心部(忄)
0畫
シン [侵]
○こころ(精神)人の肉體を支配し活動の根夲となるもの「良─」「道─」「虛─」「善─」○かんがへ、おもひ(思·志望)左、襄三一「人─不同、如其面焉」○しんのざぅ、五臟の一。左、右兩肺の閒に在りて動物の血行の中樞たる機關。=心臟。○もと(夲)○物のまんなか、しん(中央)「中─」「水─」「天─」○むね(胸)史、殷紀「聖人之─有七竅」○なかご、星の名、二十八宿の一。=大火·商星。
しんの臟と、ゐの腑と、腹の中。蘇軾詩「終朝自盥漱、泠冽淸──」
こころばせ。史、李斯傳「娛──、說耳目者」
○ 佛 さとりの道、佛敎の奥儀、佛心の印證する所の義。傳燈錄「達磨至少林寺、面壁九年、不言文字、以袈裟授慧可、曰內傳──、以契澄心、外傳袈裟、以定宗旨」○心のあと。意氣。辨才詩「素與晝公──合」
心の慾のくるひやすきに喩へていふ。趙州錄遺表「──罷跳、意馬休馳」
佛 中心の誠をいふ、香を焚き佛に供する如きに喩ふ。梁簡文帝文「窗舒意蕊、室度──」
○心を修むるがくもん。孟郊詩「誰言擯朋老、猶自將──」○心の本體を認めて、身を修める學、陸象山·王陽明等の唱ふるところ。○ 國 神·儒·佛の三敎をまじへて、平易なる說法を爲して俗人に實踐道德を勸むる敎義。石田梅巖·手島堵庵·中澤道二等之を唱ふ。
○心臟と肝臟と○轉じてまごころ。李白詩「豁然露──」=丹心·赤心·誠意。
我が心の誠を披きて人に示す義。漢書、蒯通傳「臣願───」
よく物を鑒識する心のはたらき。肉眼の對。畫繼「元章──高妙、而立論有過中處」
こころ、きぶん。禮、月令「仲夏之月、節嗜欲、定──」
どうき、むなさわぎ、心臟の鼓動「──亢進」
心中に深くちぎり望む。楊公筆錄「我與士遜、──久矣」
心の動くはずみ。こころのはたらき。任昉詩「行無轍跡、理絕──」
心のくまぐま、心中。詩、秦風、小戎「言念君子、溫其如玉、在其板屋、亂我──」
心をいふ、心は一身の主たるが故。陸游詩「省事──靜」
○火の如くはげしく激したる心、怒る心の勢、瞋恚 シンイ のほむら。○星の名。晉書「──傾移、喪亂可必」=心宿·大火。
心を花に喩へていふ。梁簡文帝文「──成樹、共轉六塵」李白詩「登眺餐惠風、──期啓發」
書をいふ、書は書く人の精神を畫き岀す故にいふ。法言「言心聲也、書──也、聲畫形、君子小人見矣」
こころがひややか。欲望なく心の冷靜なるにいふ。白居易詩「──不似爐中火、髩雪過於砌下霜」
○心のほか。楞迦經「──無别法」○意外、もってのほか。○ 國 殘念·無念。
佛 法は心ありての法にて、心の外に別に法あるに非ざる義〔楞迦經〕
○心中のねがひ。○ 國 神佛に心の願をかける。
心と身と。晉書「不覺慄然、──俱肅」
○胸ざんよぅ。史、平準書「桑弘羊洛陽賈人子、以──年十三侍中、言利事、析秋毫」=諳算。○心に計る、もくろみる。李山甫詩「自憐──今如此」
ただ外貌のみならず、深く心にちぎり合ふ。宋史、劉淸之傳「初淸之旣擧進士、欲應博學宏詞科、及見朱熹、盡取所習焚之、慨然志於義理之學、呂伯恭張栻皆神交──」
口の異名。白虎通「口者、心之候」
○むねと、のんどと。○要害の地に喩へていふ。晉書、宣帝紀「夏口東關、賊之──」
精神と骨髓と。劉知幾文「刻──而不忘」=心身。
たましひ。徐照詩「自君之出矣、──遠相隨」
木のあかみ、木の幹の年を經て赤褐色となれる年輪の部分。
心中にて喪に服する、師の死には服喪の制なし、故に──といふ。史、孔子世家「三年──畢、相訣而去」
胸部にありて血液の循環をつかさどる機關、五臟の一。王逢詩「──空夢神人剖」
心にはかる。むな算用。潘岳、楊荆州誄「彊記洽聞、目睇毫末、──無垠」=心計。
心におもふむね、かんがへ。齊書「經略──、殷勤表奏」
心と耳と。鮑照詩「追憶棲宿時、聲容滿──」李白詩「松風淸襟神、石潭洗──」
こころざし。穀梁傳「──不通、師之罪也」
心中に思ふ事がら。謝靈運詩序「徐幹少無宦情、有箕潁之──」
きやみ、神經のやまひ。左、襄三「子重病之、遂遇──而卒」
こころ。魏書、釋老志「其爲敎也、蠲去邪累、澡雪──」
しんの臟と、じんの臟と。轉じて肝要の義とす。顏氏家訓「文以理致、爲──、氣調爲筋骨、事義爲皮膚、華麗爲冠冕」
こころのたくみ。工夫をめぐらす。白居易文「想入──、寫從筆精」=意匠。
心理學にて外物の形の意識中に現はるるもの。
こころのありさま。
こころもち、こころばせ。李中詩「寒松肌骨鶴──」
こころにうけてさとる。參同契、注「口傳──、難以盡形之于毫楮也」
こころだて。荀、非相「形相惡而──善、無害爲君子也」
こころの動くこぐち。杜甫詩「玉壘題詩──亂」=情緒。
深く心を傾けて欽慕すること、酒に醉へる如し、みとれてうつとりすろ。莊、應帝王「列子見之──」
まんなかにあろずゐ。轉じて、心、又、肝要の義とす。白居易詩「寫之在琴曲、聽者酸──」
こころのさが。戴表元詩「靑山──白雲身」=本心。
心の定まらざるを旌旗の搖曳すろに喩へていふ。王安石詩「投老──一片降」心搖搖如懸旌を見よ。
心を聲にあらはしたるもの、言語をいふ。心畫參看。
○心と行事と。杜甫詩「──喜雙淸」○專ら心のあとの稱。=存心。
○恐れてこころをののく。史、禮書「──未能自決」○智をたたかはす。智慧の戰爭。蜀志、馬良傳、注「──爲上、兵戰爲下」
心のまこと。李白詩「空畱錦字表──」=素心。
こころ。盧仝詩「爽氣盈──」
○ 佛 こころ。釋氏要覽「──者、佛言、三界之中以心爲主、衆生之心、猶大地、五穀五果、從大地生、如是心法生世出世善惡五趣三乘、以是因緣、三界唯心、故名──」○ 國 ココチ きもち、氣分。
ちゑ。南史「──薄劣」=神智。
身は此に在るも、心は旣に彼に馳せゆく義。曹植文「撫劍東顧、而心已馳于吳會矣」=神馳·神飛。
こころのけがれ。梁昭明太子詩「因慈闡慧雲、欲使──伏」=情塵。
はらわた。心のうち。鮑照詩「野風吹草木、遊子──斷」
○こころのうち。=意中·心裏。○ 國 シンチユウ 男女合意の上相共に自殺する。=情死。
心を以て心を制する義。管子「治之者心也、安之者心也、心以藏心」又「心之中又有心焉」
わがおもふひと。徐幹詩「安得鴻鸞羽、觏此───」=意中人。
心にがってんする。心に悟る。
むねいたむ、心配する。潛夫論「脣亡齒寒、體傷──」
こころのそこ、こころのうち。=心裏。
こころにかなふ。白居易詩「──忘是非」
こころ、精神。梁簡文帝文「澤雨無偏、──受潤」=心地。
こころ。むなさき。李山甫詩「更無塵事──起、還有詩情象外來」=念頭。
心の物に感じて動くに喩ふ。釋惠洪詩「──不興類古井」
心臟と肺臟と。轉じてこころの義。鄭據詩「更無外事來──」=心肝。
腸をいふ。白虎通「腸爲───、心爲皮體主」
國 色色と心をくばる、こころづかひ、氣がかり。
こころ。李白詩「我欲因之壯──」
○心をねる術。白居易詩「自我學──、萬機成一空」○心だて。中庸章句「孔門傳授──」
心の中にて非とす。史、秦紀「入則──、出則巷議」
しんの臟と、ひの臟と。魏甄后詩「感結傷──」
こころ。隋書「罄竭──、誡敕殷勤」
心底より悅びしたがふ。孟、公孫丑「以力服人者、非──也、力不贍也」
○むねと、はらと。史、范雎傳「秦之有韓也、譬如木之有蠧也、人之有──之病也」○まごころ。漢書、趙廣漢傳「吏皆輸寫──、無所隱匿」=腹心。
心にへだてなき親友。唐書「杜審言·李嶠·崔融·蘇味道友善、世號心腹四友」
容易に治せざる病、除き難き敵に喩ふ。心腹參看。
心の物に感じて動くこと、外敵に應ずるが如し、故に喩ふ。黃庭堅、戲咏煖足缾詩「小姬煖足臥、或能起──」
こころうれふ。詩經、疏「每思此伯、使我──」
佛 物慾又、愛著の情など、人を邪道に陷れる心の鬼。楞嚴經「無令──自起深孼」
おもひわづらふ。しんぱいする。書經「作僞──日拙」=心痛。
こころのうち。吳融詩「眼前閒事靜、──故人來」=心中。
心の現象につきて其の理法を硏究する科學。
おもんぱかり。東魏檄梁文「鑿其耳目、易其──」
○むねと、せぼねと。○最も重き輔佐の臣に喩ふ。書、君牙「今命爾予翼、作股肱──」
心のちから。書經「爾尙一乃──、其克有勳」孟、梁惠王「盡──而爲之」
こころ。隋書、經籍志「詩者所以導達──」=性靈。
心に道理をわきまへず。列子「心不涉學、猶心之聾」
みづおち、胸と腹との界目の中央に在るくぼみ。=鳩尾。
心の動きて定まらざること、かけたる旗のゆれて動く如きをいふ。史、蘇秦傳「──────、而無所終薄」
專ら其の方に心をよせる。後漢書「──折節」
まごころを示す。心をわりて見せる。赤誠を披瀝 ヒレキ する。史、鄒陽傳「──析肝相信」
おもひを寄せる。後漢書、杜喬傳「天人──」=屬意。
心をひらきてまごころを人に示す。後漢書、馬援傳「────、無所隱伏」
業を修めながら心の外物にうつるに喩ふ。孟、吿子「弈秋、通國之善弈者也、使弈秋誨二人弈、其一人專心致志、唯弈秋之爲聽、一人雖聽之、一心以爲有鴻鵠將至、思援弓繳而射之、雖與之俱學、弗如之矣、爲是其智弗若與、曰非然也」
心が其の物にひきつけられてかたまり、身體がとらける〔柳宗元、西山宴遊記〕
心は本なり、故に心正しければ筆蹟も亦正し。書法正傳「唐穆宗問柳公權筆法、對曰、用筆在心、─────」
恩を受けたるを心骨にきざみて忘れざるをいふ。書言故事「趙林武云、貫心鏤骨、李義山云、刻鏤心骨」
心は廣大寬平にして、體は舒泰 ノビノビスル なり。大學「富潤屋、德潤身、────、故君子必誠其意」
心淸く淡泊なるをいふ。漢書、鄭崇傳「臣門如市、臣───」
心むすぼれて散ぜず、專心一意なる義。詩、曹風、鳲鳩「淑人君子、其儀一兮、其儀一兮、───兮」
○心(前條)に同じ、字畫の偏に限りて用ふ。○國りつ
しんべん(立心偏)
1畫
ヒツ [質]
○かならず、きっと、確かに定める辭。論、顏淵「─也使無訟乎」○きっと果たす。かたくあてにする。○つまびらかにす(審)○もっぱら(專)○不又は何の下に置く時はかならずしもと讀みて打消しの意となる。論、陽貨「何─公山氏之之也」
きっとなくてならず、缺くべからざるもの。=必用。
かならずたづさへる。是非とも攜へざるべからず。
きっと其の事が到來する。必然其のやぅになる。
死を決する、しにものぐるひ。漢書、朱博傳「且喜且懼、對曰──」
かならずもちふる。=必用。
きっとかつ。
佛 かならずおとろへる。仁王經「盛者──」
きっと厲行することを爲さず、たしかに斷行せず。韓非、內儲說「刑罰──則禁不行」
必ずかくなる。きっと。漢書「任賢必治、任不肖必亂、──之道也」=必至。
かならず、たしかにかくなる。像法決疑經「──得近涅槃」
かならず後世に傳はる。
かならずよまねばならぬ。
かならずつみに行ふ。漢書、宣帝紀「孝宣之治、信賞──」
きっとなし、必ず有ることなし。
佛 かならず亡びる「生者──」
きっとなくてはならず。=必要·必需。
2畫
タゥ トゥ [豪]
心に憂ふる貌。
心に憂ふる貌。詩、齊風、甫田「勞心──」
うれひかなしむ。李陵、答蘇武書「祗令人悲增──耳」=悲痛。
佛 欲界六天の第二にして、三十三天と譯す。須彌山の頂に在りて、帝釋此に居る、喜見城といふ。天台四敎儀「二───、梵語忉利、此言三十三、往世三十三人、同修勝業、同生此天」
3畫
カン [寒]
○みだる(擾)○きはまる(極)○あづかる(預)
キ [寘]
○いむ、いみ(諱)「畏─」○にくむ(憎惡)きらふ(嫌)「嫌─」ねたむ(嫉)「猜─」○はばかる(憚)おそれる(畏)「─憚」○いましむ(戒)○うらむ(怨)晉語「小人─而不思「○うやまふ(敬)○親の死せし日に相當する年年の日。親の命日「─日」○喪中に家に在りて萬事をつつしむ一定の期閒「─中」○陰陽家の說にていみさける物事。○無意味の助辭。詩、鄭風「叔善射─」
同訓異義
イム 忌·諱○忌は畏れ嫌ふ義、いやがる、嫌忌·忌憚と用ふ。小學「如二護レ病而忌一レ醫也」○諱は忌みていはぬなり、諱イミナの義にて知るべし、忌諱と用ふ。
○いみきらふ、人の氣にさわる。漢書、馮唐詩「鄙人不知──」○畏れ避ける。老子「天下多──」
○事を爲すにいみさくべき月、陰曆九月の稱。晉書「穆帝納后、欲用九月九月是──」○親の死せし年年の月。南史「張融有孝義、──、三月不聽音樂」
いみきらふ。
他人の才能をいみて、それに勝たんとする。克は剋に同じ。左傳「今其言多──難哉」=忌剋。
人の能あるをきらひて、むごくあたる。晉書、王濟傳「外雖弘雅、而內多──」=猜忌刻薄。
きらひうらむ。蜀志「宿昔之所──也」
ねたみ深き妻。晉書「馮有──、自操井臼」=妬婦。
死せし人の年忌のまつり。
いみさくべきとし。晉書「若有忌月、當有──」
おやの命日。禮、祭義「君子有終身之喪、──之謂也」=忌辰。
忌日に同じ。辰は日。
きらひにくむ。王令詩「好于壯士爲──」
いみはばかる、遠慮する。中庸「小人而無──也」
いみにこもり居る期閒。
いみねたむ。宋書「──者飛語」=忌嫉。
○いみ避ける。魏書、高車傳「蹲倨褻黷、無所──」○法律上の用語、訴訟關係人が判事、又は書記などの言動に不公平の事ありと認めし時は其の係り官の裁判を受くることを拒絕する申立。
喪に居る期閒。忌は家に歸りて出でず、服は出でて事を執れども、尙ほいみ愼む閒をいふ。血緣の親疎によりて長短あり。
國 忌服の期が終る。=除服。
國 祭器を作り、又、潔齋して神事にあづかる職。
①キツ [物]
②ギツ [質]
①よろこぶ(喜)史、周紀「棄爲兒時、─如巨人之志」一說、屹(山部三畫)の誤。
②きらふ、いとふ(心不欲)
シ [寘]
○こころざし、こころばせ(意)心の之 ュ くところ「立─」「壯─」「─士」こころざす。論、述而「─於道」○のぞみ、ねがひ、目的、めあて「─望」論、先進「亦各言其─也」○したふ。○かきしるす(記)=誌。○しるしたるもの、かきもの(記錄)周禮、春官、小史「掌邦國之─」○古書。左、襄二五「─有之」○おぼえこむ(記憶)後漢書、劉駿傳「博見彊─」○はた、幟に通ず。○やじり(箭鏃)○節義、又は見識あること。○英國の銀貨シルリングの音譯。
こころざし。文中子「──修驕富貴、道義重輕王侯」
こころざし高くみさをあり。北史、常爽傳「嚴正有──」
立志と制行と、すぐれたる志と品行と。漢書、傅喜傳「少好學問、有──」
こころばせ。=志趣。
こころざしけだかし。晉書、前燕載記「李產字子喬、少剛厲有──」
十五歲。論、爲政「子曰、吾十有五、而志于學」とあるに本づく。
こころざし、きしゃう。禮記「──塞乎天地」
正義にこころざす。禮記「君子聽琴瑟之聲、則思──之臣」
こころざしねがふ。許謙詩「丈夫有──、誰謂我無成」=志望·希望。
自ら志願して兵役に服する兵「一年───」
こころざしみさを。南史、陸琰傳「幼孤好學有──」
正義の爲めに盡す節操ある士。孟、滕文公「──不忘在溝壑、勇士不忘喪其元」
けだかきこころざし。晉書、孔羣傳「羣有智局、──不羈」
こころばせ。晉書「──不常」=志向。
かきもの、記錄。
こころばへ。魏書、李洪之傳「──慷慨、多所堪忍」
こころざしみさを。晉書「不幸遭難、──不遂」
こころざし、はらまへ。後逍錄「狀貌奇異、──非常」=志局。
こころざしおもふ。おもひ。王昭君、怨詩「──抑沈、不得頡頏」
ねがひ、のぞみ。=志願。
おもんぱかり。諸葛亮、岀師表「此皆良實、──忠純」
人は志だにあらば、事遂に成就すべし。後漢書、耿弇傳「帝(光武)謂耿弇曰(中略)常以爲落落難合、──────也」
高き志をいだく。晉書、慕容暐載記「鬱槩待時之雄、──未申之傑」
父母の志に違はず、常に其の心を悅ばしむるやぅに事へる。孟、離婁「若曾子則──也」
志の遠大なるをいふ。世說「王敦每醉後、以鐵如意敲唾壺、歌曰、老驥伏櫪、────、烈士暮年、壯心不已、歌闋、唾壺半缺」
己の志望の如くにならず。=與心違。
志望は十分に滿足せしむべからず。思ふままに、かなへぬがよし。曲禮「────、樂不可極」
志うつくしく行はげし。後漢書、張堪傳「年十六受業長安、────、諸儒號曰聖童」
ジン ニン [軫]
○しのぶ、しのび。○たふ、こらへる(耐)「─耐」「堅─」「堪─」○ゆるす(容)「容─」「含─」○むごし、不仁に安んずる(殘刻)孟、公孫丑「人皆有不─人之心」「殘─」○ 國 シノブ (思·慕·隱)=偲。○ シノブシノビ 人を避ける「人目を─ぶ」「─術 ニンジユツ 」○─草 シノブグサ 羊齒類の草の名。
愛情をこらへしのぶ。江淹賦「割慈──、離國去里」
かわきをこらへる。後漢書「孔子──于盜泉之水」
はぢをしのぶ。淮南子「能爲社稷──」
むごきこころ、殘忍なる心。詩、大雅「維彼──」
恥辱などを忍びこらへて受ける。
國 しのびの術。身を隱して人に知らしめざる術。=隱身術。
しのびこらへる、辛抱する。=耐忍·堪忍。
いたみをこらへる。齊書「與母隔壁、──不言」
淚を含む、泣くことをこらへる。宋史「上──太息」
佛 このよ、娑婆世界。
すひかづら、藥草の一、蔓を生じ、莖は紫色を帶び、葉は尖橢圓形、春夏の交、甘く芳しき小花を著ける。本草別錄「──金銀花」
○ 佛 外界のはづかしめを忍びて怨まず。法界次第「內心能安忍外所辱境、故名──」○ ニンジヨク はづかしめをしのぶ。陰符經「安莫安于──」
佛 袈裟 ケサ の異名。江總文「整────、入安禪之室」=忍辱鎧。
何事も忍耐の力によりて成し得べしとの意。呂本中、官箴「────────、當官處事、尤是先務、若能淸愼勤之外、更行一忍何事不辦」
こらへつとめる。鮑照詩「志士惜牛刀、──自療治」
國 塀などの上に尖りし竹木又釘などを列ねて盜賊の入るをふせぐもの。=遮欄。
國 しのぶずり、忍草の葉の形を織物にすりつけしもの、奥州信夫郡より出づ。
ソン [阮]
○はかる(度)おもひはかる。○おもふ(思)○刌に通ず。
同訓異義
ハカル 忖·計·謀·圖·量·度·料等の別は計(言部二畫)の條を見よ。
他人の心をおしはかる。詩、小雅「他人有心、予──之」
トク [職]
○たがふ、ちがふ(差)「差─」「謬─」詩、大雅「昊天不─」○うたがふ(疑)詩、曹風「其儀不─」○かはる(變更)詩、魯頌「享祀不─」○ 俗 はなはだ(太·已甚)「─殺」殺は助字。
①バウ·マウ [陽]
②バウ·マウ [漾]
①わする「─恩」「善─」○ゆるがせにする(忽)心にかけぬ。○記憶せず、善─はよくわすれる病。
②わする、心づかず、棄てる、おとす、とりおとす「遺─」「昏─」
うれひをわすれる。論、述而「發憤忘食、樂以──」
酒をいふ。陶潛詩「汎此───、遠我遺世情」
己の身をわすれる。後漢書「陛下──耶」
くるしみをわすれる。蘇軾詩「乞墦何足羨、負米可──」
うるさき世事をわすれる。機は心の機械 カラクリ 李白詩「我醉君亦樂、陶然共──」
次條に同じ、却は卻の俗字。趙善瑛詩「寵辱都──、功名盡已抛」
わすれる。卻は俗語の助字。夢遊錄「舞袖弓彎渾──、羅緯空度九秋霜」
身のつかれをわすれる。程俱詩「老來息交思簡單、爲子──廢晨夕」=忘勞。
己のからだあるをわすれる、物我の境を超脫する義。莊子「故養志者──」杜甫詩「──到爾汝」=遺形。
己の形體あるを忘れて心を以て親密にまじはる。唐書、孟郊傳「郊性介、少諧合、韓愈一見爲───」
己の身をわする。蘇軾詩「豈惟主忘客、今我亦──」
みだりなるおもひ、正しからざる想念。
○わすれる。○人のあやまちをわすれる。後漢書、李膺傳「立政之要、記功──」
履がよく足に適するをいふ。莊子「──履之適也、忘要帶之適也。忘是非心之適也」=要は腰。
○年をわすれる。莊子「──忘義、振於無竟」○ 國 年末に其の年を送るにいふ「──會」
年の長幼にかかはらずして交はる友。陳書、江總傳「總、時年少有名、纘等雅相推重、爲───」
年の長少を忘れて交る。後漢書「禰衡有逸才、少與孔融交、時衡未滿二十、而融已五十、爲───」南史、何遜傳「范雲見孫對策、大相稱賞、因結───」
○遊里に遊ぶ者の稱、孝弟忠信禮義廉恥の八をわすれる義。一說に王八といふ惡人の名の轉訛〔陔餘叢考〕幼學須知「言人入于花柳之中、其心已忘孝弟忠信禮義廉恥八字、故名──」=亡八。○ 俗 龜の異名。○ 國 くるわ(遊郭)又、遊女屋。又、遊女屋の主人。
つかれをわすれる。史通「懷其德音、三復──」
身のまづしきをわすれる。文子「樂道而忘賤、安德而──也」
やまひの苦をわすれる。錢起詩「味道能──」
身のつかれをわすれる。骨を折りても苦しと言はず。禮記「用慈愛──、可謂孝也」
國 ○萱草 クワンザウ の異名。○烟草 タバコ の異名。
忘(前條)の古字。
バウ マウ [陽]
いそがし、いそがはし、せはし、心迫る、事繁し「怱─」「繁─」「奔─」
同訓異義
イソガハシ 忙·鬧·怱·急·遽○忙は閑の反なり、多用にてひまなきなり、怱忙と連用す。○鬧はにぎやかなり、鬧熱と連用す、巿人のこみ合ひ、にぎやかなる義、忙に似て多用の義はなし。○怱は匇に同じ、せはしく、さうざうしき意。○急はせはしき義、緩の反なり、求レ賢急·官事急の如し。○遽は火急にあわてていそがしきなり。小學「雖レ在二倉卒、一未二嘗疾言遽色一」遽色はあわてたる願色なり。
次條に同じ。
甚だいそがはし、?は助字にて、殺の俗字。馬樸臣詩「──隣家小兔女」
いそがはしきしごと。范成大詩「姑婦相呼有──」
いそがはしき貌。高騈詩「浮世──蟻子羣、莫嗔頭上雪紛紛」
いそがはしき閒にも、ひまを求めてあそぶ。江湖長翁集「吾輩可謂────、苦中作樂、遂以八字爲韻、作詩八首」
4畫
カゥ [漾]
○なげく(慨)意氣激して不平なり。=慷。○いたむ(感傷)○誠を竭す。○もとる(很戾)
なげきいきどほる。魏書「志節──」
○心激し憤りてなげき傷む。史、項羽紀「項王、乃悲歌──」○誠を竭す貌。漢書、鄒陽傳「──不苟合」=慷慨。
キン コン [文]
○よろこぶ(喜)=欣。○たのしむ(樂)
同訓異義
ヨロコブ 忻·欣·喜·悅·歡·怡·懌等の別は喜(口部九畫)の條を見よ。
よろこび樂む。莊子「怵惕之恐、──之喜、不監於心」=歡樂。
よろこぶ貌。史、周紀「姜源見巨人跡、心──說、欲踐之」
よろこびたのむ。魏志「多所省減、民以──」
喜びたのしむ。晉書、潘岳傳「情──乎昏作兮」=忻懽。
恟(心部六畫)に同じ。
クヮイ ケ [卦]
○こころよし、さわやか「爽─」「痛─」「奇─」氣もちよし、さっぱりする。○よろこぶ(喜)よろこばし、おもしろし。○はやし(急·疾)「─車」するどし(銳利)○ほしいまま(縱逸)
ここちよし。蘇軾詩「──雄風海上來」
こころよく酒をのむ。
ここちよきあめ、旱の時の雨などにいふ。魏志、管輅傳「風雲竝起、竟成──」
とくはしる。唐書、朱敬則傳「──無好步」=快走·急行。
ここちよきかんじ。
ここちよきしわざ。
梨の異名。本草「梨、一名──」
いきいきしてここちよし。五代史、劉昫傳「歡呼曰、自此我曹──矣」
ここちよくうち開ける。
心に稱 カナ ひてここちよし。蘇軾詩「──聊自沃」
ここちよくさわやか。宋玉、風賦「──此風」
志をほしいままに樂ましむ。史、莊周傳「終身不仕、以快吾志焉」
ここちよきこと。
とくはしる。=快走。
ここちよし。新論「譽人不增其義、則聞者不快于心」
急行車に同じ。慢車の對。
氣にいりたる良きむこ。魏書、劉昞傳「欲覓一快女壻」
こころよくはれわたる。陳與義詩「雨鵲翻明月、孤松立──」
すばやし。=敏捷。
極めてはやき矢。陸龜蒙詩「安得彎弓似明月、──拂下西飛鵬」
勇ましく戰ふ。心地よき戰。史、項羽紀「願爲諸君──」
はやくはしる。=快駛。
はやく走る小船。帆又は蒸氣の力にて競走などに使用するもの、ヨツト。
すみやか、はやし。
善く切れる刃物。居家必用「取新葉用──切極細」
ここちよく承知する。
ここちよくくらふ。蔡襄詩「大臠──飮幾斗」
おもしろきはなし、面白く話す。
面白く絃をひく。白居易、琵琶行序「遂命酒、使──數曲」
こころよくのびのびする。
はやきこぶね。
ここちよくかなふ。楊愼文「引滿盡醉夜臥草庵、殊覺──」
ここちよくよむ。陳造詩「──淸篇病如掃」
○心よからず。戰國秦策「蔡澤入揖應侯、應侯──」○病あり。後漢書、華陀傳「體有──」
はやくはしるうま。南史、曹景宗傳「我昔在鄉里、騎──如龍」
國 病がなほりかかる、快き方に向ふ。
○ここちよきしらせ。○急速のしらせ。=急報。
よくきれる、するどきをの。王令、謝李常伯詩「驟承夫子言、──加芟荑」
さわやかによどみなき辯舌。=能辯。
はやくはしる。=快走。
ここちよし。
ここちよくねむる。朱熹詩「溽暑──知簟好」=佳眠。
やまひいゆ、なほる。愈は癒に同じ。=快癒。
ここちよくたのしむ。易林「富餘豐衍、──無已」=愉快。
人生の目的は快樂に在りといふ倫理說。=快樂主義。
グヮン [翰]
翫に通ず
むさぼる(貪)をしむ(愛)左、昭元「─歲而愒日」生を愛惜して歲月を貪る。
徒に歲月を貪る、爲すこともなくして生をむさぼる義。字解を見よ。
ゴ [遇]
牾·迕に通ず
さかふ、さからふ(逆)もとる(違戾)「乖─」「舛─」「很─」
同訓異義
サカフ 忤·逆○忤は迕に作るも同じ、心の互にたがひさかふなり、乖迕·違迕と用ふ。○逆は順の反なり、眞正面にさからふなり、轉じてむかふるとも訓む、逆擊の類。書經「有三言逆二于汝心、一必求二諸道一」
さからふ。陳書「何得見佛說而信順、在我語而──」
さからひうらむ。魏書──者黜免」
善言はみみに逆ひて快からず。韓非、難言「至言忤于耳、而倒于心、非賢聖則莫能聽」=逆耳。
さからひみる。史·荆軻傳「人不敢──」
コツ コチ [月]
○たちまち(倏)にはか、すみやか「─然」「─地」「倏─」「歘─」○ゆるかせにす、おろそかにす「輕─」○わする(忘)「忘─」○ほろぶ(滅)つく(盡)詩、大雅「是絕是─」○かるし(輕)そそっかしい。○あなどる(慢)○むなし。○一─はひとすぢのきぬいと。一蠶の口より出る絲。又、蜘蛛網。○極めて小數の名目、絲の十分の一。白居易詩「無秒─之失」
同訓異義
タチマチ 忽·乍·倏·歘○忽は暴起也と註し、倏忽と熟す、急卒なる義。史記の高祖紀に「人乃以レ嫗爲レ不レ誠、欲レ答レ之、嫗因忽不レ見」とある如し。○乍は、ちょくとと譯す、不定にして、必ず變ずる意あり、詩の句に「乍寒乍暖花信晚」淮南子に「燈將レ滅、而乍明」とある如し。○倏は犬走疾也と註す、ちょいとと譯す。○歘は「有レ所二吹起一也」と註す、倏·歘二字共に忽に同じ。
たちまちに、ふと、すみやかなる貌。左、莊十一「紂罪人、其亡也──」
にはか、にはかに。南史「實爲──」=卒遽。
ぼんやりとしてとりとめなし。怳は恍に通ず。潘岳賦、寥廓──」
空漠なる貌、廣くしてとりとめなし。賈誼、服鳥賦「寥廓──兮、與道翱翔」=荒唐·怳惚。
○うっとりする、喪心の貌。素問「──眩冒而顚病」○事を省みざる貌。漢書、蘇建傳「陵始降時、──如狂」○失意の貌。司馬遷文「居則──若有所亡」○まよふ貌。文選、高唐賦「悠悠──」○速に去る貌。劉向、九歎「年──而日度」=倏忽。
たちまち、たちまちに。=忽然·忽地。
○盡くる貌。忽は消滅、諸は助字。左、文五「皋陶庭堅、不祀──」○ 國 誤用してなほざり。又、ゆるかせにする義とす。
たちまちに。=忽焉·忽爾。
にはか、にはかに。
人生の須臾なるに喩ふ。張協詩「人生瀛海內、─────」
たちまち、地は助字。王建詩「楊柳宮前──春」
きはめてかすかに細し。漢書、律曆志「皆以正聲應、無有──」
そそっかしい、たちまち。杜甫詩「──相逢是別筵」=率爾。
おろそかにして詳かならず、なほざりにする。書經「怠忽荒政」傳「怠惰──、必亂其政」
元の始祖の名、兵を起し宋を滅し、中國を一統し、燕京に都す。
シ キ [寘]
○そこなふ、やぶる(害)詩、邶風「不─不求」ねたむ(嫉妬)○もとる(很)「忿─」さからふ(逆)莊、天下「不─於衆」
人をねたみそこなひ、又貪りて得んことを望む。字解參看。
人を忌みにくむ心。莊子「雖有──者、不怨飄瓦」
シン [侵]
まこと(信·誠)「下─」「悃─」=諶·愖。
ショウ [冬]
○あわつ、あわてる(惶遽)四子講德論「秦時百姓怔─」○おどろく(驚)○むなさわぎする。(心動不定)
セツ エイ [屑]
なる、ならす(習·忸)「狃─」
タイ [泰]
おごる(侈·奢·驕)張衡、西京賦「有憑虛公子者、心奓體─」=忕。
おごる。左、昭五「楚王──已甚」=奢侈。
①ヂク [屋]
②ヂウ [有]
①はづ、はぢらふ(慚)=恧。
②なる、ならす(習)=狃。
同訓異義
ハヅ 忸·恥·辱·愧·慙·怍等の別は恥(心部六畫)の條を見よ。
はづ。書、五子之歌「顏厚有──」
チュウ [東]
○まめ、まめやか「─實」「朴─」○まごころ、まこと(誠實)己のまごころを盡す。○君につかへて二心なし「─君」「孤─」○なほし(正直)○わたくしなきこと。○うやまふ(敬)書、伊訓「爲下克─」○あつし(厚)○ 國 ジヨウ 古、彈正臺の第三等官「彈正少─」
まごころをつくしていつくしむ。禮記「致其──」
まめやかにしてまこと。晉書「溫恭──」=忠誠。
まごころを盡して世の益になる。諸葛亮文「──者莫大于進之」
忠は善く君に事ふるをいひ孝は善く親に事ふるをいふ。忠義と孝行と。漢書「奉安君父──之至也」
忠と孝との兩道を兼ね全くする。李義山集「貴忠孝之兩全、則忠可移孝、正文武之二道、則武可輔文」
まごころありて剛直なり、忠直にして敢言する。北史「操履貞懿、立言──」
まめやかにしてつつしみぶかし。後漢書、鄧后紀「詔曰、公卿百官、其勉盡──、以輔朝廷」
君に盡すまごころ。宋史、文天祥傳「古誼若龜鑑、──若鐵石」=忠膽·忠魂。
忠義と奸惡と。=忠邪。
前條に同じ。
まごころを盡していさむ。漢書「孝武皇帝、好──」
まめやかなるはかりごと。陸機、辨亡論「──武節未有如此其至者也」=忠謀。
臣のまごころを君國につくすをいふ。魏志、齊王紀「所以表揚──」
まごころありてつよし。唐書、李嗣業傳「──憂國」
まめやかにつとめる、忠を盡して職務に勤勞する。晉書「石苞在位、稱爲──、帝每委任焉」
まめやかにして、つつしむ。五代史、牛存節傳「爲人、木彊──」
一卷、漢の馬融撰と傳ふ、孝經に擬し、十八章に分ち、君に事へて忠を盡くすべきことを說く。
きみにまごころを致す。戰國策「忠其君、天下皆欲以爲臣」
君につくせるいさを。
○忠義にして果敢。後漢書、夏恭傳「嘉其──、拜郞中」○橄欖 カンラン の異名。本草「橄欖、一名──」=靑果·諫果。
まごころ。北史、齊神武帝紀「自明──」=忠誠。
君に事へてまごころありて、つつしみうやまふ。詩經、箋「臣能夙夜在公、盡其──」
まごころありてかしこし。漢書、元帝紀「明王在上、──布職、則羣生和樂、方外蒙澤」
忠誠にして直言する。晉書「陳元達、在位──、屢進讜言」=忠鯁。
忠直なるまごころを以て諫めらるる言は聞くに快からず。家語、六本「孔子曰、良藥苦於口、而利於病、忠言逆於耳、而利於行」
まめやかにしてあつし。忠信にして篤厚。詩、大雅、行葦、序「行葦──也、周家──、仁及草木」
まごころを以て吿げさとす。論、顏淵「子貢問友、子曰、──而善道之」
まめやかにして誠なり。=忠誠。
○忠肝に同じ、魂は精神。○忠義の爲めに死せし人のたましひ。
まめやかにして、まこと。唐書「忌直言、則諂諛者進、而──之語不聞矣」
まごころをつくすけらい。老子「六親不和、有孝慈、國家昏亂、有──」史、樂毅傳「臣聞、古之君子交絕、不岀惡聲、──去國、不潔其名」
君に忠なる人は必ず親に孝なるをいふ。漢書、韋彪傳「求忠臣必于孝子之門」に本づく。
忠義の臣は二人の君に事へず。史、田單傳「王蠋曰、──────、貞女不更二夫、吾與其生而無義、固不如烹」
忠臣は其の身を後にして先づ君の爲めに盡す義。史、魯仲連傳「智者不倍時而弃利、勇者不怯死而滅名、───────」
まごころを盡して言にいつはりなし。論、學而「主──無友不如己者」
言語をまことにし行事をあつくつつしむ。論、衞靈公「子張問行、子曰、言忠信行篤敬、雖蠻貊之邦行矣」
藎は進なり、忠愛の心篤く、進みて忠を國家に盡す義。蜀志、董和傳、注「胡濟爲諸葛亮主簿、有──之效」
まごころある者と、よこしまなる者と。舊唐書「──旣辨」
まごころ。蜀志「致命明主、──發臆」
まごころありてつつしみ深し。晉書「──在公、慮不及私」=忠敬。
まごころありて、てあつし〔五朝會要〕
まごころありて、まじりけなし。諸葛亮、出師表「志慮──、是以先帝簡拔、以遺陛下」
まめやかにしてすなほ。禮記「孝弟──之行立」
まごころをつくすと、おもひやりあると。忠實にして同情心に富む。論、里仁「夫子之道、──而已矣」
まめやかにしてただし。潛夫論「人臣者以──爲本」
まごころありて心淸し。晉書「──高潔、不營產業」
朝鮮の地名、京畿道の南、全羅道の北に在りて、南北に分つ。北道の首邑は忠州、南道の首邑は公州。
まごころあるひじり。晉書「古來君子、皆謂周公──」
まごころ。徐陵、勸進梁元帝表「──貫於日月、孝義感于冰霜」=忠實。
