尸部
0畫
シ [支]
○かばね、しかばね(死骸)人死して未だ葬らざる者。屍に通ず。○かたしろ(神象)古、祭の時、神の依る所の人。後世は畫像を用ふ。孟、吿子「弟爲─則誰敬」○つらぬ(陳)兵をつらねる。○つかさどる(主)詩、召南「誰其─之」○のばす、のぶ(舒·伸)○俸祿のみ受けて職責を空しくする「─位」
空しく其の位に在りて責を盡さず。書、五子之歌「太康──」
空しく祿を食み位に居りて其の責を盡さず。漢書、朱雲傳「今朝廷大臣、上不能匡主、下亡以益民、皆────」素餐は詩、魏風、伐檀に「彼君子兮、不素餐兮」とあるに本づく。
戰敗れ尸を荷ひて還る。易、師卦「六三、師或──凶」象傳「師或──、大无功也」
道家の術にて、身體のみを殘して、魂魄の拔け去るをいふ。神仙の化去する義。後漢書、方術傳「北海王和平病歿、後弟子夏榮言其──」瑣言「凡今之人、死視其形、如生、乃──也、足不靑、皮不皺、亦──也」
死後、なほ其の君を諫むる義。韓詩外傳「史魚病且死、謂其子曰、我爲人臣、生不能進賢而退不肖、死不當治喪正堂、殯我于室足矣、衞君聞之、召蘧伯玉而退彌子瑕、生以身諫、死以尸諫、可謂直矣」大戴禮、保傅には史魚を史鰍に作る。
鳩 ハト の一種。=布穀·鳲鳩。
かたしろの如くにをる。莊子「──而龍見、淵默而雷聲」
ただ其の祿を食みて責を盡さざる者、尸位素餐の役人。書、胤征「羲和尸厥官、罔聞知」
坐するにただしきことは、尸 カタシロ の如く、立つに謹むことは、齋戒する時の如し。曲禮「若夫坐如尸、立如齊」齊·齋通ず。
○尸はかたしろ、祝はかんなぎ。莊、逍遙遊「庖人雖不治庖、──不越樽俎而代之矣」○轉じて崇拜する義とす。莊、逍遙遊「子胡不相與尸而祝之社而稷之乎」
尸位素餐の略、位に居りながら、其の責を盡さざる義。潘岳文「媿無獻納、──以甚」
屍骸に鞭ちて、深く怨を報ずる。史、伍子胥傳「伍子胥求昭王、旣不得、乃掘楚平王墓、出其尸、鞭之三百然後已」
盟をつかさどる。又、其の人。周禮、注「珠槃以盛牛耳、──者執之」=主盟。
利祿のみむさばりて務を果さず。禮、表記「事君近而不諫、則──也」
尸官に同じ。漢書「鮑宣傳「以苟容曲從、爲賢、以拱默──、爲智」=尸利。
1畫
ヰン [軫]
一音イン
○つかさ(官·司)衆官の長「令─」「閹─」「關─」○つかさどる(司)ただす(正)をさむ(治)○まこと(誠·信)禮、聘義「孚─旁達信也」
周の人、函谷關の令たり、老子の西遊するや、道德經五千言を授けて去る。
ほじし(脯)正方に割きて祭る義。曲禮「凡祭宗廟之禮、脯曰──」
セキ シャク [陌]
○ものさし(度器)杜甫詩「寒衣處處催刀─」○一寸の十倍、丈の十分の一。○長さ、たけ。○書鎭 ブンチン の一種、けいさん。
詔敕を寫す木板。漢の制、板の長さ一尺一寸、故にいふ。漢書、匈奴傳「漢遺單于書以──牘」
小を屈して大を伸ぶる、大を爲すためには小を犧牲にする義。尋は八尺。孟、滕文公「志曰、─────、宜若可爲也」
てがみ。陳書、蔡景歷傳「──馳而聊城下」=尺簡·尺書。
てがみ、書札。南史「寫以──」=尺牘。
大きく貴きたま。曹植文「寒者不貪──、而思短褐、飢者不願千金、而美一餐」
わづかばかりのきぬ。舊唐書「無──丈帛」
極めて近き義。辛氏三秦記「城南韋杜、去天──」
尺山寸水に同じ。吳楚は共に大國の名。袁中郞、由天池至三峽澗記「圓蒼所覆、目與之際、絲棼黍積、────、少焉霧作、長風捲湖而來、心怖乃下」=豆人寸馬。
高き處より見おろして、物の小さく見ゆる形容。張船山詩「曾向華嚴頂上來、────皆能說」
○一尺ほどのかみ。○てがみ。賀鑄詩「──爲君裁」=尺楮·尺簡。
てがみ。史、淮陰侯傳「發一乘之使、奉咫尺之書」岑參詩「相思難見面、時展──看」=尺牘·尺翰。
わづかな水。李白詩「濳龍隱──」
○僅少の義。後漢書、鄧禹傳「禹得効其──、垂功名于竹帛耳」○のり、法度の義。道德指歸論「我身者彼身之──也、我家者彼家之權衡也」
すこしばかりのてがら、功一に效に作る。漢書「無────、以得封邑」
一尺つもれる雪。大雪。左、隱、八「平地盈尺爲大雪」
てがみ。素は帛なり。樂府、飲馬長城窟行「呼兒烹鯉魚、中有──書」=尺牘。
國 二卷、藤原兼良の著、寬文年閒の刊行。
みじかきくみひも。王維詩「讀書三十年、腰下無──」
見る所のせまきに喩ふ。鯢はさんせぅうを。一說にめだか。宋玉、對楚王問「鯤魚朝發崑崙之墟、暴鬐於碣石、暮宿孟諸、夫────、豈能與之量江海之大哉」=井底之蛙。
すこしばかりの地。孟、公孫丑「──莫非其有」=尺土。
