大部

0畫

大  

①タイ·ダイ [泰]

②タ·ダ [箇]

①おほいなり、事又物が大いなり。小の對。○すぐ(過)戰國、秦策「無─大王」○人を尊ぶの稱、人の著作を「─作」「─著」といふ、大いなりとして尊ぶ。○おごる「尊─」○ながし(長)おもし(重)○あらし(麤、粗)「─布」○ふとし、ふとさ、太と通ず。○あまねし(徧)○こえてうつくし(肥美)○はじめ(初)禮、文王世子「─昕徵鼓」○おほいに。○おほかた。事物の大部分「─凡」「─抵」

②たけし(猛)はなはだし(甚)=太。

【大安日】 タイアンニチ 

陰陽道にて萬事によろしとする吉日。=大安。

【大位】 タイヰ 

貴き官位。後漢書「不有忠言奇謀、而取──」

【大尉】 タイヰ 

○漢代、三公の一。○ 國  陸海軍武官の名。大佐參看。

【大意】 タイイ 

○おほよその意味。○大いなるこころざし。後漢書、耿弇傳「光武笑曰、小兒曹乃有──哉」=大志。

【大醫】 タイイ 

宮中の侍醫。梁書「敕──不得以生類爲藥」

【大有】 タイイウ 

易の卦の名。易經「──元亨」

【大有年】 ダイイウネン 

大豐年の義。春秋「宣公十有六年冬───」

【大猷】 タイイウ 

大いなる道、大いなるはかりごと。詩、小雅、斯千「秋秩──、君子莫之」

【大憂】 タイイウ 

○大いなるうれひ。國語「近其小喜、而遠其──」○父母の喪。

【大一】 ダイイツ 

○至りて大いなり。莊子「至大無外、謂之──」○天地の未だ分れざる混沌たる元氣。禮記「夫禮必本於──」

【大威德】 ダイヰトク 

 佛  明王の一、六面六臂を有し、西方を護る神。

【大隱隱朝巿 】 タイインハテウシニカクル 

眞の隱者は或は朝廷の小吏となり、或は巿中の賣卜者·藥賣りなどになりて韜晦する義。王康琚詩「小隱隱陵藪、─────」白居易詩「大隱住朝巿、小隱住丘樊」

【大雨】 タイウ 

おほあめ。詩、小雅「月麗于畢俾滂沱矣」箋「將有──、徵氣先見于天」

【大瀛】 ダイエイ 

おほうみ。史、孟荀傳「有──海、環其外」

【大要】 タイエウ 

おもなるむね。阮籍詩「智巧萬端出、──不易方」=槩要。

【大役】 タイエキ 

大いなるえだち、國家の大工事〔周禮、地官、鄕師〕

【大易】 タイエキ 

易經。魏都賦「覽──與春秋」

【大液】 タイエキ 

漢の武帝の作りし池。白居易詩「──芙蓉未央柳」

【大烟】 タイエン 

 俗  阿片の異名。=大煙。

【大烟鎗】 タイエンサウ 

 俗  阿片を吸ふ煙管 キセル 

【大圓】 ダイヱン 

天をいふ。管子「能戴──者、體乎大方」=大圜。

【大圜】 タイヱン 

前條に同じ、圜は圓。呂覽、序意「爰有大圜在上、大矩在下、汝能法之、爲民父母」注「圜、天也、矩、方、地也」

【大淵獻】 タイエンケン 

十二支の亥の異名〔爾雅〕

【大衍曆】 ダイエンレキ 

唐の開元十二年、僧の一行の詔を受けて作りたる曆。唐書「及一行作───、詔太史測天下之晷」

【大音】 ダイオン 

大聲なり。後漢書、百官志「──讀敕畢」=大聲·大音聲。

【大牙】 タイガ 

天子又は將軍のたつる旗。張衡、東京賦、注「古者天子出、建──旗、竿上以象牙飾之」

【大我】 タイガ 

哲學にて宇宙の各我の根本たる絕對の我。小我の對。

【大家】 タイカ 

○富貴の家。左傳「箕襄形帶叔禽叔椒子羽皆──也」○學藝にすぐれし人「唐宋八──」○近侍の官より天子を稱する語。獨斷「親近侍從官、稱天子曰──」○ タイコ しうとめ。類書纂要「婦姑稱爲──」轉じて女の尊稱「曹──」○ 國    タイケ 貴き家がら。又、金滿家。

【大哥】 タイカ 

あにき、大兄の義。酉陽雜俎「帝呼寧王爲──」

【大廈】 タイカ 

大いなる家屋。淮南子「湯沐具而蟣虱相弔、──成而燕雀相賀」

【大廈之材非一丘之木 】 タイカノザイハイツキウノキニアラズ 

天下の太平を致すは衆人の力によるに喩ふ。王襃、四子講德論「─────────、大平之功、非一人之力也」

【大廈將顚非一木所支也】 タイカノマサニタフレントスルハイチボクノササフルトコロニアラズ 

國家の將に覆へらんとする危急の際には獨力にては支へ難きに喩ふ〔文中子〕

【大雅】 タイガ 

○詩の一體。詩經大序「雅者正也、言王政之所由廢興也、政有小大、故有小雅焉、有──焉」○文人相敬稱する語。班固賦「──宏達、於玆爲羣」の語に本づく。

【大駕】 タイガ 

天子ののりもの。轉じて天子を斥す。晉書、嵆紹傳「──親征、以正伐逆」

【大凱】 ダイガイ 

大いに凱旋する。史、主父偃傳「天下旣平、天子──」漢書には大愷に作る、愷は凱、一說にかちいくさに用ふる音樂なりと。

【大行】 タイカウ 

○天子の崩御して未だ諡を奉らざる閒の稱。史、李斯傳「──未發、喪禮未終」通典「帝初登遐、朝臣稱曰──皇帝」○賓客を接待することを掌る官。史、叔孫通傳「──設九賓臚句傳」

【大行不顧細謹 】 タイカウハサイキンヲカヘリミス 

大事を行はんとする者は、少しの謹をば顧みず。史、項羽紀「樊噲曰、──────、大禮不辭小讓」

【大江】 タイカウ 

 俗  揚子江の異名。=長江。

【大考】 タイカウ 

大いに官吏の能否勤惰を考查する。周禮「三年大比、則──州里」

【大郊】 タイカウ 

王者の天を祀る名。家語「魯無冬至──之事」

【大較】 タイカウ 

おほむね。史、律書「世儒闇於──、不權輕重」=大體。

【大綱】 夕イカウ 

おほづな、おほぐくり。法言「堯有天下、擧──命禹」

【大巧若拙】 タイカウハセツナルガゴトシ 

大いに巧妙なる者は、卻りて拙なる者の如く見ゆる義。老子「大直若屈、────、大辯若訥」

【太羮不和】 タイカウハワセズ 

大羮は肉の汁、別に鹽梅の調和を爲さず。禮、樂記「────、有遺味者矣」

【大學】 ダイガク 

○國都にある最高の學校。漢書「──者賢士所關也、敎化之本源也」=太學。○ 國  大學院及文·法·醫·工·理·農等に分科す。

【大學諺解】 ダイガクゲンカイ 

 國  林道春著、假名文にて大學を解釋ぜしもの。

【大學三舍法】 ダイガクサンシヤノハフ 

王安石のたてたる學制、三舍は外舍·內舍·上舍、其の學生は各一種の經書を硏究し、每月試驗を以て其の優劣を定め舍をうつす法〔宋史〕

【大學寮】 ダイガクレウ 

 國  天智天皇の朝に創立せし大學校、京都に在りて式部省に屬す、文章·紀傳(歷史)音(漢字の發音)算·明經·明法等の科に分つ。

【大壑】 タイガク 

海をいふ。莊、天地「──爲物也、注焉而不滿、酌焉而不竭」

【大覺】 ダイカク 

 佛  大いに悟る、佛の異稱。又、佛果の義。翻譯名義集「惽夢惺、而──常明」

【大喝】 タイカツ 

大聲にてしかる「──一聲」

【大洽】 ダイカフ 

大いに和ぎて治まる。儀禮集傳「以勤文王之宣光、以揚武王之大訓、而天下──」

【大旱】 タイカン 

おほひでり。孟、梁惠王「若──之望雲霓也」

【大寒】 ダイカン 

二十四氣の一、一月二十日より二月四日まで、卽ち小寒と立春との中閒。

【大寒索裘】 タイカンニキウヲモトム 

大寒に至りて、かはごろもを求める、盜を捕へて繩を綯ナふと同じく不用意の喩。法言、寡見「大寒而後索裘、不亦晚乎」

【大艦】 クイカン 

大いなるいくさぶね。晉書、五行志「──漂沒」

【大姦似忠】 タイカンハチユウニニタリ 

甚だしき姦人は、卻りて忠臣の如くに見ゆ。呂誨文「────、大詐似信」王安石を論ぜし語。

【大伽藍】 ダイガラン 

大いなる寺。

【大氣】 タイキ 

天地の氣。=零圍氣 フンキキ 

【大期】 ダイキ 

うみづき、子の生れる十箇月めの月、卽ち臨月 リンゲツ 〔史、呂不韋傳〕

【大逵】 タイキ 

大いなる辻路。左傳「子都拔棘以逐之、及──弗及」

【大義】 タイギ 

大いなるすぢみち。後漢書、班固傳「所學無常師、不爲章句、擧──而己」=大誼。

【大義滅親】 タイギシンヲメツス 

君臣の大義を全うせん爲めには、父子の私親を滅する。左、隱四「君子曰、石碏純臣也、惡州吁、而厚與焉、────、其是之謂乎」厚は碏の子、州吁の亂に與りしを以て、碏之を殺せり。

【大僞】 タイギ 

自然のままならざる人爲の義。老子「大道廢有仁義、智慧出有──」

【大儀】 タイギ 

 國   ○ねぎらふことば。御苦勞。○倦み疲れる、物ぐさし、おつくふ。

【大器】 タイキ 

○偉大なる人がら。管子「施伯謂魯侯曰、管仲者天下之賢人也、──也」○寶器。政權に喩ふ。左傳「重之以──」

【大器小用】 タイキセウヨウ 

大才ある者を小吏に用ふるに喩ふ。後漢書、邊讓傳「大器之於小用、固有所不宜也」

【大器晚成】 タイキバンセイ 

鐘鼎の如き大いなる器は、早く成らず、以て大才は速に成らざるに喩ふ。老子「大方無隅、────」

【大麾】 タイキ 

おほばた、大將のはた。周禮「木路建──」

【大機】 タイキ 

天下のまつりごと。唐書「帝又自用、李絳參贊──」

【大歸】 タイキ 

でもどり、よめ入せし女が離緣になりて實家にかへる。左傳「夫人姜氏歸于齊、──也」

【六昕】 タイキン 

よあけ。禮、學記「天子視學、──鼓徵、所以警衆也」=早晨。

【大琴】 タイキン 

二十七絃の琴。爾雅、注「琴大者、二十七絃」

【大鈞】 タイキン 

天、又、造化、鈞は陶工の旋盤、轉じて物を化成する義とす。賈誼、鵩鳥賦「──播物兮、坱圠無垠」=太鈞。

【大禁】 タイキン 

大いなるいましめ。孟、梁惠王「問國──、然後敢入」

【大逆】 タイギヤク 

甚だしく道に背きたるおこなひ、君·父などを弑するをいふ。

【大噱】 タイキヤク 

大いにわらふ。漢書、敍傳「談笑──」

【大弓】 ダイキユウ 

○大いなるゆみ。○ 國  半弓·楊弓等に對して通常のゆみ。

【大虛】 夕イキヨ 

おほぞら。=大空。

【大擧】 タイキヨ 

大いにこぞる、大勢の兵にて一時に攻める。蜀志、諸葛亮傳「治戎講武、以待──」

【大局】 夕イキヨク 

圍碁の盤面の大體の形勢をいふ。轉じて事局の大勢の義とす。

【大區】 タイク 

天地の內をいふ。淮南子「縱志舒節、以馳──」

【大空】 タイクウ 

おほぞら。=大虛。

【大宮司】 タイグウジ 

 國  大神社の社務を掌る神官の長。

【大君】 タイクン 

○おほぎみ、天子。易經「──有命、開國承家」○ 國  德川時代に將軍の尊稱とす「東照──」

【大軍】 タイグン 

あまたの軍勢〔漢書、李廣傳〕

【大勳】 タイクン 

大いなるいさを。書經「──未集」=大功。

【大勳位】 タイクンヰ 

 國  國家に功勞ある者を賞する爲めに定められし九等の階級の第一。

【大火】 タイクワ 

○心星。左傳「咮爲鶉火、心爲──」=火星。○夏のあつさ。陸龜蒙詩「人閒方──、此境無朱夏」○大いなる火災〔列、黃帝〕

【大過】 タイクワ 

○易の卦の名。易經「──棟撓、利有攸往亨」○大いなるあやまち。論、述而「五十以學易、可以無──矣」

【大塊】 タイクワイ 

○天地をいふ。莊、齊物「──噫氣、其名爲風」○造化をいふ。莊、大宗師「──載我以形、勞我以生」

【大黃】 タイクワウ 

○大いなる石ゆみの名。史、李將軍傳「廣身自以──射其裨將」○ ダイワウ 藥草の名。初夏に莖を出して綠色の羣小花をつく、根を下劑藥とす。名醫別錄「──生河西山谷隴西、八月中采根火乾」

【大荒落】 ダイクワウラク 

十二支の巳の異名。〔爾雅〕

【大廓】 タイクワク 

おほきくひろし。淮南子「處──之宇、遊無極之野」

【大患】 タイクワン 

○大いなるわづらひ。=大病·重患。○大いなるしんぱい。=深憂。

【大願】 ダイグワン 

大いなるねがひ。史、范睢傳「此臣之所──也」

【大寰】 タイクワン 

あめのした、天下。吳萊詩「──幸混一、四海際幅員」

【大窾】 タイクワン 

大いなるあな、窾は空なり。莊、養生主「批大卻、導──」

【大觀】 タイクワン 

○物ごとの道理を十分に見ぬきて心に會得する。賈誼、鵩鳥賦「達人──兮、物無不可」○大體の有樣。范仲淹、岳陽樓記「此則岳陽樓──也」

【大紅蓮】 ダイグレン 

 佛  梵語、摩訶鉢特摩 マカバドマ の譯、八寒地獄の一。

【大計】 タイケイ 

大いなる計畫 ハカリゴト 

【大經】 タイケイ 

○唐代、進士の試驗科目として、禮記·春秋左氏傳の稱。詩經·儀禮·周禮を中經。易經·書經·公羊傳·穀梁傳を小經といふ〔唐書〕○人のふむベき大いなる道。左傳「禮、王之──也」=大道。

【大翹】 タイゲウ 

連翹 レンゲウ の異名〔爾雅、疏〕

【大外記】 ダイゲキ 

 國  昔の官名、おほいしるすつかさ、太政官に屬して內記の詔書案文を勘へ正し、太政官の奏文を作ることを掌る。

【大月】 ダイゲツ 

○大いなる月。○だいのつき、一箇月三十一日ある月、一·三·五·七·八·十·十二月をいふ。陰曆にては三十日ある月。

【大俠】 タイケフ 

大いなるをとこだて。史、季布傳「滕公心知朱家──」

【大業】 タイゲフ 

○大いなるしごと。易、繫辭「富有之謂──」=洪業。○高深なる學業。漢書、董仲舒傳「下帷發憤、潛心──」○隋の煬帝の年號。

【大叫喚】 タイケフクワン 

八大地獄の一、この地獄に陷りたるものは、うめき叫ぶといふが故。

【大言】 タイゲン 

大いなることば、ほらをふく「──壯語」莊、齊物「──炎炎、小言詹詹」

【大卷】 タイケン 

黃帝の樂の名。周禮「大司樂、以樂舞、敎國子、舞雲門──大咸大磬大夏大濩大武」注「黃帝曰雲門──」

【大限】 タイゲン 

壽命 イノチ の終。

【大原】 タイゲン 

おほもと。漢書、董仲舒傳「道之──出於天、天不變、道亦不變」=大本。

【大絃】 タイゲン 

琴のふときいと。後漢書「爲政猶張琴瑟、──急者小絃絕」

【大賢】 タイケン 

すぐれてかしこき人。晉書陳頵傳「英偉──、多出於山澤」

【大權】 タイケン 

天皇の權柄。唐書、陸贄傳「京邑如身、王畿如臂、而四海如指、此天子之──也」=大柄。

【大譴】 ダイケン 

甚だ重きつみとが。北史、李彪傳「臣有──、則造室而請死」=大罪。

【大元帥】 ダイゲンスヰ 

○國家の兵權を總ぶる元首、天皇の稱。=大總戎。○ 佛  明王部の總司の稱。

【大戶】 タイコ 

○大家に同じ。○唐人、洒量の大いなる者の稱。白居易詩「戶大嫌甜酒」

【大姑】 タイコ 

をっとの姉。

【大故】 タイコ 

○惡逆をいふ。論、微子「故舊無──則不棄也」○父母の大喪をいふ。孟、滕文公「不幸至於──」○大いなる事故。禮記「君子非有──、不宿于外」

【大悟】 夕イゴ 

大いに悟をひらく。後漢書、王常傳「伯升見常、說以合從之利、常──」

【大工】 ダイコウ 

○良きたくみ。六韜「大農·──·大商」=良工。○ ダイク   國  木匠。

【大功】 タイコウ 

○大いなるてがら。左傳「舜有──二十、而爲天子」○喪服の名、──は五月、小功は三月の喪服。

【成大功者不謀於衆 】 タイコウヲナスモノハシウニハカラズ 

大事業をなす者は、獨斷にてなす。戰國趙策「肥義曰、臣聞之、疑事無功、疑行無名、夫論至德者、不和於俗、────────」

【論大功者不錄小過 】 タイコウヲロンズルモノハセウクワラロクセズ 

大功を論じて之を賞するときは、其の小過は措いて問はず。漢書、陳湯傳「────────、擧大美者、不疵細瑕」

【大侯】 タイコウ 

○大いなる射布、諸侯の射る的。詩經「──旣抗、弓矢斯張」○大國の大名。史、功臣侯年表「──不過萬家、小者五六百戶」

【大口魚】 ダイコウギヨ 

たら(鱈)の異名。

【大鴻臚】 タイコウロ 

漢代の官名、外國の賓客を接待することを掌る〔漢書、百官表〕後世は鴻臚寺といふ一の衙門となる。

【大後天】 ダイコウテン 

 俗  明後後日。

【大巧若拙】 タイコウハセツノゴトシ 

眞の巧者は卻りて拙なるが如く見ゆ。老子「大直若屈、────、大辯若訥」

【大哭】 タイコク 

甚だしくなく。史記「漢王聞之、袒而──」

【大黑】 ダイコク 

○次條の略。○ 國  梵妻の稱、廚に居るが故。

【大黑天】 ダイコクテン 

 佛  天竺の神。三寶を愛し五衆を守り、飮食を饒にす、よりて廚 クリヤ の神とす、本邦にて福の神として尊ぶ。

【大極殿】 ダイゴクデン 

 國  昔、八省院の中央に在りし朝堂院の正殿。天子の政を執られし所。

【大昏】 タイコン 

次條に同じ。

【大婚】 タイコン 

天子の婚禮。春秋胡氏傳「不重──之禮、失其節矣」=大昏。

【大根】 ダイコン 

 國  野菜の一。=蘿蔔。

【大佐】 タイサ 

 國  陸海軍武官を將·佐·尉に三分し、各を又大·中·少の三っに分つ。──は佐官の最上級。

【大差】 タイサ 

おほちがひ。=逕庭。

【大才】 タイサイ 

大いなるはたらき。唐書「──當大用」

【大壯】 タイサウ 

○大いにさかんなり。○易の卦の名。乾下震上、雷が天上に在りて陽剛盛長の義。易經「──利貞」又「上古穴居而野處、後世聖人、易之以宮室、上棟下字、以待風雨、蓋取諸──」

【大造】 タイザウ 

大なる功。造は成就の義。左、成十三「是我有──于西也」

【大喪】 タイサウ 

天皇が大行天皇·太皇太后·皇太后·皇后の喪に服せらるる時をいふ。

【大棗】 タイサウ 

なつめの實を乾したるもの、藥用とす。

【大札】 タイサツ 

はげしき流行病〔周禮、膳夫〕=大疫。

【大衫】 タイサン 

 俗  支那服の上衣の名。=長衫。

【大繖】 タイサン 

大いなるきぬがさ。唐書「天子出──」

【大士】 タイシ 

○德行の高き士。管子「務物之人、無──焉」=大人。○周代の官名。左傳、注「──、治獄官也」○ 佛  大心を開發せる士の義にて菩薩の稱。=開士。

【大旨】 タイシ 

大指に同じ。

【大志】 タイシ 

大いなるこころざし。唐書「太宗爲人、聰明英武有──、而能屈節下士」

【大使】 タイシ 

○國家又は君主を代表せる最高の使者。北史「詔──巡行天下、求政善惡」○ 國  一國を代表して外國に駐在する外交官、公使の上に位す。

【大始】 タイシ 

一番のはじめ、おほもと。=太初·元始。

【大姉】 タイシ 

○一番年うへのあね。○あねを呼ぶ敬稱。漢書、孝景王皇后傳「帝下車泣曰、──何藏之深也」○ ダイシ   佛  女子の戒名に添へる語。

【大兒】 タイジ 

あに、轉じてすぐれたる賢者の義とす。後漢書、禰衡傳「──孔文擧、小兒楊德祖、餘子碌碌、莫足數也」

【大事】 ダイジ 

○大いなることがら。周禮、小宰「──則從其長、小事則專達」=大事件。○ 國  大切の義。

【大指】 タイシ 

大體のむね。史、汲黯傳「擇丞史、而任之、其治責──而巳」=大旨。

【大師】 タイシ 

○三公の一、文官中最高の官位。○ ダイシ 朝廷より高德の僧に賜はる尊號。○眞言宗にて特に弘法大師の稱。

【大蒐】 タイシウ 

春時、大いに田獵する義。春秋「──于比蒲」

【大醜】 ダイシウ 

わるもののかしら。易經「獲其──」=元惡。

【大自在天】 ダイジザイテン 

 佛  印度の造化の神。

【大慈大悲】 ダイジダイヒ 

 佛  非常なるいつくしみあはれみ、觀世音菩薩の德を頌する語。法華經「────常无懈倦」

【大瑟】 タイシツ 

二十七絃にして長さ八尺一寸、廣さ一尺八寸あるもの〔爾雅、注〕

【大人】 タイジン 

○子が父を呼ぶ稱。史、高祖紀「始──常以臣爲無賴」○母を呼ぶ稱。後漢書、黨錮傳「范滂將就誅、與母訣曰、──割不忍之愛」○大德の人の稱。小人の對。易、乾卦「飛龍在天、利見──」○おとな、成長せし人。○人を呼ぶ尊稱「仁兄──」