忠實にしてねんごろ。漢書「以言事──、蒙尊榮」
君に事ふるまめやかなるみさを。漢書、師丹傳「執──」
まごころありてよし。左傳「子產曰、──以損怨」
君に盡す忠義の心。=忠肝。
まごころありて、ただし。北史、伊婁謙傳「謙性──善辭令」
まめやかにして、ただし。忠實にして貞正。書、君牙「乃祖乃父、世篤──、服勞王家」
まめやかにて方正なり。魏志「秉德純懿、志行──」=忠正。
まこと、孚は信。孛木魯文「操行淸介、──信格」
君に忠義を盡さんとて憤激する。北史「辭旨懇直、文義──」
忠實なるはかりごと。潘岳、夏侯常侍誄「讜言──、世祖是嘉」
まめやかにして、かざらず。蔡襄文「獨是丹誠抱──」
まめやかにしていさまし。晉書「英略奮發、──絕世」
忠義にして勇氣がすぐれてゐる。
まごころありて善良。書、冏命「小大之臣、咸懷──」=忠正。
まめやかにして功が大いなり。唐書、杜黃裳傳贊「──嶤然」
チュウ [東]
うれふ(憂)詩、邶風「憂心有─」
うれへいたむ。沈約文「──在念」
うれへいたむ。吳志、華覈傳「臣不勝──之情」
心のうれふる貌。詩、召南「未見君子、憂心──」=惙惙 ヲツテツ ??。
テン [琰]
古·?に作る
○はづかしむ、けがす(辱)詩、小雅「無─爾所生」所生は父母。○かたじけなし、かたじけなくす。己の身に受けたる物事を辱かしめる義にて、分に過ぎたる意をあらはす、謙遜のことば「虛─」「僭─」書、堯典「否德─帝位」
①トン [元]
②ジュン [眞]
③トン [阮]
①もだゆ(悶)○うれふ(憂)みだる(亂)
②ねんごろ。=諄。
③おろか。
○おろかなる貌。老子「我愚人之心也哉──兮」○ ジユンジユン 人ををしへて倦まざる貌。=諄諄。
ネン [豔]
○おもふ。常に思ふ「志─」書、大禹謨「─兹在兹」おもひ「思─」「憂─」「俗─」「世─」「宸─」○記憶する。論、公冶長「不─舊惡」○となへる、誦する、讀む「─書」「─經」○廿の字の俗音と混同して廿の字に代へ用ふる。韓愈に後─九日復上宰相書あり。○ 佛 極めて短時閒。仁王經「一─中有九十刹那」○ 國 ネン きをつける、注意して確める「─の爲め」
同訓異義
オモフ 念·思·憶·懷·意·想·惟·顧の別は思(次畫)の條を見よ。
あやまち無からんことを思ふ。後漢書「思過──、務消祗悔」
情篤くして故舊を忘れず、己富貴となりても、貧賤の交を忘れず。却掃編「常聞──之言」
おもひねがふ。ねがひ。
己のあやまちを思ひて改める。後漢書、光武紀「詔曰、今方──、庶消厥咎」
廿日をいふ。
人の意思は光線の如く人體より發散して、寫眞の種板に感ずるといふ作用。
心にいのる。呪文を念ずる〔酉陽雜俎〕
じゆず(數珠)念經に用ふる佛具。舊唐書、李國輔傳「視事之暇、手持──」
佛 佛名をとなへ經文をよむ。念佛讀經する。摩訶止觀「──云存念三寳」
書物を讀む。雙槐雜書「韓忠定遇冬寒、命小孫溫足、敎其──」
俗 儒者、又學者をいふ。=讀書人。
せんぞの名を汚さじとおもふ。詩、大雅、文王「無念爾祖、聿修厥徳」
こころ。おもひ。=心頭。
常におもひつづける。又、時時刻刻に。蘇軾詩「生世本暫寓、此身──非」
ときのま、時時刻刻。
佛 前の念と後の念との閒に餘念を交へずして相つづく。
佛 世界のすべての事物は時時刻刻生じたり滅したりして少しも止むことなき義。=生滅流轉。
佛 專心佛を念じて、南無阿彌陀佛の六字の名號を唱ふる。法華經「以深心──、修持淨戒」
一心に思ひこみし力。遺敎經「──堅强、雖入五欲賊中、不爲所害」
おもんぱかる。おもひ。漢書「──萬方、不忘元元」
ビン [眞]
○つとむ(勉彊)○くらし。
心に了せざる所ある貌。法言「傳千里之──者、莫如書」
フン ホン [吻]
○いかる(怒)立腹 リツプク する「激─」「爭─」○いきどほる、憤に通ず、うらむ(恨·怨)○いから、いきどほり「小─」「積─」論、顏淵「一朝之─、忘其身」
同訓異義
イカル 忿·怒·憤·慍、悶·懣·恚·瞋·瞋·愾·艴の別は怒(次畫)の條を見よ。
いかる。隋書「家人未見其有──」=瞋恚·瞋恚·忿怒·忿恨。
いかりうらむ。范質詩「──容易生、風波當時起」=忿恨·忿懟。
いかりを忍ぶこと能はざる義。戰國策「秦──含怒之日久矣」
忿怒と私慾とは修德の上に害あり、故に之をこらしふさぎて、心に生ぜざらしむ〔易、損卦〕
いかりて、なかたがひする。唐書「厚相結納、──得解」
いかりせめぐ。魏書、李冲傳「冲兄弟六人、四母所岀、頗相──」
いかりていふことば、忿をふくむことば。禮記「──不反于身」=怒言。
いかりうらむ。漢書「──相吿」=忿怨。
いかりあらそふ。韓愈詩「初喧或──、中靜雜嘲戲」=忿諍。
いかりあらそふ。魏書「復致──」=忿爭。
いきどほりさわぎておちつかず。宋史「修古奏、殊──無大臣體」
いかりて害する。劉克莊文「君子無纖毫之過、而小人──、必致之死」
いかりにくむ。南史「遠近莫不──」=忿嫉。
いかりにくむ。南史、邵陵王綸傳「賊徒──」=忿疾。
いかりて平かならざる貌。
いかりて癎癪 カンシヤク をおこす、懥も忿と同義。大學「身有所──、則不得其正」
いかりうらむ、懟は怨。宋書、文五王傳「──有怨言、議免官削爵士」
いきどほる。陸游詩「──緣何事、號呼可奈渠」=憤怒。
いきどほりののしる。南史「──形于辭色」=忿罵。
いかる貌。阮瑀、爲曹公與孫權書「使仁君飜然自絕、以是──」
いかる。王勃、三國論「甘──而忘食」=憤忿·忿忿。
心に激していきどほりさわぐ兵隊。漢書「不忍憤怒者、謂之──」
いかりもだえる、懣は煩悶。司馬遷文「不得舒──」=憤懣。
いきどほりののしる。宋書「──形于辭色」
ベン [霰]
よろこぶ(喜)たのしむ(樂)「欣─」「歡─」
色喜ぶ。白居易詩「容衰見鏡同惆悵、身健逢杯且──」
よろこびをどる。符載文「仰天──、跼地兢惶」
悴(心部八畫)の俗字。
國 セガレ 倅(人部八畫)の誤用。
5畫
イ [支]
古、台に通ず
○よろこぶ(悅)「──」「嬉─」よろこばす。禮、內則「下氣─色」○やはらぐ(和)○たのしむ(樂)
同訓異義
ヨロコフ 怡·喜·悅·說·欣·忻·訢·歡·懽·驩·懌·愉·慶·賀·豫の別は喜(口部九畫)の條を見よ。
やはらぎよろこぶ貌。次條參看。=怡然。
やはらぎよろこぶ貌。論、鄕黨「岀降一等逞顏色、───也」論、子路「朋友切切偲偲、兄弟───也」
心によろこび樂む。李百藥、笙賦「縱勝氣之逍遙、眷春光而──」
よろこぶ、よろこび。成公綏、琴賦「心──而踴躍兮」=怡悅。
よろこぶ。陶弘景詩「嶺上多白雲、只可自──」=怡懌。
よろこびたのしむ、衍は游衍。宋孝武帝詩「束髮好──」
顏色を和げよろこばす。陶潛、歸去來辭「眄庭柯以──」
よろこびやはらぐ。任昉文「神虛氣懋、無待──」=和悅。
心情をよろこばす。中論「學也者、所以──理性、聖人之上務也」
よろこばしき顏いろ、又、顏色をやはらげよろこばしくする。禮、內則「下氣──、柔聲以諫」
○よろこび樂む貌。陶潛、桃花源記へ黃髮垂髫、竝──自樂」=怡怡。○物の道理のすらすらと順ひ解ける貌。杜預、左傳序「若江海之浸、膏澤之潤、渙然冰釋、──理順、然後爲得也」
よろこびやはらぐ。北史、盧度世傳「尊卑──、豐儉同之」
よろこぶ。唐書、柳宗元傳「海內皆欣欣──」=欣愉。
よろこびたのしむ。吳志「有上官之變、以身値此、何敢──耶」
①ヱン·ヲン [願]
②ヱン·ヲン [元]
①うらむ、うらみ(恨)「憤─」「嫌─」「宿─」「閨─」「構─」孟、萬章「父母惡之、勞而不─」○いかる(恚)○あだ(讎)
②あだかたき(仇讎)禮、儒行「外擧不避─」
同訓異義
ウラム 怨·恨·憾·懟○怨は恩の反なり、恚也、恨也、讎也と註す、夫なき女を怨女といふ。孟子「伯夷叔齊不レ念二舊惡、一怨是用希」○恨はわが心に殘りて怨の深きなり。史記「王朔謂二李廣一曰、將軍自念、豈嘗有レ所レ恨乎、廣曰、羌降者八百餘人、吾詐而盡殺レ之、至レ今大恨」○憾は恨に同じくやや輕し。孟子「養レ生喪レ死、無レ憾、王道之始也」○懟は怨なり、怨の相對する義。
うらみとがめる。論、憲問「子曰、不怨天、不尤人、下學而上達」淮南子「──充胸、思心盡亡」
うらみにくむ。=怨憎。
うらむこころ。史記「諸侯無異心、百姓無──」
うらみとがめ、又、あやまち。戰國策「蒙──、欺舊交」
うらみくやむ。後漢書、卓茂傳「──曷其至哉」=悔恨。
怨女曠夫の略。曠は空、つれあひなくして悲みうらむ義。魏志、武帝紀「家室──、百姓流離」怨女參看。
うらみて仲惡し。蔡襄文「憎惡一開、卽成──」
うらみことば。舊唐書「因醉或有──、不能自保」
うらみにくむ。後漢書、馮衍傳「欲免讒口濟──、豈不難哉」
うらむ。周語「莫不──」
うらみなげく。何遜詩「臨風自──」=怨咨。
うらみそねむ。高啓詩「翠羽驚啼莫──」
人をうらみて、とほまはしにそしる。漢書、禮樂志「周道始缺、──之詩起」
うらみなげく。書、君牙「夏暑雨小民惟曰──」
うらみおもふ。うらむ心。班固、兩都賦序「西士耆老、咸懷──」
うらみて、あだとする。うらみのあるかたき。左傳「我有三怨、──已多、將何以戰」宋史、孫永傳「與人交、終身無──」
うらむこころ。張九齡詩「纖指傳新意、繁絃起──」
うらみうったふ。徐陵文「非欲令君作此──」
うらみにくむ。嵆康文「性不傷物、頻致──」
うらみにくむ。曾鞏詩「蜩螿豈知微、切切如──」
うらむ。漢書、王商傳「商私──」蔡邕文「忿不──、喜不驕盈」
うらみなげく。晉書、郭璞傳「刑獄充濫、──之氣所致」=怨嗟。
○をっとが出征などにて家に在らず、妻たる者空しく怨を抱きて家に在るをいふ。孟、梁惠王「內無──、外無曠夫」○君の寵を失へる女。白居易、七德舞詩「──三千放出宮、死囚四百來歸獄」
子規 ホトトギス の異名〔禽經〕
うらみをふくむふえの音。楊萬里、子規詩「──哀箏總不如」
うらみいかる。元史「或小過失、必盡言勸止、不計其──也」
甚だしきうらみ。又、うらみ惡む。史、伍子胥傳「──之於人甚矣哉」
うらみて惡しき事をなす。易林「國人利貞、終無──」
うらみそしる。讟はそしる。怨恨して毁謗する。左傳「民不疲勞、君無──」=怨謗。
うらみて不平を抱く。史、淮陰侯傳「由此日──、居常鞅鞅」
うらみそしる。漢書、五行志「──之氣、發于歌謠」=怨誹。
うらみそむく、畔は叛。
うらみそしる。史、屈原傳「國風好色而不淫、小雅──而不亂、若離騷者、可謂兼之矣」=怨謗。
うらみのあつまるところ。衆人の怨の集中する所。左、昭十二「吾不爲──」
怨女に同じ。吳少微詩「城南有──、含情傍芳叢」
うらみいきどほる。後漢書、趙壹傳「作刺世疾邪賦、以舒其──」
君父などの無情をうらみながら、なほしたふ。孟、萬章「何爲其號泣也、孟子曰、──也」
うらみののしる。書經「小人怨汝詈汝」
うらみしへたぐ。荀悅、赦論「猛暴橫作、──繁多」
うらみのあるかたき、あだ。
うらみて死せし者のたましひ。
うらむ心の甚だ深きをいふ。漢書、吳王濞傳「或不洗沐十餘年、────」
キフ [緝]
○いそぐ、とし、はやし(疾)緩·慢の對「迅─」「火─」○せまし(褊)「狷─」○きみじか「卞─」○せまる(迫切)いそがはし、あわただし「躁─」「迫─」史、刺客傳「時惶─、劍堅、故不可立拔」○およぶ(及)○たしなむ(窘)とぼし(乏)こまる、困難。禮、王制「無六年之蓄日─」○さしせまりし事「─務」
同訓異義
イソガハシ 急·忙·閙·怱·遽の別は忙(心部三畫)の條を見よ。
にはかあめ。杜甫詩「──捎溪足、斜暉轉樹腰」=驟雨。
急に行く、いそぎゆく「──列車」
急ぎて急に步行すれば善き步調なし、急ぎて爲したることには善き事なき義。論衡「─────、促柱少和聲」=急趨無善跡〔舊唐書〕
はやうち、はやうま。
漢代の公文書に用ひ至急·火急の意をあらはす語、後に道家者流が惡魔をはらふ爲めの呪文となる〔雲麓漫鈔〕
いそぎあわてる。歐陽修文「──之至、先以惠音」
近く迫りし火事。=近火。
甚だはやし。=急速。
せまると、ゆるやかなると。李允文「轡銜在手、──必時」
光陰の速かなるをいふ。樓鑰詩「正恐──不得延」
にはかにはげし。
にはかにはげし。
にはかにうつ。史、秦始皇紀「項羽──秦軍」=疾擊。
きびし。唐書「斷獄能者名在──」=嚴刻·峻刻·苛刻。
にはかにしたくする。漢書、趙充國傳「將軍──、因天時誅不義」
いそがしくして、しばしばする。誠齋雜記「甚──」=頻數 ヒンサク
いそぎのつかひ。
○はやし。素問「其氣──堅勁」○にはかのやまひ。=急病。
いそぎすすむ。後漢書「言不失正、仕不──」
政治其の他の風俗習慣などの現狀にあきたらずして、急に新しき方にうつりかはらんとする主義のなかま。保守黨の反對。
手をいそがしくつかふ。陳師道詩「──疾口如翻盆」
國 かなめなる場處。身體中死命に關する大切なる部分。
しげくつくきぬたの音。吳師道詩「誰家──搗寒衣」
せまれると、ゆるやかなると。東京賦「齊──于寒燠」=急緩。
○酒の燗 カン をする小さき鍋。三餘贅筆「吳人呼暖酒器爲──、──者以其應急而用也」須は用。○ 國 茶を煎じ出す小さき士瓶、きびしよ。
せのはやきみづ。杜甫詩「漁舟上──、獵火著高林」=急湍·急流。
急に起る病のたち。慢性の對。
いそぎせまる。後漢書、崔寔傳、注「背當時之──、而慕所聞之事、則非濟時之要」
にはかにふるゆき。陸游詩「──打窗心共碎」
○はやき矢。唐太宗詩「啼猿悲──」○矢よりもはやし。孔稚珪文「飛浪衝雲、奔湍──」
にはかに降るあられ。何景明詩「裊裊城雲影、蕭蕭──催」
いそぎあし、はやあし。轉じて、速かなる進みかた。
いそぐ、きばやし。晉書、羊祜傳「吳俗──、不能持久、唯水戰是其所便」=疾速·迅速。
はやせ。吳均文「──甚箭、猛浪若奔」杜甫詩「片片輕鷗下──」=急灘。
はやせ。崔道融詩「卻放輕舟下──」=急湍。
音樂の聲のやかましき義、繁縟なる絲竹。翁卷詩「────互催逼」
いそぎの電報。
にはかに方向がかはる「──直下」
せはしくさへづる。蘇頲詩「黃鸎──春風盡」
いそぎわたる。史、項羽紀「願大王──」
さしせまりたる難儀。詩、小雅「脊令在原、兄弟──」
國 さしせまれる場合 バアヒ
いそぎのしらせ。戴表元詩「──傳來又不眞、門前翁稚笑聲頻」
樂器の一、うちならす板の急なるもの。李郢詩「──繁弦醉畫堂」=快板。
にはかにさしせまる。
○にはかの岀來事。漢書、章帝紀「以──聞」○病などのにはかにかはるにもいふ。
最も先づ爲すべきつとめ。漢書「反衰世之陵夷、繼周氏之絕業、天下之──也」=先務。
はやせ。黃溍詩「層雲抱幽峯、──洩崁竇」=急湍·急灘。
はやせ。馬祖常詩「解航下──、百夫不能畱」=急瀨·急湍。
はやきながれ、はやせ。高適詩「湍上──聲若箭」
斷然官位を辭し去るに喩ふ。名臣言行錄「一僧謂錢若水曰、公────人也、」戴復古詩「────有何難」
いそがはしく漕ぐ舟のろ、艣は櫓。范成大詩「──潮痕出」
①キャウ·カゥ [陽]
②クヮウ [養]
①くるふ(狂)きぬけしてぼんやりする。
②うっとりする、恍に通ず。
○物事の判然せざる貌。老子「──忽兮、其中有物」○ キヤウケイ 失意の貌。楚辭、大司命「臨風──浩歌」
とりとめなく、うっとりする貌。老子「道之爲物、惟怳惟忽」より出づ。=恍惚。
うっとりとする貌。宋玉賦「晡夕之後、精神──」=恍惚·怳忽。
うっとりとして自失する貌。=恍然。
クヮイ ケ [卦]
或は傀に作る、恠は俗字
○あやし(異)くし、めづらし(奇)うたがはし(疑)○あやしむ、不思議に思ふ。○まどふ(惑)淮南、說林「智者不─」○あやしきもの、ばけもの、へんげ「妖─」「山─」
ふしぎ。又、其の事。七發「是天下──詭觀也」=怪詭·怪奇。
すぐれて雄大なり。恢詭にして雄壯なる義。王庭珪詩「況公文章善敍事、大字──宜鑱鐫」
あやしく正しからず。史、武帝紀「海上燕齊──之方士」
ふしぎなる鳥。唐書「以此時捕奇禽──」=怪鳥。
あやしみいぶかる、不思議に思ふ。=怪疑。
あやしみおどろく。朝野僉載「──良久」
あやしくめづらし。=奇怪·怪異。
あやしき雲氣。王勃文「消──于沅澧」
ばけもの。唐書、方技傳「能厭劾──」
あやしくめづらし。段成己詩「雲日互蔽虧、百態呈──」=怪異·怪奇。
あやしくうたがはし。=怪訝。
怪鳥に同じ。
あやしきうを。
因りて起りし原因のわからぬ火。又其の火事。
極めてあやし。韓愈文「不能專一能、──奇奇」
あやしくすぐれたる人物、怪特なる人傑。
あやしくして正しからず。山海經「有人獸體其狀──」
あやしきことば。曹植文「辭繁寡實、頗有──」
色色と入りまじる。江賦「水物──」
あやしき事柄。晉書、殷浩傳「作咄咄──四字而已」
鸺鶹 ミミヅク の異名〔古今韻會〕=角鴟。
あやしきことば。韓愈詩「──驚衆謗不已」=怪言。
ふしぎにあやしきけもの。晉書「又畫鷁首──于舡首、以懼江神」=奇獸。
あやしきもののたたり。易林「福祿不遂、家多──」
あやしみてわらふ。唐書、陳子昻傳贊「子昻說武后興明堂太學、其言甚高、殊可──」
○あやしき形のいし。方干詩「閒花舊識猶含笑、──無情更不言」=奇石。○玉に似たる石。漢書、注「──石之次玉美好者也」
あやしき話。荀子「治──、玩奇辭、以相撓滑」
あやしきへび。庾信、孫叔敖、逢蛇贊「知埋──」
あやしきそらごと。韓愈詩「卻信靈仙非──」
とりとめなき大言を吐きて正しき道にそむく。漢書、王尊傳贊「────、好爲大言」
ばけものばなし。=妖怪談。
めづらしき竹。唐書「高宗時遣宦者、采──江南、將蒔上苑」
あやしきむし。山海經「榮余之山、其中多怪蛇──」
あやしきとり。神仙傳「有──止屋上者」=怪禽。
あやしくして他とことなり。奇怪絕特。柳宗元、始得西山宴遊記「未始知西山之──」
ばけもの。禮、祭法「山林川谷丘陵、能岀雲爲風雨、見──、皆曰神」
あやしきうはさ。
ふしぎなる木。山海經「猨翼之山、其中多怪蛇、多──」=奇木。
めづらしきあぢはひ。又、其の物。淮南子「──人之所美」
怪はあやしきもの、力はすぐれて大いなる腕力、亂は道をみだる悖逆の事、神は鬼神。論、述而「子不語────」
國 ○あやまち、=過失。○あやまちて生じたるきず。思はざる負傷。
ケフ [葉]
○おそれ、おそる(多畏)勇の反對「─懦」○よわし(懦·弱)氣おくれする、おそれ易し「恇─」史、淮陰侯傳「若雖長大好帶劍、中情─耳」
同訓異義
オソル 怯·恐·懼·畏·怖·怕·惶·慴·讋·慄·悸·懾の别は恐(次畫)の條を見よ。
おそるること狐に似たり。韋莊詩「臥草跧如兔、聽冰───」
おそれてよわし。=怯怖。
おぢおそれることば。夏侯湛文「居位者以弱斷爲重、以──爲信」
よわし。膽が小さし。易經、注「沈沒──、自守而已」
おぢおそれる。陸龜蒙詩「──不敢前」
おくびゃう。愞一に懦に作る、怯なり、弱なり。韓非子「略事陳意、則曰──而不盡」北史、魏宗室元善傳「楊素粗疎、蘇威──」
おそれおこたる。宋史、李綱傳「軍政久廢、士氣──」
おくびゃう〔唐書、楊師道傳〕=怯愞。
おぢおそれる。舒元輿文「晝伏夕動、常──人者也」=怯怖。
おくびゃう者は變じて勇者となり、やぶれし城は修復して完全になる〔歐陽修、范文正公碑〕
おくびゃう男。史記「猶孟賁之與──」=懦夫。
おそれてよわし。=怯恇。
よわくしておとる。晉書、劉波傳「貪汙者謂之淸勤、愼法者謂之──」=懦劣。
コ [麌]
○たのむ、たのみ(恃·賴)たよる「依─」○父。詩、小雅「無父何─、無母何恃」とあるによりて怙を父、恃を母の義とす。又轉じて兩親(父母)の義にも用ふ。
同訓異義
タノム 怙·負·恃·賴·憑の別は負(貝部二畫)の條を見よ。
己の勇氣を恃む。漢書「形容魁健、負力──」=恃氣。
要害をたのむ。晉書、慕容廆載記「乘危蝟起、──鴟張」=恃險·憑險。
○たのみとする。左傳「──甚衆」=馮恃。○父母の稱。詩、小雅、蓼莪「無父何怙、無母何恃」
怙は恃む、恃む所ありて罪を犯す者、終は再び犯す者。一說、惡をたのみて身を終へんとする者。書、舜典「眚災肆赦、──賊刑」
コウ [徑]
恆(次畫)に同じ
○つね。○わたる(竟)
サク [藥]
○はづ(慚)きまりわるく思ふ「慙─」「羞─」論、憲問「其言之不─、則爲之也難」○はぢて顏色がかはる。曲禮「容母─」
同訓異義
ハヅ 怍·恥·辱·慙·羞·愧等の別は恥(心部六畫)の條を見よ。
①シ [支]
②シ [寘]
③サイ [灰]
①おもふ(念)かんがへる「近─」「追─」「沈─」「靜─」「熟─」曲禮「儼若─」○おもんぱかる(慮)○ねがふ(願)○かなしむ(悲)○ここに、語頭に置く無意味の助字。詩、魯頌「─樂泮水」語尾に置く無意味の助字。詩、大雅「神之格─、不可度─」
②おもひ、かんがへ「─慮」○かなしみ(悲)こころ、おもひ「詩─」「秋─」「客─」「旅─」「意─」
③于思 ウサイ は鬚多き貌。左、宣二「于─于─、棄甲復來」
同訓異義
オモフ 思·憶·懷·意·念·想·惟·顧○思は思案するなり、愼思·再思の如し、又したひおもふ義、思慕と用ふ、相思とは互に戀ふるなり。○憶は思ひ出すなり、憶昔、憶得の如し。○懷はふところ、いだくと訓む、心にこめて思ふなり。胸懷·懷抱と連用す。論語「君子懷レ刑、小人懷レ惠」○意はこころばせと譯す、おもはくをつける義、志之發也と註す、かくならんかと疑ふ意を帶ぶ。○念は思字より輕し、いつも念頭にかけて忘れぬなり、又讀書を念書ともいふ、口に唱ふる義、念佛·念經とも連用す。○想は心に從ひ、相に從ふ、形相を心にうつし思ふなり、想像と連用するにて知るべし。○惟は只一筋に思ふ義、伏惟·恭惟など、發端に用ふる助語なり。○顧は心に顧み思ふ義。史記「顧二力行何如一耳」
おもひめぐらす。かんがへ、工夫。=思索。
おもふ。漢書、董仲舒傳「──往古、而務以求賢」
思ひたづねる。世範「反復──」
おもふ。韓偓詩「每回拈著長──」
かんがふ、かんがへ。=思慮。
かへらんことをおもふ。
子規 ホトトギス の異名〔畱靑日記〕
おもひばかる「不可──」
ふるさとをしたひおもふ。李商隱詩「懷古──共白頭」=憶鄕。
おもひかへりみる。漢書「──舊恩、哀曾孫、奉養甚謹」
かんがへ、おもひ。傳燈錄「能斷百──」
○學術·宗敎などのすべて思想のはたらく範圍。○思想をはたらかせる學者·宗敎家などのなかま。
かんがへもとめる。管子「──生知、慢易生憂」
おやを慕ひおもふ。淮南子「祭祀──不求福」
心の多端にして絲緒 イトグチ の如き義。陸龜蒙詩「江湖──縈」
善き政を布かんことをおもふ。北史、柳儉傳「勵精──」
賢を見ては己も亦其の人と齊しからんことをねがふ。論、里仁「子曰、見賢──焉、見不賢、而內自省也」
心を屬しよせる。詩經「雖則如雲、匪我──」=屬意。
時代の思想界の傾向、其の時代に於ける世人の思想の趨勢。
心におもふ。又、かんがへ。
おもひてしたふ。詩經、疏「周人──仲山甫也」=思慕。
常に心に思ひ忘れず、服は服膺する。詩、周南「求之不得、寤寐──」
おもひわきまへる。中庸「博學之、審問之、愼思之、明辨之、篤行之」
おもひしたふ。南史、滕曇恭傳「每至忌日、──不自堪」
おもひはかる。蜀志「黃權弘雅──、李恢公亮志業」=思料。
おもんぱかる、おもんぱかりかんがへ。禮記「──不違親」
おもんぱかる、料ははかる。=思量。
おもひしたふ。水經、注「──本國」=思慕。
國 おかんがへ、人のかんがへをいふ敬稱。御意向。
かんがへをめぐらす。=構想。
思ふこと深遠にしてきはまりなし。詩、魯頌「───、思馬斯臧」
恩德を慕ひ思うて、皆從はざるものなし〔詩、大雅、文王有聲〕
考へて自ら得る所多きをいふ。易、繫辭「知者觀其彖辭、則───矣」
心に邪惡なし。詩、魯頌、駉「───、思馬斯徂」論、爲政「詩三百、一言以蔽之、曰───」
君子は事を思慮するに、各其の所に止まりて、他の分限を侵さず〔易、艮卦〕
シン [寢]
いかで。なんぞ。古文の如何の俗語「─地」「─生」
如何に。朱子語錄「不知後面一段是──地」
①ショ·ソ [御]
②ソ [虞]
①おごる、ほこる(驕)「肆─」
②あらし(心不精)粗に通ず。史、王翦傳「秦王─而不信人」
セイ シャウ [敬]
○うまれつき、さが、天賦の氣質「─質」「天─」「理─」「德─」「至─」中庸「天命之謂─」○たち(本質)萬物の本質「鳥─」「藥─」孟、告子「是豈水之─哉」○こころ(心神)「─情」○たましひ(魂)○いのち(生命·壽命)からだ(體軀)「男─」「女─」すがた(姿容)○勉めずして天理にかなひし心。又、無爲にして安んじ行ふ義。孟、盡心「堯舜─之也」
國 陰陽家の說にて、人の性を木·火·土·金·水の五行に配當し其の人の性質運命等を考へ定めるもの。
佛 僧俗を問はず、之を犯さば罪となるべき戒。卽ち、殺生·偸盜·邪淫·妄語。
人の本性は惡なりと說く說。荀、性惡「人之性惡、其善者僞也」性善說參看。
佛 こころ。五燈會元「祖曰、汝化──得否」白居易詩「──澄淳平少浪」
うまれつきと、おこなひと。
うまれつきのたち、氣ぐらゐ、人がら。李中、獻張拾遺詩「官資淸貴近丹墀、──孤高世所稀」=品性。
天然の本心と人爲の禮儀制度など。荀、禮論「──合而天下治」
せっかち、短氣。北史、陳元康傳「神武曰、我──」
うまれつきと學業と。蜀志、諸葛喬傳「喬才不及兄、而──過之」
うまれつき。李紳文「如來以萬門萬行、普示羣生、隨其──」
うまれつき。唐書、柳公綽傳「──嚴重、起居皆有禮法」
佛 本性をいふ。楞嚴經「──圓融、皆如來藏、本無生滅」
こころだて。易經「利貞者──也」元稹詩「都無漢──」
こころだて。禮記「聲音動靜──之變盡於此矣」=心術。
人の本性は善なりといふ倫理說、孟子の說の類。荀子の性惡說の對。孟、告子「人性之善也、猶水之就下也」
心の本體。北史「若論──、非愜非寬」
ちゑ論衡「──開敏、明達六藝」
天より受けたる本然の性。=天性。
うまれつきと、はらまへと。性質度量。後漢書、劉寬傳「神色不異、乃徐言曰、羮爛汝手、其──如此」
天より享けたるうまれつきは人人相似たれども、敎育·習慣によりて遠く賢愚の別を生ず。論、陽貨「子曰、────────」
人類の理性に基きて岀でたる法律。=自然法。
うまれつき。=性質。
くせ。蒙齋筆談「楊朴──常騎驢」
○天より受けしもちまへのたち。性は天より受けたる性質、剛柔遲速の別ある類、命は天より受けし運命、貴賤夭壽の類。易、乾卦「乾道變化、各正其──」○いのち。諸葛亮、岀師表「荀全──於亂世」=生命。
男女の肉慾。
性命卽ちうまれつきと、理氣卽ち天理及氣質との略。宋儒の唱ふる學說。=性理學。
性命理氣を說きし儒敎哲學、宋の周濂溪·張横渠·程明道·程伊川·朱熹等の唱へし學說。=道學·宋學·理學。
七十卷、明の永樂十三年、胡廣等勅を奉じて撰す。宋の道學者一百二十家の說を集む。
○こころ、たましひ。徐寅詩「出水蓮花比──」=靈性。○こんき、精氣。陶弘景文「任──而直往」
セイ シャウ [庚]
○おそる(懼)○あわつ(遑)
あわてて自ら安んぜざる貌。後漢書、郞顗傳「──惶怖」=正營·征營。
おそれる貌。四子講德論「秦時百姓──、無所措其手足」
悤(心部七畫)に同じ。
いそがはし。陸游詩「三農雖隙亦──」
タイ [賄]
○おこたり、おこたる、なまける(懈)「荒─」「倦─」「懈─」○あなどる(慢)氣がゆるむ。かろんずる。
同訓異義
オコタル 怠·解·懈·惰·慢○怠は心のたるむことなり、怠慢と連用す、敬の反なり。○解は勤の反、精を出さぬなり、又じだらくなり。詩經「夙夜匪レ解、以事二一人一」○懈は解に同じ。○惰は懈に同じ、心のたるむ義。曲禮「臨レ祭不レ惰」○慢は心ゆるみて、なまける義。說苑「偸慢懈怠多二暇日一」
おこたる。解は懈に同じ。賈誼新書「體──、志驕慠皆禁也」=解怠。
おこたりおこる。孟、公孫丑「今國家閒暇、及是時般樂──」=惰傲。一說、敖は遊なり、或は遨に作る。
おこたりておごる。傲慢にして敬禮せず。漢書、竇嬰傳「諸公稍自引而──」
おこたりてなげやりにする。國語「吾周官之於災備也、其所──者多矣」=惰棄。
おこたりすさむ。なまけてなげやりにする。曲禮「勿──」=荒怠·怠廢。
おこたりて防備なきすきま。蜀志「伺其──、選精銳、出擊、大破之」
なまけうむ。後漢書「日夜尋誦、未嘗──」=倦怠。
おこたりてなほざりにする。書、周官「──荒政、不學牆面」=怠慢·怠惰慢易。
國 わび狀、あやまり證文。
やすむ。漢書、于定國傳「君相朕躬、不敢──」=休息。
おこたる。魯語「況有──、其何以避辟」=懈惰·懶惰·惰怠。
おこたりなまける。史記「不敢──」
なまけゆるむ。唐書「驕驁──」
官にをさむべき租稅等をおこたり期日を過す。
おこたりてなげやりにする。曾鞏文「防其──難久之情」=怠荒。
おこたりてほしいまま。後漢書「有司不擧、──日甚」
おこたる、嫚は慢。漢書「後世──故衰耗」=怠慢。
おこたりてなほざりにする。左、僖三一「牲成而卜郊、上──也」=惰慢·怠忽。
ダゥ [肴]
みだる(亂)「惽─」
①タン [寒]
②ダツ [曷]
①いたむ(憯)「惻─」「忉─」漢書、武帝詔「支體傷則心憯─」
②おどろく(驚)おそる(懼)「驚─」「震─」○かなしみ、いたむ(悲慘)つかれる(勞)
同訓異義
イタム 怛·悼·傷·痛·隱等の別は悼(心部八畫)の條を見よ。
かなしみいたむ。楚辭「心──之憺憺」=傷痛。
おどろく貌。列子「──內熱、惕然震悸矣」
かなしみつかれる貌。詩、齊風「無思遠人、勞心──」
いたむ。司馬遷文「慘愴──」
いたみおそれる。史、文帝紀「萬夫、爲之──不安」
ヂ [支]
忸怩 ヂクヂ は、はぢるいろ(慚色)
①ヂュツ [質]
②シュツ [質]
①おそる、恐怖する「驚─」○いたむ、かなしむ(悽愴)「悼─」禮、祭統「心─而奉之以禮」
②利を以ていざなふ(誘)=訹。
利の爲めにせまりいざなはれる。賈誼、服鳥賦「──之徒、或趨西東」
おそれる貌。淮南子「──若有所誘慕」
心おそれて安からず。吳萊詩「中心旣──、外物盡坑谿」
おそれる貌。枚乘文「──惕惕、伏不得瞑」
おそれて心安からず。孟、公孫丑「皆有──惻隱之心」
テゥ [蕭]
○いたみかなしむ(悵)○かなしむ(悲)
かなしむ貌。莊、天地「──若嬰兒之失其母」=怊怊。
①テフ [葉]
②セン [鹽]
①したがふ(服)○しづか(靜)○やすし(安)「妥─」
②とどこほる(滯)
とどこぼる、爽利ならざる義。禮、樂記「宮商角徵羽、五者不亂、則無──之音」=怗懘。
しづかなる貌。元稹、高荷詩「一生長──」
ド ヌ [遇]
○いかり、いかる(恚)腹を立てる「忿─」「怨─」「赫─」「震─」いからす、おこらす。○いきどほる(憤)ふるふ(奮)りきむ。莊、逍遙遊「─而飛」○いきほい(威勢)勢さかんなり「─馬」○すべて强く盛んにして勁急なるものの形容─髮」「─潮」○あらそふ(訟)○東方の氣。
同訓異義
イカル 怒·忿·憤·慍·悶·懣·恚·瞋·嗔·愾·艴○怒は喜の反、はらたつと譯す、立腹の外にあらはるるなり。書經「帝乃震怒」○忿は立腹して恨むこと、怒の外にあらはれぬなり。易經「君子以懲レ忿窒レ欲」○憤は內に鬱積して發する怒なり。論語「發レ憤忘レ食、樂以忘レ憂」○慍は怒を含みむっとする義、怒より輕し、憤に近し。論語「人不レ知而不レ慍」○悶·懣は二字同じ、心に煩鬱して、氣のもやもやする義、鬱悶·煩懣と用ふ。○恚は恨み怒るなり、怒の跡へ殘る氣味あり。○嗔は盛に怒氣の目元に見ゆるなり。○嗔は氣を盛んにして怒るなり、瞋に近し。○愾は恨み怒るなり。左傳「敵二王所一レ愾」○艴はいかる顏色なり。孟子「曾西艴然不レ悅」
怒りて腹をふくらかしてゐるかへるに敬禮するは其の勇氣を愛するが故なり。越王句踐が吳を伐つ志ありしにより士氣を振起せんとてなしたる故事。韓非、內儲說「越王慮伐吳、欲人之輕死也、出見怒蛙、乃爲之式、從者曰、奚敬於此、王曰、爲其有氣故也、明年請以頭獻王者、幾十餘人」
いかる。漢書、外戚傳「──不食」=忿恚
いかれるこころ。
いかりうらむ。古樂府「來歸相──、伹坐觀羅敷」
たけりほゆる。張耒文「千仭之水(中略)排以巨峽、道以高楚、而後──、吼聲震百里」
いかりさけぶ。杜甫詩「八月秋高風──」
いかれるけしき。吳越春秋「見敵而有──」
いかりたけりたる獅子と、のどのかはける千里の馬。草書の迅疾なる形容。唐書、徐浩傳「草隸尤工、世狀其法、曰怒猊抉石、渴驥奔泉云」
奮ひいかりてうつ。孔子家語「孔子曰、鍾之音、怒而擊之則武」
いかれることば。後漢書「不聞──」
いかりせむ。唐書、杜黃裳傳「醫者悞進藥、疾遂甚、終不──」
いかりかたる。蔡邕文「?嘖──、與人相拒」
たけり激するみづ。韓愈詩「──忽中裂、千尋墜幽泉」
草木が勢はげしくもえいづる。奮ひ生ずる。莊、外物「春雨日時、草木──」
たけりたつなみ。孟貫詩「江上秋風捲──」=驚濤·怒浪。
大聲にていかりさわぐ。歐陽修詩「洶洶若──」
はりきれるやうにふくれる。「頸毛──」
たけりみなぎる。葉適詩「──爭茅竹」