てがみ、楮はかうぞ、紙を製する原料。王邁文「敬裁──、往白前茅」=尺書·尺牘。
短き刃もの。李陵、答蘇武書「兵盡矢窮、人無──」=寸鐵·短兵。
すこしばかりの地。漢書「亡──之階、繇一劍之任、五載而成帝業」=尺地゜
○ものさし。宋書、律志「至魏──漸長於古」○すんぱふ、ながさ。
てがみ。一尺の方版の義。漢書、陳遵傳「陳遵瞻於文辭善書、與人──、主皆藏弆以爲榮」=尺書·尺翰·尺楮。
兄弟の仲惡きそしり。漢の文帝の弟、淮南王長不軌を謀る、文帝殺すに忍びず、蜀に謫しけるに、長食はずして死す、民歌を作りて曰はく「一尺布尙可縫、一斗粟尙可舂、兄弟二人不能相容」と〔史、淮南衡山列傳〕
みじかき武器。唐書「行千里、不持──」=尺鐵·尺寸兵。
直徑一尺ある寶王。淮南、原道「聖人不貴尺之璧、而重寸之陰」千字文「──非寶、寸陰是競」
龍の頭上の一物、博山の形に似たる者の名〔酉陽雜俎〕吳志「龍欲騰翥、先階──者也」
物は用ふる所によりて、優劣あるをいふ〔楚辭、卜居〕
しゃくとりむしの屈むは、後に伸びんとするが爲めなり。他日の成功を期せんが爲めに暫く身を屈するに喩ふ、信は伸。易、繫辭「────────、龍蛇之蟄、以存身也」
笛の名。唐の呂才の創作。博雅「馬端臨云、名──管、一名豎篴」=簫管。
2畫
力ウ [豪]
○しり、ゐしき、脊骨の盡くる所(臀)○そこ(底)物の地につける所。屈原、天問「崑崙縣圃、其─安在」
うづくまり坐する。名山記「昂首──、作伏獅狀」=蹲坐。
國 うまのしりの方に乘るあひのり、轉じて人の後につきて同じことをまねる、雷同する義。
國 太刀のさやを包む毛皮の袋、虎又は熊の皮を用ふ。
①ヂ·ニ [支]
②ヂツ [質]
③デイ [薺]
①あま(女僧)「僧─」「比丘─」
②ちかづく(近)昵に通ず、むつぶ(睦)やはらぐ(和)
③さだむ(定)○とどむ(止)孟、梁惠王「止或─之」
あまでら。白居易詩「──佛庭寬有餘」=尼寺。
山名、山東省曲阜縣の東南六十支那里に在り、叔梁紇、顏氏(孔子の母)とこの山に禱りて孔子を生む、故に丘と名づけ字を仲尼といふ。=尼山。
俗 あま、女僧をいふ。=比丘尼。
あたまの尼丘山の形に似て中くぼく、四方の高きをいふ。後漢書、高獲傳、注「──、首象尼丘山、中下四方高也」
孔子をたふとびていふ。父は甫に同じ、男子の美稱。禮記「魯哀公誄孔丘曰、天不遺耆老、莫相予位焉。嗚呼哀哉──」
國 貴婦人の比丘尼となれる者の敬稱。
あまでら。=尼院。
あまの住むいへ。洛陽伽藍記「瑤光寺講堂、──五百餘閒」=尼院。
3畫
盡(皿部九畫)の俗字。
4畫
キョク [沃]
○つぼね、へや(部屋)○官吏の事務を扱ふ所「官─」○かぎる(限)しきる(劃)わかつ(分)せばめる(狹)○せぐくまる、體をまげる。詩、小雅「不敢不─」跼に通ず。○かかはる(拘)せまる(促)まがる(曲身)○ちぢまる(縮)小さくなる。漢書、灌夫傳「─趣效轅下駒」○まく(卷)○せまし(狹)○はらまへ、人の器宇度量「器─」「─量」○とき、時運「時─」○すごろく、圍碁などのばん(盤)「碁─」「博─」杜甫詩「老妻畫紙爲棋─」○事件の一くぎり。○──は大に笑ふ貌。一說、笑ひて聲を岀さざる形容。莊子「──然大笑」○はこ(匣) 國 ○つぼね。へやもちの女官。又、へやもちの遊女。
ごと、すごろくと。急就篇「棊局博戲相易輕」
圍碁の時、對局者の外の旁觀者、をかめ、轉じて其の事に關係なき位地。劉克莊詩「君看橘中戲、妙不岀──」
國際上にて、交戰國の何れにも援助をせざる義。
ごばん。南史、何承天傳「文帝賜以──及銀裝箏」
國 純三椏原料を以て造れる上等の鳥の子紙。印刷局の創製なるが故にいふ。
せまき見識。梁高僧傳「僻見──」
かがまりちぢまる。韓愈詩「我雖官在朝、氣勢日──」
○全體の中の一部分。=一局部。○身體の一部分「──麻醉」=局部。
やくしょょ宋史「搉酟之法、所在置官吏──」
局は跼に同じ。天にせぐくまり、地にぬきあしす、甚だおそれて身を容るるに地なきをいふ。詩、小雅、正月「謂天蓋高、不敢不局、謂地蓋厚、不敢不蹐」=跼蹐。
○心のちひさき貌。白居易詩「磊落常許君、──應笑予」○屈する貌。=局趣。
屈しかがむ貌。史、魏其武安傳「──效轅下駒」=局促。
國 官省の局の長官、局中一切の事務をすべる役。
天にせぐくまり地にぬきあしする、天の高きも背を曲げて行き、地の厚きもぬきあしして步く、戒愼恐懼の甚だしき形容。局蹐參看。
心のはたちき、器量。後漢書、袁紹傳「外寬雅有──」=器度。