【大人虎變】 タイジンコヘン 

王者が天下を變革するは條理炳然として虎の毛の文采あるが如きをいふ。易、革卦「────、未占有孚」

【說大人則藐之】 タイジンニトクニハスナハチコレヲカロンズ 

尊貴の人の前にて、意見を述ぶる時には之を輕視しておそれず。孟、盡心「──────、勿視其巍巍然」

【大臣】 ダイジン 

○一國の政治の重任に當れる大官。○ 國  古、太政官の上官、太政大臣·左大臣·右大臣·內大臣等の稱。おほいまうちぎみ。○現制にては內閣の十大臣·宮內大臣·內大臣の稱。

【大侵】 タイシン 

大饑饉。韓詩外傳「一穀不升曰歉、二穀不升曰饑、三穀不升曰饉、四穀不升曰荒、五穀不升曰──」

【大信】 タイシン 

大いなるまこと。禮、學記「──不約、大時不齊」

【大進】 ダイシン 

 國  昔、中宮職·皇太后宮職.大膳職等の判官の長。

【大盡】 ダイジン 

○陰曆の大の月の最終の日、卽ち三十日。竹坡詩諸「朱希眞作──行詩」○ 國  遊郭等にてかねもちの客の稱。○田舍のかねもち。分限者 ブゲンシヤ 長者。

【大審院】 ダイシンヰン 

 國  最高の裁判所、法律上の問題を審議する所。

【大車】 タイシヤ 

○大いなるくるま。易經「──以載」○大夫の車。詩經、傳「──、大夫之車」

【大社】 タイシヤ 

○つか。=冢土。○ 國  おほやしろ、國土を守護する神社「國幣──」

【大赦】 タイシヤ 

天下の罪囚を悉くゆるす。史、始皇紀「──天下」首都の近傍或は一地方を限りて罪人を赦すを曲赦といふの對。

【大匠】 タイシヤウ 

すぐれたるたくみ。又、大工の長 カシラ 次條參看。

【代大匠斲】 ダイシヤウニカハリテケツル 

拙き者が巧なる者に代りて事を執る義。老子「夫────者、希有不傷其手矣」

【大祥】 タイシヤウ 

死後二十五ケ月目のまつり、三周忌。儀禮、士虞禮「期而小祥、又期而──」

【大將】 タイシヤウ 

○軍の總指揮官。抱朴子「──民之司命、社稷之存亡、於是乎在」○ 國  古の近衞府の長官、現制にて陸海軍武官の名。大佐參看。○轉じて總てかしらだつ者の稱。

【大常】 タイジヤウ 

○日月を畫きたる天子の旗。周禮、注「──、九旗之畫日月者」○漢代、宗廟の儀式を掌りし官〔漢書、百官公卿表〕後世は一の衙門となりて──寺といふ。

【太嘗會】 タイジヤウヱ 

 國  天皇卽位後、始めての新嘗祭 ニヒナメマツリ 豫め祭場(大嘗宮)を設け、悠紀 ユキ 主基 スキ を定めて新穀を奉らしめ、天皇親ら之を天神地祗に捧げて祭らる。

【大相國】 ダイシヤウコク 

 國  太政大臣の唐名。

【大上立德】 タイジマウハトクヲタツ 

人の最上の行は德を立て世を理め、人を濟ふに在るをいふ。左、襄、二四「叔孫豹聞之、大上有立德、其次有立功、其次有立言、雖久不廢、此之謂不朽」

【雖見大蛇不可見女人 】 ダイジヤヲミルトイヘドモニヨニンヲミルベカラズ 

女人の人を惱すの甚だしきをいふ。寶積經「一見於女人、能失眼功德、─────────」

【大嚼】 タイシヤク 

大いにかみくらふ。曹子建文「過屠門──、豈不快意」

【大酒】 タイシユ 

おほざけ、さけを多量にのむ。又、其の者。=鯨飮·痛飲。酒豪。

【大儒】 タイジユ 

眞に道を悟りたる大學者。荀、儒效「彼──者、雖隱於窮閻漏屋、無置錐之地、而王公不能與之爭名」

【大樹】 タイジユ 

將軍の異稱。後漢の馮異の故事。後漢書、馮異傳「爲人謙退不伐、諸將論功、異常獨屛樹下、軍中號爲──將軍」

【大樹之下無美草 】 ダイジユノモトニハビサウナシ 

賢路のふさがれる所には人才の出ござるに喩ふ。說苑、說叢「高山之巔無美木、傷於多陽也、────、──、傷於多陰也」

【大樹將顚非一繩所維】 ダイジユマサニタフレントスルハイチジヨウノツナグトコロニアラズ 

前の「大廈將顚云云」と同義。後漢書「穉謂茅容曰、爲我謝郭林宗、─────────、何爲棲棲、不邊寧處」樹、一本に木に作る。

【大戎】 タイジユウ 

大いなる兵車。詩經、疏「先啓行之車、謂之──」=元戎。

【大祝】 タイシユク 

かんぬし、神官。神を奉祀することを司る官〔周禮、春官〕

【大熟】 タイジユク 

大いにみのる。書經「歲則──」=大稔。

【大手筆】 ダイシユヒツ 

立派なる文章を書く手腕。又、其の手腕ある人。晉書、王珣傳「夢人以大筆如椽、與之、珣語人曰、此當有───事」

【大序】 ダイジヨ 

○詩經の總體の序。小序の對。○ 國  芝居狂言のはじまりの舞臺。=序幕。

【大暑】 タイシヨ 

二十四氣の一、小暑の次に來る氣節、陽曆七月二十三日頃より八月八日頃まで。

【大乘】 ダイジヨウ 

 佛  佛敎中の高尙なる理を說けるもの、慈悲博愛の主義によりて一切の衆生を救ふ義。小乘の對。乘は衆生をのせて彼岸に達する船の義。法華經「必以──、而得度脫」

【大乘經】 ダイジヨウキヤウ 

五部の───、一、華嚴經·二、大集經·三、般若經·四、法華經·五、涅槃經。

【大織冠】 タイシヨククワン 

 國  古、一級の位の者に授けし冠、正一位の官に相當す。

【大水】 タイスヰ 

○おほみづ。春秋「桓公元年秋──」=洪水。○大いなる河·海·湖などの稱。釋名「天下──四、謂之四瀆」

【大醉鬼】 ダイスヰキ 

 俗  よっばらひ。=泥醉者。

【大數】 タイスウ 

○甚だ多きかず。○おほよその數、おほかた實數に近きかず。

【大成】 タイセイ 

完全に成しあげる。、孟、萬章「孔子之謂集──」

【大成殿】 タイセイデン 

孔子の廟をいふ、孔子は羣聖人の道を集めて大成せしが故。宋史、禮志「熙寧七年、詔、辟雍文宣王殿、以大成爲名」=文廟·聖廟。

【大姓】 タイセイ 

いきほひ强き家がら。漢書、陳咸傳「豪猾吏及──犯法、輒論輸府」

【大勢】 タイセイ 

○大體のなりゆき。魏志、劉放傳「──以見」○おほぜい、多人數。鐵函心史「元虜──、合圍月餘」

【大生意】 ダイセイイ 

 俗  大營業、盛大なる商工業。

【大聲不入於里耳 】 タイセイハリジニイラズ 

正しき音樂は俗人には分らず、以て高尙なる言論は俗人に解せられざるに喩ふ。莊、天地「───────、折楊皇荂、則嗑然而笑」

【大小】 ダイセワ 

○おほいなると、ちひさきと。孟、滕文公「屨──同、則賈相若」○ 國  大刀と脇差 ワキザシ との稱。

【大笑】 タイセウ 

大いにわらふ。老子「下士聞道──之」

【大磧】 タイセキ 

ひろきすなはら。北史、魏太祖紀「追破之於──」

【大切】 タイセツ 

 國   ○だいじ、ていねい、ねんごろ。○ オホギリ 芝居の最終の幕。

【大雪】 タイセツ 

○二十四氣の一、小雪の次に來る氣節、十二月七日頃。孝經緯「小雪後、斗指壬曰──」○平地にて一尺に盈つる雪〔左、隱八〕

【大節】 タイセツ 

國家の大事變。論、泰伯「臨──、而不可奪也」

【大全】 タイゼン 

大いに全くして缺けなし。莊、田子方「微夫子之發吾覆也、吾不知天地之──」

【大漸】 タイゼン 

やまひが大いに進みて危篤なり、天子にいふ。書、顧命「疾──」

【大膳職】 ダイゼンシキ 

宮內省に屬する官の名、供御の膳部の調進を掌る。

【大千世界】 ダイセンセカイ 

 佛  十億國土の稱。須彌世界の一世界を一千世界といひ、一千世界千を中千世界、中千世界千を大千世界といふ。數術記遺「四天下共日月爲一世界、有千世界、有一鐵圍山遶之、名曰────」

【大前天】 ダイゼンテン 

 俗  一昨昨日。

【大沮】 タイソ 

大いにはばむ。五代史、王鎔傳「中流矢、臥輿中、梁軍──」

【大蜡】 タイソ 

周代、天子が十二月に行ふ祭の名。禮記「──、天子之祭也」=臘祭。

【大蘇】 タイソ 

蘇軾をいふ。軾の弟轍を小蘇といふの對。蘇轍詩「誰將家集過燕都、每被行人問──、莫把文章動蠻貊、恐妨談笑臥江湖」

【大層】 タイソウ 

 國  甚だ、おほいに。

【大蔟】 タイソウ 

音律の名、正月に配す、よりて正月の異名とす。禮記「孟春之月、律中──」

【大總統】 ダイソウトウ 

現時支那にて大統領の稱。

【大息】 タイソク 

ためいき、ためいきをつきて歎く。史、蘇秦傳「仰天──」

【大族】 タイゾク 

勢力ある家がら。漢書、高祖紀「齊楚──」

【大儺】 タイダ 

おにやらひ。禮記「季冬之月、命有司──」後漢書、禮儀志「季冬月、大享臘、先臘一日、爲──、曰之逐疫」

【大憝】 ダイタイ 

大いなるわるもの、憝は惡。書、康誥「元惡──、矧惟不孝不友」

【大體】 ダイタイ 

おほよそ、あらまし。淮南、汎論「觀小節足以知──」

【大內裏】 ダイダイリ 

 國  古、宮城のとなへ。おほうち。=禁裏·禁中。

【大道】 タイダウ 

大いなる道路。列、說符「──以多歧亡羊、學者以多方喪生」○人の行ふべき大いなる道。法言「小辯破──、而惑衆」

【大纛】 ダイタウ 

○節度使の樹てて行く旗。歐陽修、晝錦堂記「高牙──、不足爲公榮」○ 國  天子のみはた。天皇旗。

【大刀頭】 タイタウトウ 

刀劒の頭に環あり、環·還音通ず、よりて故鄕に還るといふ隱語とす。古詩「何日───」

【大膽】 ダイタン 

きもがふとい、度胸がある「──不敵」

【大地】 ダチイ 

とち、地球。=輿地。

【大如】 タイチ 

大いなる智識。史記「舜其──也與」莊、齊物「──閑閑、小知閒閒」

【大癡】 ダイチ 

○甚だしくおろか。韓愈文「凡我所爲、驅我令去小黠──」=大愚。○黃公望の號〔畫史〕

【大畜】 タイチク 

易の卦の名。易經「──利貞、不家食吉、利涉大川」

【大智不異愚】 タイチハグニコトナラズ 

大いなる智者は卻りて愚者の如し、君子は小智を弄せざる義。諸公和尙頌「衆生與佛無殊、大智不異於愚」蘇軾文「大勇若怯、大智若愚」

【太椿之壽】 ダイチンノジユ 

長壽の稱。莊、逍遙遊「上古有大椿者、以八干歲爲春、八千歲爲秋」

【大娘】 タイヂヤウ 

おかみさん。

【大腸】 ダイチヤウ 

腸の一部、小腸の下端より始まり、迂囘して肛門に通ずるもの。

【大長公主】 ダイチヤウコウシユ 

天子の姑 オバ 文獻通考「唐制、皇姑爲────、後亦謂之長長公主」

【大長秋】 ダイチヤウシウ 

皇后宮に附屬する官名、宮中の宣命を掌る。

【大丈夫】 ダイヂヤウブ 

○意思强くして立派なる人。孟、滕文公「富貴不能淫、貧賤不能移、威武不能屈、此之謂───」=偉丈夫。○ 國    ダイヂヤウブ 確實又、堅固の義。

【大蟲】 ダイチユウ 

虎の異名。傳燈錄「百丈問希運、見──麽、運便作虎聲一」

【大著】 タイチヨ 

人の著作を敬ひていふ。

【大氐】 タイテイ 

おほよそ。漢書「天下──無慮皆鑄金錢」=大抵·大略。

【大抵】 タイテイ 

おほかた、おほよそ。史、酷吏傳「──盡詆以不道」

【大帝】 ダイテイ 

○天をいふ。張衡賦「昔者──悅秦穆公而覲之、饗以鈞天廣樂」○歷代帝王中特に盛德ある天子の稱「明治──」

【大禘】 タイテイ 

先祖のおほまつり。詩說「大武康王、──報祀」

【大潮】 ダイテウ 

滿月或は新月の時、太陽と月とが同じ直線內にありて地球を引くとき生ずる大いなる潮汐をいふ。

【大適】 タイテキ 

○大いにたのしむ。宋書、陶楷傳「每醉則──」○いぬなづな、一名、ていれぎの異名。爾雅、疏「蕇一名亭歷、一名──」=葶藶。

【大畫】 タイテツ 

八十歲以上の老人の稱。王績詩「寄言悠悠者、無爲嗟──」

【大典】 タイテン 

○大いなる典籍 シヨモツ 後漢書、鄭康成傳「括囊──、網羅衆家」○大いなる國家の式典。舊唐書、職官志「辨明邦國之──」=大典禮。

【大篆】 ダイテン 

書體の名。周の宣王の時に史籒の作りしもの。漢書、注「周宣王太史作──十五篇」

【大斗】 タイト 

○大いなるひしゃく。詩經「酌以──、以祈黃耉」○大いなるます。史記「田常以──出貸、以小斗收之」

【大度】 タイド 

大いなる度量。史、高祖紀「有──、不事家人生產作業」

【大都】 タイト 

○大いなる都邑。左、隱元「先王之制、──不過參國之一」○おほむね、あらまし。韓愈文「乃命工人、存其──焉」

【大東】 ダイトウ 

○ひがしのはて。詩、魯頌、閟宮「奄有龜蒙。遂荒──」=極東。○ 國  我國の異稱。

【大同】 タイドウ 

○小差を問はずして混同する。莊、天地「不同同之之謂大」○太古、財產·權利·王位世襲等の事の未だ無かりし時代をいふ〔禮、禮運〕○地名。山西省──府に在り、秦に雲中といひ、漢に平城といふ。

【大同江】 ダイドウカウ 

朝鮮の河、源を平安南道劍山の附近に發し、西南流して平壤に至り、又西流して黃海に入る、朝鮮五大江の一、灌漑の利多し。=浿水。

【大同小異】 ダイドウセウイ 

殆ど同じくして少しく異なり。莊、天下「萬事畢同畢異、此之謂大同異」

【大統】 ダイトウ 

天子のちすぢ。後漢書、光武紀「東海王、陽皇后之子、宜承──」

【大統領】 ダイトウリヤウ 

共和政治の國の元首、國民より選擧せられて或年限の閒其の位に居る。

【大頭魚】 ダイトウギヨ 

 俗  鯛 タヒ の異名。

【大頭腦】 ダイトウノウ 

頭腦は體中の最も大切なる所、よりて甚だしく、肝要なる義とす〔朱子語錄〕

【大德】 タイトク 

○大いなる道德。又、それを有する人。中庸「──必得其位」○天地造化の仕事。中庸「小德川流、──敦化」○ ダイトコ 高僧の稱。僧輝記「行滿德高曰──」

【大德滅小怨 】 タイトクハセウヱンヲメツス 

大いなる恩德は小なる怨恨を滅す。左、定、五「王曰、─────道也」

【大內】 ダイナイ 

○天子の寢所。品字箋「凡人寢室皆曰臥內、而天子之禁中則曰──」○天子の府藏。又、それを掌る官。史、景帝紀「以──爲二千石」○ オホウチ   國  內裏 ダイリ の稱。

【大內記】 ダイナイキ 

 國  昔の官名。中務省 ナカツカサシヤウ に屬し、詔敕宣命 センミヤウ を草し、位記を書く等のことを掌る。

【大腦】 ダイナウ 

腦髓の一部。頭蓋 ヅガイ の前頭部に位し、全腦の大部分を占め、意識思慮の本源をなす。

【大納言】 ダイナゴン 

 國  昔の官名。太政官の次官、奏請及宣下の取次をなすことを掌る、下に中納言·少納言あり。

【大難】 ダイナン 

○大いなる困難。莊子「臨──、而不懼者、聖人之勇也」○大いに難しとする。埤雅「管子曰、墜岸千仞、人之所──也」

【大日如來】 ダイニチニヨライ 

 佛  梵語、毘盧遮那 ビルシヤナ の譯、日の神。

【大日本史】 ダイニホンシ 

 國  二百四十六卷。德川光圀の撰、神武天皇より後小松天皇に至る事を記し、本紀七十三卷·列傳一百七十卷·序目錄三卷に分つ。

【大任】 タイニン 

大いなる任務。呂覽「淳于髠曰、臣不肖、不足以當──」

【大波】 タイハ 

おほなみ。爾雅「──之神曰陽侯」=大浪。

【大拜】 タイハイ 

宰相に除する義〔北夢瑣言〕

【大施】 タイハイ 

日月と、のぼり龍と、くだり龍とを畫ける天子のはた。儀禮、覲禮「天子乘龍載──」

【大方】 タイハウ 

○世の中のかしこき人。莊、秋水「吾長見笑於──之家」○おほかた、あらまし。陸機文「見綏世之長御、識人情之──」

【見笑大方 】 タイハウニワラハル 

世の識見ある人に笑はれる、方は道、有道者の義。前條參看。

【大砲】 タイハウ 

數人の力にて發する火器。おほづつ。

【大寶】 タイハウ 

天子のくらゐ。易、繫辭「聖人之──曰位」

【大寶令】 ダイハウリヤウ 

 國  文武天皇の大寶年閒に制定せし法令。

【大白】 タイハク 

大いなるさかづき、白は酒の色、轉じて罰爵の義とす。左思、吳都賦、注「──杯名、有犯令者、擧而罰之」硏北雜誌「遂滿引一──」

【擧大白 】 タイハクヲアグ 

さかづきをあげる。酒を飮む。漢書、張良傳「君臣相遇、其難如此、復擧一大白」

【大漠】 タイバク 

ひろきすなはら。李賀詩「──沙如雪、燕山月似鉤」

【大兼小】 グイハセウヲカヌ 

大なる者は小なる者の代用をもなす。春秋繁露、度制「夫已有大者、兼小者」

【大法】 タイハフ 

○だいじな法律。後漢書、卓茂傳「律設──、禮順人情」○あらまし。=大略。

【大半】 タイハン 

おほかた、ほとんど、三分の二以上。漢書、高帝紀「今漢有天下──」

【大汎】 タイハン 

大いにひろし。沈約詩「隘此──庭、方知九垓局」

【大藩】 タイハン 

大いなる藩。南史、明僧紹傳「出撫──」

【大盤石】 ダイバンジヤク 

大いにわだかまれる石をいふ。廬山記「峰頭有───」

【大般若經】 ダイハンニヤキヤク 

六百卷。唐の玄弉三藏の譯せる佛經。

【大尾】 タイビ 

すべてのをはり、最終。=大團圓。

【大庇】 タイヒ 

大いにかばふ。杜甫詩「安得廣廈千萬閒、──天下寒士俱歡顏」

【大美】 タイビ 

天地の大いに美くしき道。莊子「天地有──而不言」

【大父】 タイフ 

ぢぢ、祖父。漢書、鄭當時傳「其知友皆──行」

【大夫】 タイフ 

○周代の官名、夫は扶なり、卿の下、士の上に位す。禮記「三公九卿、二十七──、八十一元士」○松の異名。泰山記「小天門有秦時五──松」○ 俗  醫師の異稱。國○五位の通稱。○藝人又、倡妓等の名に添へて呼ぶ稱。○ ダイフ 職の長官「東宮──」