たけりたつうしほ。蘇舜欽詩「好約長吟處、霜天看──」
○肥えふとりて勢よき馬。後漢書、注「──謂馬之肥壯其氣憤盈也」○いかれる馬。
いかりののしろ。黃庭堅、蘇子瞻像贊「嬉笑──、皆成文章」=怒詈。
いかりてさかだつかみ。宋濂、秦士錄「──上衝」次條參看。
はなはだしくいかれる狀。史、藺相如傳「卻立倚柱、怒髮上衝冠」怒にて句すべきを、古來誤讀して怒を髮の形容詞とす。
ひぢを奮ひ張る。荘子「猶螳螂之──以當車轍、則必不勝任矣」=奮臂。
齒をむきだす。張耒詩「目光烱雙射、──呀欲受」
はげしく飛びちるしぶき。文徵明詩「──灑空經雨急」
さかまくあらなみ。圖畫見聞錄「善爲驚濤──」=怒濤。
いかりののしる。吳志、凌統傳「──統及其父操」=怒罵。
甲に向ひていかりしことを、てにうつさず。やつあたりせず〔論、雍也〕
怒りたる心をいつまでも胸中に包藏せざる義。孟、萬章「仁人於弟也、───焉、不宿怨焉、親愛之而己矣」
ハ [禡]
○おそる(懼)「懼─」「畏─」「驚─」○おそらくは、おほかた。僧浩溪詩「江邊─有梅花發」
同訓異義
オソル 怕·恐·懼·畏·怖等の別は恐(次畫)の條を見よ。
おそる。薛能詩「嬌養翠娥無──、插人頭上任風吹」
百日紅 サルスベリ の異名。
ハウ ヒャウ [庚]
○こころがせく(心急)○ただし(直)
忠直なる貌。楚辭、九辯「心──兮諒直」
①ヒ [未]
②フツ [物]
③ホツ [月]
④ハイ [隊]
通音フツ
①いかる、むっとする。○心安からず。
②ふさぐ(鬱)氣がむすぼれる。
③もとる、たがふ。(悖)
④みだる(亂)=誖。
いかる。唐書「太后方──」
もとりたがふ、怫は亂る。史、太史公自序「五家之言──」
心がふさぐ貌。氣がむすぼれる。魏樂府、苦寒行「我心何──」=鬱怫·弗鬱·沸鬱。
岀でがたき貌。陸機文「沈辭──、若游魚銜鉤、而出重淵之深」
忿る貌。莊、天地「──作色」=艴然。
もとる。唐書、韋臯傳「禮讓行于殊俗則──者化」=悖戾。
ヒツ [質]
あなどる(慢)みだら。
あなどり亂るる貌。詩、小雅「曰旣醉止、威儀──」=媟嫚。
フ [遇]
○おそる、おそれ(惶懼)「畏─」「恐─」「驚─」○をののく。○おどす、おどかす(嚇)恐嚇する。後漢書、第五倫傳「詐─愚民」
同訓異義
オソル 怖·恐·懼·畏等の別は恐(次畫)の條を見よ。
おそれる。庾信賦「顧望囘惑、心情──」=畏怖。
おそれおどろく。司馬相如喩巴蜀檄一單于──」
驚き飛ぶはと。梁簡文帝文「──獲安、窮魚永樂」佛德の蟲魚に及ぶをいふ。
おそれてむなさわぎす。後漢書「征營──、肝膽塗地」
おそれをののく。魏志「──氣索、足委地不能起」
おそれる。李密、陳情表「臣不勝犬馬──之情」=怖畏·惶恐。
おそれる。徐陵文「遠邇敬欣、華夷──」=怖懼·怖懾。
おそれてひれふす。
おそれてひっくりかへる。宋玉、神女賦「神心──」
おそれおののく。後漢書「怨隙竝興、宗親──」
ヘイ ハウ [梗]
うれふ(憂)
うれふる貌。詩、小雅「未見君子、憂心──」
ヤウ アウ [陽]
通じて鞅に作る
○うらむ(悵)情が滿足せず、心に服せず。○あきたらず。
心滿足せず、たのしまざる貌。史、淮陰侯傳「居常──」漢書には鞅鞅に作る、通ず。
心たのしまず。心に不平をいだく。杜甫詩「江洲稍疏散、風景開──」
心むすぼれてこころよからず。=鬱怏。
①レイ [靑]
②レン [先]
①さとし、かしこし、あきらか(心了黠)
②あはれむ。=憐。
かしこきうまれつき。
さとし、慧黠なり。朱淑眞詩「始知──不如癡」=伶俐·靈利·慧敏。
〔國字〕 こらへる。○堪ふ、忍耐する。○ゆるす、人の罪をかんべんする。
6畫
イ ケイ [寘]
佛 は皆イの音
○いかる、いかり(怒)○うらむ、うらみ(恨)「嗔─」「瞋─」
同訓異義
イカル 恚·怒·忿·憤·慍等の別は怒(前畫)の條を見よ。
怒りてあせかく。又、其の汙。唐書、張建封傳「──不自處」
いかりうらむ。徐陵文「反爲──、妄相陷辱」=恚恨。
いかりうらむ。=忿恨。
うらみいかる。晉書、孫登傳「性無──、人或投諸水中、欲觀其怒、登旣出、便大笑」
怒りうらむ。望は怨望。後漢書、楊震傳「震大臣、不服罪、懷──」=恚恨·怨望。
いかる。魏書、崔光傳「終日怡怡、未嘗──」=恚怒。
甚だしくいきどほる。應瑒文「瞋目──、覆局傾潰」
いかりて心が狂ふ。
イ [支]
○よろこぶ(悅)通じて夷に作る。○たのしむ(樂)
悅(心部七畫)の俗字。
オン [元]
○めぐみ(惠)「天─」「君─」「皇─」「主─」「厚─」「洪─」「鴻─」「舊─」「報─」孟、梁惠王「今─足以及禽獸」○めぐむ、いつくしむ。詩、豳風「─斯勤斯」○いつくしみ(愛)うるほひ(澤)○いたむ(隱)
いつくしみ。漢書、禮樂志「──寖薄」
あつきめぐみのこころ。唐書「宣布天子──、遠近惟服」
めぐみと、るくゎうと「──竝行」
なさけをかけてなぐさめる。後漢書「因數召見加──」
なさけを以ていざなふ。後漢書、桓譚傳「旣無重賞以相──」
おまねぎ、御招待、他より招かれたる敬語。庾信文「昨蒙──、曲賜絲布」=寵招。
○なさけ。おかげ。徐陵文「如雲如雨、天下蒙其──」○君のめぐみが子孫にまで及ぶにいふ。
なさけをかけられし光榮。李白詩「願雪會稽恥、將期報──」
なさけとあだと。陳泰詩「百年富貴誰能免、錦幄彤庭語──」=恩讎。
君のたまはるめぐみのさかもり。庾肩吾詩「接醴侍──」
己の爲めにする所ありて人に惠を施す、恩をきせる。唐書、裴耀卿傳「我知其不──」
いつくしみの心を廣くおし及ぼす。漢書、主父偃傳「願陛下令諸侯得──分子弟以地侯之」
恩惠を受けたるを謝する。通典「官已受成、皆殿庭──」
人民に仁德を施して其の心をひきよせる。孔叢子「────、修禮鄰國」
恩惠がひろくゆきわたる、覃は及なり。謝莊、赤帝歌「庶物長咸殷阜、──四溟被九有」
ありがたく賜ひしやすみ、假は暇違書、謝靈運傳「蒙賜──、暫違禁省」=恩暇。
前條に同じ。
いつくしみ、よしみ。周禮、注「禮而遣之、所以結──也」=厚情。
ひいき、いつくしみめぐむ、倖は幸。唐書、蕭至忠傳「──私惠也」=寵愛·恩顧。
なさけある義理。互に愛情を以て相結ぶをいふ。晉書、郄鑒傳「素有感其──者」
一家內のことは恩愛を主とす、故に義を蔽ひかくす。禮、喪服四制「門內之治───、門外之治、義斷恩」
恩義に同じ。
恩讎に同じ。
ふるきよしみ。後漢書、孔融傳「高明祖父、嘗與僕有──乎」
○めぐみて物を與ふ。○多年勤續して職を辭したる官吏に、終身政府より給與する金。
あたたかきめぐみ。蘇舜欽詩「令嚴山石烈、──春色浮」=恩光。
ありがたきあしらひ。張說詩「不作邊城將、誰知──深」
なさけぶかきをしへ。後漢書、鄧隲傳「追感太后──」
仁德をもて民をみちびく。なさけを加へて民をなづける。後漢書、宋均傳「吏民思均──」
○草木が春のめぐみを受くる。黃庭堅詩「桃李終不言、朝露偕──」○君のめぐみ、君恩。王惲詩「百年蓬蒿開圭竇、一日──照士林」
めぐむ、めぐみ。南史、王志傳「淸謹有──」=仁惠。
あつく目をかける、眷は顧。北史、李彪傳「司文東觀、綢繆──」=恩顧·恩倖。
めぐみて目をかける。韓愈詩「坐蒙──重、畢命守堦墀」=恩眷。
ありがたきかきつけ。張說文「降──于雲露」
恩を受けし先生。
ありがたきたまもの。唐書、李晟傳「每宴樂──使者、相銜於道」=恩錫。
なさけと、あだと。白居易詩「一彈指頃報──」
恩を受けし者には恩を報い、あだにはあだを以て報いることをはきはきとするは小人の心なり。呂氏童蒙訓「────、此四字、非有道者之言也」
恩になりし人、己が恩惠をうけし人。
めぐみて罪をゆるす。韓愈詩「前日遇──、私心喜還憂」
いつくしみ深き心、ねんごろなる愛情。吳少微詩「長夜泣──」
めぐみてとりもつ。五代史、馮玉傳「願得持晉玉璽、獻契丹、以冀──」
襃美としてたまはる。後漢書、彭寵傳「俱有重功而──竝薄」
なさけによりてかる、人より物をかるをいふ敬稱。=拜借。
ありがたきたまもの。隋書、竇榮定傳「上數幸其第、──甚厚」=恩賜。
めぐむ。めぐみ。周書、宇文護傳「賴皇齊──、差安衰暮」
ありがたきみことのり。張籍詩「特承──新門戟」
めぐみ。澤はうるほひ。史、律書「──加海內」=恩惠。
○めぐみ。地は無意味の助辭。揮麈後錄「言之則有負──」○ 國 鎌倉時代に將軍又は大名が、其の臣下に、祖先以來の功を賞して與へし土地。
あはれみてかはゆがる。後漢書、召馴傳「──甚崇」=恩倖。
佛 父母師長の稱。大藏法數「和尙阿闇梨、生我法身者、父母生我肉身者、此四名──」
なさけある處置、特典。韓琦文「被──之特優、顧人言而甚愧」
めぐみ。なさけ。漢書、高帝紀「施──賜民爵」=恩惠。
恩惠に負く、恩を受けて何とも思はぬ。李陵、答蘇武書「陵雖──、漢亦負德」
天子のめぐみ。開天遺事「帝曰、檻前盆池魚數頭、鮮活可愛、李林甫曰、賴陛下──所養」杜甫詩「拜舞銀鉤落、──錦帕舒」=恩光·恩澤。
君のめぐみ。張良詩「──及殊方」=恩澤。
人になさけをかけること深ければ、卻りてうらまるるに至る。亢倉子「─────、愛多則憎至」
めぐみしたしむ。柳宗元文「周德──」
めぐみ安んずる。晉書、劉曜載記「妾少養于叔、──甚隆」
幼稚園にて幼兒を敎ふる玩具。父母の恩賜の物の義。
あはれみて目をかける。北史、魏宗室元暉傳「侍中盧昶亦蒙──」=恩顧·恩眷。
なさけあるおほせ。程鉅夫詩「君承──住天台」
いつくしみやしなふ。後漢書、楊厚傳「懼然改意、──加篤」
ありがたきたまもの。宋史、大食國傳「俟其還、優加──」
めぐみをうける。
恩詔に同じ、綸は綸言。蘇軾詩「適見──臨定武」
臣下に恩を施して禮遇する義。後漢書「自是──愈篤」
カイ 力ツ [卦]
うれひなし(無愁貌)平氣で居る。ゆるがせにする(忽)孟、萬章「公明高以孝子之心、爲不若是─」公明高は、舜の如き親孝行の人が親に見すてられて、決して此の如く平氣でゐることはなしと思ひし義。
カゥ [效]
こころよし(快)孟、公孫丑「於人心獨無─乎」
カク [藥]
一に、?に作る
つつしむ。つつしみ(敬·謹)「儼─」「忠─」「廉─」詩、商頌「執事有─」
○つつしみてつとめる。國語「朝夕──、守以惇德、奉以忠信」=勤恪。○ 國 カクゴンカクゴ 昔、攝家又は貴族の家人より登用せし侍。又、鎌倉·室町時代、營中の雜役に服せし吏。
つつしむ。つつしみ。書經「先王有服、──天命」
つつしむ。宋書、謝晦傳「──夙夜」=敬虔·恪肅。
つつしみて堅く守る。子華子「人之常情、於其所愛者、則必有──之心」
つつしむ。書經「──克孝」唐書、崔元綜傳「性──坐政事堂、束帶終日不休偃」=敬謹。
つつしむ。蜀志、後主張皇后傳「──禋祀」=恪處。
つつしみただす。金史、僕散端傳「──乃心、式副朕意」
つつしみぶかくして、さとくすばやし。謹愼にして敏捷。唐書、源乾曜傳「性謹重、其始仕已四十餘、歷官皆以淸愼──得名」
つつしみはげむ。劉崇文「進士已來、──無替」
カフ [洽]
○あたかも(適當)ちゃうど。杜甫詩「野航─受兩三人」○心を用ふる。○ねんごろなり。○──は鳥の鳴く聲。杜甫詩「自在嬌鶑──啼」
ちゃうどよし。
○あたかもよし。適當。 國 ○ カツカウ かたち、すがた。○代價が割合にやすい。
鳥の聲の形容。字解參看。
あたかもよろし。=恰好。
ちゃうどよし。
キャウ [陽]
おそる、おづ(怯)
おそれおどろく。晉書、宗室傳「闔境士庶、莫不──=惶駭·驚駭·懾駭·怖駭。
おそれる貌。梁鴻詩「嗟──兮誰留」
おぢおそれる。王禹偁詩「强臣方跋扈、朝臣多──」=畏縮。
おそれみだれる。程史「騶馭皆──、不知所爲」
キョウ [冬]
○うやうやし、うやうやしくする、つつしむ「允─」「溫─」書、君奭「大弗克─上下」つつしみ、貌に在りて─と爲し、心に在りて敬と爲す。論、季氏「貌思─」○うく、たてまつる(奉)古、通じて共に作る。左、僖二七「杞不共也」
同訓異義
ツツシム 恭·謹·愼·敬·肅·恪の別は謹(言部十一畫)の條を見よ。
うやうやしくいはふ。=謹賀。
つつしみて奉じ行ふ。書、甘誓「──天之罰」
うやうやしく食を進める。朱熹文「男敏學、女──」
うやうやしくつつしむ。史、蕭相國世家「相國年老素──」=恭肅。
うやうやしくつつしむ、恭は容貌のつつしみ、敬は心のつつしみ。曲禮「君子──、撙節退讓、以明禮」孟、吿子「──之心禮也」
うやうやしくつつしむ。虔は敬。舊唐書、文宗紀「常尅己以──」=恭敬。
つつしみて誠實なり。晉書「爲人──」
つつしみてつづまやか。孟、滕文公「賢君必──禮下」
づつしみてへりくだる。後漢書、光武帝紀「陛下──克讓」=恭讓·恭遜。
つつしみぶかき士。說苑「魯有──」
○つつしみぶかき人。詩、小雅「溫溫──、維德之基」○宋以後、婦人に封贈する號、明淸の制、四品官の妻に賜ふ。
つつしむ。唐書「性──」
つつしみてへりくだる。劉琨文「──之節、臣猶庶幾」=恭謙·恭遜。
つつしむ。後漢書、鄧后傳「──小心、動有法度」=恭謹·恭敬。
うやうやしくしたがふ。白居易詩「──發至誠」
○うやうやしくうけつ」ぐ。謝靈運詩「──古人意、促裝返柴荊」○うやうやしくうけたまはる。李白詩「──鳳凰詔、倏起雲蘿中」=敬承。
つつしみてへりくだる。汲冡、周書「──是謂容德」=恭謙。
つつしみへりくだりて躁進せず。舊唐書「性──無競」
うやうやしきすがたかたち。論、季氏一貌思恭」=恭容。
うやうやしくへりくだる。樂府「容止同規矩、賓徒盡──」=恭謙。
うやうやしくきく。
つつしみてさとし。元史、姚樞傳「──而儉勤」
○うやまひやはらぐ。逸雅「所以爲──也」○つつしむ、睦は敬。=恭敬。
うやうやしくして寧靜 シツカ なり。書經「──思道」
うやうやしきやうす。禮、玉藻「手容恭」
恭(前條)の本字。
①キョウ [腫]
②キョウ [宋]
①おそる、こはがる。孟、梁惠王「齊人將築薛、吾甚─」おそれ(懼)「驚─」「惶─」「憂─」○をどす。漢書、淮陽憲王欽傳「令弟光─王」
②おそらくは、疑ひおもんぱかる、億度。史、廉頗傳「秦城─不可得」
同訓異義
オソル 恐·懼·畏·怖·怕·惶·怯·慴·讋·慄·悸·懾○恐は未來を恐るるなり、助語に用ひて、大扺此くならんと氣づかふに、恐くは此の如くならん、といふなり。○懼は恐懼·疑懼·震懼と連用す、恐怖するなり。○畏はおそあるの甚だしきなり、敬の字の義を帶ぶ、古は威の字と通用す、畏敬·畏服と連用す、敬服せる友を、畏友といふ。○怖はをどすとも訓む、わけもなくおぢおそるるなり。○怕は懼なり、俗語に用ふ。○惶はおそれあわつるなり、恐惶·驚惶と用ふ。後漢書「百姓惶擾」○怯は臆病なること。後漢書「見二小敵一怯」○慴·礱の二字同じ、恐懼失レ志也と註す。史記「一府中慴服、莫二敢起一」○慄はおそれて、ぞっとする義、竦縮也と註す、戰慄と用ふ。詩經「臨二其穴一惴惴其慄」○悸は心動くなり、むなさはぎする義。後漢書「心中動悸」○懾はおそれて氣を失ふなり。文選「猨狖失レ木、豺狼懾竄」
かしこみよろこぶ。己がよろこばしきをいふ謙辭。
おどかししかる。=恐喝。
おどかす、威力を以て脅かす。喝一に猲に作る。史、蘇秦傳「日夜務以秦權、──諸侯」=恫嚇。
おそれて心がをののく。錢珝文「揣分非次、──難安」
おそれる。史、樂書「戰戰──、善守善終哉」=怖懼·恐怖。
○おそれる。吳越春秋「諸侯怖愳皆──」=恐懼。○書簡の結尾に用ひて敬意を表する語「──謹言」
しんぱいしてあわてる。商業上の失敗などにいふ語。
おどしおびやかす。梁武帝文「更相──、以求財帛」=威脅。
他人の事を推量するにいふ敬語。
おそれつつしむ。晏子「晏子──、而不能言」
おそれいる。
おそれる。溫庭筠詩「兕觥增──、杯水失錙銖」=惶懼。
狂犬に有する一種の病毒、之に嚙まるる者、水を見れば必ず恐る、故に名づく。
おそれをののく。蕭子良啓「施物安樂、自無──」=畏怖。
おどしせまる、おびやかす。=脅迫。
おそれてへつらふ。漢書、晁錯傳「矜奮自賢、羣臣──」
おそれる。張衡詩「──若探湯」
おそれまどふ。史記「民──」
キョウ [冬]
別に忷に作る
おそる(懼)韓愈會合聯句「謫夢意猶─」
おそれさわぐ貌。=洶洶·匈匈。
クヮイ [灰]
○大いなり、志大いなり、ひろし(宏)○おほいにす。ひろくす。左、襄四「不─于夏家」夏家は夏の王室。
肥えて大いなり。北史、魏宗室傳「秦王體度──」=豐偉。
ひろくとほし。北史、刁癰傳「才識──」=廣遠。
ひろし、ひろめる。蘇軾詩「胸中幾雲萝、餘地多──」=恢弘。
大いにしてめづらし。韓愈詩「勢到衆佛尤──」=恢偉·奇異。
大いにしてめづらし。宋史「雖──譎怪自晦者、悉以名聞」=恢奇。
○大いにして衆を容 ィ るる貌。老子「天網──、疎而不失」○ゆったりしてゐる貌。莊、養生主「──乎其於遊刃、必有餘地矣」=綽綽。
ひろく大いなり。又、ひろく大いにする。公羊傳「郛者何──也」=恢廓。
○ひろくおほいにする。漢書、五丘壽王傳「陛下──祖業、功德愈盛」○心がひろく大いなり。吳志、周瑜傳「性度──」
ひろし。=恢豁。
ひろし、ひろめる。書經序「──至道、示人主以軌範」=恢弘。
心の廣やかなる貌。北周書、李遠傳「幼有器局、志度──」
大いにひろめ明かにする、闡は明なり、開なり。夏侯湛、昆弟誥「用──我令業」
ひろく、大いなり。唐書、惟貞傳「志尙──」
ひろめひらく。後漢書「──境宇」
おほいにしてすぐれる。桓子「其政──、可以爲卿相」
心が大きくひろやか。北史「鑾子仲哲性──」=豁達。
おほいにしていつはる、其の言夸大にして實なし。王坦之、廢莊論「其言詭譎、其義──、荘子之利天下也少、害天下也多」
ひろめて大いにする、廓 ヒロ めて之を大いにする。宋史「宜──堯舜道以佐明主、不應以利爲先」
○衰へたる者をもとのとほりにかへす。王惲詩「蔽遮不使前、──可立見」○失ひたるものを取りかへす。五代史、南唐世家「苟不能──內地」
衰へたる文學を盛んにする。宋史「齊家睦族、偃武──」
怪(心部五畫)の俗字。
①クヮウ [養]
②クヮウ [陽]
慌·怳に同じ
①うっとりとする、昏 クラ し、定まらず。○微妙にして測り知り難し。
②たけし(武)
○微妙にしてはかられざる貌。又、うつとりとしたる貌。老子「道之爲物、惟恍惟惚、惚兮恍兮、其中有象」○ぼんやりとして自失する貌。=惚恍。
うつとりとしたる貌。吳船錄「發常州平江、親戚故舊來相迓者、陸續於道、──如隔世焉」=恍焉。
愶(心部十畫)に同じ、協とは別字。
【
①コウ·ゴウ [蒸]
②コウ [徑]
恒は俗字
①つね(常)ひさし(久)永久に變らず。論、子路「人而無─、不可以作巫醫」○つねにする。易、恆卦「不─其德」○易の卦の名、巽下震上。
②ゆみはりづき(弦月)詩、小雅「如月之─」
同訓異義
ツネニ 恆·常·每等の別は常(巾部八畫)の條を見よ。
尋常の醫者。論衡「微病──皆巧、第劇扁鵲乃良」
時を定めてふるあめ。
つねのきまり。陳書、高祖紀「詔曰、虞官夏禮豈曰同科、殷朴周文、固無──」
佛 數の極めて多きに喩ふ、恆河は印度の「ガンジス」河〔阿彌陀經〕略して恆沙ともいふ。張陽詩「深心大海水、廣願───」
さだまりたる儀式。=常儀。
いつもかはらずひさし。易經「天地之道、──而不已也」
人のつねに口にすることば。孟、離婁「人有──、天下國家」
永くかはらぬのり。儲光羲詩「皇家有──、齋祭崇明祀」
つねにかはらぬみさを。漢書、馮參傳「參好禮儀、終不改其──」=常操。
五嶽の一、北方卽ち山西省大同府の東北に在り。周禮「幷州之鎭曰──」白虎通「北方曰──何也、陰終陽始、其道常久、故曰──」=北嶽·常山。
一定の產業 ナリハヒ 次條參看。
定まれる產なければ定まれる心なし。恆は常、產は生業。孟、梁惠王「無恆産而有恆心者、惟士爲能、若民則無恆產、因無恆心」
通常の人。戰國策「甘茂賢士、非──也」=常人。
つねのとき。韓愈文「顏色異──」=平生。
つねののり〔舊唐書〕=定式。
人のつねにとり守りて變ぜさる善心。孟、梁惠王「無恆產者、無──」
つねに變らず。柳宗元文「進止威儀、動有──」
一定してかはらざるきまり。南史「守宰祿奉、蓋有──」
○二十八宿の星の一。○地上より常に一定の位置にありと見ゆる星、太陽も其の一。惑星の對。左傳「──不見夜明也」
人の有する一定して永久變ぜざる徳。易、恆卦「不恆其德、或承之羞、貞吉」
常に一定の方向に吹く風、地球の自轉の爲めに北半球にては東北風、南半球にては東南風の吹く類。=貿易風。
いつもかはらぬしきたり。=常例·定例。
恆(前條)の俗字。
コン [願]
○うらみ、うらむ、怨よりも意强し「仇─」「遺─」「怨─」「冤─」「痛─」「憂─」「離─」「客─」○くやむ、くゆ(悔)「悔─」「羞─」自ら咎める。史、李廣傳「廣曰、羌降者八百餘人、吾詐而盡殺之、至今大─」
同訓異義
ウラム 恨·怨·憾·懟の別は怨(前畫)の條を見よ。
うらみをふくむ幽魂。晉書、皇甫謐傳「冤悲沒世長爲──」
うらみくやむ。易林「心多──」=怨悔。
うらみ怒る。論衡「言其──驅水爲濤者虛也」=怨恚。
うらみを懷きて已まざる貌。古詩「生人作死別、──那可論」
うらむ、殺は助字。
うらめしき事柄。殘念に思ふこと。
うらみのことば。朱熹詩「騷人留──」
花の姿のあはれなる形容。陸珍、虞美人花歌「────滿南園」
うらみの多き人。江淹賦「僕本──、心驚不已」
甚だうらみいたむ。後漢書、張奐傳「雖──在心、辭爵謝咎、何嗟及矣」
うらみいきどほる。唐書、段秀實傳「朱泚反、以秀實失兵、必──、且素有人望、使騎往迎」
うらみまどふ。易林「伯氏歸國、多所──」
うらみかなしむ。唐書、陳京傳「帝──曰、京與贊眞賊臣」
①シ [寘]
②シ [支]
①ほしいまま(縱)わがまま「放─」「專─」「擅─」「驕─」「暴─」ほしいままにす。
②─睢は自得の貌。又、意をほしいままにして怒り視る貌。
同訓異義
ホシイママ 恣·縱·横·放·肆·擅の別は縱(糸部十一畫)の條を見よ。
ほしいままなり。北史「不備不虞、使戎寇──」
わがままのおこなひ。
意をほしいままにして怒り視る貌。史、伯夷傳「暴戾──」
志をほしいままにする。國語「君若──、以用重耳、四方諸侯、誰不惕愓以從君命」
○ほしいまま〔唐書、張巡傳〕=放肆·放縱。○文の氣勢の盛なるをいふ。
ほしいまま。元稹詩「謝公──顚狂掾、觸處閑行許自由」=恣肆。
ほしいまま。華陽國志「大將軍維惡皓之──」
ほしいままなり。詩經、箋「羣臣──、損王之德」
ほしいままにしてあばれる。宋史一戍卒──不法、夜或焚民舍爲盜」=肆暴。
むさぼることを思ふままにする。後漢書、王常傳「負强恃勇、觸情──」=縱慾。
ほしいままにたのしむ。易林「舞蹈歡躍、──受福」
ジ ヂ [紙]
○たのむ「─險」「矜─」たのみ(賴)たよる(依)○はは(母)詩、小雅「無父何怙、無母何─」に本づく。
同訓異義
タノム 恃·負.怙·賴·憑の別は負(貝部二畫)の條を見よ。
人の我を愛して信用するをたのみとする。梁武帝歌「──如欲進、含羞未肯前」
勇氣をたのむ。莊子「方虛憍而──」=怙氣。
すくひをたのみにする。魏志、注「──不力戰」
けはしき要害をたのむ。杜甫詩「公孫初──、躍馬意何長」
たのみよる。王仁裕詩「孫劉亦──」
たのみよる。後漢書、袁安傳「自天子及大臣、皆──之」=依賴。
ジン ニン [寢]
佛 音イン
○おもふ(思念)○かくのごとし。如此の俗語「─地」
次條に同じ。
此の如く、このとほり。朱子語錄「所以弄得──」
如何に、どうして。
此の如き人。=如此人。
ジュツ [質]
一に卹に作る
○あはれむ、あはれみ(愍)めぐむ「惠─」「憫─」「優─」○相愛する、いつくしむ。周禮、地官「六行、孝友睦婣任─」○うれふ、うれひ(憂)○をさむ(收)○にぎはす(賑)すくふ(救)貧者老人などを救ひ賑 ニギ はす「救─」「存─」
同訓異義
アハレム 恤·憐·哀·憫·矜の別は憐(心部十二畫)の條を見よ。
まづしきものをめぐみあはれむ。國語「侈則不──」=恤貧。
あはれみすくふ。=救恤。
みなしごをあはれむ。大學「上──而民不倍」
うれふる貌〔左、昭十二〕
民をあはれむ。=恤民。
おどろきおそれる貌。七發「──足以駭矣」
やぶれたるをあはれむ。魏志「存亡──、自古通典」
まづしき者をあはれみめぐむ。周禮、大司徒「四曰──」
兵士をいたはりめぐむために金品を贈る、其の事務を取扱ふ所を──部といふ。
病人をあはれむ。魏志、蔣濟傳「勾踐養胎以待用、昭王──以雪仇」
たみをあはれむ。國語「在位者──之患、是以國家無違」
①シュン [眞]
②ジュン [震]
通音ジュン
①まこと(信)○たのしむ(樂)○おそる(慄)○──はおごそかにつつしむ貌(嚴謹)又、うやうやしくおだやか(溫恭)なる貌。論、鄕黨「孔子於鄕黨、──如也」又、信實なる貌。後漢書、召馴傳「德行──召伯春」柳宗元、捕蛇者說「──起而視其缶」
②にはかに(遽)○またたく(瞬)
にはか。莊、徐无鬼「──棄而走」
またたく。列、黃帝「今汝怵然有──之志」=瞬目。
おそれつつしむ、畏懼する。大學「瑟兮僩兮者──也」
ジョ [御]
○おもひやる。又、其の心、己の心を推して物に及ぼす同情心「忠─」「明─」「仁─」論、里仁「其─乎、己所不欲、勿施於人」○あはれむ。又、其の心。○いつくしむ。又、其の心。○はかる(忖)○ゆるす「寬─」「容─」「宥─」
おほめにみてゆるす、人の過失をゆるす。韓愈詩「勃然思坼裂、擁掩難──」
おもひやりの心を以て事を行ふ。左、隱十一「────、德之則也」
セイ サイ [齊]
なやむ(惱)
わづらひなやむ貌。韋應物詩「──戎旅下」
ソク [職]
○いき(呼吸)轉じて極めて短き時閒にいふ「瞬─」史、張耳傳「閒不容─」○いきをする、いきつく。論、鄉黨「屛氣似不─者」○いきながらへる(生存)「生─」○あへぐ(喘)○やむ(止)○そだつ(生長)孟、告子「其日夜之所─」ふえる、ふやす(繁育)○こども「子─」「賤─」○いこふ(憩)やすむ(休)「休─」「安─」「退─」○ねぎらふ(慰勞)○ふさぐ(塞)○やすし(安)○金の利子「利─」○太─はためいき。又大聲に歎く。
同訓異義
イコフ 息·休·憩の別は休(人部四畫)の條を見よ。○ヤム息·已·輟·止·歇等の別は已(已部)の條を見よ。
晏は安、いこひやすんず。西都賦「乘茵步輦、惟所──」
やすみふす。詩、小雅「或──在牀、或不已于行」
やすらふ貌。禮、學記「──游焉」
○巢にいこふつばめ。蘇頲詩「──歸檐靜、飛花落院閒」○やすみくつろぐ。考工記、梓人「則王以──」=宴息。
利息を受ける。周禮、注「王莽時、民貸以治產業者、──無過歲什一」
世人と交ることをやめる。陶潛、歸去來辭「歸去來兮、請──以絕遊」
○物のふえると、へると。漢書、董仲舒傳「論政事之得失、察天下之──」=消長。○消息の義、おとづれ。唐書「與軍中──相應」轉じて後世は耗の一字にて音信の義とす「音耗」
りそく。齊家寳要「倂每年──計之」=息錢。
わざはひをやむ。漢書「非天下賢聖、其勢固不能息天下之禍」=息災。
軍のいましめを解く。北史、蠕蠕傳「孝莊詔曰、陰山──、弱水無塵」
荷をおろして肩をやすめる。左、襄二「請──于齊」
佛 佛の力にて一切のわざはひを止める。轉じて、身に病災なき義。
やみておこらず。北史、江悅之傳「郡中震肅、奸劫──、政爲雍州諸郡之最」
秦の武王が讒言を信ぜざることを甘茂と誓ひし秦の地名、今の湖北江陵縣の南。轉じてかたきちかひの義に用ふ〔戰國秦策〕
あへぐ。戴良、登堯峯詩「──倚茂松、濟勝犯零露」
りそくのぜに。史、孟嘗君傳「得──十萬」=息銀·子金。
己の生める男子、むすこ。曹植文「封臣──苗、爲高陽鄕公」=子息。
息は生、己の生める女子、むすめ。史、高祖紀「臣有──、願爲季箕箒妾」季は高祖の字。
とどまり休む。南史、蕭琛傳「或入春令、便得──」=休息。
そしりを止 トド める。文中子「何以──」=止謗。
子のよめ。=媳婦 俗 子婦。
戰をやめる。戰國策「甘茂欲──」
たみを安息せしむ。左傳「晉侯歸謀所以──」
利子。唐書「倍稱──」=息銀。
やすみとどまる。劉向新序「鴻鵠嬉遊乎江漢、──乎大沼」
タ [麻]
─傺は心未だ定まらず。又、志を失ふ貌。
チ [紙]
耻は俗字
○はぢ、はづ(慚)不正の意思行爲に對する良心のとがめ「愧─」「廉─」「深─」孟、盡心「─之於人大矣」○はづかしむ。左、昭五「─匹夫、不可以無備」
同訓異義
ハツ 恥·辱·忝·愧·媿·慙·怍·羞·忸·怩·恧·僇·赮·詬○恥ははぢ、はづると訓む、心に恥かしく思ふ義、重き字なり。論語「行レ己有レ恥」中庸「知レ恥近二乎勇一」○辱は、はづかしめなり、榮の反、外聞惡しきをいふ、轉じて賓客應酬の辭となりかたじけなしと訓む、降屈の義なり、拜二命之辱一とは、貴人の命の降るを拜する義なり。曲禮「孝子不レ登レ危、懼レ辱レ親也」○忝は辱に近し。詩經「亡レ忝二爾所生一」○愧は己の見苦しきを、人に對しはづるなり、醜の字の氣味あり、媿に作る、同じ。韓文「仰不レ愧レ天、俯不レ愧レ人、內不レ愧レ心」○慙は慙愧と連用す、愧と同じ、はづると訓む、はぢとは訓まず。孟子「吾甚慙二於孟子一」○怍ははぢて心を動かし、色を變ずるなり。禮記「容母レ怍」○羞ははぢてまばゆく、顏の合せがたきなり、婦女子などの、はづかしげにするなどに多く用ふ。○忸·怩·恧の三字、共に羞づる貌。○僇は大辱なり、さらしものになるなり。○赧ははぢて赤面するなり。○詬は惡口せられてはづる義、言に從ひ垢の省に從ふ。
はぢてなげく。南史、王蘊傳「薀不爲羣從所禮、嘗懷──」=慙慨。
骨盤の前下部を構成する一體二支のほね。
はぢ、はづかしめ。論、學而「恭近于禮、遠──也」
はぢを知りて正しき道に至る、格は正〔論、爲政〕
ヂク [屋]
はづ(慙)─然ははづる貌。
はづる貌。漢書「朕甚──」=恧然。
はぢてちぢかまる。唐書、李石傳「士良等──不得對」
テゥ [蕭]
通じて窕·佻に作る
○うすし(偸薄)○かるし(輕)
テン [鹽]
○しづか(靜)莊、繕性「以─養志」○やすし、やすらか(安)「安─」「文─武嬉」平氣である。
同訓異義
シツガ 恬·閒·閑·靜·寂等の別は閒(門部四畫)の條を見よ。
しづかにやすし。漢書「心旣和平、其性──」=靜安。
やすらかにしてたのしむ、安靜にして逸樂する。國語「今大夫老、而又不自安──」
心しづかにしてくだくだしからず。陳書「性──善隸書」
世がやすらか、太平無事の世。王逢詩「──屬累朝」
しづかにして心むなし。嵆康、琴賦「──樂古、棄事遺身」=虛恬。
しづかにして大いなり。晉書「戶詠──之辭」
心がやすらかにひろし。晉書、梁武昭王李暠傳「以表──之懷」
心靜にして淸し。
しづかにして安し。宋史葛宮傳「天性──、年五十、忽上章、致仕」=恬安。
やすくしづか。北史「性──不慕榮勢」=恬靖。
安靜にして無爲なる貌。荀、彊國「──如無治者」
やすんじおこたる。宋史、高宗紀「──猥懦、坐失事機」
しづかに安し。白居易詩「身心轉──、煙景彌淡薄」=恬安。
心安靜にしてへりくだる、退は謙退。唐書、沈傳師傳「性──無競」
安靜にしてほしいまま。張華詩「安心──、棲志浮雲」
しづかにして淡泊 アツサリ =恬澹。
一切世閒のうるさき事を捨てて心を無我の境におく老子の學說。
やすらか、憺は安靜。論衡「──無欲、志不在於仕」
しづかにして淡泊。功名などの欲の少きをいふ。張華詩「──養玄虛」=恬淡。
平氣にして少しも不思議と思はず。漢書、賈誼傳「至於俗流失、世壞敗、因─────」
平かにして浪なし。拾遺記「滄海爲之──」
慾少くしづかなる貌。晉書「少而──」=淡泊·恬漠。
心しづかにして欲すくなし。賈誼賦「眞人──兮、獨與道息」=恬靜·淡漠。
安くしづか。歐陽詹文「求諸──則常寧」=靜謐·安靜。
やすんじて性をやしなふ。莊、繕性「以──性」圖畫見聞誌「廉退──」
やすんじよろこぶ。支遁詩「觸思皆──」=安適。
心がしづかにしてゆるやかなり。北史、楊愔傳「此兒──、有我家風」
恬波に同じ。王安石詩「利行有阨轍、勢涉無──」
しづかなる魚。晉書「浩波振壑、川無──」
①トウ [東]
②トウ [送]
①いたむ(痛)○うめく、呻吟。
②─喝は虛辭にてまどはし、おどす。=恐嚇。
おどす。字解參看。=恫愒·恐喝。
疑はしき辭を以て人をおどす。史、蘇秦傳「──虛喝、驕矜而不敢進」
いたみおそれる。史、燕世家「國事皆決於子之、三年國大亂、百姓──」=疑懼。
いたむ。瘝は病む。書、康誥「嗚呼小子封──乃身、敬哉」=恫矜。
かなしみいたむ、悲傷する。恫も痛。
ボウ [尤]
通じて、牟に作る
むさぼりをしむ(貪愛)
むさぼりをしむ貌。荀、榮辱「───惟利之見」
ヤゥ [漾]
○つつが、人をかむ蟲、古代草居の時、人多く此の蟲の害を蒙る、故に互に─なきかと問ふ。風俗通「噬蟲、能食人心、古者草居、多被此毒、故相問勞曰、無─」○轉じて、うれひ(憂)又、やまひ(病)の義とす「微─」「疴─」
