鼠部
0畫
ショ ソ [語]
通音ソ
○ねずみ、ね、ねず、人家又、田野に棲む小獸、齒銳くしてよく嚙む。=社君·家鹿。○ひそかに害をなす者に喩ふ「─賊」○うれふ(憂)古、癙に通ず「─思」 國 ○ねずみ。うすずみ色、淡黑色。
黑死病 ベスト の別名。鼠に寄生する蚤 ノミ より傳染するが故。强熱を發して身體に核を生じ、死後の體に黑斑を生ず。=核子瘟。
爭訟をいふ。詩、召南、行露「誰謂雀無角、何以穿我屋、誰謂女無家、何以速我獄、雖速我獄、室家不足、誰謂鼠無牙、何以穿我墉、誰謂女無家、何以速我訟、雖速我訟、亦不女從」とあるに本づく。=雀角鼠牙。
鼠のきもと、蟲のひぢと、至微至賤にして取るに足らざるものに喩ふ。莊、太宗師「以汝爲鼠肝乎、以汝爲蟲臂乎」謝枋得、卻聘書「蟲臂鼠肝、隨天付與」(天地造化の自然に任かす義)
鼯鼠之技を見よ。
ははこぐさ(母子草)古、上巳に此葉にて餠を製せり。故にもちよもぎの名あり、艾 ヨモギ に代へ用ふ。春の七草の御形 ゴギヤウ =茸母。
○牡丹の異名。本草「牡丹、一名──」○わらぢむし、せきだむし、おめむし。=鼠婦。
ねずみのにげるが如くこそこそと逃げかくれる。漢書、蒯通傳「──以歸漢王」
うれへおもふ。詩、小雅「──泣血、無言不疾」=癙思·憂思。
ねずみもち。實は鼠の糞に似て葉は冬靑 モチ に似たる灌木。=女貞。
鼠の口ひげにて作りし筆。筆經「世傳、張芝·鍾繇用───、筆鋒勁張有鋒芒、余未之信」
鼠や狗の如くこそこそと物をぬすむ小ぬすびと。史、叔孫通傳「此特羣盜、────爾」
こぬすびと。=鼠盜·竊盜。
前條に同じ。
ねずみののがれるが如くにげる。游宦紀聞「魚伏──、能全節者無幾」=鼠竄。
○ねずみの如きともがら、小人をいふ。魏志、華陀傳「太祖曰、不憂天下當無此──耶」○多くのねずみ。李俊民詩「欺人──爭出頭、夜行如人爭不休」
たむらさぅ、一名やまにら、黑色を染むるに用ふ。爾雅「葝、──」
こがねやなぎ。本草「黃芩、一名───」
わらぢむし。爾雅「蟠、──」=鼠婦。
前條に同じ。詩、豳風「伊威在室」疏「伊威、一名──」
次條に同じ。陸游詩「玉非──何勞辨」
ねずみの乾物 ヒモノ 無用なるものに喩ふ。戰國策「鄭人謂玉未理者璞、周人謂鼠未腊者樸、周人懷樸過鄭賈曰、欲買樸乎、鄭賈曰、欲之、出其樸乃鼠也、因謝不取」=鼠朴·鼠璞。
前條を見よ。
鼬鼠 イタチ の異名。鄭樵、爾雅、注「鼬鼠、狀如鼠、赤黃色、大尾、能啖鼠、俗呼──」
落葉亞喬木の一、高さ丈許、枝梢に針あり、葉は橢圓にして互生し、春末淡黃色の小花を開く、實は小豆の如く色黑し、汁を取りて綠色の染料とし、亦藥に用ふ。
ねずみが社に巢くへば、穴を燻べて之を捕らんとするも、社の燒けんことを恐れて敢てせず、以て君の威をかる小人に喩ふ。文選「鼠憑社貴、狐籍虎威」
無益の者を養ふべからざるに喩ふ。鶴林玉露「東坡云、養猫以捕鼠、不可以無鼠而養不捕之猫、蓄犬以防姦、不可以無姦而蓄不吠之犬」
