士部
0畫
シ ジ [紙]
○さむらひ、四民の首たる者「─農工商」○官吏の總名。周代にては大夫の次位。○學德ある者「─君子」○裁判官。書、舜典「皋陶汝作─」○もののふ(武夫)○をとこ、男子の尊稱。○こと、又、こととす、事に通ず。
士をあげもちふる。孟子「──必得」吳志、陸凱傳「臣聞殷湯──於商賈齊桓──於車轅、周武──於負薪、大漢──於奴僕」
○さむらひかたぎ。武士、又、士君子の氣風。○兵士の元氣。
學問ありて德行高き人、上流社會の人。
海陸軍の少尉·中尉·大尉及其の相當官の稱。轉じて廣く將校の義に用ふ。=武官。
士の守るべきみさを。武士道。晉書、王國寶傳「少無──、不修廉隅」
○讀書して科擧(官吏登用試驗)の準備をなし居る人。又、學校の男生徒。○官職ある人、つかさびと。詩、小雅「偕偕──、朝夕從事」
訟獄をつかさどる長官。論、微子「柳下惠爲──、三黜」
官吏と農工商の庶人と。=四民·士庶。
○さむらひの家がら、讀書人のやから。晉書、許邁傳「家世──」○ 國 維新後、武家の家臣に對して賜はりし身分の階級、華族と平民との中閒に位す。
○下士と兵卒と。文、廣く軍人の稱とす。○ 國 維新前、さむらひと、あしがると。士族と卒族と。
○官職ある人。考工記「作而行之、謂之───」○軍士將校をいふ〔史、李廣傳贊〕
さむらひの行ふベき道。=士操。
をとこと、をんなと。=男女。
人民の四種別。穀梁、成、元「古者有四民、有士民、有商民、有農民、有工民」
士はよく己の心を知れる人の爲めには身命をなげうつ。晉の豫讓の語。史、刺客傳「──────、女爲說己者容」說は悅。
士の心志は、弘大にして、剛毅ならざるべらず。論、泰伯「───────、任重而道遠、仁以爲己任、不亦重乎、死而後已、不亦遠乎」
○少年の人。易經「老婦得其──」○男子の通稱。
○さむらひの氣風。=士氣。○學者の風習 ナヲハセ
國 さむらひたる身分、士たる資格。
○もろもろの人人。管子「勸──勉稼穡」=人民。○道藝を學習する人。士農工商を見よ。
さむらひのなかま。羅隱詩「瀟灑淸名映──」=士類。
士林に同じ。晉書、袁躭傳「少有才氣、俶儻不羈、爲──所稱」
1畫
ジン ニン [侵]
○みづのえ、十干の第九位。爾雅「太歲在─曰玄黓」方位にては北。○はらむ。=妊。○おふ(負)=任。○へつらふ、おもねる(佞)書、皋陶謨「巧言令色孔─」○大いなり。
みづのえのきみ、水の異名。蘇軾詩「──飛空丁女藏」
佞人なり。漢書「是故──在位」
國 昔、皇子誕生の時、うぶゆの事を司りし民。
4畫
サウ [漾]
○さかんなり(盛)さかんにす。詩、小雅「克─其猷」○大いなり(雄大)○つよし(强·彊)○わかざかり、三十歲又其の前後「─丁」「─年」○陰曆八月の異名。爾雅、釋天「八月爲─」○灸の一灼 ヒトヒ を一─といふ。
同訓異義
サカンナリ 壯·盛·隆·熾·昌の別は盛(皿部七畫)の條を見よ。
さかんなる意氣。後漢書、馬援傳「左右哀其──、莫不爲之流涕」
さかんなる遊觀、又、さかんなる漫遊。袁桷詩「──詩局豁」
からだのすこやかにして立派なるわか者、佼は健かにして美くし。禮、月令「仲夏養──」
さかんにしてつよし。魏書「北人──、上馬持三仗、驅馳若飛」
さかんなるくはだて、めざましき事業。=狀圖。
さかんにしてこころよし。
さかんなるおもひ。韓愈詩「風雲入──、泉石別幽耳」
淸の文人侯方域(雪苑)の堂號、───詩文集十卷あり。
さかんなるみもの。雄大なるみえ。司馬相如、封禪文「天下之──、王者之丕業」=大觀。
八月の異名〔爾雅、釋天〕
さかんにしてすこやか、年わかくしてぢゃうぶ。漢書、匈奴傳「貴──」
