豆部
0畫
①トウ·ヅ [宥]
②トウ [有]
①まめ、荳は俗字、穀物の一、花は蝶に似て莢 サヤ の實を結ぶ。又其の莢の中の種子の稱。=菽。○たかつき、木製の食器、禮式の時に食物を盛る器「俎─」○古の量目の名、十六黍を一─と爲し、六─を一銖と爲し、二十四銖を一兩と爲す。○蠶─ サントウ はそらまめ。○紅─は木の名、相思樹の一名、其の實珊瑚に似たり。
②斗に同じ。 國 ○まめ。すべてまめの形せしもの。粒子。○皮膚に生ずる─狀の水腫 ミヅブクレ =肉刺。○小さき形容「─蟹」「─人形」○特に大豆 ダイヅ の稱。
水にて黃豆 ダイヅ 又綠豆を發芽せしめて作る、肥えて白き者を佳と爲す、蔬菜中の美品とす。
○たかつきに盛りたるあつもの。又、少量のあつもの。孟、盡心「一簞食、一──」○まめのあつもの〔急就篇〕
まめがら。曹植、七步詩「煮豆然──、豆在釜中泣」=豆莖。
陰曆八月卽ち豆花の開く頃にふる雨。荆楚歲時記「里俗以八月雨爲───」
陰曆七月に出る水。宋史、河渠志「七月菽豆方秀、曰之───」
草──(草本)肉──(木本)の二あり、藥用とす。=荳蔻。
みそ。齊民要術「香美乃勝──」=麴豉。
まめかす、肥料とす。
遠方より見たる人物の形容。荊浩、畫山水賦「丈山尺樹、寸馬──」
大豆にて製す、豆腐の未だ固まらざる汁、滋養の效ありて牛乳と相當る。
まめがゆ。後漢書、馮異傳「天寒烈、衆皆飢疲、異上──」
たかつきに盛れる肉。禮、坊記「觴酒──」
まめめし。戰國策「民之所食、大抵──藿羹」
まめがゆ。唐書、韋貫之傳「居貧噉──、以自給」=豆粥。
大豆にて製したる一種の食品。本草集解「──之法、始於漢淮南王劉安」黎祁·淮南は其の異名。
豆をわる如く國を分裂する。鮑照、蕪城賦「竟瓜剖而──」
粢盛をいるる器、鋪は簠の類にして圓きもの。博古圖「簠簋──、同爲一類」
まめをわる如く、土地を細かに判つ。晉書、地理志「平王東遷、星離──、當塗馭?、瓜分鼎立」
豆や瓜をわる如く、國土を分裂す。前條參看。漢書、賈誼傳「高皇帝瓜分天下、以王功臣」=豆分瓜剖。
圖們江に同じ。長白山に發源し、鴨綠江の源と相對し、松花江の源に接近し、東流して吉林·朝鮮の界を爲して海に入る。=土門江。
3畫
カゥ コウ [江]
ささげ。豆の一種、蔓生にして莢 サヤ 甚だ長く、種子は赤くして少しく曲る。本草「─豆蔓生、花紅·白二色、莢白·紅·紫·赤·班駁數色、長者二尺」=長豆·大角豆。
①キ [尾]
②ガイ [賄]
①あに、いづくんぞ(安·焉)なんぞ、反語の辭。史記「─非士之願與」○其 ソレ に同じ。億度 オシハカル の意あり。戰國、燕策「將軍─有意乎」
②かちどき、振旅の樂。古、凱(二一八頁二段)愷(六八五頁二段)に通ず。
勝軍 カチイクサ の時の音樂。詩經「──飲酒」=愷樂·凱樂。
やはらぎたのしむ(樂易)の貌。詩、小雅「──君子、民之父母」=凱弟·愷悌。
4畫
ツ [寘]
豆と鹽とを和して造りし食品(幽尗)味噌 ミソ の類「豆─」「鹽─」
なそを浸したる酒。王羲之、豉酒帖「小服──至佳」
6畫
カゥ [江]
─?はささげ。=豇豆。
トウ [蒸]
登とは别
瓦にて作りしたかつき(瓦豆)詩、大雅「于豆于─」儀禮には鐙に作る、後世は銅を用ひて造る。
禮(一三七三頁二段)の古字。
澧·醴等の字、此に从ふ、俗に豐(本頁三段)の略字として用ふるは非。
8畫
ジュ [麌]
竪は俗字
