音部
0畫
①イン·オン [侵]
②イン·オン [沁]
①こゑ、おと、ね。詩經、序「情發於聲、聲成文、謂之─」○おんがく(聲樂)八─は金·石·絲·竹·匏·土·革·木。○ふし、てぅし、ひびき(聲文)○文字の讀みごゑ。訓の對。○詞章、言語。詩、小雅「金玉爾─」○おとづれ「─信」
②かげ。古、蔭に借用す。左、文十七「鹿死不擇─」
おくりもの。=進物。
○おと、ねいろ。白居易詩「蜀琴本性質、楚絲──淸」○文字の音と韻と(平·上·去·入の四聲の别)韻(音部十畫)參看。
おとづれ。耗は消、消息の義〔說文通訓定聲〕因話錄「皆無──」=音信。
樂器の音を歌に合せ、面白く人心を樂ましむるものの總稱。吳志、周瑜傳「瑜少精意──」=音曲。
音韻に關する學問「──五書」は淸の顧炎武撰す、音論·詩本音·易音·唐韻正·古音表に分つ。
音樂のわざ。漢書、杜欽傳「太子卽位、皇太后詔采良家女、欽因說大將軍鳳曰、將軍宜擇有行義之家、求淑女之質、毋必有聲色──、爲萬世大法」
音訓に同じ「一切經──」は一百卷、唐の釋慧琳撰す。
○おんと、ひびきと。傅休奕賦「昔我與君兮、──相和」○ひびき。古詩「上有絃歌聲、──一何悲」
○音樂のふし。曲は樂曲。○音樂。論衡「──妙者、和者則寡」
文字の發音と意味と。晉書、徐邈傳「邈撰正五經──、學者宗之」=音義。
物理學にて音の調子を計る具、鋼 ハガネ 又鐵にて製しU字形をなして柄を有し、一定の振動數の音を發するもの。
ことばのむね。崔顥詩「此鄕多離俗、戎夏殊──」
一字一音をあらはすのみにて何の意味をも有せざるもの。我國の假名、西洋のアルフアべツトの類。義字の對。=音標文字。
ことば。晉書、裴綽傳「善言玄理、──淸暢、泠然若琴瑟」南史「徐湛之善尺牘、──流暢」=言辭。
おとづれ。沈約詩「若欲寄──、漢水向東流」=音問·音耗。
おとづれが絕える。李白、大隄曲「不見眼中人、天長───」
おとづれ。元稹詩「故交──少、歸夢往來頻」=音問·音信·音耗。
おとづれの手紙。宋之問詩「嶺外──斷、經冬復歷春」=消息·信書。
ねいろ、高さと强さとの外に發音體の種類及形、大小などによりて異るねいろ。
おと、こゑ。周禮、鼓人「掌敎六鼓四金之──」=聲音。
磬石をいふ。寰宇記「廣漢有靑石山、九州要記云、此山──、天下無加、可爲磬」
おとづれ。陸機賦「絕──於江介、託影響乎洛湄」=消息。
二っの樂音の高さの隔り卽ち其の振動數の比。=音比。
○音樂のふし。○詩文又、語音の調子 テウシ
ものいふこゑ、語音。南史、齊鬱林王傳「少美容止、進退──、甚有令譽」
音聲がほがらかにしてのびる〔宋史、王沔傳〕=音吐洪亮。
國 數人同時に歌ふ時、其の中の一人、先づ發聲して全體の調子をそろへるをいふ。又、其の人「──取」
音樂と政治とは互に相關係する。禮、樂記「治世之音、安以樂、其政和、亂世之音、怨以怒、其政乖、亡國之音、哀以思、其民困、聲音之道、與政通矣」
物の音響が之に接觸せる空氣の波狀に傳りゆく振動。其の波動が耳に入りて音の感覺を生ず。
