癶部
0畫
ハツ ハチ [曷]
兩足を左右に張りたる象形文字、兩足張りて相撥除するなり。そむく(背)又、ゆく(行)
4畫
キ [紙]
○みづのと、十干の末位。爾雅「太歲在─、曰昭陽」四時に配しては冬、方位にては北、五行にては水に配す。○はかる(度)=揆。○人の姓。○天─は女の月經。素問「女子二七而天─至」=月事·月水。庚─は軍中にて糧食を乞ふ隱語、庚は西方、穀を主る、─は北方、水を主るが故。左、哀十三「若登首山以呼曰庚─乎」
婦人の月經。粧樓記「紅潮、謂桃花──也、又名入月」
7畫
トウ [蒸]
○のぼる、あがる(上)「─樓」「─車」「─高自卑」○すすめる(進)たてまつる(上)禮、月令「農乃─穀」○のぼす、帳簿に書きのせる「─記」「─錄」「─載」○あぐ、あげ用ふ「─用」○くははる(加)左、昭三「皆─一焉」○たふとぶ(尊)○なる。なす(成)○さだむ。さだまる(定)○みのる(成熟)孟、滕文公「五穀不─」○あたる(當)卽時「─時」○おほし(衆)○たかし(高)○──は力を用ふる時のかけごゑ。
同訓異義
ノボル 登·升、昇·陞·上·騰·躋·陟の別は升(十部二畫)の條を見よ。
瀛洲は仙人の居る海中三神山の一、之に登るは榮譽とする義。唐書、褚亮傳「號十八學士、藏之書府、以章禮賢之重、天下慕向、謂之───」
五穀などがさかんにみのる。後漢書、明帝紀「詔曰、昔歲五穀──、今玆蠶麥善收、其大赦天下」
帝王の崩御。列、黃帝「帝登假」假·遐·霞通ず。
○たかきにのぼる。中庸「──必自卑」○陰歷九月九日に高山に登りて災厄をはらふ故事〔續齊諧記〕
○帳簿に記載する。刑錢必覽「一一──在册」○權利及び身分に關する事項を登記所の帳簿に記載する法律上の手續。
天子の位にのぼる、極は北極、衆星の向ふ所、故に喩ふ。貞觀政要「自──以來、大事三數件」
國 後宮の一、古、弘徽殿 コキデン の右方にある御殿。
賢才をあげ用ふる。後漢書、黃琬傳「急──之擧、虛降己之禮」=擧賢·擢賢。
敬意を表する爲め軍艦內の下士卒が甲板の上にあつまり或は網索にのぼりて行ふ敬禮。
よくみのる。陶潛文「──之功、旣不可希」
新聞雜誌などにかきのせる。=登錄。
山にのぼる。
卽時。艾隱筆記「房杜傳登殺、用唐律卽時爲登、卽時殺之也」
登仙に同じ。元稹詩「丹井羨──」
よくみのる。梅堯臣詩「九穀初──、羣黎共樂康」
○城の上にのぼる。曲禮「──不指」○ 國 トジヤウ 昔、諸侯が江戶城へ出頭する義。
登稔に同じ。越絕書「其民殷衆、禾稼──、兵革堅利」
のぼる。
山にのぼり水をわたる。晉書、苻朗載記「談虛語玄、不知日之將夕、──山水、不知老之將至」
天に上りて仙人となる。蘇軾、赤壁賦「羽化而──」=上僊·登僊。
のぼりふむ。王向詩「──窮幽深、下山日已晚」
役所へ出る、出廳。
俗 かどで、旅行の發程。
朝廷に出仕する。又、仕宦する。漢書、敍傳「弱冠──」
そなへすすめる。拾遺記「以犠牲、──于百神」
ゆづりを受けて帝位にのぼる。張衡賦「嘉大舜之──」
天子の位に卽く。南史、謝靈運傳「太祖──」=踐祚·登極。
試驗に及第する。唐書、選擧志「──者加一階、其不第、則習業如初」=及第。
あげぬきんづ。宋史、文苑傳「不及──」=登拔。
○大將を拜するには壇を設けて任命す、よりて大將となる義とす。岳飛詩「不問──萬戶侯」○ 國 演說者が演壇にのぼる。
のぼりながめる。張九齡詩「暇日時──、荒郊臨故都」
力を用ふる貌。又其の時のかけ聲。詩、大雅「築之──」
宋玉に登徒子好色賦あり、よりて後世色を貪る者を───と謂ふ。