【大府】 タイフ 

宮廷及政府の器物を藏める庫。

【大阜】 タイフ 

大いなるをか。爾雅「高平曰陸、大陸曰阜、──曰陵」

【大部】 ダイブ 

卷數多き書籍をいふ。梁高僧傳「大部經文」

【大廡】 タイブ 

大いなるいへ。史、李斯傳「居──之下不見人犬之憂」=大廈。

【大輔】 タイフ 

 國  昔の官名、各省の次官にて卿の下、少輔 セウイウ の上に位す。

【大風】 タイフウ 

○おほかぜ、大亂に喩ふ。漢、高祖歌「──起兮雲飛揚」○惡疾の名、かったい。素問「病──、骨節重、鬚眉落」

【大福】 タイフク 

○大いなるさいはひ。易林「平康正直、以綏──」=大幸。○大恩。漢書、王莽傳「──之恩」

【大不敬】 ダイフケイ 

甚だしき不敬、特に天皇·皇后、其の他皇室に對する不敬。

【大分】 タイブン 

○おほよそのきまり〔荀、榮辱〕○ 國    ダイブ よほど、だいぶ。

【大丙】 タイヘイ 

おほぞら。又、神の名。淮南子「昔者馮夷──之御也、乘雲車、入雲蜺、排閶闔、鑰天門、雖有輕車良馬、不能與之爭先」

【大兵】 タイヘイ 

○多くの兵。=大軍。○ ダイヒヤウ   國  大いなるからだ「──肥滿の男」

【大柄】 タイヘイ 

大いなる權力。禮記「禮者君之──也」宋史「公正之道、莫先於賞罰、斯爲政之──也」=大權。

【大廟】 タイベウ 

天子の祖先のおたまや。論、八佾「子入──每事問」=太廟。

【大辟】 タイヘキ 

おもきつみ、死刑をいふ。書、呂刑「──疑赦」

【大別】 タイベツ 

○おほきくわける、大區分する。○山名、湖北省漢陽縣の東北に在り。

【大辨】 ダイべン 

 國  太政官の屬官、左右二官に分れ、省の庶務を掌る。

【大變】 タイヘン 

○大いなるかはり。後漢書「天地譴怒、──仍見」○ 國  大いに、非常に、甚だしく「──熱し」

【大辯如訥】 タイべンハトツナルガゴトシ 

辯口のすぐれてよきものは、かへりて訥辯 トツベン の如く見ゆ。老子「大巧如拙、────」

【大母】 タイボ 

ばば、祖母〔漢書、文三王傳〕

【大酺】 タイホ 

天子より大いに酒食を民に賜はる。魏志「賜渤海郡百戶牛酒、──三日」

【大鵬】 タイホウ 

想像上の鳥の名、おほとり。莊、逍遙遊「北冥有魚、其名爲鯤、鯤之大、不知其幾千里也、化而爲鳥、其名爲鵬、鵬之背、不知其幾千里也」潛夫論「──之動、非一羽之輕也」

【大北】 タイホクタイハイ 

大いに敗る。國語「吳師──」=大敗。

【大僕】 タイボク 

古、天子の服位等の事を掌りし官。後世は──寺といふ一の衙門となる〔周禮、夏官〕

【大本】 タイホン 

おほもと。中庸「中也者天下之──也」=大原。

【大本營】 タイホンエイ 

戰時に大元帥の軍事を視たまふ陣營。

【大麻】 タイマ 

○あさ、莖の皮の纖維 センヰ を採りて布を織る。○神に奉る幣、ごへい。

【大枚】 ダイマイ 

 國  金額の多き義「──の金」

【大味】 タイミ 

すぐれたるあぢはひ。漢書、揚雄傳「──必淡、大音必希」

【大夢】 タイム 

長きあひだのゆめ、轉じて人生に喩ふ。莊子「且有大覺、而後知其──也」

【大名】 タイメイ 

○大いなるほまれ。又その者。史、越世家「──之下、難以久居」○ ダイミヤウ   國  大いなる名田の持主の義、將軍家の臣にて領地の多き者、轉じて德川時代に知行一萬石以上の者の稱。

【大命】 タイメイ 

○天の命。書經「集──于厥躬」○君主の命。後漢書、王常傳「臣蒙──」

【大明】 タイメイ 

太陽。禮、禮器「──生於東、月生於西」

【大盟】 タイメイ 

會同して大いにちかひをなす。周禮、地官「凡喪紀賓客、軍旅──、則飾其牛牲」

【大妙】 タイメウ 

道の至極せる處、又、大いに神妙なる義。莊子「顏成子游謂東郭子綦曰、吾聞子之言、七年而天成、八年而不知死、不知生、九年而──」

【大爺】 タイヤ 

 俗  旦那、貴下。=老爺。

【大洋】 タイヤウ 

おほうみ。耶律楚材詩「北漠絕窮域、西隅抵──」

【大約】 タイヤク 

おほよそ、おほまか。=槪略·大略。

【大勇】 タイユウ 

大いなる勇氣、義理より出づる勇氣。孟、公孫丑「吾嘗聞──於夫子矣」

【大用】 タイヨウ 

○重大なるつひえ。周禮「以待邦之──」○大いに任用する。史記「康子使召冉求、孔子曰、魯人召求將──之也」

【大欲】 ダイヨク 

大いなる私慾。禮、禮運「飮食男女、人之──存焉」=大慾。

【大老】 タイラウ 

○年おいたる賢者。孟子「二老者、天下之──也」○ 國  德川幕府の執政官の長。

【大勞】 タイラウ 

大いなるほねをり。左傳「──未艾、君子勞心、小人勞力、先王之制也」

【大亂】 タイラン 

大いなるみだれ。

【大理】 タイリ 

○刑獄を司る官、今の司法官。後世、──寺といふ一の衙門となる。春秋元命苞「堯爲天子得皋陶、聘爲──」○ 國  檢非違使別當の異稱。

【大理石】 ダイリセキ 

石灰岩の一種、質緻密、色は純白なり、又他石と混じて縞模樣をなすものあり、裝飾石材に用ふ、雲南省大理府より出づるが故に名づく。

【大陸】 タイリク 

○大いなる陸地。爾雅「──曰阜」○澤の名〔書經〕○島國に對して廣大なる陸地。

【大戮】 タイリク 

大いなる罪、死刑。史記「計畫始行、卒受──」=大辟。

【大倫】 タイリン 

人の大いなる道すぢ。孟、公孫丑「內則父子、外則君臣、人之──也」

【大梁】 タイリヤウ 

戰國の時の魏の都、今の河南省開封縣。

【大略】 タイリヤク 

○おほよそ、あらまし。孟、滕文公「此其──也」○大なるはかりごと。史記「安國爲人多──」

【大呂】 タイリヨ 

○周廟の大鐘の名、九鼎と共に周の寶器、轉じて貴重の義とす「九鼎──よりも重し」○十二律の一、十二月に配す、故に又十二月の異名とす。呂は拒、陽氣の大いに動き出でんとするを陰が拒ぎ抑へる義、禮、月令「季冬之月、律中──」

【大力】 タイリヨク 

○大いなるちから。晉書、郭璞傳「──而遲鈍」○造化の義。李白詩「──運天地、羲和無停輪」

【大禮服】 タイレイフク 

官吏などの最も重き禮服、官等に從ひて其の制を定む。

【大烈】 タイレツ 

大いなるいさを。書經「揚武王之──」

【大廉】 タイレン 

大いにいさぎよし。莊子「大仁不仁、──不嗛」

【大路】 ダイロ 

○ひろきみち。詩、鄭風「遵──兮、摻子之袪兮」○天子の車。=大輅。

【大輅】 タイロ 

天子のくるま。書、顧命「──在賓階面」=輦輅·大路。

【大論】 タイロン 

高大なる議論。申鑒「不聞──、則志不弘、不聽至言則心不固」

【大鏡】 オホカガミ 

八卷、藤原爲業の著といふ、一名世繼物語、文德天皇より後一條天皇に至る十四代百七十五年閒の帝王大臣などの事を記す。

【大藏省】 オホクラシヤウ 

 國  十省の一、國費支出·租稅徵收·國債·造幣等政府の財政一切を司る中央官廳。

【大袈娑】 オホゲサ 

 國  事實よりも大いなる義。針小棒大。

【大御所】 オホゴシヨ 

 國  德川時代、將軍の隱居せし者の尊稱。

【大年寄】 オホドシヨリ 

 國  德川時代の官名。老中の上に位す。

【大祓】 オホハラヒ 

 國  六月と十二月との末日に行ふ神事、半年閒の罪穢を祓ひ去る式。

【大宮人】 オホミヤビト 

 國  禁中に仕へて居る人。

【大向】 オホムカウ 

 國  芝居の舞臺の正面のうしろ、立見 タチミ する所。

【大率】 オホムネ 

あらまし。白居易詩「賢愚類相交、人情之──」=大略。

【大目付】 オホメツケ 

 國  德川幕府の老中の屬官、今の警察官の類。專ら諸大名に係る事を掌る。

【大樣】 オホヤウ 

 國  ゆったりとしてこせつかず。

【大凡】 オホヨソ 

たいてい。韓愈文「──物不得其平則鳴」

【大童】 オホワラハ 

 國  髮をふりみだす。=被髮。

【大和魂】 ヤマトダマシヒ 

 國  やまとごころ、日本人固有の氣質。=和魂。

1畫

夭  

①エウ [蕭]

②アウ·オウ [皓]

③エウ [篠]

①──はにこやか(愉)のびやか、顏色和げる貌。又、少 ワカ くしてうつくし(少好)○草の盛んなる貌。○わざはひ(災·禍)「天─」

②物の生じて未だ壯んならざる貌。

③かがまる(屈)○わかじに(短折)

【夭遏】 エウアツ 

次條に同じ。淮南子「莫能──」

【夭閼】 エウアツ 

ふさぎとどむ。莊、逍遙遊「背負靑天、而莫之──者」=夭遏·雍閼。

【夭夭】 エウエウ 

○わかくうつくしき(少好)貌。詩、周南「桃之──」○顏色よろこばしき貌。論、述而「子之燕居申申如也──如也」

【夭姣】 エウカウ 

わかくうつくし。張羽、歌曲「靈──兮好服」

【夭矯】 エウケウ 

飛び騰 アガ る貌。郭璞、江賦「撫凌波而鳧躍、吸翠霞而──」

【夭蟜】 エウケウ 

○龍の飛びあがる形容。〔司馬相如、大人賦〕○頻りに伸びる形容。同、上林賦「──支格」○木の枝の曲る貌〔漢書〕

【夭昏】 エウコン 

わかじに、昏は人生れて未だ命名せずして死するをいふ。左、昭十九「札瘥──」

【夭札】 エウサツ 

わかじに、夭は天年を盡さざる義、札もわかじに。左、昭二「癘疾不降、民不──」=夭折·夭逝。

【夭死】 エウシ 

わかじに。=天逝·夭折。

【夭斜】 エウシヤ 

正しからず。白居易詩「錢塘蘇小小、人道最──」=夭邪。

【夭傷】 エウシヤウ 

わかじに。戰國策「生命壽長終其年、而不──」

【夭殤】 エウシヤウ 

わかじに、二十歲未滿にて死する。韓愈詩「百口無──」=夭折·夭札。

【夭壽】 エウジユ 

わかじにと、ながいきと。短命と長壽と。

【夭逝】 エウセイ 

わかじに。=夭折·夭死。

【夭折】 エウセツ 

わかじに。吳志、孫登傳「孫登臨終、疏云、顏囘有上智之才、而尙──、況臣愚陋、年過其壽」=短折。

【夭那】 エウダ 

たをやか、なまめかしき形容、又、其の姿。=夭娜·婀娜。

【夭娜】 エウダ 

前條に同じ。袁桷詩「──瑤池神」

【夭桃】 エウタウ 

わかく美くしき桃の木、わかき婦女の容色に喩ふ。詩、周南、桃夭「桃之夭夭、灼灼其華、之子于歸、宜其室家」

【夭厲】 エウレイ 

疾疫をいふ。左傳「盜賊公行、而──不戒」

【夭枉】 エウワウ 

わかじに。唐書「少死則曰──」=夭折。

夬  

①クヮイ·ケ [卦]

②ケツ [屑]

①さだむ(決)○わかつ(分)○易の卦の名、乾下兌上。

②ゆがけ(射韝)=鉤弦。

【 】 ケツケツ 

おもひきりよし、果決なり。易經「君子──」

太  

タイ ダイ [泰]

一音タ大に通ず泰に同じ

○おほいなり、ふとし、大の極なり。○はなはだ(甚)─甚とも連用す。○とほる(通)○はじめ「─初」○尊き者の中にて最も貴き者の稱「老─爺」

 同訓異義 

ハナハダシ 太·甚·泰·酷等の別は甚(甘部四畫)を見よ。

【太阿龍泉】 タイアリヨウセン 

古の名劍の名。楚王、風胡子(胡一に湖に作る)を召して、吳越に之き、歐冶子干將に見えて、鐵劍三枚を爲らしむ、一を龍泉(一に泉を淵に作る)といひ、二を太阿(一に太を泰に作る)といひ、三を上巿(一に工布た作る)といふ〔越絕書〕

【太尉】 タイヰ 

秦·漢の官名、武事を掌る、尊きこと丞相と等し、三公の首に居る、歷代相承け明に至りて廢す。

【太一】 タイイツ 

○一番はじめ。莊子「主之以──」太始·太初。○天帝のゐます所。楚辭「登──兮玉臺」○星の名。史、天官「──中宮極星」=太乙。○終南山の一名。=太乙。

【太乙】 タイイツ 

前條を見よ。

【太陰】 タイイン 

○月。太陽(日)の對。春秋元命苞「──水精爲月」○冬、陰氣甚だしき義〔獨斷〕○ ダイオン 陰陽道にて太歲神の皇后。=太陰神。

【太隂曆】 タイインレキ 

月の滿虛を以て基礎とせしこよみ。太陽曆の對。=陰曆·舊曆。

【太佳】 タイカ 

はなはだよろし。

【太昊】 タイカウ 

太皞に同じ。

【太康】 タイカウ 

太平に同じ。魏明帝、樂府「百姓謳吟詠──」

【太皓】 タイカウ 

天をいふ、後漢書、郞顗傳「──悅和、雷聲乃發」注「──天也」

【太皞】 タイカウ 

春の神。淮南子「東方木也、其帝──、其佐句芒」

【太行險】 タイカウノケン 

太行は山の名、極めて險岨を以て聞ゆ。歐陽建詩「不涉───、誰知斯路難」

【太閤】 タイカフ 

 國  關白の子、父に代りて關白となりし者、其の父卽ち前の關白を呼ぶ尊稱。落飾すれば禪閤といふ。

【太閤記】 タイカフキ 

二十二卷、豐臣秀吉一代の事蹟を錄す、小瀨甫庵の著。

【太監】 タイカン 

宦官、去勢せし男子。

【太簡】 タイカン 

甚だ簡略にして敬なし。論雍也「居敬而行簡、以臨其民、不亦可乎、居簡而行簡、無乃──乎」

【太儀】 タイギ 

○萬物のみなもと。張華文「──斡運、天廻地游」○唐代、公主(天子の女)の母の稱。王建、宮詞「──前日暖房來」

【太鈞】 タイキン 

造物者をいふ、造物者の萬物を作るは陶工の器を鈞上に作るに似たるが故、鈞は、陶器を製する旋盤。漢書、賈誼傳「──播物」=大鈞。

【太虛】 タイキヨ 

おほぞら。杜甫詩「東嶽雲峯起、溶溶滿──」=太空。

【太極】 タイキヨク 

天地未だ分れず元氣の混沌たる時をいふ。易、繫辭「易有──、是生兩儀」

【太極圖】 タイキヨタヅ 

宋の周敦頤が工夫せし圖形、其の解釋を記せしものを───說といふ。太極卽ち宇宙の根本義を圖解せしもの。

【太極殿】 タイキヨクデン 

曹魏より唐代に至るまで天子の正殿の稱、本邦亦此にならひて─── ダイゴクデン といふ。

【太空】 タイクウ 

おほぞら、天をいふ。蘇軾、喜雨亭記「──冥冥、不可得而名」=太虛。

【太君】 タイクン 

官人の母にて縣又は郡に封ぜられし者の稱〔宋史、職官志〕

【太和】 タイクワ 

○至正太中の道。易經「各正性命、保合──」○陰陽の調和せる氣。班固、答賓戲「沐浴玄德、稟仰──」

【太皇太后】 タイクワウタイコウ 

天子の嫡祖母。

【太古】 タイコ 

○おほむかし。○學問上にて區劃せし年代の最も古き期閒、上古の前。

【太鼓】 タイコ 

樂器の一、木を圓くくり拔きて胴とし、牛又は犬の革を張り、桴 バチ にて打つもの。

【太公】 タイコウ 

○祖父。史、齊世家「西伯獵、得呂尙曰、吾──望子久矣」○父。史、高祖紀「高祖五日、一朝──、如家人父子禮」○曾祖父〔陔餘叢考〕

【太公望】 タイコウバウ 

周の文王の師、呂尙をいふ。史、齊太公世家「西伯獵果遇太公於渭之陽、與語大說曰、自吾先君太公、曰當有聖人適周、周以興、子眞是邪、吾太公望子久矣、故號之曰───、載與俱歸、立爲師」

【太后】 タイコウ 

天子の御母。漢書、外戚傳、序「帝母稱皇──、祖母稱太皇──」=皇太后。

【太湖石】 タイコセキ 

峯·溪·洞などの形をなせる石、盆景、庭石等に用ふ。支那の太湖より出づるが故。五雜俎「洞庭西山出───、黑質白理、高逾尋丈、峯巒窟穴、賸有天然之致」

【太宰】 タイサイ 

百官の長、今の總理大臣。禮記「吳侵陳、──噽使於師」=冢宰。

【太宰帥】 ダザイノソツ 

次條を見よ。

【太宰府】 ダザイフ 

 國  古、筑前の國に置かれし官府。九州·壹岐·對馬を管轄し、又唐·三韓、諸蕃との外交上の事を掌る、其の長官を太宰帥といふ。

【太歲】 タイサイ 

○木星の異名。爾雅「──在甲曰閼逢」○陰陽道にて八將神の一「──神」

【太倉】 タイサウ 

官の米ぐら。史、平準書「──之粟、陳陳相因」

【太倉稊米】 タイサウノテイマイ 

滄海の一粟と同義、太倉は官府の米ぐら、稊は小米、釋の類。莊、秋水「計中國之在海內、不似稊米之在太倉乎」

【太早計】 タイサウケイ 

はやまる、事を爲すに早きに失する。莊、齊物「汝亦───、見卵而求時夜、見彈而求鶚炙」

【太草草】 タイサウサウ 

甚だいそがし、非常に草急。五代史、漢臣傳「昨───耳」

【太瘦生】 タイサウセイ 

はなはだやせる、生は助辭。李白詩「爲問緣何───」

【太子】 タイシ 

位を嗣ぐべき子、古は天子諸侯の長男、漢以後は天子のみにいふ。禮、王制「王太子王子、羣后之──」

【太史】 タイシ 

○天時星曆祭祀等の事を掌る官〔周禮、春官〕○其の時代の記錄を掌る官。

【太史氏】 タイシシ 

歷史を掌る官人。韓愈、送楊少尹序「───又能張大其事、爲傳繼二疏踪跡不」

【太史簡】 タイシノカン 

齊の太史が、崔抒の其の君莊公を弑せしことを竹簡に直筆して諱まざりし故事〔左、襄二五〕文天祥、正氣歌「在齊───」

【太始】 タイシ 

太一に同じ。

【太姒】 タイジ 

人名、有莘氏の女、文王の妃となる。詩經「──嗣徽音」

【太師】 タイシ 

官名、三公の一。文官の最上位、天子の師法たるベき義〔書、周官〕

【太甚】 タイジン 

はなはだし。戰國策「嘻亦──矣、先生之言也」

【太上】 タイジヤク 

○極めてすぐれたる義。左、襄二四「──立德」○おほむかし、三皇五帝の世。曲禮「──貴德」○天子〔荀、君子〕=至尊。

【太上皇】 タイジヤウクワウ 

○天子のちち。漢書、高帝紀「上尊太公曰───」○ ダジヤウクワウ   國  天皇が御位を禪られたる後の尊號。太上天皇·上皇·仙洞。

【太常寺】 タイジヤウジ 

唐代、禮樂郊廟社稷の事を掌れる官衙。唐書「───卿一人、少卿二人」

【太守】 タイシユ 

○郡の長官。漢書、職官志「郡守秦官、掌治其郡、秩二千石、景帝更名──」○ 國  古、上總·常陸·上野の三國の守、親王之に任ず。又、國守大名の稱。

【太初】 タイシヨ 

萬物の由りて生ずるはじめ。列、天瑞「──者、氣之始也」

【太初曆】 タイシヨレキ 

漢の武帝の太初元年に閎鄧平の造りし曆。漢書、律歷志「各自增減以造漢───」

【太淸】 タイセイ 

大いに淸し、天をいふ。鶡冠子「聖人之德、上及──、下及太寧、中及萬靈」太寧は地の異名。

【太祖】 タイソ 

○初代の帝王。詩經「──太師皇父」○大夫などの初代。=初祖·始祖。

【太素】 タイソ 

○天地の未だ成立せざる時。開闢以前。列、天瑞「──者、質之始也」○極めて質朴の性。

【太簇】 タイソウ 

陰曆正月の律の名、轉じて正月の異名。禮、月令「孟春之月、律中──、東風解凍」=大蔟。

【太宗吞蝗】 タイソツイナムシラノム 

貞觀政要「貞觀二年京師旱、蝗蟲大起、太宗入苑視禾、見蝗蟲掇數枚、而呪曰、人以穀爲命、而汝食之、是害于百姓、百姓有過、在予一人、爾其有靈、但當蝕我心、無害二百姓、將吞之、左右遽諫曰、恐成疾不可、太宗曰、所冀移災朕躬、何疾之避、遂吞之、自是蝗不復爲災」