しんぱい。
やまひ。
無事なり。戰國策「趙威后問齊使曰、歲亦──耶、民亦──耶、王亦──耶」=無憂。
悋(心部七畫)に同じ。
戀(心部十九畫)の俗字。
7畫
イウ [尤]
○とほし(遠)はるか(遙)「─遠」ながし(長)「─久」○うれふ(憂)○おもふ(思)詩、周南「─哉─哉」○──は行く貌。又、かぎりなくひろく遠き貌。又、閒暇ある貌。又、憂ふる貌。
遙かにして分明ならず。荀、議兵「善用兵者、感忽──、莫知其所從出」
○憂ふる貌。詩、小雅「──我思」○遠き貌。詩、鄘風「驅馬──」○はてなき貌。詩、唐風「──蒼天、曷其有極」○行く貌。詩、大雅「──南行」○閒暇 ヒマ ある貌。詩、小雅「──旆旌」○多き貌。後漢書、朱穆傳「──者皆是」
國 ゆったりとしてのんきなる貌。
○はるかにとほし。詩經「山川──、惟其勞矣」○久し〔中庸】
はるかにへだつ。晉書「江山──、朝宗無階」
國 大嘗會の時、新穀を奉る地として選定せらるる二國中の一、其の新穀を左の祭場に祭られるもの。主基 スキ の對。=由基·悠忌。
長くひさし。中庸「──所以成物也」
はるかにとほし。又、ひさし。陸機、思親賦「悲桑梓之──、愧蒸嘗之弗營」
おろそかにして歲月を過ごす。淮南子「我誕謾而──」
心のはるかなる貌。李羣玉詩「處世心──、於時思索然」=悠焉。
ゆったりとしたる貌。陶潛詩「采菊東籬下、──見南山」=悠焉。
ながし。久し。宋書、孝義傳「涉春夏、日月──」
思ふ心の長くして、盡きざる義。詩、周南「──·──、輾轉反側」
はるかにとほし。陶潛詩「良朋──、搔首延佇」=悠遠。
はるかに遠し。李德裕詩「故人在鄕國、歲晏路──」=悠遠。
長く遠き貌。蕭子暉、冬草賦「日──而少色、天陰霖而四下」錢起詩「世事──春夢裏、年光寂莫旅愁中」
日の沒する貌。潘岳、秋興賦「天晃朗以彌高兮、日──而浸微」
イフ オフ [緝]
通じて邑に作る
○うれふ(憂)「怏─」「鬱─」○心安からず。楚辭、天問「武發殺殷何所─」
心むすぼれて安からず。怏は不滿。袁裒、遠遊聯句「君行步飄颻、我滯心──」=怏悒。
心むすぼれてうれふる貌。大戴禮、曾子立事「君子終身守此──」=邑邑。
心うれひて氣がふさぐ。
心安からずしていきどほる。應瑒文「──不逞」
エツ [屑]
古、說に作る恱は俗字
○よろこぶ、よろこび(喜)「喜─」「愉─」「怡─」氣に入る。○たのしむ、たのしみ(樂)「和─」○したがふ(服)「─服」慕ひよろこぶ。
同訓異義
ヨロコブ 悅·喜·欣·歡·懌等の別は喜(口部九畫)の條を見よ。
よろこびかはゆがる。韓非子「夫人鄭袖知王──之也、亦──之甚于王」
よろこぶ。詩經「彤管有煒·──女美」
よろこびたのしむ。魏文帝詩「量宜運權略、六軍咸──」
よろこぶ。又、よろこび。=喜悅·悅懌。
よろこぶ。應貞詩「率士咸序、人胥──」=欣悅·悅懌。
よろこびもてあそぶ。晉書「三都賦成、安平張載、濟南劉逵、咸皆──、爲之訓詁」
顏色をよろこばして氣に入るやぅにする。晉書「承顏──、寵愛日隆」
心からよろこびしたがふ。書、武成「萬姓──」
よろこびしたふ。宋史、三佛齊國傳「──皇化」=欣慕·歡慕。
めをよろこばす。韓詩外傳「衣服容貌者、所以──也」
よろこびたのしむ。後漢書、何敞傳「恩澤下暢、黎庶──」
よろこびたのしむ。諸葛亮文「三軍──、士卒畏懼」=悅豫。
①エン [先]
②ケン [霰]
?は俗字
①うれふ、うれひ(憂)「煩─」○いかる、いかり(怒)怒を含む、「忿─」
②いらだつ(躁急)「輕─」=懁。
いかる。
いかりうれふ。
いかりうれふ。邑一に悒に作る。後漢書、邊讓傳「邕竊──」邕は蔡邕。=憂憤。
うれふる貌。詩、陳風「寤寐無爲、中心──」=悒悒。
いかる。杜牧文「胸臆閒不以──是非貯之、邪氣不能侵」=忿悁。
①カン [翰]
②カン [旱]
①あらし、氣があらあらし、たけし(桀)「雄─」○つよし(强)いさまし(勇)「勇─」「彊─」するどし(銳)「精─」「僄─」○きばやし、せまし。
②きびし、氣ばやし(性急)○つよくもとる(强很)
たけくするどし。唐書、吳少誠傳「甲蔡地少馬、乘騾以戰、號騾子軍尤──」
あらくしてもとる。宋史、曹利用傳「性──」
わるづよし。魏志、烏丸傳、注「隨水草放牧、書少賤老、其性──」
氣づよくして妬 ネタ む。後漢書「──不得畜媵妾」
心あらく氣せわし、性急なり。
あらくしておごる。蘇軾文「吁鬼章世──」
わるづよき酋長 ワルモノノカシラ 宋史「有──臨陣甚武」
氣づよき妻、凶頑なる妻。南史、劉峻傳「余有──、亦令家道轗軻」
性急にしておろか。荀子「──好鬬」
あらうま。侯鯖錄「見一──」
心あらき女。聽松堂語鏡「──持齋禮佛、不如減奴婢之鞭箠」
藥性の猛烈なる者、劇藥〔史、倉公傳〕
あらあらしくしていさまし。又、其の者。史記「三晉之兵、素──、而輕齊」
わるづよくしてもとる。唐書、楊於陵傳「──貪肆」=猛戾。
キ ケ [微]
○おもふ(念)○ねがふ(願)○かなしむ(悲)
①クヮイ·ゲ [隊]
②クヮイ·ゲ [賄]
①くゆ、くやむ、前非を悟りてくやしく思ふ「後─」「追─」○うらむ。
②くい(吝)しくじり、とがめ(咎)論、爲政「言寡尤、行寡─」○易の外卦。內卦を貞といふの對。○ 國 クヤミ 死を弔ふ。又、其の贈物。
くいあやまち。韓愈詩「庶幾遺──」論、爲政「言寡尤、行寡悔」に本づく。
くい改める、艾は治。宋史、李燾傳「──無訟」
わざはひ。あやまち(過失)歐陽修文「守靜韜光、以遠──而已」
あやまちをくいる。陳琳文「懷恩──」
あやまちをくいる。劉基詩「步止辭跲躓、語止絕──」
くいさとる。白居易詩「壯歲不歡娛、長年當──」
くいうらむ。神仙傳「忽焉不知所在、帝甚──」
前非をくゆる心。中說「西風樂極悲來、其──之萌乎」
非をくいてわびる。魏書、魏溥妻房氏傳「須其──乃食」
くいあらためる。
くいはづ。顏氏家訓「赧然──」
あやまちをくゆ。魏收文「容其──、棄其瑕穢」
○くいうらむ。易經「──者憂虞之象也」=悔恨。○少しのあやまち。法言、修身「──不至」=小疵。
とがめ。北史、張普惠傳「自貽──、沈淪幽壤」
①クヮイ [灰]
②リ [紙]
①たはむる。=詼。○人名、戰國の時、魏の文侯の臣に李─あり。
②うれふ(憂)○かなしむ(悲)○やむ(疾)
クヮン·ゲン クヮン [諫]
○うれふ、うれひ(憂)「憂─」「後─」○やむ、やまひ(疾病)「疾─」○わざはひ(禍)「禍─」「凶─」「水─」○わづらひ。○くるしみ(苦)○あし(害惡)
同訓異義
ウレフ 患·愁·憂·恤·病等の別は愁(心部九畫)の條を見よ。
うれひ「內憂外患」=憂患。
わざはひ。阮籍詩「多財爲──」
目を病む。北史、韋孝寬傳「末年──」
うれひいむ。魏志「將士鈔掠、紹──之」
とがめ。道德指歸論「物類託之、無有──」
くるしみ。晉書、涼武昭王傳「賞勿漏疎、罰勿容親、耳目人閒、知外──」=疾苦。
わざはひ。=禍患。
うれへくゆ。易林「日月之塗、所行必到、無有──」
病人。
うれへいたむ。南史、蕭思話傳「隣曲莫不──之」
うれひ。なやみ。禮、儒行「──相死也」
まづしきにくるしむ。盧綸詩「始悟達人志、患名非──」
身體中の病のある所。
わざはひ。梁武帝賦「──已除、障礙亦淨」
ゴ [遇]
通じて寤に作る
○すっかりさとる(會得)さとり(覺)惑が解ける「覺─」「頓─」「解─」○さとす、さとらせる。○さとし、のみこみが早い「穎─」「英─」
同訓異義
サトル 悟·覺·喩·曉·了の別は覺(見部十三畫)の條を見よ。
心にさとりよろこぶ。柳宗元詩「──心自足」
さとる。元稹詩「──誓不惑、永抱胎仙居」=覺悟。
虛無の理をさとる。沈佺期詩「沈思始──」
さとりくやむ。後漢書、崔駰傳「懿氓蚩之──兮」
○さとりよきたち。趙師秀詩「能文兼──、前是惠休身」○哲學にて事物を直觀によりて理解し、又、理解を結び合はする心の作用。
佛 禪の道をさとる。范咸詩「華省仙郞早──」
佛 佛道の眞理をさとる。又、其のをしへ。
すっかりさとる。=悟了。
さとりをひらく。
さとりをひらく。
すっかりさとる。
ゴ [遇]
○あざむく(欺)○あやまる(謬)=誤。○まどふ(惑)○うたがふ(疑)
コン [阮]
まこと(誠)まごころ、一すぢに思ふ誠の心(志純一)「愚─」「誠─」
至りてまことにしておろか。ばか正直、愚直。
ねんごろに誠なる貌。又、志の純一なる貌。楚辭、卜居「──款款、朴以忠乎」
まごころありてねんごろ。吳澄詩「──問安眠」=誠懇·懇悃。
まごころありてねんごろ。款は忠誠。悃悃參看。=悃愊。
まごころ。劉向、九歎「思忠正之──兮、招貞良與明智」=悃愊·懇誠。
ひたすらのぞむ。=懇望。
まごころ、至誠なり。漢書、劉向傳「發憤──、信有憂國之心」=悃款·悃誠。
シツ シチ [質]
○ことごとく、みな(皆)のこらず、つぶさに。○つまびらかに、つくす(詳盡)「詳─」○そらんじきはめる(諳究)○すべてしる(盡知)「審─」
同訓異義
コトゴトク 悉·盡·殫·單·畢○悉は逐一に、又、ありたけと譯し、詳悉と熟す、盡の字より重し。史記「乃悉取二其禁方、一盡與二扁鵲一」○盡は竭也と註す、のこらずと譯す「周禮盡在レ魯」の如し。○殫は盡也と註す、盡の字と同じくして稍重し、古文に單に作る、同字なり、之を盡して其の極に至る義。○畢は竟也と註す、そろひ終る義「同軌畢至」の如し。○ツクス悉·盡·殫·竭·旣等の別は盡(皿部九畫)の條を見よ。
すべて、みなのこらず。正法念經「──百味、與天同等」
ことごとくはかり問ふ。咨一に諮に作る。諸葛亮文「事無大小、悉以咨之」
十分に心をつくす。鬼谷子「不──見情、不能成名」
みな、のこらず。=盡悉。
釋迦如來の幼名、頓吉と譯す〔无量壽經私記〕=悉達多。
梵語、成就の義、梵語の母韻。轉じて、梵語又音韻。舊唐書、天竺國傳「其人皆學──章」
ことごとくしる。
全力を盡す。漢書、東方朔傳「──盡忠、以事聖帝」
ショウ ソウ [腫]
通じて竦·聳に作る
おそる(懼)ぞっとする「震─」「慚─」「惶─」おそれあはてる(惶遽)
おそれてむなさわぎする。法書要錄「──無寧」=惶悸。
おそれる。書、大禹謨、疏「蘷蘷然──、齊莊戰栗」
おそれはづ。王融文「──之情、夙宵兢惕」=慙怍。
おそれはづ。崔行先文「內悚外慙、不知所措」
ぉそれる貌。魯靈光殿賦「魂──其驚斯」=悚然。
おそれてぞっとする貌。=悚悚。
おそれる。北夢瑣言「裴益──」=畏惕。
おそれふるふ。晉書、王濟傳「況臣脆弱、不敢──」
①セウ [篠]
②セウ [嘯]
①うれふ(憂)○さびしく靜か。白居易、琵琶行「東船西舫─無言」
②きびし、はげし(急)
同訓異義
ウレフ 悄·愁·憂·患·恤等の別は愁(心部九畫)の條を見よ。
憂ふる貌。兮は助辭。詩、陳風「勞心──」
はげしくきびしき貌。つんとして親まざる貌。韓愈、與陳給事書「──其言、若不接其情」
かなしみいたむ。江淹賦「──成憂、憫然自憐」=慘愴·悲愴。
○しほしほと憂ふる貌。詩、鄘風、柏舟「憂心──」=悄然。○靜かなる貌。曹唐詩「樹影悠悠花──」
うれふる心のしきりなる義。潘岳、笙賦「訣厲──、又何磬折」=凄切。
憂ふる貌。=悄悄。
セン シュン [先]
○あらたむ、前非を悔い改む。○やめる(止)○つぐ(次)○まこと(信)=恂(心部六畫)○──は謹厚の貌。史、李將軍傳「──如鄙人」
同訓異義
アラタム 悛·改·革·更の別は改(攴部三畫)の條を見よ。
こころをあらためる。北史、張彝傳「猶無──」=改悛。
悛改に同じ。魏書、袁飜傳「數年之中、──非一」
心を悔い改める。書、泰誓「惟受罔有──」
かたちをあらためる。又、過を悔いたる意態。韓非子「孫子無辭、亦無──」
ソウ [東]
別に怱に作る匆は俗字
にはか(遽)いそぐ、あわてる。
あわてる。南史「至是朝士勸進、實爲──」=倉卒。
○あわてる(急遽)貌。晉書、王彪之傳「無故──、先自猖獗」○あきらか(明)呂覽「──乎其心之堅固也」
いそがし。歐陽修文「卽欲爲一書以賀、多事──、未能也」
①テイ [霽]
②テイ [薺]
①兄弟の仲よし(善兄弟)「友─」「不孝不─」○善く兄長に順ひつかへる、弟が兄を敬愛する「孝─」
②和ぎよろこぶ「愷─」
兄弟なか、又は長幼閒の情あつくむつまし。韓愈、元和聖德詩序「皇帝、大孝慈祥──」=弟友·篤友。
哲(口部七畫)の古字。漢書、刑法志「聖人旣躬二明─之性一」
バゥ [陽]
○おそる(怖)○忙に同じ。
おそれる貌。列、楊朱「子產──無以應」
①バン [寒]
②ボン·モン [阮]
①まどふ(惑)
②わすれる(廢忘)一說、匹 ツレアヒ なき貌。莊、大宗師「─乎忘其言」
①ホツ [月]
②ハイ [隊]
通音ハイ
①もとる、みだる(亂)さかふ(逆)道理に背き逆ふ「狂─」○盛んに興る貌。勃に通ず。
②もとる「凶─」
同訓異義
モトル 悖·戾·拂·很○悖は逆亂也、つよくさからふ義、誖に作る、同じ。○戾は和の反、戾氣は、和氣の反なり、ねぢ曲る意、乖戾·曲戾·暴戾と用ふ、盭に作る、同じ。○拂は違也、戾也、うらはらにさからひもとること、悖よりは輕し。○很は人のいふことを聽かず、あらそふなり、ねぢけて意地わろきなり、狠は俗字。史、項羽紀「貪如レ狼、很如レ羊」孟子「好レ勇鬭很、以危二父母一」
もとりてよからず。詩經、箋「有──之色」
もとりくるふ。易林「昭公失常、季女──」
もとりそむく。史、樂書「有──詐僞之心」=悖亂。
さからひてあらそふ。莊子「言行之情、──于胸中也」
正しき道にもとる。書經「實悖天道」
德義にそむきもとる。孝經「不愛其親、而愛他人者、謂之──」
もとりそむく。=悖戾。
もとりあやまる。魏志、滿寵傳「毁寵疲老──」
もとりみだる。漢書、五行志「──之氣、近犬豕之禍也」
さかひもとる。易林「兩人俱醉、相與──」=怫戾。
禮法にそむきもとる。孝經「不敬其親、而敬他人者、謂之──」
盛んに興る貌。左、莊十一「其興也──」=勃焉。
道にもとりたる事を爲さば、また道にもとりたる報を受く。大學「言悖而岀者、亦悖而入、貨悖而入者、亦悖而出」
リン [震]
恡は俗字
しわし、やぶさか「貪─」「愛─」=吝。をしむ(慳)家語、致思「甚─於財」いやし(鄙)
國 やきもち。色情に關するねたみ(嫉妬)
やぶさかなるおもひ。法苑珠林「非道求道心、無──」
①リャウ·ラゥ [漾]
②ラゥ [養]
①かなしむ(悲)○いたむ(悵)○かへりみる、いつくしむ(眷)
②懭─は志を得ざる貌。
○かなしみいたむ貌。蘇武詩「──不能辭」=惆悵。○いつくしみかへりみる貌。後漢書、陳蕃傳「天之於漢、──不已」=眷眷。
8畫
①アク [藥]
②ヲ [遇]
③ヲ [虞]
①あし、わろし。善の反對「邪─」「姦─」「罪─」「凶─」○あやまち(過)論、公冶長「不念舊─」○みにくし(醜陋)美の反對。史、仲尼弟子傳「澹臺滅明、狀貌甚─」○きず(瑕)○あらし、そまつ(粗)「─食」「粗─」○あしき行爲。又、其の人。○あか(垢穢)よごれ、ごみ(塵埃)左、成六「以流其─」○くそ(糞)
②にくむ、にくし(疾·憎)愛の反對「疾─」「怨─」論、里仁「惟仁者能好人、能─人」○いむ(忌)そしる(讒)わるく言ふ。鄒陽、獄中上書「蘇秦相燕、人─之於燕王」○はづ(恥)孟、公孫丑「羞─之心」
③ああ、歎息の辭。孟、公孫丑「─是何言也」○いづくんぞ、なんぞ、どうして(何)論、里仁「─乎成名」○滹に同じ。─池は卽ち滹沱。
同訓異義
アア 惡·嗚呼·烏乎·嗟·吁等の別は嗚(口部十畫)の條を見よ。○アシ惡·醜·慝·凶○惡は善の反なり、美惡·醜惡と用ふ、又にくむと訓むときは、音ヲなり。○醜は形の見苦しき義、好または美の反なり。○慝は心のあしきなり。淑の反なり。姦慝·邪慝と連用す。○凶は吉の反なり、いまいましきなり。○イツクンゾ惡·焉·安は焉(火部七畫)の條を見よ。○ニクム惡·憎·疾·妒·媚○惡は好の反、甚しくいやがるなり。大學「如レ惡二惡臭、一如レ好二好色一」○憎は愛の反、小づらにくきなり、歐陽修に憎二蒼蠅一賦あり。○疾は嫉と通ず、ねたむとも訓む、りんきしてにくむなり。史記「士無二賢不肖一入レ朝見レ嫉」○妒·媢の二字は、嫉と同じ、ねたむと訓む、りんきする「婦妒レ夫曰レ妒、夫妒レ婦曰レ媢」また「害レ賢曰レ嫉、害レ色曰レ妒」と註すれども、三字互に通用す。○ミニクシ惡·陋·醜○惡は美の反、醜陋なり。史記「澹臺滅明、狀貌甚惡」○陋は下品なる義。唐書「盧杞貌陋心險」○醜は貌の極めてみにくきなり。漢書「形貌醜惡」
けがれ。禮記「又水受──、故有朽腐之氣」
○あしきかんがへ。○あしき方の見かた「──に解釋する」
そまつなるきものと、たべもの。論、里仁「士志於道、而恥────者、未足與議也」
○あしきまはりあはせ。漢書、昌邑哀王傳「銷──遏亂原」○ 國 惡事を爲すに都合よき運命「──强し」
あしきはやり病。流行病。
○ 國 あしき夫婦の緣。又、雙方に不利と知りつつ思ひ切られぬ緣。○ 佛 惡業を助けて惡果を招かしめるもの。緣は資助する義。
あしきおこなひ。詩、鄘風、桑中、傳「言世族在位有是──」
酒を飮まざる人、下戶。轉じて大酒家にもいふ。羣碎錄「元結以不飮者爲──、後以痛飮者爲──」
あしきこころもち。
わるもの、あしきをとこ。漢は男。輟畊錄「今人謂賤丈夫爲漢子」=無賴漢。
たたりをなす惡しき鬼。史、始皇紀「以辟──」=惡魔。
いたづら、わるふざけ。
質のあしき金屬。齊語「──以鑄鉏夷斤?」
○心あしく道にさかふ。漢書、師丹傳「──暴著」○古の刑の名。八逆の一、君主にあだする罪。○舊刑律十惡罪の一、父母又祖父母を毆打し又は謀殺せし罪。
質の粗惡なる貨幣。
しゃべりてかまびすし。王安石詩「吾兒亦──、戮力事棄捐」
陰曆五月の稱。荆楚歲時記「五月俗稱──多禁」=毒月。
○あしきわざ、不正なる所業。史、貨殖傳「博戲──也」○ アクゴフ 佛 佛道に背きし過去の惡事。又、其の惡事のむくい。大藏法數「一切衆生造作──」=惡劫。
わるくち、罵詈のことば。史、仲尼弟子傳「孔子曰、自吾得由、──不聞于耳」=惡口。
わるくち。蘇軾詩「門前──誰傳去、醉後狂歌自不知」=惡言。
○わるくち。漢書、王尊傳「──不信」○ 佛 十惡の一、わる口を言ひて他を忿恨せしむる。
俗 わるもの。=惡漢。
ききんの年。唐庚詩「硯田無──」=凶年·荒年。
みにくきにんさぅ。惡しき人相。
あしきできもの。酉陽雜俎「主治──」
野菜ばかり用ひたる粗末なる料理。史、陳丞相世家「以───進楚使」
あしきはかりごと。=惡計。
みにくきかきもの、己の手簡を謙していふ。益公題跋「以上──、皆予筆也」
惡事をなす少年。漢書、尹賞傳「雜擧長安中輕薄少年──」=惡少年。
つたなき詩。唐國史補「淮南進崔叔淸詩百篇、德宗曰、此──何用進」
あしきにほひ。大學「如惡──、如好好色」
あしき事はすぐ世閒に知れ渡る。北夢瑣言「好事不出門、─────」事文類聚には行を傳に作る。
○たちのあしきやまひ。大戴禮、本命「婦有七去(中略)有──去」○らひ病(癩)=天刑病。
あしきならはし。=惡癖。
あしきこころ。魯語「忘善則──生」=惡念。
あしき酒。蘇軾詩「──如惡人、相攻劇刀箭」
佛 あしき行をしたる衆生の墮つる場所。无量壽經「横截五──」=惡道。
國 ○けはしきところ。○よからぬ場所。くるわ、いろざと。=花街·遊里·遊郭。
佛 惡人が死後に墮ちて苦む所。法苑珠林「復何因緣不生──」=惡道。
そまつなる食物。史、項羽紀「以──食項王使者」
飮みて害ある水。北史「天雨──、其亡我乎」
○心のあしき生れつき。世說「便殺──者」○ アクシヤウ 國 あしきたち。
よからぬうはさ。わるくち。孟、公孫丑「──至必反之」
惡少年の略。荀、修身「無廉恥而嗜乎飲食、可謂──者矣」
わるくち。孟遲詩「由來──駟難追」=惡口·惡言。
はげしくむやみにたたかふ。演義三國誌「謂韓遂曰、吾見──者、莫如許褚、眞虎癡也」
○質のあしきぜに。隋書、趙綽傳「時上禁行──」○ 國 不正のかね「──身に著かず」
あしきならはし。=惡習。
佛 あしき事をしたる衆生の墮つる場所。卽ち、地獄·餓鬼·畜生·修羅の四惡道。大藏法數「一切衆生、造作惡業、而生其處、故名──也」
わるもののなかま〔東觀秦記〕=惡徒。
○形のみにくきをんな。史、外戚傳「美女入室、──之仇也」=醜女。○心の惡しき女、毒婦。
あしきしるし。吉徵の反對。左傳、疏「皆以──爲祥」
わるものども。史通「違夫子之敎、失聖人之旨、奬進──、疑悞後學」=凶徒。
あしき行爲。書經「爵罔及──、惟其賢」
○心のあしき人、わる者。○顏のみにくき人。孟、離婁「雖有──、齋戒沐浴、則可以祀上帝」
惡心に同じ。
たちのあしきうま。北史「廏有──神武不加羈絆」
心あしきばば。
口あしくののしる。蕭子良文「──無復高卑」
文字がまづし、拙き文字。
たちのあしきやまひ。=惡疾。
あしきならはし。=惡習。
あしきくせ。=惡習。
あしき雑木。管子「夫士懷耿介之心、不蔭──之枝」
人にわざはひをなす鬼。法苑珠林「──波旬、將八十億衆、欲來壞佛」
あしきゆめ。吉夢の反對。桓譚新論「連三夜有──」
よからぬうはさ。左、文十八「世濟其凶增其──」=惡聲。
わるく手あらし、辣はぴりぴりと辛き義。
心あしくして道にそむく。史、齊悼惠王世家「駟鈞──、虎而冠者也」
病氣の時、ぞくぞくと感ずるさむけ「發熱──」
恥を受くるをにくむ。孟子「今──而居不仁」
つはり、婦人姙振の初期に生ずる病、むねわるく嘔氣 ハキケ を催し、酸味を嗜む。囘春「──惡心、阻其食飮也」
ヰ [支]
○これ(維)書、禹貢「濟河─兖州」=伊·是。○ただ、ひとり(唯·獨)それのみ。○おもんみる(思)おもんぱかる(謀)
同訓異義
オモフ 惟·思·憶·懷·意·念·想等の別は思(心部五畫)の條を見よ。○コレ惟·之·此·是·斯·伊等の別は之(ノ部三畫)の條を見よ。○タダ惟·唯·只·止·但·徒·第·啻等の別は唯(口部八畫)の條を見よ。
諾する貌。又、諾することば。荀、大略「──而亡者、誹也」=唯唯。
ただこれ一っ。書、大禹謨「惟精──、允執厥中」李邕賦「邁──之德、容吹萬之性」=專一。
ただ酒を飮めば胸中の憂悶を忘るることを得る。晉書、顧榮傳「恆縱酒酣暢、謂友人張翰曰、──────、但無如作病何耳」
何事もただ仰せのままに從はん。左、成二「賓媚人致晉師曰、若其不幸、敢不────」
義理の有無を問はず、只利害如何を是れ視るのみ。左、成十三「秦與楚盟曰、余雖與晉出入、余────」
カゥ [梗]
○──はもとりいかる(很怒)孟、公孫丑「──然見於其面」○通じて婞(女部八畫)に作る。
心せまく人にさからひて正直なり。悻一に婞に作る。屈原、離騷「──以忘身」
キ [寘]
○をののく、おどろきおそる(驚懼)「惶─」「恐─」「驚─」「憂─」○むなさわぎ、心臟の鼓動「心─」「動─」○帶の下がり垂るる貌。詩、衞風「垂帶─兮」
同訓異義
オソル 悸·恐·懼·畏·怖·惶等の別は恐(心部六畫)の條を見よ。
おそれてむなさわぎする貌。杜甫、策問「外則──然求賢如不及」
むなさわぎするやまひ。南史、何偃傳「偃不自安、遂發──」(中略)備加醫療、乃得差」
わななきおそれる。梅堯臣詩「至險可──」=恐慄。
キ [寘]
○そこなふ(毒害)○いむ(忌)左、哀二七「趙襄子由是─智伯」○をしふ(敎)左、宣十二「楚人─之脫扃」
そこなひへだてる。左、定四「管蔡啓商、──王室」
キン コン [文]
通じて欣·訢に作る
よろこぶ、よろこび(喜)
懼(心部十八畫)の略字。
ケイ ヱ [霽]
○めぐむ、いつくしむ、恩を施す、めぐみ(仁愛)「仁─」「慈─」「愛─」「嘉─」○なさけ(恩)「恩─」「德─」論、里人「小人懷─」○したがふ(順)晉語「─於父母」○たまふ。又、たまもの(賜)○かざる(飾)○みつめぼこ(三隅矛)=鏸。○さとし、慧に通ず「智─」
めぐみかはゆがる。杜甫詩「──南翁悅、餘波及老身」
あつきめぐみ。潘岳賦「承慶雲之光覆兮、荷君子之──」
めぐみそだてる。後漢書、左雄傳「非所以崇憲明理、───元元也」
よきうるほひの雨。又、君のめぐみのあまねきに喩ふ。
めぐみのおとづれ、他人の手紙を敬ひていふ。陸機詩「款誠寄──」
惠然を見よ。人を招請するを仰凱──といふ。
めぐみてやすんずる。書、文侯之命「柔遠能邇、──小民」
めぐみをしへる。又、いつくしみある敎。左傳「──不倦者、叔向在焉」=恩訓。
めぐみを施して民を教化する、恩惠敎化。晉書「修德政、布──」=德化。
○したガひやはらぐ。國語「國之將興、其君齊明衷正、精潔──」○やはらぎあたたか。范成大詩「春風──如主人」
めぐみをかけてかへりみる。吳志「君旣──、何以佐之」=眷顧。
○めぐみほどこす。○戰國時代の學者の名、莊周と友たり。莊、天下「──多方、其書五車」
めぐみたまふ。陳子昻文「──禮物、過越典章」
いつくしみ。又、いつくしむ。國語「敬友二虢、而──二蔡」
めぐみあはれむ。後漢書、祭祀志「恭肅神祗、──耆老」
なさけにうるほふ。郭璞、疏「黔首顒顒、寔望──」
めぐみて安撫する。張元晏文「──羣品」
なさけあるまつりごと。北史「士人感其──」=仁政。
めぐみふかきほまれ。韋承慶文「──溢于遠近」=仁聲。
したがふ貌。又、好意を表する貌。詩、邶風「──肯來」人の好意を以て來訪するを「惠肯」又「惠來」といふは此に本づく。
めぐみ。汝南先賢傳「應頓爲東郡太守、──洽著」=恩惠·恩澤。
めぐみとぶらふ。又、人よりとぶらはれしを謝する敬語。國語「──亡臣」
めぐみ與ふ。又、人よりの贈物を敬ひていふ。=惠與。
めぐみのこころ。儲光羲詩「──及滄浪」=慈念。
○めぐみのあるはるかぜ。王羲之、蘭亭集序「天朗氣淸、──和暢」○めぐみのかぜ、君のめぐみに喩ふ。張衡、東京賦「──光被」
めぐみあたふ。=惠投·惠賜。
惠然を見よ。
めぐみたまふ。宋書「光被彌蒼生、家戶蒙──」=惠賜。
人名、姓は謝、族兄靈運の爲めに稱賞せらる、故に轉じて愛弟の義とす。李白文「羣季俊秀、皆爲──」
國 曆法にて歲德神 トシトクジン の在る方角の稱、此の方角に向ひて事を爲せば吉なりといひ傳ふ。あきのかた。
國 七福神の一、多く商家にて祭る福の神。=蛭子神·衣比須 エビス
ケン [先]
○つつしむ(謹)○ねんごろ(懇)しんせつ。○倦(人部八畫)に通ず。
つつしみねんごろなる貌。懇至なり。漢書、劉向傳「──之義也」
①コウ [東]
②コウ [董]
①まこと(誠·愨)○──はおろか(無知)なる貌。論、泰伯「──而不信」
②─憁は志を得ざる貌。
まこと(誠)任昉文「實有愚誠、不任──」
コク ワク [職]
通じて或に作る
○まよふ(迷)まどひ、まどふ「迷─」「昏─」「憂─」「眩─」○まよはす、まどはす。○みだる(亂)「狂─」うたがふ(疑)「疑─」論、爲政「四十而不─」(此語に本づきて四十歲を不惑 フワク といふ)○熒─は星の名。
心をまどはせる。又、まどはされし心、まどひ。論、憲問「夫子固有──於公伯寮」=疑心。
人をまどはすわざ。韓非子「恍惚之言、恬淡之學、天下之──也」=妖術。
一處に定住せずして常に位置を變ふるほし。恆星の對。=遊星·行星。
まよひおぼれる。迷ひて惡道に陷る。世說に──篇あり。
まどはしみだる。史、始皇紀「今諸生、不師今而學古、以非當世、──黔首」
うたがひまどふ貌。漢書、賈誼傳「衆人──、好惡積意」
コッ [月]
○思ひこんで心がうっとりする、ほれる、ぼける「恍─」○かすか、ほのか、奥深くして測られず、微妙極致。韓非、忠孝「恍─無法之言也」
うっとりする貌。法言「神心──」=曶怳·怳惚·恍惚。
①コン [元]
②コン [願]
③ボン [願]
通じて惽に作る
①くらし(心不明了)昏に通ず。
②ぼける、迷ひ忘れる。
③もだゆ(懣)呂覽、本生「下爲匹夫而不─」=悶。
くらくしてぼんやりする。梁書「識慮──、久絕人世」
ぼけてわすれる貌。管子、四時「五漫漫、六──、孰知之哉」
心くらし、明かならざる貌。惛一音 ビン 、軫韻。莊、知北遊「──若亡而存」
目がくらむ。上官儀文「風雨之疾、──日甚」=昏眊。
亂れて明かならず。曹植賦「競──以營私、害予身之奉公」
心がくらく亂るる貌。懵は懜に同じ。南史、謝莊傳「患眼五月來、便不復夜坐、惟閉帷避風日、晝夜──」
シャウ [養]
?に同じ
─怳は意を失ひて悅ばざる貌。潘岳賦「超─怳以慟懷」
失意の貌。莊、則陽「客出、而君──若有亡也」=惝怳。
スヰ [寘]
通じて瘁·顇に作る、忰は俗字
○うれふ(憂)かじく(瘦衰)○やつれる。屈原、漁父辭「顏色憔─」○つかれる(疲弊)孟、公孫丑「憔─於虐政」○ 國 せがれ、己の子の謙稱(倅の誤用)
やつれたるかほ。劉伶詩「陳醴發──」
衰へていやし。衰弱微賤。鮑照文「繇臣──、可侮可誣」
おちぶれたるいへすぢ。衰微せる氏族。江斆文「臣寒門──」
おとろへてうすし。沈約詩「自顧雖──、冠蓋曜城隅」=衰薄。
やせ衰へたるかほかたち。謝靈運詩「朽貌改鮮色──變柔顏」
セイ ジャウ [庚]
○心の物に感じて動くはたらき、性は心の本體、情は心の作用「性─」「心─」「高─」禮、禮運「何謂人─、喜怒哀懼愛惡欲、七者弗學而能」なさけ、心理學にては知·意と竝立す「恩─」「多─」「薄─」「無─」「交─」○人欲、欲望、利欲「私─」○まこと(實)まごころ「眞─」論、子路「上好信、則民莫敢不用─」○事の實際「─報」○ことわり(條理)○ありさま(狀態)○あぢはひ、おもむき(趣味)「風─」「─致」○俗に男女の愛をいふ「─人」「─書」「春─」「戀─」○まことに(信·實)多く詩に用ふる助辭。○奪─は喪期を終ることを許さざる義。北史、李德林傳「奪─起復」
なさけをかけていつくしむ。宋書、何尙之傳「與叔度母、──甚厚」
情實あらはれて勢力盡き、計の施す所なき義。史、淮陰侯傳「頓兵燕堅城之下、────」漢書には露を見に作る。
○こころ。人情意氣。吳均詩「君之──與我離」○心理學にて感情と意志との義。
心あつくさかんなり。舊唐書「慕深視篋、──撫鏡」
こころいかる。韋承慶、靈臺賦「或──而顏怡」
男女關係のゆかり、男女のちぎり。
男女の戀愛の情を述べしうた。戀歌·情詩。
○親情を以て交る。文心雕龍「──而雅俗異勢」○色情の上の交。
よしみ。蜀志、諸葛亮傳「──日密」
情が物に感じてうごく。唐書、張公謹傳「──于內、安有所避」
よしみ、相互の好意。
誠と、いつはりと。易經「聖人立象以盡意、設卦以盡──」
ありさま。=狀況。
感情のはげしきを火に喩へていふ。=情熱。
こころもち。杜甫詩「老夫──惡」=意緒。
よしみ、ねんごろなる心。梁昭明太子文「功曹在潯陽、與淵明──」
まごころからのねがひ。顏延之、庭誥「施其──、庀其衣食」
○けしき、ありさま。○感情と實景と。
なさけのこもれることば。梅堯臣詩「──旣不通、豈止腸九廻」
佛 心の狂ひ易く定まらざるを猴に譬へていふ〔法苑珠林〕=意馬·心猿。
うらみ。梁簡文帝詩「妙工偏見詆、無由──通」
おもひ。楞嚴經「──均等、不飛不墜」
○みさを、正しき心がけ。○心理學にて思考·推理等に伴ひて起る最も複雜なる感情、道德的·知的·美的の三種に分る。
人淸に關する事を敍したる書物、人情本。
國 男女が合意の上相共に自殺する、しんぢゆう。
交情の至り極る義。楊方詩「──斷金石、膠漆未爲牢」
いろごと、男女閒の愛情に關する事。
○こころもち、おもひ。○愛情のおもひ。
物をほしがるこころ。顏延之文「庶端萌起、──不禁」
○ありのままの事實。史、呂不韋傳「秦王下吏治、具得──」○ 國 人情のかかりあひ、親しき閒柄の義理。
○ともだち、眞情を以て交はる人。○互に思ひ合ひし人、こひびと。
なさけふかし。許渾詩「旅游知世薄、貧別覺──」
○情は心の內に動く者、狀は其の外に著るる者。易經「精氣爲物、游魂爲變、是故知鬼神之──」○ありさま。宋史、理宗紀「安南──叵測」○事情の生ぜし次第「──酌量」=情實。
おもむき。續畫品「綺羅屛障、所圖頗有──」=情致。
おもひやりてゆるす。晉書「人有不及、可以──」
○心の動くこぐち、感情の發作。江淹賦「閴寂以思、──留連」○心理學にてやや複雜なる感情、喜·怒·哀·樂·同情·嫉妬などの類。
こころ。情は心の作用、性は心の本體。漢書、禮樂志「立人倫、正──」
ありさま。事の情狀及趨勢 ユキガカリ 五代史「決勝料勢、決戰料情、──旣得、斷在不疑」=情況。
心の底の誠、まごころ。史、鄒陽傳「披腹心、見──」=本心。
こころがおろそか。禮記「──而貌親」
ありさま、こころざま。列子「備知萬物──」=情形。
明かに知る。方言藻「張旭詩、──海上三年別、不寄雲中一雁書」
おもむき。致は趣。世說「船上有詠詩、聲甚有──」=情趣。
人の情愛の心。李賀詩「天若有情天亦老」に本づく。
人情をいふ、情慾を生ずるを田地に喩へていふ。禮記「人情者、聖王之田也」に本づく。
俗 互に意氣の相投ずる義。=情意投合。
感情のはげしき力。=情火。
事の實際のありさまの知らせ。
いろをとこ、まぶ。=情郞。
いろをんな、いろ。
