艮部

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艮  

コン [願]

○とどまる(止)○かぎる(限)○もとる(很)○かたし(難)かたし(堅)○うしとら、東北の方角。○午前二時より四時までの時刻。○易の卦の名。─下─上。

【艮嶽】 コンガク 

河南省開封縣城の東北隅に在る山の名。艮嶽記「徽宗登極之初、皇嗣未廣、有方士言京城東北隅、地協堪輿、遂命土培其岡皁、政和閒大興土役、築山號萬壽──」艮は東北。

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良  

リャウ ラゥ [陽]

一音ラ

○よし(善)惡の對「─媒」「─士」「─馬」「─裘」○うつくし(美)○かしこし(賢)書、益稷「股肱─哉」○すなほ、おとなし、おだやか(易直)「溫─」○よきものの泛稱。○たくみに出來たる器(精作)器物が美くしく立派なり。禮、月令「陶器必─」○ふかし(深)後漢書、祭遵傳「─夜乃罷」○甚だし。○めでたし(吉)○やや、頗る、しばらくして。列、仲尼「─久吿退」○まことに(信·誠)李白、宴桃李園序「─有以也」(以は故)○よく(能)左、昭十八「弗─及也」○ただし(正)○賢者、君子、善人「賢─」「三─」○駿馬。○かしら(首·長)○─人はをっと(夫)又妻をいふ。

 同訓異義 

マコトニ 良·信·眞·誠·固·實·允·諒·苟·洵の別は信(一三七頁二段)の條を見よ。○ヨシ良·善·好·佳·嘉·哿·美·臧·吉の別は善(三四二頁四段)の條を見よ。

【良醫】 リヤウイ 

よきいしゃ。荀子「──之門、多病人」論衡「醫能治百病、謂之良」

【良友】 リヤウイウ 

よきともだち。晉書、周覬傳「幽冥之中、負此──」=善友·益友。

【良援】 リヤウヱン 

よきたすけ。孫魴、牡丹詩「欄檻爲──、亭臺是四隣」

【良緣】 リヤウエン 

○よきゆかり。李商隱詩「新知遭薄俗、舊好隔──」○よきえんぐみ。

【良家】 リヤウカ 

よき家がら。史、外戚世家「呂太后時、竇姬以──子入宮侍太后」

【良好】 リヤウカウ 

よし。=善良。

【良效】 リヤウカウ 

よきしるし。神仙感遇傳「浚井及泉、必有──矣」

【良貴】 リヤウキ 

爵位の如き人爲の者にあらずして、自然に貴きもの。孟、吿子「人之所貴者、非──也、趙孟之所貴、趙孟能賤之」

【良騎】 リヤウキ 

すぐれてよき騎馬。又、其の兵。漢書、鼂錯傳「益以邊郡之──」

【良驥】 リヤウキ 

すぐれたる千里の馬。吳質、答東阿王書「絆──之足、而責以千里之任」=良駿。

【良久】 リヤウキウヤヤヒサシ 

ややしばらくの閒。晉書、阮瞻傳「咨嗟──」=頗久。

【良裘】 リヤウキウ 

よきかはどろも。周禮、天官、司裘「中秋獻──」

【良謹】 リヤウキン 

善良にしてつつしむ。左傳、疏「篤者志性──、交遊款密也」

【良禽擇木】 リヤウキンハキヲユラブ 

よき鳥はよき木をえらぶ。人の其の仕ふべき主をえらぶに喩ふ。左、哀十一「孔文子之將攻大叔也、訪於仲尼、仲尼曰、胡簋之事則嘗學之矣、甲兵之事未之聞也、退命駕而行、曰、鳥則擇木、木豈能擇鳥」蜀志「良禽相木而棲」

