凵部

0畫

凵  

カン [豏]

○物を受くる器。○口を張る貌。

2畫

凶  

①キョウ [冬]

②キョウ [腫]

①あし、わるし(惡)○よこしま(邪)○とが(咎)○わかじに(夭·短折)○わざはひ(禍)吉の反對。○五穀みのらず。○ききん「─年」○わるもの。唐書、孝友傳「父死─手」=兇。

②うれふ、おそる。晉語「敵人入而─」忷·恟に通ず。

 同訓異義 

アシ 凶·惡·醜·慝の別は惡(心部八畫)の條を見よ。

【凶惡】 キヨウアク 

極めてあし。又、其の者。易林「──不起」

【凶音】 キヨウイン 

あしきしらせ、不吉なるたより。=凶報。

【凶狡】 ギヨウカウ 

あしくしてこすし。後漢書、朱穆傳「──無行之徒、媚以求官」

【凶器】 キヨウキ 

○人を殺すに用ふるはもの。史、主父偃傳「兵者──也」○喪の時に用ふる器。周禮、天官、冢宰「喪服──不入宮」

【凶逆】 キヨウギヤク 

心惡しく理にさかふ。又、其の者。顏氏家訓「抗拒──」=惡逆·凶悖。

【凶虐】 キヨウギヤク 

惡しくして物をしへたぐ。又、其の者。

【凶愚】 キヨウグ 

わるくおろか。又其の者。列、楊朱「仁聖亦死、──亦死」

【凶穢】 キヨウクワイ 

あしくけがれたるもの。曹植文「蕩滌──、勦除醜類」

【凶荒】 キヨウクワウ 

五穀みのらず、ききん。周禮、地官「掌縣都之委積、以待──」

【凶獷】 キヨウクワウ 

わるづよし。晉書「蹈仁義者爲中寓、肆──者爲外夷」

【凶猾】 キヨウクワツ 

わるくこすし。又、其の者。晉書「謹爲明君、揃除──」=凶狡。

【凶俠】 キヨウケフ 

心よからざるをとこだて。蘇軾文「其人多──不遜之徒」

【凶桀】 キヨウケツ 

あらあらしくつよし。後漢書、烏桓鮮卑傳論「冒頓──」

【凶寇】 キヨウコウ 

わるづよきあだ。孫綽文「摧卻──、全身濟功」

【凶歲】 キヨウサイ 

五穀の實らざる年。孟、告子「──子弟多暴」=歉歲·凶年。

【凶作】 キヨウサク 

作物のよくみのらざる義、不作。

【凶事】 キヨウジ 

不吉の事、めでたからぬ事。老子「吉事尙左、──尙右」

【凶醜】 キヨウシウ 

わる者ども、醜は衆。=凶徒。

【凶邪】 キヨウジヤ 

よこしまにしてあし。又、其の者。隋書「摧拉──」

【凶穰】 キヨウジヤウ 

穀物のみのらざると、よくみのると。漢書、食貨志「歲有──、穀有貴賤」

【凶手】 キヨウシユ 

わるもの。又惡人のしわざ。唐書、孝友傳「父死──」

【凶憸】 キヨウセン 

心あしくねぢける。又其の者、憸は姦邪。沈與求詩「須知筆意似人意、柔順未必非──」=姦憸。

【凶賊】 キヨウゾク 

惡しき賊徒。=凶盜。

【凶毒】 キヨウドク 

あしきどく。淮南子「天雄烏啄、藥之──也、良醫以活人」

【凶德】 キヨウトク 

あしき性質〔書、多方〕

【凶年】 キヨウネン 

五穀のみのらざるとし、ききん。孟、梁惠王「──飢歲」=凶歲·歉歲 ケンサイ 

【凶悖】 キヨウハイ 

惡しくして理にさかふ。韓愈文「──之心」=凶逆。

【凶服】 キヨウフク 

喪中のきもの、もふく。=喪服。

【凶問】 キヨウブン 

死去のしらせ。通鑑、後唐明帝紀「是夕徐溫──至」=訃音 フオン 

【凶夢】 キヨウム 

不吉の夢、えんぎ惡しき夢。吉夢の對。

【凶戾】 キヨウレイ 

あらあらしく理にもとる。又、其の者。南史、宋武昌王渾傳「渾少──」=暴戾·凶悖。

3畫

凹  

①アフ [合]