【太憎生】 タイソウセイ 

はなはだにくし、生は助辭。太俗生參看。

【太息】 タイソタ 

ためいきをつく。史、高祖紀「喟然──」

【太俗生】 タイゾクセイ 

はなはだ鄙俗なる義、生は助辭。增續韻府「傳燈錄、南泉坐次、一僧叉手而立、南泉曰、───、僧合掌、南泉曰、太憎生」

【太孫】 タイソン 

天子の御まご。=皇孫。

【太太】 タイタイ 

 俗  奥樣、夫人。

【太沖】 タイチユウ 

虛靜にして無爲なる義、沖はむなし。莊子「吾鄕示之以──」

【太寧】 タイネイ 

○地。甚だ安泰なる義。太淸を見よ。○甚だやすらか。忠經「天地──、君之德也」

【太保】 タイハウ 

官名。三公の一、天子の德を保ち安んずる義。書、周官「立太師·太傳·──、玆惟三公」

【太白】 タイハク 

○よひの明星。爾雅「明星謂之啓明」注「──星也、晨見東方、爲啓明、昏見西方爲──星」=金星。○ 國  精製せし白砂糖。

【太白捉月】 タイハクツキヲトラフ 

李白は采石にて醉ひて水中の月を捉らんとして死す。侯鯖錄「李白過采石、酒狂入水、捉月而死」

【太半】 タイハン 

三分の二以上、おほかた。楚辭、七諫「年旣已過──兮、然輡軻而畱滯」=大半。

【太煩】 タイハン 

はなはだしく繁雜なり。白虎通「所以五歲巡狩、何爲──也」

【太父】 タイフ 

祖父。史、畱侯世家「──開地」

【太傅】 タイフ 

官名。三公の一、天子をたすけ傅 カシヅ く義。太保を見よ。

【太夫人】 タイフジン 

父死し嗣ぎて諸侯となりし子が其の母を稱していふ。漢書、文帝紀、注「列侯之妻稱夫人、列侯死、子復爲列侯、乃得稱───」

【太平】 タイヘイ 

世が治まりて平か。唐書「──無象」=泰平。

【太平樂】 タイヘイガクタイヘイラク 

○雅樂の曲名。破陣樂。○ 國    タイヘイラク 氣まま勝手の言ひぶん。

【太平記】 タイヘイキ 

四十一卷、後花園天皇の文保二年より、後村上天皇の正平二十二年に至る、五十年閒の事を記す、作者未詳。

【太廟】 タイベウ 

○初祖のおたまや。太祖の廟。○ 國  伊勢大神宮。

【太卜】 タイボク 

官名。卜筮の官の長。殷以後隋唐に至るまで置く。=卜正。

【太僕】 タイボク 

○周代軍政の長官。○唐代輿馬を掌る官。齊職儀「衆僕之長曰──、掌輿馬」

【太僕寺】 タイボクジ 

唐代、厩牧輪輿の政を掌れる官衙。唐書「───、卿一人、少卿二人」

【太洋】 タイヤウ 

大陸に對して大海の稱。

【太洋島】 タイヤウタウ 

大陸と遠く隔たりて、成立も地脈も全く無關係なる島嶼。

【太陽】 タイヤウ 

○日。太陰(月)の對。張衡、靈憲序「日者──之精、積而成烏象」○夏の異名、陽氣甚だしき義。獨斷「冬爲太陰、夏爲──」

【太陽系】 タイヤウケイ 

太陽を中心として運行する天體の一團體、太陽·惑星(地球など)衞星(月)彗星·流星等之に屬す。

【太陽曆】 タイヤウレキ 

地球が太陽を一周する三百六十五日二四二二の日數を一年とせし曆。太陰曆の對。=陽曆·新曆。

【太牢】 タイラウ 

牛·羊·豕の牲 イケニヘ を合せ具へたる饗食、羊·豕のみは少牢といふ〔公羊、桓、八、注〕轉じて極めて盛んなるごちそう。王襃、聖主得賢臣頌「羮藜含糗者、不足與論──之滋味」

【太沽】 ターク 

直隸省に屬し、白河の口を扼せる要地、砲臺あり。

【太政官】 ダジヤウクワン 

 國  昔の最高の官府の名、其の長官を太政大臣といふ。

【太刀取】 タチトリ 

 國   ○切腹の介錯人。又、斬罪の刑人の首を刎ねる者。○相撲にて橫綱力士の土俵入に太刀を持ちて從ふ力士。

天  

テン [先]

○あめ、あま、そら、おほぞら。地の對。○萬物の主宰者、造化、造物者。○時節、氣候「─候」「春─」○正義、眞理。孟、離婁「順─者存、逆─者亡」○無爲自然の道。人爲人工の對「─工」「─然」○帝王、又は其れに關する敬稱「─顏」○いただき(顚)うへ(上)上にいただく義、臣が君を稱し、妻が夫を稱する語「所─」○仰ぎ賴る所の者をいふ。漢書、酈食其傳「王者以民爲─、而民以食爲─」○うまれつき(性質)「─才」○めぐりあはせ(運命)○髡刑、五刑の一。一說に而字の誤。○ 佛  人閒界の上に在る世界「三十三─」○佛敎、又、耶蘇敎などにて神の居所「─堂」「─國」○ 俗  一日の義「今─」「明─」

【天殃】 テンアウ 

天より降さるるとがめ。孟、梁惠王「不取必有──」

【天位】 テンキ 

天子のくらゐ。書、太甲「──艱哉」

【天威】 テンヰ 

○上帝の威力。○天子の御威光。左、僖九「──不違顏咫尺」○天然に備はれる威嚴。漢晉春秋「獲曰、公──也、南人不復反」

【天爲】 テンヰ 

天のしわざ。人爲の對。

【天意】 テンイ 

天のこころ。韓非子「──無所怫忤、辭言無所擊摩」

【天維】 テンヰ 

天のつな、天の成立するおほもと。淮南子「──建元、常以寅始」=天綱。

【天佑】 テンイウ 

次條に同じ。

【天祐】 テンイウ 

天のたすけ。易、大有「上九自──之、吉、元不利」=天佑·天助·天贊。

【天胤】 テンイン 

天命によりて立ちたる、天子のちすぢ。書、高宗彤日「罔非──」=天嗣。

【天衣無縫】 テンイムホウ 

天女の著てゐる衣服は、ぬひめがない、詩文などの斧鑿の痕なく、手ぎはよく自然にすらりと出來たるに譬へていふ。靈怪錄「郭翰暑月臥庭中、有人冉冉自空而下、曰、吾織女也、徐覗其衣、竝無縫、翰問之、曰、天衣本非針線爲也」

【天宇】 テンウ 

○おほぞら。陶潛詩「昭昭──闊、皛皛川上平」杜甫詩「──淸霜淨、公堂宿霧披」=天空。○天下の義。晉書、后妃傳「母儀──、助宣王化」

【天運】 テンウン 

天より授かりし運命、自然のまはりあはせ。

【天淵之差】 テンエンノサ 

甚だしくへだたる。詩、大雅、旱麓「鳶飛戾天、魚躍于淵」=雲泥之差。

【仰天而唾】 テンヲアフギテツバキス 

人を害せんとして卻りて己を傷ふ意に喩ふ。四十二章經「惡人欲害賢者、────、唾不汚天、還汚己面」

【天應】 テンオウ 

上帝のこたへ、上帝の感應。北史、崔浩傳「──人和、時會竝集」

【不怨天不尤人】 テンヲウラミズヒトヲトガメズ 

己世に遇はざるも、天を怨みず、又、人を咎めず、益、身を修むるをいふ。論、憲問「──────、下學而上達、知我者其天乎」

【指天射魚】 テンヲサシテウヲヲイル 

無益なる事の喩。說苑、尊賢「秦用趙高、而天下知其亡也、非其人、而欲有功、譬其若夏至之日、而欲夜之長射魚指天、而欲發之當」

【樂天】 テンヲタノシム 

天の道理を樂む。易、繫辭「──知命、故不憂」

【天恩】 テンオン 

上帝のめぐみ。又、天子のめぐみ。後漢書、班超傳「──殊絕、誠非小臣所當被蒙」

【天下】 テンカ 

○天の下、世界。書、大禹謨「奄有四海、爲──君」○一國の內。

【小天下 】 テンカヲセウナリトス 

天下を小さしと思ふ。眼界の廣きにいふ。孟、盡心「孟子曰、孔子登東山而小魯、登太山而───」

【天下太平】 テンカタイヘイ 

天下よく治りて平か。禮、仲尼燕居「言而履之禮也、行而樂之樂也、君子力此二者、夫是以────也」

【天下無】 テンカニナシ 

天下にたぐひなし。蘇軾詩「八月十八潮、壯觀───」

【天下士】 テンカノシ 

天下に名だかき人。史、魯仲連傳「吾乃今日知先生爲天下之士也」

【天下主】 テンカノシユ 

帝王の稱。後漢書、鄧后紀「陛下爲───」

【爲天下戮 】 テンカノリクトナル 

戮は刑戮、天下中の人と共に戮する。一說に僇に通じ僇辱の義。戰國策「身死國亡、────」

【天下無雙】 テンカムサウ 

天下にならびなし。後漢書、黃香傳「香家貧、內無僕妾、躬執苦動、盡心奉養、遂博學經典、究精道術能文章、京師號曰、────、江夏黃童」

【天河】 テンカ 

あまのがは。詩經、箋「雲漢謂──也」沈佺期詩「曉月臨牕近、──入戶低」=銀河·天漢。

【天家】 テンカ 

天下を以て家となす者の義、天子の稱〔獨斷〕=天皇。

【天戒】 テンカイ 

天のいましめ。書經「先王克謹──」

【天界】 テンカイ 

○おほぞら。陶濳詩「淸氣澄餘滓、杳然──高」○ 佛  天に在る世界、天上界。劉潛、平等刹下銘序「──飾其四圍、龍宮陳其七寶」

【天街】 テンカイ 

昴星と畢星との閒をいふ。史、天官書「昴畢閒爲──、其陰陰國、其陽陽國」

【天蓋】 テンガイ 

○天がおほふ。後漢書、延篤傳「不知天之爲蓋、地之爲輿」 國   ○釣り下げたるきぬがさ。又其の形に造りし葬具。○虛無僧 コムソウ のかぶる深編笠。

【天涯地角】 テンガイチカク 

天のかぎり、地のはて。徐陵文「天涯藐藐、地角悠悠」韓愈文「一在天之涯、一在地之角」

【天涯如比隣 】 テンガイヒリンノゴトシ 

遠隔の地も隣家に居るが如き思をなす。王勃詩「海內存知已、─────」

【天巧】 テンカウ 

自然のたくみ。王炎、冬雪行「玉妃剪水出──、飛花萬點爭淸姸」=天工。

【天幸】 テンカウ 

上天のめぐみ。史、霍去病傳「軍亦有──」

【天郊】 テンカウ 

王者の天をまつる名。晉書「──所祭曰皇天之神」=大郊。

【天香】 テンカウ 

すぐれてよき香。李綱、蓮花賦「貯盈盈之眞色、汎苒苒之──」

【天香國色】 テンカウコクシヨク 

牡丹の異名。國色は國中第一の美色。王建詩「國色朝酣酒、天香夜染衣」

【天行健】 テンカウハケン 

天の行はすこやか。易、乾卦「───、君子以自强不息」

【天角】 テンカク 

天の一隅。庾信詩「奔河絕地維、折柱傾──」

【天樂】 テンガク 

天上の音樂。劉禹錫詩「雲輧欲下星斗動、──一聲肌骨寒」=鈞天廣樂。

【天鵝絨】 テンガジユウ 

織物の一種、びらうど〔西班牙語〕

【天眼】 テンガンテンゲン 

 佛  普通の肉眼にて見ること能はざる物事を見透す眼の力。佛國記「阿那律以──遙見世尊」

【天眼通】 テンガンツウテンゲンツウ 

 佛  六神通の一、能く六道の衆生の生死·苦樂の相を見、及び一切世閒種種の形色を見て障礙あることなき神通力〔注界次第〕

【天監】 テンカン 

天がかんがみる、上帝の監視。書、太甲「──厥德、用集大命、撫綏萬邦」=天鑑·天鑒。

【天漢】 テンカン 

○あまのがは、天の中央に多數の星が集りて河の如く見えるもの。詩、小雅、大東「維天有漢、監亦有光」劉禹錫詩「池色連──」=銀河·雲漢·天河。○漢の武帝の年號。

【天顏】 テンガン 

天子の御かほ。杜甫詩「晝漏稀聞高閣報、──有喜近臣知」=龍顏·聖顏。

【天癸】 テンキ 

つきのもの、つきやく。黃帝素問「女子二七而──至」=月經·月水。

【天紀】 テンキ 

天理の運行する自然のみちすぢ、日·月·星辰·曆數の稱、天の綱紀の義。書、胤征「俶擾──」

【天氣】 テンキ 

天の氣色をいふ。魏文帝詩「秋風蕭瑟──涼」=天候。

【天氣圖】 テシキヅ 

氣象を觀測する爲めに多くの區域を分ち、每區に於ける天氣の模樣 モヤウ を集合して圖に現はしたるもの。

【天氣豫報】 テンキヨハウ 

天氣圖により風雨陰晴などの氣象を未然に推測して天氣を豫め知らせる。

【天旗】 テンキ 

西方にある九星の名〔史、天官書〕

【天器】 テンキ 

うまれつきのはたらき。淮南子「此全其──者」

【天機】 テンキ 

○造化のはたらき。又、意思。淮南子「內有以通于──」=天意。轉じて機密の義。○人の天より受けたる機智。莊、秋水「動吾──」○國家の機務。吳志、孫權傳「君臨萬國、秉統──」○ 國  天子の御機嫌「──奉伺」

【天驥】 テンキ 

天馬に同じ。晉書、庾闡傳「莫邪挺鍔、──汗血」

【天弓】 テンキウ 

 ニジ の異名。白虎通「──虹也、亦名帝弓」

【天牛】 テンギウ 

かみきり。木くひむしの羽化せしもの、甲翅黑く白斑あり、頭に二本の角の如き觸鬚を有し、齒强く、能く髮をくひ切る。酉陽雜俎「──、黑角蟲也」

【天咎】 テンキウ 

天のとがめ。楊雄、兖州牧箴「有國雖久必畏──、有民雖長、必懼人殃」

【天球儀】 テンキウギ 

天球を小さき模型に造り、天體の分布を示したるもの。地球儀の對。

【天均】 テンキン 

是も非と通じて等しきものと觀ずる義。莊子「聖人和之以是非、而休乎──」

【天魚】 テンギヨ 

星の名。甘石星經「──一星在尾河中、主雲雨理陰陽」

【天狗】 テング 

○流星の聲を發するもの。史、天官書「──狀如犬、奔星有聲、其下止地類狗」○怪獸の名。山海經「陰山有獸焉、其狀如狸而白首、名曰──、其音如橊橊、可以禦凶」○ 國  人の形して鼻長く、羽あり、深山に棲み空中を飛行すといふ怪物。鼻の高きより轉じて、自慢する者に喩ふ。

【天具帖】 テングデフ 

 國  美濃に產する質薄く且つ柔かなる紙の名、楮の纖維にて製す、白くして麗し、貴重品を包み、硝子の內貼、又は版木に貼るなどに用ふ。=典工帖。

【天君】 テンクン 

心をいふ。荀子「心居中虛以治五官、夫是之謂──」范俊、心箴「君子存誠、克念克敬、──泰然、百體從令」

【天火】 テンクワ 

○天然に起りし火災。左、宣十六「凡火、人火曰火、──曰災」○陰陽道にて火を愼むべき日、屋根葺·棟上等を忌む。

【天戈】 テンクワ 

天子のほこ、天兵に同じ。韓愈表「雷厲風飛、日月淸照、──所麾、無不從順」

【天瓜】 テンクワ 

きからすうり。爾雅「栝樓」注「齊人呼之爲──」=王瓜。

【天花】 テンクワ 

 俗  はうさう(疱瘡)

【天花墜】 テンクワオツ 

 佛  梁武帝の時、雲光法師が經を講ぜしときに、天花が散り布きたりといふ故事。高僧傳「梁僧法雲講次、天花散墜」

【天花粉】 テンクワフン 

あせしらず。木烏瓜 キカラスウリ の根より製せし澱粉。あせもに撒布して効ありといふ。

【天外】 テングワイ 

天のそと、非常に遠く或は高き所。

【天潢之派】 テンクワウノハ 

皇族の稱、天潢は銀河 アマノガハ 皇族は天河の分派の如し、故にいふ。史、天官書「王良旁有八星絕漢曰天潢」魏、曹固表「王孫公子、疏派天潢、宜親宗室、强幹弱枝」

【天官】 テンクワン 

○周代の宰相、六職の一。周禮「──冢宰、曰治官之屬」禮記「天子建──先六大、曰大宰·大宗·大史·大祝·大士·大卜、典司六典」○すべての天子に仕ふる官吏の稱。獨斷「百官小吏曰──」○星の異名。史記自序、注「星有尊卑、若人之官曹列位、曰──」

【天患】 テンクウン 

天然のわざはひ。周禮「歲時有──民病」

【天刑】 テンケイ 

○自然に定まれる法。周禮「上非──、下非地德」○天より降したまふ罰。=天罰。

【天刑病】 テンケイビヤウ 

癩病 ライビヤウ の一名。

【天啓】 テンケイ 

天のみちびき、天が人の運命を開き起す。李白詩「明斷自──、大略駕羣才」

【天慶】 テンケイ 

上帝より賜はるよろこび〔漢書、兒寬傳〕禮記「黃耉無疆、受天之慶」

【天經】 テンケイ 

○天より定めし道。孝道をいふ。孝經「夫孝、天之經也、地之義也」○禮をいふ。左、昭二五「夫禮、天之經也」

【天警】 テンケイ 

天のいましめ。說苑「妖孽者、天所以警天子諸侯也、惡夢、所以警士大夫也、故妖孽不勝善政、惡夢不勝善行」

【天闕】 テンケツ 

○天帝の居所の門戶。=天門。○天子の宮門、宮城の門。宋書、桂陽王休範傳「謝罪──」

【天業】 テンゲフ 

帝王の事業。杜牧文「──一張」

【天眷】 テンケン 

天のめぐみ。又、天子のめぐみ。晉書、庾冰傳「非──之隆、將何以至此」

【天險】 テンケン 

天然の要害。潘岳賦「躡函谷之重阻、看──之襟帶」=天阻。

【天懸】 テンケン 

天より垂れかかる。世說「絕壁──、騰波迅急」

【天譴】 テンケン 

天のとがめ。宋書、文帝紀「上答──、下恤民瘼」=天罰。

【天吳】 テンゴ 

海神の名。山海經「朝陽之谷、有神曰──、是爲水伯、其爲獸也、人面八首、八足八尾、皆靑黃也」

【天祜】 テンコ 

天より降したまふさいはひ。詩經「曾孫壽考、受天之祜」

【天鼓】 テンコ 

○かみなり。雲仙雜記「雷曰──、雷神曰雷公」○河鼓星の別名。晉書「在牽牛北──也」

【天語】 テンゴ 

天子の御言葉。李白賦「聽──之察察」歐陽修、拜勅詩「丁寧──深、曠蕩皇恩闊」

【天工】 テンコウ 

自然になりたるたくみ。陸倕、新漏刻銘「神道無跡、──罕代」=天匠·神造。

【天公】 テンコウ 

天帝に同じ〔晉書、天文志〕

【天功】 テンコウ 

自然のはたらき。書、舜典「欽哉惟時、亮──」

【天后】 テンコウ 

○天子をいふ。宋史「諸侯執帛、──當陽」○則天武后の稱。唐書、高宗則天皇后武氏傳「進號──」

【天候】 テンコウ 

そらもやう。=天氣。

【天構】 テンコウ 

天然につくられる。任昉文「──匠者何工」

【天國】 テンゴク 

天上のくに。耶蘇敎にて罪を贖はれし人の靈魂が死後に行くといふ天上界。=天堂。

【天骨】 テンコツ 

うまれつきての骨格。晉書、袁宏傳「──疎朗」

【天閫】 テンコン 

天門のしきみ。漢書、揚雄傳「──決兮地垠開」轉じて、九重、又は雲上の義とす。

【天閽】 テンコン 

○天帝の居所の門。楚辭「命──其開關兮」○帝王の宮門。

【天假之年 】 テンコレニトシヲカス 

いのちを延ばす義。左、僖二八「晉侯在外十九年矣、而果得晉國、險阻艱難備嘗之矣、民之情僞、盡知之矣、────而除其害、天之所置、其可廢乎」

【天才】 テンサイ 

うまれつき才智すぐれる。又、其の人。北史、李德林傳「識度──、必至公輔」

【天災】 テンサイ 

天然のわざはひ、水旱·地震·疫癘など。左、僖十三「──流行」

【天宰】 テンサイ 

百官の長。唐書、李吉甫傳贊「吉甫踐──、謀謨是矣」=冢宰。

【天裁】 テンサイ 

天子の御裁決。=勅裁。

【天際】 テンサイ 

天のはて。謝朓詩「──識歸舟、雲中辨江樹」=天末。

【天造】 テンザウ 

天然につくられたるもの。艮嶽記「功奪──」=天工。

【天造草昧】 チンザウサウマイ 

運の未だ開けざる時をいふ。一解に天造は天の始めて物を造る義にて、雜亂晦昧、天下未だ定まらず、名分未だ明かならざる時をいふ。草は亂雜、昧は晦冥。易、屯卦「────、宜建侯、而不寧」