【良金美玉】 リヤウキンビギヨク 

よき金と、うるはしき玉と。文章のすぐれたるに喩ふ。張說文「李嶠文如────、無施不可」=良玉精金·良玉美金。

【良弓】 リヤウキユウ 

○よきゆみ。墨子「──難張、然可以及高入深」○よき弓師。禮、學記「──之子、必學爲箕」

【良玉】 リヤウギヨク 

よきたま。法言、寡見「──不彫、美言不文、何謂也」

【良玉美金】 リヤウギヨクビキン 

すぐれて善美なる文章に比していふ〔唐書、文藝傳〕=良金美玉。

【良狗】 リヤウク 

よきいぬ。謀臣に比す。史、淮陰侯傳「狡兔死、──烹」

【良苦】 リヤウクマコトニクルシ 

甚だしくくるしむ。後漢書、王常傳「光武見常歡勞之曰、王廷尉──、每念往時共更難戹、何日忘之」

【良君】 リヤウクン 

よききみ。左傳「──將賞善而刑淫」=明君。

【良貨】 リヤウクワ 

よきたから。管子「雖有──、不能守也」

【良計】 リヤウケイ 

よきはかりごと。魏志、曹仁傳「頓兵堅城之下、以攻必死之虜、非──也」=良策·善計。

【良月】 リヤウゲツ 

陰曆十月の異名。十は盈數、故にいふ。左、莊十六「使以十月入、曰、──也、就盈數焉」

【良晤】 リヤウゴ 

良き會面。于立詩「時淸仰二皇澤、會少憶──」=良覿。

【良工】 リヤウコウ 

よきたくみ。孟、滕文公「天下之──也」=良匠。

【良工苦心】 リヤウユウクシン 

技工に長ずる者の苦心多きをいふ。捫蝨新話「老杜曰、更覺良工心獨苦、不獨謂畫也」

【良國】 リヤウコク 

善きくに。國語「夫吳、──也」=善國。

【良賈深藏若虛】 リヤウコハフカクヲサメテムナシキガゴトシ 

よき商人は店頭に物をつらねず。賢者は其の能を隱して衒 テラ はざるに喩ふ。史、老子傳「老子曰、吾聞之、──────、君子盛德、容貌若愚」

【良才】 リヤウサイ 

よきはたらき。又、其のはたらきある人。曹植詩「大國多──、譬海出明珠」=良材。

【良妻】 リヤウサイ 

よきつま。史、魏世家「家貧則思──、國亂則思良相」

【良劑】 リヤウザイ 

よきくすり。=良藥。

【良造】 リヤウザウ 

○王良·造父の略稱、二人は共に古の名高き御者。元稹詩「四十八監選龍媒、時貢天庭付──」○秦の官名、太少の二に分つ。

【良策】 リヤウサク 

よきはかりごと。=良計·良籌·良算·良圖。

【良算】 リヤウサン 

よきはかりごと。晉書、溫嶠傳「更思──」=良籌·良圖·善策。

【良士】 リヤウシ 

よきさむらひ。詩、唐風「好樂無荒、──瞿瞿」(瞿瞿は儉 ツヅマヤカ なる貌)=美士。

【良子】 リヤウシ 

善き子。國語「若紂有──」=善子。

【良死】 リヤウシ 

壽命を全うして死する。通艦、梁武紀「枉理殺人、天道有靈、不得──」=善終。

【良師】 リヤウシ 

よき先生〔史、梁孝王傳〕

【良駟】 リヤウシ 

よき四頭立のうま。述征記「魏東平王登壽張安仁山、銘曰、正月七日、厥日惟人、策我──、陟彼安仁」

【良日】 リヤウジツ 

○よき日がら。漢書「謹擇──二月甲午、上尊號」=良辰·吉辰·吉日。○七月七日の異稱〔周處、風土記〕

【良質】 リヤウシツ 

○よきそだち、善良なる性質。○よきたち。

【良史之材】 リヤウシノサイ 

すぐれたる歷史家たる才〔漢書、司馬遷傳、贊〕

【良人】 リヤツジン 

○をっと。孟、離婁「──者所仰望而終身也」○美くしく善き妻。詩、唐風「今夕何夕、見此──」=美室。○善良なる人、君子。詩、大雅「維此──」○漢代女官の名稱。

【良心】 リヤウシン 

人の固有の善心。孟、吿子「雖存乎人者、豈無仁義之心哉、所以放其──者、亦猶斧斤之於木也、旦旦而伐之、可以爲美乎」

【良臣】 リヤウシン 

よきけらい。說苑「歸善於君、不敢獨伐其勞、如此者──也」

【良箴】 リヤウシン 

よきいましめ。朱熹詩「故人司獻納、早晚奉──」=明箴。

【良鍼】 リヤウシン 