②アウ [肴]

①なかくぼ、くぼむ、なかひくし(低下)凸の反對。

②くぼたまり(窊)

【凹心硯】 アフシンケン 

硯の中央の低くして潭 フチ を成す者。輟耕錄「晉人多用───者、欲磨墨貯瀋耳」

【凹凸】 アフトツ 

中くぼと中だかと。字彙「今按畫記云、張僧繇畫一乘寺壁、望如──、近視則平」畫記は名畫記。

凷  

クヮイ [隊]

あらつち(墣)つちくれ。漢書、律歷志「野人擧─而與之」=塊。

出  

①シュツ [質]

②スヰ [寘]

①いづ、でる、物內より外へでる。入の反對。史、平原君傳「使遂蚤得處囊中、乃穎脫而─」遂は毛遂。○すすむ(進)○さる(去)はなる(離)「─鄉」○あらはれる(現·露)歐陽修、醉翁亭記「水落而石─者、山閒之四時也」○產する「產─」易、說卦「萬物─乎震」○とほざかる(遠)○はく(吐)○仕へる、「─仕」○地方官となりて赴任する。韓愈、樊紹述墓誌銘「─爲緜州刺史」○しりぞく(斥·黜)やむ(罷)○にぐ(逃)「─亡」○をひ(甥)爾雅、釋訓「男子謂姉妹之子爲─」