【天作】 テンサク 

天然につくられたるもの。韓愈文「──而地藏之」

【天山】 テンザン 

一名雪山、新疆の境內に在る山。

【天產】 テンサン 

天然の產出物、天產物。張餘慶文「靑瑩自乎──、追琢資于匠人」

【天產物】 ランサンフツ 

天然に產出する物。

【天贊】 テンサン 

天祐に同じ。吳志、賀邵傳「拓土萬里、雖承──、實由人力也」

【天蠶絲】 テンサンシ 

てぐす、天蠶の繭より取りし絲。釣絲などに用ふ。

【天子】 テンシ 

君主の敬稱、天の命を受けて一國の君たる人。書、洪範「──作民父母、以爲天下主」=天皇·皇帝。

【天士】 テンシ 

天道を知れる者。史、李尋傳「拔擢──、授以大職」

【天耳】 テンジ 

天のみみ〔蜀志、秦宓傳〕

【天使】 テンシ 

○日月をいふ。淮南子「日月者天之使也」○流星をいふ〔晉書、天文志〕○天子の使。通鑑、唐紀「大尉待──不敬」○耶蘇敎にて天帝の命を受けて人に現はるるといふ靈物。

【天時】 テンジ 

天のとき、時日支千孤虛旺相の屬をいふ。孟、公孫丑「──不如地利、地利不如人和」

【天資】 テンシ 

うまれつき。史、商君傳「商君者、其──刻薄人也」=資性。

【天駟】 テンシ 

星の名。星經「房四星一名天旗、二名──、三名天龍、四名天馬」

【天賜】 テンシ 

天のたまもの。蘇軾詩「一勺亦──、曲肱有餘歡」

【天日】 テンジツ 

てんぴ。韓愈文「指──涕泣誓生死不相背負」=太陽。

【見天日 】 テンジツヲミル 

○帝位に復するに喩ふ。舊唐書、韋庶人傳「帝在房州時、常謂后曰、一朝───、誓不相禁忌」○又、罪人が赦兔せらるるにもいふ。

【天疾】 テンシツ 

生れつきての惡疾。穀梁、昭二十「有──者、不得入乎宗廟」

【天質】 テンシツ 

うまれつき。後漢書「因──之自然、誦上哲之高訓」=天稟·天性。

【天心】 テンシン 

○天帝のこころ。書、咸有一德「克享──、受天明命」○天の中央。邵雍詩「月至──處、風來水面時」

【天津】 テンシン 

直隸省に在り、大運河と白河と會する所の南岸に位し、北京の咽喉にして、北支那第一の通商港。

【天眞】 テンシン 

天然のままにてかざりなし。人の本性をいふ。晉書、阮籍傳「保──」

【天眞爛漫】 テンシンランマン 

自然のままがあきらかに見える。自然のままにうつくし。

【天神】 テンシン 

○天の神。地祗の對。周禮「掌建邦──人鬼地示之禮」○ テンジン   國  菅原道眞を祀りし天滿宮の稱。

【天匠】 テンシヤウ 

天工に同じ。張羽詩「斧鑿自──」

【天章】 テンシヤウ 

天のあや、天文。岑參詩「──降三光、聖澤該九州」

【天常】 テンジヤウ 

五常の道をいふ。揚子法言「吾見──、爲帝王之筆舌也」

【天賞】 テンシヤウ 

上帝の賞與。呂覽「有──得爲主」

【天壤】 テンジヤウ 

あめつち、天地。張協、詠二疏詩「淸風激萬代、名與──俱」

【天壤無窮】 テンジヤウムキユウ 

天地とともにきはまりなし。

【天上天下唯我獨尊】 テンジヤウテンゲユヰガドクソン 

 佛  天地閒に於て己に及ぶものなし。傳燈錄「釋迦牟尼佛初生、一手指天、一手指地、周行七步、目顧四方曰、────────」=天上天下唯我最勝〔大莊嚴經〕

【天上石麒麟】 テンジヤウノセキキリン 

小兒のすぐれたるを譽むる語。陳書、徐陵傳「徐陵年數歲、沙門寶誌、手摩其頂曰、─────也」

【天錫】 テンシヤク 

天よりたまはる。書、仲虺之誥「天乃錫王勇智、表正萬邦」=天賜·天授。

【天爵】 テンシヤク 

天より受けたる美德にして自然に尊き者。人爵の對。孟、吿子「仁義忠信、樂善不倦、此──也」

【天赦日】 テンシヤニチ 

○每月の八日の稱。○ 國  陰曆にて年に四囘ある最上の吉日。

【天守】 テンシユ 

 國  城の建物の一、本丸の中に幾層にも高く造れる櫓 ヤグラ =天主·天守閣。

【天酒】 テンシユ 

甘露の異名。瑞應圖「甘露、美露也、神靈之精、仁瑞之澤、其凝如脂、其甘如飴、一名膏露、一名──」

【天授】 テンジユ 

天よりさづかる。史、淮陰侯傳「陛下所謂──、非人力也」

【天壽】 テンジユ 

自然にさだまりたる壽命。書、君奭「──平格、保乂有殷」=天年。

【天主敎】 テンシユケウ 

耶蘇舊敎の一派、羅馬法王を敎主と仰ぐもの。最も早く我國に傳はる。

【天杵】 テンシヨ 

ははきぼし、慧星。漢書「慧星曰──」

【天序】 テンジヨ 

○時候の順序。=天時。○帝王の世つぎ。漢書、成帝紀「慈仁孝順、可以承──、繼祭祀」

【天助】 テンジヨ 

天のたすけ。王安石文「天下無事過于百年、雖曰人事、亦──也」=天佑·天祐。

【天書】 テンシヨ 

みことのり。王維詩「──拜夕郞」=詔敕。

【天縱】 テンシヨウ 

天よりゆるさる。論、子罕「固──之將聖、又多能也」名畫錄「──生知、不從師學」

【天職】 テンシヨク 

○天帝の職。列、天瑞「──生覆、地職形載」○天子の職、民を治むるは天の命に由る、君主の專らにする所にあらず、故に──といふ。荀子「──旣立、天功旣成」○天より命ぜられたるつとめ。孟、萬章「弗與共天位也、弗與治──也、弗與食天祿也」

【天樞】 テンスウ 

北斗七星の第一位に在る星にて、北極の樞軸をなすもの〔晉書、天文志〕=斗極。

【天水】 テンスヰ 

あまみづ。雨水。

【天粹】 テンスヰ 

天然の儘にて雜りなし。黃庭堅文「惟──之質、可以琢磨成器」

【天瑞】 テンズヰ 

天より降すめでたきしるし。漢書、董仲舒傳「──應誠而至」

【天井】 テンセイ 

○上棟の中に於て木を交へて方形とし、井幹の如き者、藻井ともいふ、藻は水草、井は星宿、皆火を厭する爲めなり。陸機、挽歌「臥觀──懸」○ テンジヤウ   國  屋根うらのはりいた。

【天生】 テンセイ 

天が物を生ずる。易、繫辭「──神物、聖人則之」

【天成】 テンセイ 

自然に成る。南史「放言落紙、氣韻──」

【天性】 テンセイ 

うまれつき。禮、樂記「人生而靜、天之性也、感於物動、性之欲也」=天資·天稟。

【天眚】 チンセイ 

地震·風·雷·洪水などの天然のわざはひ。後漢書、安帝紀論「推咎台衡、以答──」=天災。

【天笑】 テンセウ 

 俗  乍ち雨ふり乍ち照る天氣。きつねのよめいり。

【天塹】 テンセン 

天然に成れる城のほり。南史、孔範傳「長江──、古來限隔南北、虜軍豈能飛渡」

【天阻】 テンソ 

天然にけはしき要害の地。南史、沈約傳「潼關──、所謂形勝之地」=天岨·天險。

【天祚】 テンソ 

天より降したまふさいはひ。左傳「──明德、有所底至」=天祉。

【天素】 テンソ 

うまれつき。諸葛亮、與劉巴書「尼下雖──高亮、宜少降意也」=天性。

【天鼠】 テンソ 

ねずみの一種。皮を裘 カハゴロモ とすべし。王羲之、十七帖「──膏治耳聾、有驗」

【天窗】 テンソウ 

○あたま。○ひきまど、たかまど、てんまど。李商隱詩「鳥影落──」

【天則】 テンソク 

天地自然の法則。易、文言、乾卦「乾元用九、乃見──」

【天孫】 テンソン 

○たなばた。織女星の一名。吳兢詩「河漢──兮、瀟湘帝子遊」○ 國  天照大神の御孫、彥火邇邇藝命 ヒコホノニニギノミコト をいふ。

【天尊地卑】 テンソンチヒ 

天は高くして尊く、地は低くして卑し。易、繫辭「────、乾坤定矣」

【天台】 テンダイ 

○山名、一に桐柏山といふ、浙江省台州──縣の西に在り。○ 佛  我國に行はるる八宗の一、桓武帝の時、傳敎大師、支那──山の智者大師より傳へ、叡山にて弘めし宗門、法華經を本經とす。

【天體】 テンタイ 

天上にあらはるる物體、日·月·星辰等の總稱。宋書、天文志「論──三家」

【天堂】 テンダウ 

 佛  極樂世界。捫蝨新語「坐禪苦行、得升──」

【天道】 テンダウ 

○自然のみち。易、謙卦「──下濟而光明、地道卑而上行」=天理。○ 佛  六道の一、欲界·色界·无色界の總稱。无量壽經「──自然、不得蹉跌」○ テンタウ   國  太陽、日輪をいふ。

【天道是耶非耶】 テンダウゼカヒカ 

善を爲せば福を得、惡を爲せば禍を得るは天の道なるに、世閒必ずしも然らざるが如し、故に天道の是非を疑ふなり。史、伯夷傳「太史公曰、非公正不發憤、而遇禍災者、不可勝數也、余甚惑焉、儻所謂──────」

【天道無親常與善人 】 テンダウハシンナシツネニゼンジンニクミス 

天道は公平にして誰を親しむといふことなく、常に善人に親み與す〔老子〕

【天道虧盈益謙】 テンダウハミツルヲカキテケンニエキス 

盈つる者は之を虧き、謙する者は之を益す。日中すれば昃き、月盈つれば虧くる如し、人情滿を惡みて、謙に與するをいふ〔易、謙卦〕

【天壇】 テンダン 

○山の絕頂平かにして天を祭る壇の如し、故に絕頂をいふ。通志「王屋山在濟源縣西八十里、形如王者車蓋、故名、其絕頂曰──、蓋濟水發源之處」○帝王の天をまつる所、明の嘉靖中に建つ、北京正陽門外に在り。=圜丘。

【天地】 テンチ 

○あめつち。易、說卦「──定位、山澤通氣」○上下の義。

【天地爲鑪造化爲工】 テンチヲロトナシザウクワヲコウトナス 

天地の萬物を生育するは、猶ほ工人の細工に於けるが如きに喩ふ。賈誼、鵩鳥賦「────────、陰陽爲炭、萬物爲銅」

【天地無全功 】 テンチゼンコウナシ 

天は覆へども載する能はず、地は載すれども覆ふ能はず、故に全功なしといふ〔荀子〕

【與天地同壽】 テンチトジユヲオナジクス 

極めて長命なる義。楚辭「與天地兮同壽、與日月兮同光」

【奪天地造化 】 テンチノザウクワヲウバフ 

造化のなすわざを人力にて爲す。關尹子「人之力、有可以奪天地造化者」

【天地壽】 テンチノジユ 

天地の如く長く盡きざるいのち。王維詩「願將───、同以獻君王」

【天池】 テンチ 

海。莊、逍遙遊「南冥者──也」初學記「海、一名──」

【天祉】 テンチテンシ 

天より降すさいはひ。韓詩外傳「惟鳳爲能通──應地靈、律五音覽九德」

【天竺】 テンヂク 

印度の古名。西域記「──之稱、異議糾紛、舊云身毒、或云賢豆今從正音宜云印度」

【天竺花】 テンヂククワ 

 ハギ の異名。西湖志「百菊集譜云、觀音菊、───是也」

【天竺五山】 テンヂクノゴザン 

祗園精舍·竹林精舍·大林精舍·精多林精舍·那蘭陀寺。

【天琛】 テンチン 

天然の寶、琛は寶。海賦「其垠則有──水怪鮫人之室」

【天長節】 テンチヤウセツ 

○唐の玄宗皇帝の誕生日の名。明皇實錄「開元十七年百官上表、請以八月五日爲千秋節、天寶七年改爲───」○ 國  三大節の一、天皇陛下の御誕生日を賀する祝日。

【天長地久】 テンチヤウチキウ 

天地は長久にして盡きず。老子「────、天地所以能長且久者、以不自生、故能長生」

【天柱】 テンチユウ 

○天の墜ちざるやうに支へて居るはしら。次條參看。○星の名。晉書、天文志「三合六星、一曰──、三公之位也」

【天柱折】 テンチユウクジタ 

天下の大いに亂るるに喩ふ。史、三皇紀「───、地維缺」

【天衷】 テンチユウ 

上帝のみこころ。=天意。

【天誅】 テンチユウ 

天命を奉じて殺す。孟、萬章「伊訓曰、──造攻自牧宮」漢書、陳湯傳「將義兵行──」

【天廚送】 テンチユウオクル 

天子のくりやの食物をおくる。岑參詩「玉饌───、金盃御酒傾」

【天中節】 テンチユウセツ 

陰曆五月五日の午時〔提要錄〕

【天寵】 テンチヨウ 

○天帝のいつくしみ。易、師卦「承──也」○天子のめでいつくしみ。劉孝綽詩「自昔承──、於玆被人爵」

【天帝】 テンテイ 

萬物造化の神。雲笈七籤「四司者──之禁官也」

【天庭】 テンテイ 

○星の名。晉書、天文志「大微爲衡、又爲──」○天帝の居所の庭の義。法言「仰──而知天下之居卑也」○額頭 ヒタヒ をいふ。

【天聽】 テンテイ 

上帝のおきき。又、帝王のおきき。書、泰誓「天視自我民視、──自我民聽」

【天朝】 テンテウ 

朝廷の敬稱。宋史「唯堅臣節、上奉──」=皇朝。

【天假手】 テンテヲカル 

天は人力を假りて行ふをいふ。書、伊訓「皇天降災、假手于我有命、造攻自鳴條」

【天統】 テントウ 

天子のちすぢ、天子の事業。史、高祖紀「使人不倦得──矣」

【局天蹐地】 テンニセグクマリチニヌキアシス 

甚だおそれて身を容るるに地なし。局はせぐくまる、蹐はぬきあし。詩、小雅、正月「謂天蓋高、不敢不局。謂地蓋厚、不敢不蹐」=局蹐。

【天無私覆 】 テンニシフウナシ 

天道は、無私公平なるをいふ。禮、孔子閒居「────、地無私載、日月無私照」

【天無二日 】 テンニニジツナシ 

天に二っの日なき如く、國を治むるは一君に限る義。禮、曾子問「孔子曰、────、土無二王」

【天女】 テンニヨ 

○女の天人。又、女神。○女神の名に添へる詞「吉祥──」○燕の異名〔採蘭雜志〕○織女星の異名。史、天官書、注「織女一名──、天子女也」

【天年】 テンネン 

天より受けたる壽命。史、刺客傳「老母今以──終」=天壽。

【天然】 テンネン 

自然のまま。じねん。史、主父偃傳「陛下──之聖、寬仁之資」

【天之祜】 テンノコ 

祜は福なり。天祜 テンコ 參看。

【知天之天 】 ランノテンタルヲシル 

天の萬物を生育する理を知りて、之を崇敬する義。史、酈生傳「臣聞、────者、王事可成、不知天之天、王事不可成、王者以民人爲天、而民人以食爲天」

【天作孽猶可違、自作孽不可逭】 テンノナセルワザワヒハナホサクべシミヅカラナセルワザハヒハノガルベカラズ 

天より降せる災は避くべきも、自ら招きたる禍は到底逃るべからず。書、太甲「欲敗度、縱敗禮、以速戾于厥躬────────────」孟子には逭を活に作る。

【天之美祿】 テンノビロク 

酒をいふ。漢書、食貨志「酒天美祿、頤養天下」

【天之曆數】 テンノレキスウ 

帝王相繼ぐ次第。論、堯曰「堯曰、咨、爾舜、────、在爾躬」

【天馬】 テンバ 

○上帝の乘りて空を驅け行く馬、伯樂星の司る馬。○大宛國より產する名馬。史、樂書「後伐大宛得千里馬、作歌」=天驥汗血千里馬。

【天葩】 テンハ 

天然にうつくしき花。韓愈詩「──吐奇芬」

【天杯】 テンハイ 

天子より賜はるさかづき。上官昭儀詩「宸翰陪瞻仰、──接獻酬」

【天寶】 テンハウ 

○天然の珍寶。王勃文「物華──、龍光射牛斗之墟」○唐玄宗の年號。

【天保九如】 テンバウキウジヨ 

人の長壽を祝する語。詩、小雅、天保第一章「天保定爾、以莫不興、如山如阜、如岡如陵、如川之方至、以莫不增」同第二章「如月之恆、如日之升、如南山之壽、不騫不崩、如松柏之茂、無不爾或承」

【天罰】 テンバツ 

天より降す刑罰。書、甘誓「今予惟恭行天之罰」

【天半】 テンハン 

そらのなかば。儲光羲詩「初日照龍闕峩峩在──」=中天。

【如天半雲 】 テンバンノクモノゴトシ 

山などの聳え立つ貌。三秦記「華山在長安東三百里、不知幾千仞、────」

【天翻地覆】 テンボンチフク 

天ひるがへり地くつがへる、極めて秩序の亂るるをいふ。中庸或問「三辰失行、則必────」

【天妃】 テンヒ 

○海神の名〔元史、成宗紀〕=天后。○ 國  辨才天の異稱「──廟」

【天庇】 テンヒ 

天の加護、又、君主の加讒。齊映、出官後自敍表「臣有微功、實由──」

【天秤】 テンビン 

天平に同じ、物の重さを量る器械。

【天稟】 テンビン 

天より受けたる性質。王安石詩「予生少而戅、好古乃──」=天賦。

【天付】 テンブ 

○うまれつき。舊唐書「神傳將略、──忠貞」=天生·天稟。○天よりさづかる。文同詩「中閒列亭榭、佳景實──」

【天府】 テンブ 

○產物の豐かなる地。戰國策「沃野千里、蓄積饒多、地勢形便、此所謂──也」○天然に要害よき地。漢書「據──地以義征伐」○學問の深き義。荀子「學問不厭、好士不倦、是──也」

【天符】 テンブ 

天より降す祥瑞。宋書、樂志「陛下長懽樂、永世合──」

【天賦】 テンブ 

天よりさづかる。舊唐書、僖宗紀「河中節度使王重榮、神資壯烈、──機謀」=天付、天稟·天授。

【天覆】 テンフウ 

○天のおほふかぎり、天が下。中庸「天之所覆、地之所載」○天の廣くおほふが如く、ひろく布き及ぶ。漢書、匡衡傳「陛下聖德──、子愛海內」

【天福】 テンフク 

天より降したまふさいはひ。列子「可以生而生、──也」

【天物】 テンブツ 

天然に生ぜし物。次條參看。

【暴天物 】 テンブッヲバウス 

天の生ぜる萬物をそこなひあらす。禮、王制「無事而不田、曰不敬、田不以禮、曰暴天物」書、武成「暴殄天物、害虐烝民」

【天麩羅】 テンブラ 

 國  支那にては轉不稜 テンブラ といふ、一說に油の萬葉假名なりといひ、或は山東京傳の天竺浮浪人云云の說などあれども、何れも牽强の言なり、調理法と語調とより考ふれば洋語たること疑なし、或は天竺(洋人の舶來の義)のフライの轉訛か。

【天分】 テンブン 

天より受けたる性質。又、運命。魏志「自當出吾──」

【天兵】 テンベイ 

天子の兵、官軍をいふ。揚雄、長楊賦「──四臨」明史「──下紫荊關」=王師。

【天陛】 テンべイ 

皇宮のきざはし。王庭珪詩「此去飛騰對──」

【天表】 テンヘウ 

○天外に同じ。班固賦「遊目於──」○帝王の儀容をいふ。晉書、裴秀傳「──如此、固非人臣之相也」

【天飆】 テンヘウ 

そらのつむじかぜ。陳孚詩「手捫星漢如可近、但見──吹髮寒鬖鬖」=天飇。

【天鼈】 テンベツ 

星の名。星經「──十五星在斗南」

【天邊】 テンベン 

大空のほとり、そらのはて、又、極めて遠き地。杜甫詩「──常作客、老去一霑巾」

【天變】 テンベン 

天上の異變、風·雷·日蝕の類。漢書、蕭望之傳「察於──」

【天姥】 テンボ 

山名。浙江省新昌縣の東五十支里に在りて、天台山と對立す。方輿勝覽「台州有──山」謝靈運詩「瞑投剡中宿、明登──岑」寰宇記「登此山者、或聞──歌謠之聲、故名」

【天步艱難】 テンボカンナン 

天運未だ囘らずして、時の艱難なるをいふ。詩、小雅、白華「────、之子不猶」

【天朗氣淸】 テンホガラカニキキヨシ 

天色明朗にして氣候淸和なり。蘭亭集序「是日也────、惠風和暢」

【天麻】 テンマ 

藥草の名。本草「──卽赤箭、生鄆州利州泰山勞山諸處」

【天魔】 テンマ 

人を惡道に誘ふ天上の妖鬼。大藏法數「此魔卽欲界第六天也(中略)爲──、爲障碍」蘇軾詩「明星未出萬家閑、外道──猶奏樂」

【天罔恢恢疏而不失】 テンマウクワイクワイソニシテウシナハズ 

罔は網に同じ。天の網は目あらきが如きも、善惡の報漏らすことなし、失一本に漏に作る〔老子〕

【天末】 テンマツ 

そらのはて。何遜詩「──靜波浪」=天涯·天際·天杪。

【天幕】 テンマク 

厚き麻布などにて造り、野營の時張りて、雨露を凌ぐもの。

【天民】 テンミン 

天の法則に從ふ民。孟、盡心「有──者、達可行於天下、而後行之者也」

【天命】 テンメイ 

○天の命令、天より受けたる運命。論、爲政「五十而知──」書經「誕膺──、以撫方夏」○天が命ずる。中庸「──之謂性」書、皋陶謨「──有德、五服五章哉」

【天目山】 テンモクザン 

山の名。十道山川攷「───在臨安府於潛縣北六十里、有兩峯、峯頂各一池、左右相對、名曰天目」

【天不言】 テンモノイハズ 

天は言葉を出さず。荀子「───、而人推高焉、地不言、而人推厚」

【天文】 テンモン 

天のあや、天體の現象。易、繫辭「仰以觀於──」

【天文臺】 テンモンダイ 

天文を觀測する爲めに設けたる高きものみ。=司天臺。

【天門】 テンモン 

○天上の門戶。天門登八參看。○こころ、一說に、大道をいふ。○道家にて鼻孔をいふ。老子「──開闔、能無雌乎」○兩眉の閒をいふ。=天庭。○宮城の門。杜甫詩「──日射黃金牓」=君門。