淸の同治中、曾國藩、官書局を于寧に創立し、經史を雕印す、江蘇·江西·浙江·福建·廣東·湖南·湖北等も皆仿ひて之を爲す、人呼びて──書と爲す。
身體中の一部分。=局所。
ごばんのおもて。轉じて事物のなりゆき「──一變」
はらまへ。晉書、褚裒傳「祖?有──、以幹用稱」=器量·局度。
ネゥ [嘯]
ゆばり(小便)=溺。
尿の通ふみち、膀胱の下前部より尿の排泄口に至る閒の管道。
泌尿排泄機の故障によりて尿中の有害物質が血液中に混ずるが爲めに起る病。
ヒ [寘]
へ、おなら。腹中に在る氣の下りて肛門より泄れるもの「放─」=失氣。
ビ [尾]
○を、動物のしっぽ「首─」「驥─」○うしろ、しりへ(後)すゑ(末)さき(端)をはり(終)○そこ(底)○つるむ、さかる(交)書、堯典「鳥獸孳─」○あしたれ、星の名、二十八宿の一。
ひそかに人の後をつけ行く、あとをつける。
おひうち〔後漢書、烏桓傳〕=追擊。
約束を固く守りて、變らざるをいふ。史、蘇秦傳「信如尾生、與女子期於梁下、女子不來、水至不去、抱柱而死」
動物の尾、餘りに大いなれば、自らふるひ動かすこと能はず、以て君弱く臣强けわば制御し難きに喩ふ。左、昭十一「末大必折、────」
脊柱の末端の三角形の骨、尾閭を見よ。=尾尻骨。
○大海の底にありて絕えず水を泄らすといふ所、百川の下に在り故に尾といふ、閭は聚、水の聚る處の義。莊、秋水「北海若曰、天下之水、莫大於海、萬川歸之而不盈、──洩之而不虛」○轉じてせぼねの下端なる尖れる骨、かめのを。=尾閭骨·尾骶骨。
國 禮を失ふ。痴 ヲコ の當字 アテジ を音讀せしもの。=不敬·無禮。
人の卑屈にして、憐を乞ふさまを犬に喩へていふ。韓愈、應科目時與人書「若俛首帖耳、────者、非我志也」
古は龜の甲を燒きてトふ、故に神龜は、死して貴ばるるよりも、生きて其の尾を泥中に曳くの心安きを喜ぶ、以て仕宦して束縛を受くるよりは、貧賤にして安らかに家居するに如かざるに喩ふ。莊、秋水「莊子釣於濮水、楚王使大夫二人往先焉、曰、願以竟內累矣、莊子持竿不顧曰、吾聞、楚有神龜、死已三千歲矣、王巾笥而藏之廟堂之上、此龜者寧其死爲畱骨而貴乎、寧其生而曳尾於塗中乎、二大夫曰、寧生而────、莊子曰、往矣、吾將曳尾塗中」塗は泥。
國 山のいただき。尾は山の裾のひき延びし所。=山巓·山頂。
國 すすきの穗。=芒花。
5畫
力イ [卦]
俗に届に作るは非
○いたる(至)書、大禹謨「惟德動天、無遠弗─」○きはまる、きはむ(窮極)○あたる(當) 國 ○とどけ「─書」とどける(─書を出す)願がかなふ「願意聞─く」○とどける、送致する、とどく、到著する。
屆(前條)の俗字。
①キヨ·コ [魚]
②キ [支]
①をる、ゐる、住む「寓─」「同─」「僑─」「雜─」しめる(占)○すわる(坐)禮、曾子問「─吾語汝」○すまひ「住─」ゐどころ「─處」「卜─」「山─」「皇─」「幽─」○へいぜい(平生)「─常」論、先進「─則曰、不吾知也」○むなしく、ただ。○つむ(積)たくはふ(畜)史、呂不韋傳「奇貨可─」又、積み貯へて置く物品。書、皋陶謨「化─」化は交易する義。○とどまる(止)
②や、語勢を助くる助語。詩、邶風一日─月諸」
○平正通達の地に安んじ居り、矯激の行を爲して名を立つることを爲さざる義。中庸「君子──、以俟命」○唐の白樂天の名。
兩者の閒に立ちて盡力する。史、灌夫傳「賓客──、遂止俱解」=居中。
惡心ありて親まざる貌。〔詩、唐風〕
○ゐま、部屋。○家にすまひ居る。易經「君子居其室」
○おちつきて安き心。呂覽「無有──」○心を存す。晉書「卿──不淨」
つね、平生。劉得仁詩「遇物唯多感、──只是吟」=居恒。
とどまりまもる。杜甫詩「雖無新增修、尙置官──」=畱守。
○をる、家に居る。論、子路「──恭」○ゐどころ。=居所。
日月をいふ。──の二字は助辭。詩、邶風「日居月諸、胡迭而微」に出づ。
○すまひをしてくらふ、生活する。○ 國 ヰグヒ ゐながらくらふ、あそびて食ふ。=徒食·坐食·素餐。
河海を住居とする。國語「陸人居陸、水人──」
○そのまま坐して動かざる貌。晉書「──是出羣之器」○安んずる貌。詩經「──生子」=安然。○つれづれ。高適詩「舍下蛩亂鳴、──自蕭索」=徒然。
すまひ。世說「貧無──」=住宅。
兩者の閒に立ちて盡力する「──調停」=居閒。
すまふ、すまひ。十二遊經「不得──」
ただしきをまもる。易經「──之吉、順以從上也」
やしき。吳萊詩「大田連阡陌、──擬侯王」
人は地位境遇によりて、其の氣分を異にする。孟、盡心「───、養移體、大哉居乎」