人の行は禮文と相叶ふをたふとぶ。禮、三年問「三年之喪、何也、曰、稱情而立文」注「稱情而立文、稱人之情輕重、而制其禮也」
情意と文章と竝び盡くる〔荀、禮論〕
情實によりて生ずる弊害、人情にひかされて生ずる害。
こころもち。人物志「著乎形容、見乎聲色、發乎──」
○男女の愛情、いろけ、色情。詩、關雎集傳「──之感、無介乎容儀」=情慾。○ 佛 むさぼり執著する心、色欲·食欲·淫欲とを合せて四欲といふ。大藏法數「欲界衆生、多於男女情愛之境、而起貪欲、故名──」
男女の愛情によりて生ずる私慾。=情欲。
いろをとこ。韓偓詩「書中說却平生事、猶疑未滿──意」=情夫。
人情と天理と。唐書「又有事率於外、──動於內」
人情のためにひかされる。情懷牽累の義。陳書、謝貞傳「弱兒年甫六歲、名靖、字依仁、──所不能忘、敢以爲託耳」=情網。
人情のこもれる物語。陶潛、歸去來辭「悅親戚之──」
セイ [齊]
○いたむ(痛)「慘─」○かなしむ(悲)「─惋」
同訓異義
イタユ 悽·悼·傷·痛·隱等の別は悼(本畫)の條を見よ。
かなしみいたむ。世說「張驎酒後、挽歌甚──」
かなしみおそれる。梁武帝賦「踐霜露、而──」
かなしみいたむ。悽は悲、愴は傷。禮、祭義「秋霜露旣降、君子履之、必有──之心、非其寒之謂也」=悄愴·悲愴·悲感。
かなしみいたむ。武元衡詩「──別魂驚」=愀慘·慘悽。
かなしみいたむ。陸機文「獻兹文而──」
いたましき貌。陸機詩「我思纏綿未紓、感時悼迹──」=悽悽·悽然。
○悲しむ貌。詩經「哀哀──、懷報德也」○うゑてやむ(饑病)貌〔後漢書、周黃徐姜申屠傳〕
いたみうれふ。謝靈運詩「感物方──」
かなしむ貌。=悽悽·悽如。
かなしみいたむ。沈約文「永言──、發憤經營」=悲悼·哀悼。
かなしみて絕えなんとする。陳子昻詩「送君一爲別、──故鄕情」
かなしみなげく。蘇軾詩「西風送落日、萬竅含──」
かなしみてうっとりする。世說「旣自──、歎曰、江山遼遠」
かなしみしたふ。沈炯文「瞻仰煙霞、伏增──」=悲戀。
かなしみいたむ。唐書、王播詩「詞情──、當世稱之」
セキ シャク [陌]
○をしむ(愛·悋)しみったれ、をしみ「愛─」「吝─」○いたむ(痛)「惋─」「痛─」「悼─」論、子罕「子謂顏淵曰─乎」○あはれむ(憐)○むさぼる(貪)後漢書、光武紀「諸將貪─財貨」
同訓異義
ヲシム 惜·吝·嗇·愛·慳の別は吝(口部四畫)の條を見よ。
時閒ををしむ。晉書、陶侃傳「大禹聖者、乃惜寸陰、至于衆人、當惜分陰」
はなのちるををしむ。常袞詩「待月水流急、──風起頻」
惜陰に同じ。王僧孺、祭禹廟文「輕璧──、旣捨冠履」
年の暮れるををしむ。全唐詩話「──歲今盡、少年應不知」
小ををしみて大を失ふ喩。指(手部六畫)の條參看。
唐代の官名、花を保護する事を掌る。玉麈集「穆宗宮中花開、以重頂帳蒙蔽、置──、號曰括春」春一に花に作る。
をしみかなしむ。=惜閔。
をしみかなしむ。漢書、劉歆傳「此乃有識者之所──、士君子之所嗟痛也」
費用ををしみて過分のおごりを爲ささる義。宋史「汝生長富貴、當念──」
わかれををしむ、離別をなごりをしく思ふ。
日の暮れゆくををしむ。趙冬曦賦「猿──而悲叫、鳥辭春而不鳴」
輕く筆を下さざる義。古今名畫記「李成作畫、────」
いのちををしむ。後漢書「惜垂盡之命」
をしむ。史、越世家「輕去之、非所──」=鄙呑。
ンゥ [冬]
○たのしむ、たのしみ(樂)「歡─」謝朓詩「戚戚苦無─」○おもひ(情緒)「積─」
ソゥ [送]
○いそがはし(倥傯)○ 國 そうじて。すべて總と同じく用ふ。
タゥ [號]
○いたむ(傷)かなしみて心動く「傷─」「嗟─」「哀─」「痛─」「驚─」(震─·軫─は天子のおなげき)詩、邶風「中心是─」○あはれむ(憐惜)○おそる(懼)○幼者の稱。曲禮「七年日─、雖有罪、不加刑」其の知なきを憐む義。
同訓異義
イタム 悼·傷·痛·隱·悽·愴·慘·戚·悵·怛·惻·疼○悼は哀悼·傷悼·悲悼などと連用す、人の死をかなしむなり、傷の字に、憐愛の意を兼ぬ。○傷は憂思也、毁傷也と註す、傷心とは心をやぶり傷ふ如く、つよく、いたみ哀むなり。司馬遷、報二任安一書「悲莫レ痛二于傷一レ心」○痛は痛疼の義、身に痛ある如く、悲哀を感ずることの切なるなり。○隱は惻隱と連用す、心のそこより見て居られぬ程に痛むなり。○悽·愴の二字は共に心に悲しく、感じいたむなり。禮記「君子履レ之、必有二悽愴之心一」○慘ほ哀れに痛むなり。李華、弔二古戰場一文「傷レ心慘レ目有レ如レ是耶」○戚はうれひ、いたむ義、憂戚·哀戚と用ふ。○悵は殘念に思ひてなげきいたむ、惆悵·悵然·悵恨と用ふ。○怛·惻の二字は、氣の毒に思ひていたむ、惻怛と連用す、怛は驚く意を兼ぬ。○疼は痛に同じ、いたみの終始やまざる義。
○死亡せし人を惜み悲む意を述べたるうた。○送葬の時にうたふ歌。=挽歌。
いたみおそる。韓非子「重罰者盜賊也、而──者良民也」
人の死をいたむ。左傳「小人恥失其君、而──其親」
心をいたましめる。左傳「孤與其二三臣、──失圖」心の悲むによりて其の計畫を失ふ義。
いたみをしむ。人の死をかなしむ。=惋惜。
いたみおそれる。東方朔、七諫「心──而耄思」
かなしみいたむ。漢書、賈誼傳贊「爲庸臣所害、甚可──」
妻の死せしをいたみかなしむ。晉の潘岳、妻死す、──詩三首あり、世の傳誦する所と爲る、故に妻を喪ふを──といふ。
いたみおそれる。漢書、王莽傳「夙夜──、常恐汙辱聖朝」
①タン [覃]
②エン [鹽]
①やく(燔)心に憂ひてやける如き形容。詩、小雅「憂心如─」
②安し「恬─」
チウ [宥]
○かなしむ(悲)うらみかなしむ。○─悵は志を失ひなげく貌。楚辭、九辯「─悵而自悲」=悲哀。
かなしみいたむ。方干詩「薄暮停車更──」
うらみなげく貌。荀、禮論「──不嗛」不嗛は不足。=悵然。
かなしみうらむ。白居易詩「──春歸留不得、紫藤花下漸黃昏」
チャウ [漾]
○のぞみうらむ(望恨)楚辭、九辯「惆─兮而私自憐」失意にしてなげく。○いたむ(痛)うれふ。
同訓異義
イタム 悵·悼·傷·痛·隱·戚等の别は悼(本畫)の條を見よ。
なげきうらむ。支遁詩「──濁水際、幾忘映淸渠」
うらみくやむ。易林「伯仲處市、不我肯顧、姪娣──」
いたみうらむ。史、陳涉世家「──久之曰、苟富貴無相忘」
なげきおもふ。葛長庚詩「幾箇黃昏勞──、幾宵皓月遙思憶」
次條に同じ。摯虞詩「懷戀結好、心焉──」
なげく貌。李白詩「停梭──憶遠人」
いたむ貌。失意にしてなげく貌。晉書、荀勗傳「及爲尙書令、甚惘惘──」=惆悵。
なげきのぞむ。謝朓詩「停驂我──、輟棹子夷猶」
かなしみしたふ。宋祁詩「弭節不妨饒──」
なげきかなしむ。晉書、許孜傳「孜──不已」
テキ [錫]
惖は古字
○うれふ(憂)「憂─」○おそる(懼)「怵─」「慙─」○うやまふ、つつしむ(敬)おそれつつしむ「─若」
おそれて泣きさけぶ。易經「──莫夜、有戎勿恤」
おそれる。易、乾卦、疏「雖至於夕、恆懷──」
うれひおもふ。李白詩「──結宵夢、素心久已冥」
おそれつつしむ貌。若は助辭。易、乾卦「君子終日乾乾、夕──」
おそれる。沈遼詩「至尊所虛佇、守臣方──」
驚きおそれてあへぐ。樊衡文「孱幼匿車、──窮帳」=惕息。
おそれてためいきする。司馬遷、報任安書「視徒隸則心──」
○おそれる貌。楚語「豈不使諸侯之心──焉」○愛する貌。詩經「心焉──」
デキ [錫]
○うれへ思ふ。一說にうゑる(飢)貌。詩、周南「─如調飢」調は朝。
①テツ [屑]
②テイ [霽]
①うれふ、うれひ(憂)「憂─」○意定まらず。○つかる(疲)
②短氣の貌、きばやし。
うれへかなしむ。後漢書、梁鴻傳「心──兮傷悴」=忉怛。
心うれひて定まらざる貌。詩、召南「未見君子、憂心──」=忡忡。
德(彳部十二畫)の古字。
①トン [元]
②ジュン [眞]
①あつし(厚·篤)=敦。○まこと(信)○すすめはげます(厚相勉)
②あつし(厚)人情が厚し。=醇。○まこと、まごころ(心實)
てあつくしてつつしむ。
ねんごろに敎へる、諄諄として敎誨する〔班固賦〕
あつきめぐみ。國語「使──者敎之、使文敏者道之」
あつく信ずる。書經「──明義、崇德報功」
あつき德行。書、舜典「──允元」
バウ マウ [養]
通じて罔に作る
○あわて(遑遽)る貌。○意を失ふ貌。茫然として自失する貌、うっとりとする「慌─」
志を失ひてぼんやりする貌。江淹詩「酒至情蕭瑟、凴尊還──」=罔然·惘惘。
○志を失ひてうっとりする貌。韓愈、送殷員外使囘鶻序「岀門──、有離別可憐之色」=罔罔。○志を失ひてあわてる貌。楚辭、九章「超──而遂行」
ヒ [支]
○かなしむ、物に感じてあはれに思ふ。詩、豳風「女心傷─」なげきいたむ(痛)○かなし、かなしみ。○顧み念ふ。漢書、高帝紀「游子─故鄕」○ 佛 あはれみ、なさけ「慈─」「大慈大─の觀世音」
同訓異義
カナシム 悲·哀○悲は喜の反、痛なり。又、有レ聲無レ淚曰レ悲と註す。楚辭「鶴脛雖レ長、斷レ之則悲」○哀は樂の反、あはれがりて深くかなしむなり、哀悼と用ふ、哀はいたみの聲にあらはるるなり、悼はいたみの心に存するなり、哭聲甚哀、猿聲哀の如し。
かなしむ、かなしみ。史、五帝紀「百姓──」
かなしむべきまはりあはせ、不仕合なる運命。=非運·不運·惡運。
軍中にて吹く樂器の名、聲悲壯なるが故、ひちりき。杜甫詩「──數聲動」=胡笳。
かなしみて歌ふ。古辭「──可以當泣、遠望可以當歸」
哀れげにうたひなげく。忼は一に慷に作る。史、項羽紀「項王乃────、自爲詩」
かなしみなげく。王羲之文「何能不痛心──也」=憂慨。
かなしみなげく。隋書、李安傳「歔欷──、不能自勝」
かなしみと、よろこびと。
かなしみと喜びとが同時に心に生ずる。
かなしみなく。後漢書「戎俗父母死恥──、皆騎馬歌呼至」=悲哽。
かなしむべき境遇。
かなしきひびき、悲哀なる聲調の音樂。魏文帝詩「絃歌發中流、──有餘音」=悲曲。
かなしく感ずる音曲。
かなしみくるしむ。繁欽詩「──愁我心」
かなしみくやむ。白居易詩「操之多惴慄、失之又──」
かなしきおもひ、かなしみおもふ。劉楨詩「秋日多──」
慈悲のねがひ。黃庭堅詩「偶然宴坐千百劫、神力──俱無窮」
かなしみと、よろこびと。范成大詩「異鄕風物雜──」=悲喜。
哲學にて世事をすべてかなしむべきものと觀る義。樂觀の對。=厭世觀。
世閒の悲哀なる情態を筋書とせししばゐ。喜劇の對。轉じて、かなしむべき世閒の岀來事。
かなしくはげし。中論「擊牛角而歌、歌聲──」
かなしげなる絲の音。曹植賦「仰淸風以歎息、寄予思于──」=悲絲。
太陽の經過するといふ西南方に在る谷の地、甚だ深くして人をして悲ましむる故。淮南子「日至於──、是謂餔時」
かなしみうらむ。漢書、刑法志「不辜蒙戮、父子──」
かなしみなげく。孟郊詩「向物空──」=悲歎。
かなしみて氣がくじける。焦仲卿妻詩「兒實無罪過、阿母大──」
あはれげなる中に意氣さかんなり。後漢書、禰衡傳「聲節──、聽者莫不感慨」
かなしみいたむ。愴はいたむ。白居易詩「追思多──」=悲傷。
かなしみいたむ、慘はいたまし。魏明帝、樂府「──傷人情」=悽慘·悲酸。
かなしくつらし、かなしく傷まし。黃溍詩「弔古多──」=凄酸。
かなしげなる琴の音。杜甫詩「──與急管、感激異天眞」
もののあはれを感ずるあき。楚辭「悲哉秋之爲氣也」劉兼詩「閒庭欹枕正──」
かなしみうれふ〔李白、大鵬賦〕=悲戚。
かなしむ心。關尹子「有──、則聲悽悽然」
つらきかなしみ。李白詩「力盡功不贍、千載爲──」=悲酸。
かなしみいたむ。杜甫詩「不須吹急管、衰老易──」=傷悲·悲痛。
かなしみいたむ。後漢書、馮夷傳「不敢顯其──」=哀戚·悲愁。
かなしみいたむ。梁武帝文「奄然永逝、倍用──」=悲傷。
人の死をかなしみいたむ。蔡邕文「降年不永、民斯──」=哀悼·悲痛。
かなしみなげく。曹植詩「──有餘哀」
かなしげなるちくの音。陶潛詩「漸離擊──、宋憙唱高聲」
かなしみいたむ。=悲傷。
○すさまじくなく、鳴く聲の淒慘なる義。韓愈詩「誰云猛虎惡、中路正──」○かなしみなく。李白詩「金缸靑凝照──」=悲泣。
かなしげなる音曲。謝靈運、山居賦「憶崑園之──、慨伶倫之哀簫」=悲曲·悲響。
佛 悲は慈悲、貧困者を惠む義、八福田の一。田とは其の效果を收むるを田の收穫あるに比していふ。通俗編「釋典以供父母田爲恩田、供佛爲敬田、施貧窮爲──、後世謂養濟院、曰──院取此」
かなしみいかる。陸游詩「亦知此老憤未平、萬竅爭號泄──」=悲憤。
かなしむべきしらせ。=凶報。
○ものさびしげに吹くかぜ。李陵、答蘇武書「但聞──蕭條之聲」○秋の風。高適詩「寂寞向秋草、──千里來」
かなしみいきどほる。後漢書、蔡琰傳「追懷──、作詩二章」
かなしみなく、かなしげなるなきごゑ。李陵、答蘇武書「胡笳互動、牧馬──」
かなしみもだゆ。唐書、魏徵傳「帝──、拊之流涕」=悲悶。
かなしみと、たのしみと。淮南子「──者德之邪也」
樂器篳篥 ヒチリキ の本名。玉芝堂談薈「──篳篥本名悲栗、出於胡中、其聲悲、胡人吹以驚馬、一名葭管、以蘆爲首、竹爲管、居巢笙也」
前條に同じ〔武夷山古記〕
かなしくさびし。詩品「曹公古直、甚有──之句」
かなしきなみだ。盧照隣詩「僕本多──」
かなしみしたふ。淨住子「復是增發──之心」
かなしみいたむ。儲光羲詩「懷抱盈──」=哀惋。
甚だしくかなしみ歎く辭。夫は助字。王羲之、蘭亭集序「後之視今、亦猶今之視昔、──」
前條に同じ。宋玉、九辯「──秋之爲氣也」
ヒ [尾]
心に略~理解し居れども之を口に言ひあらはさんと欲して未だ言ふ能はず。論、述而「不─不發」
言はんとして未だ能はざる貌。禮、學記、疏「心憤憤、口──、然後啓之」
口に出さずして心むすぼれいきどほる。梁武帝、涅槃經序「發迦葉之──」=憤悱·鬱結。
①ボン·モン [願]
②モン [元]
通音モン
①もだゆ(懣)うれひくるしむ。易、乾卦「遜世無─」思ひわづらふ「煩─」「鬱─」
②くらし(惛)道理にくらし。
心もだえふさがる。=煩鬱·鬱悶。
もだゆるおもひ。韓愈詩「──空抑噫」
もだえしぬ。
もだえて正氣を失ふ。梁書、王僧辨傳「僧辨──」
もだえなげく。楚辭「遂──無名」
國 もめてあらそふ(紛爭)
心もだえて胸わるく吐かんとする。水經、注「瀘峰最爲高秀(中略)而時有瘴氣、三月四月逕之必死、非此時、猶令──」
心しづかなる貌。梅堯臣詩「──閱書史」=靜默。
○心のくらき貌。老子「其政──、其民醇醇」○心に制裁する所なき貌。老子「俗人察察、我獨──」○もだゆる貌。水滸傳「囘到家中、──不已」
もだゆ。賈誼、旱雲賦「羣生──、而愁憒」=煩懣。
もだぇてむづがゆし。嵆康文「頭面常一月十五日不洗、不大──、不能沐也」
①ラン [覃]
②リン [侵]
③ラン [感]
①むさぼる(貪)大戴禮「飽而强、饑而─」「貪─」
②─慄はさむし(寒)宋玉、風賦「憯悽─慄、淸涼增欷」
③つつしまず(不謹)○いつはる、トして吉凶を詐り告げる。
ワン [翰]
○おどろきうらむ(駭恨)○なげく、おどろきなげく(驚歎)もだえなげく「悵─」「歎─」「恨─」「驚─」
なげき驚く。晉書「辭旨危急、憂及社稷、省之──、不解所由」=惋惜驚愕。
いたみうらむ。韓愈詩「遂自──形於書」=悵恨。
かなしみいたむ。梁簡文帝文「知與不知竝懷──」=慘愴。
かなしみいたむ。杜甫詩「感時撫事増──」
なげきをしむ。世說「晉武帝賜王愷珊瑚二尺、愷以示崇、崇以鐵如意碎之、愷旣──、又以爲嫉己之寳」=嗟惜。
驚きかなしむ。晉書、王羲之傳「公私──、不須臾去懷」
かなしみなげく。魏武帝、善哉行「守窮者貧賤、──淚如雨」
いたみもだゆ。魏書、南安王楨傳「肥梁已陷、聞之──」
9畫
アイ [隊]
○いつくしむ。いつくしみ(仁)「仁─」「慈─」「恩─」「博─」「親─」「深─」○めぐむ(恩惠)○したしむ(親)論、學而「汎─衆」○かはゆがる、あはれむ(憐)○めづ、かはゆがる(寵)「寵─」○このむ、めでる(好樂)「賞─」○をしむ(吝惜)「─惜」むさぼりをしむ、吝嗇。孟、梁惠王「皆以王爲─也」○したふ(慕)戀ひ慕ふ「相─」○ 佛 十二因緣の一、色情財物を欲求する義。
同訓異義
ヲシム 愛·吝·嗇·惜·慳の別は吝(口部四畫)の條を見よ。
いつくしみそだてる。北史、鮑宏傳「爲兄泉之所──」=愛養。
このみうたふ。又、其の歌。北史「齊人──、咸曰、耳目更新」=愛吟。
かはゆがりよろこぶ。晉書、溫嶠傳「見者皆──之」
愛欲のさかんなるをいふ。梁簡文帝文「業動心風、情漂──」=慾火。
人を愛して其の物にまで及ぼすをいふ。說苑、貴德「愛其人者、兼屋上之烏、憎其人者、惡其餘胥」
愛情を制する。又、をしき心をたちきる。徐堅詩「──遠和親」
めぐみ、いつくしみ。韓愈詩「君臣相憐加──」=恩愛。
めでこのむ。南史、謝靈運傳「郡有名山水、靈運素所──」
めでいつくしむ。史、五宗世家「膠西王端、有──少年爲郞」=寵幸·愛寵。
いつくしみなれる。南史「滑稽善爲諧謔、上亦──之」
きにいりのをんな。史、孫子傳「見且斬──大駭」=寵姬。
このみて詩歌をうたふ。又、其の詩歌。
ふるさとを大切に思ふ「──心」
人のむすめをいふ敬稱。類書纂要「稱人女曰令愛、又曰──」=令孃。
めぐみて生活さす。顏氏家訓「儲積器用、──黎民」
このみもてあそぶ。晉書、樂志「──在乎雕章」=愛翫。
○いつくしみうやまふ。仁愛と畏敬と。孝經「──盡于事親、而德敎加于百姓」○ 國 アイキヤウ 人ずきよし。=愛嬌。
いつくしみめぐむ。徐陵文「──以撫孤貧、威刑以禦强猾」=恩惠。
國 かはゆらし、人ずきがよし。=愛敬。
めでかへりみる、ひいきにする。楊修文「豈──之隆、使繫仰之情深耶」
だいじに守る、大切に保護する。顏氏家訓「借人典籍、皆須──」
己の國を大切にする。戰國周策「周君豈能無──哉」
かはゆがりて養ふ子。左、宣二「趙盾請以括爲公族、曰君姬氏之──也」
かはゆき子。=愛子。
目をかけてかはゆがりつかふ。
いつくしみて目をかける。唐書、竇皇后傳「諸子中、──最篤」
このむ、このみ。沈約文「生平──、不在人中」
○冬の日。左、文七、注「冬日可愛、夏日可畏」○日を惜む、孝子が親に事ふる心がけ。法言、孝至「不可得而久者、事親之謂也、孝子──」
佛 愛著に同じ。
いつくしみの心。禮、樂記「其──感者、其聲和以柔」
かはゆがる心。又、戀愛の心。
めでほめる。唐書、文藝傳「李華──士類、名隨以重」
○大切にしてをしむ。朱浮文「臨民親職、──倉庫」○ものをしみする。古詩「愚者──費、但爲後世嗤」
氣に入りのめかけ。後漢書、臧洪傳「欲殺其──、以食兵將」=寵妾。
佛 物に心がしみこむ、愛著心の深き義。楞嚴經「心生──」
佛 明王の一、もと印度の神、眞言密敎中の神とす、三目·六臂を具へて忿怒の相をあらはし、迷者の愛欲をひるがへして絕對眞理の愛となさしむる事を司る。
いつくしむと、にくむと。史、韓非傳「彌子瑕之行、未變於初也、前見賢而後獲罪者、──之至變也」=憎愛。
愛していただき尊ぶ。舊唐書「洽三軍──之情」
からだを大切にする。南齊書「重軀──、彼我無異」
倫理學にて、他人の幸福を增進することを以て行爲の標準とする主義。利己主義の對。=利他主義。
國 物をいつくしむ心の執著して離れざる義。淨住子「種種──、驅迫於我」=愛執。
かはゆがる。漢書、杜欽傳「好憎之心一生、則──偏于一人」=愛幸。
好みてよむ「──書」=愛誦。
いつくしみの心。=愛心。
梅の花を愛する。王冕詩「平生──頗成癖、踏雪行穿一雙屐」
いつくしみあはれむ。=愛憐。
かはゆがる心が廣くゆきわたる。韓愈、與陳給事書「──而情不專」
いつくしみなでる。宋史、范仲淹傳「號令明白、──士卒」
佛 八苦の一、親しき者と别るるかなしみ。柝玄記「常所親愛之人、乖違離散、不得共處、是爲────」
いつくしみしたふ。後漢書、卓茂傳「故舊雖行能與茂不同、而皆──欣欣焉」=愛戀。
愛情の爲めに束縛せらるる義。出曜經「其有衆生墮──者、必敗正道」
めでやしなふ。老子「──萬物、而不爲主」=愛育。
愛情と慾心と。又、戀愛を遂げんとする欲。瑞應經「感傷世閒沒於──之海」
をしむ。梁昭明太子文「徒深──情」=愛吝。
いつくしみかはゆがる。史、趙世家「太后曰、丈夫亦──少子乎」=憐愛。
こひしたふ。又、こひ。曹植、聖皇篇「沈吟有──」=戀愛。
宋の周惇頤の作りし文、蓮を以て君子に比す。明一統志「南康府(今の江西省に屬す)愛蓮池在府治後、宋守周敦頤鑿池種蓮其中」
①イ [寘]
②イ [支]
①こころ、こころばせ(心之發動也)「心─」「─志」「壹─」「眞─」大學「欲正其心、先誠其─」○おもふ(思念)はかる(度)おもはく、かんがへ。○おもふに、度るに、己の考へるには。柳宗元、桐葉封弟辨「吾─不然」─者とも連用す。○そもそも。古、抑に通用す。○わたくしのこころ、私情·私慾。論、子罕「子絕四、毋─、毋必、毋固、毋我」○うたがふ(疑)○のぞみ、かんかへ。○おもむき、いきほひ「筆─」○─大利は歐州南部の王國、卽ち古の大秦。=伊太利。
②ああ、感歎の辭。=噫。
同訓異義
オモフ 意·思·憶·懷·念·想·惟·顧の別は思(心部五畫)の條を見よ。
詩文などが我が思のままにすらすらと出來る。春渚紀聞「東坡曰、吾生平作文、意之所到、則筆力曲折隨之」
人の心をうかがひ迎へる。=迎意·承意。
人の心を察して氣に入るやぅにする、迎合する。=迎意。
心を寄せる、他の物ごとにかこつけて思ひをほのめかす。
心を寄せる、のぞみを屬する。史、夏紀「天下──焉」
氣をつける、注意する。史、樂毅傳「敢獻書以聞、惟君王──焉」
己の意見を堅く執りて屈せず。魏書、慕容寶傳「──抗言」
私欲をふせぐことの堅きに喩ふ。癸辛雜識「富鄭公有守口如瓶、────之語」
志を堅くまもる。晉書「雖受流放、──不移」
こころばせ。心のむかふところ。南史「要是──如此」=志向。
心のはたらき。宋書、褚叔度傳「謹實有──」=志幹。
人をうたがひきらふ。史、陳丞相世家「項王爲人──信讒」
こころもち、いきごみ。氣槪。後漢書、江表傳「一以──許知己、死亡不相負」
平氣にして驚かず。自如は自若に同じ。史、李將軍傳「吏士皆無人色、而廣────、益治軍事」
大いに得意なる貌。史、晏嬰傳「擁大蓋、策駟馬、────、甚自得也」
わけ。神仙傳「嚼墨噴之、皆成文字、滿紙各有──」=意味。
おもひのほか。=意表。
○かんがへ、心に思ふこと。舊唐書、高宗紀「天后上──十二條」○ 國 人を諫める義「親の──」
おもひ、かんがへ。=思想。
燕の異名〔嫏嬛記〕
○おもひ、かんがへ。○心理學にて思慮·選擇·決行などをする心のはたらき。
おもひ、かんがへ。近思錄「與自家──一般」
こころばへ。指·旨通ず。史記「乃斬一司馬、諭──」=意旨。
心理學にて心の覺醒して知覺ある狀態、卽ち知覺·情意等すべての心意作用の總稱。
○心のたくみ。くふう。杜甫詩「──慘澹經營中」○工業·藝術品等の考案。
國 意匠の案出者、又は其の繼承人の請願により、特許局長が原簿に記入して其の專用權を保畱せしむる法。
○おもはく。こころばせ、意思の趨行するところ。南史「其──不常如是」○ 國 うらみ(恨)「──がへし」
心のいとぐち、思の絲の如く繁き義。江總詩「遊人──多」
ぜにうち、あないち、ぜにを投げて遊ぶ一種の遊技。後漢書、梁冀傳「蹴鞠──之戲」=攤錢。
こころさま。孔平仲詩「開花又結子、──何煌煌」=情態。
○こころ、地は心の在る場所。俱舍論頌釋「──有喜有憂」○ 國 我がかんがへを通さんとする心「──惡し」
心のそこ、心のうち。=意中。
○わが心におもふ人。陶潛詩「念我───」○こひびと。=情人。
こころにかなふ。適正音は セキ 蘇軾詩「──忽忘返、路窮乃歸休」
人の心にかなふ。漢書、江充傳「所言──」
心にかけず、介ははさむ。=不爲意。
心にかけて忘れず、氣にとめる。唐書、同昌公主傳「公主薨、上日夕惴心──」
人の心をあらかじめ迎へ知る。禮記「孝者──承志」
氣に入るやぅにする。心にかなふ。晉書、張翰傳「張翰曰、人生貴得──」
わが思ふやぅにならず。ままならぬ。晉書、羊祜傳「天下───者恆十居七八」
ねがひ、のぞみ。後漢書、王允傳「自誇伐、旣失──」
心情の制しがたきに喩ふ。安樂集「諸凡夫、心如野馬、識劇猿猴、馳騁六塵、何曾停息」
意は私意、必は己の意見を必ず通さんとすること、固は旣往のことにつきて執念ぶかきこと、我は我意のつよきこと。字解參看。
思の外、豫想外。宋史、英宗紀「每有裁決、皆出羣臣──」=意外。
事のわけ「──深長」杜牧詩「始覺空門──長」=意義。
詩文などの意味の極めて深き義。論語、序說「覺────」
外國文を其の大體の意味をとりて飜譯する義。直譯の對。
得んとおもふ心。
おもひはかる。=臆度。
思ひがけが無かりき、料らざりき。辛延年詩「──金吾子、娉婷過我廬」
①イン·オン [侵]
②アン·オン [覃]
①──は聲の安らかにやはらぐ貌。左、昭十二「祈招之──、式昭德音」祈招は音曲の名。又、深くしづかなる貌。嵆康、琴賦「──琴德」
②だまる(默)唐書、杜讓能傳「朕不能──度日」
①ウン·ヲン [問]
②ウツ ウン [物]
慍は本字
①いきどほり、いきどほる(恚)心の中にむっとする、怒氣を含む「憤─」論、學而「人不知而不─、不亦君子乎」○うらむ(怨·恨)
②むすぼる(鬱積)
同訓異義
イカル 愠·怒·忿·瞋等の別は怒(心部六畫)の條を見よ。
不平の意を含みて面會する。論、衞靈公「子路─、─曰、君子亦有窮乎」高適詩「感激多──」
いきどほり怨む顏つき。論、公冶長「三已之、無──」
いきどほる。吳越春秋「三年不──、而無恨色」
いきどほる。柳宗元、弔屈原文「獨──而增傷」
いかれるやぅす。列子「商丘開常無──」
ウン [吻]
○あつし(重厚)○はかる(謀)○人名、楊─は漢人。
淸の武進の人、名は格、字を以て行はる、自ら東園草衣生と號し、又白雲外史と號す、晚に南田老人と稱す。古文詞に工にして畫は尤も精絕、初め山水を畫き、後花卉を畫き、沒骨花の一派を創む、自ら題識を爲りて之を書す、世に南田三絕と稱す。
前條を見よ。
カク [陌]
○かざる(飾)○つつしむ(謹)かふ(變更)
感動して容色を變へる。荀、禮論「──唈僾」
ガク ゴ [藥]
○あわてる(遽)○あわておどろく(驚遽)「錯─」「驚─」
驚きて相視る。李華賦「──沈沈」
おどろく貌。史、留侯世家「孺子下取履、良──欲毆之」
おどろき視る貌。班固、答賓戲「雖輕迅與僄狡、猶──而不能階」文選には愕を?に作る。
①カン [感]
②カン [勘]
①うごく、うごかす(動·撼)心が動く「─動」「百─」「孝─」○いたる(格)書、大禹謨「至諴─レ神」○ふる(觸)文選、七發「夏則雷霆霹靂之所─也」○こたへひびく。○になふ、恩に感ずる「─恩」
②うらむ(恨)憾と通ず。
心に感じてむせびなきす。任昉、王儉集序「因便──、若不自勝」
心に感じてよろこぶ。權德輿文「得其和、則懽然──」
○物にふれて心にひびきこたへる。後漢書、張綱傳「姦謀自消、和氣──」○信心の誠が神佛に通ずる、感通する。○導體が磁石·發電體等に接近して電氣又は磁氣を感じ起す。
めぐみをありがたくかんずる。海錄碎事「惟言、千──、萬──」
めぐみにかんじてありがたく思ふ、感激する。韓愈詩「──君子徳」
心にかんじなげく。史、季布傳「婢妾賤人、──而自殺」李白詩「知音不易得、撫劍增──」=憤慨。
國を憂ひ世を思ふのあまり、悲しき歌を詠じて鬱結せる憂をもらす士。韓愈、送董邵南序「燕趙古稱多──────」
感慨に通ず、一說に意氣に感じて節槪を立つる義。=感槩。
感動してかなしみむせぶ。隋書、煬帝紀「念兹在兹、興言──」
心うごきておどろく。人物志「徵見于外、──以明」
外界の刺戟を心に感受する。
感覺を主どる神經の本幹、大腦·延髓·脊髓の總稱。
他の德に感じて己の及ばざるをはづる。晉書「鄕鄰──」
昔を思ひ出して心にかんずる。後漢書「兆人懷──之哀」=念舊。
深く心にかんしんしてなく。宋史、蘇軾傳「宣仁后與哲宗亦泣、左右皆──」
國 感歎してよむに足る傑作の詩歌、俳諧など。
おもしろみ、興味。劉基詩「──詩成聊自鑰、忘憂花好爲誰開」
○感じて善に遷る。嵆康、琴賦序「美其──、則以垂涕爲貴」○俗には惡しき方に化するにもいふ。
不良少年などを感化して善人たらしめるしごと、それ等の人を收容する所を感化院といふ。
心に感じてくやむ。唐書、陳子昻傳「他日入鄕校──、卽痛修飾」
心にかんじおもふ、かんずるおもひ。杜牧詩「聊書──韻」
外界の刺戟を受けて腦に傳ふる機關、耳·目·舌·鼻·皮膚の類。=感覺器官。
深く心にかんじて氣が奮ふ。諸葛亮、出師表「由是──、遂許先帝以馳驅」
心に感じてさとる。史記「夫子旣以──而贖我」
心をうごかしうらむ。漢書「內無──之隙、外無侵侮之羞」
心にかんじおもふ。晉書、賈充傳「大──發于寤寐」
やまひに冒される。宋史「至暮自不暇食、遂──」
心にしみこみて深く嘉みする。=感服。
ありがたくかんじてれいをいふ。韓愈詩「──情至骨」
國 戰功を賞して主將より與ふる書附。=勳狀。
○かんじて心をうごかす。劉伶文「不覺寒暑之切肌、利欲之──」○心理學にて苦·樂·美·醜等を感ずる心のはたらき。
心をうごかしいためる。感觸して心を傷める。阮籍詩「悅懌未交接、晤言用──」
○感心してほめる。○善行をほめて賜はる襃美。
心理學にて外界の刺戟を感覺神經によりて知得する心のはたらき。
外物に觸れて心にかんずる。宋史「聲氣之所──」
他の物の性が深くしみてうつる。惡習又病氣がうつる。
ありがたくおしいただく。白居易文「殊恩特奬、非次陞遷、──驚惶、隕越無地」=欣戴。
深く心にかんじてためいきをつく。張九齡詩「閒情多──、淸景暫登臨」
文法にて喜怒哀樂等の感情をあらはす語「嗚呼」「吁」などの類。=感動詞·感嘆詞。
心にかんじて知る。韓愈詩「豈非正直能──」=感應·感徹。
心に感動してなく。舊唐書、李晟傳「宮闈咸肅、抃舞──」
まことの心が他人に感じ通ずる。後漢書、諒輔傳「改服責己、爲民祈福、精誠懇到、未有──」=感通。
心に銘じて忘れず、篆文にて刻する義。=感銘·銘篆。
ふかく心にしみて感ずる。後漢書、江革傳「辭氣愿款、有足──人者」
深くかんじなげく。梁書「服制雖除、每言輒──」=哀慟。
神佛にまごころの通じてさとり得るおつげをうける。
深く心にかんじて忘れず、佩は身に帶びる。=感銘·感荷。
寒氣に觸れてかぜをひく。水滸傳「小人於道──風寒未曾痊可」=風邪。
めぐみに感動して慕ひつく。唐書「故夷夏──」
深くかんしんしてしたがふ。秦觀文「王者所以──天下者、惠與威也」
心にかんじてふるひ起る。唐書、朱忠亮傳「聞者莫不──」=感激。
心にかんじて振ひ起る。後漢書「雍丘之圍、臧洪之──壯矣」=感奮。
心にかんじてこひしたふ。隋書、獨孤皇后傳「后早失二親、常懷──」
心にかんじてわすれず。心に銘刻して忘れず。陳師道文「書問見貽、──斯切」=銘感。
心にかんじてもだえろ。王襃文「刺史──、舒音而詠至德」
深く心にかんじて岀づる淚、うれしなみだ。=感涕。
グ [虞]
○おろか(癡)ばか、才智のはたらき鈍 ニブ し「蠢─」「迂─」「下─」又、其の人。○くらし(昧·闇)「闇─」○馬鹿正直。論、先進「柴也─」○ばかにする、あなどる「─弄」○かたし(難)○おほふ(蔽·蒙)○自己の謙稱「─按」○自己に關する事物に添へて謙遜の意をあらはす「─見」「─僧」「─弟」
己のかんがへをいふ謙稱。=愚考。
おろかにしてくらし。蜀志、法正傳「──策薄、精誠不感、以至於此」淨住子「──滅則慧光發」=闇愚·愚暗。
己の考の謙稱。魏書「──所及、不能自已」=愚見。
知をかくして愚なるが如くする。崔瑗、座右銘「無使名過實、──聖所臧」
おろか。騃は痴、闇愚にして事理を知らず。北史·魏宗室傳「阿倪──」=愚魯。
おろかなるてがら、己の功の謙稱。王融文「貪及明時、展悉──」
おろかにしてまこと。後漢書「其人性──、少嗜慾」
おろかにしてくるふ。又、其の者。韓維詩「徑欲追躡忘──」
○おろかなるはかりごと。=愚策。○己の考の謙稱。北史「──可錄、請爲明公前驅」
おろかなる考、己の考の謙稱。晉書、王渾傳「敢陳──、觸犯天威」
愚かにして守るところある義、狷は韻府「有所不爲也」と注す。後漢書、第五倫傳「不勝──、昧死自表」狷一に獧に作る。
ぉろかにしてくらし。書經、疏「其人──之子」
勉めで已まざれば大事も必ず成功すといふ譬。北山の愚公、年九十に垂んとして、己の家の前に峙てる山を他に移さんとて箕畚を以て其の土を運ぶ、河曲の智叟、其の愚を笑ひて、之を止めけるに、愚公われ死すとも子子孫孫、毁ちて窮らずんば、何ぞ山の移らざることあらんやとて聞かず、上帝其の誠心に感じ、夸娥氏の二子をして二山を負ひて他に移さしむ〔列、湯問〕
おろかなるまごころ。范成大詩「──無華敢自欺」