【天門冬】 テンモンドウ 

藥草の名、杉の葉に似、夏小白花を開き黑き實を結ぶ。根を砂糖漬とし又藥用に供す。

【天門登八】 テンモントウハチ 

下文の陶侃の故事によりて、仕宦して殆どその極に近づくに喩ふ。晉書、陶侃傳「侃夢生八翼、飛而上天、見天門九重、已登其八、惟一門不得入」

【天庾】 テンユ 

星の名。晉書、天文志「天倉南四星、曰──、積廚粟之所也」

【天與】 テンヨ 

天賦に同じ。

【天與弗取反受其咎 】 テンヨトラザレバカヘリテソノトガヲウク 

天の與ふる所を取らざれば反りて其の咎を受く。逸周書「────────、當斷弗斷、反招其亂」

【天籟】 テンライ 

自然に鳴る風などの聲。地籟·人籟の對。莊、齊物「女聞人籟、而未聞地籟、女聞地籟、而未聞──矣」轉じて、詩文などの殊に巧妙にして、自然の節奏にかなへるにいふ。

【天臘】 テンラフ 

道家の說にて、正月一日の祭の名〔雲笈七籤〕

【天覽】 テンラン 

天子の御らん。

【天吏】 テンリ 

天の命を奉ずる官吏。天道を行ふ有德の人、卽ち王者。孟、滕文公「無敵於天下者──也」

【天理】 テンリ 

天地自然の道理、天の萬事萬物を支配する正しき條理。禮、樂記「好惡無節于內、知誘于外、不能反躬、──滅矣」=天道。

【天理敎】 テンリケウ 

 國  天保年中、大和の中山みき女の唱道せし神道、國常立尊以下伊弉册尊に至る數神を合せて天理王命と名つけて祭る。

【天鷚】 テンリウ 

ひばりの異名。=吿天子·雲雀。

【天倫】 テンリン 

兄弟をいふ、兄は先にして弟は後なること自然の倫次なり。穀梁、隱、元「兄弟──也」李白文「會桃李之芳園、序──之樂事」

【天蓼】 テンレウ 

たでの實をいふ。本草「蓼實一名──一名野蓼、一名澤蓼」

【天祿】 テンロク 

○天より降すさいはひ。論、堯曰「四海困窮、──永終」○天より授かりし俸祿 フチ 

【天漏】 テンロウ 

雨の多く降る義。杜甫詩「安得誅雨師、疇能補──」

【天螻】 テンロウ 

けら、すくもむし。古今注「螻蛄一名──、一名碩鼠」

【天王】 テンワウ 

○天子。獨斷「──諸夏之所稱、天下所歸往、故稱──」史、孝文紀「所謂──者乃天子」○ 佛  佛の名に添へる稱「牛頭──」

【天王星】 テンワウセイ 

太陽系に屬する七遊星の一、第七位の星。太陽より平均距離七億二千萬里、直徑は一萬三千里、八十四年に太陽を一周す。

【天皇】 テンワウ 

至尊の稱。唐書、高宗紀「改皇帝、稱──」=天子·皇帝。

【天津日嗣】 アマツヒツギ 

 國  天子のみくらゐ。

夫  

フ ホ [虞]

一音フウ

○をとこ、をのこ、一人前の男子。○賦役として公事に勞動する男。=成丁。○をっと(良人)○それ、發語の辭。○かの、物事を指す辭。論、憲問「吿─三子」○かな、語の已む辭、感歎の意を表す。論、子罕「逝者如斯─」

【夫子】 フウシ 

○先生·長者の尊稱。左、文、元「孤實貪以禍──、──何罪」○師を尊び稱す、單に子といふに同じ。論、學而「──溫良恭謙讓」○將士を指していふ。書、泰誓「勖哉──」○大夫の位に在る者を呼ぶ敬稱。論、憲問「信乎──不言不笑不取乎」○妻、其の夫を稱す。孟、滕文公「必敬必戒、無違──」

【夫婦】 フウフ 

をっとと、つまと。めうと。小學、明倫「禮始於謹──」=夫妻。

【夫婦別】 フウフノべツ 

夫と妻と、各職分を守りて相犯ざざる道。五倫の一。禮記「───、父子親」

【夫役】 フエキブヤク 

えだち、人夫 ニンブ となりて公事に服するつとめ〔續文獻通考〕

【夫家】 フカ 

女がかたづきたる家。よめに行きし夫の家〔漢書、劉向傳〕

【夫君】 フクン 

妻が夫を敬ひて稱す。高騈、閨怨詩「人世悲歡不可知、──初破黑山歸」

【夫課】 フクワ 

ぶやく。宋書「築基旣廣、──又嚴」=夫役。

【夫妻反目】 フサイハンモク 

夫婦なかのあしき義。易、小畜「九三輿說輻、────」

【夫人】 フジン 

○古、人の母の稱。史、刺客傳「進百金者、將爲用──麤糲之費、得以交足下之歡」○古、己の母の稱。後漢書、應奉傳、注「汝南記云、元義謂人曰、此我故婦非有他過、家──、遇之實酷」○天子の妾、后の次位。周禮、考工記「──以勞諸侯」○諸侯の正妻。又貴人の妻。曲禮「天子之妃曰后、諸侯曰──」夫は扶にして道を以て良人を扶くる義。○漢魏以來諸侯の妻にあらざるも廣く貴人の妻の敬稱とす「馮──」「衞──」○人人の義。左傳「──愁痛、不知所庇」注「──猶人人」○ 國  古は女官の稱。今は貴人の妻の稱。

【夫須獨速】 フシユドクソク 

簑笠なり、夫須はすげ(草の名)簑笠に作る、故に笠の義、獨速は短醜の形、簑を形容す、よりて簑の義とす。楊萬里詩「尙書親餉老農夫、塞道夫須與獨速」

【夫稅】 フゼイ 

田百畝の稅〔周禮、載師、注〕

【夫壻】 フセイ 

をっと。王維詩「──輕蒲兒」

【夫倡婦隨】 フトナヘフシタガフ 

夫婦の道をいふ。關尹子「天下之理、夫者倡、婦者隨」

【夫容】 フヨウ 

芙蓉に同じ。淮南子「──芰荷」

【夫布】 フフ 

周の法、職業なき者に課する稅布。周禮「凡無職者出──」次條參看。

【夫里之布】 フリノフ 

夫布と里布と、夫布は一夫力役の征、里布は桑麻を埴ゑざる者を罰して徵する稅。孟、公孫丑「廛無────、則天下之民皆悅、而願爲之氓矣」

2畫

央  

①アウ·ヤウ [陽]

②エイ·ヤウ [庚]

①なかば、まんなか(中·半)上官儀詩「明月樓中夜未─」○つく(盡)漢武帝、李夫人賦「借蕃華之未─」○──は廣き貌。○ひさし(久)とほし(遠)

②──は聲のやはらぐ(和)貌。又、あざやか、鮮明なる貌。

【央央】 エイエイ 

○聲の和げる貌。詩、周頌「龍旂陽陽、和鈴──」○鮮明なる貌。詩、小雅「白旆──」○── アウアウ はひろき貌。司馬相如、長門賦「覽曲臺之──」

失  

①シツ [質]

②イツ [質]

①うしなふ、うす、無くなる。○はなつ(縱)○あやまち、あやまつ(過·錯)○わする(遺)知らず。

②にぐ、にがす、逸·佚·軼に通ず。

 同訓異義 

ウシナフ 失·喪·亡○失は得の反、取り失ふ義。書經「時哉不レ可レ失」又、仕損ずる義にも用ふ過失の如し。○喪は亡なり、なくなりしこと、失と通ず、喪レ氣·喪レ明の如し。○亡はほろびうせたる義。滅亡·死亡の義、失と通ず。家語「楚人亡レ弓、楚人得レ之」

【失意】 シツイ 

思ふやうにならず、意の如くならず。得意の對。劉兼詩「秋霜滿領難消釋、莫讀離騷──書」

【失隕】 シツヰン 

うしないおとす。左傳「奉承以來、弗敢──、而致諸宗祧」=失墜。

【失脚】 シツキヤク 

足をふみはづす、つまづく。棠陰祕事「不覺──亦墜于井」陸游詩「──墮世網、衰病忽侵尋」

【失馭】 シツキヨ 

馭は御、馬を御する法をあやまる。轉じて國家を統御する法をあやまる、又其のこと。舊唐書·任壇傳「隋氏──、天下沸騰」

【失據】 シツキヨ 

よりどころをうしなふ。恃む所を失ふ。後漢書「州郡──、長吏多逃亡」

【失偶】 シツグウ 

失儷に同じ。=失耦。

【失火】 シツクワ 

 アヤマ りて火を出す。風俗通「城門──、殃及池魚」唐の柳宗元に賀進士王參元──書あり。

【失計】 シツケイ 

しそこなひ。宋史「謂周之──、未有如東遷之甚者」=失策。

【失敬】 シツケイ 

○禮儀にはづれる、そさうする。=無禮·失禮。○ 國  俗に御免を蒙る義に用ふる「お先に──」

【失業】 シツゲフ 

職をうしなふ、生活の道を失ふ。=失職。

【失言】 シツゲン 

いひそこなふ。いひすぎ。戰國策「困於思慮、──於君、再拜釋罪」=失口·放言。

【失誤】 シツゴ 

あやまり。=過失·過誤。

【失口】 シツコウ 

失言に同じ。禮記「不──於人」=過言。

【失策】 シツサク 

しそこなひ。しくじる。陸機、辨亡論「擧不──」

【失錯】 シツサク 

しくじる。錯は亂。周禮、太史、疏「恐事有──」

【失辭】 シツジ 

いひそこなひ。左傳「行人──」=失言。

【失神】 シツシン 

きぬけ。精神を失ふ。=喪神。

【失眞】 シツシン 

まことの道をうしなふ。李白詩「樸散不尙古、時訛皆──」

【失飪】 シツジン 

煮物のなまにえ、又、にえすぎたる義。論、鄕黨「──不食、不時不食」

【失蹤】 シツシヨウ 

失踪に同じ。

【失色】 シツシヨク 

○いろをうしなふ、顏色をかへる。驚きおそるることの甚だしきにいふ。晉書「前鋒失利、矢及馬首、左右──」○人に對して容貌のおごそかならざる義。禮記「不──於人」

【失職】 シツシヨク 

失業に同じ。

【失政】 シシセイ 

政をあやまる、あやまれる政。淮南、時則「三月──、九月不下霜」

【失笑】 シツセウ 

こらへきれずしてふきだす。蘇軾詩「諸生聞語定──、冬暖號寒夜無帳」=噴飯。

【失跡】 シツセキ 

あとかたをなくす。韓愈詩「中閒不得意、──成遷延」=失踪。

【失踪】 シツソウ 

あとかたを失ふ、すがたをかくす。逐電する、踪は蹤。

【失態】 シツタイ 

體裁をうしなふ、體面をけがす。=失體。

【失體】 シツタイ 

事體をわきまへず。又、面目を失ふ。北史「吏書──、便加鞭撻」

【失當】 シツタウ 

理に合はず、正當の道にかなはず。=不當。

【失疇】 シツチウ 

ともを失ふ。洞簫賦「亡耦──」疇·儔通ず。

【失墜】 シツツヰ 

うしなひおとす。左傳「羣臣以死守之、弗敢──」=失隕。

【失德】 シツトク 

德義に外 ハヅ れる。又、其の行。

【失念】 シッネン 

わすれる。遺敎經「常當攝念在心、若──者、則失諸功德」=忘卻。

【失黏】 シツネン 

詩句の平仄の調 トトナ はざるもの。宋陳鵠、耆舊續聞「表啓之類、近代聲律尤嚴、或乖平仄、則謂之──」

【失敗】 シツパイ 

しくじり。=失錯。

【失望】 シツバウ 

のぞみかなはず。あてがはづれる。漢書「項羽屠咸陽、殺秦降王子嬰、燒宮室、收寶貨婦女而東、秦民──」

【失費】 シツピ 

つひえ、いりめ。

【失名】 シツメイ 

名がわからぬ、名を忘れる。=逸名。

【失明】 シツメイ 

めくらになる。史記、自序「左丘──、厥有國語」

【失命】 シツメイ 

いのちを失ふ、生命をなくする。

【失理】 シツリ 

道理にはづれる。詩經、序「政敎言失者非無政敎、但施之──耳」=乖理·背理。

【失禮】 シツレイ 

禮儀を失ふ、そさうをする。荀子「公侯──則幽」=失敬·無禮。

【失儷】 シツレイ 

つれあひをうしなふ。=失偶。

【失戀】 シッレン 

 國  こひがかなはぬ、そはれぬ緣。

【失路】 シツロ 

みちにまよふ、出身の道をうしなふ、出世をあやまる、志を得ざるに喩ふ。揚雄、解嘲「當塗者升靑雲、──者塡溝壑」塡一に委に作る。

夲  

タウ トウ [豪]

本とは別字

○すすむ(進)おもむく(趨)○おほひたもつ(奄有)

3畫

夷  

イ [支]

○たひらか(平)○たひらぐ(平)○やすし、やさしい(安·易)○大いなり。○つね、人の常に守るべき道。孟、吿子「民之秉─」=彝。○つらぬ(陳)○えびす、野蠻人「東─」○きず(創)=痍。○きずつく(傷)○かる(芟)○すき、鋤の類。○敵を誅し滅ぼす、惡人を除く。○たぐひ(等)○ともがら、たぐひ(儕·等)曲禮「在醜─不爭」○足を展ベてすわる。あぐらかく。論、憲問「原壤─以俟」=箕坐。○陵─は次第に衰ふ。漢書、成帝紀「帝王之道日以陵─」

【夷易】 イイ 

やすらか、たやすし。=平易·夷簡。

【夷由】 イイウ 

○むささびの異名〔爾雅、疏〕=齬鼠。○行かずしてためらふ〔後漢書、馬融傳〕

【夷猶】 イイウ 

ためらふ貌。楚辭、九歌「君不行兮──」=夷由·猶豫。

【夷懌】 イエキ 

よろこぶ。詩、商頌「我有嘉客、亦不──」=夷悅。

【夷悅】 イエツ 

よろこぶ。夷は怡に同じ。家語「四海之舟輿所及、莫不──」=夷懌·夷愉·怡悅。

【夷夏】 イカ 

夷狄と、中國と。陳書、陸子隆傳「綏集──、甚得民和」

【夷界】 イカイ 

えびすの土地。杜甫詩「──荒山項、蕃州積雪邊」

【夷考】 イカウ 

をしなべて平かに考へる。孟、盡心「──其行、而不掩者也」

【夷簡】 イカン 

平易にしてわづらはしからず。平淡にし質樸なり。梁書「性託──、特愛林泉」

【夷踞】 イキヨ 

足をなげ出してすわる。後漢書、茅容傳「衆皆──相對」=箕踞。

【夷曠】 イクワウ 

平らかにしてひろし。

【夷險】 イケン 

土地の平坦なると、險惡なると。又、順境と、逆境と。晉書「分──、序長幼」=險夷。

【夷敞】 イシヤウ 

土が平らかにひろし。應璩文「沙場──」=平敞。

【夷傷】 イシヤウ 

傷つく、きりきず。又、傷つけられし者。左傳「命軍吏、察──、補卒乘」顏延之誄「勉慰──、拊巡饑渴」=創傷·創痍。

【夷齊】 イセイ 

伯夷·叔齊の二人。

【夷跖】 イセキ 

伯夷と盜跖と。善人と惡人との義。沈烱詩「彭殤無異葬、──可同朝」

【夷然】 イゼン 

平かなろ貌。安らかなるさま。

【夷翦】 イセン 

三族をきりたひらぐ。隋書「恣興──、取快情靈」

【夷則】 イソク 

十二律の一、陰曆七月に配す、よりて七月の異名とす。史、律書「七月律中──、──者、言陰氣之賊萬物也」夷は傷ふ、則は法、萬物が刑法を被る義。

【夷蹲】 イソン 

うづくまる。王襃文「入巿不得──·旁臥·惡言·醜詈」=蹲夷。

【夷道】 イダウ 

たひらかなるみち。淮南、原道「馳騁──」=垣途。

【夷蕩】 イタウ 

やすくおだやか。晉書、食貨志「八表──、區內輯寧」

【夷坦】 イタン 

道が平らか。又、心がたひらか。南史、文學傳「胸襟──、有士君子之操焉」=坦夷。

【夷狄】 イテキ 

えびす、野蠻人。夷蠻戎狄を見よ。=戎狄·蠻夷·夷翟·東夷北狄。

【夷蠻戎狄】 イバンジユウテキ 

四方のえびす。禮、王制「東方曰夷、南方曰蠻、西方曰戎、北方曰狄」

【夷謐】 イヒツ 

やすらけくしづかに治まる。郝名遠、大廈賦「六合淸晏、八荒──」

【夷俘】 イフ 

とりこ。左傳「謂之──」

【夷矛】 イボウ 

ほこの一種。考工記「酋矛常有四尺、──三尋」

【夷滅】 イメツ 

たひらぎほろぶ。又、たひらげほろぼす。水經、注「城隍──、略存故跡」

【夷愉】 イユ 

やすらかによろこぶ。宋史、李侗傳「閨門內外、──肅穆、若無人聲」

【夷戮】 イリク 

たひらげ殺す、ほろぼざれる。後漢書、張衡傳「恭儉畏忌、必蒙祉祚、奢淫諂慢、鮮不──」

【夷隆】 イリユウ 

低きと、高きと。又、衰ふると、盛んなると。兩都賦「道有──」

【匪夷所思】 ツネノオモフトコロニフラズ 

常人の考へ及ぶ所にあらず。易、渙卦「渙有丘、────」

夸  

①クヮ [麻]

②クヮ [馬]

③ク [虞]

①おほいにす(誇張)華言實なし。○─毗はやはらか(柔)身を卑め己を屈する。

②ほこる(自大)○またがる。漢書、諸侯王表「─州兼郡」=跨。

③おごる(奢)○うつくし、美くしき貌。

【夸淫】 クワイン 

おごりてみだらなり。史記「──自恣、以財驕人」

【夸矜】 クワキヨウ 

ほこる、たかぶる。史記「兩國相擊、此宜──見所長」

【夸言】 クワゲン 

事實を大きくかざりて語る、誇大なる話〔梁簡文帝、悔賦〕=大言。

【夸詐】 クワサ 

大言を吐きていつはる。又其のこと。漢書、韓信傳「齊──多變、反覆之國」

【夸者】 クワシヤ 

權勢にほこりたかぶる人。史、伯夷傳「──死權、衆庶馮生」

【夸大】 クワダイ 

おほげさ、ほこりて尊大なり。=誇大。

【夸父追日影 】 クワフニチエイヲオフ 

夸父は上古の人名、己の力をはからずして、大事を企つるに喩ふ。列、湯問「夸父不量力、欲追日影、逐之於隅谷之際、渴欲得飮、赴飮河渭、河渭不足、將走北飲大澤、未至道渴而死」

4畫

夾  

①カフ·ケフ [洽]

②ケフ [葉]

①さしはさむ。=挾。左右より持つ、傍より扶 タス ける、はさまる。○ちかし(近)○かぬ(兼)○─鐘は十二律の一。

②かたはら(傍)○刀のつか(刀把)=鋏。○せまし。=狹。○をとこだて。=俠。

 同訓異義 

サシハサム 夾·挾·插の別は挾(手部七畫)の條を見よ。

【夾擊】 ケフゲキ 

はさみうつ。史、淮陰侯傳「漢兵──、大破之」=夾攻。

【夾攻】 ケフコウ 

さしはさみうつ。左傳「背巴師、而──之」=夾擊。

【夾谷】 ケフコク 

地名、山東省萊蕪縣に在り、孔子が魯の定公を相けて、齊の景公と會せし地。

【夾雜物】 ケフザツブツ 

まじりもの。

【夾侍】 ケフジ 

○左右にはんべる。又、其の人。○ 佛  佛像の左右に侍り居る者。不動の制吒迦·昆羯羅。彌陀の觀音·勢至の類。

【夾厠】 ケフシ 

はさまりまじる、廁は雜。史、律書「夾鐘者言陰陽相──也」

【夾鐘】 ケフシヨウ 

十二律の一、陰曆二月に配す、よりて二月の異名とす。禮、月令、注「仲春氣至、則──之律應」陰陽相夾廁 マジル する義。=夾鍾。

【夾繞】 ケフゼウ 

はさみめぐる。呂覽「有兩蛟、──其船」

【夾袋】 ケフタイ 

衣服のかくし、ぼけっと。名臣言行錄「呂蒙正爲相、──有册、謁見者、必問人材、卽疏之以奏」──中人物 クフタイチユウノジンブツ の語、此に本づく。

【夾竹桃】 ケフチクタウ 

常綠灌木の一、葉は竹葉に似、花は夏日開く形色共に桃に似て美くし。

【夾榜】 ケフバウ 

門關の兩旁にかかぐるふだ。神異經「西南銅關──、題曰人往門」

【夾輔】 ケフホ 

左右よりさしはさみてたすける。左、僖四「齊侯以諸侯之師、伐楚、管仲曰、昔召康公命我先君太公曰、五侯九伯、女實征之、以──周室」

5畫

奄  

①エン [琰]

②エン [鹽]

③エン [豔]

○おほふ(被·覆)大いにして餘あり。○ことごとく(悉)○たちまち(忽)○にはかに(遽)

②ひさし。=淹。久しく畱る。

③ふさがる、精氣閉藏す。又、其の者。○宦官、閹に通ず。

【奄有】 エンイウ 

おほひたもつ、全部残らず領有する。詩、魯頌「──下土、纘禹之緖」

【奄尹】 エンイン 

宦官の長 カシラ 禮記「命──申宮命」=閹尹。

【奄奄】 エンエン 

いきのふさがりて絕えんとする貌。李密、陳情表「劉日薄西山、氣息──」

【奄欻】 エンクツ 

去來の忽ちにして定かならざる貌。左思賦「慌罔──」

【奄忽】 エンコツ 

たちまち、はやし、にはか。漢書、酷吏傳「──如神」=倏忽·忽然·奄然。

【奄人】 エンジン 

宦官をいふ。=閹人。

【奄然】 エンゼン 

奄忽に同じ。

【奄畱】 エンリウ 

久しくとどまる、永く滯在する。=淹畱。

奇  

キ [支]

○くし、くすし(異)○くしきもの、普通ならざるすぐれしもの、非常のもの(異物)「─才」「─童」○めづらし(珍)あやし(怪)○ひそか(祕)○よこしま(邪)○いつはる、いつはり(詐·詭)○ひとつ(隻)○二にて割り切れざる數。偶數の對。○十六歲以上。丁年未滿の男子、餘夫。○數─はふしあはせ(不遇)史、李廣傳「李廣老數─」○離─は委曲盤戾 イリクミテワダカマル の貌。○傳─は小說の類。

