鹿部
0畫
ロク [屋]
○しか、さをしか、か、森林に棲む獸、四肢細長、性質溫順、牡は枝ある角を有す。○ふもと。麓に通ず。○天下を掌握する權位卽ち多くの英雄が互に驅逐して獲んとする目的物。一說、祿と音通、天綠卽ち帝位。史、淮陰侯傳「山東大擾、異姓竝起、英俊烏集、秦失其─、天下共逐之」魏徵詩「中原還逐─」○こめぐら、方形の米廩。圓き倉を囷といふの對。○──は凡庸の貌。錄錄·碌碌に通ず。
○ ロクヱン 鹿を飼ふ園囿。左、成十八「鹿囿」注「築墻爲──」○ 佛 ロクヲン 鹿野苑の略、釋迦が最初に說法せし所。翻譯名義集「有河名波羅奈、去其不遠、造立王城、或翻江遶城、亦曰──」=仙苑。
しかのつの。禮、月令「仲夏之月、──解、蟬始鳴」
海草の一、磯 イソ の石に多く叢生す、長さ二三寸、形の似たるが故。晒せば淡黃となる、糊 ノリ となし、又、婦人の髮を洗ふに用ふ。ふのり(布海苔)
牡丹の異名。本草「牡丹、一名百兩金、一名鼠姑、一名──」
しかのかはごろも。史記、自序「夏日葛衣、冬日──」
○さかもぎ、竹木を樹てて敵の進入を防ぐ障害物。=鹿寨·鹿砦·鹿角砦。○鹿を飼ふ所。唐の王維に──の詩あり。
前條に同じ。
鹿柴に同じ。
しかの皮にてつくれる頭巾。唐書、隱逸傳「遺以衣服──麂鞾」
しかと、ゐのこと。孟、盡心「舜之居深山之中、與木石居、與──遊」
わづかに一鹿を容れる程の小さきくるま。後漢書、任末傳「躬推──載奉德喪、致其墓所」
しかのふくろづの、藥用とす、東三省に出づる者、最も名あり、之を關東──といふ。本草綱目「──味甘溫無毒」
殷の紂王の財を蓄へし地。書、武成「散──之財、發鉅橋之粟」
しかの遊び居る所。詩、豳風「町畽──」鮑照詩「不覩車馬跡、但見麋──」
白鹿洞の略。朱熹の學を講ぜし所。韓補、紫陽山賦「旣表章於──、宜敷錫乎枌楡」曰鹿洞(一二九九頁一段)を見よ。
鹿のかは。古、婚姻の贈りもの。儀禮、士冠禮「束帛儷皮」鄭注「儷皮、兩──也」
國 海草の一、ひじき、海岸の岩石に叢生する蒼紫色の藻、煮れば黑く、食ふべし。=羊栖菜。
しか麛は鹿の小なるもの。後漢書、禮儀志「其儀乘輿御戎路、白馬朱鬣、躬執弩、射牲、牲以──」
貢擧卽ち州縣より擧げられて京師に貢せらるる人を送るさかもり。詩、小雅、鹿鳴篇を歌ふが故。其の第三章「呦呦鹿鳴、食野之芩、我有嘉賓、鼔瑟鼔琴、鼔瑟鼔琴、和樂且湛、我有旨酒、以燕樂嘉賓之心」
鹿の毛。嶺表錄異記「番禺地無狐兔、用──野狸毛、爲筆」
湖北省襄陽縣の東南三十支那里に在り、本名は蘇嶺山、漢末、龐德公、此山に登り、藥を採りて返らず、唐の孟浩然も亦此に隱居す。
鹿苑を見よ。
○物をひき又はつるし上げるに用ふる滑車。漢書、雋不疑傳、注「古長劍首、以玉作井──形」=轆轤。○──形の玉の飾ある劍。古樂府「腰閒──劍、可直千萬餘」○棗 ナツメ の一種。
凡庸なる貌。漢書、蕭曹傳贊「錄錄未有奇節」注「錄錄猶──」=碌碌·陸陸。