開港場などにて外國人にすまひを許す一定の區域の地。= 俗 租界
○道藝に達して仕宦せざる士。禮、玉藻「──錦帶」=處士。○僧にあらずして佛門に歸依せる男子。祖庭事苑「凡具四德、乃稱──、一不求仕宦、二寡欲薀德、三居財大富、四守道自悟」
國 ゐながら太刀を拔きて敵とわたり合ふ、劍術の一派。林崎重信の夢想流より起る。轉じてゐあひぬき、刀の曲藝。
國 かかり人。=食客。
國 陰曆十八日の夜の月、ゐまちの月。
クツ [物]
○かがむ、伸の對「抑─」易、繫辭「尺蠖之─、以求信也」絀に通ず、まがる(曲)をれる、くじける(折)たわむ(撓)志が撓む。○へりくだる(謙)「─下」○つきる(盡·竭)漢書、食貨志「用之無度、物力必─」○つよし、倔に通ず、─彊はもとる(梗戾)貌。○いきごもる(鬱)○きしる(軋)○姓。─原は楚の賢臣。
こしをかがむ。=折腰。
楚の屈原と漢の賈誼と。史記に二人の合傳あり。杜甫詩「中閒──輩讒毀竞自取」
特におこる貌。屈は倔に通ず。漢書「──在此位」=倔起。
いぢづよし。剛直の貌、順從ならざる貌。漢書、匈奴傳「楊信爲人、剛直──」=倔彊·崛强。
前條に同じ。史記「迺欲以新造未集之越──於此」
をれまがる。李白詩「人心若波瀾、世路有──」
くるしみてつきる。後漢書「公家──、賦斂重數」=窮竭。
名は平、字は原、戰國の時の楚の同姓、懷王に仕へて、三閭大夫となり、國政を執りて信任せらる、同列の大夫に妬まれて、疎んぜらる、乃ち離騷を作りて、王の感悟を冀ふ、懷王の子襄王立ち、亦讒を信じて屈原を長沙に遷す、終に石を抱き汨羅に投じて死す。
屈原の入水したる、五月五日に之を祭る故事。續齊諧記「楚屈原不見用于君、而被放于長沙、以五月五日投汨羅而死、楚人哀之、每至此日、以竹筒貯米、投水祭之」
屈は屈支國、長安の西千五百支那里に在り、一名龜玆 キウジ 名馬を產す、乘は馬四匹。左、僖二「晉荀息請以────與垂棘之璧、假道于虞以伐虢」
○指をかがめてかぞへる。=僂指。○又、指ををりて數へる程の稀なる義。
下りてひざをまげる。人の下風に立つ。晉書「交臂──」又、史記「交臂受事、詘膝請和」詘·屈通ず。
次條に同じ。班彪賦「行止──、與時息兮」
かがむと、のびると。後漢書「蛇能──、配龍騰蟄」=屈信·伸縮。
草の名、はまびし(濱菱)海濱の沙地に生ずる蔓生草。=蒺藜。
屈服に同じ。
身を屈して辱をうく。李康文「馳驟于蠻夏之域、──于公卿之門」
をれかがむ。李華、三賢論「若百鍊之銅、不可──」
みさををまげる。家語「今夫子欲──以救父母之國」=折節。
屈原と宋玉と、竝に楚の文學家、詞賦に長ず。
たわむ。又、たわます。易、繫辭、疏「居不値時、失其所守之志、故其辭──不能申也」
國 くよくよと心を痛める。
己を屈して此方へ來らしむ。蜀志、諸葛亮傳「此人可就見、不可──也」
かがまりわだかまる。歐陽修、石屛歌「古木參天枝──、下有怪石橫樹閒」
力屈してしたがふ。おそれしたがふ。=屈從·屈服·俯服。
おそれしたがふ。力屈して服從する。五代史、桑維翰傳「見者無不──」=屈從·屈伏。
おさへつける〔傳燈錄〕
○屈撓に同じ。○無實の罪。ぬれぎぬ、=冤枉。
シ [紙]
くそ(糞)=屎。
6畫
ヲク [屋]
○いへ、や「家─」「─宇」「瓦─」「板─」「陋─」「茅─」「華─」「矮─」○すみか、すまひ(住居)大學「富潤─、德潤身」○やね、むね(棟)○やねの形せるきぬがさ(車蓋)史、項羽紀「乗黃─車、傅左纛」○ 國 や、職業又は商號に添へる詞「八百─」「伊勢」」「株─」
いへ。後漢書、雷義傳「葺理──乃得金」
其の人を愛すれば、其の人の家の上の烏までも愛する義。坊主が憎ければ袈裟まで憎しといふ諺の反對。說苑、貴德「武王克殷、召太公、而問曰、將奈其士衆何、太公對曰、臣聞愛其人者、兼屋上之烏、憎其人者、惡其餘胥」
やねのかど。陸游詩「北斗挂──、西風驚雁羣」
益なきことを重ねてするに喩ふ。顏氏家訓、序致「魏晉來所著諸子、理事重複、猶────、牀上施牀耳」
屋根が破れて、所所に穴があきて北斗七星の如し、貧家の形容。雲仙雜記「鄭廣文、屋室破漏、從下望之、竅如七星」
いへ。史、大宛傳「有城郭──」
いへ。陸龜蒙詩「先夸──好」=屋宇。
家屋にかかる稅金。宋史、李處耘傳「奏減城中居民──、民皆悅服」=家稅。
いへ。考工記、注「匈奴無──、田獵畜牧、逐水草而居」=屋舍。
家のたるき。杜甫詩「發地扶──」
家のむなぎ。吳志、諸葛恪傳「出行之後、所坐廳事──中折」
きんじょ。いへなみ。史、汲黯傳「家人失火、──延燒、不足憂也」=比屋。