○たつ(立)橫のものがたてになる「─立」後漢書、靈帝紀「槐樹自拔倒─」○たて(縱)○なほし(直)○ただし(貞)○こどものめしつかひ、わらはのしもべ、こぞう(童僕)「僕─」「牧─」童僕の未だ冠 ゲンブク せざる者。列、說符「鄰人亡羊、請楊子之─追之」○轉じて人をいやしめていふ語「─子」「賈─」「─儒」○たけひくし。○富廷內の小臣、君の左右の小吏「內─」一閹─」左、僖二四「晉侯之─頭須守藏者也」
同訓異義
タツ 豎·建·立·植·樹·起の別は建(五九九頁三段)の條を見よ。
しもべのぎるべき褐衣。荀、大略「衣則──不完」一說に豎は裋に通ず、破れたる短ききもの。
內廷の小臣。後漢書、黃瓊傳「諸梁秉權、──充朝」=閹宦。
○こども。左、成十「公夢疾爲二──」=童子。○あいつ(彼奴)人をいやしめて呼ぶ語。史、孫子傳「遂成──之名」
小臣。後漢書、孔融傳「每有一──、輒去圖之」=豎吏。
儒者をいやしめていふ。史、畱侯世家「──幾敗而公事」(而公は乃公)
おぞけが立つ、驚き懼れて毛髮豎立する。唐書、李訓·鄭注·王涯傳贊「訓等、持腐株、支大厦之顚、天下爲寒心──」
こやくにん。=小吏。
たてのすぢ。異苑「晉陶侃、左手有紋、直達中指上橫節便止、有相者師圭、謂侃曰、君左手中指有──、若徹于上、位在無極」
まっすぐにたつ。又、たてる。
ワン [寒]
通音ヱン又、?に作る
─豆 ヱンドウ は豆の一種。本草「─豆種出西胡、其苗柔弱宛宛、故得豌名、百穀中最先登 ミノル 者」
10畫
カン [豏]
豆が半ば生ずる。
11畫
ホウ ブ [東]
○たかつきの豐かに滿てる者。○ゆたか、とよ。○ゆたかにす、ゆたかならしめる。○大いなり。○おほし(多)○穀物がよく熟す「─年」○しげる(茂)「─草」○さかんなり(盛大)○あつし(厚)○こゆ(肥)「─頰」○しきもの(席)○易の卦の名。離下震上。○漢代に置きし縣の名、沛郡に屬す、今の江蘇省─縣。○─隆は雷師 カミナリノカミ 一說に雲師。
同訓異義
ユタカ 豐·饒·裕·寬·優·胖○豐は多大盈足の義·財の多く、德の大なるに皆用ふ、豐厚·豐富·豐盛と熟す。○饒は物多くして滿ち足る義·富饒·豐饒·財用饒と用ふ。○裕は衣服のゆったりとひろきより、轉じて物のゆったりと、迫らぬ義に用ふ、寬と緩との二義を兼ぬ。書經「自用則小、好レ問則裕」○寬は窄の反、くつろぎゆるやかなるなり、家居や、器物や、人の氣象の、ゆったりしたるに用ふ、ゆるやかとも訓む。○優は劣の反、力の優マサりて、餘りある義より、何事にても、つまらず、苦にならざる義。論語「仕而優則學」○胖は大なり、安舒也、裕に近し。大學「心廣體胖」
豐厚 テアツキ なる衣服。李翺賦「躬不田而飽食兮、妻不織而──」
からだが肥えて大いなり。晉書、宗室傳「體質──、自稱重八百斤」=魁梧。
肉のたっぷりと肥えたるおとがひ。王襃、責髯奴文「爾乃附以──、表以蛾眉」
ゆたかにしてありあまる。唐書、杜佑傳「開元天寶中、四方無虞、編戶九百餘萬、帑藏──」
○ゆたかにみつ。揚雄賦「──禍所棲兮、名譽怨所集」=豐滿。○肉づきがふっくりと肥える。宋玉、神女賦「貌──以莊姝兮」
ゆたかに餘る。後漢書、應劭傳「臣累世受恩、榮祚──」
こえてあでやか、美人の形容。舊唐書、楊貴妃傳「資質──、善歌舞、通音律」=豐艶·豐麗。
大いなるいへ。白居易詩「──中櫛比、高牆外廻環」=豐殿·豐廈。