大利に志す者は、小利を顧みざる喩。淮南、說林「──────、決千金之貨者、不爭銖兩之價」
利慾に迷ふ者は、道理を忘れるに喩ふ。虛堂錄「──────、攫金者不見人」淮南、說林「逐獸者目不見太山」
事を設けて人を欺くにいふ。趙高が秦の二世皇帝に鹿を獻じて馬なりといふ、左右或は高に阿りて亦馬なりといふものあり、左右或は鹿なりと正言せし者に中つるに法を以てせしかば、羣臣皆高を畏れたる故事に本づく〔史、始皇紀〕
鹿は聲の優雅なるものなれども、死に迫る時は、好音を擇ぶ暇なし。人の危急に迫れる時には惡聲を出すに喩ふ。左、文十七「─────、小國事大國也、德則其人也、不德則其鹿也、鋌而走險、急何能擇」(一說音と蔭と音通、茠蔭する處なり、鹿の將に死せんとする時には、休蔭の處を擇ぶに暇あらず、以て人の危急の時は亦擇ぶに暇あらざるに喩ふと)
天下は當 マサ に誰の手に屬すべきといふの喩。晉書、石勒載記「勒因饗酒酣、笑曰、朕若逢高皇當北面而事之、與韓彭競鞭而爭先耳、脫遇光武、當竝驅於中原、未知鹿死誰手」字解參看。
2畫
イゥ [尤]
○めじか(牝鹿)○めす(牝)
麀は牝鹿、父子麀を共にすとは亂倫の喩。曲禮「夫惟禽獸無禮、父子──」
しかの牝と牡と。陳師道詩「──顧其子、燕雀各相隨」
めじか。詩、大雅「王在靈囿、──攸伏、──濯濯」
麤(鹿部二十二畫)の俗字。
4畫
アゥ エゥ [皓]
麋 トナカイ の子。
①ハゥ [肴]
②ヘゥ [蕭]
①なれしか。
②くさぎる(耘)詩、周頌「綿綿其─」(綿綿はねんごろに力を用ふる貌)○── ヘウヘウ はつよく武き貌。詩、鄭風「駟介──」
5畫
①キン クン [眞]
②クン [文]
③クン [吻]
①くじか、のろ(麞)鹿より小にして角なし。○國の名。○地の名。
②むらがる。羣に通ず「─至」
③しばる、束縛する。左、哀二「羅無勇─之」(羅は人名)
むらがりいたる。又、くじかの如く羣り至る。左、昭五「求諸侯而──」
シュ ス [麌]
おほしか(大鹿)麋 トナカイ の屬、鹿よりは大、其の尾はよく塵を避けるといふ、よりて拂子 ホツス を造るに用ふ。─尾を見よ。
麈尾 ホツス を執りて話をする。晉書、王衍傳「唯談老莊爲事、每捉玉柄麈尾、與手同色」林景熙詩「疑是神仙接──」
ほっす(拂子)麈 オホシカ の尾は、よく塵を避けるといひ、又羣鹿が麈の尾の轉ずるを見てこれに從ひ往くといふ傳說によりて佛老の徒が其の尾にて拂子を造り談話の時に執り揮ふ。晉書、孫盛傳「盛嘗詣浩談論、對食奮擲──、毛悉落飯中」=拂塵。
6畫
ビ [支]
○となかい、鹿の屬形水牛に似、牡は靑黑色、枝ある角を有し、牝は褐色、鹿の角は夏至に落ち、─の角は冬至に落つ。○まゆ。眉に通ず「─壽」荀、非相「面無鬚─」○ほとり、みぎは。湄に通ず。詩、小雅「居河之─」○麋に通ず。─蕪 ビブ は芎藭 ヲンナカヅラ の一名。
なれしかのつの。禮、月令「仲冬之月、──解」
