゲンカフ 

くろ色のよろひ〔史、霍去病傳〕

【玄閒】 ゲンカン 

空中、天空〔韓愈、雜說〕

【玄鑑】 ゲンカン 

玄妙なる鏡。人の心の形容。淮南子「誠得淸明之士、執──於心、照物明白、不爲古今易意」

【玄旗】 ゲンキ 

黑くして赤みをおびたる色のはた。淮南子「天子服蒼玉、建──」

【玄機】 ゲンキ 

おくぶかき道理、深奧の妙諦。張說詩「金爐承道訣、玉牒啓──」

【玄穹】 ゲンキユウ 

上天をいふ、玄は其の色。張華詩「高冠拂──」=玄天。

【玄虛】 ゲンキヨ 

奧ぶかくしてむなし、虛無にして無爲、老莊の學をいふ。

【玄玉】 ゲンギヨク 

黑色の玉。禮、月令「孟冬之月、天子衣黑衣服──」

【玄駒】 ゲンク 

○蟻 アリ の異名〔大戴禮〕○小さき馬〔爾雅、釋畜〕○黑き鯉の異名〔古今注〕

【玄訓】 ゲンクン 

おくふかきをしへ。張衡賦「仰先哲之──兮」

【玄華】 ゲンクワ 

髮をつかさどる神。海錄碎事「髮神曰──」

【玄黃】 ゲンクワウ 

○くろき天の色と黃なる地の色と。易、文言「夫──者、天地之雜也、天玄而地黃」○黑と黃との幣帛。書、武成「篚厥──」○馬の病める義、黑馬が病めば黃色を帶ぶ。詩、周南「陟彼高岡、我馬──」