國 王朝時代に於ける大學の敎官。漢吳音の敎授を掌る。
音樂に用ふる八器、卽ち金·石·絲·竹·匏·土·革·木の稱。白虎通「聲五音八何、聲爲本、出于五行、音爲末、象八風」
國 語調の便宜によりて其の音を變へてよぶをいふ「書きて」を「書いて」「讀みて」を「讀んで」とする類。
樂譜に用ふる各音の高低長短を示す符號。
音字に同じ。
おとづれ。韓愈詩「遠遣州人送──」=音訊·音信。
音字に同じ。
こゑと、かたちと。おもかげ。謝靈運詩「巖壑寓耳目、歡愛隔──」
○音の調子。漢書、武帝紀贊「協──作詩樂、建封壇、禮百神」=音調。○音樂。晉書、阮咸傳「咸妙解──、善琵琶」
4畫
韻(次頁一段)に同じ。
5畫
セゥ [蕭]
○虞舜の作りし樂、能く堯の道を紹 ッ ぐ意「簫─」論、八佾「子謂─」○つぐ(紹·繼)○うつくし(美)うららか「─光」「─華」
太平の世のまはりあはせ。潘尼詩「碧雲感──」
虞舜の音樂。韶は紹、堯の德を紹ぐ意。史、孔子世家「孔子適齊(中略)聞──學之三月、不知肉味」
春の美くしき氣。宋之問詩「澤國──早、開簾延霽天」=韶景·韶光。
あきらかにかがやく。あきらかなるひかり。皮日休詩「半甸飄灑掩──」
○春ののどかなるけしき。韓維詩「迎得──入中禁、和風次第遍神州」=韶光。○轉じてわかきよはひ、靑年の時代。白居易詩「勿歎──子、俄成皤叟仙」
韶は美、春のうつくしきけしき。唐太宗詩「──開令序、淑氣動芳年」=春景·韶華。
春ののどかなるけしき。梁元帝纂要「春景曰──」=韶光·韶氣·春景。
才智あきらかにしてさとし。唐書、上官昭容傳「天性──、善文章」=聰警。
○殷の湯王の樂、韶は紹、其の德、大禹に繼ぐ義。韓愈、上襄陽于相公書「正聲諧──」=大濩。○韶は虞舜の樂。濩は殷の湯王の樂。
韶は虞舜の樂、武は周の武王の樂。論、八佾「子謂韶、盡美矣、又盡善也、謂武、盡美矣、未盡善也」
舜帝の作りし韶の樂を奏し舞ふ。論、衞靈公「樂則──、放鄭聲、遠佞人」
美くしくあきらか。陳書、世祖紀「親祠南郊、詔曰、雲物──、風景淸和、慶動人祇、忭流庶俗」
うつくしくやはらぐ。王粲、蕤賓鐘銘「表聲──、民聽以睦」
10畫
ウン ヰン [問]
又韵に作る
○ひびき、音の末尾のひびき、てぅし、聲音の和するをいふ。文心雕龍「同聲相應謂之─」○おもむき、やうす(風致)○漢字を其の發音のひびきによりて、平·上·去·入の四聲に別ち、更に之を現在通行の─書(淸の毛奇齡に始まる)にて一百六に類別せしものの稱、卽ち平聲は之を上平·下平に二分し、上平は東·冬·江·支·微·魚·虞·齊·佳·灰·眞·文·元·寒·删の十五、下平は先·蕭·肴·豪·歌·麻·陽·庚·靑·蒸、尤·侵·覃·鹽·咸の十五、上聲は董·腫·講·紙·尾·語·麌·薺、蟹·賄·軫·吻·阮·旱·潸·銑·篠·巧·皓·哿·馬·養·梗·迥·有·寢·感·琰·豏の二十九、去聲は送·宋·絳·寘·未·御·遇·霽·泰·卦·隊·震·問·願·翰·諫·霰·嘯·效·號·箇·禡·漾·敬·徑·宥·沁·勘·豔·陷の三十、入聲は屋·沃·覺·質·物·月·曷·黠·屑·藥·陌·錫·職·緝·合·葉·洽の十七─に分つ。○みやび(風雅)詩賦·歌曲などの風流なること「─事」○詩賦·歌曲。陸機、文賦「或託言於短─」
