鬯部

0畫

鬯  

チャウ [漾]

○にほひぐさ、一種の香草 ニホヒグサ 鬱金草「鬱─」○祭祀に用ふる香酒の名。─草と黑黍とをまぜて釀したるもの、芬香にして上下に條暢する「秬─」○轉じてのぶ「─茂」「明─」=暢。○ゆみぶくろ(弓衣)=韔。

【鬯人】 チヤウジン 

官名、秬鬯(字解參看)を神に供へることを掌る〔周禮、春官〕

【鬯酒】 チヤウシユ 

鬱金といふ香草と、くろきびとにてつくりたる酒。詩經、箋「王賜召虎、以──一尊、以祭其宗廟、吿其先祖」=秬鬯。

【鬯浹】 チヤウセフ 

のびてあまねくゆきわたる。楊嗣復文「和聲順氣、發自廟廊、而──於幽遐」

【鬯茂】 チヤウモ 

のびのびとしてしげる。漢書、郊祀志「草木──」=暢茂。

19畫

鬱  

ウツ [物]

欝は俗字

○しげる(茂)むらがる(叢)又、木の叢り生ずる者。○本の茂りて盛んなる貌「深─」「薈─」「蓊─」詩、秦風「─彼北林」○物事の盛んなる貌。○うこん、よき香ある一種の草、高さ一尺許、葉は楕圓形にて初夏、紅藍べ ニ に似たる花開く、香氣高く、百草の長として古代、─鬯酒をつくるに用ふ「─金香」○おこる(起)○むす(蒸)○くさし(臭)くさる(腐)○かぐはし(香)○くらし、かすか。○ながし、そだつ。○盛んなる氣、佳き氣。○ふさぐ。ふさがる(塞)心がむすぼれふさがる「─結」「紆─」○のびず、あがらず。○しづむ(沈)とどこほる(滯)くったくする。○つむ(積)○うれふ(憂)心が憂ひふさがる「─憂」○にはうめ。棣の屬、櫻桃 ユスラウメ に似たる果樹。

【鬱燠】 ウツアウウツイク 

むしあつし。王襃、聖主得賢臣頌「不苦盛暑之──」

【鬱伊】 ウツイ 

心結ぼれて伸びざる貌、伊は噫に通ず。後漢書、崔寔傳「智士──於下」

【鬱猗】 ウツイ 

しげりて美くしく盛んなり。郭璞、山海經圖贊「叢薄幽藹、從容──」

【鬱悠】 ウツイウ 

心がむすぼれてのびず。方言「──懷惄」注「──猶鬱陶也」

【鬱郁】 ウツイク 

香はしき貌。劉孝標文「言──於蘭茝」

【鬱邑】 ウツイフ 

愁ふる貌。邑は悒。楚辭「心──余侘傺兮」=鬱悒。

【鬱悒】 ウツイフ 

心むすぼれ憂ふる貌、悒は愁。司馬遷、報任安書「是以獨──而誰與語」=鬱邑。

【鬱紆】 ウツウ 

○氣が結ぼれて樂まざる貌。曹植詩「──將何念、親愛在離居」=紆鬱·鬱悒。○山阪などの曲りくねる貌。魏徵詩「──陟高岫、出沒望平原」

【鬱鬱】 ウツウツ 

○志を得ずして氣のふさがる貌。漢書、韓信傳「王曰、吾亦欲東耳、安能──久居此乎」=悶悶。○樹木のしげれる貌。古詩「靑靑河畔柳、──園中樹」○氣の盛んなる貌。後漢書、光武紀「氣佳哉、──葱葱然」

