麻部

0畫

麻  

マ [麻]

○あさ、を(大麻)草の一、莖の長さ七八尺、花は雌雄株を異にす、雄を枲又牡─、雌を苴─又子─といふ、皮の纖維 センヰ にて絲を製し布を織る、其の實を蕡といひ食用とす。禮、月令「食─與犬」=油麻·脂麻。○あさぬの、あさいと、あさごろも。○みことのり、敕書、唐代綸命を書するに─にてすきたる黃白の紙を用ひし故(翰林は白─、中書は黃─を用ふ)○ごま(胡麻)一名、巨勝。○しびれ。しびれる。=痳。○ふりつづみ(大鼗)○あさを治む。○俗に面に痘痕 アバタ あるをいふ。

【麻鞋】 マアイ 

あさのくつ。古今注「──起自伊尹、以草爲之、周文王以麻爲之、名曰──、至秦以絲爲之」

【麻衣】 マイ 

○白布の衣服。詩、曹風「蜉蝣掘閲、──如雪」○白き麻の喪服。禮、雜記「卜宅與葬日、有司──」

【麻油】 マイウ 

あさの實のあぶら。魏志、滿寵傳「折松爲炬、灌以──從上風放火」

【麻姑】 マコ 

○爪の長き仙女。神仙傳「──手爪不如人爪、形皆似鳥爪、蔡經心中私言、若背大痒時、得此爪以爬背、常佳也」李白詩「──搔背指爪輕」○轉じて事の意の如くなるを「──搔痒」といふ。

【麻姑搔痒】 マコサウヤウ 

爪の長き仙女麻姑をやとひてかゆき處をかかしむ、物の意の如くなるに喩ふ。杜牧詩「杜詩韓集愁來讀、似倩麻姑癢處搔」癢は痒。

【麻沙本】 マサボン 

舊刻本の雕印精しからざる者をいふ。麻沙は地名、南宋の時、福建省建陽縣に屬す、地、榕樹を產す、質鬆軟 アラクヤハラカ にして板に雕り易し、この地の書肆多くこの樹を用ひて刻板し、頗る訛誤多し、故にいふ。石林燕語に「天下印書、以杭州爲上、蜀本次之福建最下」とある福建本は卽ち───なり。

【麻子】 マシ 

○あさの實。○ひきうす。河東記「安置小──、磑成麪訖」

【麻事】 マジ 

あさをうむ仕事。詩經、傳「絲事畢、而──起矣」

【麻枲】 マシ 

あさ。後漢書、崔寔傳「五原土宜──、而俗不知織績」

【麻紙】 マシ 

麻にて製したる紙。唐書、藝文志「月給蜀郡──五千番」

【麻絲】 マシ 

あさいとと、きぬいとと。禮、禮運「昔者先王(中略)未有──、衣其羽皮」

【麻疹】 マシン 

はしか。=痳疹。

【麻菽】 マシユク 

麻と豆と。史、周紀「棄爲兒時、屹如巨人之志、其游戲、好種樹──」

【麻繩拂】 マジヨウフツ 

あさなはのちりはらひ。通鑑、宋孝武帝紀「上始大修宮室、土木被錦繡、嬖妾幸臣、賞賜傾府藏、壞高祖所居陰室、於其處、起玉燭殿、與羣臣觀之、牀頭有土障、壁上挂葛燈籠·───、侍中袁顗、因盛稱高祖儉素之德、上不答、獨曰、田舍公得此、已爲過矣」

【麻醉】 マスヰ 

毒又藥のために知覺を失ふ。──劑はねむりぐすり。

【麻線】 マセン 

あさいと。漫笑錄「姥酬以──一縷」

【麻稻】 マタウ 

あさと、いねと。宋史、勃尼國傳「其地無麥有──」

【麻中之蓬】 マチユウノヨモギ 

麻の中のよもぎは自らまっすぐになる、敎化の效驗をいふ。荀、勸學「蓬生麻中、不扶自直」

【麻苧】 マチヨ 

あさと、からむしと。明一統志「朝鮮國風俗、多衣──、巾幘如唐」

【麻紵】 マチヨ 

あさぬの。紵はいちび。宋史、高麗傳「少絲蠶、匹縑直銀十兩、多衣──」

【麻田】 マデン 

あさを作るはたけ。通考「別給桑田──、──男夫十畝、婦人五畝」

【麻麥】 マバク 

あさと、むぎと。宋史、高麗傳「地寒多山、土宜松柏、有秔黍──、而無秫、以秔爲酒」

【麻痺】 マヒ 

しびれる。=痳痺。

【麻皮皴】 マヒシユン 

石のひだを畫くの法の一、卽ち披麻皴。畫鑒「董元畫山石、作───」

【麻布】 マフ 

あさのぬの。後漢書、挹婁傳「有五穀──」

【麻冕】 マベン 

緇布冠の異稱。論、子罕「子曰、──禮也、今也純、儉、吾從衆」

【麻母】 マボ 

めあさ。爾雅、疏「苴麻之盛子者也、一名莩、一名──」

3畫

麼  

バ ビ [哿]

麽は俗字

○ほそし、こまかし(細小)「幺─」○俗語の助字、疑問に用ふ、耶に同じ。什─ ナニ 恁─ イカニ 

【麼蟲】 マイユウ 

ちひさきむし。列、湯問「江浦之閒生──」

麽  

麼(前條)の俗字。

4畫

麾  

キ [支]

戲に通ず

○さしづばた、あいづばた、旌旗の屬、さいはい(采配)○さしまねく、手にて招く、召す。左、隱十一「─而呼」=撝。○さしづする、指揮する、下知 ゲチ する「指─」書、牧誓「右秉白旄以─」○こころよし(快)

【麾鉞】 キヱツ 

大將の旗と、まさかりと。南史、齊太祖紀「──一臨、凶黨冰泮、此則霸業之基、勤王之始也」

【麾下】 キカ 

大將のはたもと、大將の部下。史、李廣傳「廣廉、得賞賜輒分其──、飲食與士共之」=戲下。

【麾蓋】 キガイ 

儀仗中のさしづばたと繖 キスガサ と。晉書、衞瓘傳「大車官騎、──鼓吹諸威儀、一如舊典」

【麾軍】 キグン 

兵士にさしづする。史記「──引兵去」庾信文「白羽──」

【麾節】 キセツ 

さしづばた、旌旗をいふ。李華文「介冑之士、垂十萬人、瞻我──、以爲進退」

7畫

麿  

 〔國字〕  

○まろ。麻呂の合字、われ、おのれ、自稱の代名詞。○人名に添へる詞「人─」「淸─」