よきはり。轉じてよき誡。魏志、邴原傳「先生之說、誠可謂苦藥──矣」=良箴。

【良辰美景】 リヤウシンビケイ 

よき時節と、よき景色と。謝靈運文「天下────、賞心樂事、四者難幷」

【良匠】 リヤウシヤウ 

○よき大工。淮南、泰族「──不能斲金」○よきたくみ。=良工。

【良相】 リヤウシヤウ 

よき宰相。史、魏世家「國亂則思──」=賢相。

【良商】 リヤウシヤウ 

よきあきうど。戰國策「──不與人爭買賣之賈、而謹司時」=良賈。

【良將】 リヤウシヤウ 

よき大將。史、廉頗傳「趙之──也」

【良手】 リヤウシユ 

たくみ、上手に同じ。圖畫見聞志「竝爲──」

【良守】 リヤウシユ 

よき官吏。又、良き太守。晉書、諸葛恢傳「今之會稽、昔之關中、足食足兵、在於──、以君有蒞任之方、是以相屈」

【良俊】 リヤウシユン 

才のすぐれたる者。後漢書、樊鯈傳「郡國擧孝廉、竝取年少能報恩者、耆宿大賢多見廢棄、宜勅郡國、簡用──」

【良駿】 リヤウシユン 

よきうま。中論「馬雖有逸足、而不閑輿、則不爲──」良驥。

【良書】 リヤウシヨ 

よき書物、讀みて有益なる書物。唐書、劉洎傳「授以──」=好書·佳書。

【良政】 リヤウセイ 

よきまつりごと。陸雲、陸府君誄「帝欽──、民懷穆風」=善政。

【良宵】 リヤウセウ 

よきよひ。李嶠詩「甲第驅車入、──秉燭遊」=良夜。

【良善】 リヤウセン 

よし。禮記「陶器必良」疏「所盛陶器、必須──」

【良賤】 リヤウセン 

○良家の人と賤民と。○良は士農工商、賤は娼優隸卒など。

【良選】 リヤウセン 

よりぬき。北史、薛寘薛憕傳論「論其任遇、實當時之──也」=妙選。

【良導體】 リヤウダウタイ 

電氣又熱をよくみちびく物體、略して導體ともいふ。

【良儔】 リヤウチウ 

よきとも、よきなかま。趙至、與嵆茂齊書「──交其左、聲名馳其右」盧諶詩「不獲偕──、舒情將焉訴」

【良疇】 リヤウチウ 

よきはたけ。晉書、伏滔傳「龍泉之陂、──萬頃」張九齡詩「漁商多末事、耕稼少──」

【良籌】 リヤウチウ 

よきはかりごと。高適詩「聖主多深仁、廟堂運──」=良計·良策。

【良知良能】 リヤウチリヤウノウ 

思慮せずして知り、學ばずして能くするもの、子が父母を愛敬する類。孟、盡心「人之所不學而能者、其良能也、所不慮而知者、其良知也」

【良覿】 リヤウテキ 

良き會面。謝靈運詩「引領冀──」(領は首)=良晤。

【良圖】 リヤウト 

よきはかりごと。左、昭二七「敢不──」左思、詠史詩「夢想騁──」=良計·良謀·良籌。

【良二千石】 リヤウニセンセキ 

善良なる地方官、漢代の制、一郡の太守の年俸は二千石。漢書、宣帝紀「詔曰、庶民所以安其田里而無愁歎之聲者、政平訟理也、與我共此者、其惟────乎」

【良農】 リヤウノウ 

よき農夫。荀、脩身「──不爲水旱不耕」

【良馬】 リヤウバ 

よきうま。淮南子「撰──者、非以逐狐狸、將以射麋鹿」=駿馬。

【良媒】 リヤウバイ 

よきなかうど。詩、衞風「匪我愆期、子無──」

【良方】 リヤウハウ 

○善良なる仕かた。=良法。○きよ藥方。

【良庖】 リヤウハウ 

よき料理人。莊、養生主「──歲更刀、割也、族庖月更刀、折也」

【良法】 リヤウハフ 

○善ききそく。○善き仕かた。=良方。

【良伴】 リヤウハン 

よきつれ、伴は侶。蜀志、李嚴傳「吾與孔明、俱受寄託、憂深責重、思得──」=良儔。

【良否】 リヤウヒ 

よしあし。=善惡·臧否。

【良匹】 リヤウヒツ 

よきつれあひ。後漢書、袁隗妻傳「未遭──」=佳耦。

【良弼】 リヤウヒツ 

よき輔弼 タスケ の臣。書、說命「夢帝賚予──」

【良平】 リヤウヘイ 

○漢高祖の謀臣、張良と陳平と。蘇軾、潮州韓文公廟碑「──失其智、賁育失其勇」○轉じて智略に長ずる人にいふ。盧思道文「爪牙皆韓白之佐、心腹盡──之儔」韓白は韓信と白起と。