諸侯が天子の名器を收むるに喩ふ。史、楚世家「若使澤中麋蒙虎之皮、人之攻之、必萬之於虎」
さわぎ亂れる義。擾亂する。淮南子「天下爲之──螘動」(螘は蟻)揚雄、長楊賦「──雲擾、羣黎爲之不康」
○おほしかと、しかと。孟、梁惠王「樂其有──魚鼈」○鄙野 イヤシ に喩ふ。朱熹、送郭拱辰序「宛然──之姿、林野之性」
7畫
グ·ゴ ギョ·ゴ [麌]
○をじか(牡鹿)をのろ(牡麕)○──は鹿の羣り聚まる貌。詩、小雅「獸之所同、麀鹿──」注「──衆多也」
8畫
キ [支]
─麟 キリン は想像上の靈獸、聖人出でて王道行はるれば見 アラハ るといふ、牝を─といひ、牡を麟といふ(一說、麟に似て角なき者)格物論「─麟者、麕身馬足牛尾黃色、圓蹄而有角」
麒麟閣の略。劉褘之詩「──一代良、熊軒千里躅」=麟閣。
霸王樹 サボテン の異名。
前漢の武帝が麒麟を獲たりし時、築きしたかどの、孝宣帝、功臣の像を畫きて閣上に揭げしむ。漢書、蘇武傳「上思股肱之美、廼圖畫其人于───、凡十一人」(十一人は霍光·張安世·韓增·趙充國·魏相·丙吉·杜延年·劉德·梁丘賀·蕭望之·蘇武)=麟閣·麒閣。
すぐれて賢き小兒。金璧故事「昔徐陵四歲家人抱見寶誌上人、上人乃以手摩其頭曰、天上石麒麟也」杜甫、見徐卿二子歌「徐卿二子生絕奇、感應吉夢相追隨、孔子釋氏親抱送、竝是天上───」=龍駒·鳳雛。
①キン [眞]
②クン [文]
麇に同じ
①麞 クジカ の類の總稱、性最も臆病にして水を飮むに己の影を見ても怖れ奔るといふ。詩、召南「野有死─」
②むらがる(羣)
羣り來る。麕は一に麇に作る。左、昭五「求諸侯而麇至」
ゲイ [齊]
○かのこ、鹿の子。○しし(獅子)=猊「狻─」○ 國 ─島 カゴシマ は鹿兒島の別稱。
鹿の子のかはごろも。論、鄕黨「素衣──、黃衣狐裘」
しかの子と、とりの雛と。鹽鐵論「網罝掩捕──」
鹿の子の母。韓非、說林「孟孫獵、得麑、使秦西巴載之持歸、其母隨之而啼、秦西巴弗忍而與之、孟孫歸至而求麑、答曰、余不忍而與其母、孟孫大怒逐之、居三月復召以爲其子傅(中略)曰、夫不忍麑、又且忍吾子乎、故曰、巧詐不如拙誠」
鹿の子。古、贄 ニヘ となして贈るもの。白虎通「卿大夫贄、古以──、今以羔雁、何以爲、古者質取其內、謂得美草鳴相呼、今文取其外、謂羔跪乳雁有行列也」
①レイ·ライ [霽]
②リ レイ·ライ [支]
①うるはし、うららか、うつくし(美)「佳─」「美─」「艷─」「秀─」○はなやか、きらびやか「華─」○あざやか、いさぎよし(鮮潔)「鮮─」○よし(美好)立派である。○かがやく、ひかる(光華)○つく(附·著)易、離卦「日月─于天」つらなる(連)つなぐ(繫)○つらなりゆく(旅行)○ほどこしおこなふ(施行)○つゐ(耦)ならぶ(偶)ふたつのかは(兩皮)儷に通ず。○やのむね。=欐。○かず(數)歷數の歴の轉音。詩、大雅「商之孫子、其─不億」○魚─ ギヨレイギヨリ は陣の名。
②はなる(離)○高─ コマカウフイ は國の名、古の高句─(麗一に驪に作る)今の朝鮮。○鸝に同じ。