【玄曠】 ゲンクワウ 

ふかくむなし。陸機詩「邁心──、矯志崇邈」

【玄關】 ゲンクワン 

○玄妙なる道にすすむ門戶。頭陀寺碑「──幽鍵、感而遂通」○居宅の門。岑參詩「林下閉──」○ 佛  禪寺にて客殿に入る門。○ 國  家の正面の入口。

【玄敎】 ゲンケウ 

おくぶかき老莊のをしへ。李咸用詩「曾聞──在知常」

【玄玄】 ゲンゲン 

甚だ深遠なる貌。蔡邕文「仰之若華嶽──焉」玄之又玄を見よ。

【玄元皇帝】 ゲンケンクワウテイ 

唐代、老子に奉りし尊號。

【玄悟】 ゲンゴ 

深くさとる。楞嚴經「於精明中──精理」=深悟。

【玄根】 ゲンコン 

道家の說にて道の本をいふ。李白文「參──以比壽」

【玄袞】 ゲンコン 

天子の服する黑色の衣。詩經「──赤舄」

【玄旨】 ゲンシ 

○おくぶかきむね。張蠙詩「靜室談──、靜宵獨細聽」○老莊の深奧なる道理。

【玄識】 ゲンシキ 

おくぶかきかんがへ。魏都賦「先生──、深頌靡測」=妙識。

【玄漆】 ゲンシツ 

くろきうるし。元史、祭祀志「匱趺竝用──」

【玄津】 ゲンシン 

佛のをしへ。頭陀寺碑「釋網更維、──重枻」註「釋網、──竝佛法也」

【玄針】 ゲンシン 

おたまじゃくしの異名。古今注「蝦蟇子、曰科斗、一曰──」

【玄弉】 ケンジヤウ 

唐の名僧、姓は陳氏、河南洛陽の人、貞觀三年、天竺に遊び、廣く異本を求めて之を參驗し、居ること十七年、百餘國を經、西域記十二卷を撰す。

【玄氅】 ゲンシヤウ 

くろきけごろも。宋濂詩「山分秋色侵──」

【玄裳縞衣】 ゲンシヤウカウイ 

くろき色の下衣 ハカマ と白き色の上衣、鶴の形容、轉じて鶴の異名とす。後赤壁賦「翅如車輪、────、戛然長鳴」

【玄酒】 ゲンシユ 

水の異名、太古酒なく祭の時、水を以て酒に代へたる故。

【玄珠】 ゲンシユ 

道家にて、道の本體に名づけていふ。莊、天地「黃帝遊于赤水北、登崑崙之丘、西南望還歸、遺其──」

【玄術】 ゲンジユツ 

おくぶかきみち。晉書、佛圖澄傳「少學道、妙通──」

【玄稷】 ゲンシヨク 

くろあは。漢書、宣帝紀「嘉穀──、降于郡國」注「──黑粟也」

【玄聖】 ゲンセイ 

○極めてすぐれたるひじり。後漢書、王充等傳論「──御世、則天同極」○孔子をいふ。班固、典引「故先命──、使綴學立制」注「──孔子也」

【玄靜】 ゲンセイ 

至りてしづか。晉書、夏侯湛傳「海內無虞、萬國──」

【玄寂】 ゲンセキ 

おくぶかくしづか。方干詩「若把重門諭──、何妨善閉卻無關」

【玄孫】 ゲンソン 

ひひまご、孫の孫。爾雅「曾孫之子爲──」

【玄濤】 ゲンタウ 

くろきおほなみ。郭璞詩「丹泉漂朱沫、黑水鼔──」

【玄端】 ゲンタン 

周代の朝服、端は正、正服なり。禮、玉藻「朝──、夕深衣」

【玄談】 ゲンダン 

おくぶかき黃老の道の話。李白詩「淸論旣抵掌、──又絕倒」

【玄通】 ゲンツウ 

おくぶかき理に通ずる。老子「微妙──、深不可識」

【玄鳥】 ゲンデウ 

 ツバメ の異名。禮、月令「仲春之月──至」

【玄天】 ゲンテン 

○北方の天〔淮南子〕○ひろく天をいふ。魏書「──高明、尙假列星以助明」=玄穹。

【玄菟】 ゲント 

郡の名、漢の武帝、朝鮮を滅して置く所、卽ち今の朝鮮咸鏡道及吉林の南境、もとの沃沮の地。

【玄冬】 ゲントウ 

ふゆの異名、五行說に冬は北方にして水にあたり、水の色は黑きが故。劉楨詩「自夏涉──、彌曠十餘旬」

【玄同】 ゲンドウ 

彼我の區別なく一っに混同する。文中子「無所喜、無所怒、萬物──」

【玄德】 ゲントク 

○おくぶかきとく、幽潛の德。書、舜典「──升聞、乃命以位」○天地の玄妙の理。老子「常知楷式、是謂──、──深矣遠矣」

【玄尙白】 ゲンナホシロシ 

玄は黑、なほ白きは未だ其の妙に至らざるに喩ふ。漢書、揚雄傳「或嘲雄以玄之尙白、雄解之、號曰解嘲」

【玄之又玄】 ゲンノマタゲン 

おくぶかき上にもなほおく深し、道の廣大無邊なるを形容す。老子「────、衆妙之門」

【玄漠】 ゲンバク 

おくぶかくしづか。沈約詩「神行燭──」

【玄蕃寮】 ゲンバレウ 

 國  古、治部省に屬して佛寺僧尼又は外國人の送迎を掌りし役所。

【玄牝】 ゲンピン 

老子の道の奧妙なる義、牝は幽の義。老子「──之門」