高きにのぼりて少しくやすむ、登臨して少しく頓息する。謝靈運詩「山行窮──」
年を歷ること多し。周語「若──以載其毒必亡」載は行ふ。
人をあげぬく。唐書、陳子昻傳「──才良、求人瘼、宣布上意」=登擢。
朝廷に鼓を懸け置き、臣民の諫を進め、又は事を訴へんとする時、之を擊ちて通ぜしむるもの。燕翼貽謀錄「眞宗景德四年、詔改鼓司、爲───院」
帳簿へかきのせる。國登簿噸數 トウボトンスウ は遞信省の帳簿に登錄したる船舶の噸數。
人をあげもちふる。史、夏紀「舜──、攝行天子之政」=登庸·擧用。
あげもちふる、庸は用。書、堯典「疇咨若時──」疇は誰。
高き所にのぼりてながめる。晉書、江逌傳「養以玄虛、守以無爲、──不以臺觀、遊豫不以苑沼」
高きにのぼりて下にのぞむ。孟浩然詩「江山畱勝跡、我輩復──」
黃河の上流に龍門といふ所ありて、鯉これに登れば龍に化すといふ、よりて人の榮達するに喩ふ。又、名士に謁するに喩ふ。後漢書、李膺傳「膺以聲名自高、士有被其容接者、名爲───」
臺帳にかきのせる「──稅」
ハツ ホチ [月]
一音ホツ
○はなつ、矢を放 ハナ つ。○おこる(起)立身する「─跡」孟、盡心「舜─於畎畝之中」○ひらく(開)「花─」「─倉」○のぶ(舒)あがる(揚)禮、樂記「其聲─以散」○いづ。いだす(出)禮、月令「雷乃─聲」○すすむ(進)○ゆく(往)さる(去)○おこなふ(行)○あばく(撥)「─墓」○あきらかにす(明)「啓─」○義理をあらはし明かにする「─明」論、爲政「亦足以─」○あぐ(擧)おこす(興)○みだる(亂)ちらす(散)○つかはす(遣)戰國齊策「王何不─將而擊之」○あらはる。あらはす(見)○うごく。うごかす(動)○もる(洩)○──は疾き貌。詩、小雅「飄風──」○魚の盛んにはねる貌。詩、衞風「鱣鮪──」
同訓異義
ヒラク 發·闢·闡·辟·啓·闡·拓·披·排·拆の別は開(門部四畫)の條を見よ。
考へ出す。又、其の考案。
心をおこす。淨住子「卓然──、忍苦受辱」=發心。
そだてる。中庸「洋洋乎──萬物」
葬式のとき棺を墓地へ送り出す、引は柩車の前に取りつけて引くひも。
心に抱ける才學をのべあらはす。文中子「智哉太初、善發其蘊」
宋代の官名、米粟を江淮地方より、京師へ運搬することを掌る。
ひかりをあらはす。歐陽修、蘇子美墓銘「文章──兮、星日光輝」=發輝。
めぐむ、めをふき出す。宋无詩「雷雨還驚蟄、潛藏重──」
州縣より京師に出でて試驗を受ける、州縣の試驗にて優等者ありし時、其の地方官廳より解(公文書)を中央政府に發送して更に其の人を京師にて試驗する。盍簪錄「解、本文狀之名、唐時擧子赴京、本州給解、故謂之拔解·──」
世に弘めだす。又書物を出版する。
出向かふ、出發に同じ。舊唐書「麟德二年正月甲子、以──太山停選」
號令を出だす。易經「──施令」
酒を釀すに酒母 モト の泡が立つ義〔齊書、禮志、注〕
俗 賣り出す。
あらはれてさとられる。史、高祖紀「事──、夷三族」
印刷して世にひろめる。
あせがでる。又あせをだす「──劑」
ふさがれるをひらき通ずる。易、文言「六爻──、旁通情也」
ひかりをはなつ。潘岳文「散璞──」
きがちがふ、氣がふれる。
あばきほる。漢書、師丹傳「──傅太后·丁太后冢、更以民葬之」
ひをはなつ。吳志、周瑜傳「諸船同時──」
物理にて自ら光を發する物體。
新らしく見いだす。
口を開きてことばをいだす。詩經、序「詩者志之所之、在心爲志、──爲詩」
○あらはれでる。=出現。○あらはしだす。
水の湧き出るもと。爾雅「四瀆者──注海者也」
言ひだす、言ひはじめる。