【奇異】 キイ 

他と異りてめづらし。不思議。書經、疏「奇技謂──技能」

【奇偉】 キキ 

すぐれて大いに立派なり。吳志、吳主傳「形貌──」

【奇瑋】 キヰ 

めづらしくうつくし。傅休奕、李賦「翫斯味之──」

【奇雲】 キウン 

めづらしき形せるくも。李白詩「奇峯出──、秀木含秀氣」

【奇贏】 キエイ 

數のあまり、贏は餘。漢書「商賈大者積貯倍息、小者坐列販賣操其──」

【奇緣】 キエン 

ふしぎのえにし、思ひがけざる因緣「合緣 アヒエン ──」

【出奇制勝】 ギヲイダシテカチヲセイス 

奇計を出して勝を得る。史、田單傳「兵以正合、以奇勝、出奇無窮、奇正還相生焉」

【奇巧】 キカウ 

めづらしきたくみ。後漢書、和帝紀「商賈小民、或忘法禁、──靡貨、流積公行」

【奇行】 キカウ 

人なみかはりしおこなひ、風がはりの行。

【奇香】 キカウ 

めづらしきかをり。眞率齋筆記「──一丸」

【奇效】 キカウ 

ふしぎなるききめ、靈妙なる效驗。=奇驗。

【奇寒】 キカン 

例年と異りたるきびしきさむさ。酉陽雜俎「今歲──」

【奇技】 キギ 

あやしく異りたる手わざ。書、泰誓「作──淫巧以悅婦人」

【奇氣】 キキ 

めづらしき氣。王蒙詩「金精發──」

【奇戲】 キギ 

めづらしき遊戲。晉書、五行志「恭帝爲琅邪王、好──、常閉一馬於門內、令人射之」

【奇畜】 キキウ 

めづらしき家畜。史記「其──則槖駞·驢·驘」

【奇奇怪怪】 キキクワイクワイ 

極めてあやし、甚だしく奇怪。

【奇奇妙妙】 キキメウメウ 

極めてふしぎ、甚だしく奇妙。

【奇句】 キク 

人のいひ及ばざるめづらしき句。宋史「林逋、喜爲詩、其詩澄浹峭特、多──」

【奇偶】 キグウ 

奇數と偶數と、はん(奇)とちゃう(偶)と。楊基詩「五齡琢句對虛實、聯靑儷黃配──」

【奇遇】 キグウ 

思ひがげなくめぐり會ふ。=奇覯。

【奇耦】 キグウ 

奇數と偶數と。易經「陽卦奇、陰卦耦」=奇偶。

【奇勳】 キクン 

すぐれたるいさを。李白詩「麟閣著──」

【奇花】 キクワ 

めづらしき花。宋史「夾岸皆──珍木」

【奇果】 キクワ 

めづらしきくだもの。後漢書、桓榮傳「詔賜──、受者皆懷之、榮獨擧手捧之以拜、帝笑指之曰、此眞儒生也」

【奇禍】 キクワ 

思ひがけなきわざはひ。升菴集「有奇福者、必有──」

【奇快】 キクワイ 

はなはだおもしろし。酉陽雜俎「笑曰──」

【奇怪】 キクワイ 

○あやしくふしぎ。史、周紀「他──物」=詭怪。○ 國    キツクワイ けしからぬ。

【奇瑰】 キクワイ 

めづらしくすぐれる。又、其の物。孟郊詩「地遠有餘美、我來采──」

【奇懷】 キクワイ 

ふしぎなるおもひ。范成大詩「歡伯有──」

【奇貨可居】 キクワオクベシ 

めづらしき品は之を買ひ置き、時を待ちて大利を得べしとの義。秦の王子子楚が趙に人じちとなりて冷遇せられ居るのを呂不韋といふ商人が見て、奇貨居く可しとて子楚に金を與へて優待せり、子楚後に莊襄王となりて呂不韋を丞相とし、文信侯に封じて河南洛陽十萬戶を食ましめし故事に本づく。史、呂不韋傳「呂不韋賈邯鄲、見而憐之曰、此────、乃往見子楚」子楚を財貨にくらべていふ。

【奇畫】 キクワク 

すぐれたるはかりごと。晉書、文帝紀「──指授、制勝千里」=妙籌·奇策·奇計·奇謀。

【奇觀】 キクワン 

かはりてめづらしきみもの。楊萬里詩「──初逢慰道塗」=偉觀。

【奇形】 キケイ 

めづらしきかたち。晉書「──異狀」=奇狀。

【奇計】 キケイ 

めづらしきはかりごと。史、陳丞相世家「凡六出──」=奇謀·祕計。

【奇警】 キケイ 

すぐれてさとし。宋史、王珪傳「弱歲──、出語驚人」

【奇矯】 キケウ 

○すぐれてつよし。敖陶孫文「──無前」○なみはづれたる言行をなす。

【奇譎】 キケツ 

いつはり、たくらみ〔漢書、朱博傳〕

【奇言】 キゲン 

おもしろきことば。傅休奕詩「臨急吐──」

【奇驗】 キケン 

ふしぎなるしるし。すぐれたるききめ。劇談錄「吉凶屢有──」

【奇功】 キコウ 

めづらしきてがら。漢書、陳湯傳「爲人多策謀、喜──」=奇勳。

【奇覯】 キコウ 

めづらしきであひ、思ひがけざるめぐりあひ。張說詩「不同──往、空覩斯文來」=奇遇。

【奇骨】 キコツ 

人に異なる骨相。晉書、桓溫傳「此兒有──、可試使啼」

【奇才】 キサイ 

すぐれたるはたらき。史、周昌傳「年雖少然──也」

【奇彩】 キサイ 

めづらしきいろどり。晉書、子夜詩「山林多──」

【奇綵】 キサイ 

めづらしきいろどり。北史「所珍在素、不務──」

【奇相】 キサウ 

めづらしき人相。金史「吾兒有──、貴不可言」

【奇草】 キサウ 

めづらしきくさ。李德林文「神禽異獸、珍木──」

【奇想】 キサウ 

めづらしきかんがへ、奇拔なる思ひつき。

【奇策】 キサク 

人の意表に出づろはかりごと。=奇計。

【奇字】 キジ 

文字の六體の一、奇異の形せる書體。漢書、藝文志「六體者、古文·──·篆書·隸書·繆篆·蟲書」

【奇臭】 キシウ 

あやしきにほひ。荀子「──以鼻異」=異臭。

【奇獸】 キジウ 

めづらしきけもの。書、旅獒「珍禽──」=異獸。

【奇日】 キジツ 

はんの日。偶日の對。

【奇疾】 キシツ 

ふしぎにめづらしき病。宋史、呂夏卿傳「得──、身體日縮、卒時纔如小兒」

【奇習】 キシフ 

めづらしきならはし、奇異なる風俗。

【奇襲】 キシフ 

不意に敵陣をおそひうつ。

【奇邪】 キジヤ 

よこしま。中正の反對。禮記「雖有──、而不治者則微矣」

【奇衺】 キジヤ 

中正ならず、衺はよこしま。周禮、天官「去其淫思與其──之民」=奇邪。

【奇狀】 キジヤウ 

めづらしきかたち。孟浩然詩「西山多──」

【奇趣】 キシユ 

めづらしきおもむき。白居易詩「逸韻諧──」=妙趣。

【奇術】 キジユツ 

○ふしぎなる技術。韓愈詩「悲哉無──」=妖術。○ 國  てじな。=魔術。

【奇勝】 キシヨウ 

○珍らしくすぐれたる景色。又、其の所。唐書、文藝傳「王維別墅在輞·川、地──」○奇兵を以て敵にかつ、異りたる方略にて勝つ。又、其の戰勝。孫子「凡戰者以正合、以──」

【奇瑞】 キズヰ 

ふしぎにめでたきしるし。奇異なる瑞相。論衡「萬物育則──出」=異瑞。

【奇數】 キスウ 

○はんのかず、二にて割り切れざる數。偶數の對。○ふしぎなる方術。後漢書、王昌傳「趙繆王好──任俠于越魏閒」

【奇蹟】 キセキ 

かみわざ。神の力にてする不思議なるわざ。又、其の形迹。

【拜奇石 】 キセキヲハイス 

宋の米元章が奇石を愛して拜したる故事。石林燕語「米芾好奇石、知無爲軍、初入州廨、見立石頗奇、喜曰、此足以當吾拜、遂命取袍笏拜之、每呼曰石丈、爲言者所彈」

【奇說】 キセツ 

かはりたる言論、人を驚かす言說。廼賢詩「伏謁中書堂、揚眉吐──」

【奇節】 キセツ 

すぐれたるみさを。奇特なる節操。虞世南詩「韓魏多──、倜儻遺名利」

【奇態】 キタイ 

○めづらしきかたち。沈約詩「瓌姿信嵓崿、──實玲瓏」=奇狀。○ 國  不思議、奇妙。

【奇談】 キダン 

めづらしきはなし。=奇話。

【奇致】 キチ 

めづらしきおもむき。南史、蕭範傳「招集文才、率意題章、亦時有──」

【奇智】 キチ 

めづらしきちゑ。賈誼新書「梁王曰、陶之朱叟以布衣、而富侔國、是必有──」

【奇琛】 キチン 

めづらしきたから。法苑珠林「──瓔珞、一切寶藏、自然出現」

【奇挺】 キテイ 

めづらしくぬきんでる。遊天台山賦「嗟台嶽之所──、實神明之所扶持」

【奇蹄類】 キテイルヰ 

一足一枚の蹄 ヒツメ を有する獸類。馬·犀など。偶蹄類の對。

【奇童】 キドウ 

すぐれたるこども。唐書、李百藥傳「客大驚、號──」=神童。

【奇特】 キトク 

○特にめづらしく衆人と異り。宋書、武帝紀「身長七尺六寸、風骨──」○ 國  賞すべき心がけ、殊勝。

【奇南香】 キナンカウ 

名香の名。=伽羅·黑沈香〔潛確叢書〕

【奇而又奇】 キニシテマタキ 

甚だめづらし。論衡、超奇「山以土石爲體、其有銅鐵、山之奇也、銅鐵旣奇、或出金玉、鴻儒世之金玉也、────矣」

【奇葩】 キハ 

めづらしくすぐれたるはな。司馬相如、美人賦「──逸麗」

【奇拜】 キハイ 

一たび拜する。周禮「七曰、──」注「奇不偶也、謂禮簡不再拜也」

【奇煤】 キバイ 

めづらしき墨。張耒詩「平生筆墨萬金直、──利翰盈篋收」

【奇方】 キハウ 

不思議なる方術。又、めづらしくききめある藥方〔史、武帝紀〕

【奇拔】 キバツ 

すぐれぬきんでる。世說「才藻──」=超拔。

【奇筆】 キヒツ 

○めづらしきかきもの。=奇書。○すぐれて奇拔なる手跡。唐書、張旭傳「天下──也」

【奇品】 キヒン 

○すぐれたる人品。司馬光詩「一城──推安國」○めづらしき品物。=珍品。

【奇服】 キフク 

あやしき服裝。周禮、天官「──怪民、不入宮」

【奇福】 キフク 

おもひがけなく得るさいはひ、もっけのさいはひ、僥倖。奇禍の對。文中子「從天之則、內無──、外無奇禍」

【奇物】 キブツ 

めづらしきもの。歐陽修文「劉原父博學好古、多藏古器──」=奇品。

【奇文】 キブン 

すぐれたる妙文。陶潛詩「──共欣賞、疑義相與析」

【奇芬】 キフン 

めづらしきよき香。韓愈詩「天葩吐──」

【奇聞】 キブン 

珍らしき話。

【奇兵】 キヘイ 

奇は正の反、ふしぎなる計を用ひて敵の不意に出づるいくさ。史、廉頗藺相如傳「趙括、旣代廉頗、秦將白起聞之、緃──佯敗走」

【奇峯】 キホウ 

めづらしき形の山。陶潛詩「春水滿四澤、夏雲多──」

【奇謀】 キボウ 

すぐれたるはかりごと。北史、獨孤信傳「美風度雅、有──大略」

【奇璞】 キボク 

めづらしきあらたま。僧皎然詩「卞山幽石產──」

【奇夢】 キム 

不思議なる夢。

【奇茗】 キメイキべイ 

すぐれてよき茶。蘇軾詩「──洗積昏」

【奇妙】 キメウ 

○ふしぎにめづらし。晉書、律歷志「──之式、不傳來世」○めづらしくすぐれる。法華經「散衆妙華、種種──、以爲壯嚴」

【奇藥】 キヤク 

めづらしきくすり。蘇軾詩「千金得──」=妙藥·靈藥。

【奇利】 キリ 

めづらしきまうけ。管子「──未在其中也」

【奇零】 キレイ 

單位以下、こんま以下。=奇贏。

【奇麗】 キレイ 

すぐれてうるはし。漢書、郊祀歌「衆嫭竝綽──」嫭は美人。=妙麗。

奈  

タイ ナイ [隊]

柰に同じ通音ナ

なに、いかに、いかんぞ(那)

 同訓異義 

イカン 奈·奈何·如何·何如·何若等の別は如何(女部三畫)の如の條を見よ。

【奈落】 ナラク 

 佛  不可樂、墮落·无赦などと譯す。地獄の義。○ 國  芝居の舞臺の下に設くる穴ぐら。舞臺を踏み鳴らす音を反響せしむるため。

【奈良漬】 ナラヅケ 

 國  大根·瓜·茄子等を酒の糟 カス につけたる香の物。

【奈何】 イカン 

いかに。=如何。

奉  

①ホウ·ブ [腫]

②ホウ [宋]

①たてまつる、ささぐ(獻)上に獻呈する、恭しく持つ。○うけつぐ、うけたまはら(受·承)仰せをうける。○おくる(送)○すすむ(進)○やしなひ(養)○まかなひ、生活の費用。孟、吿子「妻妾之─」○みつぎ(貢物)

②ふち(秩祿)=俸。

【奉引】 ホウイン 

みちびき、前導して車を引く。漢官儀「大駕則公卿──」

【奉加】 ホウカ 

 佛  神佛への寄進の中へ加へ奉る。=喜捨·奉納「──帳」

【奉行】 ホウカウ 

○君命を奉じて施し行ふ。漢書、魏相傳「方今務在──故事而已」○ 國    ブギヤウ 古、武家にて、種種の職の長官「町──」

【奉給】 ホウキフ 

ささげそなへる。北史、穆崇傳「往來──、時人無及者」

【奉還】 ホウクワン 

かへしたてまつる。

【奉獻】 ホウケン 

物を獻上する。後漢書「莎車國·鄯善國遣使──」=奉呈。

【奉公】 ホウコウ 

○君のために心力を盡す。後漢書、祭遵傳「憂國──」○ 國  下男下女に住みこむ「──人」

【奉候】 ホウコウ 

貴人の機嫌を伺ふ。宋書、武帝紀「──于新亭」

【奉貢】 ホウコウ 

みつぎものをおさめたてまつる。後漢書「重譯──」

【奉懇】 ホウコン 

 俗  切にこひねがふ。

【奉朔】 ホウサク 

天子の正朔(曆)を奉ずる、よく政令に服從する義。蘇頲文「日月所臨而──」

【奉仕】 ホウシ 

君主につかへまつる。

【奉使】 ホウシ 

使命を奉じて行く。後漢書、馮衍傳「懷金垂紫、揭節──」

【奉祠】 ホウシ 

○あがめまつる。○宋代、功臣又、學者を優待するため、各地にある道敎の寺等の祭事を掌らしめて秩祿を與ふる特典。

【奉將】 ホウシヤウ 

上帝の命令、又は君命を奉じて行ふ。書、胤征「──天罰」=奉行。

【奉嘗】 ホウシヤウ 

まつる。又、まつり。後漢書「後世子孫──我」

【奉書】 ホウシヨ 

 國  室町時代に官吏が公方 クバウ の命をうけて下すかきつけ。○紙の一種、色白く質柔く、辭令書、又、儀式上の文書を書くに用ふる大判の紙。

【奉書紬】 ボウシヨツムギ 

羽二重に似たる精良の絹織物。

【奉承】 ホウシヨウ 

うける、つつしみて受ける。左傳「──以來、不敢失隕」

【奉職】 ホウシヨク 

職務をつつしみつとめる。史、循吏傳「──循理、亦可以爲治」

【奉祖】 ホウソ 

祖先に仕へまつる。後漢書「臣聞、子孫以──、爲孝」=奉先。

【奉送】 ホウソウ 

貴人を見送りたてまつる。白虎通「有會葬──君者」

【奉率】 ホウソツ 

うけつぎて行ふ。晉書、武帝紀「欲令──德義爲天下式」

【奉戴】 ホウタイ 

たふとびいただく。左、襄二五「──厲公」

【奉體】 ホウタイ 

上意を承けて行ふ。書經、傳「率義──」

【奉答】 ホウタフ 

つつしみてこたへまつる。潘勗文「──天命」

【奉勅】 ホウチヨク 

勅命をうけたまはる。=奉詔。

【奉呈】 ホウテイ 

さしあげる、獻上する。=奉獻。

【奉天】 ホウテン 

滿洲盛京省の首府、古の靑·幽二州の地、戰國の燕の地、盛京、又、瀋陽といひ、淸朝發祥の地、今尙宗廟を存す、東南に渾河を帶び、西南に遼河を控ふ。

【奉納】 ホウナフ 

神社佛閣等に金品を寄進する。

【奉陪】 ホウバイ 

天子又は貴人のお供をする。杜牧詩「何時得──」

【奉幣】 ホウヘイ 

神に弊帛をたてまつる。

【奉幣使】 ホウヘイシ 

 國  天皇が神に幣帛を奉らるる時の勅使。

【奉養】 ホウヤウ 

長上につかへやしなふ。

6畫

奕  

エキ ヤク [陌]

○──は大いなり。又、さかんなり(盛)又、うつくし(美)又、かがやく、光る貌。又、憂ふる貌、又、しなやかなる貌。○ついで(次序)○かさぬ(重)○俗に弈に通じて圍碁の義とす。

【奕奕】 エキエキ 

○美くしき貌。詩、魯頌「新廟──」○大いなる貌。詩、大雅「──梁山、維禹甸之」○憂ふる貌。詩、小雅「未見君子、憂心──」○光りかがやく貌。北齊書、瑯邪王儼傳「眼光──、數步射人」○舞ふ貌。張衡、東京賦「萬舞──」○輕靡 カルクシナヤカ なる貌。左思、吳都賦「儐從──」

【奕葉】 エキエフ 

だいだい。增韻「──累世也」曹植文「伊君顯考、──佐時」=奕世·累葉。

【奕棊】 エキキ 

ごをうつ。又、其の技。西京雜記「杜陵杜夫子、善──、爲天下第一」=弈棋·圍碁。

【奕秋】 エキシウ 

古のごうちの名人。孟、吿子「──通國之善奕者也」

【奕楸】 エキシウ 

ごばん(棊盤)段成式詩「閒對──傾一壺」=葉局。

【奕者】 エキシヤ 

ごうち。左、襄二五「──擧棋不定」

【奕世】 エキセイ 

だいだい。國語「──載德、不忝前人」=累世·奕葉。

【奕代】 エキダイ 

だいだい。陶潛文「綴文之士、──繼作」=奕世·累代。

奐  

クヮン [翰]

○大いなり。○ゆたか、ひまありて豫 タノシ む貌。詩、大雅「伴─爾游矣」○あきらか、文采粲明 アヤモヤウガアキラカ なる貌。○さかんなり(盛)

【奐焉】 クワンエン 

文采の粲明 アキラカ なる貌。禮、檀弓「美哉──」

奎  

ケイ [齊]

○兩髀 モモ の閒、またぐら。○星宿の名、二十八宿の一、西方に在りて、其の數十六、文章を主る、其の形屈曲して字畫の狀をなす。

【奎運】 ケイウン 

文運に同じ。

【奎文】 ケイブン 

文章をいふ、奎星はまがりて、文字の畫に似たり、故にいふ。孝經援神契「奎主文昌」

【奎分】 ケイブン 

奎星の天の分野にあたる地、奎は文明の司命たる星。名山記「闕里當──、斯文在玆」

契  

①ケイ [霽]

②セツ [屑]

③ケツ [屑]

④キツ [物]

①ちぎる、ちぎり(約)約束する「─約」○まじはり、ちなみ、交を結ぶ「交─」「魚水─」○あふ、あはす(合)「─合」○わりふ、てがた「符─」「券─」○うれひくるしむ(憂苦)○おづ、おそる(怯)

②人の名、殷の湯王の祖。書、舜典「帝曰、─汝作司徒」

③くるしむ(勤苦)=挈。○きざむ(刻)呂覽「─舟求劍」鍥に通ず。○うとし(疏闊)久しく逢はず。○たつ(絕)かく(缺)

④「─丹 キツタン は國名、東胡種、支那の東北部に在り、後魏の頃より支那に通じ、唐末に內蒙古を占領し、五代の頃、皇帝と稱し、遼國を建つ。

【契印】 ケイイン 

わりいん、書類の紙が二枚以上ある時、これを證明する爲めに兩紙に跨げて押す印形。

【契合】 ケイカフ 

左右のわりふを合す。轉じてぴったりとよく合ふ。=符合·吻合。

【契會】 ケイクワイ 

むすびあふ、ちぎる。司馬光詩「神精一──、形迹兩俱忘」

【契闊】 ケイクワツ 

○ぶさた。漢書、范丹傳「行路急卒、非陳──之所」=疏闊·久闊。○勤め苦む。詩、邶風「死生──、與子成說、執子之手、與子偕老」

【契兄】 ケイケイ 

兄弟約束せし兄。=義兄。

【契契】 ケイケイ 

憂ひ苦む。詩、小雅「──寤歎」

【契券】 ケイケン 

わりふ、契約證書。。荀子「合符節、別──者、所以爲信也」

【契子】 ケイシ 

やしなひご。=養子。

【契書】 ケイシヨ 

約束證文。=契券。

【契照】 ケイセウ 

契券に同じ。照はてらし合せて證據とする義。文獻通考、田賦考「面問來歷、取索──」

【契刀】 ケイタウ 

漢の王莽の作りし貨幣。漢書、食貨志「更造大錢、又造──錯刀」

【契弟】 ケイテイ 

兄弟約束せし弟。=義弟。

【契父】 ケイフ 

やしなひおや、ままちち。=養父·義父。

【契符】 ケイフ 

わりふ。華陽國志「井絡啓耀、文昌──」=符節。

【契文】 ケイブン 

ちかひのかきつけ、契約書。

【契票】 ケイヘウ 

契券に同じ。

【契盟】 ケイメイ 

ちかひをむすぶ。=締盟。

【契母】 ケイボ 

やしなひおや、ままはは。=養母。

【契約】 ケイヤク 

やくそく。賣買·請負·保險·貸借等に關する約定。

奏  

ソウ [宥]