②いだす、だす。

【出遊】 シユツイウ 

出でて遊ぶ。他國にさすらふ、他國に遊學する。史、蘇秦傳「──數歲、大困而歸」

【出演】 シユツエン 

其の場所に行きて演說し、又、技藝をつとめ行ふ。

【出格】 シユツカク 

○古、表章などを書くに敬意を表する爲め、定れる行より、頭を擡 モタ げて書くをいふ。○ 國  常格 ツネノキマリ の外に出る。=別段·別格·破格。

【出金】 シユツキン 

○かねをだす。○金を出し合ふ。=出錢·醵金 キヨキン 

【出京】 シユツキヤウ 

○みやこを出で離れて地方に行く。=出都·離京(罕には上京の義に用ひし例もあり)○ 國  みやこにのぼる。=上京。

【出疆】 シユツキヤウキヤウヲイヅ 

己の國を離れて他國に行く。孟子「──必載質」

【出御】 シユツギヨ 

天子が內御殿から表御殿におでましになる。入御の對。

【出羣】 シユツグン 

多くの人よりぬけでる。後漢書、蔡邕傳「拔萃──」=拔羣·出類·出萃。

【出火】 シユツクワ 

 國  くわじを出す、火を失する。又、くわじ。=火災·失火。

【出棺】 シユツクワン 

とむらひを出す。

【出家】 シユツケ 

○家を出でて佛門に入る。晉書、佛圖澄傳「多奉佛相競──」○ 國  僧をいふ。

【出現】 シンツゲン 

神佛などの出でて形を現はす義。搜神記「時時──」

【出口】 シユツコウ 

 俗  貨物を外國に運び出す、口は港の義。=輸出。

【出獄】 シユツゴク 

罪を赦され、又滿期にて、牢を出る。

【出妻】 シユツサイ 

離緣 リエン されたるつま。=出婦。

【出塞】 シユツサイ 

塞を出る。塞は、中國の北方、夷狄の邊界をいふ。史、周紀「將兵──攻梁、梁破則周危矣」

【出山】 シユツサンヤマヲイヅ 

隱者の出でて仕ふる義。杜甫詩「在山泉水淸、──泉水濁」

【出產】 シユツサン 

○つくりいだす。うまれいづ。唐彥謙、索蝦詩「──在四時、極美宜於秋」○ 國  子が生る。

【出仕】 シユツシ 

いでつかへる、官吏になる、官途につく。=仕宦。

【出資】 シユツシ 

もとでを出す、資本を出し合ひて或事業を營む。

【出身】 シユツシン 

○官に擧げられる、登用せられる。唐の制、鄕貢進士の吏部の撰に及第せる者をいふ〔文獻通考、選擧考〕○ 俗  で、或學校より出たる身分「大學──」

【出社】 シユツシヤ 

 國  新聞社、其の他、會社に出る。

【出生】 シユツシヤウ 

子ができる。=出產。

【出將入相】 シユツシヤウニフシヤウ 

文武兼ね備はり出でては將となり、入りては相となる。唐書、李德裕傳「出入將相、二十餘年」崔顥詩「兩朝出將又入相」

【出色】 シユツシヨク 

衆くの色を拔き出て一きは目だつ。轉じて、衆に秀でる義とす。

【出所】 シユツシヨ 

でどころ、由來。=出典·出據。

【出處】 シユツシヨ 

出でて官に仕ふると退きて家にをると。易經「君子之道、或出或處」韓愈、送石處士序「凡去就──何常」

【出水】 シユツスヰ 

水が出る、大水が陸上に氾濫 ハンラン する。

【出世】 シユツセ 

○俗界を出離する。=出世閒。○身を起す、立身する。李白詩「浪跡未──」

【出世閒】 シユツセケン 

 佛  世を遁れて佛道に入る。○世閒の俗累を斷ちて超然としてゐる。

【出征】 シユツセイスヰセイ 

征伐に出で往く、出陣する。詩經「王于──、以佐天子」

【出精】 シユツセイ 

 國  せいをだす、精力を出す、力を專らにして勉める。

【出贅】 シユツゼイ 

外に出して他家の壻 ムコ とする、贅はいりむこ。漢書、賈誼傳「家貧子壯則──」

【出席】 シユツセキ 

 俗  其のむしろにでる、座につらなる。=列席。

【出題】 シユツダイ 

試驗の題を出す。唐書、選擧志「從內──、以試進士」

【出立】 シユツタツ 

 國  かどでする、旅だつ、かどで。=首途·出發·發程。

【出塵】 シユツヂン 

世のけがれより出で離れる、世を遁れる。北山移文「耿介絕俗之標、瀟灑──之想」=脫俗。

【出張】 シユツチヤウ 

 國  でばる、用事を帶びて他所に出で行く。

【出廷】 シユツテイ 

 國  裁判所に出頭する、法廷に出る。=出庭。

【出典】 シユツテン 