うるはしくしてぬきんでる。南史、王筠傳「奉勅製開善寺寶誌法師碑文、辭甚──」
うるはしくつややか。=艷麗。
數の多きをいふ。詩、大雅「商之子孫、其麗不億」
うるはしく正し。文心雕龍「文辭──爲詞賦之宗」=雅麗。
うるはしくしてしとやか、嫺は雅 ミヤビヤカ 魏文帝、登臺賦「登高臺以騁望、好靈雀之──」
うるはしき音樂のふし。白居易詩「聲聲──敲寒玉」
うつくしき句。武元衡詩「雄詞封禪草、──陽春曲」
○うるはし。○美人の名。郭憲、洞冥記「帝所幸宮人名──、年十四、玉膚柔軟、吹氣似蘭」(帝は、漢の武帝)
うるはしきいろどり。梁簡文帝、謝賜玉佩啓「藍田──、槐水鏤文」
うるはしくすぐれし詩文。陸機、文賦序「嘉──之彬彬」
うるはしきことば。皇甫謐、三都賦序「觸類而長之、故辭必盡麗」
うららかなる日。楊師道詩「朝光欲動千門曙、──初照百花明」
うるはしきうまれつき。梁簡文帝詩「名都多──、本自恃容姿」白居易詩「天成──難自棄」
うるはしき人。杜甫詩「三月三日天氣新、長安水邊多──」=美人·佳人·麗女。
うるはしき精靈。陳暄詩「鎭西歌豔曲、臨淄逢──」
うるはしきをんな。姝は美好。唐書、韓全誨傳「宦人、更求──知書者」=名姝·美姝·艷姝。
うつくしき木。梁簡文帝文「如浮波之遠鶩、若──之爭榮」
ひなげしの異名〔花木考〕=虞美人草。
○うつくしくのどかなる色。何遜詩「──明珠箔、餘香襲絳紗」○うるはしきかほいろ。沈約詩「婉容──心相知」
うるはしきかざり。後漢書、班固傳「去后宮之──、損乘輿之服御」
うるはしきながめ。南史、隱逸傳論、松山桂渚、非止素玩、碧澗淸潭、翻成──」
うつくしき花しべ。孟郊詩「──惜未掃、菀枝長更紆」
麗水は浙江省の川の名、金を生ず。韓非、內儲說「荆南之地、麗水之中生金」千字文「金生麗水」
敵をうかがひ、又、遠方を望む爲め、門上にたてたるものみを譙といふ。又美麗なる高どの。白帖「魏武有──樓」
麗人に同じ。蔡邕賦「──盛飾、曄如春花」
うるはしくみやびやか。戰國策「妻子衣服──」
うるはしきを感歎する辭。揚雄、羽獵賦「──神聖、處於玄宮、富旣與地乎侔訾、貴又與天乎比崇」
うつくしき盆。梁簡文帝文「施彫金之──」
二枚の鹿の皮、婚禮の時、男女相ちぎれるしるしとして用ふ。史記「太昊始制嫁娶──爲禮」註「麗、偶數也」=儷皮〔儀禮〕
唐代の女官の名。惠妃の下に位す、正一品〔唐書、百官志〕
うつくし。論衡「佞人才高、論說──」=美麗。
うるはしくはでやか。後漢書、王符傳「金銀錯鏤、窮極──」摯虞賦「──過美、則與情相悖」=靡麗。
西北の風〔淮南、地形〕
みごとなる衣服。北史、周高祖紀「金銀寶器、珠玉──」
うるはしきあや。梁書、謝幾卿傳「濤波之辯、懸河不足譬、春藻之辭、──無以匹」
うつくしくこまやか。宋史、杜杲傳「能爲文、──淸嚴」
うるはしくたへなり。水經、注「東都西域、俱爲──矣」