鼠に投げ付けて之を殺さんとすれども、傍の器物を傷はんことを恐る。君側の奸を除かんとするも、君を傷はんことを恐るる喩。漢書、賈誼傳「里諺曰、欲投鼠而忌器、此善諭也、鼠近於器、尙憚不投、恐傷其器、況於貴臣之近主乎」
4畫
フン [吻]
○むぐらもち(土龍·田鼠)=鼴鼠。○太古の時の獸、鼠に似て體の大いさ象の如きもの、常に西伯利亞 シベリヤ の冰層中に於て其の遺骨を發見す。
5畫
イゥ ユ [宥]
いたち、體長さ一尺許、色赤褐、四肢短小にして敏捷、善く鼠を捕へ、又、夜出でて人家の雞の血を吸ひて、肉を食はず、若し人に追迫せらるれば、肛門より惡臭を放出し、人をして耐へ難からしめ、藉 ョ りて以て免る、其の毛、筆を製すべし、之を狼毫といふ。=地猴·鼪鼠·鼠狼·黃鼠狼。
セイ シャウ [庚]
○いたち(鼬)前條參看。○むささび(鼯)=飛生鼠。
いたちの行きかふ小みち。莊、徐無鬼「逃空虛者、藜藿柱乎鼪鼬之徑」
セキ [陌]
○をかつぎ、栗鼠 リス に似たる獸、全體靑黃色、頭は兔に似、尾は長大にして毛あり、常に卷きて背上にかつぐ、好みて田中に在りて、粟豆等を食ひ、農家の害を爲す。=碩鼠·雀鼠·五技鼠。○けら(螻蛄)=鼫鼠。
貂(一八五五頁一段)の古字。
史、貨殖傳「狐─裘千皮」
7畫
ゴ [虞]
むささび、ももんぐゎ(鼺)體長さ七八寸、背は暗褐色、腹は白し、尾長くして長毛を密生す、上下肢閒に蝙蝠 カウモリ の如き肉翅ありて、能く樹閒を飛行す。=五技鼠·飛生鼠·夷由·飛鼠。
むささびと、いたちと。魏書、崔光傳「今積榛棘而弗掃、爲──所棲宿」
むささびがなく。韓愈詩「猿呼──鷓鴣啼」
技多けれども、一も上達せしものなきに喩ふ。鼯鼠はむささび。荀、勸學「鼯鼠五技而窮」(能く飛ぶも屋に上る能はず、能く緣るも木を窮むる能はず、能く游ぐも谷を渡る能はず、能く穴ほるも身を掩ふ能はず、能く走るも人に先だつ能はざるをいふ、說文には鼫(鼠部五畫)を以て五技鼠と爲す)
テイ [靑]
まだらねずみ。豹の如き文彩あるもの。=豹文鼠。
8畫
セイ シャウ [庚]
─鼩 セイク はぢねずみ、はつかねずみ。漢書、東方朔傳「譬猶─鼩之襲狗」=奚鼠。
9畫
エン [先]
又、鼹に作る
むぐらもち、もぐら。鼠の一種、體黑く、眼細小、長鼻、四肢短く、前肢は掌狀をなす、土中に棲みて、昆蟲·蚯蚓 ミミズ 等を捕食す。=鼢·土龍·隱鼠·犁鼠·田鼠·偃鼠。
むぐらもち。本草「──一名隱鼠、形如鼠而無尾、黑色長鼻」
コン [元]
一名黃鼠、おじぎねずみ、煖かなる時は穴より出で、其の口に坐し、人を見れば則ち前足を頸に交へ、恰も拱立して揖するが如き狀を爲して、穴に竄入するを以て、一名禮鼠·拱鼠の稱あり。淮南子に「聖人師拱鼠制禮」とあるは卽ち此。
10畫
鼴(本段)に同じ。
ケイ [齊]
はつかねずみ(鼱鼩)鼠の一種、鼠より小、人家の倉庫中に棲む、毒あり。あまくちねずみ。=甘口鼠。
はつかねずみ。春秋、成七「──食郊牛之角」
15畫
ルヰ [支]
むささび、ももんぐゎ(鼯鼠)