字句、又、故事などの出どころ、よりどころ。=典據。

【出畋】 シユツデン 

出でてかりする。司馬相如賦「王悉發車騎、與使者──」

【出頭】 シユツトウ 

○顏を出す、參上する。○一頭地を出す義より轉じて、他よりまされる義とす。

【出入】 シユツニフ 

或は出で或は入る。中央政府の官吏となり、又地方官となる。武官となり又文官となる。唐書、李德裕傳「──將相二十餘年」易、繫辭「利用──」

【出馬】 シユツバ 

 國  馬に乘りて外出する、轉じて、でかける義とす。

【出梅】 シユツバイ 

つゆあけ。梅雨期のをはり。半夏生の日、陽曆七月二日頃。入梅の對。

【出亡】 シユツバウ 

にげる、かけおち。=出奔·亡命·逐電 テクテン 

【出發】 シユツバツ 

出立に同じ。

【出帆】 シユツパン 

 國  船が港をでる、ふなでする。ふなで。=開帆·拔錨 バツベウ 解纜 カイラン 

【出版】 シユツパン 

書物を版にして世閒に出す。=出板·上梓 ジヤウシ 刊行。

【出品】 シユツピン 

品物を出す「博覽會の──」

【出母】 シユツボ 

離緣になりて、家を出されたる生母。

【出沒】 シユツボツ 

あらはれたり、かくれたり。劉長卿詩「──鳧成浪」=隱見。

【出奔】 シユツボン 

己の國を去りて、他國に出で奔る。春秋、宣十「齊崔氏──」=出亡。

【出洋】 シユツヤウ 

 俗  外國に行く「──大臣」

【出來】 シユツライシユツタイ 

 國  できる、できあがる、成る、できあがり、成就。○おこる、發生する。○できばえ、成績、「上──」「不──」

【出藍】 シユツラン 

あゐより採りたる靑色が卻りてあゐよりも靑し、以て弟子の師より優る義に喩ふ。荀、勸學「學不可已、靑出于藍而靑于藍、冰水爲之而寒于水」

【出離】 シユツリ 

 佛  世俗の係累を離れ雜念を斷つ、世を遁れ捨てる。=出世閒。

【出倫】 シユツリン 

多くの仲閒のものよりもぬけでる。後漢書「有──之才」=出類·超倫·絕倫·拔羣。

【出路】 シユツロ 

出る路。續搜神記「坎中窮無──」

【出師】 スヰシ 

いくさを出す。=出兵。

【出師表】 スヰシヘウ 

諸葛亮(孔明)作る、前後二篇あり。安子順評「讀孔明───、而不墮淚者、其人必不忠、讀令伯陳情表、而不墮淚者、其人必不孝、讀退之祭十二郞文、而不墮淚者、其人必不友」令伯は、李密。退之は、韓愈。

【出納】 スヰタフ 

出すと納るると、だしいれ。書、堯典「──朕命」

【出稼】 デカセギ 

 國  他國又は外國に行きてかせぐ。

【出放題】 デハウダイ 

 國  口にまかせて、むやみに語る、でたらめをいふ。

凸  

トツ [月]

○なかだか(中高)○いづ(出)○おこる(起)

【凸凹】 トツアフ 

中だかと中くぼと、でくぼく。東方朔、神異經「大荒石湖、千里無──」

6畫

函  

①カン [覃]

②カン [咸]

俗に凾に作るは非

①いる(容)曲禮「席閒─丈」○つつむ(包)○ふくむ(含)○よろひ(鎧)

②ひつ、はこ(匣)○ふみばこ(封筒)○─胡 カンコ は大いなる音聲の形容。蘇軾、石鐘山記「南聲─胡、北音淸越」

【函蓋相應】 カンガイサウオウ 

はことふたとよく相應する義、彼此相會して同一體に歸するに喩ふ。大日經、疏「須────、相稱則授受」

【函宏】 カンカウ 

容るる所ひろく大いなり。左思、吳都賦「伊玆都之──」

【函谷】 カンコク 

關の名。○秦の──關は今の河南省靈寶縣の南に在り、是を秦の東關と爲す、關城、谷中に在り、深險函の如し。○漢の──關は今の河南省新安縣の東北に在りて武帝の元鼎年閒に移し置く。

【函谷雞鳴】 カンコクケイメイ 

孟嘗君、秦國を逃れて夜半函谷關に至る、關の法、雞鳴きて門を開く、客に雞の鳴き聲を爲す者あり、羣雞之に和して鳴きしかば、關守、孟嘗君の一行を關外に出せし故事〔史、孟嘗君傳〕

【函使】 カンシ 

手がみを持ち來るつかひ、函は狀箱。

【函人】 カンジン 

甲胄をつくる職人、具足師。孟、公孫丑「矢人豈不仁於──」

【函丈】 カンヂヤウ 

師の席と己の席との閒に一丈の餘地を容るる義。轉じて、師の尊稱とし、先生長者に奉るに、某先生──と書くは此に本づく。字解を見よ。

【函洞】 カンドウ 

 俗  汽車のとんねる。