うるはしきすがた。=美容。
やぶにらみ。釋名「眸子明而不正曰通視、又謂之──、麗、離也、言一目視天、一目視地、目明分離、所視不同也」
朋友相資 タス けて學を講じ德を修める。易、兌卦「──兌、君子以朋友講習」(兌は易象にて澤を示す、兌卦は兩澤相麗 ツラナ りて互に相滋益するの象、故に──といふ)
ロク [屋]
○ふもと(山足·山脚)詩、大雅「瞻彼旱─」(旱は山の名)○ふもとの林。周禮、地官、林衡、注「竹木生平地曰林、山足曰─」○やまもり、山林を守る官吏。○しるす(錄)〔書、舜典、傳〕
9畫
ベイ メイ [齊]
○鹿の子(麑)○すべて、獸の初生のものにいふ〔曲禮、註〕
獸の子の未だ成長せざるもの。淮南子「先王之法、畋不掩羣、不取──」
鹿の子と、子牛 コウシ と。輟耕錄「唐子西云、從容步山徑、撫松竹與──」
獸の子と、鳥の卵と。曲禮「國君春田不圍澤、大夫不掩羣、士不取──」
10畫
シャ セキ [禡]
通音ジャ
じゃ、鹿に似たる獸、角なし、長さ三尺許、毛は灰白色にして長し、臍に香料を有す、之を─香 ジヤカウ といふ。
じゃの臍にある香囊より取りたる香料。墨經「魏韋仲將用眞珠──二物」
麝の屬中央亞細亞に產す、喜馬拉耶 ヒマラヤ 山上に在り、身すばやく善く跳る、雌雄皆角あり、雄の臍に香あり。
麝香に同じ。李商隱詩「蠟照半籠金翡翠、──微度繡芙蓉」
麝のへそ、香氣烈し。談苑「商汝山中多麝、絕愛其臍」林逋、梅花詩「陣陣寒香壓──」
墨の異名。韓偓詩「蜀紙──添筆媚、越甌犀液發茶香」
麝香に同じ。鮑照、擬行路難「外發龍鱗之丹綵、內含──之紫烟」
香のよき墨。王勃、秋日餞別序「硏精──、運思龍章」=麝煤。
11畫
シャウ [陽]
のろ、くじか、麋 トナカイ の屬、鹿よりも小にして美、角なく、體は褐色、性善く驚く、其の革は細軟なり。=獐。
○のろのきば。古今注鹿有角而不能觸、麞有牙而不能噬」○稻の異稱。白居易詩「祿米──稻」
蒜 ニンニク の異名〔淸異錄〕
12畫
リン [眞]
○きりん、古代の想像上の神獸、麒(鹿部八畫)を見よ。家語、執轡「毛蟲三百六十、而─爲之長」○あきらか(光明)燐と通ず。揚雄文「炳炳──」
極めて稀なる喩。北史、文苑傳「學者如牛毛、成者如──」(學に志す者は、牛毛程多きも、成業する者は、麒麟の角の如く少し)
極めて稀にある者に喩ふ。杜甫詩「────世莫辨、煎膠續弦奇自見」
麒麟閣(二三一八頁二段)に同じ。李白詩「功成畫──、獨有霍嫖姚」
漢の宣帝の時、麒麟閣上に功臣の像を畫かしめたるをいふ。漢書、宣帝紀「圖功臣霍光張安世等十一人于麒麟閣」麒麟閣(二三一八頁二段)參看。
孔子の著はされし春秋の異稱、春秋は魯國の歷史、隱公元年より筆を起し哀公十四年春西狩獲麟にて筆を止めたるが故。馬祖常詩「羣儒修──、諸將宣豹略」
前條に同じ。前條參看。張說詩「鳳池傷舊草、──泣遺編」