大いなるめぐみ。上官儀文「奬飾曲流、──傍洽」
周の舊都。史、周紀贊「成王使召公─居、居九鼎焉、而周復都──」
豐も豫も易の卦名、豐は盛、豫は樂、盛んなれば亨 トホ り、樂なれば大いなり、故に天下太平の義とす。易、豐卦「豐亨、王假勿憂宜日中」又、豫卦、彖傳「聖人以順動、則刑罰淸而民服、豫之時義大矣哉」とあるに本づく。宋史「蔡京倡邪說、以爲當────之運、專以奢侈勸上、窮極土木之功」
あごが肥えふとる。富貴の相。左、文元「穀也豐下、必有後於魯」宋史、文天祥傳「天祥爲人豐下」
こえふとりたるはだへ。司馬相如、美人賦「皓體呈露、弱骨──」
ゆたかにして十分に足る。後漢書、王景傳「墾闢倍多、境內──」
文字の筋骨がゆたかにして力多し。宣和書譜「三國之初、字學缺然不講、繇於是爲一家法、而議者謂其────、有雲遊雨驟之勢」
穀物の出來の良きと惡しきと、豐作と凶作と。=豐歉。
ゆたかにして、うつくし。北史、畢衆敬傳「善自奉養、食膳──、必致他方遠味」
すぐれたるわざ。潘岳、楊荊州誄「多才──、彊記洽聞」
ゆたかにして、きよらか。左傳「吾亨祀──」
ふとりたるほほ。韓愈、送李愿序「曲眉──、淸聲而便體、秀外而惠中」
ゆたかにしてうるはし、書法の秀潤なる義。宣和書譜「林藻作行書、其婉約──處、得智永筆法爲多」
ゆたかなると、つづまやかなると。晁冲之詩「自可隨──、誰能問有無」
豐年と凶年と。宋史、食貨志「坐視六路──」=豐凶。
大いなるきつね。莊、山木「──文豹、棲于山林、伏于巖穴、靜也、夜行書居、戒也」
大いなるいさを。班彪、王命論「──厚利、積累之業」=偉績·偉勳。
ゆたかにあつし。國語「子孫──、令聞不忘」
十分ゆたかなると省略せると。晉書、禮志「禮典軌度、──隨時」=豐約·豐儉·損益。
ゆたかなるとし。白居易詩「淸晨承詔命、──閱田閭」=豐年·樂歲。
しげりたるくさ。詩、小雅「湛湛露斯、在彼──」=茂草。
肉づきのよきひたひ。=豐上。
豐登に同じ。
ゆたかにさかんなり。後漢書、郭鎭傳「爵祿益用──」=豐盛。
ゆたかなる滋味ある食物。晉書、樂志「──萬俎、旨酒千鍾」
ゆたかにみのる。杜光庭、麻姑洞記「洞門開、卽豐年物賤、其後果──」=豐熟·豐登。
肉づきのよきひたひ。淮南子「淚注而鳶肩、──而殺下」=豐顙。
額がふっくりと肥え、ほほのあたりがやせこけてゐる。遼史、太祖紀「身長九尺、────、目光射人」=豐上而殺下〔淮南子〕
ゆたかにさかんなり。漢書、天文志「五星不失行、則年穀──」
こえたる土地。晉書、阮种傳「夫廉恥之於政、猶樹藝之有──、良歲之有膏澤」
穀物がゆたかにみのる。漢書、食貨志「歲歲──、石至五錢」=豐熟。
豫章の豐城の地に埋れ居たる龍泉·太阿の二名劍が光を放ちて天に徹せしといふ故事〔晉書、張華傳〕豫章記「斗牛閒常有紫氣、張華聞雷煥妙象緯、問之、煥曰、寶劍精氣也、在豫章豐城」
よきくらゐ。後漢書、楊賜傳「各受──不次之寵」
ゆたかにみのる。韋應物詩「唯當歲──、閭里一歡顏」=豐稔·豐穰。
○ゆたかにうるほふ。李白、任城廳壁記「城池爽塏、邑屋──」○甘き液などの多き義〔鍾會、蒲桃賦〕
ゆたかにふえる。後漢書、王符傳「穀之所以──者、以有民功也」
さかんなると、やつれると。盛衰の義。韓愈、圬者王承福傳「──有時、一去一來而不可常者耶」
前條に同じ。
ゆたかに盛んなり。宋史、薛居正傳「年穀方登、庶物──」=豐昌。