○おろかなる容貌。○ グシヤウ おろかなる宰相。史記「夫以聖主責──、君受禍不久矣」
己の推量の謙稱。
おろかなるこころざし。己の志の謙稱。劉向文「故使使者陳──」
おろかなる人。老子「我──之心也哉」=愚者。
おろかなる者も、たまには良き考を出すをいふ。史、淮陰侯傳「廣武君曰、臣聞知者千慮必有一失、────────」
自己の謙稱。
おろかにして智あさし。蔡邕文「臣──小才、竊假階級」
おろかにしてかよわし。司馬光詩「山林付──」
○おろかなるおやぢ。又、老人の自身の謙稱。○愚公に同じ。李德裕文「雖──之復生、焉能移其咫步」愚公移山參看。
僧の自身の謙稱。=野衲。
己のせがれをいふ謙稱。=賤息。
おろかにしておとる。何承天文「誠非──所能究言」
○次條に同じ。○ 國 己の不平を訴へる、なきごと。
おろか。癡は痴、不慧。阿毗曇論「──邪見」=愚痴·愚魯·愚鈍。
おろかにして忠誠。又、己の忠誠の心の謙稱。漢書、張湯傳「臣固──、若張湯乃詐忠」
己がまごころをつくしいたすことの謙辭。枚乘文「臣願披腹心、而───」
ぉろかなるまごころ。又、己の心の謙稱。洛陽伽藍記「乞收成旨、以允──」
おろかにして直し。己の正直なることの謙稱。宋史、李綱傳「惟陛下赦其──、而取其拳拳之忠」
おろかにしてかろがろし。陳琳文「──短略、輕進易退」
おろかににぶし、駑は鈍。後漢書、皇甫規傳「明詔不以臣──、急使軍」=愚鈍。
おろかにしてにぶし。元結詩「僻居養──」=愚魯。
にぶし、頓は鈍。魏書、劉文曄傳「泣曰、臣──、理極再見無期」=愚鈍·愚魯。
おろかにして智うすし。權德輿文「以臣──、累奉恩榮」
おろかなるものはますますおろかとなる。韓愈、師說「今之衆人、其下聖人也亦遠矣、而恥學於師、是故聖益聖、───」
おろかにしていやし。又、己の才能の謙稱。唐書「備位保傅、冀得效──」=愚陋·愚劣。
おろかにして事を誤る。典論「古今──、豈惟一人哉」
おろかなる男女。書、五子之歌「予視天下────、一能勝予」
おろかなる人、ばかもの。=愚人·愚者。
おろかにしてくらし、蔽は事理に昧し。二十四章經「使人──者、愛與欲也」=愚昧·愚蒙。
おろかにして才智くらし。鮑照文「實非──所宜循踐」=愚蒙·愚昧。
おろかにしてくらし。馬汝驥詩「直道若──」=愚蒙。
ぉろかにして節なし、樸は朴。張籍詩「況我──姿、强趨利名場」
おろかにして事理に暗し。舊唐書、賈耽傳「臣雖──、夙嘗師範、累蒙拔擢」
ぉろかにしてくらし、蒙は無知。杜甫詩「此語亦足爲──」=愚昧。
老人自身の謙稱。
己のおもんぱかりの謙稱。漢書、梅福傳「盡平生之──」
おろかにして才にぶし。漢書、谷永傳「永等──」
おろか。魯は鈍。蘇轍詩「東方書生多──」=愚騃·愚蒙。
あなどりてばかにする。左、襄四「施賂于外、──其民」=舞弄。
おろかにしていやし。韓愈、潮州謝表「臣受性──」=愚鄙·愚劣·陋愚。
おろかにしてまどふ。史、日者傳「夫──之人、豈能以一言而知之哉」
クヮウ [陽]
通じて皇に作る
○おそる(恐)おそれ「恐─」「震─」「兢─」○あわてる(遽)「驚─」「駭─」
同訓異義
オソル 惶·恐·懼·畏·怖·悸等の別は恐(心部六畫)の條を見よ。
おそれおどろく。唐書、裴行儉傳「煙塵漲天而南、斥候──」=恇駭·怖駭。
おそれてあせを流す。廣異志「仁軌──久之」
おそれて心をののく。王逸、九思「──兮失氣」=恐悸。
おそれあわてる。=惶遽。
おそれてあわただし。宋史「聞有變、──而歸」
おそれる。漢書、朱博傳「對言──」=恐惶。
地名、江西省贛江中の最も險惡なる灘の名、萬安縣の境に在り。=皇恐灘。
おそれる。周書「軍至──」=惶恐·悚懼·畏懼。
おそれる貌。北史、王肅傳「臣庶──無復情地」=恐惶。
おそれる。鮑照文「執啓涕結、伏追──」
おそれみだれる。後漢書、杜詩傳「兵士暴橫、民閒百姓──」=恇擾。
おそれていたみかなしむ。晉書、苟晞傳「奉被手詔、委臣征討、伏讀跪歎、五情──」
おそれうれふ。柳宗元、陳情啓「下情至今猶增──」
おそれをののく。後漢書「皆──憂念」=惶恐。
おそれまどふ。後漢書、光武帝紀「──不知所之」=恐惑。
①ケイ ケッ [霽]
②カイ [泰]
①いこふ、やすむ(休息)=憩。
②むさぼる(貪)左、昭元「忨歲而─日」生な貪る義。○にはか、いそぐ(急)
ケイ [庚]
○うれふ(憂)○ひとり(單)ひとりもの(獨)兄弟のなき者。=煢。
うれふる貌。詩、小雅「憂心──」=煢煢。
ひとりもの。詩、小雅「哀此──」獨は子孫のなき者。=煢獨。
やもめ。王禹偁詩「萬家呼父母、百里撫──」
ケフ [葉]
別に?に作る
○こころよし(快)「和─」○あきたる、志滿足す。漢書、文帝紀「天下人民、未有?志」
あきたる心、滿足する志。字解參看。=?志。
ケン [阮]
○ゆたか、ひろし(寬)心の寬裕なる貌。詩、衞風「赫兮─兮」
ケン [先]
又、諐に作る
○あやまる、あやまち(過失)書、伊訓「惟茲三風十─」○とが、つみ(罪)「罪─」○たがふ(差)○あしきやまひ、惡疾。左、昭二六「王─于厥身」
同訓異義
アヤマル 愆·誤·謬·訛·錯·過·失の別は誤(言部六畫)の條を見よ。
あやまち、とがめ。張衡、東京賦「袛以昭其──」李白詩「功成身不退、自古多──」
罪を身にひき受ける。蜀志「街亭之役、咎由馬謖、而君──、深自貶抑」=引咎。
時期をたがへあやまる。易、歸妹「歸妹──」
正しき義理をあやまる。左傳「於德爲──、於人爲失禮」
あやまち。
とがあやまち。宋書、沈演之傳「上怒、下詔徙勃西陲、令一思──、于是徙梁州」
時序の調和を失ふ。南史、宋文帝紀「五年春正月、以陰陽──、求讜言」
あやまりて滯る。錯誤留滯する。蜀志、費褘傳「董允代費禕爲尙書令、旬日之中、事多──」
あやまち、過失。揚雄箴「匪愆匪忒、公尹攸宜」
あやまち。唐書、閻用之傳「一日糾──不法數十事」
あやまち。蜀志、劉封傳、注「臣委質以來、──山積」
①コン [元]
②ボン [願]
①心くらし。孟、梁惠王「吾─不能進於是矣」─惛。
②もだゆ(悶懣)
くらくおろか。管子「桓公問於管仲曰、寡人幼弱──」=昏愚·惛愚。
サゥ [養]
○こひねがひおもふ(冀思)○おもひ「思─」「情─」「冥─」「積─」「妙─」おもふ(意)後漢書、王霸傳「夢─賢士」○おもひやる、おしはかる「─像」「豫─」「緬─」
同訓異義
オモフ 想·思·憶·懷·意·念·惟·顧の別は思(心部五畫)の條を見よ。
考へおもふ、おもひ。王獻之、尺牘「卽日如何、深──」
前の事を思ひおこす。
おもひみる。水經、注「──其人」
○おもひやる。楚辭「思舊故、以──兮」○心理學にて、旣知の觀念に本づきて新觀念を構成する心のはたらき。
おもひやる。
意識に印象せる一切の心的現象。
おもひしたふ。後漢書、趙壹傳「士大夫──其風采」=思慕。
筝の曲の名。楊維楨詩「傳來馬上曲、猶唱───」もとは相府蓮に作る、俗に憐を戀に作る。
かみわけ考へる。梁簡文帝文「──之懷、轉復無極」
シゥ [尤]
○うれふ、うれへ(憂)「別─」「離─」「旅─」「憂─」○かなしむ(悲)なげく(歎)「悲─」○おもんぱかる(慮)
同訓異義
ウレフ 愁·憂·患·恤·閔·憫·愍·悄·病○愁は物さびしく、浮かぬ義、旅愁·客愁などと用ふ。○憂は心の中に苦勞するなり、憂レ國と用ふ、居レ憂とは、喪中のことなり。○患は病·災難などを、苦にするなり、災患·苦患などと用ふ、憂主レ心患主レ事と註し、憂は內を主とし、患は外を主とし、內憂外患と熟す。史、始皇紀「臣主一レ心、而憂二海內之患一」○恤は、あはれむとも訓む、ふびんに思ふ義。小學「患難相恤」○閔·憫·愍の三字、同じく、あはれむとも訓む、氣の毒におもふ義、恤と略~同じ。○悄は憂なり、さびしく憂ふる義。詩、邶風「憂心悄悄」○病は苦にして憂ふる義。禮記「病レ不レ得二其衆一也」
うれふるこころ。溫庭筠詩「平明花木有──」
うれへて心ふさがる。書經、疏「──不寐、目恆鰥鰥然」
かなしきこゑ。高適詩「耿耿尊酒前、聯雁飛──」
うれへうらむ。後漢書、明帝紀「百姓──、情無告訴」
うれへの甚だしきを海に喩へいふ。孟郊詩「醒時不可過、──浩無涯」耶律楚材詩「萬里西行愁似海、千山東望遠如天」
うれへてみる。杜甫、見螢火詩「滄江白髮──汝」
うれへがほ。吳萊詩「洞府寖遠多──」
うれふる心。陸龜蒙詩「我有──無可那」
うれへくるしむ。李陵、答蘇武書「身之窮困、獨坐──」=愁困。
甚だしきうれへくるしみ。白居易、王昭君詩「滿面胡沙滿鬢風、眉銷殘黛臉銷紅、────顦顇盡、如今卻似畫圖中」
うれふるおもひ。=愁心·愁思·憂懷。
うれひみる。王維詩「遙知漢使蕭關外、──孤城落日邊」
うれへくるしむ。後漢書、公孫述傳「百姓──、不堪上命」
うれへうらむ。杜甫詩「舊犬知──、垂頭傍我牀」=愁怨。
しんぱいのあまり白髮となりしを霜に喩ふ。白居易、朱陳村詩「悲火燒心曲、──侵髩根」
うれふ、殺は助字。孟浩然詩「江風白浪起、──渡頭人」
うれふるおもひ。長門賦「援雅琴以變調兮、奏──之不可長」=憂思·愁心。
うれふる貌。楚辭「心──而思舊邦」
うれへにくむ。北史、王孝籍傳「──甚乎厲鬼」
心にうれへある人。戴叔倫詩「沅湘日夜東流去、不爲──住少時」
うれふる心。=愁思·愁膓。
かなしみつらし。杜甫詩「索居猶寂寞、相遇益──」
愁へ苦しむ境遇。張養浩詩「一退──萬里降」
うれへいたむ。=愁痛·憂傷·悲傷。
うれふる心、緒は緒の動く端緒。孟浩然詩「送君不相見、日暮獨──」=憂思。
うれふるやぅす。=憂色。
かなしみいたむ。楚辭「意荒忽而流蕩兮、心──而增悲」
かなしきこゑ。=哀聲。
うれへてうつたへる。楊萬里詩「江山──鸎爲泣」
うれへなげく。唐書、循吏傳「民去──而就安妥」
心をうれへしむ。又、うれふる心。劉禹錫詩「──正遇斷猿時」
うれへいたむ。左傳「夫人──、不知所庇」=愁傷。
うれへてなく。傅休奕詩「靑雲俳徊、戢我──」=悲啼。
うれひおそれる。韋應物詩「收此還我家、將還復──」
うれへいたむ。後漢書、楊秉傳「四方──」
うれへてひそむるまゆ、しんぱいげな顏つき。漢書「梁冀妻孫壽、善爲──啼粧」劉兼詩「强隨綠柳展──」
うれへおそれる。鮑照詩「始得忘憂消──」
うれへいきどほる。蘇舜欽詩「──徒滿胷」
うれひねむる。張繼詩「江楓漁火對──」
しんぱいのあまりに見るゆめ。高適詩「邊城夜夜多──」
かなしみもだゆ。姚合詩「一官無限日、──欲何如」
うれひ、もだえる。王逸、招魂章句「──山澤」
愁色に同じ。
うれへを催すながあめ。太平御覽「纂要曰、久雨曰苦雨、曰──」朱熹詩「浮雲蔽中天、──隔秋窗」=苦雨。
うれへのなみだ。常建詩「──變楚竹、蛾眉喪湘川」
ジン [侵]
○まこと(誠)=諶。○斟─はたゆたふ(遲疑)
①ジャ [馬]
②ジャク [藥]
①ひく(引著)羅鄴詩「微香暗─遊人步」○みだる(亂)
②ひく(挐)
ひきおこす。感情を引き起す。
シュン [軫]
通じて蠢に作る
○おろか(愚)一說に憃の誤用「愚─」○みだる(亂)動き擾れる。
うごきみだれる貌。左、昭二四「今王室實──焉、吾小國懼矣」
愚にして通ぜず。皮日休、悼賈文「愍耄儒之──兮」
ショク [職]
通音ソク
○いたむ(痛)痛み悲む「懇─」「悲─」○かなしむ(愴)
同訓異義
イタム 惻·悼·傷·痛·隱·悽·慘·戚等の別は悼(心部八畫)の條を見よ。
あはれむ、あはれみ。惻は傷の切なるなり、隱は痛の深きなり。孟、公孫丑「──之心、仁之端也」
いたみかなしむ。荀悅文「賈誼過湘水、弔屈原、──動懷」劉基詩「慷慨思古人、──淚沾纓」
いたみあはれむこころ。=惻隱之心。
いたみくるしむ。韓愈、元和聖德詩「侍祠之臣、助我──」
いたみかなしむ。傅咸賦「痛兩?之雙刖、心──以情傷」
甚だいたみせまる。傅咸賦「心──以興思、思有感于聖明」
あはれみいたむ貌。=惻惻。
あはれみいたむ貌。後漢書「誾誾──、出于誠心」
いたみかなしむ。禮、問喪「──之心、痛疾之意」=忉怛。
いたみかなしむ。論衡「召醫和藥者、──慇懃、冀有驗也」
いたみあはれむ。梅堯臣詩「取樂在須臾、我心良──」
ズヰ [寘]
○おそれる(懼)○うれふ(憂)
おぢおそれる。王安石文「親友──焉」
うれひおそれる。史、項羽紀「楚兵呼聲動天、諸侯軍、無不人人──」=惶恐。
おそれちぢむ。唐書、劉洎傳「猶恐羣臣──不敢進」
びくびくとおそれる貌。詩、秦風「臨其穴、──其慄」
足のなき蟲のうごめく貌。莊子「──之蟲、肖翹之物、莫不失其性」=惴耎。
おそれうれふ。柳宗元文「惸惸然欷歔──」
おそれふるふ。惴惴を見よ。
セイ [青]
○さとし、さとる(悟)心を靜かにして道理をさとる。○しづか(靜)心がおちつく。
心さとし。了慧なる貌。
動きて定らざる貌。元稹詩「桐花暗淡柳──」
○心さとき貌。昧からず。上蔡語錄「敬是常──法」劉基銘「昭昭生于──、憒憒岀于冥冥」○鶯の聲。陸游詩「鶯語──野雉驕」
①セゥ シウ [篠]
②シウ [尤]
③シウ [宥]
①かほいろがかはる、容色變ずる、しほれる。○愁ふる貌。○つつしむ(謹)
②いろかはる。
③さびし、ものさびし(蕭條)
悲みていたむ。權德輿、傷馴鳥賦「忽──以顦顇」=悽慘。
○かほ色を變ふる貌。禮、哀公問「──作色」○うれひかなしむ貌。赤壁賦「──正襟危坐」
①ゼン·ネン ダン·ナン [銑]
②ダ [箇]
①よわし(劣弱)
②おそれる、よわし(怯)=懦。漢書、武帝紀「太守坐畏─棄市」
①タ·ダ [哿]
②ダ [歌]
通じて媠に作る
①おこたる、おこたり(懈怠)なまける「怠─」「怯─」「昏─」「遊─」「敖─」書、益稷「股肱─哉」○つつしまず(不敬)○あなどる(易)輕んずる。
②なまり(訛)正しからざることば。曲禮「言不─」
同訓異義
オコタル 惰·怠·解·慢の別は怠(心部五畫)の條を見よ。
なまけてあそぶ。禮、玉藻「垂緌五寸、──之士也」=媠游。
なまけたるきぶん、いやき。
なまけてほしいまま。宋史、隱逸傳「語言脫易、擧止──」
なまけて心よわし。
おこたる。漢書、成帝紀「閒者民彌──、鄕本者少、趍末者衆」=懈怠·怠惰。
なまけてなげやりにする。陸游詩「兒童勿──」=怠惰苟且。
なまける農夫。書經「──自安、不暋作勞」
事をおこたりすてる。周禮、地官注「起其勸善樂業之心、不使──」=怠廢。
なまけてまづし。乞食 コジキ をいふ。祝允明猥談「奉化有丐戶、俗謂之──」=惰民。
おこたりあなどる。史、樂書「──邪僻之氣、不設于身體」=怠慢。
なまけてねむる。
なまける。論衡「──之人不力農」=懶怠。
なまけてしだらなきかたち。北史「自旦至暮、略無──」
①タウ [養]
②ショウ [陽]
①ほしいまま(放)
②── シヨウシヨウ は直く疾き貌。禮、玉藻「行容──」
ほしいままにしてあらし。荀、榮辱「──憍暴」
テフ [葉]
○おそれる(懼)○──はあやぶみおそれる。後漢書、寒朗傳贊「──楚黎」○しづか(靜)
おそれていきをこらす。後漢書、竇后紀「宮房──」
ナゥ [皓]
○なやみ、なやむ、苦慮する「憂─」韓偓詩「春─情懷身覺瘦」なやます、苦める。○うらむ、恨みわづらふ。○懊─は晉の時の民閒の歌謠の名〔晉書、樂志〕=懊憹。○ 佛 煩─ ボンナウ はうき世のほだしに心の引かれるわづらひ。○ 國 ナウ 「御─」は天子の病氣。
同訓異義
ナヤム 惱·懊·艱·難·阻·屯·邅·蹇○惱はくるしみなやむ、苦惱·憂惱·煩惱と連用す。○懊は恨み惱む義、懊惱と連用す。○艱·難の二字共に事のなんぎなる義。○阻は險なり、難なり、むつかしくして、思ふやぅにゆかぬ義。書經「黎民阻レ飢」○屯·邅·蹇の三字共に、なやむと訓す、屯は音チュン草木の土を破り出でんとして岀で難き意、轉じてさわりありて進み得ざるにいふ、迍に同じ、邅は音テン、ゆきなやみ、たちもとほる義、屯邅と連用す。○蹇は音ケンあしなへなり、轉じて險難の義に用ふ。
くるしめそこなふ、くるしみ。法苑珠林「以善利生、徒無相──」
なやみくるしむ、なやみ。=苦惱。
なやむ。なやます。李白詩「千杯綠酒何辭醉、一面紅妝──人」
なやみもたえる、なやみ。
ビン [軫]
通じて閔に作る
○あはれむ(憐恤)「憐─」「慈─「「惜─」「弔─」○いたむ(痛)○うれふ(憂)○かなしむ(悲)諡法「使民悲傷曰─」
ふびんにおもふ貌。いたましくあはれなる貌。漢書、宣帝紀「朕甚─—」=愍然·憫然。
前條に同じ。
ヒョク [職]
通音フク
○まこと、まごころ(誠志)漢書、劉向傳「發憤悃─」○心むすぼれる(鬱結)
まごころのいきどほり、億は臆 ムネ 漢書、陳湯傳「策厲──、義勇奮發」
心むすぼれる貌。後漢書、馮衍傳「心──而紛紜」李華、弔古戰場文「──誰訴」=鬱結·腷臆。
かなしみいきどほる。潘岳文「──失聲」=哀憤。
ヒョク [職]
通音フク
もとる(戾·很)かたいぢ「剛─」「狠─」
いさめにもとる。諫言を用ひず。左、僖十五「──違卜、固敗是求」
ねぢけもとる。王融文「風土之思深、──之情動」=悖戾。
ヘン [銑]
通じて褊に作る
○こころせまし。○きみじか(性急)
こころせまし。=褊狹。
せまきこころ、器量が淺く狹し。莊、山木「有虛船來觸舟、雖有──之人不怒」=褊心。
ボウ [宥]
おろか(愚)
①ユ [虞]
②トウ [尤]
③ユ [麌]
①やはらぎよろこぶ(和悅)「─悅」「怡─」「欣─」「恬─」よろこび(悅·懌)よろこばす。呂覽、禁塞「以─其意」○たのしむ、たのしましむ(樂)○したがふ(服)いたはる(勞)
②かりそめ(苟且)周禮、大司徒「則民不─」=偸。
③ものうし(懶)つかれる(勞)=窳。
同訓異義
ヨロコブ 愉·喜·欣·悅·歡·怡等の別は喜(口部九畫)の條を見よ。
たのしみやすんず。荀子「爲堯禹、則常──、爲工匠農賈、則常煩勞」=安樂。
よろこぶ。人物志「聽辯說、則擬鍔而──」=夷悅·愉懌。
こころよし。史、酷吏傳「非武健嚴酷、惡能勝其任、而──乎」
愉悅に同じ。
よろこばしげなるかほ色。禮、祭義「有和氣者、必有──、有──者、必有婉容」
この上もなくここちよし。
顏色のやはらぎよろこぶ貌。論、鄕黨「私覿、──也」
よろこびたのしむ。楚辭、九章「蕩志而──」
①ユ [麌]
②ユ [虞]
①まさる(勝)孟、告子「丹之治水也─於禹」○すぐ(過)○かしこし(賢)論、公冶長「女與囘也孰─」○すすむ(進)○ます(益)○いゆ(瘥)病がなほる「平─」孟、公孫丑「昔者疾、今日─」=癒。
②いよいよ。○よろこぶ、愉に通ず。
同訓異義
イヨイヨ 愈·彌○愈はまさると訓む、いやましと譯す、一段を上ノボれば、又、一段といふ如く、さきへさきへとこゆる意なり。○彌は、わたると訓む、段段に滿ちて、一ぱいになりたる意なり、弟子彌衆といへば、四方より聚り來る弟子が、いやまし多くなりたる義なり。○マサル愈·優·勝·賢の別は優(人部十五畫)の條を見よ。
おろかなる心をいやす。說苑、說叢「人皆知以食愈飢、莫知以學──」
憂ふる心の甚だしき貌。詩、小雅「憂心──、是以有侮」
10畫
イン [眞]
殷に通ず
○いたむ(痛)○ねんごろ「─懃」
思ひいたむ貌。詩、小雅「憂心──」=殷殷。
ねんごろ(委曲)人と相親みて懇にする。司馬遷文「未嘗銜杯酒接──之歡」=殷勤。
男女思慕の情を通ずる。漢書、司馬相如傳「相如乃使侍人重賜文君侍者通慇懃」文君は卓氏の女、後に相如の妻となる。
愠(心部九畫)の本字。
エゥ [蕭]
○むなさわぎ(悸)○よこしま(邪)○まどふ(惑)○みだる(亂)○──は憂へてうつたふる所なき貌。爾雅、釋訓「──憂無告也」
カイ ゲ [賄]
通音ガイ豈·凱に通ず
○やすし(康)やはらぐ「和─」○たのしむ(樂)○かちいくさの樂(軍勝之樂)○みなみかぜ(南風)
かちどきのうた。司馬法「得意則──、──、示喜也」=凱歌。
かちいくさに奏する音樂。周禮「──獻於社」=凱樂。
やはらぎたのしむ。孝經「詩云、──君子、民之父母」=凱弟·豈弟·樂易。
みなみかぜ。楚辭「順──以從遊」=凱風。
カク コク [覺]
愨は俗字
○つつしむ(謹)「嚴─」「謹─」すなほ(愿)質樸·質實「愿─」○まこと(誠)「端─」「誠─」○よし(善)
誠實なるさむらひ。荀、不苟「若是則可謂──矣」
①キ·ケ [未]
②カイ [泰]
③ガイ [隊]
①ためいき(太息)ためいきをする聲。
②氣が滿つる。
③いかる、いきどほる(恨怒)「忼─」「憤─」「敵─心」左、文四「諸侯敵王所─」
氣が滿つる、ためいきをつく貌。禮、祭義「出戶而聽、──必有聞乎其歎息之聲」
いきどほる。敵愾心をいふ。常袞文「──邊戎、徘徊孤劍」=憤愾·忼愾。
キ [寘]
もと媿に作る
はづ、はぢ(慙·恥)「慙─」「赧─」「感─」詩、大雅「尚不─于屋漏」
同訓異義
ハヅ 愧·恥·辱·忝·慙·怍·羞等の別は恥(心部六畫)の條を見よ。
はぢおそる。白居易詩「捫心無──、騰口有謗讟」
はづると、なげくと。北史、魏宣武帝紀「有兼──」=慙慨。
はぢおどろく。晉書、賈充傳「驚起而散、充甚──」
はぢてあせかく。李商隱詩「靈衣沾──」=慙汗。
はぢおそれる。舊唐書「犯者──、遂改節爲廉士」
はぢさとる。江淹文「──終朝、慙萝流夜」=愧悟。
はぢうらむ。吳越春秋「心氣怏怏、常有──之色」=慙恨。
はづ。韓詩外傳「田子──、走岀造朝還金」=慙愧·愧恥。
はぢて死する、深くはぢ入る。=慙死。
はづ、はぢ。=羞恥·愧恥。
內に省みてやましき心。左傳「其祝史薦信無──矣」
はぢて氣がはばむ。唐書、蠻夷傳「縮縮──」
はづるかほいろ。後漢書、郭泰傳「無──」=慙色。
はぢわらふ。後漢書、明帝紀「令人──」
はぢて顏を赤らむ。曹植文「五情──」=赧愧。
はづ。はぢ。書經「其心──、若撻于巿」=愧羞。
はぢおそれる。魏志、注「中心──、敢竭愚情」=慚惕。
はぢてかほを赤くする。蘇頲文「公私──、夙夜憂惶」=愧赧。
はぢる。蘇軾詩「倒裳起謝客、夢覺兩──」
はぢて屈ししたがふ。宋史、程之邵傳「使者──」
はぢうらみて怒る。宋史、何承矩傳「契丹──、故有此役」
はぢいきどほる。晉書、王敦傳、疏「慷慨于遐遠、──于門宗」=慚憤。
はぢておそれる。韓愈詩「鄙夫忝縣尹、──難爲情」
①キク [屋]
②チク [屋]
通じて畜に作る
①やしなふ(養)詩、邶風「不我能─」○おごる(驕)○あつむ(聚)つむ(積)
②うらむ(恨)
①クヮウ [養]
②クヮウ [陽]
又、?に作る
①くらし(昏)分明ならず、うっとりとする貌。=怳·恍。○あわただし(急迫)○おそれる、恐懼の意「恐─」
②わすれる(忘)○あわただし(急遽)
うっとりとしたる貌。又、微妙にして測られざる貌。蜀志、劉琰傳「失志──」=恍惚。
あわてる貌。狼狽する。
ケフ [葉]
通じて脅に作る
○おそる(怯)○おひやかす、威力にておどす。魏志、曹植傳「劫─使者」
①ケン [琰]
②ケフ·カフ [葉]
③ケン [鹽]
①うらむ(恨)あきたらず、不滿足に思ふ「──」孟、公孫丑「吾何─乎哉」○こころよし(快)あきたる(足)莊、天運「盡去而後─」─嗛。○まこと(誠)「誠─」
②あきたる(足)こころよし(快)
③きらふ、きらひ「避─」=嫌。うたがふ、うたがひ(疑)
○あきたらず、滿足せず。=慊如。○あきたる貌。
心に滿足せざる貌。又、憂ふる貌。後漢書、五行志「──常若不足」
あきたらざる貌、物の不十分なる形容。陸機文「初都建業、羣臣請備禮秩、天子辭而不許曰、天下其謂朕何、宮室輿服、益──也」
をしむ。世說「應聲便許、略無──」
ゲン [願]
古、原に作る
○つつしむ(謹)「謹─」書、皋陶謨「─而恭」○よし(善)論、泰伯「侗而不─」○すなほ(愨)「敦─」
律義にしてすなほなる義。韓詩外傳「──端愨、則合之以禮樂」
すなほにしてまことあり。愨は誠實。荀子「上端誠、則下──」
すなほにしてつつしむ。史、佞幸傳「──不好外交」=謹愿·端愿。
つつしみてうやうやし。書、皋陶謨「愿而恭」=恭愿。
謹みて誠あり。後漢書、江革傳「辭氣──、有足感動人者」=愿愨。
つつしみてかざりなし。後漢書、劉寵傳「山民──、乃有白首不入巿井者」
コッ [月]
こころみだる(心亂)漢書、息夫躬傳「心結─兮傷肝」
コン [願]
又?に作る
○うれふ(憂·患)左、昭六「主不─賓」○はづかしむ(辱)けがす(汚)禮、儒行「不─君王」○みだす(亂·擾)迷惑をかける。史、范雎傳「是天以寡人─先生」
①サウ [漾]
②サウ [養]
①いたむ、いたみ(傷)「悲─」「惻─」「惋─」「──」○かなしむ、かなしみ(悲)禮、祭義「霜露旣降、君子履之、必有悽─之心、非其寒之謂也」
②─怳は失意の貌。
同訓異義
イタム 愴·悼·傷·痛·隱·悽·悵等の別は悼(心部八畫)の條を見よ。
かなしき貌。曹植文「心之云慕、──其悲」
いたみうらむ。梁竦賦「臨岷川以──兮」
かなしみいたむ貌。柳宗元文「僕士人、頗識古今理道、獨──如此」吳質詩「──懷殷憂」
①サウ [豪]
②サウ [皓]
③サウ [號]
①うごく(動)さわぐ。=騷。○おこる(起)
②つかれる(勞)
③うれふ(愁)
つかれる貌。詩、陳風「勞心──」
○うれふる貌。虞集詩「今日不樂心──」○恐懼する貌。隋書、李德林傳「軍中──」
ジ [支]
○いつくしむ、いつくしみ(愛)なさけをかける「仁─」「至─」父母の子を愛するにいふ。左、昭二六「父─子孝」○やはらぐ(柔)禮、內則「必求其寬裕─惠」よし(善)○めぐむ、めぐみ(仁)○ 佛 佛の垂れるあはれみ「大─大悲」○竹の一種、めだけ。○─石 ジシヤク は鐵を吸ふ石の名。○父の嚴に對して母のことにいふ「家─」
いつくしみ。左、僖二七「夫禮樂──、戰所蓄也」
いつくしみあるはは。梅堯臣詩「持歸奉──」
いつくしみの心。淨住子「若以──視衆生者、得佛淨目上下眴相」
いつくしみてそだてる。梁簡文帝文「覆載蒼生、──黎首」
めぐみのあまねく多きに喩へていふ。梁簡文帝、請武帝御講啓「油然慧雲、霈然──、光斯盛業、導彼蒼生」
烏の異稱。梁武帝、孝思賦「──反哺以報親」烏は成長の後、其の親に餌を與へて、養育の恩を報ず、之を反哺といふ。
佛 めぐみの普く及ぶに喩ふ。雞跖集「如來慈心、如彼大雲、蔭注世界」=慈雨。
いつくしむ。張君祖詩「應方恢權化、兆類蒙──」
めぐみ、あはれみ。宋之問詩「舊渥驂宸御、──忝翰林」=慈惠。
長安に在る寺の名。摭言「進士自神龍後、期集───塔下、題名」
佛 慈悲の心を以て衆生を濟度するに喩ふ。柳宗元文「攀──望彼岸者」
○なさけあるまなこ。李子卿賦「──如睇」○ ジゲン 佛 じひのまなこ。法華經「──視衆生」
いつくしみあるかほ、尊長者の音容を稱する語。張萬頃詩「宦遊偏不樂、長爲憶──」
いつくしみ深きをしへ。又、母の敎。庾信文「母氏──、哀矜勞苦」
なさけふかきをしへ。胡元龍詩「紫極流宸渥、淸規佇──」=慈訓。
いつくしみめぐむ。慈悲恩惠。左傳「享以訓其儉、宴以示──」=仁惠·惠慈。
無料にて貧民の病氣をなほす爲めに設けし病院。
めぐみふかくして費を省く。舊唐書「愛之以──」
くわゐ、水草の一、球根を食用とす。羣芳譜「──根歲生十二子、歲閏則十三子、如慈母之乳諸子也」
佛 佛をいふ、慈悲を以て主とするが故。
めぐみぶかきおほせ。唐書、劉洎傳「陛下降──」
いつくしみふかきひざ。兩親のひざもと。隋煬帝文「感動皇情、痛深──」
いつくしみのこころ。
いつくしみめぐむ。韓愈文「天子神聖、威武──」
いつくしみふかきおや。呂覽「湯立爲天子、夏民大說、如得──」
いつくしみありて善し。儀禮、士相見禮「忠信──」注「祥、善也」黃庭堅文「想見其人、豈弟──」=慈善。
いつくしみてほめすすめる。梁簡文帝表「叨逢──、事出希世」
鐵を吸ふ性ある石。郭璞──贊「──吸鐵、母子相戀也」俗に磁に作るは非。
いつくしみあはれむ。賈至文「──惠愛、以養百姓」=慈仁。
あはれみておもひやる。宋史、趙師民傳「志尙淸遠、性極──、勤于吏治」
なさけをかけてめぐむ。北史、崔光傳「寛和──、不忤於物」
佛 彌勒佛の異稱。
竹の一種、めだけ。竹譜「竹之叢生、子母相依、曰──」
なさけふかきいつくしみ。梁武帝文「特鍾──」=慈愛。
いつくしみおもふ。唐書「──幼子」
○あはれみ、いつくしみ。=仁愛。○ 佛 苦を拔き樂を與ふる。法界次第「能與他之樂心名之爲慈、能拔他之苦心名之爲悲」
鳥の名、十一の異名。其の鳴き聲、慈悲心と呼ぶが如し、故に名つく。
いつくしみあはれむ。梁書、丹丹國傳「──蒼生」=慈憫。
いつくしみあはれむ。張柬之文「德自天縱、──元元」
いつくしみあるちち。北史、蘇綽傳「愛人如──」
めぐみやすんずる。宋史「民所安樂、惟日──」
いつくしみて、目をかける。晉書、石勒載記「──如子也」=恩眄。
○いつくしみあるはは。趙岐、孟子序「幼被──三遷之敎」○めのと。又、養母。儀禮、喪服「──如母
慈愛に過ぎたる母の下には、反りてやくざなる子が出來る。史、李斯傳「─────、嚴家無格虜」
いつくしみむつぶ。禮記「敎以──、而民貴有親」
慈愛の心厚し、故に自然に勇氣を生ず。老子「────、儉故能廣」
あはれみの心を以て下にのぞむ。齊書、虞玩之傳「玩之以久宦衰疾、上表告退曰、伏願──、賜臣骸骨」
佛 なさけぶかき功德。楞嚴經「與佛如來同一──」
なさけあるなみだ。白居易詩「──隨身迸、悲膓遇物牽」
いつくしみあはれむ。曾鞏文「豈意──、更加襃進」
○君はよく臣をいつくしみ、臣はよく和合する。左傳「上下──、──而後能安靖其國家」○なさけぶかくやさし、慈愛綏和。辨亡論「──以結士民之愛」
シン [震]
○つつしむ、つつしみ(謹)「敬─」「貞─」「明─」「謹─」「戒─」「淸─」書、益稷「─乃在位」○まこと(誠)誠にする。詩、小雅「─爾言也」○しづか(謹靜)○おもふ(思)○つつしみて、禁戒の辭。史、吳王濞傳「上謂濞曰、─無反」
同訓異義
ツツシム 愼·謹·敬·恭·肅·恪の別は謹(言部十一畫)の條を見よ。
つつしみいましむ。大戴禮「──必恭、恭則壽」=戒愼。
事のきざしをつつしむ。崔琦、外戚箴「患生不德、福有──」
つつしむ。呂覽「淳淳乎──」=謹愼·敬愼。
刑を行ふことをつつしみて輕輕にせざる義。隋書、音樂志、白帝歌「厲兵詰暴、敕法──、明神降嘏、國步惟寧」=愼罰。
言を謹みてみだりにいはず。家語、觀周「有金人焉、三緘其口、而銘其背曰、古之──人也」
つつしみてすなほ。唐書「張介然猗氏人、性──長計畫」=恭愿。
つつしみぶかくおもおもし。=謹厚·愼重。
○事の終を全くせんとつつしむ。書、仲虺之誥「愼厥終、惟其初」○父母の葬祭、忌服などをてあつくする。論、學而「──追遠」
つつしみえらぶ。宋史、太祖紀「當愼其選以見朕意」程子、論經筵事疏「──賢德之人」
つつしみえらぶ。白居易文「環衞之官、兼資──」
つつしみおもおもし。五代史、安彥戚傳「當時稱其──」=愼厚。
ひとりをつつしむ。人の見聞せざる所にても心を正しくする。大學「故君子愼其獨也」
愼刑に同じ。荀子「明法──」
小事を忽にせずしてつつしむ。後漢書、陳寵傳「明者──、智者識幾」
つつしみぶかし。易、繫辭「是以君子──、而不出也」
謹みておもんぱかる。禮記一君使其臣得志、則──而從之」
愼(前條)の古字。
①ソ [遇]
②サク [陌]
①うつたへ。論、顏淵「膚受之─」うつたふ、うったへ告げる、ざんげんする(譖)論、憲問「公伯寮─子路於季孫」=訴。
②おどろきおそれる(驚懼)
同訓異義
ウツタフ 愬·訴·訟·獄の別は訴(言部五畫)の條を見よ。
おどろきおそれる貌。易、履卦「履虎尾、──終吉」
ソ [隊]
通じて素に作る
○まこと(誠)○まごころ(眞情)○まめやか(情實)漢書、鄒陽傳「披心腹見情─」
タイ [隊]
○さま、ありさま、やぅす、すがた、なりふり、形狀、容姿「容─」「姿─」「形─」「舊─」「異─」「俗─」「世─」○こころばへ(意)「情─」○ 國 わざ、わざと、ことさら。特別「─使 ワザツカヒ 」
○ありさま。身ぶり。荀子「容貌──、進退趨行」○やぅす、おもむき。韓愈詩「君詩多──」
國 ことさら、特別に。
①タウ [豪]
②トウ [尤]
①よろこぶ(喜·悅)○あなどる、ほしいまま(慢)「淫─」○ひさし(久)又、久しき貌。○うたがふ(疑)左、昭二七「天命不─久矣」天命のまちがひなき義。○かくす(藏)左、昭三「以樂─憂」
②すぐ(過)過ぎ去る。詩、唐風「今我不樂、日月其─」
うれへをかくす。左、昭三「以樂──」
ほしいままにしてみだら、放縱にして度なし。書、湯誥「無卽──」=淫慆。
久しき貌。詩、豳風「我徂東山、──不歸」
ヨウ [腫]
容·臾に通ず
慫─はときすすめる。己は喜ぶことを欲せざるに他人が勸めて之を喜ばしめ、己は怒ることを欲せざるに他人が之を怒らしむるをいふ。
リツ [質]
通じて栗に作る
○おそれる(懼)おそれてふるへをののく、おそれちぢむ(竦縮)「戰─」「惴─」「股─」「縮─」○かなしむ、いたむ(悽愴)○おそれてぞっとする(寒心)書、大禹謨「夔夔齊─」夔夔は懼れる貌。○さむし、寒氣が身にしむ「寒─」古詩「孟冬寒氣至、北風何慘─」