○君王に申し上げる。又、其の書。○すすめる(進)上にさし出す。○かなづ、音樂を爲す。周禮、春官「九─乃終、謂之九成」○すぢ、?に通ず。○あつまる、輳、湊に通ず。

【奏按】 ソウアン 

奏問して罪を案驗 シラべル する。後漢書、羊陟傳「再遷冀州刺吏、──貪濁、所在肅然」

【奏案】 ソウアン 

天子へ申し上げるかきつけのしたがき。=奏稾。

【奏可】 ソウカ 

上奏を採用する義。漢書、武帝紀「丞相綰奏、所擧賢良、或治申商韓非蘇秦張儀之言、亂國政、請皆罷、──」

【奏稾】 ソウカウ 

奏案に同じ。稾一に藁に作る。唐書、陸元方傳「取──焚之」

【奏樂】 ソウガク 

音樂をかなでる。

【奏議】 ソウキ 

意見を天子に奏聞する。漢書「公卿稱職、──可述」

【奏琴】 ソウキン 

ことをひく。郭祥正詩「絕壑風生松──」

【奏曲】 ツウキヨク 

奏樂に同じ。

【奏勳】 ソウクン 

奏功に同じ。

【奏決】 ソウケツ 

奏上してさだめる。長編「天下獄悉欲──」

【奏功】 ソウコウ 

事の成功を君に申し上げる、轉じて、ひろく事の成就せし義とす、てがらをあらはす、功を立てる。=奏勳。

【奏裁】 ソウサイ 

天子に上奏して裁決を仰ぐ。唐書、百官志「大事──」

【奏瑟】 ソウシツ 

ことをひく。史、廉頗·藺相如傳「趙王好音、請──」

【奏上】 ソウジヤウ 

天子に申し上げる。=奏聞。

【奏章】 ソウシヤウ 

天子に申し上げるかきつけ。=上奏文·上書。

【奏者番】 ソウシヤバン 

 國  德川時代諸侯以下の將軍に謁見する者を取り次ぐ役。=謁者。

【奏授】 ソウジユ 

 國  上奏し御裁可を經て位記を授ける。正五位以下之により宮內大臣宣行す。

【奏書】 ソウシヨ 

奏疏に同じ。=奏章。

【奏請】 ソウセイ 

天子に上奏して御願する。漢書「有司──、減什三」

【奏捷】 ソウセフ 

勝利のしらせを天子に奏聞する。

【奏摺】 ソウセフ 

 俗  上奏文。

【奏疏】 ソウソ 

○文體の名。文體明辯「──者羣臣論諫之總名也」○上にたてまつる文書。宋史、李倬傳「──凡數十」=上疏。

【奏彈】 ソウダン 

天子に申し上げて役人の罪過をただす。上奏彈劾〔梁書、劉之遴傳〕

【奏笛】 ソウテキ 

ふえをふく。晉書「敕御伎──」=吹笛。

【奏牘】 ソウトク 

天子に申しあげるかきつけのふだ、上奏の書牘。王廷珪詩「百辟動容觀──、幾人囘首愧朝班」=奏牋。

【奏任】 ソワニン 

 國  大臣の奏聞を經て任命する官等、三等以下の高等官。勅任の下、判任の上に位す。

【奏稟】 ソウヒン 

上申すると、命令をうけると。唐書、裴度傳「恐萬機──、有所壅閼」

【奏舞】 ソウブ 

まひをまふ。晉書、樂志「登歌──、神樂其和」

【奏聞】 ソウモン 

天子に言上する。=上奏。

奓  

①タ [麻]

②シャ [麻]

①はる(張)○ひらく(開)○ほこる(夸)

②おごる。=侈。

奔  

①ホン [元]

②ホン [問]

③ホン [願]

犇は古字、奔は俗字

①はしる(走)○禮を備へずして結婚する。自由結婚。周禮、地官、媒氏「仲春之月、令會男女、─者不禁」○はしらす、しりぞく、おふ(逐)

②やぶる、覆敗す「─軍」

③おもむく、急に赴く、急變あれば─り赴く。

 同訓異義 

ハシル 奔·走·趨の別は走(部首七畫)の條を見よ。

【奔逸】 ホンイツ 

はしりにげる。=逸走。

【奔軼】 ホンイツ 

速かに走りて前者に乘りこす。莊、田子方「顏淵問於仲尼曰、夫子步亦步、夫子趨亦趨、夫子馳亦馳、夫子──絕塵、而囘瞠若乎其後矣」=奔佚。

【奔潰】 ホンクワイ 

はしりつひゆ。宋史「諸城望風──」=潰走。

【奔競】 ホンケイホンキヤウ 

走りきそふ、競爭する。南史、顏延之傳「──干祿」

【奔洪】 ホンコウ 

激しく流れる河水。揭傒斯詩「雷雨瀉──」=激流。

【奔喪】 ホンサウ 

異鄕にて親の死を聞きて奔り赴く義。禮記に──篇あり。

【奔竄】 ホンザシ 

はしりのがれる、にげ隱れる。蜀志、注「或迎軍出降、或──山谷」

【奔駛】 ホンシ 

騎馬又は水流などの勢急なるにいふ。洛陽名園記「湍瀑則──」=奔馳。

【奔車之上無仲尼 】 ホンシヤノウヘチユウヂナシ 

聖賢は危地に居らざる喩。奔車は覆る車。韓非、安危「───────、覆舟之下無伯夷」

【奔趨】 ホンシユホンスウ 

はしりおもむく。韓愈、碑銘「叫譟──、乘門請起」

【奔星】 ホンセイ 

夜閒空中を飛行する星。長楊賦「疾如──、擊如震霆」=流星。

【奔走】 ホンソウ 

かけまはる、運動する。書經「──事厥考厥長」韓愈、與陳給事書「衣食於──」

【奔湊】 ホンソウ 

はしりあつまる。晉書、會稽王道子傳「勢傾天下、朝野──」

【奔濤】 ホンタウ 

はげしく寄する大なみ。虞茂詩「長瀾疑浴日、連島類──」

【奔湍】 ホンタン 

はやせ。王炎詩「轉柂涉──、支筇入幽塢」=急湍·奔瀧。

【奔馳】 ホンチ 

はしりかける。後漢書、隗囂傳「赤車──」

【奔衄】 ボンヂク 

敗られて逃げる。衄は敗。〔南史、侯景傳〕

【奔注】 ホンチユウ 

勢よく流れ注ぐ。杜甫詩「溪行水──」

【奔女】 ホンヂヨ 

いたづらむすめ、淫奔女。正式の禮を備へずして男の許に走る女の義。

【奔隄】 ホンテイ 

人が乘ればあばれ奔り、又人をふむあれうま。漢書、武帝紀「馬或──、而致千里、士或有負俗之累、而立功名」

【奔霆】 ホンテイ 

はげしきいなびかり。蘇軾詩「經度萬里如──」

【奔潮】 ホンテウ 

はげしくはやきうしほ。柳渾詩「──溢南浦」=奔濤。

【奔騰】 ホントウ 

はしりのぼる、かけあがる。後漢書、和帝紀「──阻險、死者繼路」

【奔突】 ホントツ 

はしりつく。後漢書「馬驚──賊陣」

【奔波】 ホンバ 

なみの寄する如く爭ひおもむく。晉書、慕容垂傳「杜豪强之門、塞──之路」

【奔放】 ホンバウ 

○勢よく走る。後漢書「飛兔腰?、絕足──、良樂之所急」良樂は王良·伯樂、竝に馬を御する名人。○水勢の迅急なるにいふ。韓愈詩「南匯羣崖水、北注何──」○詩文の勢よき形容。趙抃詩「詞句大──」

【擒奔馬 】 ホンバヲトリコニス 

力の甚だ强きにいふ。舊唐書、史敬奉傳「敬奉形甚短小、若不能勝衣、至於野外馳逐能───」

【奔計】 ホンフ 

喪のしらせに接して急ぎゆく。宋書「綸徒步──千里餘」

【奔赴】 ホンフ 

前條に同じ、訃·赴通ず。後漢書「以師喪、棄官──」

【奔命】 ホンメイ 

君命のままに奔走する。左、成、七「余必使爾罷於──以死」

【奔雷】 ホンライ 

はげしく鳴るかみなり。杜甫詩「昨夜有──」轉じて溪流などの聲のはげしき形容。

【奔浪】 ホンラウ 

はしるなみ。駱賓王文「下爲──迅波所激射」=奔濤。

【奔流】 ホンリウ 

はやきながれ。唐太宗詩「──酒絡纓」=急流·激流。

【奔瀧】 ホンロウ 

はやせ。范成大詩「鼓旗西征上──」=奔湍。

7畫

奚  

ケイ [齊]

○なんぞ、なんすれぞ、なに(何)いづくんぞ、疑問の辭。韓非、十過「─謂小忠」又、反語の辭。歸去來辭「樂夫天命復─疑」○しもべ、隸役。周禮、天官「酒人─三百人」=傒。

【奚奴】 ケイド 

しもべ(下男)陸游詩「詩囊隨處累──」=僕隸。

【奚童】 ケイドウ 

でっち、こぞう。

【奚囊】 ケイノウ 

勝景を探りつつ得たる詩を入るるふくろ。唐書、李賀傳「每旦日出、出騎弱馬、從小奚奴、背古錦囊、遇所得、書投囊中」柳貫詩「故畱皺玉薦──」

【奚若】 ナンスレゾイカン 

なんとして、如何ぞ、なんすれぞ。

奘  

①サウ·ザウ [養]

②サウ [漾]

弉は俗字

①大いなり。○さかんなり(壯·盛)

②玄─は唐の高僧の名、姓陳氏、貞觀の初、商人に隨ひて西域に遊ぶ。

套  

①タウ·トウ [皓]

②タウ·トウ [號]

①ながくしておほいなり(長大)

②かざぬ、かさなる(重)「衣一─」○おほひ、物の外函「筆─」「封─」○他人のすでに用ひし文字·言語を模擬するをいふ。轉じてふるくさし「陳─」○くま(地曲)地の曲りし所「河─」

【套語】 タウゴ 

ふるくさき言、陳腐の語。

畚  

ホン [阮]

ふご、もっこ、あじか、草索 ナハ にて作り、四隅にひもを附け土を盛りて運ぶ具。晉書、王猛傳「少以織─爲業」

【畚鍤】 ホンサフ 

もっこと、すきと、土工の義に用ふ。晉書、石勒載記論「──相尋、于戈不息」

8畫

奝  

テゥ [蕭]

○おほいなり(大)おほし(多)○ 國  ─然は僧の名〔宋史、日本傳〕

9畫

奡  

カウ ゴウ [號]

○おごる、あなどる(慢·嫚)傲に通ず。○排─はつよし、矯健なる貌。○夏の時の人名。論、憲問「─盪舟」○叫─は相呼ぶ義。

奢  

シャ [麻]

○おごる、おごり(侈)分に過ぎる。儉の對。○はる(張)すぐ(過)

 同訓異義 

オゴル 奢·侈·驕·汰·傲·倨·泰○奢は儉の反、衣食住等の立派を好むなり。禮記「國奢則示レ之以レ儉」○侈は約の反、張大にするなり、祿あれば自ら泰ユタかにおごるなり。○驕は高ぶりて傲慢なるなり、心につきていふ、謙の反なり。周官「位不レ期驕、祿不レ期侈」にて、驕·侈の別明かなり。○汰はおごり過ぎて、やりばなしにするなり。○傲は慢也と註す、人を輕んずる也、敖に通ず。禮記「敖不レ可レ長」○倨は恭の反、倨傲と用ふ、人を何とも思はぬなり。○泰は侈·奢の義を兼ぬ、傲慢の意はなし、ゆたかに分に過ぐるなり。孟子「傳二食諸侯、一不二亦泰一乎」

【奢佚】 シヤイツ 

おごりてなまけ遊ぶ。後漢書「方今時俗──」

【奢傲】 ツヤガウ 

おごりたかぶる。左傳「六卿强而──」=傲奢·驕奢。

【奢綺】 シヤキ 

おごりてはでやか。吳志、諸葛融傳「錦罽文繡、獨爲──」

【奢華】 シヤクワ 

おごりてはなやか。又おごりかざる。韓愈詩「當春天地爭──、洛陽園苑尤紛拏」

【奢侈】 シヤシ 

おごり、ぜいたく、奢は華美、侈は豐富。漢書、食貨志「爭於──」=侈奢。

【奢肆】 シヤシ 

おごりてほしいまま〔唐書、魏徵傳〕=奢放·肆奢。

【奢忲】 シヤタイ 

おごる。晉書「性亦──」=奢侈。

【奢泰】 シヤタイ 

おごる。西京賦「──肆情而馨烈彌茂」

【奢放】 シヤハウ 

おごりてほしいまま。詩經、箋「樂者令人歡樂、惟恐──」

【奢靡】 シヤヒ 

身分に過ぎたるおごり。南史、羊侃傳「窮極──」=侈靡。

【奢欲】 シヤヨク 

おごりを好む欲。後漢書「競恣──」

【奢者心嘗貧】 オゴルモノハココロツネニマヅシ 

おごりを好む者は心に足ることを知らざるが故に、心常に貧しとの義。嘗は常に通ず。譚子化書、儉化「奢者富不足、儉者貧有餘、─────、儉者心嘗富」

奠  

テン デン [霰]

○さだむ(定)書、禹貢「─高山大川」○すゑおく(置)下に置く。○そなへる、すすむ(薦)神佛に物を供へる。○まつり(祭)

【奠儀】 テンギ 

死者の靈前に手向 タム ける物。=香奠。

【奠菜】 テンサイ 

神前に野菜をそなへる。又、其の供物〔儀禮、士昏禮〕

【奠都】 テント 

天子のみやこをさだめる。

10畫

奧  

①アウ·オウ [號]

②ヰク·ヲク [屋]

①おく、室の西南の隅、古、祭神の位。論、八佾「與其媚於─、寧媚於竈」○うらざしき、寢所。○どんづまり、極處「蘊─」○ふかし、おくふかし「深─」○かなめ(主要)「樞─」○つみあつめる、つみあつまる(積聚)○にる(烹和)○にごる。

②くま(隈)澳·隩に通ず。○あたたか、あたたむ(暖)=燠。○ 國  おく、妻の敬稱。

【奧衍】 アウエン 

文章の意味のおくぶかき義。唐書、韓愈傳「皆──閎深與孟軻揚雄相表裏」

【奧義】 アウギ 

○深遠なる義理。孔安國、尙書序「雅誥──、其歸一揆」=奧旨。○ 國    オクギ おくのて、祕傳。

【奧區】 アウク 

 國  の中央の地。邊境の對。宋史「撫──於吳會」=隩區。

【與旨】 アウシ 

學藝などの極所、おくのて。=奧義。

【奧祕】 アウヒ 

おくふかきひみつ。會稽典錄「上窮陰陽之──、下據人情之歸極」=奧義。

【奧李】 ヰクリ 

しでざくら。陸璣、詩疏「唐棣──也」=郁李。

【奧書】 オクガキ 

 國   ○書物·卷物等の終に其の來歷などを記す、かきいれ。=跋文。○願書の文面に相違無きことを證明するかきいれ。

【奧附】 オクヅケ 

 國  書物の終に添へて著者·發行所·印刷發行年月日·定價·版權等のことを記せし紙。

【奧南蠻】 オクナンバン 

 國  德川時代歐羅巴洲の稱。

【奧行】 オクユキ 

 國  家やしきの表通りを閒口といふに對し、其の側面の長さの稱。

11畫

奫  

ヰン ウン [眞]

水の深く廣き貌。元結、樂歌「聖德至深兮、──如淵」

奬  

シャウ サウ [養]

○すすむ(勸)はげます、誘掖する、とりもつ、推薦する。○たすく(助)なす(成)左、襄十一「─王室」○ほむ(襃美)

 同訓異義 

ススム 奬·進·晉·前·勸等の別は進(辵部八畫)の條を見よ。

【奬挹】 ツヤウイフ 

すすめる。唐書、李頻傳「大加──、以女妻之」

【奬學】 シヤウガク 

學問をはげます。

【奬訓】 シヤウクン 

すすめをしへる。後漢書、郭太傳「好──士類」

【奬進】 シヤウシン 

すすめのぼす。後漢書、孔融傳「薦達賢士、多所──」

【奬順】 シヤウジユン 

すすめてしたがひ行はしむ。孝經、事君「──其美、匡救其惡」

【奬勵】 シヤウレイ 

すすめはげます。後漢書「──吏兵討破羣賊」=奬勸。

【奬率】 シヤウソツ 

はげましひきゐる。蜀志、諸葛亮傳「當──三軍、北定中原」=奬帥。

奪  

ダツ [曷]

○うばふ、うばはる、强ひて取る。○祿位をとりあげる。論、憲問「─伯氏騈邑三百」○みだる、みだす。○文字の脫漏あるをいふ「訛─」

 同訓異義 

ウバフ 奪·簒·褫○奪は予の反、强ひて引きたくり取るなり。老子「將レ奪レ之、必先與レ之」○簒は逆取曰レ簒と註す、下より上のものを奪ひ取るなり、簒レ位·簒賊等の如し。○褫は衣をはぎとる義、轉じて位記等を取り上ぐるにも用ふ。

【奪衣婆】 ダツイバ 

 佛  三途河 サウヅガハ にて亡者の衣類をうばひ取るといふ鬼女。十王經「葬頭河曲有───、脫亡人衣」

【奪情】 ダツジヤウ 

除服出仕を命ずる義、引續きて喪をつとめんと思ふ人情を官府が奪ふとの意〔通鑒唐紀、胡註〕公羊傳「重奪孝子之情、望慕無窮」

【奪取】 ダツシユ 

うばひとる。唐書、尉遲敬德傳「──賊矟、還刺之」

【奪職】 ダツシヨク 

官職をうばひとる、免職さす。=削職。

【奪胎】 ダツタイ 

古人の詩意を易へずして語を作るを換骨といひ、古詩の意を本として、形容し稍意の易るを──といふ〔冷齊夜話〕今は古人の詩意に本づき之に模倣して作る喩とす。

【奪魄】 ダツハクハクヲウバフ 

精神を喪ふ、失神する。左傳「原叔必有大咎、天奪之魄矣」

【奪目】 ダツモクメヲウバフ 

强烈なる光にて目がくらむ。北史「電光──」

【奪掠】 ダツリヤク 

かすめとる。=奪略。

【奪略】 ダツリヤク 

うばひとる、かすめとる。=奪掠。

奩  

レン [鹽]

別に匳·匲に作る

かうばこ(香合)くしげ(鏡匣)化粧ばこ。

12畫

奭  

セキ [陌]

○赤き貌。○さかんなり(盛)○いかる(怒)○人名。召公─は周の武王の臣。

?  

奪(大部十一畫)の古字。

13畫

奮  

フン ボン [問]

○ふるふ、はげむ、はげます(勵)勇む。○振ふ、振ひて塵を去る「─衣」○あぐ、あげる(揚)○おこす、發し起す、發揚する。○とぶ(飛)大いに飛ぶ。○ふるひうごく、ふるひうごかす(震動)○怒る、憤り激する。○はたたきす(鼔翼)

 同訓異義 

フルフ 奮·震·振·揮·戰·顫·篩○奮は勇み進むなり、奮飛·奮戰·奮レ威などと用ふ。○震は雷にて震動するなり、轉じて威光に畏るるにも用ふ。○振はぶるぶるとふるふこと、震と音義通ず、されども雷などには用ひず、又ぱっぱっとはたきふるふ義。荀子「新浴者振二其衣一」○揮は手にて物をふるなり、揮レ毫·揮レ戈·揮レ扇の類。○戰はがたがた體や手のふるふ義、戰戰·戰慄の類。をののくとも訓む、股戰而栗の如し。○顫は身のぶるぶるとふるふこと、心顫·股顫の類。○篩は、ふるひにて通す義。漢書「篩レ土築二阿房之宮一」

【奮起】 フンキ 

ふるひおこる。=奮發。

【奮擊】 フンゲキ 

はげしくふるひうつ。晉書「將士──、莫不用命」=奮討。

【奮激】 フンゲキ 

はげしくふるひたつ。北史「其不──競赴敵場」

【奮迅】 フンジン 

たけりはやる。後漢書、劉植傳「──拔起」=奮發迅疾。

【奮振】 フンシン 

ふるひたつ。=奮厲。

【奮進】 フンシン 

ふるひすすむ。

【奮然】 フンゼン 

ふるひて力を出すさま、奮發する形容。

【奮戰】 フンセン 

ふるひたたかふ。=奮鬭。

【奮討】 フンタウ 

ふるひたちてうつ。蜀志「或忠義──」

【奮鬭】 フンタウ 

ふるひたたかふ。宋史、吳挺傳「金人操短兵──」

【奮怒】 フンド 

ふるひいかる。陳琳文「興兵──、誅夷暴逆」=憤怒。

【奮發】 フンパツ 

ふるひおこる。後漢書「陛下、神武──、以少制衆」=奮起。

【奮飛】 フンピ 

鳥が羽を張りて勢よく飛ぶ。詩、邶風「不能──」

【奮臂】 フンピ 

ひぢをふるふ、勇を鼔して事を爲す形容。鹽鐵論「孟賁──」

【奮躍】 フンヤク 

ふるひをどる、勇み進む。宋史、李綱傳「綱下令、能殺敵者、厚賞、衆無不──」

【奮厲】 フンレイ 

ふるひはげむ。=奮勵。

【奮勵】 フンレイ 

ふるひはげむ。=奮厲。

15畫

奰  

ヒ ビ [寘]

○さかんにおほいなり(壯大)○せまる(迫)○いかる(怒)詩、大雅「內─于中國、覃及鬼方」