家のうつばり。神女賦「其始來也、耀乎若白日初出照──」=屋廡。
友を思ふ情の切なるをいふ。李白、夢杜甫詩「落月滿屋梁、猶疑照顏色」=落月屋梁。
すまひ、住宅。韓愈詩「辛勤三十年、以有此──」=屋室。
室の西北の隅。人なき隱微の處。詩、大雅、抑「相在爾室、尚不愧于──」
隱微の閒も戒愼して、鬼神に愧ぢざるをいふ。前條參看。
シ [支]
尸に通ず
かばね、しかばね(死骸)「死─」
死せしからだ、なきがら。=死體·死骸。
シ [紙]
○くそ(糞)莊、知北遊「道在─溺」=矢。○殿─は苦み愁ひて呻 ウメ く。詩、大雅「民之方殿─」
屛(尸部八畫)の俗字。
7畫
キ [寘]
屭(尸部二十一畫)の略字
力を作す。
ケキ [陌]
通音ゲキ
げた(木履)「木─」「輕─」
木屐を著けて山に登る。宋書「謝靈運好山水、尋山陟嶺。必造幽峻、巖障數十里、莫不備盡登躡、常著木屐、上山則去其前齒、下則去其後齒」
下駄のおと。李商隱詩「洞中──省分攜、是不花迷客自迷」
げたのはのあと。劉長卿詩「晚竹疎簾影、春苔雙──」
げたの類、子は助辭。
げたのは。晉書、謝安傳「心喜不覺──之折」雀躍して喜ぶことの甚だしき形容。
げたのあしおと。陸游詩「牆外泥乾無──」=屐響。
セツ [屑]
○いさぎよし、いさぎよしとす(潔)詩、鄘風「鬒髮如雲、不─髢也」○はたらく(勞)つとむ(勉)かへりみる(顧)○かろんず(輕)あなどる(侮)詩、邶風「宴爾新昏、不我─以」○くづ、くづにする(碎末)「玉─」「鋸─」「竹頭木─」○──はこせつく貌。
星の異名〔淸異錄〕
○こせつく貌。左、昭五「──焉習儀以亟、言善于禮」=煩細。○勤める貌。漢書、王莽傳「晨夜──、寒暑勤勤、無時休息」○雨などの細かくふる形容。江淹、神女賦「雨──而稍落」
人を啓發せしめん爲めに、態と之に敎ふることをいさぎよしとせずして、自ら之を思はしむる敎へ方。孟、吿子「孟子曰、敎亦多術矣、予─────也者、是亦敎誨之而已矣」
テン [銑]
○のぶ、つらねる(舒·陳)ひらく、ひろげる(開)「親─」「開─」「披─」○しく(敷)○ころぶ、ころばす(轉)○ととのふ(整)つまびらか(審)みる(視)丁寧に視る。檀弓「─墓而入」○しるす(錄)○かさぬ(重)○まこと(誠)○ 國 發達する「發─」
同訓異義
ノブ 展·述·陳·宣·舒·申·延等の別は述(辵部五畫)の條を見よ。
のべひらく、めさきがうちひらける「局面──」
音樂をのべかなづる。陳書「──賦詩」
展限に同じ。宋史「──以待者六七日」
書物を開き見る。陸游詩「數櫺畱得西窗日、更取丹經──看」=開卷。
のべひらきてもてあそぶ。梅堯臣詩「八軸──忘晨炊」
展覽に同じ。
期限をのべる、延期する。債務などの約束の期日をのべる。=展期。
わびる、陳謝する。左傳「以寡君之在行、牢禮不度敢──之」
のぶと、ちぢむと。錢起詩「則知造化源、方寸能──」=伸縮。
のべひろげる。爾雅、疏「舒者──徐緩有次也」
金屬の如く擊ちたたきてひろげのばし得る性。
いけにへをそなへる。周禮「──則吿牲」疏「展、具也」
ねがへりする。詩、周南「──反側」展一に輾に作る。
のべひらきてよむ。秦觀文「發函──、殆不能釋手」
喜びてまゆをのばす。愁をひらくにいふ。白居易詩「時時强──」=開眉。
申し述べる。左傳「使陪臣敢──之」=宣布·陳述。
遠くの景色をながめる「──車」
戰時に高處より軍狀をながめる任務に從ふ者。
ひとみをのばす、目を放ちて見わたす。=放眸。
はかまゐり。禮、檀弓「反其國不哭、──而入」注「展、省視之」=省墓。
品物を陳列してみる「──會」=展觀。
8畫
ヒ [未]
ざうり(草履)
①ヘイ·ビャウ [靑]
②ヘイ·ヒャウ [庚]
③ヘイ·ヒャウ [梗]
屏は俗字
①かき、へい、ついぢ(牆)門の內外に設けて目かくしとするもの「牆─」「垣─」○びゃうぶ「─風」ついたて「曲─」「畫─」○おほふ、おほひ(蔽)
②おそる(恐)さまよひて落付かず「─營」
③しりぞく(卻·斥·退)「─居」のぞく(除)さる(去)
同訓異義
シリゾク 屛·退·斥·郤·黜等の別は退(辵部六畫)の條を見ょ。
いきをころしておそれる。宋史「以威望自任、屬吏──」=屛息畏懼。
次條に同じ。
ついたて、とばり。談賓錄「飲啄飛鳴、不離──」轉じて室內の義とす。
○心安からずしてさまよふ貌。後漢書、淸河王傳「夙夜──」注「──、彷徨也」○おそるる貌。=惶恐。
かぜの神。曹植文「──收風、川后靜波」一說、雨師〔山海經〕又、雲師〔呂覽〕又雷師〔韋昭注〕
ふせぎ、まもり。北史、魏任城王澄傳「請假都督爲國──」=屛翰·藩屛。