すぐれたるやうす、人品。王儉、褚淵碑文「──弘深、喜慍莫見」=風度·韻度。
詩の韻をふむ。押韻(七三五頁二段)を見よ。
數人相集まりて詩を作る時、各其の韻字を求め、其の得たる韻字にて詩を作る。韻籤を見よ。
次韻(九九八頁三段)を見よ。
詩を作るに押する、韻字を定めて移易せざる義。唐詩紀「王灣麗生殿賜宴、同勒天·前·煙·年四韻、應制五言律詩」
和韻(三二一頁三段)を見よ。
音韻を硏究する學問。
一卷、著者未だ詳かならざれども、唐末の作たるは疑ひなし、開轉淸濁四聲七音等の音韻を明かにするを以て主とす、故に鏡といふ。其の音韻圖は、第一轉に始り、第四十三轉に終り、每轉字音の開合の別を立つ、音韻の學を爲す者の必讀書とす。
詩賦の句末に用ふる韻。能改齊漫錄「唐開元二年、王邱知貢擧、試旗賦、始有八字──、卽風·日·雲·野·軍·國·淸·肅八字也」
韻をふみたる文章、卽ち詩賦の類、有韻の文。南史「臨川王義慶招集文士、何長瑜以──序義慶州府僚佐、語薄義慶、坐是貶謫」
風流なる人、風韻ある士。=雅士·風流士。
風流のあそび、詩歌書畫などの遊「風流──」
字書の韻字にて分類せしもの。五車韻瑞·佩文韻府など。
韻字を記したる小さき札。此の札を箱に入れ、みくじの如く振り出したる韻にて詩を作るを深韻といふ。
風流なるおもむき。=風致·風韻·雅致。
韻宇に同じ。世說「阮渾長成、風氣──似父」(長成は渾の字)=風度。
十六卷、淸の顏懋功、佩文韻府に據り、二字より七字に至るまでの語を集む、詩韻含英と同じく、作詩家の必擕書。
二十卷、宋の陰時夫撰す、故實詞藻を摘錄して各韻の下に隸す、類書の韻を以て事を隸するものは、此書に始まる。
一定の韻字を句末に用ひて聲調を調へたる文章、卽ち詩賦の類。散文の對。
13畫
キャウ [養]
○ひびき、こゑ、震ひ動く音「音─」「淸─」「餘─」○さしひびき「影─」○俗に聲の高きものをいふ。○ひびく、ひびきを發せしむる。南史「震─山谷」
響の聲に應ずるが如く、速に其の人に應じて來り從ふ。史、淮陰侯傳「天下風走而──矣」
音響に應じてひびきを發する石、江西省南豐縣に在り。輿地紀勝「縣東十五里、有巨石臨路、高百餘仞、其上平坦、可容數百人、往來其旁者、笑語高低、應答如響」
矢の鳴るもの。莊、在宥、注「嚆矢、矢之鳴者、俗稱──」=嚆矢。
○物のひびきにて吉凶を占ふ。摭言「畢相公及第年、夜聽──」○除夜 オホミソカノヨル 人の語を聽きて吉凶を占ふ、辻占 ツジウラ 〔曲洧舊聞〕
歌聲の美妙なるを稱す。列、湯問「薛譚學謳於秦靑、未窮靑之技、自謂盡之矣、遂辭歸、秦靑弗止、餞於郊衢、撫節悲歌、聲振林木、────、薛譚乃謝求反、終身不敢言歸」=遏雲曲。
14畫
ゴ [遇]
大─は殷の湯王の樂の名。=大濩。