【良兵】 リヤウヘイ 

よき兵卒、よき武器。周禮「──良器、以待邦之大用」

【良苗】 リヤウベウ 

よきなへ。陶潛詩「──亦懷新」=嘉苗。

【良謨】 リヤウボ 

よきはかりごと。盧諶文「──莫陳」=良謀。

【良民】 リヤウミン 

よき人民、よく國法にしたがひて家業をはげむ人民〔漢書、循吏傳〕

【良冶】 リヤウヤ 

よきかぢ。禮學記「──之子、必學爲裘、良弓之子必學爲箕」

【良夜】 リヤウヤ 

○よふけ、良は深。後漢書、蔡遵傳「帝幸遵營、勞享士卒、──乃罷」○よき夜。蘇軾、後赤壁賦「月白風淸、如此──何」=佳宵。

【良藥】 リヤウヤク 

ききめあるくすり。家語、六本「──苦於口而利於病、忠言逆於耳而利於行」說苑、正諫にも出づ。

【良沃】 リヤウヨク 

肥えたるよき地。水經、注「陂水所漑、咸爲──」=肥沃。

【良吏】 リヤウリ 

よき官吏。漢書、鼂錯傳「雖有材力、不得──、猶亡功也」=善吏·循吏·能吏。

11畫

艱  

カン [删]

囏は古文

○かたし、むづかし(難)易の反對。○なやみ、くるしみ(窮苦)くるしむ、なやむ「辛─」○けはし(險)易、泰卦「─貞吉」○かたんず、かたしとす。○も(忌中)「丁─」「遭─」王儉文「又以居母─去官」

 同訓異義 

ナヤム 艱·惱·懊·難·阻·屯·邅·蹇の別は惱(六八四頁一段)の條を見よ。

【艱易】 カンイ 

かたきと、やすきと。法言「或問經之──、曰、存亡、或人不諭、曰、其人存則易、亡則艱」=難易。

【艱急】 カンキフ 

なんぎ。國語「以盟誓固國之──」

【艱窘】 カンキン 

なやみくるしむ。張耒、蕪菁詩「孔明用蜀最──、百計捃拾無遺策」

【艱苦】 カンク 

なんぎ、くるしみ。=艱辛。

【艱虞】 カング 

なやみと、しんばいと。陳與義詩「欲見舊交驚歲月、剩排幽語說──」=艱難憂虞。

【艱禍】 カンクワ 

困難と災害と。劉琨文「元康以來、──繁興」

【艱險】 カンケン 

○けはしき所。險阻·險艱。○なやみ、くるしみ。魏徵詩「豈不憚──、深思國士恩」

【艱困】 カンコン 

なやみ苦しむ。後漢書、杜林傳「雖遭──、握持不離身」

【艱疾】 カンシツ 

治し難きやまひ。書言故事「王羲之帖曰、蔡公遂委頓深可憂、當今人物眇然而──若此、令人短氣」

【艱澁】 カンジフ 

○文詩の解し難きにいふ。○なんぎくるしみ。=難澁·困難。

【艱辛】 カンシン 

なやみ、くるしみ。李白詩「英豪未豹變、自古多──」=艱苦·艱難辛苦。

【艱深】 カンシン 

文詩の解し難くして意味深きにいふ。蘇軾詩「──文淺陋」

【艱阻】 カンシヨカンソ 

なやむ。梁武帝文「人事──、亦何可言」

【艱食】 カンシヨク 

五穀を食ふ、人力を勞して作りし物なるが故に艱といふ。王安石詩「未敢嗟──、凶年半九州」

【艱貞】 カンテイ 

艱難に耐へ堅く節を守りて屈せず。易、明夷「利──」

【艱毒】 カンドク 

くるしみ。潘岳文「備嘗──、同嘗蓼荼」=艱苦。

【艱難】 カンナン 

なやみくるしむ。詩、小雅「天步──」

【艱戹】 カンヤク 

なやみくるしむ。なやみ、くるしみ。後漢書、王常傳「往時共更──」

【艱哉】 カタイカナ 

事を爲すに易からざるを歎く辭。書、秦誓「是惟──」