天子の藩屛となる義。曾鞏文「荷戈執銳、爲王之爪牙、立纛設旄、爲國之──」詩經の「之屛之翰、百辟爲憲」に本づく、翰は幹、國の屛藩楨幹たる義。
息をせざるやうにする。甚だしく恐るる義。論、鄕黨「──似不息者」=屛息。
しりぞけすてる。書、泰誓「──典刑」=屛去·廢棄。
世を退きて隱居する。漢書「劉德免爲庶人、──山田」
人をしりぞけて密 ヒソカ に語る。漢書、傅介子傳「入帳中──」
内外のへだてとなるしきり、めかくし、屛風と障子と。晉書、阮籍傳「壞府舍──使內外相望、法令淸簡」
あとをひそめて遠く避ける。言行錄「豪猾──、聲聞赫然」=屛跡。
恐れていきをころす。五代史、李存進傳「魏人──畏之」=屛氣。
しりぞく。北史、于洛拔傳「恆畏避──、不敢逆」=斥退。
品物を收めかたづける、收拾して安置する。晉書、阮孚傳「祖約性好財、正料財物、客至、──不盡」
しりぞける。北史、李諤傳「──浮詞、遏止華僞」=斥逐。
○びゃうぶ。風をふせぐもの、ついたて。漢書「咸頭觸──」○みづあふひ。楚辭「──紫莖」注「水葵也」一說に防風 バウフウ
面を屛 オホ ふ具、團扇の類。漢書、王莽傳「後常翳雲母──、非親近莫得見也」=便面。
かこひいだく。蘇軾詩「三山──僧舍小、一溪雷轉松陰涼」
ロウ [肴]
雨もる。=漏。
9畫
屬(尸部十八畫)の俗字。
ト [虞]
○ほふる、ころす(殺)「翦─」○さく(裂·刳)○牛馬雞狗などを殺して肉を割くを業とする者「─者」○敵の城を毀ち人衆を殺す。漢書、高帝紀「今─沛」○浮─ フト は佛、又、佛敎·僧·寺塔をいふ。=浮圖。
十干の己の異名〔爾雅〕
ほふりさく。淮南子「──烹殺、剝狗燒豕、調平五味者庖也」=屠裂。
牛をほふる「──場」
犬殺しなどを業とする家。
犬羊の類を殺し、又酒を賣る、轉じて賤業者の稱とす。屠戶と賣酒者と。後漢書、王柔傳「竝岀──」
いぬを殺す、又それを業とする者。史、樊噲傳「以──爲事」
料理する、割烹。宋史、眞宗紀「禁──刑罰」
ほふり殺す。蘇頲文「其含生之類、不得輒有──」
犬殺しの類。=屠者·屠狗。
牛羊などをほふりて商ふ店、肉屋。
畜類をほふる人。戰國策「聶政勇敢之士也、避仇隱于──之閒」=屠兒·屠狗。
牛豚を屠るものは肉を食はずして、豆の葉のあつものを食ふ、紺屋の白袴に同じ。淮南、說林「────、爲車者步行、陶者用缺盆、匠人處狹廬」
屠殺場に牽き行かるる羊、將に殺されんとする罪人などに喩ふ。摩訶摩耶經、偈「譬如旃陀羅駈羊至屠處、步步近死地、人命亦如是」
人をほふり、家をやく。焚殺する。史、蕭何世家「項王與諸侯、──咸陽而去」
山椒·防風·肉桂·桔梗·白朮等を調合し、酒に浸して元旦に飲用すれば、一年中の邪氣を拂ふといふ。廣韻「──酒、元日飲、可除瘟氣」
犬殺しのかしら、屠者の長。漢書、嚴延年傳「流血數里、河南號嚴──」注「言延年殺人、如屠兒之殺六畜、伯、長也」
犬ころしと、ばくちうち。屠牲と賭博とを以て業とする者。王績詩「──暗爲儔」
肉をほふりて賣る。洛陽伽藍記「里內之人盡皆工巧、──爲生、資財巨萬」
はらをきりて自殺する、割腹する。はらきり、せっぷく。
肉を寶る巿。桓譚新論「對──而大嚼」=肉巿。
肉屋の前にて大いなる口を開き嚙むまねをする。曹植、與吳季道書「─────、雖不得肉、貴且快意」
ひつじを殺す。後漢書「──救楚、非要爵祿」
ほふり殺す。=屠殺。
龍をほふる技、高尙なれども時の用を爲さざる無用の技藝。莊、說劍「朱泙漫學屠龍於支離益、殫千金之家、三年技成、而無所用其巧」
ほふりさく。=屠割。
11畫
シ [紙]
一に蹤に作る
○ざうり(草履)わらぢ(草鞋)○價の甚だ廉なる者なれば惜氣 ヲシゲ なきものの譬とす。孟、盡心「舜視棄天下、猶棄敝─」
客の來たるを喜び、あわてて草履をさかさまに穿ちて出迎へる義。歡迎の情の切なる形容。魏志、王粲傳「蔡邕聞粲在門、──迎之曰、此王公孫也」
くつ。又、あわて急ぎて履。をひっかけて曳きずりながら行く。漢書、雋不疑傳「──起迎」註「曳之而行、言其遽也」=躧履。
ル [遇]
○しばしば(數)たびたび。○つねに(每)論、先進「億則─中」
同訓異義
シバシバ 屢·數·亟の別は數(攴部十一畫)の條を見よ。
貧しくしてたびたび家財が空乏に至る。論、先進「子曰、囘也其庶乎、──」
しばしば、たびたび。=頻數 ヒンサク
たびたびおこる。漢書「灾異──」
たびたびちかふ。屢次會盟。詩經「君子──、亂是用長」
12畫
セフ [葉]
○しきわら(履中薦)○げた(屐)杜甫詩「步─隨春風」