【鬱焉】 ウツニン 

盛んなる貌。孔稚圭、上删注律文表「皋繇之謀、指掌可致、杜鄭之業、──何遠」=鬱然。

【鬱滃】 ウツヲウ 

さかんなる貌。朱松詩「興言望鄕關、雲物方──」

【鬱屈】 ウツクツ 

○心むすぼれて伸びず。韓愈詩「──尙不平」=鬱結。○地勢などのまがりくねる貌。蘇軾詩「五觀五丈原、──如長蛇」=鬱紆。

【鬱崛】 ウツクツ 

こんもりとしてたかし。陸倕文「──重軒、穹隆反宇」

【鬱結】 ウツケツ 

心がむすぼれて伸びず。史、太史公自序「意有所──」=鬱屈。

【鬱金香】 ウツコンカウ 

○春時、小黃花を開く一種の香草の名。魏略「───生大秦國、二三月花如紅藍、四五月採之」○美酒の名。李白詩「蘭陵美酒───」

【鬱蒼】 ウツサウ 

樹木が靑靑としげれる貌。又、氣の盛んなる貌。=鬱葱·鬱鬱蒼蒼·鬱鬱葱葱。

【鬱森】 ウツシン 

樹木がこんもりとしげる。陳有守詩「寒林氣──」

【鬱積】 ウツセキ 

こもりふさがる。李時勉、北京賦「寔磅礴而──」=鬱塞。

【鬱塞】 ウツソク 

氣がむすぼれてふさがる。劉蕡、賢良方正策「低徊──以俟」

【鬱葱】 ウツソウ 

○こんもりとしげれる貌。○氣の盛んなる貌、葱は蔥。後漢書、光武紀「氣佳哉鬱鬱葱葱」

【鬱陶】 ウツタウ 

○氣ふさがりてのびざる貌。書、五子之歌「──乎予心、顏厚有忸怩」○天氣がむしあつし。夏侯湛、大暑賦「何太陽之嚇曦、乃──興暑」=陶鬱。○ 國  くもりてはればれせぬ「──しき天氣」

【散鬱陶 】 ウツタウヲサンズ 

心の憂を霽らす。北夢瑣言「小貂游鄰寺、以───」

【鬱鬯】 ウツチヤウ 

○祭に用ふる酒に和して釀す一種の香草の名(一說、鬱と鬯との二草となすは非)周禮「凡祭祀賓客之祼事、和──以實彝而陳之」○轉じて其の香酒の名とす。

【鬱怒】 ウツド 

むすぼれて解けざるいかり。郝經詩「沈恨──猶難平」

【鬱盤】 ウツバン 

おほひめぐる。畫斷「王維嘗畫輞川圖、山谷──、雲水飛動」徐勉詩「此江稱豁險、此山復──」

【鬱怫】 ウツフツ 

心ふさがる。劉向賦「志隱隱而──兮」=怫鬱。

【鬱憤】 ウツプン 

むすぼれてとけざるいきどほり、胸に滿つる不平。李商隱文「精靈何處、──徒極」=鬱怒。

【鬱閉】 ウツヘイ 

川などがふさがりて流れず。管子「通──、塡津梁」

【鬱勃】 ウツボツ 

○氣の盛んなる貌。武帝內傳「雲彩──、盡爲香氣」=蔚勃。○草木のこんもりと茂る貌。○元氣の盛んなる貌。

【鬱密】 ウツミツ 

ふさがりこもりてひらかず。陸龜蒙詩「時當暑雨後、氣象仍──」

【鬱茂】 ウツモ 

草木がこんもりとしげる。歸田賦「原隰──、百草滋榮」

【鬱悶】 ウツモン 

心むすぼれてもだえる。柳宗元文「──結澀、癃蹇艱難」

【鬱律】 ウツリツ 

煙の上 ノボ る貌。郭璞賦「時──其如煙」

【鬱林石】 ウツリンセキ 

下の故事に因りて、官に在りて淸廉なるをいふ。唐書、陸龜蒙傳「陸氏在姑蘇、其門有巨石、遠祖績爲鬱林守、罷歸無裝、舟輕不可越海、取石爲重、人稱其廉、號───」鬱林は郡名、漢代に置く。今の廣西省貴縣の南。

【鬱隆】 ウツリユウ 

あつさがさかんなり。山海經圖讚「炎氛是扇、以散──」

【鬱壘神荼】 ウツルヰシント 

○鬱壘と神荼と。百鬼の理に循はざる者を簡閱し、執らへて以て虎を飼ふといふ兄弟二神の名〔論衡、訂鬼〕○門を守る神。風俗通「故今以爲門神」