【玄武】 ゲンブ 

四神の一にて北方の神、龜蛇の形を爲す。曲禮「前朱鳥而後──、左靑龍而右白虎」

【玄武岩】 ゲンブガン 

火成岩の一、其の質は細密、火山地方に多し。

【玄武之旐】 ゲンブノテウ 

龜蛇をゑがけるはた。隋書、禮儀志「六曰、────」=龜蛇旐。

【玄武門】 ゲンブモン 

紫宸殿の北面の門、其の內に玄武觀あり〔唐六典〕

【玄服】 ゲンブク 

黑き衣。宋玉賦「簡輿──」

【玄璧】 ゲンぺキ 

くろ色のたま。穆天子傳「乃執白圭──、以見西王母」

【玄圃】 ゲンボ 

崑崙山に在る仙人の居處〔淮南、覽冥〕

【玄圃積玉】 ゲンボセキギヨク 

玄圃は崑崙山、他人の詩文を崑崙山に積累せる玉に喩へて稱す。晉書、陸機傳「葛洪著書、稱陸機文、猶────無非夜光焉」

【玄謨】 ゲンボ 

深きはかりごと。晉書、齊王冋傳「偉哉武閔、首創──」=遠謀·深謀。

【玄謀】 ゲンボウ 

深きはかりごと、玄妙なる計謀。張衡賦「囘志朅來從──」

【玄米】 ゲンマイ 

くろまい、未だしらげざる米。白米の對。

【玄冥】 ゲンメイ 

○水。又、雨の神〔禮、月令〕張衡、思玄賦「委水衡乎──」○大陰神にして刑殺を主る。楚辭「考──於空桑」○くらし。淮南子「處──而不闇」=黑闇。

【玄妙】 ゲンメウ 

おくふかく微妙なり。孟浩然詩「漸通──理、深得坐忘心」

【玄默】 ゲンモク 

おくゆかしく何も言はず。漢書、揚雄傳「人君以──爲神、澹泊爲德」=淵默。

【玄覽】 ゲンラン 

心を玄冥の處に置きて萬事を覽知する義。老子「滌除──能無疵」北史、魏孝文帝紀「優游恭己、──獨得」

【玄理】 ゲンリ 

奧深き道理。又、學說。南史、朱百年傳「頗言──、時爲詩詠」

4畫

玅  

妙(女部四畫)に同じ。

5畫

玆  

シ [支]

茲(艸部六畫)と別字、今は混用す

くろし(黑)にごる(濁)左、哀八「何故使吾水─」今本滋に作る。

6畫

率  

①シュツ [質]

②リツ [質]

③スヰ [寘]

①の通音ソツ

①したがふ(遵)よりそふ(循)孟、梁惠王「─西水滸」○うく(奉)つく(服從)○ひきゐる(將)「─兵」○すぶ(統)○おほかた、おほむね(大略)史、莊周傳「大抵─皆寓言也」大─と連用するも同じ。○しな(差等)○てがる、簡略。○かろがろし「輕─」○かろがろしくあわてる(輕遽)「─爾」「草─」○さきだつ「─先」○めあて(表的)○さっぱりしたること。○禮式作法などにかかはらぬ「眞─」「坦─」○行ふ。左、哀十六「─義之謂勇」用ふる。

②すべかぞへる(總計)○ほど(限度·程限)物事の標準。孟、盡心「羿不爲拙射變其彀─」○つづめたる數、約數。○乘除の關係をなす數。○わりあひ、比例。

③とりあみ。○をさ、かしら「將─」「方伯連─」=帥。

 同訓異義 

シタガフ 率·順·從·隨·遵·徇·殉の別は順(頁部三畫)の條を見よ。

【率易】 ソツイ 

率直にしてやさし。南史、駱瑒傳「處己──、不以名位驕物」=率直和易。

【率由】 ソツイウ 

したがひよる。孟、離婁「──先王舊章」

【率爾】 ソツジ 

あわただしき貌。論、先進「子路──而對」=率然。

【率爾人】 ソツジノヒト 

輕るはづみの人物。世說、賞譽「王僧祐少便聰悟、叔父景玄撫其首、曰、兒神明意用、當不作───」

【率循】 ソツジユン 

したがひ行ふ。書、顧命「臨君周邦、──天下」=率由。

【率先】 ソツセン 

衆に先だち行ふ。史、絳侯世家「丞相吾所重、其──之」晉書、顧榮傳「榮躬當矢石、爲衆──」=帥先·首先。

【率然】 ソツゼン 

○にはかなる貌。漢書、東方朔傳「──高擧」=率爾。○常山に棲む蛇の名。孫子、九地「善用兵者、辟如──、──者常山之蛇也、擊其首則尾至、擊其尾則首至、擊其中則首尾俱至」

【率直】 ソツチヨク 

ありのままにて正直。

【率土之濱】 ソツトノヒン 

陸地の續ける限り、卽ち、天下中の義。詩、小雅「普天之下、莫非王土、────、莫非王臣」=率濱。

【率溥】 ソツフ 

率土の濱、溥天の下の略語、卽ち天地の開、到る處にの義、溥は普、廣大なり。宋史、樂志「──歡聲雷動」=率普·溥率。率土之濱參看。

【率服】 ソツプク 

したがひつく。

【率厲】 ソツレイ 

ひきゐはげます。厲は勵。

玈  

ロ [虞]

くろし(黑)左、僖二八「─弓」くろぬりの弓。