ゆたかに多し。蔡邕、黃鉞銘「儲廩──、室磬不懸」
ゐむしろ。書經「東序西嚮、敷重──」傳「豐、莞也」=莞席。
ゆたかにして餘りあり。歐陽修詩「官榮日淸近、廩給亦──」
財物がゆたかにたる。後漢書、第五倫傳「悉簡其──者、遣還之」=豐富。
ゆたか。南史、謝弘微傳「家素貧儉、而所繼──」
食物のゆたかなると、乏しきと。魏書、崔楷傳「冀定數州、頻遭水害、楷疏曰、豈天德不均、致地偏罰、有玆──」
大いなるいへ。洛陽伽藍記「──掘起、高門洞開」
ゆたかなるうるほひ。王粲、公讌詩「昊天降──、百卉挺葳甤」
さかんに雨ふる。陸機詩「──溢修澑、潢潦浸階除」=大雨。
てあつし。腆は善なり、厚なり。晉書、羊曼傳「羊曼與羊固、同時拜官、相飾供饌(中略)而固待客尤精美、論者以固之──、乃不如曼之眞率」=豐厚·精腆。
ゆたかにみのる。舊唐書、憲宗紀「南畝虧播植之功、西成失──之望」=豐稔·豐年。
こえふとりたるにく。楚辭「──微骨、體便娟只」周禮「其民──而庳」=豐肌。
ゆたかにしてやすし。道德指歸論「禍亂旣夷、萬物──」=豐安。
ゆたかなるとし。詩、周頌「──多黍多稌」=豐歲。
○多きをいふ。宋玉賦「猗猗──」○地名、江蘇省、徐州府に屬す、漢の高祖の出生地、天子の位に卽きて、其の民を復(賦役をゆるす)す、後人因りて帝王の故鄕を──と爲す。
ゆたかにして厚し。方岳詩「文有氣骨豐而庬」
ゆたかにしてうつくし。後漢書、西羌傳「水草──、土宜產牧」
○棺を墓穴に下す時に繂 ヒツギナハ を繞らす木の柱。檀弓「公室視──」○功德を記する大いなる石碑。
○財物がゆたかに富む。晉書、和嶠傳「家產──、擬於王者、然性至吝」○すべて物がゆたかに足る。=豐足。
こえふとりたるはだへ。王粲、七釋「──曼肌、弱骨纖形」=豐肌。
ゆたかなるさいはひ。國語「受天之──、饗民之勳力」
多き貌。宋玉、九辯「歷羣靈之──」
韭 ニラ の異名。其の根夲の茂るが故。曲禮「凡祭宗廟之禮、韭曰──」
○物がゆたかに十分ある。戰國策「毛羽不──者、不可以高飛」○肉がふっくりとこえる。
ゆたかにしげる。漢書、王莽傳「百穀──、庶草繁殖、元元驩喜」
○ゆたかなると、つづまやかなると。申鑒「──勞佚、各有其制」=豐儉·豐殺。○貧富又、盛衰の義。韓愈、與衞中行書「比之前時、──百倍」
地が肥えて作物がよく出來る。=肥沃。
ゆたかに十分なり。=饒裕。
ゆたかに盛んなる貌。嵆康賦「──披雜」
ゆたかにあまる。唐書、張文瓘傳「同列以堂饌──、欲少損」=豐羨。
物ゆたかに民たのしむ。蜀志、先主傳「蜀中殷盛──、先主置酒、大饗士卒」
安徽省滁縣の西南瑯琊山谷泉上に在り、宋歐陽修建て、自ち記を爲 ツク り、蘇軾書して石に刻す。
○神の名、いかづちを掌る。一說に雲師 クモノカミ 離騷「吾令──乘雲兮」○雨師 カメノカミ 一說雷師 イカヅチノカミ 淮南、天文「季春三月、──乃出、以將其雨」=靈霳。
ゆたかにしてうるはし。陸雲、諫吳王起觀疏「宜遵先帝節儉之制、不宜使至──」
てあつきふち。陸雲文「──崇禮」=厚祿。
20畫
豓(次條)に同じ。
21畫
エン [豔]
又、艶に作る
○かほよし、あてやか、うるはし、うつくし、つややか、容色豐滿にして美好なり。○轉じて文詞の美をいふ。穀梁傳序「左氏─而富」○ほしいまま(縱)○いろ、つや(光彩)○むさぼる、うらやむ(歆羨)「歆─」熟語は艶(一六一二頁四段)を見よ。