ソウ [蒸]
○かさなる、かさぬ(重·累)すべて物の重なるもの「一─」「地─」「峻─」○たかどの、二階以上の建物(重屋)○だん(級)
○幾重にもかさなれるくも。朱熹詩「絕壑──許盪胸」○地文學にて雲の一種、水平層をなして地面に近くあらはるるもの。
かさなれるのき。歐陽修詩「曲欄高柳拂──」
巖石の重なりたるがけ。水經、注「──刾天」=層崖。
幾階にも重なれるたかどの。蘇頲詩「──有餘淸」=重閣。
かさなりたるものみ。唐書「苑中作──、以望昭陵」
かさなれる山。吳海詩「展席俯淸池、倚檻盼──」=層巒。
二重のかまへ、二階建。枚乘文「連廊四注、臺城──」
髙處にあるす。路史「冬則營窟、夏則居──、以避難」
かさなりたる山のほら。陶韓詩「月夕對──、雲霞映晴川」
かさなりておくぶかし。水經、注「山岫──、側道褊狹」
かさなりたるうてな。淮南子「高臺──、人之所麗也」
かさなりて連なれる峯。文同詩「前對長江隔──」
かさなる貌。白居易詩「紅綠──錦繡斑」
幾重にもかさなる。=層疊。
かさなる。宋史、五行志「──高大、衆色咸備」=層層。
長きむなぎ。朱熹詩「誰將──壓巑岏」
かさなりたるいは。景福殿賦「爾乃建凌雲之──」
かさなりたる山。吳均詩「沈雲隱喬樹、細雨滅──」
輪の數多 アマタ かさなれる塔、俗に層を相に作る。
かさなる。宋玉賦「道互折而──」=層重·層疊。
幾階にも重なれるたかどの。梁書「更築三──」=重樓。
リ [紙]
○くつ(靴)屨は麻、─は皮にて造る。○ふむ(踐)足にてふむ。論、鄕黨「行不─閾」○はきもの「木─」「草─」「絲─」「珠─」「冠─」○はきものをはかす、履を以て足に加ふ。史、畱侯世家「良强忍下取履、父曰、─我」○さいはひ(祿)詩、周南「福─綏之」○あゆむ(步)○おこなひ(行爲)「─歷」「操─」おこなふ「─行」○易の卦の名、兌下乾上、○─む所の土地。領土。左、僖四「賜我先君─」
同訓異義
フム 履·踐·蹈·躡·踏·蹂·躪○履はふみゆく意、履レ霜·履行の類。又、人の經歷を履歷といふ。○踐はふまへてをること、踐祚の類。禮記「毋レ踐レ屨」○蹈は足拍子をとり、どしどしふみつけるなり、蹈歌·舞蹈の類、蹋は蹈に同じ。○躡は人のあとをふむこと、躡二三皇之高蹤一、張良躡二漢王足一の類、轉じて後より、追ひかくるにも用ふ、追躡の類。○踏はふみつけるなり、踐·履と異れり、踏レ約は、約束をふみ破るなり、踐レ約の反なり。○蹂はふみにじる。中記「餘騎相蹂踐」○躪は蹂に同じ、蹂躪と連用す。
○ふみおこなふ。實際にふみ行ふ。說苑「始誦之文、今履而行之、是學日益明也」○おこなひ。=品行。
正道をふみおこなふ。後漢書「龍丘先生、躬德──」
くつのひも。陸機詩「昏黃──絕」
虛空を履む、そらを步く。列子「──乘風」
草履 ワラグツ 大戴禮「于杖爲銘焉、于帶爲銘焉、于──爲銘焉、干觴豆爲銘焉」
國勢の傾ける時、これが恢復に當るをいふ。又、危難·誹謗を受け易き地位にあるをいふ。新語「乘危──、則以聖賢爲杖」
わらぐつをはく。說苑「知地道者──」
微細のことにまで才の行きとどくをいふ。晉書、謝玄傳「見其使才、雖履屐之閒、亦得其任」
謙讓の德をふみ行ふ。後漢書「當享積善──之祐」
霜をふめば、やがて堅冰の時至るが如く、前兆を見て戒愼すべしとの義。易、坤卦「初六、履霜堅冰至」左傳「昭公昧于────」
生絲にて作りたるくつをはく、甚だしきおごりをいふ。漢書、食貨志「──曳縞」
信義の道を履み行ふ。易、繫辭「子曰、祐者助也、天之所助者順也、人之所助者信也、──思乎順、又以尙賢也」
新年を迎へる。唐書、禮樂志「──之慶、與卿等同之」=履端。
まことの道をふむ。水經、注「──懷道、窮數術之美」
ふみたるあしあと。張蠙詩「身輕無──」=履跡。
くつおと。漢書、鄭崇傳「上曰、我識鄭尙書──」
くつ。舃は二重ぞこのくつ。史、淳于髠傳「──交錯、杯盤狼藉」
ざうりの跡。裴迪詩「雲光侵──、山翠拂人衣」=履痕·履迹。
ふみ行ふ。白虎通「禮之爲言履也、可──而行」
天子のくらゐにつく。蔡邕文「受玆介福、──孔成」=踐祚·卽位。
○正しきみちをふむ。易、履卦「──坦坦、幽人貞吉」○地名。唐書、白居易傳「東都所居──里、疏治種樹」白居易詩「歸來──宅、下馬入柴扉」
ふむ。ふみおこなふ。禮記、疏「凡可──而行者、必割斷得宜、然後可──」
正月元日、端は正、正月をふみ迎へる義。左、文元「先王之正時也、──於始」庾信賦「天子──廢朝」=履新。
冬至の慶賀。歲華紀麗、注「冬至、律中黃鐘、其管、最長、故有────」