おこる。韓愈、南海神廟碑「盲風怪雨、──無節」
としのはじめ。楚辭「開春──兮」
ふさがりし氣をもらしちらす。成公綏、嘯賦「乃吟詠而──」
身をおこす。大學「仁者以財──」
手紙を出す。又電報をうつ、音信を發送する。
皮膚に小さきふきでものが出る。
車を出す、軫は車の橫木。たびだちするにいふ。魏書、高祖紀「丙子詔、六軍──、丁丑戎服、執鞭御馬而出」
車を發する、軔は車の齒どめの木。屈原、離騷「朝──於蒼梧兮」=發車。
車を出す。玉篇「發駕車」=開車。
銃砲のたまなどをうちだす、射の正音はセキ。
○天命を受けて天子となる吉兆の見はれる義。詩、商頌「濬哲維商、長發其祥」○天子の祖先の出でし地。東華錄卷一「我朝先世──於長白山」
發蹤は紲を解き放つ、指示は指し示す、犬の繩を解き放ちて獲物にけしかける。史、蕭相國世家「追殺獸者狗也、而────者人也」漢書に蹤を縱に作る。
火を點ずるに用ふるつけぎ。輟耕錄「杭人削松木爲小片、其薄如紙、鎔硫黃塗木片頂分許、名曰──又曰焠兒」
はえでる。杜甫詩「好雨知時節、當春乃──」
○こゑをいだす。又、いだすこゑ。孟、吿子「徵於色、發於聲而後喩」○ 國 歌會にて集まりし歌を讀み上げる役。
音聲を出すだぅぐ、聲帶口腔內の諸器官の類。
わらふ。文天祥詩「使我──愁顏開」
宿舍を離れ出る、夕は宿。詩、齊風「魯道有蕩、齊子──」
立身出世する、猶ほ興起といふ如し。司馬相如、封禪文「公劉──于西戎」
○使を出して見おくりす。史、蘇秦傳「諸侯各發使送之甚衆、擬於王者」○品物をおくり出す。
書物などを印刷して賣り出す。
○次第にのびて成長す。蕭穎士文「禊逸禮也、蓋取諸勾萌──、陽景敷煦、乘和蠲潔、用邀介祉」○學問事業などが次第に進む。
はなしだす。開天遺事「方啓口──、香氣噴于席上」
ぜんまい、ばね。
罪をあばき出す。漢書、趙廣漢傳「其發姦擿伏如神」擿一に適に作る。
のびひろがる、さかえゆく。
○電氣を發生する。○電報をうつ。
かどで、出立。=發程。
おこりうごく。莊、天運「人固有尸居而龍見、雷聲而淵默、──如天地者乎」
兵亂をおこしはじめる。漢書、項籍傳「天下初──」
ねつが出る、體溫がのぼる。東坡集「一夜──」
賣り出す、發賣禁止 ハツバイキンシ は書籍新聞雜誌等の賣り出しを差止める。
其の書の大意若くは要領。左傳、杜預序「──以言例」
病氣をおこす。
天下にあまねくしく、世上にあまねく通知する「憲法──」
いかる。劉向、九歎「悲故鄕而──兮、去余邦之彌久」
心をふるひおこす。論、述而「──忘食」
軍士を徵集する。周禮「以銅虎符──」
意見などを世閒に公然と言ひあらはす。
○ひらきあきらかにす。宋玉、風賦「──耳目、寧體便人」○新に物事を考へ出す。
蒙(草部十畫)の條の發蒙振落 モウヲハツシラクヲフルフ を見よ。
うすくらき目がひらけて見ゆる義。長楊賦「今日──、曠然已昭矣」
勢よくおこりあがる。羅隱詩「乘時忽──」
法令を出だす。=發號。
天子の御出立、輦はみてぐるま。
○くはだてる。○思ひ立つ。=發心。
國 ○連歌の上句卽ち五七五の三句。○五七五の三句のみにてまとまりし意味をあらはす短き歌。=俳諧·俳句。
佛 發心のねがひ〔法華經〕
○思ひ立つ。漢書、宣元六王傳「──惻隱」○ 佛 菩提心 ボタイシン をおこして佛法に歸依する〔楞嚴經〕=發起。
出發に同じ。
○はじむ。はじまり。宋史、文產博傳「──爲難」○律詩の第一·第二の兩句。
佛 大慈悲心をおこす、證道欣求の心、卽ち自利·利他の大行を修せんとの志を發起する義〔觀經疏〕