同訓異義
オソル 慄·恐·畏·懼·怖·慴等の別は恐(心部六畫)の條を見よ。
慄慄に同じ。
○おそれる貌、をののく貌。書、湯誥「──危懼、若將隕于深淵」=畏懼。○甚ださむき貌。=栗栗·慄然。
さむさ甚だしき貌。=栗烈·懍慄。
11畫
ヰ [未]
○なぐさむ、心を安んじ情を樂ましむ「安─」「恩─」なぐさみ。○人をなぐさめいたはる「弔─」○ 國 なぐさむ、玩弄する、もてあそぶ。
なぐさめやすんずる。漢書、魏相傳「──元元、便利百姓」
きずつけるをいたはりなぐさめる。顏延之文「勉傷──、拊循飢渴」
なぐさめいざなふ。後漢書、順帝紀「──日南叛蠻」
勞苦をなぐさめる。黃鎭成詩「然薪燎我衣、取酒慰我劬」劬は勞。=慰勞。
なぐさめいましむ。魏志、甄后傳、注「無寵者──之」
心をなぐさめる。陶潛詩「何以慰吾懷、賴此多古賢」
なぐさめさとす。=慰諭。
なぐさめ助ける。後漢書、隗囂傳「所以──之、良厚」
なぐさめめぐむ。魏志、注「盡心──、効力行陣」
心をなぐさめ憂を解く。蘇轍文「手足舞蹈、以自──」
いたはりて報ゆ。晉書、石勒載記「庶足以──存亡申孤之心也」
慰め憐れむ。風俗通「嘉其孝敬、──契闊、爲之先後」
やすんじなでる。宋史「克明──岀衣服遺之」=慰撫。
いたはりなでる。漢書「上輒以詔書──不許」
なぐさめみまふ。後漢書、宋均傳「帝使中黃門──」=存問。
軍隊などをなぐさめいたはる爲めに天子の遣はされるつかひ。
なぐさめさとす。元史、世祖紀「詔──軍民」
なぐさめねぎらふ。晉書、李特載記「持節──」
なぐさめはげます。魏志、趙儼傳「盡呼所從人、喩以成敗、──懇切」
イウ [尤]
○うれふ、うれへ(愁·患)心配する「隱─」「近─」「先─後樂」「內─外患」論、子罕「仁者不─」○おそれる(懼)呂覽、知分「余何─於龍焉」○うれへおもふ(愁思)かなしみ。○やまひ(疾)曲禮「某有負薪之─」○姙娠してわづらふ、つはる。晉語「文王在胎、母不─」○はづかしむ(辱)○おもんぱかり(慮)○喪に居る。書、說命「王宅─」父母の喪に居るを丁─といふ。
同訓異義
ウレフ 憂·愁·患·恤·閔·悄等の別は愁(心部九畫)の條を見よ。
うれへいかる。魏志「旣以失節、屈辱──而死」
うれへおそれる。梁昭明太子文「豈能戚戚、勞于──」
うれへて心ふさがる。晉書「遇風停浦中、累日──」
氣ふさがる。管子「──生病」=憂結。
うれへいさどほる。文同詩「師士每失官、未始有──」
うれへなげく。元經傳「──發病而卒」=憂憤。
うれへ、心配する、耿は不安。梁武帝敕「省疏増──」
うれへがほ。鮑照詩「憑楹觀皓露、灑酒盪──」=憂色。
うれへて心おののく。唐書、皇甫無逸傳「──不能食」
うれふると、よろこぶと。史、淮隂侯傳「貴賤在於骨法、──在於容色、成敗在於決斷」
うれへはづ。蘇軾詩「困來臥重茵、──自不眠」
うれへおそれる。荀子「心──則口銜芻豢而不知其味、耳聽鐘鼓而不知其聲」漢書「漢王──、與酈食其、謀撓楚權」
うれへくるしむ。史、文帝紀「朕夙興夜寐、勤勞天下、──萬民」
うれへおそれる。易經「悔吝者、──之象也」=憂懼。
うれへおそれる。陸游詩「耆壽緣──、危亡坐燕娛」
心がうれへみだれる。王羲之文「疾久──、當思平理也」
うれふるおもひ。王逸、琴思九歌「──感結重歎噫」
うれへおそれる。後漢書「──晝夜、不安坐臥」=憂懼。
うれふ。うれへ。大學「之其所──而辟焉」孟、吿子「生於──而死於安樂」
うれへて心むすぼれる。曹操文「無非常之功、而受非常之福、是用──」=憂鬱。
くにをうれへる、國事に心を勞する。漢書「論議通古今、──如饑渴」
うれへうらむ。沈約、從軍行「惜哉征夫子、──良獨多」
うれへなげく。舊唐書、代宗紀「惕然──、深自咎責」
うれへいたむ。蜀志、蔣琬傳「臣旣闇弱、加嬰疾疢、規方無成、夙夜──」
うれふる心。禮記「其──有如此者」
時勢をうれへなげく。=憂世。
うれへにとぢこめられる。周曇詩「翻作──一病翁」
うれふ。うれへ。史、屈原傳「──幽思、而作離騷」
うれふるこころ。詩、邶風「──悄悄、慍于羣小」
うれへいたむ。詩經「豈不爾思、我心──」
うれへおそれる。唐書「王以嫡長居外、心常──」
世の中の事をなげきうれふる。=憂時。
甚だしく、うれへいたむ。孟郊詩「天念豈厚薄、宸衷多──」
うれへみだれる。宋史、陳堯佐傳「汾水暴漲、州民輒──」
うれへいたむ。杜甫詩「城郭洗──」=憂慼。
うれへていたむ。南史、姚察傳「累居──」=愁慼。
うれへおそれる。呂覽「貧無衣食、而不──」=憂懼。
うれへおそれる。慮思道、孤鴻賦「窘束籠樊、──刀俎」
うれへなげく。後漢書「毎懷──」=憂嘆。
うれへおそれる。
うれふ、うれへ。蘇頌詩「坐閣苦──」
うれへなやむ。白居易詩「去何有顧戀、住亦無──」
次條に同じ〔北史、李彪傳〕
喪に居る。字解參看。
前條に同じ〔書、太甲〕
うれへ。劉基詩「纏綿積──」=憂心。
うれへいたむ。詩經「載馳載驅」疏「我心則──」
うれへおそれる。後漢書、袁紹傳「家在鄴者皆──失色」
うれへいきどほる。晉書、祖逖傳「雖內懷──、而圖進取不輟」蘇舜欽詩「──徒滿胷」
うれふ。
人民の事をきづかひ思ふ。張隨詩「聖主正──」
うれへもだぇる。=憂懣。
うれへわづらふ。漢書、燕王旦傳「王──置酒萬載宮」=憂悶。
うれへわづらふ。史記「三王之──天下久矣」=憂苦。
うれふると、たのしむと。申鑒「爲世──者、君子之志也」
うれへおもんぱかる。諸葛亮、岀師表「受命以來、夙夜──」
ガイ [隊]
通じて愾に作る
○なげく、なげき(歎)歎息する「歎─」いきどほる(憤激)「感─」「忼─」「憤─」○かなしむ(悲)うれふ(憂)なげきうれふ、いたむ(悼)
深くうれへかなしむ貌。=慨然。
なげきおもふ。梁簡文帝文「分別已來、每增──」=慨想。
なげく貌。劉向、怨思「情──而長懷兮」
なげく。袁裒詩「俗厚喜豐登、氣俠存──」=慷慨·忼愾。
なげきうらむ。晉書、殷仲堪傳「永爲廊廟之寶、而忽爲荊楚之珍、所以──」
なげきおもふ。葛長庚賦「覽江山以──」
世をなげきうれふ。
○甚だしくうれひかなしむ貌。禮、檀弓「旣葬──如不及」=慨焉。○いきどほりなげく貌。後漢書、范滂傳「──有澄淸天下之志」
なげきてためいきする。北征賦「撫長劍以──兮」=歎息。
なげく。王昌齡詩「主人就我飮、對我還──」
なげきいきどほる。傅亮文「誓雪國恥、──陵夷」=憤慨。
カゥ [陽]
なげく、感じ憤る。=忼。
○いきどほりなげく。後漢書、齊武王縯傳「性剛毅──」=忼慨·慨慷。○ 俗 財を用ひて吝惜する所なき義。
一時の怒に乘じて死することは易し〔謝枋得、卻聘書〕もと程頤の言、近思錄に「伊川先生曰、感慨殺身者易、從容就義者難」とあるに本づく。
なげきてためいきする。孔叢子「發憤──、忘己貧賤」
ガウ ゴウ [號]
傲に通ず
おごる、おごり(倨)後漢書、崔駰傳「生而貴者─」
おごりてほしいままに大言を好む。晉書、王恬傳「恬性──、不拘禮法」
おごりたかぶる。晉書、王恬傳「神氣──、竟無賓主之禮」
おごりたかぶる。=慠慢。
愨(心部十畫)の俗字。
キン [文]
○うれへかなしむ(憂哀)○いさむ(勇)
クヮン [諫]
或は貫に作る
なれる、ならふ、ならはし(習)「習─」左傳「譬如畋獵射御、─則能獲禽」
同訓異義
ナラフ 慣·傚·習·倣·肄·閑の別は傚(人部十畫)の條を見よ。
同一の所業を數囘行ふによりて成立する罪。
なれしたしむ、狎は近づきしたしむ〔管子、民相親、注〕
なれる、ならはし。杜甫詩「──炎蒸歲絺綌「=習慣。
法律上效力を有する世閒のならはせ。=不文法。
よく手なれる。
國 なれたるてだて、いつものしかた。=慣用手段。
物體が永久に靜止し又は永久に動かんとする性質。=惰性·習慣性。
使ひなれる。
いつものしきたり、ならはし。=常例。
ケイ ヱ [霽]
通じて惠に作る
○さとし(敏)「智─」「聰─」「巧─」「敏─」「早─」○さとる(了·曉解)○ちゑ(智)○かしこし(賢)○小─はこりこう、こさがし。論、衞靈公「好行小─」
晉の僧、廬山に住し、陶淵明等と白蓮社を結ぶ〔蓮社高賢傳〕
僧の名、初の名は神光、北魏の人、達摩大師嵩山少林寺に居る時、神光道を請ふこと甚だ摯なり、雪夜に其の左臂を斷つ、達摩感じて之を許し、名を──と改め、禪宗の法統を受け第二祖と爲る。
佛 上元の道場寺の僧慧觀、如來の說きし一代聖敎を、施化の次第に約して立てたる五っの敎、卽ち、有相敎·無相敎·抑揚敎·同歸敎·常住敎。
佛 五分法身の一。大藏法數「二乘因修无漏智慧、得證此身、故名──」
佛 本具の法性を持續せしむる智慧〔刊定記〕
佛 五力の一、ちゑの力。獨孤及文「大悲自定之──」
すぐれてさとし。
かしこくさとし。晉書、鳩摩羅什傳「什在胎、其母──倍常」=慧悟。
こさがし。敏捷にして機智あり。北史、馮淑妃傳「──善彈琵琶」=黠慧。
○さときまなこ。=活眼。○ ヱゲン 佛 實在界の眞理を識別する心のまなこ。金剛經「如來有肉眼、如來有天眼、如來有──」
かしこくさとし。=慧敏·慧解。
さとく明か。=明慧·察慧。
江蘇省無錫縣の西に在る山の名、西域の僧慧昭此に居る、圓池あり、唐の陸羽、其の水を以て第二泉と爲す。=惠山。
さときうまれつき。劉禹錫詩「色身豈吾寶、──非形礙」
すぐれてさとし。又、其の者。淮南子「──而好治」
さときちゑ。
鸚鵡 アウム の異名〔郭璞圖贊〕
さとし。=聰慧·慧悟·敏慧。
①ケイ·キャウ [敬]
②キャウ [陽]
通音ケイ
①よろこぶ、よろこび(賀)「餘─」「休─」「吉─」「嘉─」いはふ(祝)「祝─」「─賀」行きて人を賀す。○よし(善事)書、呂刑「一人有─」○さいはひ(福)○たまもの(賜)ほめる(賞)禮、月令「行─施惠」○重─は府名、四川省に屬す、開きて商埠と爲す。
②さいはひ(福)易、坤卦「積善之家、必有餘─」
同訓異義
ヨロコブ 慶·喜·悅·欣·歡·怡等の別は喜(口部九畫)の條を見よ。
國 奉公人を世話する者。又、其の營業。もと人名より岀づ。=慶安·桂庵。
めでたき五色の雲のしるし。太平の瑞兆をいふ、慶は卿又景とも書く。瑞應圖「景雲者太平之應也、一曰慶雲」
めでたきしるしとなるけむり、えんぎのよき煙。謝莊、舞馬賦「泛修風而浮──」=祥煙。
いはふ、いはひ。周禮、秋官、小行人「若國有福事、則令──之」=賀慶。
しあはせ、めでたきさいはひ。金史、宗室宗憲傳「奏曰、莫非王臣──、豈可有閒耶」=慶福。
めでたき會合。春渚紀聞「章申公父銀靑公、年七十集賓親爲──」=嘉會。
よろこび祝ふことと、災をとむらふことと。陸游詩「一朝窮達異、相遇忘──」=慶弔。
よろこびごと。鶴林玉露「不得預──」
めでたきしるし。宋史、樂志「皇仁溥博、品物蕃滋、──囘復、秀發神芝」
めでほめる。周禮、族師「刑罰──、相及相共」
天子の誕生日のいはひ〔文獻通考〕
めでたきしるし。宋史、禮志「凡國有大──及岀師勝捷、樞密使率內職軍校入賀」=祥瑞·休徵·慶祥。
めでたきさいはひ。魏志、王朗傳、注「稽古先民、開誕──」=慶福。
よろこび事と、くやみ事と。荀、大略「慶者在堂、弔者在閭、禍與福鄰、莫知其門」よろこびをいふ者が堂に在るかと思へば、くやみをいふ者が門に在る、人生の禍福の常なきをいふ。
めでたきさいはひ。=慶幸。
よろこびて手をうつ。劉禹錫文「──失圖、捧戴相賀」
ケン [删]
○をしむ。朱熹詩「倒盡詩囊未許─」やぶさか(悋)吝嗇。○文字を省き減ずる。韓愈詩「辭─義卓闊」
同訓異義
ヲシム 慳·吝·嗇·惜·愛の別は吝(口部四畫)の條を見よ。
やぶさか、しはし。蘇軾詩「及此陰晴閒、恐致──霖」
佛 をしみむさぼる、しはし。法華經「衆生垢重、──嫉妬」
やぶさか、けち。原化記「老人曰、──未除、術何由成」=慳嗇·鄙嗇。
サゥ [號]
通音ザウ
○──は篤實の貌。中庸「君子胡不──爾」○ 國 たしか、たしかに(確實)
サン シン [感]
○いたむ、いたまし(痛·傷)「悲─」「悽─」「傷─」○そこなふ(毒)しへたぐ(虐)むごし(苛酷)「─刻」
同訓異義
イタム 慘·悼·傷·痛·隱·愴等の別は悼(心部八畫)の條を見よ。
うすぐらく、さびしき貌。錢起詩「掃乾坤之──、濟品物之屯蒙」=慘澹。
むごたらしくしてからし。陳琳文「細政──」=慘酷·苛慘。
いたましくそこなふ。
法を用ふること嚴しくして恩少し。礉は覆。史、韓非傳贊「韓子引繩墨切事情、明是非、其極────」
甚だきびし。法を用ふること嚴刻にして峻急なり。漢書「吏益──、而法令察」=刻急。
むごきありさま。=慘狀。
むごくしへたげる。顏氏家訓「──孤遺、離閒骨肉、傷心斷膓者、何可勝數」
むごきいましめ。唐書「楚掠──、鍛成其罪」
むごぎ刑罰。
いたましきしばゐ、むごたらしき出來事。
むごくきびし。金史「第以──督責爲事」=慘酷·慘急。
多人數をむごく殺す大獄。後漢書「除──之科」
むごくきびし。苛酷にして殘忍なり。史、酷吏傳「雖──、斯稱其位矣」=殘忍·慘刻。
かなしみうらむ。宣和畫譜「以離別──、爲人之常情」
かなしみなげく。舊唐書「取陷救溺、能無──」
かなしみいたむ。王粲詩「瞻望東路、──增感」=悲愴。
むごくそこなひころす。杜牧文「幽州、幽陰──也」
いたみかなしむ貌。詩、小雅「憂心──」
むごたらしき有樣。=慘況。
かなしみいたむ。杜甫詩「昔隨劉氏定長安、帷幄未改神──」
いたみうれふ。宋史、王旦傳「賜酺、旦以──不赴會」
かなしむ、いたむ。杜甫詩「適越空顚躓、遊梁竟──」=憯悽。
かなしみの心がせまる。江淹詩「仲冬正──、日月少精華」
甚だむごくいたまし。
いたむ貌。郝經詩「佇立無人語、巡簷思──」
かなしみて心ふさがる。石介詩「瓦石固無情、爲我亦──」
いたみかなしむ。陸機文「銜恤哀傷、作賦以紓──之感」=悽慘。
きびしく痛む。黃溍詩「仍聞恣鞭箠、──傷膚皮」
いたまし。史、屈原賈生傳「疾痛──」
ものすごくうすぐらし。歐陽修文「其色──、煙霏雲斂」=慘澹。
○ものすごくうすぐらし。晁補之詩「──天雲欲雨低」=慘淡。○意を極めて思索する。杜甫詩「意匠──經營中」
心をいためうごかす。蘇軾詩「南方舊戰國、──意猶存」
いたみうれふ。魏書「父兄繫獄、子弟無──之容」
むごたらしくそこなひくるしめる。漢書、陳湯傳「郅支單于──於民」=慘害。
いたみおそれる、いたまし。褚少孫賦「感予志兮──」
さむ人すさまし。揚雄賦「下陰潛以──」陸游詩「髮毛──誰復支」
ふかみどり。通俗文「色暗曰慘」幽閒鼓吹「末座──少年何人」=深綠。
きびしくはげし。張衡、西京賦「雨雪飄飄、冰霜──」
ザン [覃]
或は慚に作る
はづ、面目なく思ふ。はぢ(愧)「─愧」
同訓異義
ハヅ 慙·恥·辱·忝·愧·怍等の別は恥(心部六畫)の條を見よ。
はぢいかる。論衡「高者得榮、下者──」=慙忿·慙憤。
はぢなげく。江淹文「──憂灼、罔識其際」
はぢて心うごく。蘇頲文「惶駭戰慄、周章──」
はづ。漢書「終亡以報厚德、日夜──而已」=慙怍·愧慙。
はぢおそれる。錢珝文「無補艱難、方懷──」
はぢおそれる。蕭后、述志賦「雖沐浴於恩光、內──而累息」=惶愧。
はぢうらむ。程顥文「爲仲通所責、則其人必──」=愧恨。
はづ、はぢ。潛夫論「曾無怵惕──哀矜之意」=慙愧。
はづ、はぢて顏を赤くする。韓愈詩「弱妻抱稚子、岀拜忘──」
はぢてわびる。南史、臧質傳「倫之──、質拂衣而去」
はぢおそれる。梁昭明太子文「──交拜、寢興無寘」=惶愧。
はづかしく思ひてはばみよわる。謝靈運詩「調笑輒酬答、嘲謔無──「=愧沮。
はづる。漢書、王莽傳「敢爲激發之行、處之不──」
はぢくるしむ。韓愈詩「百年──淚闌干」
はぢおそれる。隋書、楊素傳「寢食──」
はぢて顏を赤らむ。韓愈文「──再拜」=靦慙。
德の古人に若かざるをはづ。書、仲虺之誥「成湯放桀于南巢、惟有──」
はぢてうつぶす。史記「上嫚罵曰、豎子能爲將乎、四人──」
はぢてしたがふ。北史、李賢傳「忠孝之道、寔銘于心、問者──」
はぢていかる、忿は怒。=慙憤。
はぢいきどほる。柳宗元文「遇成功之辰、──空積」
慙(前條)に同じ。
ショウ [腫]
─慂 シヨウヨウ は誘ひすすめる(勸)揚子方言「己不欲喜、而旁人說之、己不欲怒、而旁人怒之、謂之─慂」
ショウ [冬]
通音ヨウ
○おこたる(怠)○ものうし。ものぐさし(懶)「疎─」白居易詩「行─擧足遲」
あさおきるにものうし。吳融詩「漫游多卜夜、──不知晨」
おこたる。王禹偁詩「自得放──」=怠惰·懶惰。
ものうくなまける。白居易詩「經過莫──、相去兩三坊」=慵惰。
セキ [錫]
慽に作る、又通じて戚に作る
○うれふ。うれひ(憂)「憂─」「愁─」○いたむ(痛)
慼(前條)に同じ。
セフ·チフ シフ [葉]
○おそれる(懼·怯)ふるへおそれる「震─」「怖─」○おどす。○ひれふす(伏)
同訓異義
オソル 慴·恐·懼·畏·怖·惶等の別は恐(心部六畫)の條を見よ。
おそれて心をののく。後漢書、劉瑜傳「懼以觸忤、征營──」
ふるへおそれる。杜牧詩「屯田數十萬、隄防常──」
おそれはばかる。宋書、恩倖傳「權倖之徒、──宗戚」
威勢におそれて屈伏する。史、項羽紀「一府中皆──、莫敢起」
おそれてしたがふ。=懾服·讋服。
タイ [卦]
○とげ(刺梗)心に滯る所ありて釋然 サツパリ たらざるにいふ。=蔕·?。
小さきとげ、心にすこしのさはりある義。司馬相如、上林賦「曾不──」=蒂芥·?葪。
前條に同じ。史記「細故──兮、何足以疑」
慸(前條)に同じ。
心安からざる貌。
タウ ショウ [江]
戅に同じ
○おろか(愚)○くらし(騃)「騃─」にぶし。
おろか。禮、哀公問「寡人──頑冥」
タン セン [寒]
うれふ(憂)
うれへつかれる貌、憂勞。詩、檜風「勞心──兮」
トウ [送]
通音ドウ
○かなしみ、かなしむ。哀 カナシミ が度に過ぎる「─哭」「哀─」論、先進「子哭之─」○なげき。なげく。
甚だしくなげきてなく。南史、顧歡傳「歡早孤、讀詩至哀哀父母、輒執書──」
甚だしくかなしみ、大聲をあげてなく。李白詩「歸來愴途窮、日暮還──」=慟泣。
①トタ [職]
②ヂョク [職]
①あし(惡)書、畢命「旌別淑─」わるもの。○惡の心に隱るる者(隱惡)「隱─」○けがれ。けがる(穢)「穢─」禮、樂記「世亂則禮─而樂淫」○よこしま(邪)「讒─」詩、鄘風「之死矢摩─」矢は誓。○わざはひを爲す惡しき氣、陰氣。左、昭十七「─未作」○わざはひ(災害)「妖─」○なまり(訛言)
②いつはる、いつはり(隱情飾非)
同訓異義
アシ 慝·惡·醜·凶の別は惡(心部九畫)の條を見よ。
よこしま。
よこしま。=姦慝。
よこしま。
あしくけがれたるれい。禮、樂記「淫樂──、不接心術」
憑(心部十二畫)の俗字。
ヘゥ [蕭]
通じて票·剽に作る
すばやし(急·疾)
すばやくあらし。漢書、高帝紀「項羽爲人──滑賊」=僄悍·剽悍。
すばやし。=剽疾。
ボ [遇]
○したふ「欣─」「悅─」「敬─」「景─」「羨─」「仰─」○其の人品を愛して手本として習ふ。史、司馬相如傳「─藺相如之爲人、更名相如」○おもふ(思)なつかしく思ふ、戀ひて忘れず「思─」「懷─」孟、萬章「大孝終身─父母」又、特に男女相─ふにもいふ「戀─」
したひよろこぶ。韓愈、柳宗元墓誌銘「平居里巷相──」
徳をしたひて之にならふ。漢書、成帝紀「吏民──、寢以成俗」=慕倣。
正しき正道をしたふ。漢書、田儋傳贊「賓客──、猶不能自立、豈非天乎」
徳をしたひて敎化に從ふ。書經、傳「四夷──、貢其方賄」
したふこころ。關尹子「有──、則聲悲悲然」
したひならふ。唐書「後來翕然──」=慕效。
大人物をしたふ義。藝林伐山「司馬長卿、──相如」
マン [諌]
或は漫·謾に作る
○おこたる、なまける(惰)「怠─」「惰─」○ゆるし、おそし(遲)詩、鄭風「叔馬─忌」叔は人名、忌は助字。○わがまま、ほしいまま(放肆)○あなどる(易)「侮─」「輕─」○うすし(薄)おろそか(粗略)○ほこる、おごる(倨)「驕─」「傲─」史、淮陰侯傳「王素─而無禮」○ゆるし(緩)「緩─」
同訓異義
アナドル 慢·侮·易の別は侮(人部七畫)の條を見よ。○オコタル慢·怠·懈·惰の別は怠(心部五畫)の條を見よ。
あなどりかろんず、易は侮。史、張耳傳「高祖箕倨詈、甚──之」=慢侮·輕易。
とがめ。梅堯臣詩「尊奉君長無──」
きままにあそぶ。慢は放縱。書經「惟──是好」
ゆるゆる進むふね。輕舸の對。暢當詩「──不知移」
あなどりなれる。夢溪筆談「人不知其使者也、或──之」
あなどりすてる。左傳「貫瀆鬼神、──刑法」
たかぶりあなどることば。=謾言。
くらの戶じまりをおこたる。易、繫辭「──誨盜、冶容誨淫」
おごりたかぶる心。華嚴經「起──、自高陵彼」
世におごりてつつしまず。晉書「未若長卿──也」
ながびく病氣のたち。急性の對。
おごりあなどる。唐書、武三思傳「──相矜、無復禮法」
あなどりけがす。唐書、齊澣傳「談──不恭」
あなどりおこたる。魏志「詔曰、鞭作宮刑、所以糾──」=懈怠·怠慢。
あなどりてほしいまま。離騷「椒專佞以──兮」
人をあなどりてののしる。
おごりて道理にもとる。石介文「敢侮大國、其詞──」
あなどりかろんずる。漢書、魏豹傳「漢王──人、罵署諸侯羣臣、如奴耳」=慢易·侮慢。
ヨク [沃]
もと欲に作る
むさぼる、ほしいと思ふ心(情所好)「嗜─」「貪─」「情─」
佛 三界の一、慾望の多き現世界をいふ。大藏法數「欲有四種、一者情欲、二者色欲、三者食欲、四者婬欲、下極阿鼻地獄、上至第六他化天、男女相參多諸染欲、故名──」=欲界。
情慾の甚だしきを火に喩へていふ。楞嚴經「十方一切如來、色目行婬、同名欲火」欲·慾に通ず。
ほしいと思ふこころ。=慾心·欲念。
ねがひ、のぞみ。=欲望。
①リヨ [御]
②ロク [屋]
①おもんばかる、おもんぱかり(謀思)「謀─」「計─」「深─」「短─」論、衞靈公「無遠─、有近憂」○おもふ「思─」○うれふ(憂)○戒め備へる。左、宣十二「前茅─無」○うたがふ(疑)○もろもろ(衆)○すべて=無慮·亡慮。
②しらべる。唐書、百官志「凡繫囚五日一─」=錄。
○おもひがけず。晉書、毛璩傳「事乖──」=意外。○ 國 もってのほか。無禮。
かんがへがあまねく行きとどく、思慮周備。文心雕龍「平子淹通、故──而藻密」藻密は文采完密。
軍前持つ所の幡 ハタ をいふ。左、宣十二「前茅──」有無をおもんばかり備へる義。
ル ロウ [虞]
○よろこぶ(悦)○うやうやしく、つつしむ(恭謹)○ねんごろ(懃懇)
ねんごろなる貌。後漢書、楊賜傳「豈敢愛惜垂沒之年、而不盡──之心哉」一解に恭謹の貌。
①レゥ [蕭]
②リウ [尤]
①たよる、なのむ(賴)○こころさびし。○─亮 レウリヤウ は聲音の淸らかなる貌。嵆康文「新聲─亮」=瀏亮。
②かなしむ、うらむ(悲恨)
12畫
①カン [删]
②カン [潜]
一に?に作る
①よろこびたのしむ(愉)○こころしづか(心靜)
②安からざる貌。○つよくいかる(勁忿)貌。
○心安からざる貌。史、文帝紀「──念外人之有非」○勁く怒る貌。唐書、王叔文傳「──以爲天下無人」
カン [覃]
おろか(愚·癡)文心雕龍「正平狂─以致戮」
十分にねる、熟睡する。泠齋夜話「淨几兀然、僮僕──」
笑ふべからざるに笑ひて已まず。元好問詩「只嫌──無人管」
なまめかしくおろかなる貌。嬌癡の態。全唐詩話「多──」
キ [未]
憘に同じ
○よろこび、よろこぶ(悅)史、周紀「無不欣─」○このむ(好)○たのしむ(樂)
ギン [震]
憗は俗字
○しひて、なまじひに(彊)心に欲せずして自ら强ひる辭。左、哀十六「不─遺一老」○しばらく(且)○かく(缺)左、文十二「兩君之士、皆未─也」○ああ、歎息の聲。左、昭二八「─使我君聞勝與臧之死也」○いなむ(傷)○ねがふ(願)晉語「─庇州犁焉」○とふ(問)○つつしむ(敬謹)
せめて一人の老成人なりとも殘し置きたしとの義。詩、小雅「────、俾守我王」
クヮイ ケ [隊]
○こころみだる(心亂)「憂─」「愁─」○くらく愚かなり。
心のみだれる貌。蜀志、蔣琬傳「事不當理、則──矣」
みだれけがれる。詩經、箋「衣之不澣、則──無照察」
くらし、昏亂して明かならず。漢書「小夫愞臣之徒、──不知所爲」
心昏くみだれる。金史「私心──、以此有失」=昏亂。
クヮク [陌]
○おろか(不慧)○そむきもとる(乖戾)○かたくな(頑)
ケイ [霽]
もと愒に作る憇は俗字
いこふ、やすむ(休·息)「休─」「遊─」詩、召南「召伯所─」
いこひやすむ。梅堯臣詩「盤石暫──、泓泉助吞漱」=休憩·憩息。
やすみとどまる。搜神記「於路旁樹陰──」=休歇。
やすみとどまる。晉書、劉寔傳「寔少貧窶、杖策徒行、每所──、薪水之事、不累主人、皆自營給」=休止。
いこふ。杜甫詩「平生──處、必種數竿竹」=休息·休憩。
やすみとまる。水經、注「乘鸞所──也」
ケイ [梗]
○さとる(覺悟)「─悟」○とほし(遠)遠く行く。一解に廣大の義。詩、魯頌「─彼淮夷」○俗にあこがれる「憧─」
ケゥ [蕭]
○のがる(逸)○あはれむ(憐)○ほしいまま(恣)○おごる。驕に通ず。
ケツ [屑]
いつはり、いつはる(權詐)
①ケン [願]
②ケン [銑]
憲は俗字
①のり、てほん(表式·模範)おきて(法則·法律)「風─」「刑─」「法─」又特に國體·政體に關する根本の法律「─法」「邦─」「國─」○のっとる、手本とする、法に從ふ。○とし(敏)○しめす、あらはす。○命令。穆天子傳「天子岀─」○主要の地位に在る官吏「官─」○俗吏が上官を稱する語「大─」「─臺」○──は欣ぶ貌。
②顯れさかんなる貌、興り盛んなる貌。
大いなるのり。又、法律の條文。南史「──日弛、漸以爲俗」
主要なる役人。=官憲。
○興り盛んなる貌。中庸「──令德」=顯顯。○欣ぶ貌。詩、大雅「天之方難、無然──」=欣欣。
訟獄又勸業などを掌るやくにん、今の司法官。元結詩「復來官──」
○のり、おきで、法度典章。晉書「稽古──、大釐制度」○のっとりて明かにする。中庸「仲尼祖述堯舜、──文武」
憲法によりて行ふまつりごと。立憲政治の略。
國家のおきて。晉書、孔坦傳「王命無貳、──宜信」
のり、おきて。唐書「永垂──、貽範後昆」=法則。
○御史は國憲を掌る、故に御史臺の異稱とす。通典「唐御史臺、龍朔二年、改爲──」文選、陳琳檄、李善注「漢官儀曰、尙書爲中臺、御史爲──、謁者爲外臺」○後世は廣く上官の稱とす。
國のおきて。南史、孔琳之傳「虧違──」=典憲。
○國のおきて。晉語「賞善罰姦、國之──也」○立憲政治の國にて統治權の主體·客體及び其の機關の作用權限等を規定せし國家の大法。
のり、てほん、法式。魏志、后妃傳評「足以爲百王之規典、垂──乎後世矣」=典範。
軍事及び行政司法の警察を掌る兵。
國家のおきて。宋史「──旣成、天下亦莫如之何」=憲令。
のり、おきて。後漢書、杜林傳「今──輕薄、故姦軌不勝」
黃憲の度量の廣大なりしより、度量の大いなる義とす。後漢書「黃憲字叔度、郭林宗曰、叔度汪注若千頃波、澄之不淸、淆之不濁、不可量也」書言故事「望人之寬容、謂覬──含弘」
國家のおきて。周語「以爲──」
ショウ タウ·ドウ [冬]
○こころさだまらず(意不定)あこがれる。○おろか(騃昏)
心さだまらざる貌。易、咸卦「──往來」
あこがれる。
セゥ [蕭]
顦と通ず
○やす(瘦)やせおとろへる、やつれる。かじける。○うれふ(憂)
○やせおとるへる。屈原、漁父辭「顏色──、形容枯槁」○つかれくるしむ(困苦)孟、公孫丑「民之──於虐政」
憯(心部十四畫)の俗字。
ソウ [蒸]
○にくむ、にくみ(惡)「─惡」曲禮「─而知其善」愛又好の反對「愛─」○ 國 にくし、難し「讀み─し」
同訓異義
ニクム 憎·惡·疾·嫉等の別は惡(心部九畫)の條を見よ。
にくむと、かはゆがると。後漢書、劉梁傳「不在──、以道爲貴」=愛憎。
にくみうらむ。歐陽修詩「彊顏悅──、擇語防仇敵」
にくむ。爾雅「居居究究惡也」注「皆相──也」=憎疾·疾惡。
にくみいむ。北齊書、宋遊道傳「朝貴中有──者」=憎疾。
にくみきらふ。韓愈詩「指摘兩──」=厭惡。
にくむ。後漢書「海內──英哲」=憎惡·憎嫉。
にくみそねむ。北史、郞茂傳「元預兄弟、本相──」=憎妒。
にくみそねむ。妒は妬。顧野王詩「那思他人不──」
蠅をにくみきらふ。歐陽修に憎蒼蠅賦あり、古文眞寶後集に載す。
惰(心部九畫)に同じ。
タイ [隊]
一に憞に作る
○うらむ(怨)書、康誥「凡民罔─」○にくむ(惡)わるもの。書、康誥「元惡大─」
①タン·ダン [翰]
②タ [箇]
①はばかる、はばかり(忌惡)「忌─」○おそれる、おそれかたんず(畏難)論、學而「過則勿─改」○うれへおそれる(憂惶)
②つかれる(勞)つかれやむ(勞病)くるしむ(苦)=癉。○ 國 はばかり、恐縮する。
はばかりおそれる。後漢書、度尙傳「與戰破之、戎狄──」=畏憚。
あらためることをおそれはばかる。論、學而「過則勿──」
すすみゆくを、はばかりきらふ。詩經「豈敢──」
はばかりきらふ。=忌憚。
はばかりさける。唐書、皇后武氏傳「施施無──」=忌避。
畏れはばかりて從ふ。唐書、李元諒傳「居軍十年、士心──」
①ハイ [卦]
②ヘイ [霽]
①つかる、つかれ(勞極)「困─」「老─」「罷─」「衰─」
②やむ、やみくるしむ(困病)莊、山木「貧也、非─也」
つかれふす。高士談詩「暮歸唯──、筋力殊不任」=困臥。
つかれてあへぐ。孔平仲詩「悲號與──、灑汗成流川」
つかれわづらふ。洪希文詩「桃笙寄──」
ビン ミン [軫]
通じて閔に作る
○あはれみ、あはれむ(憐)哀憐する「慈─」「哀─」○うれへ、うれふ(憂)「憂─」孟、公孫丑「阨窮而不─」
同訓異義
アハレム 憫·憐·哀·矜·恤の別は憐(本畫)の條を見よ。
あはれみ思ひやる。轉じて、上の下を思ひやるをいふ敬稱。
あはれみめぐむ。元史「亦冀陛下謹愼修德、──生民」=憐恤。
愚かなるをあはれみわらふ。=閔笑〔韓愈文〕
あはれむ、哀憐する。顧雲文「咨嗟生業、──羈危」
あはれむ貌、ふびんに思ふ貌。=愍然。
あはれみいたむ。元稹詩「天子深哀空──」
ヒョウ [蒸]
通じて馮に作る、慿は俗字
○よる(依)よりかかる。書、顧命「─玉几」○たのむ(託)○たよる、よりたのむ(賴)○たなる(祟)ばかす、のりうつる「狐─」陸游詩「俄若有物─」○みつ(滿)○さかんなり(盛)○おほいなり(大)○あかし、よりどころ(證據)「文─」「─照」○公─は官府のかきつけ(官牒)
同訓異義
タノム 憑·負·恃·怙·賴の别は負(貝部二畫)の條を見よ。○ヨル憑、寄·凭·賴·據·仗·倚·依·藉の別は寄(宀部八畫)の條を見よ。
○よりたすく、よりかかる。○のりうつる。左傳「神所──、將在德矣」
かこつけてあやしきことを說く。王令詩「──附誕相樹立」
多大の義、憑は滿、億は大なり。漢平都侯相碑「餘患──」
かちにて河をわたる。詩經「不敢──」=馮河。
高き處に臨む。韋莊詩「由來多感莫──」=臨高。
正義にしたがひよる。後漢書、黨錮傳序「假仁以効己、──以濟功」
よりどころ。歐陽修詩「文章自古無──」=憑照。
互に親みてかたによりかかる。范成大詩「空記──語」
要害をたのみて據る。南史「──作守、兵食兼資」
よりたのむ。金史、蕭肄傳「──恩倖、倨視同列」
たよりて信ずる。憑據して信用する義。宋史「以敵國誕謾、爲可──」
よりどころ、照はてらし合せて證する。=憑據。
俗 保證狀。又、證書、單はかきつけ。
古跡などに立ちよりて弔ふ。
高き地に據りて遠方をながめる。張九齡詩「──兹爲美」
大いにいかる。左傳「今君奮焉、震雷──」=馮怒。
盛んなる貌。李白詩「雲──兮欲吼怒」=馮馮。
てすりによりかかる。陳旅詩「聽鶯何日一──」=凭欄·倚欄。
盛んなる勢をたのみて人に迫る。左、襄二五「介恃楚衆、以──我敝邑」=馮陵。
ブ ム [處]
○いつくしむ(愛)○なづ(愛撫)○失意の貌、ぼんやりとする貌。○あやしみおどろく(怪愕)
○失意の貌。孟、滕文公「夷子──爲閒曰、命之矣」○驚く貌。論、微子「夫子──」
フン [吻]
○いかる、いきどほる、はらをなてる、もだゆ(懣)自ら心をはげましてもだえる「感─」「激─」論、述而「不─不啓」○いきどほり「鬱─」「發─」「公─」「忠─」「私─」○つむ(積)心むすぼれ積む、氣充つ。
同訓異義
イカル 憤·怒·忿·慍·恚等の別は怒(心部五畫)の條を見よ。
いきどほりいかる。後漢書「每讀張宋傳、未嘗不──」
いきどほりて心もだえる。謝惠連詩「如何阻行止、──結心胸」
いきどほりうらむ。後漢書「皆側目──」=忿怨。
道理の解すべからざるときは、憤を發して食事を忘れる。論、述而「子曰、其爲人也、────、樂以忘憂、不知老之將至云爾」
いきどほりなげく。晉書「未嘗不痛嘆──交懷」=憤慨。
いきどほりと、なげきと。傅亮文「瞻拜之日、──交集」=忼慨·憤歎。