文王の后妃の德、身に修りて、子孫宗族皆善に化せり、故に詩人麟之趾の詩を作りて之を稱す。轉じて皇后の德化の義とす。詩、召南、麟之趾篇序「麟之趾、關睢之應也、關睢之化行、則天下無犯非禮」
きりんの壽命。抱朴子「──三千歲」廣雅「──一千歲」
他人の子孫を譽めていふ。向子諲、臨江仙詞「──鳳女、學語正咿啞」
○唐の武后、祕書省を改めて──と爲す。○麒麟閣の異名。李九齡、代邊將詩「據鞍遙指長安路、須刻──第一功」
○唐の高宗の年號。○唐の宮殿の名。舊唐書「明皇天性順睦、雖讒說亂其閒、而卒無所搖、有鶺鴒千數、集──殿」
きりんを深く嘆美せし辭。黃庭堅、麟趾贊「麟有趾而不踶、仁哉、──、有額而不抵、仁哉、──、有角而不觸、仁哉──」
史官の筆。麟經參看。吳融詩「偶持──侍金閨」=史筆。
麒麟の肉の乾したるもの極めて珍味とす。列仙傳「王方平住胥門蔡經家、召麻姑至、各進行廚、擘脯而食之、云──」
きりんと、ほうわぅと。すぐれたる賢人に比していふ。元史、同恕傳「自京還家、居十三年、縉紳望之若景星──鄉里稱爲先生而不姓」
麒麟と鳳凰とが郊藪に在るは聖人の出る瑞祥。漢書、武帝紀「詔曰、周之成康、刑措不用、德及鳥獸、敎通四海、星辰不孛、日月不蝕、─────、河洛出圖書、何施而臻此與」
四っのすぐれたる動物。禮、禮運「────謂之四靈」
光明なる貌。揚雄、劇秦美新「炳炳──、豈不懿哉」
22畫
ソ [虞]
粗に通ず俗に麁に作る
○あらし(粗·觕)精の對。精 クハ しからず。○うとし(疏)○あらまし(略)ほぼ(大槪)史、陸賈傳「─述存亡之徵」○おほまか。文章軌範、小序「自─入細」○大いなり。○くろごめ(糲)玄米「─糲」左、哀十三「粱則無矣、─則有之」(粱は上米)○はげし「─厲」あらあらし「─暴」○とほし(遠)
あらくしてわろし。周禮、天官、疏「布帛之縷、大者則──」
あらあらし。北史、耿豪傳「豪、少──、有武藝好氣以陵人」獷は麤惡。
あらき言と些細なる語と。傳燈錄「麤言及細語、皆歸第一義」
あらくして精しからざるはたらき。又、其の人。蘇軾詩「──杜牧眞似笑」
みにくし。魏志、管輅傳「輅容貌──無威儀」
あらく大いなる枝と葉と。文章の細 コマカ き法則に拘泥せずして自由に筆力を揮ひしものに喩ふ。文章軌範、侯字集小序「此集皆────之文」
そそっかし(疎忽)晉書、謝鯤傳「王敦怒曰、君──邪」=麤疏。
あらまかなる貌。蘇軾詩「薄薄酒勝茶湯、──布勝無裳」
そまつなるめし(粗飯)陸游詩「濁醪──餞餘生」=疏食。
粗末なるきもの、修飾せざるをいふ。世說「裴令公有儶容儀、脫冠冕、──亂頭、皆好」(令公は裴楷)=惡衣。
あらあらしく武骨なり。宋書、王微傳「王樂小兒時尤──」
あらまかなるより精細に入る。作文は初はあまり規則などに拘泥せずして思ふままに綴り、熟するに從ひて精細に進むべきをいふ〔文章軌範、小序〕
そそっかし、周密ならず。英雄記「丁原、爲人──有武勇善騎射」
舂きて精 シラ げざる米、糲は玄米。史、刺客傳「進百金者、將用爲夫人──之費」