うすき冰をふむ。危きを冒す喩。潘岳、西征賦「心戰懼以兢悚、如臨深而──」履冰參看。
薄き冰をふむ、極めて危く恐ろしき喩。詩、小雅「戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰」吳志、薛綜傳「懷──之險」=履薄。
くつと、たびと。後漢書、魯丕傳「特賜冠幘──冠衣一襲」
○儉約の旨を踐み行ふ。班固文「居儉──、紹公儀之操」○約束を履行する。
○これまで經歷せし事跡。封氏見聞錄「蓋欲著前政──、而發將來健羨也」○一身の經來りし行事「──書」=閱歷。
貴賤上下の別を亂すべからざるに喩ふ。史、儒林傳「黃生曰、冠雖敝、必加於首、履雖新、必關於足」
14畫
ク [遇]
○くつ、麻にて造りしはきもの「葛─」說文通訓定聲「古曰舃曰─、漢以後曰履、今曰鞵」○かはぐつ(革履)=鞮。
踊は刖者(罪ありて足をきられし人)のはくくつ。屨の價賤くして、踊の價貴きは、罪を犯す者多きに由る。左、昭三「國之諸巿、────」
15畫
キャク [藥]
くつ(履)麻にて造りしはきもの。史、范雎傳「躡─擔簦」=蹻。わらぐつ(草鞋)ざうり(草履)「草─」「菅─」「芒─」
18畫
ショク ソク [沃]
通音ゾク属は俗字
○つく(付)「付─」つきしたがふ「從─」史、項羽紀「騎能─者百餘人耳」○つづく(續)史、信陵君傳「使者冠蓋、相─於魏」つらなる(連)○つくる(作)つづる(綴)「─文」○むすぶ(結)○よろひのさね。甲札の數。○あつむ、あつまる(會·聚)淮南、天文「龍擧而景雲─」○いたる(至)いたす(致)○あはれむ(恤)○たる(足)「─厭」○──はうやうやし(恭)き貌。○ともがら(類·儕等)みうち「親─」「血─」「戚─」「疏─」「尊─」「家─」○つかさ(官寮)「掾─」「官─」したやく「─僚」けらい「隸─」○やから。○ふくめおく、たのむ(付託)=囑。○たまたま、まさに(適)○このごろ(頃者)「─者」○ 國 さくゎん、古の官制にて第四等官、今の判任官。
のぞみをかける。史、夏紀「禹子啓賢、天下──焉」=屬心。
人足をあつめる。左傳、疏「──謂屬聚下役也」
うらみを結ぶ。晉語「齊秦不得其請、必──焉」
あき足る。左、昭二九「願以小人之腹、爲君子之心、──而已」厭一に饜に作る。=饜足。
詩文のしたがきをつくる。史、屈原傳「令屈平屬草稾」より出づ。陸游詩「詩囊──慙新思」=屬文·屬藁。
人の臨終をいふ。纊は新らしき綿、之を口鼻に屬 ツ けて氣息の有無を驗する。禮、喪大記「──以候絕氣」
目をつける。後漢書「坐者皆──」
あはれむ貌。韓愈文「──其言、若閔其窮也」
○耳をつけてよく聽く。戰國策「趙使者來──」○ コノゴロノミ つひこのごろ。漢書「將軍之廣明、肄郞──」
むらがれるいばら。荀子「──倚廬、席薪枕塊」
詩を作る。楚辭「抒中情而──」
詩文をつづる。禮、經解「──比事、春秋敎也「=屬文。
心を寄せる、望をかける、心を歸する。後漢書、杜喬傳「天人──、萬邦攸賴」=屬望·屬意。
○ちかごろ。漢書、李尋傳「──頗有變改」=近者·頃者。○つき從ふ者。史、項羽紀「──百餘人耳」
○うやうやしき貌。禮、禮器「──乎其忠也」○やさしくすなほなる貌。淮南子「──、婉順也」
兩語をつらねて對句とする。
たのむ。魏志、諸葛誕傳「爲吏部郎、人有所──、輒顯其言、而承用之」=囑託·付託。
のぞみをかける。遼史「文妃生晉王最賢、國人皆──」=屬意。
文章をつづる。漢書、賈誼傳「誼年十八、以能誦詩書──、稱於郡中」=作文·屬辭·屬稾。
一身をまかせてたよる。張華文「羣生──、奄有庶邦」
めをつけて視る。注目して視る。晉書、秦獻王東傳「其貴寵爲天下所──」=矚目。
名劍の名。史、伍子胥傳「吳王乃使使賜伍子胥────曰、子以此死」
附屬する所の名籍、一門中に屬する戶籍。史、田份傳「宗室毋節行者除其──」
國家に附屬せる土地、統治權を施し得る土地。
手下に從ふ兵、部下の兵。=手兵。
したやく、部下の官吏。=屬官。
つらなりつづく。韓愈詩「簷楹蹔明滅、五色光──」
屬し和する、他の歌ふ後に附きて歌ふ。宋玉、對楚王問「國中屬而和者數千人」より出づ。
他國に附屬して其の命令を受くる國。漢書、賈誼傳「何不試以臣爲──之官」
天子のそヘぐるま。漢書、賈捐之傳「鸞旂在前、──在後」=副車·佐車·貳車。
したやく。舊唐書、王播傳「──歎服不暇」=屬吏·屬官。
21畫
キ [寘]
屓は俗字
○さかんなり牡大なる貌。。○贔─ ヒキ は力を作す貌。張衡、西京賦「巨靈贔─」