いきどほりて氣がはげしく立つ。後漢書、傅燮傳「──思奮、未失人臣之節」
のぼせるやまひ。列子「已──之疾」
いきどほりねたむ。五代史「羣臣──、莫敢出氣」=忿嫉。
いきどほりはばむ。五代史、任圜傳「圜益──」
いきどほりの心を發せざればひらき敎へず、憤發の精神なき者には之を導きひらくことをせず。字解參看。
いきどほる貌。
たけりたつ波。韓愈詩「──氣尙盛、恨竹泪空幽」=怒濤。
いきどほりなげく。吳志「士民──于下」
いきどほりいかる。=忿怒。
氣をふるひおこす。=奮發·發憤。
心の結ぼれて解けざる貌。禮、學記「心憤憤、口悱悱、然後啓之」誠意の辭色に見はるる義。論語、朱注「憤者、心求通而未得之意、悱者、口欲言而未能之貌」蘇軾文「言不待──而發」
いきどほる貌。後漢書、劉縯傳「常──、懷復社稷之慮」
いきどほりもだゆ。司馬遷、報任安書「不得舒──、以曉左右」
ふるひはげむ。=奮勵。
ヘツ [屑]
○すみやか(急速)○きばやし(性急)○あし(惡)
あしき心。後漢書、董卓傳「羌胡──狗態」一本、敝膓に作る。
①レゥ [篠]
②レゥ [蕭]
①さとし(慧)あきらか(明了)○こころよし(快)
②むなしき貌。○─慓はいなみ、おそれる貌。楚辭、九辯「─慓兮若在遠行」=悽愴。
レン リン [先]
俗に怜に作る
○あはれむ、あはれみ(哀)氣のどくに思ふ「哀─」「乞─」吳越春秋「同病相─」○いつくしむ、めでる(愛)「愛─」○かなしむ。
同訓異義
アハレム 憐·哀·憫·矜·恤○憐はいとしがる義。韓文「搖レ尾乞レ憐、非二我志一也」又、花月を愛賞するをも云ふ、花月はやさしき物なる故、いとしがる也。○哀は樂の反なり、父母の死したるをかなしむ類にて、意强し。○憫は心に不便と思ふ義、憫レ世の如し、憫·愍は同字なり。○矜は憫と同じ、哀矜と連用す。○恤は愛字の意なり、憐愍に思ひて憂ふるなり。
あはれみあいする。
あはれみなげく。徐陵詩「高才被擯壓、自古共──」
あはれみて思ひやる。韓愈、應科目時與人書「閤下其亦──之」=憫察。
あはれみのなさけ。
あはれみて物を施す。
あはれみてゆるす。
あはれみをしむ。秦觀詞「每每秦樓相見、見了無限──」
あはれみいたむ。齊書「人應──」=哀悼。
あはれむ。漢書、功臣表「聖朝──」
あはれむ。韓愈文「陛下──京師之人、慮其乏食」=憐閔。
あはれむ。蘇軾、書金剛經後「如來、──衆生、爲設方便」
13畫
アウ オウ [皓]
○なやむ(惱)うれへもだえる「悔─」○うらむ(恨·怨)
同訓異義
ナヤム 懊·惱·艱·難等の別は惱(心部九畫)の條を見よ。
うらみなげく。南史、顧顗之傳「──彌日」
○うらみもだえる。白居易詩「──何人怨咽多」○樂曲の名。晉書、樂志「隆安初、有──之曲」
○くやみうらむ。素問「甚則瞀悶──」○樂曲の名〔晉書、五行志〕=懊儂·懊惱。
エキ [陌]
よろこぶ、よろこばしむ、よろこび(悅)「和─」「悅─」「欣─」「怡─」書、康誥「則予一人以─」
同訓異義
ヨロコブ 懌·喜·悅·欣·忻·歡·怡等の別は喜(口部九畫)の條を見よ。
心をよろこばす。文心雕龍「條暢以任氣、優柔以──」
①オウ [蒸]
②オウ [徑]
①まさに(當)まさに何何すべしと返して讀む。杜甫詩「此別─須各努力」料度 ハカリハカル の辭。
②こたふ、こたへ(答)「─對」「呼─」むくいる「─報」○したがふ(順)和して起る「感─」「響─」易、乾卦「同聲相─」○鼓の小なる者。○天子の正門「─門」
同訓異義
コタフ 應·答·對·譍の別は答(竹部六畫)の條を見よ。○べシ應·可·當·合·容·須·宜の別は可(口部二畫)の條を見よ。
はいと返事する。禮記「在父母舅姑之所、有命之、──敬對」
みかたとなりてたすける。諸葛亮新書「四隣和睦、大國──」
心が物に應じてうごく。張淵文「尋其──之符、測乎冥通之數」=感應。
のりに當てはまる。魏明帝詩「旄旍指麾、進退──」
いそぎの場合に閒に合す。
佛 應現の化身、佛が衆生を濟度するため、色色の形に化して岀現する。西域記「降迹──、爲一老夫」
佛 佛·菩薩が衆生を濟度する爲めに世にあらはれ出る、化身を出現する。溫子昇、定國寺碑「──託生、方便開敎」
ききめ、行ひたる事に對してあらはれるしるし。
小さきつづみ。周禮、春官「擊──」
佛 ごりやく、佛·菩薩が衆生の所願に應じて加護する。
○時に應じて行ふ。荀子「望時而待之孰與──而使之○卽時に同じ。曹植文「有不善者、──改定」
しけんをうける(受驗)
むくゆ、むくい。返禮する。陸游詩「老來萬事嬾、不獨廢──」=應答酬酢。
佛 如來三身(法身·報身·──)の一、佛が衆生を濟度する爲め、物に隨ひて種種の形を現じて法を說く。大藏法數「──者應周萬物、化洽衆生、隨其心量、現種種身」
佛 阿羅漢をいふ〔道山淸話〕
十二律の一、陰曆十月に配す。禮、月令「孟冬之月、律中──」=應鍾。
鳳凰 ホウワウ の異名〔格物論〕
○世に應じて移り轉ずる。公羊傳、注「──黠巧奸僞多」○世とともに周旋する義。
天子の命によりて詩文を作る。唐詩選に其の例あり。=應詔。
めしにしたがふ。元稹詩「──逢鴻澤、陪游値賜酺」
天子のみことのりに應ずる。徐陵文「論經於白虎之殿、應詔於金馬之門」
人をあひしらふ、面會してうけこたへする。世說、言語「從山陰道上行、山川自相映發、使人──不暇」
いそがしくして一一應接するひまがない、山水の景色のすぐれて變化多き形容。前條參看。
敵より挑まれてたたかふ。
法律上、原告の提起したる訴訟に對して被告となる。
言語のうけこたへ。史記「出則接遇賓客、──諸侯」=應答·酬答。
うけがふ。=應唯·承諾。
うけこたへ。梁書、徐摛傳「商較縱橫、──如響」
佛 行の善惡に應じて來るむくい「因果──」
天子となるべきしるし。後漢書、蘇竟傳「大運蕩除之祥、聖帝────也」
身分に相應する。
めしに應じて官吏となる。劉基詩「──思濟世」
勢の變化に應ずる〔晉書、孫楚傳〕「臨機──」
上のつのりに應ずる。漢書「張騫以郞──使月氏」
おほせにしたがふ。南史、虞茘傳「不得已──」
○宮城の正門。詩、大雅「迺立──、──將將」○門客に應ずる義、來客の取次をする者。李密、陳情表「內無──五尺之僮」
學理を實地にあてはめて用ふる「──化學」
翼あるたつ〔廣雅〕王襃文「泥蟠而天飛者、──之神也」
互にこたへあふ。白玉蟾詩「琴簧一聲、前後──」
オク [職]
○おもふ、おもひ(念·思)「追─」○おぼぇる(記)「記─」
同訓異義
オモフ 憶·思·懷·意·念·想·惟·顧の別は思(心部五畫)の條を見よ。
ふるさとをおもふ。曹鄴詩「遠水猶歸壑、征人合──」=懷鄕。
おもふ、おもひ。唐庚詩「耕田佩印兩徒然、──平津只去年」
カイ ケ [卦]
古、解に作る
○わこたる、なまける。○おこたり(怠)「怠─」
同訓異義
オコタル 懈·怠·惰·慢の別は怠(心部五畫)の條を見よ。
なまけるこころ。朱熹文「未嘗以爵齒自高、而有──惰容也」
おこたりてうむ。南史、宋彭城王傳「無有──」
おこたりて心ゆるぶ。于邵文「勤身而不怠、未嘗有──」
おこたる。法華經「汝等勤作、勿得──」=怠懈·解怠。
おこたりたがふ。後漢書、傅毅傳「契闊夙夜、庶不──」
おこたる。後漢書、楊震傳「鄧通──」=怠慢·惰慢。
なまけず。孝經「夙夜──」=匪解。
カン [勘]
○うらむ、うらみ(恨)「私─」「宿─」○ものたらず思ふ。中庸「人猶有所─」
同訓異義
ウラム 憾·怨·恨·懟の別は怨(心部五畫)の條を見よ。
うらみいかる。徐陵文「反爲──、妄相陷辱」
うらむ。新論「天無情于生死、則不可以情而──」
うらみくやむ。戰國策「義之所在、身雖死無──」=恨悔。
うらむ。=怨恨。
うらめしき事。あやまちありて永く悔い恨む事。=恨事。
キン [文]
もと勤に作る
ねんごろ、委曲、丁寧、深切「慇─」
同訓異義
ネンゴロ 懃·懇·慇·丁寧·款·苦の別は懇(本畫)の條を見よ。
ねんごろにしてつつしむ。宋書「蒞職──、有匪躬之稱」
ねんごろなる貌、忠款 マゴコロ の貌。司馬遷、報任安書「意氣──懇懇」
ねんごろ、深切丁寧。柳宗元文「詞旨切直意氣──」
キョ [魚]
○よわし(怯)○おそる(懼)○はづ(慙)「慙─」
ケン クワン [霰]
○心さわがし(性躁)きびし(急)「─促」=獧。○もとる(戾)
心さわがし。史、貨殖傳「民俗──」=躁急。
コン [阮]
○ねんごろ(款悃)「忠─」「懃─」「精─」しんせつ(深切)○まこと(誠·信)「誠─」○切に人に求むるに添へる語「─請」「─託」
同訓異義
ネンゴロ 懇·慇·懃·丁寧·款·苦○懇はしんせつにする義、悃也、誠也、まごころを以てわりなくするなり。○慇·懃の二字は連ねても用ふ、かへすがへすも、おろそかに思はざる義。○丁寧は二字連用す、叮嚀に作るも同じ、くりかへしいふ義にて、國語に用ふる丁寧の義とは異れり。後漢書「丁寧再三、畱二神於此一」○款は誠を盡して人に交るをいふ、說文に、意有レ所レ欲也とあり、懇に近し。○苦は無理に求むる義、懇とは異り、懇求はわりなく請求するをいひ、苦求は是非ともにと請求するをいふ。
○ねんごろなる心。法苑珠林「必須──用心徹到」○親密の心。
ねんごろにいさめる。三國志「袁紹不從、豐──」豐は田豐。
ねんごろにいのり求める。
ねんごろなるもてなし。=懇待。
ねんごろにして誠。韓愈、爲裴相公讓官表「無任──之至」=悃款·懃懇。
ねんごろにねがふ。呂溫文「齊獻至誠、泣敷──」=悃願·懇望。
ねんごろにしてまこと。韓愈、論佛骨表「無任感激──之至」
ねんごろなる貌。司馬遷、報任安書「意氣懃懃──」=悃悃·款款·誠悃。
親切なるこころざし。賈至文「宜遂其──退守本官」
ねんごろにしたしむ「──會」=親睦。
ねんごろにれいをいふ。舊唐書、李勣傳「頓首──」
ねんごろなるなさけ。
親切なるてがみ。人の書簡の敬稱。
ねんごろにしてまこと。四子講德論「陳──於本朝之上、行話談于公卿之門」=懇悃。
ねんごろに乞ふ。宋史「將吏耆耋、乃屬於臣、──愈堅」
ねんごろ、深切丁寧。魏志、高貴鄕公紀「志意──」=切實。
親切にしてあはれむ。朱熹詩「問俗良──、懷賢增慷慨」
ねんごろなるもてなし、人のもてなしの敬稱。=懇遇。
ねんごろに十分行きとどく。唐書、陸贄傳「──深切」
ねんごろにうちとけてはなす。=懇話。
ねんごろにして手あつし。
切なるのぞみ。=切望·懇願。
ねんごろなるおほせ、人より命ぜられし敬稱。
ねんごろなるさとし。=懇敎。
ねんごろなるはなし。=懇談。
①サウ [皓]
②サウ [號]
①愁へて安からず、憂ふる貌。
②むさぼる(貪)
愁へて安からざる貌。詩、小雅「念子──、視我邁邁」
セン ケン [鹽]
○へつらふ、おもねる(佞)○よこしま(詖)「姦─」「凶─」
よこしまにしてたくみにへつらふ。五代史、段凝傳「凝爲人──、普窺迎人意」
心ねぢけてへつらふ人。書、冏命「爾無昵于──」=佞人。
おもねる。唐書、后妃傳「左右附之、──惎之」=憸佞。
よこしま。舊唐書「豈宜更縱──、復行尅暴」=奸邪。
よこしまにしておもねる。又、其の小人。唐書「──無功」=憸壬。
①タン [感]
②タン [勘]
①やすし(安)しづか(恬)謝靈運詩「游子─忘歸」
②うごく、うごかす(動)漢書、李廣傳「威稜─乎鄰國」
おそれる(畏懼)唐書「吐蕃──、不敢盜邊」
うごく貌。楚辭「悲夷猶而冀進兮、心怛傷而──」
トウ [董]
○懵─は心みだれる(心亂)○ 俗 明白の義。不─ プトン は官話、わからず(不可解)の義。
①ノウ [江]
②ノウ [豪]
③ノウ [皓]
①心みだれる。
②懊─はいたみくやむ(痛悔)
③うらみなやむ。=惱。
憤(心部十二畫)の本字。
ボウ モ [宥]
楙·茂に通ず
○つとむ(勉)書、舜典「惟時─哉」○さかんなり、盛大。書、大禹謨「予─乃德」
同訓異義
ツトム 懋·勤·勉·力·努·孜·朂·務の别は勤(力部十一畫)の條を見よ。
すぐれて盛んなるいさを。晉書「崇勳──」=殊功。
交易を勉める。書、益稷「──有無化居」=貿易。
盛典に同じ。梁武帝詔「宜增峻禮秩、式昭──」
つとむる貌。爾雅「──慔慔、勉也」
慢(心部十一畫)に同じ。
①リン [寢]
②ラン [感]
懔は俗字
①おそれる(畏·懼)○つつしむ(敬)つつしみ畏れる。○あやぶむ(危)心配する「危─」
②さむし(寒涼)○いたむ(痛)○くるしむ(苦)
さむくをののく貌。杜甫詩「那無囊中帛、救汝寒──」
おそれる。=怖畏。
○おそれる貌。書、泰誓「百姓──、若崩厥角」○危ぶむ貌。漢書、食貨志「直爲此──」
14畫
①エン [鹽]
②エン [豔]
厭に通ず
①やすし(安)○ひさし(久〕
②たる(足)
安き貌。爾雅、注「──好人安詳之容」=厭厭。
①サン [感]
②セン [琰]
又憯に作る
①いたみ、いたむ(痛)「─痛」○かって(曾)詩、小雅「─莫懲嗟」
②いたみ、いたむ。
むごたらし。漢書「又好用──之吏」=殘酷·慘酷。
甚だしくいたみ憂ふる貌。詩經「曾我暬御、──日瘁」
いたみかなしむ。楚辭「霜露──而交下兮」=慘悽。
いたみかなしむ。王粲、登樓賦「心悽愴以感發兮、意忉怛而──」
かなしみいたむ。漢書、武帝紀「蓋君者心也、民猶支體、支體傷則心──」=痛悼。
いたみかなしむ。任昉文「懷人望古、──久之」=惆悵。
いたむ。牛希濟、刑論「毁其父母之遺體、罔不──於心者」
いたみなげく。梁簡文帝、大同哀辭序「──結于心、愁眉慘于外」=哀慟。
ジユ ゼン ダン ダ [虞]
○よわし(弱)勇氣なし。漢書、兒寬傳「善屬文、然─於武」○にぶくしてよわし(駑弱)「柔─」「怯─」荀、修身「偸─憚事」=愞。
よわくおろか。韓非子「君懦而闇、則羣臣詐」
ひけふ、おくびゃう。宋史、辛炳傳「以炳──、不能罷之」=畏懦·怯懦。
おくびゃうなることば。宋史、吳璘傳「──沮軍可斬也」
よわし。左、昭二十「水──、民狎而翫之、則多死焉」=柔弱·尫弱。
よわくしてにぶし、薄弱にして遲鈍なり。梁書「比見京師文體、──殊常」
氣弱く才うすし。懽德輿文「書生凡輩、──無堪」
氣の弱き男。氣節なき男子。孟、萬章「聞伯夷之風者、頑夫廉、──有立志」
よわくおとる。唐書、劉蕡傳「臣才志──」
おくびゃうなる君。史記「吾王──也」
懦(前條)に同じ、本、儜に作る。
よわくおろか。戰國策「憒於憂而性──」
セイ [齊]
○いかる(忿怒)詩、大雅「天之方─」○─疑はそねみうたがふ(猜疑)
セイ テイ [霽]
音が敗れて調和せず。禮、樂記「五者不亂、則無怗─之音矣」
ツヰ ダイ [寘]
もと憝に作る
うらむ、うらみ(怨)「怨─」
チ [寘]
いかる(怒)大學「身有所忿─」
チウ [尤]
うれへ、いたむ(愁毒)
うれへいたむ貌。王襃、九懷「泱莽兮究志、懼吾心兮──」
①ボウ [徑]
②ボウ [董]
③ボウ [東]
通じて懵に作る
①もだゆ(悶)○くらし(瞢)明かならず。
②くらし(闇)こころみだれる(心亂)
③──はおろか、無知の貌。=懵懵。
ボウ モウ [東]
○つつしみあつし(愨厚)○昏くして明かならず。
俗 明了ならざる貌。畫鑑「善畫無根樹、能描──山」
ボン·モン マン [願]
○もだゆ、もだえ(煩悶)「憂─」「憤─」○わづらふ(煩)「煩─」史、倉公傳「使人煩─食不下」
もだえわづらふ貌。陸游詩「胸次──思同澆」
①ヲン [覃]
②ヲン [勘]
①貪─はたしなむ(嗜)
②むさぼる(貪)
15畫
①イウ [有]
②イウ [尤]
①おそし(舒遲)○しづか(靜)
②うれふ(愁)憂に通ず。
うれふる貌。楚辭「傷余心之──」
シ チ [寘]
○いかりもとる(忿戾)
チョウ [蒸]
○こらす、こりさせる(創、戒)「勸善─惡」○こる(自戒)
あしきをこらし戒む。漢書、張敞傳「無以勸善──」
舊刑法の重罪犯の主刑、懲しめの爲め罪人を監獄に入れて定役に服せしめる、輕重の二種あり。
こりていましむ。漢書、諸侯王表「漢興之初、──亡秦孤立之敗」
官吏の服務規律に違背せし罪を罰する法令。
こりて行をあらためる。後漢書「頃雖頗繩正、猶未──」
熱きあつものをすすりて口を燒きたるに懲りて、冷たきなますを見ても恐れて之を吹く、卽ち戒懼の甚だ過ぎたる喩。楚辭「懲於羹者而吹虀兮、何不變此之志也」
寇をこらしめふせぐ。唐書「來則──、去則謹備」
あやまちを責めこらす。劉勰、新論「賞以勸功、罰以──」
あだを伐ちこらす。
つみある者をこらす。說苑「子孫在朝、何以──」
他人又は己を戒めこらす、創も懲と同義。書經、疏「聖人之制刑罰、所以──罪過」韓愈詩「生還眞可喜、剋己自──」
こらしとどむ。易經、注「──忿怒」
わがままをこらす。左傳「──而去貪」
罪をこらしめて善き方にみちびく「──監」
不論罪にあたる幼者、又瘖啞者を懲治する爲め設けし監獄。
忿をこらし欲をふさぐ。易、損卦「懲忿窒欲」疏「忿欲皆有往來、故──互文以相足也」
こらしつみす。北史、西域于闐傳「餘罪各隨輕重、──之」
○こりつつしむ、毖は愼。詩、周頌「予其懲而毖後患」○──錄 チヨウヒロク 書名、十七卷、豐太閤の征韓役の事を朝鮮の左相、柳成龍の記せしもの。
こらしておとす。唐書、盧懷愼傳「粗示──」
ヤウ [養]
○心に欲する。○癢と通ず、藝ありて逞くせんと欲するを技─といふ。潘岳、射雉賦「徒心煩而技─」
①リウ [尤]
②リウ [有]
①─慄はかなしみいたむ(哀愴)貌。漢書、孝武李夫人傳「─慄不言」又、うらむ(怨)
②かほよし(好)詩、陳風「月出皓兮、佼人─兮」
16畫
懿(心部十八畫)に同じ。
グワイ [佳]
○おもひ、おもふ(念思)論、里仁「君子─德」○なつく、なつき、きたす(來)なつき歸す。書、大禹謨「黎民─之」○やすし(安)「榮─」○いだく(抱)ふところにす。○をさむ、かくす(藏)論、陽貨「─其寶而迷其邦」○いたむ(傷)○なぐさむ(慰)○いたる(至)○とどまる(止)○ふところ。論、陽貨「子生三年、然後免於父母之─」○かぬ、つつむ(包)書、堯典「─山襄陵」○こころ(心)むね(胸臆)「胸─」「孤─」「中─」韓愈文「豈能無介于─乎」
同訓異義
オモフ 懷·思·憶·意·念·想·惟·顧の別は思(心部五畫)の條を見よ。
なつけいざなふ。後漢書、西域傳論「兵威之所肅服、財利之所──」
おもひをのべる。文心雕龍「意得則──、以命筆」
めぐみになつく。後漢書「人納其訓、吏懷其恩」
きずをもつ。後漢書、蔡邕傳「或有抱罪──」
なつきむかふ。唐書、賈敦頤傳「爲政寬惠、人心──」
あやぶむ心をいだく。漢書、王嘉傳「中材苟容求全、下材──內顧」
奇才をいだく。韓愈文「──負氣、不肯隨人」
○心にうたがひをいだく。○哲學にて人智は確かなる者にあらずとして認識を否定し、眞理の存在をうたがふ思想。
かへりたしと思ふ。詩經「豈不──、畏此簡書」
むかしをしのぶ。李中詩「感時──思悽悽」=懷古。
ふところ、むね。周砥詩「仗劍從此別、秋風滿──」=襟懷。
ふるさとを戀ひしたふあまり煩ふやまひ。
德になつきうつる。晉書、琅邪武王伷傳「百姓──」
邊地のものをなつけ來たす。晉書「──弭暴、開國化家」
才能をかくしてあらはさず。張舜行史說「──而同其塵」
國 ふところにする護身用の短刀。=匕首。
むかしをしのぶ、古昔を追懷する。北史、常景傳「經涉山水、悵然──」=懷舊。
おもひかへりみる。詩經「睠睠──」
おもふ。李陵、答蘇武書「望風──、能不依依」
心に思ひかくす。=包藏。
水が山をつつむ。書、堯典「湯湯洪水方割、蕩蕩──襄陵」
國 和歌·連歌を正式に書くときに用ふる紙、檀紙また引合紙を用ふ。
二心をいだく。齊書「沈攸之事起、袁粲──」
なつけ來たす。詩、周頌「──百神、及河喬嶽」
はぢらふこころをいだく。趙嘏詩「失意自──」
なつけ安んずる。陸雲文「──四方」=懷輯。
てなづけ安んずる。後漢書、竇融傳「──羌虜」=懷集。
ふところ。衽はおくみ。韓非子「出其父母──之中、生未嘗見寇耳」
邪心をいだく。後漢書「──之臣」
楚の屈原が、身を江中に投ずろ時、作りし賦。史、屈原傳「乃作───、於是懷石、遂自投汨羅」
靑年男女が婚姻をおもふ、男女の戀愛(古、仲春に結婚せしによる)詩、召南「有女──、吉士誘之」
せんぞをおもふ。杜篤文「悽然有──之思」=念祖。
唐の長沙の僧。范氏、字は道眞、酒を嗜み最も草書に巧なり、貧にして紙なし、芭蕉萬餘株を種ゑて揮灑に供す、七十四歲にして寂す。
はらむ。=懷姙·懷孕。
道德を心にいだく。南史、許亨傳贊「亨──好古」=抱道。
○ふところのなか。梁書「其一鈴落入裴──」○ 國 ふところ。又、ふところに入るる紙入 カミイレ をいふ「──物」
君の愛になつき退くべきに退かず、位をぬすむ。孝經、諫諍章、注「見可諫而不諫、謂之尸位、見可退而不退、謂之懷寵、────、國之姦人也」
○居る所の安きを思ふ。論、里仁「小人──」○故鄕を慕ひ思ふ。陸機に──賦あり。
心にかける。南史「生資皆盡、不以──」
わがおもひのままにして少しの制裁もなき義。晉語「────、民之下也」
はらむ。後漢書「詔令諸──者、賜胎養穀人三斛」=懷妊。
○いだく。又、ふところ。後漢書、陳忠傳「三年乃免于──」心に思ふ意見。王羲之文「或取諸──、晤言一室之內」
なつきつく。後漢書、竇融傳「國富政修、士兵──」
なつけやすんずる。後漢書、种暠傳「誠心──、信賞分明」
苜蓿 ウマゴヤシ の異名。西京雜記「苜蓿、一名──」
國 一卷、淡海三船編す、我國詩集の最も古きもの。
なつきしたがふ。馬祖常詩「上國崇──」=懷附。
なつかしくおもひてしたふ。王粲文「槪我──思、君子所同」=思慕。
たみをなつける。漢書「割據河山、保此──」
おもふ心。杜甫詩「予實苦──」=緬懷。
はらむ。後漢書、吳祐傳「妻遂──」=懷妊。
なつきたのしむ。史記「天下──、敬愛而尊慕之」
國 ふところに入れて攜帶する防寒用の火いれ。
ケン [先]
もと縣に作る
○かく、かかる(掛·繫)ひきかける、上に繫 カ けて下、空際に垂る「倒─」○かかげ示す「─賞」○遠くへだたる「─隔」「─軍」○倒─はさかさにつるし下げる。轉じて非常の苦に譬ふ。孟、公孫丑「猶解倒─也」
同訓異義
カカル 懸·係·掛·挂·嬰·繫·麗·罹の別は係(人部七畫)の條を見よ。
かかりくびくくる。
○かはの水を注ぎかく。梁書「──注火、奚有不滅」○辯舌の流るるが如く竭きざるに喩ふ。范傅正、李白墓誌銘「辯如──、筆不停綴」
水の流るるが如くによどみなく竭きざる辯舌。晉書、郭象傳「王衍每云、聽象語、如懸河瀉水、注而不竭」
次條に同じ。方囘詩「──樵屋小」
きりたちたるがけ。鮑照詩「──棲歸月」=斷崖。
佛 がけより手をはなして落つる勇猛心を奮ひて決然と事をなすにいふ。
つりさげたる物を解く、甚だしき困苦を脫する義〔莊、養生主〕後漢書「當此時天下──矣」
金をかけて物をあがなふ。史、剌客傳「韓──之」
はるかにヘだたる、かけはなれる。史、高祖紀「秦形勝之國、帶河山之險、──千里」=懸絶。
かけたるはた、はたをかける、轉じて心の動くに喩ふ。鮑照詩「飛念如──」=懸旆·懸旌。
懸賞に同じ。後漢書「下郡國、逮捕黨人、或有逃遁不獲、皆──購募、使者四出、相望於道」
棟木 ムナギ の端につくる魚の尾の形せるもの。自居易詩「──挂靑甃、行馬護朱闌」國 ゲギヨ と讀む。
軍隊を遠く出す。又、其の軍隊。張珪廷文「罷金甲之──」
磬石を懸けたる如く家貧しく一物の見るベき者なき義。魯語、注、「室屋皆發撤、榱椽在、如──」=縣磬·懸罄。
前條に同じ。左、僖二六「室如──、野無靑草、何恃而不恐」懸を縣に作る、同じ。
つりばし。李端詩「花開深洞仙門小、路過──羽節輕」
心の安んぜざる貌。王建詩「妾思常──、君行復緜緜」=懸心。
○かけたるひさご。薛能詩「──籬落似村居」○城の名、今の河南省汝南縣治。=懸壺。
男子の誕生日、男子生るれば、弧 ユミ を門に懸けて射の道あるを示すが故。禮、郊特牲「孔子曰、士使之射、不能則辭以疾、縣弧之義也」注「男子生而設弧於門左、示有射道」又、桑弧蓬矢を以て天地四方を射て、將來四方に功を立てんことを祝す。禮、內則「男子生、桑弧六、蓬矢六、以射天地四方、天地四方男子所有事也」
かぎをかける。康庭芝詩「臺前疑挂鏡、簾外似──」
書法にて竪の畫の下端の尖りてかけたる針の如きをいふ。法書要錄「善──垂露之法」
深く敵地にすすみ入る。晉書、羊祜傳「官軍──」
○老いて官を辭するにいふ。漢書、薛廣德傳「俱乞骸骨、皆賜安車駟馬黃金六十斤罷、廣德東歸沛、太守迎之界上、沛以爲榮、懸其安車、傳子孫」隋書「韋世康謂子弟曰、吾聞功遂身退、古人常道、今年將耳順、志在──」○年七十をいふ。白虎通「臣七十──致仕」
賞をかけて募り求める。鹽鐡論「──以待功」
人を殺して其の首級をかけ置く。丘遲文「繫頸蠻邸、──藁街」
はるかに違ふ大いなる差がある。=懸絶、軒輊 ケンチ ·逕庭。
眼のうるはしきに喩ふ。漢書、東方朔傳「目若──、齒若編貝」
やぶれ衣。荀、大略「子夏、貧、衣若──」=縣鶉·鶉衣。
かけたる旗、心の動きて定まらざるに喩ふ。戰國策「心搖搖如──、而無所終薄」
かけヘだたる。易經、注「重險──、故水洊至也」=懸隔·絶異。
たき。柳宗元詩「──粲成簾」=縣泉·飛泉·瀑布。
たき、淙は水流の音あるもの。沈約詩「百文注──」
つり下げたるこしかけ。客を敬ひて待遇する義。庾信詩「倒屣迎──、停琴聽解嘲」
たき。水經、注「──廻注、崩浪震山」=懸淙。
邾人、魯の僖公の兜を魚門に懸けて辱かしめたる故事により敵を辱かしむるにいふ。左傳「井陘之戰邾人獲公胄、懸諸魚門」
水が高き所より流れおつ。水經、注「石泉──」
はしご。南史「張綱修攻具成設飛樓──木幔板屋」
かかりたるふぢ。宋之問文「落花覆沼、──掃砌」=垂藤。
○垂れさがりし旗。○轉じて、心のうごきて定らざるに喩ふ。杜牧詩「我心──正搖搖」懸旌參看。
甚だしくかけはなれて多き義。張說詩「始知魯衞閒、優劣相──」
たき。陳傅良詩「怒號──從天下、傑立蒼崖夾道陳」
かけはなれて遠し。晉書、王羲之傳「位遇──=懸絶。
仙人の居る所。=玄圃。
○いのちをまかす。後漢書、陳龜傳「守塞候望、──鋒鏑」○ 國 いのちがけ「一所──」
かかりたるかづら。潘岳詩「依水類浮萍、寄松似──」
たき。陶弘景賦「絶壁飛流、萬丈──」=懸瀑·瀑布。
流れ下る水のしたたり。陶潛文「淙淙──」
すだれをかける。李賀詩「禁院──隔御光」
腕を擧げ宙に懸け、筆を垂直にもちて字を書く法。古今法書苑「腕法有三、有枕腕、有懸腕有提腕、枕腕者、以左手枕右手而書之、提腕者、肘著案、虛提手腕而書之、懸腕者、懸著空中而書之、枕腕以書小字、提腕以書中字、懸腕以書大字」
國 おもひをかける、男女がこひしたふ。
國 氣にかける、しんぱい、不安心。
懜(心部十四畫)に同じ。
心くらくしてみだる。潛夫論「──冒名也」
ライ [泰]
にくむ、きらふ(嫌惡)「僧─」
ラン [旱]
○ものうし、なまける、おこたる(怠懈)「困─」「老─」「廢─」南史、范曄傳「吾少─學問」=嬾。○つかれふす(倦臥)柳貫詩「借得小窗容吾─、五更高枕聽春雷」
ものうきこころ。許月卿詩「半生──琴三疊」
ものうきたち。杜甫詩「──從來水竹居」
ものうくしておこたる。陶潛詩「阿舒已二八、──固無匹」
ものうくして自分の才智を世に示し名を博することをせず〔歐陽修、釋祕演詩集序〕
なまけるつま。石林詩話「槐花黃、擧子忙、促織鳴、──驚」
おこたる。宋史「韓熙載性──、朝直多闕」=怠慢。
17畫
イン オン [吻]
○うれへやむ(憂病)○かなしむ(哀)
キ [寘]
○つよし(强)○─忮 キシ はもとる(很)史、貨殖傳「人民矜─忮、好氣任俠爲姦」
サン セン [陌]
くゆ、くい(悔)自らあやまちを悔い告白して改める「愧─」
佛 罪過をくい改める。梁簡文帝文「今日此衆、誠心──」
罪惡をくいあらためて心を淸める。符載文「因于──、嘗與一二善友、跳身此來」=懺除。
佛 佛に懺悔 ザンゲ し禮拜して福を求める。南史「比來慕法、普天信向、家家齋戒、人人──」
18畫
イ [寘]
○うるはし、よし(美)專一にして美くし。○あつし(醇美)○溫柔聖善をいふ、故に多く女德の稱とす。○抑に通ず「─戒」
○芳ばしき貌。劉向、九歎「芳──而終敗兮」○美くしく善き貌。班固、周勃銘「──太尉」
よきいましめ。又、懿は抑に通ず、卽ち大雅抑篇をいふ。楚語「於是乎作──自儆」
善き行。唐書「實藝──、人未必信」
よきのり、善美なる法則。傅亮、感物賦「仰前修之──」
善きわざ。薛道衡文「──遠大、豈盡揄揚」
うつくしきおほせ。皇后又は皇太后の命をいふ。
親族の閒の至りて美くしきしたしみ。左、僖二四「兄弟雖有小忿、不廢──」=至親。
皇室のしたしき外戚。晉書、苻登載記「苻融以──贊經綸」
善美なるいさを。晉書「──克宣」
うつくしき常の德。醇美なる德。詩、大雅、烝民「民之秉彝、好是──」
美くしき人望。三國志、注「徽猷──」=美望。
美くしき模範 テホン 王勃文「字文新州之──」
うつくしき文章。又、學藝。白居易、裴度中書舍人制「茂學──」
ク [遇]
省して瞿に作る
○おそれる、おそれ(恐)「畏─」「驚─」「慙─」論、子罕「勇者不─」をののく、わななく。○おどす(威嚇)史、齊世家「─士卒」○守なき貌。○つつしみいましむ(敬戒)「戒─」「敬─」論、述而「必也臨事而─、好謀而成者也」○あやぶむ(危)「危─」うれへ(患)左、成十六「盍釋楚以爲外─乎一
同訓異義
オソル 懼·恐·畏·怖·怕·惶等の別は恐(心部六畫)の條を見よ。
おそれふるふ。漢書「萬夷慴伏、莫不──」=震懼。
おそれつつしむ。李尤、舟楫銘「安審──、終無不可」
おそれあへぐ。沈約文「停鑣──、旣弘道於世務」
おそれる貌。漢書、惠帝紀、贊「聞叔孫通之諫則──」=瞿然。
俗 夫が妻を畏れる。
おそれる。常袞文「──良深」
おそれる。續搜神記「聞人馬鎧甲聲、人皆──」
おそれもだゆ。後漢書「內懷──、而未敢陳諫」
クワン [寒]
よろこぶ(喜)=歡。
同訓異義
ヨロコブ 懽·喜·悅·欣·忻·歡·怡等の別は喜(口部九畫)の條を見よ。
よろこぶ、よろこび。韋應物詩「衆賓寡──」=悅懌·欣懌。
よろこべるかほ。杜甫詩「天下寒士皆──」=懽容。
よろこぶ、よろこび。晉書「飾其──、止於哀思者也」
よろこびたのしむ。杜甫詩「萬事盡付形體外百年未見──畢」
よろこぶこころ。孝經「得萬國之──」
よろこばしきおもむき。何遜詩「幽居乏──」
よろこびやはらぐ。晉書、劉輿傳「人人──、莫不悅附」
よろこびたのしむ。摯虞賦「旣──而不倦、願窮畫而兼夜」
ケイ [齊]
ふたごころ(二心)あり「─貳」
ショウ サウ [腫]
通じて聳に作る
○おそれる(懼)朱熹詩「─然心神肅」○おどす。=悚。
セフ [葉]
○おそれる(怖)おそれて氣を失ふ「─怖」「憂─」「惕─」○おどす。
同訓異義
オソル 懾·恐·懼·畏·怖·怕等の別は恐)心部六畫)の條を見よ。
おそれる。元載文「千里爲之震動、百蠻爲之──」=恐怖。
おそれおどろく。唐書、陸贄傳「貽彊蕃勁虜、則──褫情」
おそれさけぶ。
おそれてをる。史、張儀傳「愁居──、不敢動搖」
おそれてぞっとする。吳志、是儀傳、注「勇不──」
おぢおそれる。=懾聳。
おそれはばかる。宋書、戴法興傳「──尤甚」=畏憚。
おそれをののく。史、索隱述贊「陸賈使越、尉佗──」
おそれ從ふ。戰國策「趙楚──不敢攻秦者、白起之勢也」
忡(心部四畫)に同じ。
心うれふる貌。楚辭、九歌「極勞心兮──」=忡忡。
19畫
①ダン·ナン [澘]
②ゼン [銑]
①つつしむ、うやまふ(敬)
②おそれる(懼)詩、商頌「不─不悚」
レン [霰]
こひ、こふ「愛─」「思─」したふ(慕)後漢書、姜肱傳「兄弟相─」
男女のこひ、相思。=愛戀。
めぐみに心をひかされる。舊唐書「──方切、陳誠至難」
したひなく。北史「益州人、追隨──者數百里」
宮闕をこひ慕ふ。君を忘れざる義。韓愈詩「朝陽南去倍長沙、──那堪更憶家」
こひしたふこころ。王粲詩「誰能無──」
臥して起きるにものうき義。帪養浩詩「──嫌多夢」
こひ慕ふ心が執著する、深くこひこがれる。訶欲經「女色者世閒之枷樔、凡夫──、不能自拔」
男女がこひしたふ。王融詩「閨中空──」
心にしたひ思ふ貌。依り戀ひて見捨てざる義。史、范雎傳「綈袍──有故人之意」
國 戀愛の情を述べし和歌。
20畫
クワク [藥]
○おどろく(驚)○あわてみる(遽視)
驚きあわてる貌。史、晏嬰傳「晏子──攝衣冠謝」=矍然。
21畫
戇(次條)の俗字。
24畫
タウ·トウ コウ [江]
憃に同じ
○おろか(鈍)ばかしゃうぢき(愚直)「─愚」○いっこく(剛直)史、汲黯傳「甚矣汲黯之─也」
おろかにしてくるふ。韓愈文「余戇而狂」
ばか正直。韓愈、潮州刺史謝上表「臣以狂妄──、不識禮度」
ばかしゃうぢき。漢書、汲黯傳「汲黯爲人、──好直諫」
おろかにしてかざりなし。盧仝賦「予小子──、必不能濟」
おろか。呂晦文「伏念臣──、所賦忠朴」=戇愚。