さかんなることば、又、さかんに語る「大言──」文心雕龍「高談公館、──畋獵」
○氣力さかんなるますらを。史、項羽紀「頂王曰、──賜之巵酒」○ 國 一定の職業なく、人に賴まれて政事上の運動などを引受け、腕力にて事を成し遂げんとする者。
さかんなる士の心がいたみうれふ。杜甫、後出塞詩「悲笳數聲動、───不驕」
さかんなるこころざし。隋書、李子雄傳「少慷慨有──」=大志·雄志。
わかぎかり。齒は齡。梁簡文帝文「禮著幼年、業明──」隋書、令狐熙傳「昔在──、猶不如人、況今年疾俱侵、豈可猶當重寄」=壯年。
血氣盛んなる者。老病者の對。孟、公孫丑「──散往四方者、幾千人」
いさましききもだま。勇壯なる膽氣。唐書「汝陽王璡曰、臣以三斗──、不覺至此」
はたらきざかりのわかもの、丁は丁年の男子。=丁壯·壯夫。
さかんなるはかりごと。杜甫詩「曹公屈──」=雄圖。
さかんなるかなと歎美する辭。漢書、陳平傳「高帝南過曲逆、上其城望室屋甚大、曰──」
はたらきざかりのとしごろ。三十歲頃の年齡。=壯齒。
○氣力さかんなるますらを。李白文「僕本──、慷慨不歇」=壯士。○わかざかりの男。韓愈詩「君爲──我少年」=壯丁。
さかんにたけし。魏志、典韋傳「韋旣──、其所將皆選卒」
さかんにしげる。易林「明庶長養、花葉──」
○年わかく勇氣あり。陸贄文「選四方──、實之邊城」○氣力さかんに勇まし。=勇壯。
さかんにはげし。晉書「人情挫辱、則──之心生」
さかんにしてうるはし。後漢書、東海恭王彊傳「魯恭王好宮室、起靈光殿、甚──」
さかんなるよはひ。謝靈運詩「──緩前期、頹年迫暮齒」=壯年·壯齒。
意氣盛んにしてはげし。魏書、刁冲傳「冲雖儒生、而執心──、不畏强禦」
聲(耳部十一畫)の俗字。
8畫
コ [虞]
壼とは別
○つぼ(酒器)口圓く腹の方なる器、之に反するを方─といふ。○投─はつぼに矢を投げ入るる遊戲、周代にては賓客な遇する禮の一。禮、投壷「投─之禮」○ふくベ、ゆふがほ(葫蘆)瓜の類。鶡冠、學問「中河失船、一─千金」
かめ○鮑照詩「何時傾杯竭──」
壷に入れたる飮料。孟、梁惠王「簞食──以迎王師」
酒壷と、さかづきと。陶潛、歸去來辭「引──以自酌、眄庭柯以怡顏」
仙人壷公の故事にょりて別世界の義に用ふ。漢書、方術傳「費長房者、汝南人也、曾爲巿掾、巿中有老翁賣藥、懸一壷於肆頭、及巿罷、輒跳入壷中、巿人莫之見、唯長房於樓上覩之、異焉、因往再拜、翁乃與俱入壷中、唯見玉堂嚴麗、旨酒甘肴盈衍其中、共飮畢而出」=壷天·壷中天地。
前條に同じ。元稹、幽栖詩「────乾坤外、夢裏身名旦暮閒」
壷中之天に同じ。參同契、注「修丹者法天象地、反身而求、則身中自有──也」
蜂の一種。方言「蜂大而蜜、謂之──、今人亦呼爲胡蜂」=胡蜂。
國 女のよそほひの名。巿女笠 イチメガサ を被り薄絹を著る。
國 さざえの肉を切り其の殼に入れて其のまま味をつけて炙りしもの。
9畫
イツ イチ [質]
○ひとつ。=一。ひとたび(一囘)文字の改易を防ぐために借りて一の字に代用す「─萬圓」○はじめ(始)○もっぱら(專一)○あはす(合)「統─」○まこと(誠)あつし(醇)史、曹參世家「載其淸淨、民以寧─」○とづ(閉)ふさぐ(塞)○すべて(凡)みな(皆)
一事に心を專らにす。史記「專心幷力──」=一意。
○すべて、もっぱら。大學「自天子、以至於庶人、──皆以修身爲本」=一切。○一說に是の義、壹は助語なりと。
一人唱へて三人之に和す、淸廟の琴音は質素を旨とすれば之を好む者少きをいふ。後世、三たび歎息する義に用ふるは誤れり。禮、樂記「淸廟之瑟、朱絃而疏越、壹倡而三歎、有遺音者矣」
一旦敗れて肝腦をして地に塗れしむる。史、髙祖紀「天下方擾、諸侯竝起、今置將不善、────、吾非敢自愛、恐能薄不能完父兄子弟」
一矢を發して五豝を獲るは獲物の多きなり。詩、召南「彼茁者葭、────」豝は牝豕。
壷(士部八畫)に同じ、壼は別字。
セイ [霽]
聟は俗字
○むこ、女 ムスメ の夫。○をっと、妻より夫を呼ぶ稱「夫─」○贅─はいりむこ。○をとこ、男子。晉書、庾翼傳「陛下勿以常─畜之」
むこ。壻·甥同義。王惲詩「自云漢──」=女壻。
10畫
コン [阮]
壺とは別
宮中往來の道、室の通路。
宮中のおく深き所。轉じて、物事のおくそこ。班固、答賓戲「究先聖之──」=蘊奧。
宮中の小門。轉じて宮中の奧むき。荀勗詩「內訓隆──」
婦女のよきをしへ。陳子昻文「崇嚴──」=內訓。
宮中の奧向の政。顏延之文「──穆宣」──不修は、閨門の亂れて修まらざる義。
11畫
ジュ [有]
一音ス
○いのちながし、ながいきする。左、僖三二、注「上─百二十歲、中─百歲、下─八十歲」○ひさし(久)物が久しく存在す。○とし、よはひ(年齒)○ことぶく、長命をいはふ。○酒を以て祝を爲す。○金帛の祝物を以て人に贈る。史、聶政傳「爲聶政母─」○ことぶき、長命の幸福。○星の名(角亢)「─星」
ことぶきのさかもり、いはひの席。=壽讌。
杯を長者に獻じて壽を祝す。史、項羽紀「項莊入──」韓愈、送石處士序「爲先生壽」=上壽 ジユヲタテマツル 獻壽。
壽命を養ひ、長生する。史、老子傳「蓋老子百六十餘歲、或言二百餘歲以其修道而──也」
長壽をいはふさかづき。蘇轍詞「七十餘年眞一夢、朝來──兒孫奉」
國 ながいきを祝ふいはひ。還曆(六十一歲)喜字(七十七歲)米壽(八十八歲)のいはひの類。
いのちながくしてたのしむ、豈は愷。詩、小雅「宜兄宜弟、令德──」
ながいき、考は老。詩、大雅「周王──、遐不作人」
いのちながくして安らか。詩經「俾爾壽而康」蘇頌、本草序「納斯民於──」
菊の異名。花譜「菊爲──」
鏡の異名。司空圖、容成侯傳「容成侯金炯者、本蜀郡人、上嘉其鑒局、命以容成侯、奉朝請、進號壽光先生」白帖「唐人謂鏡曰金炯、亦曰───」
生前に建て置くはか。後漢書、趙岐傳「年九十餘、先自爲──」=壽冢。
石材の一、蠟石 ラフセキ の異名。
人の長壽を祝する語。劉誠意集に「────圖歌」あり。
よごと。ことぶきを祝ふことば。
いのち長くして隆んなり。晉書、穆帝紀「獲其傳國璽送之、文曰受天之命、皇帝──、百僚畢賀」
いはひのさかづき。漢書、叔孫通傳「上──九行」=壽杯。
人の長壽を祝する爲めの文。=壽詞。
人の壽命を司るといふ星の名。爾雅「──角亢也」史、封禪書「──祠」注「──蓋南極老人星也、祠之以祈福壽」
桃の一種、からもも、あめんだう。
かがみだひ。
命長く幸ある義。元史、順宗皇后傳「九州四海、養未足於聖心、萬歲千秋、願永膺於──」
生前に建て置くはか。後漢書、侯覽傳「豫作──、石槨雙闕、高庶百尺」=壽藏。
生命の長きしるし。詩經、箋「黃髮台背、皆──也」
いはひのさかづき。羅鄴詩「日捧南山入──」=壽觴。
ながいきと、さいはひと。易林「振除灾害、更與──」
ながいきする木。拾遺記「祈淪之國、有──之林、一樹千尋」
いのち。淮南、精神「不能終其──」
いのちながし、長生する。論衡「氣渥厚而體堅强、則────」
國 七福神の一、南極老人ともいふ。壽星の化身にて、宋の元祐年中の人なりといふ、白髮を垂れ、杖を携へ團扇を持ち、鹿を伴ふ像を畫く。
生命長くして樂しむ。說苑「皆欲其──」
長命なれば恥をうくること多し。莊、天地「堯曰、多男子則多懼、富則多事、────、是三者非所以養德也」
12畫
シュン ソン [眞]
○──はよろこぶ(喜)又まふ(舞)貌。=蹲蹲。